機械工学基礎 I 補充問題 その 5 (微分・積分の応用,微分方程式解法の基礎) 解答例 5-1. 急ブレーキをかけた後の自動車の加速度を a[m/s2 ],速度を v[m/s],変位 (ブレーキをかけた直後にす べる距離) を x[m] とする.自動車の質量を m[kg],重力加速度を g[m/s2 ] とすると,自動車に作用する 重力 W = mg[N] なので,道路から自動車に作用する垂直抗力 N = mg[N] である.W と N は大きさ が同じで向きが逆なので,運動方程式では相殺される.従って自動車に作用する外力は,空気抵抗を無 視するとタイヤと道路の間の摩擦抵抗 R[N] のみと考えてよい.摩擦抵抗 R[N] は,タイヤと道路の間 の摩擦係数 µ を用いて次式の通り表される. R = µmg (1) ma = −R = −µmg (2) 運動方程式は次の通り. 運動方程式の両辺を質量 m で除し,時間で積分すると速度 v[m/s] が得られる. ∫ v= (−µg)dt = −µgt + C (3) C は積分定数である.ブレーキをかけた瞬間の時刻 t = 0[s] における速度 v = v0 [m/s] より,C = v0 を得る.従って, v = −µgt + v0 (4) である.速度 v[m/s] を時間で積分すると変位 x[m] が得られる. ∫ x= 1 (−µgt + v0 )dt = − µgt2 + v0 t + C 2 (5) C は積分定数である.t = 0[s] における変位 x = 0[m] より,C = 0 を得る.従って, 1 x = − µgt2 + v0 t 2 (6) (4) 式より,v = 0 となる時間 t = v0 /(µg) を (6) 式に代入し,x = 45[m],v0 = 60[km/h] の条件の下 で摩擦係数 µ について解く. 1 x = − µg 2 µ= ( v0 µg )2 + v0 v0 v2 = 0 µg 2µg (60 × 1000)2 /(60 × 60)2 v02 = = 0.315 2gx 2 × 9.8 × 45 (7) (8) v = 0 となる時間 t[s] は次の通り求められる. t= v0 v0 2gx 2 × 45 2x = = = 5.4 = µg g v02 v0 (60 × 1000)/(60 × 60) (9) − − 5-2. 質点の速度成分 vx ,vy より,質点の速度ベクトル → v は→ v = (vx , vy ) と表される.質点に作用してい → − − → → − → る力ベクトル F は運動方程式より, F = (−avy , avx ) である.− v と F の内積を求める. − → − → v · F = (vx , vy ) · (−avy , avx ) = vx · (−avy ) + vy · avx = 0 これより力ベクトルは速度ベクトルと垂直であることが示される. 1 (10) 5-3. 加速度 a で等加速度運動する物体の変位 x と時間 t の関係は,t = 0 のとき速度 v = 0 および x = 0 の 1 初期条件の下では,x = at2 である.従って,質点の加速度 a は次の通り表される. 2 a= 2x t2 (11) と求められる.アウトウッドの機械において,二つの質点の質量がそれぞれ m,M (m < M ) の場合, 質点の加速度 a は重力加速度を g として a = g(M − m)/(M + m) である.これより,質点 24[kg] と 質点 26[kg] を取り付け,質点が 1[m] 移動するのに 2.3[s] 要することが測定された場合には,重力加速 度 g[m/s2 ] は次の通り求められる. g= M + m 2x 26 + 24 2×1 M +m a= = × = 9.45 2 M −m M −m t 26 − 24 (2.3)2 (12) 5-4. 問題文は次の通り. 「図 B に示す通り,重量 W と 2W の物体が鉛直平面に糸と滑車でつるされている.左側の重量 W の 物体に重量 Q を追加し,下向きの加速度 a = 0.1g を発生させる際の Q の大きさを求めよ.滑車のま さつと慣性は無視する.」 左側の物体の加速度を a とする.糸は伸び縮みしないものとすれば,動滑車につるされている右側の物 体の加速度は上向きで大きさは a/2 である.糸に作用する張力を T として,左側の物体に重量 Q を追 加した際の,左側の物体の運動方程式は次の通り. (W + Q) a = (W + Q) − T g (13) また,右側の物体の運動方程式は次の通り. 2W a = 2T − 2W g 2 (14) 上記二つの運動方程式から張力 T を消去して,a = 0.1g を代入し,Q について解くと,Q = W/6 を 得る. 2
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