基盤コース 後期(実習概要)

基盤コース 後期(実習概要)
ウェブサイト(http://www.elcas.kyoto-u.ac.jp/) には、過去の実習の
様子や先輩たちの感想も掲載していますので、参照してください。
① 数学
何かが解決するたびに、またひとつ、わからないことが見つかる。その解明
の繰り返しが、学問としての数学の面白さ。さあ、「リーマン予想」を解くの
は君だ!
主 なテーマ 毎 回 発 表 者 を 決 めて、Aigner, Ziegler; Proofs
fromTHE BOOK の輪読を行う。
② 物理学
宇宙を構成するものすべては「物質」である。物質が織り成す普遍と創発現
象を解明し、発見フロンティアを駆け抜けよう!
③ 化学
身の回りにたくさん存在する「化学現象」。その多様な振る舞いの理由を、物
質の基本性質や構造を知ることで解明する。人類生存の基盤を整備していく学
問が化学だ!
主なテーマ 目で見えない放射線を測る / レーザー光波を用
いた極限計測への入口 / 電磁波 ( 光 ) を用いた物質のミクロ
構造決定 / 光で見る原子の世界 / 学校で教えてくれない電磁
気学 / 星の一生とその最期
主なテーマ 分子の理論と計算機シミュレーション / 金属触媒
を使って炭素をつなごう / 身の回りの無機材料:ガラス・ゲル
の合成 / 電気を流す有機物 / レーザーで光の速さを体験しよ
う / 高温超伝導体の物性
④ 生物学
地球上にはびっくり仰天の生き物がたくさんいます。生き物の神秘を、ミクロ
とマクロで覗いてみよう!
⑤ 宇宙地球
古代神話の時代から培われてきた宇宙と地球の神秘を紐解く学問。先人が残
した多くのカギで新たな扉が開かれつつある。 第 2 の地球 発見も遠い未来
の話じゃない。
⑥ 数理工学
主なテーマ 植物の成長パターンを観る / 植物が光を感じる
仕組み / 縄文人骨のバーチャル復元 / トリ胚を通して動物の体
作りを学ぶ / 画像解析によるメダカの行動実験/コンピュータ
を使って生物の進化を探る
主なテーマ 電子回路による発光の実験、望遠鏡の見学 / 花
山天文台の見学と太陽観測実習 / 光の性質と天文学への応用
/ 測地学で地球を探る:GPS 測量 / 測地学で地球を探る:重
力測定 / 鉱物を電子顕微鏡で観察してみよう!
主なテーマ 計算機を使って科学技術計算を行うということ/
前半では、計算機を用いて科学技術計算を行う際に生じる丸め誤差の影響
と数値計算の安定性について、数値実験と理論的考察を通して理解を深め
熱伝導現象の数値計算(I) (II) / カオスと非線形現象1,2,3 /
る。具体的には3項漸化式と熱伝導現象のモデルを取り上げる。
後半では、カオスや非線形現象について計算機を用いて自分で計算して調べてみる。具体的には、ある対象とするシステムの現在の状態から
少しだけ先の未来の状態を予測できるルールが与えられた時の、このシステムの長時間での振る舞いを調べてみる。
⑦ 合成化学・生物化学
化学は物質の性質とその変化を分子レベルで解明する学問であり、物質に望
主なテーマ らせん高分子を触媒として用いる不斉反応 (I) (II)/
みの機能を与える技術でもあります。21世紀になり、エネルギー、情報、
超好熱菌とその耐熱性酵素 (I) (II) / 機能性色素の合成と物性
生命、医薬、環境など人類の生存に密接に関わる事柄の多くが化学の言葉で
測定 (I) (II)
理解できる時代になりました。その中でも、合成化学は多彩な物質と機能を
創りだす無限の可能性を秘めていますし、生物化学は生命現象の解明にとどまらずこれを利用することを可能にしました。本プログラムでは
そのような合成化学・生物化学の最先端の取り組みを体感していただきます。
⑧ 社会基盤・都市・環境の科学
人類は、地球空間を構成する水圏、気圏、地圏の恵みを受けながら、生活圏
主なテーマ 地球を巡る水の観測とシミュレーション / 水面波
を拡大・共有化し、高度な文明を発展させてきました。その一方で,自然災
の波動水槽を用いた物理実験・講義・シミュレーション / 水環
害による被害の激甚化、劣化する社会基盤の維持管理、巨大都市の設計と環
境中の微量汚染物質の分析
境整備、地球温暖化、水資源の保全、食糧問題、資源・エネルギーの大量消
費など現代社会は様々な課題に直面しています。我々はこれらを克服しながら人類の生命と幸福を守り、安心・安全な社会を次世代に伝えて
行く責任があります。地球工学は人間の生活、社会・経済活動の場である地球空間を、他の生態系を圧迫することなく、激甚な自然災害にも
強く、持続的に開発、保全するために必要な学問です。今回は防波堤等の海岸施設の安全性の となる水面波について波動水槽を用いた物理
