「FEI 獣医規程」第 13 版(2014 年)の改訂の要点 「FEI 獣医規程」2014 年度版への変更事項が、2013 年の FEI 総会で了承された。 「獣医規程(VRs )」には、2012 年に、アプローチ(訳注:課題への取り組み方)の面でもフォーマッ ト(訳注:形式)の面でも、大幅な見直しがおこなわれた。 2013 年にこれが実施されると、規程の変更は関係者全員によって十分に受け入れられた。 2013 年の規程検討の過程では、「獣医規程」と「種目別規程」とのあいだで調整し合意する、という作 業があった。2014 年に「獣医規程」に手を加えた目的は、以下のとおりである: • 2013 年のあいだにおこなわれた検討作業の結果を反映させること。 •各種目の間でホース・インスペクションのプロセスのスタンダードをつくり、調和させること。 •「獣医療サービス・マネージャー(VSM)」のコンセプトが十分に受け入れられている現在、 「大会」にお ける獣医代表の人数については必要に応じた数を確保すること。 「ホールディング・ボックス獣医」(Holding Box Veterinarian)(訳注:旧 Examining Veterinarian) 参加者の数が少ない大会を開催しやすくするために、「ホールディング・ボックス獣医」が「公認獣医」 でなければならない、という必要条件を変更し、 「許可を受けた診療担当獣医」が「ホールディング・ボ ックス獣医」の役割を果たせるようにする。これが許可されるのは、 「獣医代表」がひとりしかいない大 会である。つまり、このような小規模の大会では、 「ホールディング・ボックス獣医」が「獣医療サービ ス・マネージャー」でもある、ということだ。複数の獣医代表または獣医療コミッションが存在する比 較的大きな大会では、 「ホールディング・ボックス獣医」は、これまで通り「公認獣医」でなければなら ない。 「許可を受けた診療担当獣医」(Permitted Treating Veterinarians) 「一般規程」の趣旨では、“「許可を受けた診療担当獣医」の資格要件には、原籍国であることに加えて 居住国であること” 、という条件が含まれることになる。また、「獣医規程」の中で「許可を受けた診療 担当獣医」を表す頭字語は、わかりやすいように、PV から PTV に変更する。 「獣医療サービス・マネージャー」(Veterinary Service Managers) 利害の衝突を避けるために、 “VSM は、自らが組織委員会によって VSM に任命された大会と同一の大会 では、競技に参加しない”という規定を追加する。 「公認獣医」(Official Veterinarians) 大会における「獣医代表」の人数は、大会の規模に応じて変わる。大会の開始から終了までずっと競技 会場で待機していつでも仕事ができるようにする、という「公認獣医」の義務は、強調して示す。また、 “ 「公認獣医」は「獣医療サービス・マネージャー」からの連絡をいつでも受けられるようにして、両者 のコミュニケーションを促進しなければならない”ということも追加した。 「獣医代表」はまた、大会会 場での不測の事態に備えて緊急事態への対応計画を VSM と共に検討しなければならない。 「エンデュランス役員と診療担当役員」(Endurance Officials & Treatment Officials) 混乱を避けるため、 「エンデュランス公認獣医(EOV)」と「エンデュランス公認診療担当獣医(EVT) 」へ の昇進条件を明確にした。エンデュランス競技における「公認獣医」は、今後、EOV または EVT のどち らかになることとし、EVT になるにはまず EOV にならなければならない、という必要条件はない。さら に、60 歳の年齢制限は、削除することが提案された。 役員の保険 「獣医規程」は、獣医が大会中に馬に日常的なトレーニングをさせることは FEI による保険の対象外で ある、と明確に規定する。したがって、これらの獣医は自分で適切な保険に加入しておくことをお勧め する。 厩舎とスチュワーディング 「厩舎エリア」について、いくつか細かいことを明確にした:たとえば、厩舎の広さについて言い換え をしたが、変更はない。現行の「種目別規程」と調整するため、厩舎の安全のための必要条件およびそ の他の規則を明確にした。低めのレベルの大会における厩舎の安全のための必要条件は、大会の組織運 営者が直面する課題の現実を反映することを考慮した。これは「馬の管理責任者(PR) 」に厳しい管理責 任を負わせる方針を変更するものではない。 誤解を避けるために「獣医規程」に一文が追加され、 “大会の「指定された診療ボックス」は厩舎がオー プンしている間はオープンし続ける”ことをはっきりと示すようにした。さらに、これらのボックスは、 大会期間中、スチュワードによる断続的な監視の対象となる。また、 “未開封のパッケージや容器のみを 使用しなければならない”ということも明記された。 「FEI の許可を受けた診療担当獣医」の本来の責務と我々の「クリーンスポーツ」キャンペーンの高潔さ の両方の趣旨として、ランダムテストの追加を提案した。