2007 年 3 月~2009 年 3 月までの 2 年間、私は 西アフリカのセネガルという国で青年海外協力隊看護師 隊員として活動してきました。 参加しようと思ったきっかけは、サーフィンの帰り道の 幸せな気分でいる時にたまたまつけたラジオでした。当時 イラク戦争真っ只中、毎日戦争での一般市民の犠牲者の 報道がされていました。今、幸せを実感した私といつその 命を奪われるかもしれない人たち、この差はなんだ?と 心に重い感覚を感じました。 名前:遠藤弓人 幸せの定義は人それぞれ違う。しかし、健康で安心して 暮らさなければ、幸せを感じることもできないのでは (えんどうゆみと) ないか?健康を守る仕事に携わっている自分が尐しでも 出身校:福島県立医科大学医学部 役に立てることはないのか?一生のうち一度くらいは 附属看護学校 世界の人々のために何か役に立ちたい!と強く思い <井戸汲み生活の一場面> 配属先:A3 西病棟 青年海外協力隊参加しました。そして、受験、研修を経て ひとこと紹介: セネガルのシンチュウマレム村という小さな村のたった 今のストレス発散法は6階の 一つの診療所に派遣されました。 プールで泳ぐことです。 無心になって 泳ぐと気分がさっぱりし 気温は 50 度。想像を絶する暑さの中、私の活動は始まりました。想像通り、 ます。 診療所にはほとんど物資がなく、働いているスタッフも尐ない状況でした。 そして、最大の敵はマラリアでした。村に1つしかない診療所まで来るには、 サバンナの道を馬車で 5,6 時間かけて来る人もいました。診療所に着くころには 血圧を測れない患者さんもいて、診療所には酸素も薬もないので、州に1台だけ ある救急車を要請し離れた都市の病院に移送することにしました。しかし、 その1台しかない救急車は別のところに行っていて、いつ来るか分からない車を 待っているうちに亡くなるという患者さんもいました。シンチュウマレム村が 属する州では、5 歳以下の乳幼児死亡率は 20%で 5 人に 1 人が 5 歳の誕生日を <マラリア簡易テストの様子> 迎える こと がで きま せん。 そのほ とん どは マラ リアに よって 命を 落と して いました。「将来は(私の)お嫁さんになる!」と言ってくれた子供もマラリアで シンチュウマレム村での医療ス タッフも物資も足りない中での 活動。 亡くなりました。 「人、物、金」のない現状。マラリアによって知り合いの子供や妊婦さんが 亡くなる無力感と喪失感に悩んだ時期もありました。しかし、「人、物、金」が ないのならマラリアにならない、なってもすぐ診療所に来るという「知識」を 2 枚目に続く 持てばいいのではないかと気持ちを切り替え、マラリア予防啓発活動に力を 入れていきました。 1 枚目の続き 18 村約 4000 人対象にマラリア予防啓発活動をする中で、世界銀行と セネガル政府から 500 張の蚊帳の援助を受けました。これを妊婦と 5 歳 以下の乳幼児を対象に配布、また1つ優先村を指定し、そこの住民は全員 蚊帳で眠れるようにしました。これは、ある文献で「住民の 80%が蚊帳 で寝るとマラリア罹患率は減尐する」というのがあったためで、その効果 を村人に実感してもらいたかったからです。その村は 2007 年 250 人の 人口で 10 名の子供が亡くなるという悲しい出来事がありました。 しかし、全員蚊帳で寝た 2008 年は 1 名も死者を出すことなく乗り切り ました。一連のマラリア予防啓発活動を州の会議で共有、さらに保健省 <マラリア予防啓発活動の様子> (日本で言う厚生労働省)大臣参加の会議で発表、ダカール大学教授の 視察、マラリア対策誌への掲載と国レベルでの成果をあげることが できました。 日本に帰ってきてからも自 分にできる国際協力活動を 行っています。 それは、学校や市民講座などで自分の経験を伝えること、そしてその際 募金を行い、貯まったお金でシンチュウマレム村に救急車を贈ることです。 救急車は話したように州に 1 台しかなく、住民が切望するものです。 帰国後 1 年半かけて行った募金により、それは実現し今では大活躍している とのことでした。先日、セネガルでの活動、また帰国後の活動が評価され 緒方貞子JICA理事長より賞をいただきました。これからも自分にできる 国際協力を行っていきたいと思っています。 <村に送った救急車> 国際医療福祉大学病院A3W病棟での日々 今年の 4 月から国際医療福祉大学病院A3W病棟で 働いています。私の同僚はほとんど年下の若いメンバー で す が 、「 患 者 さ ん の た め に ! 」 と い う 思 い が 強 く 、 向上心が高く、私含め新しいメンバーへの教育、指導、 優 しい 言葉掛 け、本 当に 素晴 らしく 尊敬し てい ます。 師長さん、主任さんのリーダーシップのもと、まとまった 病棟で働ける幸せを感じています。
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