実験、砕波を伴う複雑流を解析する粒子法の基礎講義・シミュレーター実習、地球を巡る水の観測とシミュレーション、水環境中の微量汚染
物質の分析等の様々な講義、実験を通じて社会基盤・都市・環境の科学の最前線に触れていただきます。
⑨ 物理工学
物理工学は、基礎学問を融合させて人類の夢を実現する技術を開発する工学
主なテーマ 流れと物体運動の相互作用の観察 / 顕微鏡によ
分野です。実習を通じて物理工学とは何かを感じてください。
る身近なものの観察 / 光とプラズマに関する実習 / イオンビー
・流れが物体に当たると渦が発生し、物体に様々な運動が生じる様子を観察
ムで物質を探る / 身の回りの赤外線 / 表面を作り変える
します。・電子顕微鏡は自然界に驚くほど不思議で綺麗な構造があることを
教えてくれます。未知のミクロ世界の不思議を体験します。・プラズマを使って鏡を作ったり、光を使って鏡を調べたりしましょう。・イオ
ンビームを発生させるための加速器を使って、物質を調べてみます。・身近な物体から放出される赤外線の性質を調べて光と熱の関係を考え
ます。・物質表面を分子1層分だけ取り替えるだけでも、その性質はガラッと変わります。紫外線と有機分子を使って、実際に金属やプラス
チックの表面を作り変えてみます。
⑩ 化学工学
主なテーマ マイクロデバイス (1) マイクロミキサーの設計 (2)
新しい物質を大規模に生産したり新エネルギーを実用化したりするためには、反応
はもちろんのこと物質や熱の移動も考える必要があります。必要な技術を開発し、
マイクロミキサーの性能評価 (3)Pt ナノ粒子の合成 / 燃料電池
その技術を統合して一連のシステムを構築する。物理や化学、生物が組み合わさっ
(1) 燃料電池の基礎と流路設計 (2) 白金触媒層の作製 (3) セル
た複雑なプロセスの本質を捉えて理論化し、現実の最適解を求める。その理論体系
の組み立てと発電評価
が化学工学です。このプログラムでは、3Dプリンターやマイクロリアクターを使っ
てナノメートルサイズの粒子を合成し、自分で水素燃料電池を作ります。モノづくりと技術開発、システム構築の一端を体験してみてください。
⑪ 物理コンピューティングによるインタラクション技術
私たちは今、日常生活でも様々なコンピュータデバイスに囲まれて生きています。
主なテーマ フィジカルコンピューティング入門、Aruduino,
携帯電話やスマートフォンは既に毎日の生活から手放せなくなっていますし、テレ
Processingの説明 /センサとは何か?センサと Aruduino を接
ビや電子レンジ、冷蔵庫、車や電車にもコンピュータが組み込まれています。最近
続する /Processing のプログラミング/Processing と Aruduino
フィジカル(物理)コンピューティングと言う言葉が注目されています。これは、
の接続 / 課題作成と構想の発表・製作 / 課題作成
今までは「技術者のみが作れた」デジタルデバイスを「だれでもデザインし・作れ
る」ようにする技術のことです。このコースではフィジカルコンピューティングとは何かを知り、自分でデバイスをデザイン・作成して、センサを使
ったコンピュータとのインタラクション技術を学ぶことで、これからの新しいデジタル世界を体験してもらいます。
⑫ 土の物理∼ミクロからマクロへ∼
主なテーマ イントロダクション(土とはどのようなもの?)/
「土」は非常に身近なものですが、複雑なものでもあります。例えば、土は形状の
個別要素法1(DEMと呼ばれる粒子計算手法を知ろう)/
違う土粒子によって構成されており、土粒子間には水や空気を含んでいます。微視
個別要素法2(粒子計算の実践をしよう)/ 基礎物性試験(土
的に見ると土は、固体の土粒子、液体の水、気体の空気といった異なる物質が集ま
粒子密度を測定してみよう)/PIV実験(画像解析を用いた土の
ってできているのです。このような土が集まったものが地盤です。地盤は私たちの
変形速度測定にチャレンジ) /実験と解析の比較(理論・計算
生活の土台ですが、土砂崩れや液状化といった災害をもたらす怖い側面もあります。
と実験はどこまで一致するのかを確かめよう)
では、なぜこのような災害が起きるのでしょうか?この答を知るために、私たちは
微視的な観点から土を調べ、巨視的な地盤の挙動を予測しています。このような研究は、防災面への応用だけでなく混合体の物理学の深化につながって
います。土や地盤というと泥臭いイメージがあるかもしれませんが、物理学の深い理解をもとに、確率論や数値シミュレーションを駆使したコンピュ
ーティングを行います。
⑬ 植物細胞の構造と機能
主なテーマ 電子顕微鏡で見た植物細胞/ 光学顕微鏡による
私達にとって、植物はとても身近な生き物です。周囲を見渡せば、必ずと言ってい
