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☆SPECIAL REPORT(イラクウォッチャー)
フセイン氏の早期拘束で意欲
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<No.9395>
2003. 7. 28 (月)
―― 駐留米軍、湾岸戦争の死者 147 人を上回る
25 日、米政府はフセイン元大統領の息子であるウダイ氏・クサイ氏の遺体写真を公表し
た。ラムズフェルド国防長官は、独裁政権の崩壊を示すため「正しい選択」と述べたが、
依然フセイン氏は発見されていない。同氏のイラク潜伏の可能性について、7 月 28 日付・
ミドル・イースト・エコノミック・サーベイ(MEES)でも「(2 人の死亡報道が)フ
セイン氏がイラクに潜伏していると考える、多くの元体制支持者にとって衝撃の事実とな
ったことは疑いようもない」と指摘。ブレマー文民行政官も認めおり、その後CNNがフ
セイン氏の故郷であるティクリートで、米軍が同氏を狙った急襲攻撃を報道した。マイヤ
ーズ米統合参謀本部議長もフセイン氏の早期拘束に自信を示しており、Xデーは間近に迫
っているようだ。
米英国民で高まる不満=リンチ氏報道で話題そらし?
フセイン氏の息子 2 人が、イラク北部の都市モスルで死亡したと米各メディアが
22 日に報道した。攻撃前日の 21 日には、連合軍暫定当局の(CPA)のブレマー
文民行政官はバグダッドから西北部に位置し、米軍への襲撃が多発する「スンニ・
トライアングル」に、フセイン氏が潜伏している可能性を指摘。近い将来での攻撃・
拘束を仄めかしていた経緯がある。28 日にはマイヤーズ米統合参謀本部議長がバグ
ダッドで記者団に「生きていれば(発見は)時間の問題」と語り、フセイン氏の早
期拘束の可能性が高いことを示した。米軍は 25 億ドルの懸賞金をかけつつ、27 日
に手配ポスターを一新させ、フセイン氏の拘束に全力を注いでいる。
ただ死亡報道があった 22 日、イラク戦争中に捕虜となった後、米軍に救出され
たジェシカ・リンチ氏が自宅のあるウェストヴァージニア州に帰宅、記者会見が設
定され、米各メディアで大きく報道された。リンチ氏の救出劇は米軍の活躍の結果
とされ、また彼女自身も戦争の英雄として、華々しく取り上げられていた。一部で
は政府の宣伝工作と批判もあったが、現在では映画化も噂され、イラク戦争での数
少ない美談となっている。
折しも米国内では情報操作疑惑から、議会・世論が紛糾していた。パウエル国務
長官、ライス大統領補佐官がテレビなどを通じて釈明に走る有様だった。イラク国
民による米軍への攻撃も激化する一方であり、盟友のブレア英首相も窮地に立たさ
れていた。そのため米国内ではリンチ氏、国外・イラク国内にはフセイン氏の息子
の死亡報道でバランスとったと言える。
財政赤字拡大も一因=米政権、フセイン発見に全力
一方で米の 2003 年における財政赤字は 4550 億ドルとなる見込みだ。税収の落ち
込みと減税政策の影響と説明しつつ、政府はその一端がイラク戦争よる軍事費の拡
大と認めている。その上 2004 年は 4750 億ドルまで拡大すると発表。イラクで米軍
駐留を続けるだけで自動的に財政状況を圧迫するため、このまま米軍のみで統治を
継続するのは困難と判断。米国は国連・NATOその他各国に軍事支援を要請した。
これにより財政支出を抑制するだけでなく、仏ロなどイラク戦争反対国から支援を
得ることが可能となる。対欧外交政策の改善や、イラク国内の反米感情の緩和に貢
献することとなろう。
ウダイ氏・クサイ氏が死亡したことで、イラクに駐留する米軍への反感が増し、
逆に「イラク民衆をゲリラ化するよう煽りかねない」(外資系証券筋)。米軍は 40
万人ものイラク軍を解散させたが、彼らは訓練された兵士である。元イラク兵士主
導による米軍への奇襲攻撃の頻度が高まれば、米軍のイラク駐留に反対する批判が
高まることは必至だ。
既に 7 月 16 日時点で米軍死亡者は 91 年の湾岸戦争と同数の 147 人に達している。
ブッシュ政権はイラク統治の正当性をアピールするためにも、フセイン氏を拘束す
る必要に迫られている。(了)
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