体内時計における食と運動の相互作用 柴田 重信 早稲田大学先進理工学部、電気・情報生命工学科 教授 専門 略歴 時間生物学、体内時計と薬の働き、体内時計と食・栄養との関係、体内時計と運動との関係、食物アレルギー、リ ズム不調とうつ病、ヒトの体内時計計測法開発 1976 年 3 月 1981 年 3 月 1982 年 1 月 1985 年 11 月 1995 年 1 月 1996 年 4 月 2006 年 4 月 2009 年 4 月から 九州大学薬学部 卒業 九州大学薬学研究科 博士課程 終了 九州大学薬学部助手 ニューヨーク州立大学、Research Associate 九州大学薬学部助教授(薬理学) 早稲田大学人間科学部、教授 早稲田大学先進理工学部、電気・情報生命工学科、教授 東京農工大、客員教授(併任) 、 東京女子医大、客員教授(併任) 筋の同化・異化作用 タイミング 体内時計 (時間秩序) 運動習慣が 時計をリセット 運動・スポーツ (時間運動学) 栄養の吸収・代謝の タイミング 食・栄養が 体内時計をリセット スポーツ栄養学 食事・栄養 (時間栄養学) 食事のタイミングが、体内時計の位相の決定に重要な役割を有すること、またちょうど良いタイミングの 食事がエネルギー代謝に影響を及ぼし、メタボリックシンドロームの発症や予防に貢献することが分かって きた。このように「体内時計と食・栄養」の関係を調べる学問を時間栄養学とよぶ。一方で、メタボリック シンドロームの予防、筋量増加には運動は欠かせない。運動のタイミングで、体内時計の位相を動かすこと が可能か、また、タイミングの良い運動が、肥満・ロコモ・サルコぺニア予防に貢献するか、など「体内時 計と運動」の関係を調べる学問の時間運動学が重要になる。本シンポジュームでは時間栄養の概略を述べ、 新知見である時間運動学について述べる。一方、この両学問は相互作用することが分かった。例えば、運動 を昼に固定し、高脂肪食を朝にするか夕にするかを行うと、朝食後の運動群が運動後の夕食群より、抗肥満 効果・筋量増大を示すことが分かった。また、食事を昼間に固定し、運動を朝か夕に行うと、食事後の夕運 動群が、朝運動後の食事群より、抗肥満効果・筋量増大が顕著であった。すなわち、食後の運動は抗肥満・ 筋増量に貢献することが分かった。このように、エネルギー代謝では時間栄養と時間運動が密接な関係を持 つことが分かった。運動は正常な食事パターンでは、体内時計の位相を動かすことはなかったが、体内時計 の位相を動かすような食パターン(夜食やシフトワーク)時には、朝の運動や夕の運動は体内時計の位相を 正常状態の位置に戻す効果が認められた。すなわち、体内時計の位相決定時にも時間栄養と時間運動に相互 作用が見られた。 5
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