いほど緑の葉をつけた植物が目に入ってきます。これらの植物は何も語らず、生命
植物組織の観察 / 電子顕微鏡用試料の作製法 / 走査型電子顕
の炎を燃やしています。顕微鏡で植物の細胞をのぞいてみたらどうでしょう。まず細
微鏡で観察した植物組織 (1)(2) / 透過型電子顕微鏡で観察し
胞壁があることに気づきます。さらに倍率を上げると、細胞の中に核や葉緑体、ミト
た植物組織 (1)
コンドリア、粗面小胞体、ゴルジ装置などが見えてきます。これらは昼夜を問わず
細胞の中で活発に動きながら黙々と働き続けています。では、植物は一体どうやって光合成をし、光合成で作られた糖を植物体の各所に運んでいるの
でしょうか。そして、植物はどのように糖を利用して細胞壁の成分を合成したり、タンパク質やデンプンを貯蔵するのでしょうか。電子顕微鏡を使っ
て、植物の細胞の働きを調べてみましょう。きっと、細胞がナノスケールの精緻な工場のように思えてくるはずです。
⑭ 海洋生物の健康増進の科学
主なテーマ 水産副産物からタンパク質の抽出 / タンパク質の
海洋には非常に多種多様な生物が棲息しています。海洋生物は私達の生活の向上に
役立つ有用な物質や遺伝子資源の宝庫ともいえます。はるか昔から、魚介類や海藻
酵素分解 / 酵素分解物の電気泳動 / 酵素分解物のクロマトグ
などの「海の恵み」の恩恵を受けてきた私たちにとって、無限とも思われる海の生
ラフィーによる分画 / 酵素分解物中のペプチドの分離 / 質量分
産力の価値は今後もより一層高まるはずです。しかし、骨やヒレ、頭など十分に利
析系を用いたペプチドの同定
用されずに廃棄されるものもたくさんあります。これらの海洋生物の未利用物から
我々の健康を増進する物質を探求してみませんか。 具体的にはタンパク質を分解して生理機能のあるペプチドを作ってみます。 この実習を通して、海
とその生物資源の研究の面白さに触れ、私たちが海をどのように活かすべきか関心を持ってもらう機会になればと思います。
⑮ 地球環境学Ⅰ
(水と大気の環境)
水と大気は,我々のまわりにあって最も身近な環境であるとともに,その善し悪し
主なテーマ 水を知る (1) (2) (3) 実験およびデータの解析と
は直ちに我々の健康に関わってきます。普段は何も意識しない,この水と大気の質
考察、レポートの確認
と機能について,本コースでは,その物理・化学的・生物的な観点より,学習しま
大気を知る(1) (2) (3) 実験、解析、および考察
す。具体的には,1)水の実習では,鴨川で採水と流量測定を測定し水の循環を考
えるとともに,水質成分を現場および実験室で分析し,どのような特性があるかを考察します。2)大気の実習では,植物から放出されるVOCと人間
活動由来のVOCとオゾンをチャンバー内で反応させ,エアロゾルを発生しその粒径分布の時間変化を観察し,大気中でのPM2.5の発生メカニズムにつ
いて学習します。
⑯ 地球環境学 II(微生物と環境)
微生物は,生態系中の炭素・窒素およびエネルギー循環を制御することを通して,
地球環境および地球生態系の維持において重要な役割を果たしています。本分野で
は,自然界に分布する微生物を観察し,有機物の合成系・分解系における微生物の
役割を理解した上で,その利用法について学びます。具体的には以下の2課題を設
定します。1) 藻類の光合成プロセスを理解し,これを利用してバイオ燃料を生産す
ることを試みます。2) 土壌の有機炭素・窒素の無機化プロセスを理解し,農地にお
ける過剰施肥に伴う下流水系の窒素汚染の抑制条件を検討します。
主なテーマ 自然界の微細藻類の観察と藻類の培養 / 農業に
よる窒素汚染:土壌試料の採取と培養開始/ 土壌における有
機炭素の無機化量の測定/油脂蓄積藻類の観察・回収・凍結乾
燥 / 土壌における有機炭素および窒素の無機化量の測定 / 藻
類からの油脂の抽出と燃料化
⑰ 地球環境学 III(廃棄物をどう使い、どう処分する?)
皆さんが使っている様々な製品は使用した後に、廃棄物となってしまいます。その
主なテーマ 廃棄物の資源・エネルギーの可能性を探ろう!:
中にはエネルギーや資源が残っています。日本は資源が少なく、廃棄物を有効活用
廃棄物って何?/ 廃棄物中の資源を測ろう/ 棄物中のエネルギ
しなければなりません。一方で、最終的に要らなくなった廃棄物は安全に保管ある
ーを測ろう / 廃棄物処分の科学:粘土の役割と構造 / 粘土の中
いは処分しなければなりません。前半では、廃棄物が持っている資源、エネルギー
の物質移動適正から適切な処分を探る
を実際に測って、その利用可能性を探索します。後半では、廃棄物の安全な処分に
おいて身近な「粘土」が果たす重要な役割を示し、粘土によって水や有害物質の動きが如何に抑制されるのか実験と解析を通して考えてもらいます。