大会で必要に応じておこなわれる獣医ブリー フィングのあいだ、チーフ・スチュワードもしくはその代理は、全員に同じアプローチがされることを 保証するために、臨席しなければならない。 ホース・インスペクション 各種目の関係者と「FEI 医療委員会」の要求に応えて、 「獣医委員会」は、ホース・インスペクションで 馬をプレゼンテーションする際の機器や方法の要件を検討した。大会組織委員会がインスペクションに 適した安全な環境を提供することを確実にするためである。もし馬がホース・インスペクションで前述 したとおりに、またホース・インスペクションの時間内にプレゼンテーションできなかった場合、 「イン スペクション・パネル」は、その馬を競技できるほど健康であるとは了承できない可能性がある。さら に、 「競技場審判」の指示のもとに、スチュワードが任命されてホース・インスペクションの補佐をする ことができる。 PR およびサポート・スタッフ 「一般規則」 (第 118 条)中の PR(馬の管理責任者)の定義を強調表示した。彼らの責任に関する文言 も再度強調された。彼らが、マイクロチップやパスポートの記述といった馬の識別情報についてのすべ ての変更や更新を国内馬術連盟(NF)に対して確実に知らせるようにするためである。 パスポート、認証カード、マイクロチップ FEI パスポート・システムが、EU、そして OIE との官民連携から大規模な精査を受けることになったた め、パスポート、認証カード、マイクロチップも、本年度、その趣旨で再検討を受けた。この再検討は、 各国馬術連盟とその政府とのコラボレーション・プランを考慮してのものでもあった。 大会でのバイオセキュリティと高潔さの条件をサポートするために、馬の個体識別のプロセスについて、 また、検出された管理上の問題やエラーを処理するために、説明する文章が追加された。このように、 「獣 医代表」がこのことを処理する責務について若干の変更が提案され、 「競技場審判」と「馬の管理責任者」 と各国馬術連盟について記述が追加された。パスポートと認識カードの更新期間もより明確にされ、反 則・不正行為に対する通知と制裁のプロセスが検討されている。 鍼灸 鍼灸について一文が追加された。鍼灸は許可されるが、ただし、 「指定された診療ボックス内で正しく処 方された場合に限り、かつ、使用された針はソリッド・タイプ(訳注:中身のある針)でなければなら ず、ホロー・タイプ(訳注:中空の針)は許可されない。 脚感覚検査の手順 「最終エグザミネーション」のプロセスについては文言を変更したが、目的は変わらない。 選択検査 (elective testing) 獣医部門、獣医委員会および FEI の認可を受けた研究所による選択検査の見直しおこない、選択検査の サンプル分析の対象として、尿に加えて血液が候補になった。しかし、 「FEI 選択検査物質リスト」でリ ストアップされている物質だけが、検査の対象となりうる。 サンプル検査 従来の「獣医規程」で具体的に示された方法での EADCMP サンプル検査の実施はどの FEI 大会に必要な のか、について、さらに明確にする必要があった。EADCMP サンプル検査は、リストに上がっている高 レベルの大会では義務だが、より低いレベルの大会では、現在のところ、推奨にとどまっている。サン プル検査が義務付けられている大会は、現在実施されている事例に基づき、以下のとおりとする:CCl 3 *、CCl 4*、CDI 3*、4*、5*、CEI 3*、4*、CSI 3*、4*、5*、CIO、ワールドカップ予選、カップ・ファイ ナル、選手権大会とゲーム。このような義務は、世界じゅうの検査における一貫したレベルを確保する ための鍵となる。また、サンプル検査の報告義務が「獣医規程」に追加された。これによって大会での 検査に関する完全な情報を常に適切な期間内に獣医部門が必ず受け取れるようになる。 サンプル検査のプロセスを容易にするために、特定の条件のもとで「公認獣医」の監督下であれば、 「許 可を受けた診療担当獣医」がサンプル検査の業務をおこなうことができる、という規定が追加された。 さらに、尿の検体を出すために、馬が十分時間を与えられねばならない、ということも、明確に記され た。 禁止物質と治療法 FEI は、禁止物質の使用を常に厳しく禁じるべきだと考えているため、それに関係する規定が厳格さを表 現するように変更した。遺伝子ドーピングの概念を明確にすることが必要だと思われるため、 「獣医規則」 に一文が追加され、遺伝子ドーピングを次のように定義した:すなわち、細胞、遺伝子、遺伝要素、ま たは遺伝子発現の変調を、治療のためではなくパフォーマンス向上力を持つものとして使用すること、 と定義したのである。また、「キネシオテーピング」は禁止された治療法とみなすことが、確認された。 組織委員会の必要条件 組織委員会がスタンダードの改善にいかに敏感になったか、ということについては、この一年、コメン トが寄せられた。スタンダードの改善は、他の改善中の多くの分野にリンクしている。獣医療サービス マネージャーにはこの分野で大きな役割を担っており、獣医委員会は、すべての公認獣医に対して彼ら の義務と責任、施設をチェックし、欠点があればこれを報告し、スタンダードが不適当である場合には 大会開催を拒否する義務と責任を自覚させている。