金融政策の一環としたスイスの事例

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☆SPECIAL REPORT(為替介入政策)
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<No.9435>
2003. 8. 15 (金)
金融政策の一環としたスイスの事例
―― 1970 年代・スイスでデフレ回避=ゼロ金利下の有効策
インフレ参照値や外債購入など、日銀の追加緩和手段が数多く指摘されているが、過去
の事例を見ても実効性のある金融緩和策としては為替操作が有力なようだ。大和総研によ
れば、過去に為替介入を金融緩和手段として採用したスイスでは、1978∼79 年に為替介入
を実施。デフレ回避に成功したという。もちろん当時の経済環境に加え、日本とスイスで
は経済規模にも違いがあるわけだが「現行法制下でも、日銀・財務省の協力体制があれば
予想実質金利の引下げが可能」(同社金利為替調査部・土屋貴裕エコノミスト)との指摘
もある。9 月のスノー財務長官訪日の際、デフレ脱却の手段を考える意味でも、人民元・
為替問題が焦点となりそうだ。
ゼロ金利のスイスが介入示唆=輸出配慮より、金融政策の一環で?
政府・日銀は 2003 年に入り、既に約 9 兆円の為替介入を実施している。表向き
は覆面介入・スムージングオペレーションという手法が採られているが、あたかも
特定の円高水準を許容しない「無制限介入」とも言えるスキームだけに、金融市場・
実体経済への波及メカニズムが注目されるところである。
その為替介入は長期的には実体経済に影響を及ぼさないというのが経済学の通
説だが、金融政策の一環としてこれを実施した場合なら、より多くの効果が期待さ
れると言う。大和総研では 14 日、「デフレを回避したスイスの金融政策と日本」
と題するレポートを発表。ここでは「スイスでは中央銀行が為替操作を担っている
が、為替の操作は金融政策の一部であり、そのものという認識に基づいている」と
し、為替介入によってデフレ脱却を図ったスイスの事例を紹介している。
スイスの金融政策目標は、多くの先進国と同様に中期的な物価の安定である。中
央銀行(SNB)はスイスフラン LIBOR3 ヶ月物に誘導目標レンジを設け、主にレ
ポ取引で金利を操作。
しかし、
今年 3 月 8 日以降は目標レンジが引下げられたため、
0∼0.75%とほぼゼロ金利水準に達している。利下げ余地がほぼなくなる状況下、
足もとでSNB当局者からはスイスフラン売り介入も辞さないとする発言が繰り
返されている。
その為替介入を積極的に活用するというSNB発言は、当初は輸出への悪影響を
懸念したものと予想されたが「利下げ余地がなくなった 3 月後半以降は、SF高を
牽制するようなニュアンスに変化してきた感がある」(前出・土屋氏)という。ス
イスではSNBに為替操作権があるため、金融政策の重要な手段の 1 つとして明確
に意識しているのだろう。
1970 年代にも為替介入でデフレ脱却=日本も介入効果高める必要あり
そのスイスでは、1971 年のスミソニアン合意後にドルペッグ制を廃止。フロート
制移行後にM1 をターゲットにした金融政策を行ってきたが、1978∼1979 年に金融
政策の一環として為替介入を実施していた。この結果、対ドイツマルクでスイスフ
ランは 2 割切り下げられ、M1 やマネタリーベースも増加し、デフレ回避に至った
という。もちろん当時の経済環境の他、日本とスイスでは経済規模に違いがある点
は留意される。ただ 1985 年のプラザ合意も含め、自国の為替減価・相手国の切上
げがデフレ回避策の切り札だったことは歴史が証明している。
その自国通貨安は金融緩和の効果として語られることが多いが、現在の日本では
日銀の量的緩和にも関わらず、大幅な円安とはなっていない。これは実質金利の引
下げ(or将来のマネーサプライの増価予想)が果たされていないためで「残され
た政策手段は実質為替レートの減価であり、直接の操作対象は名目為替レート」
(同)となるのである。
ただ現行法上、日本では財務省が介入権を持つ。しかし為替介入が金融政策その
ものであることに加え「FBで調達される介入原資の円滑な調達には日銀の協力が
不可欠で、日銀自身が外貨建てのインターバンク市場に参加したり、外債を購入し
たりする可能性は大いにある」(同)との指摘もある。財務省・日銀の協力のもと、
為替介入を金融政策の一環として明確に位置づけ、実質金利を引下げる方針を打ち
出せば「場合によっては、同じ金額でも介入効果が高まる可能性がある」ようだ。
(了)
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