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第 25 回 「馬診の勉強会 ~各種講習会のお話~」
競走馬診療所では、競走馬に関する調査・研究を
象とした競走馬診療所の勉強会となっており、競走
宇都宮にある競走馬総合研究所と連携して行なって
馬の病気についての解説や防疫業務・薬物に関する
いることを本コラムで以前紹介しました。栗東トレ
考え方などを分かりやすく講義しています。
セン競走馬診療所が今年一年間で取り組んできた調
調教師試験といえば競争率が高く、狭き門という
査・研究の成果は、12月初めに東京大学弥生講堂で
話がありますが、今年も9月末には調教師試験の一
開催される「第54回 競走馬に関する調査研究発表
次試験が終了し、一次試験合格の皆さんは12月に行
会」において、6つの発表演題として紹介すること
われる調教師試験の二次試験に向けて寝る間を惜し
にしています。
んで猛勉強中というところです。一次試験終了後、
横田 貞夫 (よこた さだお)―――――――――――――――――――――――
今回は競走馬診療所が行っている調査・研究の内
「所長のコラムを一所懸命全部読んでいったけど調教
容を、トレセンの厩舎関係者にお知らせしている様々
師試験には全然出んかったわ.
.
.
。
」という声もいた
な活動について紹介します。
だきましたが、悪しからずご容赦を。
~厩舎関係者研修会~
毎年開催される「競走馬に関する調査研究発表会」
ており、講演者と受講者の距離も近いことから、こ
の勉強会の場だけに留まらず、常日頃から厩舎の実
において、東西トレセンの競走馬診療所が発表して
務担当者と競走馬診療所員との情報交換ができるよ
いる内容は、トレセンで実際に治療を施した病馬の
うになっています。
症例報告や、現役競走馬の調教中に実施した運動解
析のデータなどです。
~競走馬スポーツ科学セミナー~
現役競走馬の調査・研究が行えるのは世界的にも
トレセンにおける上記の活動が発展したものが、東
珍しいことです。私たちが行っている調査・研究の
京にあるJRA六本木事務所で開催される「競走馬
内容は身近な話題ですので、
「競走馬に関する調査研
スポーツ科学セミナー」です。毎年、調教師試験の
究発表会」での発表内容については厩舎関係者に広
一次試験が終了した頃、厩舎全休日である月曜日に
く紹介しています。トレセンでの紹介の場となるの
開催されていますが、東西トレセンの調教師をはじ
が、毎年、春と秋の2回開催されている「厩舎関係
めとした厩舎関係者に多数参加いただいています。
者研修会」です。通称「ミニ研究発表会」と呼ばれ
このセミナーでは、競走馬総合研究所の研究者が
ており、今秋は10月31日と11月1日の2日間にわたっ
厩舎関係者に研究内容について講演し、JRAが推
て開催されました。
進している「競走馬スポーツ科学」の研究成果を調
今回の演題は「競走馬の眼疾患 ~愛馬が失明し
教の現場に活用してもらうことと、お互いに意見交
ないために~」
「競走馬の輸出検疫 ~海外遠征のフ
換を行うことを目的として開催されています。かつ
ァーストステップ~」といった競走馬診療所関連の
ては競走馬総合研究所がある宇都宮で開催し、実際
演題の他に、来年1月1日より導入される「降着・
に研究馬を用いた研究活動も見学していただいてい
失格の判断基準の見直しについて」の講演も関連部
ましたが、交通の便もありここ数年は東京での開催
署によって行われ、
「厩舎関係者研修会」はJRAか
となっています。
らの大切なお知らせを厩舎関係者へ広く周知する場
今年のセミナーでは、JRA馬術職員による「馬
場馬術で求められる馬の動きと、その実践的な調教
としても機能しています。
この研修会は厩舎関係者にとって、いろいろな新
方法」という特別講演も盛り込まれました。参加し
しい知見を知り得る貴重な場となっていますが、私
た厩舎関係者の皆さんが、管理している競走馬の調
たち競走馬診療所員にとっても厩舎関係者と意見交
教を進めるうえで何かの参考になればと願っていま
換できる貴重な場となっています。
す。JRA主催の各種講演会開催にあたっては、厩
~調教助手勉強会~
競走馬診療所が行っている調査・研究の内容を、多
栗東トレーニング・センター
この調教助手勉強会は30名ほどの出席者で行われ
舎関係者からは馬の調教方法や栄養学に関する講演
の要望が多く、厩舎関係者のニーズに対応できるよ
うに企画しています。
くの厩舎関係者に幅広く紹介する場が前述の「厩舎
今回紹介したいろいろな講演会は、私どもが今後
関係者研修会」です。これとは別に、競走馬診療所
推し進めていく調査・研究内容について厩舎関係者
の大会議室では月に1回の割合で、厩舎の実務担当
に理解をいただく貴重な場でもあり、厩舎関係者の
獣医学専攻を修了し、
者である調教助手を対象とした勉強会を実施してい
ニーズに合った方向に調査・研究内容を軌道修正す
1984年日本中央競馬会
ます。当初は調教師を目指す調教助手を対象として
る場ともなっています。
競走馬診療所 所長。
昭和35年生まれ。
岐阜大学大学院 農学研究科
(現JRA)入会。
美浦トレーニングセンター
競走馬診療所に7年、
栗東トレーニングセンター
競走馬診療所に8年、
JRA本部
馬事部防疫課・獣医課に
11年勤務して、
2010年3月から現職。
始められたことから 「調教助手勉強会」と呼ばれて
いますが、今では騎手も含め、厩舎関係者を広く対
春と秋に2日間にわたっ
て開催される
「厩舎関係
者研修会」には、毎回
100名 前 後 の 参 加 者が
あり、各厩舎からの代表
者が参加するケースもあ
ります。100近くある各厩
舎の皆さんに幅広く情
報が伝わるように資料も
配布しています。
次回はトレセン周辺の育成牧場について紹介した
いと思います。
一方、競走馬診療
所の大会議室で
行っている「調教
助手勉強会」で
は、講師と厩舎関
係者の皆さんとの
距離も近く、より
掘り下げた議論が
できるように心掛
けています。
次回は12月17日発行号