獣医療サービス・マネージャーの責任も、明確に示 された。獣医療サービス・マネージャーの責任は、2013~2014 年に展開されるコミュニケーション・プ ランによって支援される。組織委員会による獣医の任命の締め切りも、「FEI 一般規程」に合わせて 10 週に変更した。 バイオセキュリティ 馬の安全な一時的国際的移動を政府の協約の条件内で容易にしたい、かつ、我々の馬を保護したい、と いう強い希望から、 “国の獣医当局によって義務付けられている動物の健康基準を含め、馬の健康に関す るその他すべての国内規程は、厳密に満たされねばならない”との規定が追加された。また、輸送中に 良好なバイオセキュリティを実施することの必要性も強調された。 致命的な負傷、死亡·安楽死 このような状況に対してより一貫した方法で対応するために、また、計画中の「FEI 傷害監視システム (ISS)」の一環として、「獣医規程」に、 “大会の開始時に緊急時対応計画のミーティングを必ずおこな って、致命的な負傷や死亡の際に用いられ、VSM と OC が調整するためのプロトコルを検討しなければ ならない”とする一文が追加された。さらに、必要な EADCM サンプル検査の前におこなわれた治療が あれば、必ず完全に記録し、 FEI に伝えねばならない。また、大会中の馬のすべての死亡に関する大会 報告のタイムリミットは、24 時間に変更された。即時の通知は、できるだけ早く行わねばならない。 馬の安楽死の前に、獣医代表は、可能な場合は獣医によるセカンド・オピニオンを求めることが推奨さ れる。また、獣医代表は、事故当時の天候などのあらゆる詳細を「獣医レポート」に必ず記載するよう に確認しなければならない。 検死解剖 「獣医規程」の中に、 “馬が搬送された検死解剖をおこなう施設およびその連絡先を含め、詳細を死亡報 告書に記さなければならない” 、と明記された。さらに、FEI への検死解剖結果の報告は、病理医が報告 書を出してから 24 時間以内におこなわねばならない。さらに、死亡または安楽死の前または最中に馬に 投与された薬物があればそれを報告するが、12 時間以内に報告するべきである。 ポニー ポニーの測定に関する規定の大幅な見直しは、現場で得た経験の結果である。2014 年に向けて、いくつ かの事項が下記のように明確化された: すべてのポニーは競技場審判の決定に従って「計測」のためにプレゼンテーションしなければならない が、プレゼンテーションは通常「ホース・インスペクション」の前におこなう、ということを強調する 必要があった。ポニーの「計測」は、FEI 大会中いつでもおこなうことができ、競技場審判の裁量に従う ものとする。 組織委員会とこの「エリア」は、「計測」開始前に、担当役員によってチェックされねばならない。「計 測エリア」について懸念がある場合は、組織委員会の責任で、それが確実に是正されるか、または適切 な代替物が提供されるものとする。また、スタッフの要件が明確に説明されており、すべてのポニー計 測担当部署の効率性と円滑な運営を確保できるようになっている。ここには十分なスチュワーディング が含まれるが、これはこれまでは「獣医規程」に含まれていたが、実行の強化が必要な部分であった。 さらに、写真撮影など、測定プロセスへの干渉・妨害になりかねない行動は、禁じられている。 計測の最中または後に、許可を得ていない装蹄や蹄鉄交換がおこなわれないようにするため、ポニーの 大会において装蹄は、 「指定された装蹄エリア」において、競技場審判または獣医代表による正規のかつ 事前の許可を得た場合にのみ、おこなうことができる、という規定が追加された。 「計測担当獣医」や「馬 の管理責任者」を含むすべての人のために、 「計測」が義務付けられているにもかかわらずポニーの「計 測」ができない場合にどうするか、という対処法のプロセスが追加された。 さらに、“ 「FEI 上訴計測手続き」に入ったポニーはその後、 「獣医規程」のマイクロチップ規定に従い、 マイクロチップによる個体識別ができなければならない”という規定が追加された。これは、ポニーが 定期的に所有権を変更する傾向があり名前の変更が珍しくないことを反映した規定でもある。 さらに、上訴をおこなうための期限が 20 営業日から 40 営業日に変更することが示唆された。これは、 ポニーとそのサポート担当者が可能な限り最善の状況で上訴できることを確実にするためである。 各国馬術連盟からの要請に応えて、 「獣医規程」に“各国 NF は、上訴事件も視野に入れ、計測業務を要 請できる「計測担当獣医」2 名を任命しなければならない”という規定を加えた。 「FEI 獣医規程」2014 年版の修正赤入れバージョンは、こちらで見ることができる。 http://www.fei.org/sites/default/files/Final_2014_Vet_Regs_with_markups_14Nov2013.pdf FEI 獣医部 2013 年 11 月
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