肝硬変のマネジメント

JDDW 2016 Kobe
サテライトシンポジウム77
学会2日目
11月4日(金)17:30∼19:00
日時■ 2016年
場所■ 神戸ポートピアホテル
偕楽2 第8会場
肝硬変のマネジメント
司会 : 福島県立医科大学医学部 消化器内科学講座 主任教授
大平 弘正 先生
演題1
肝性脳症の診断と治療
―肝硬変診療ガイドライン2015を中心に―
演者 : 岐阜大学医学部附属病院 第一内科 講師
白木 亮 先生
演題2
新規難吸収性抗菌薬概要
演者 : 三重大学 消化器・肝臓内科 病院教授
共催: 第20回日本肝臓学会大会
岩佐 元雄 先生
会長 高山 忠利(日本大・消化器外科)
肝硬変のマネジメント
司 会
大平 弘正 先生
福島県立医科大学医学部 消化器内科学講座 主任教授
演題1
肝性脳症の診断と治療
白木 亮 先生
―肝硬変診療ガイドライン 2015 を中心に―
岐阜大学医学部附属病院 第一内科 講師
肝性脳症とは、重篤な肝機能障害に基づいて二次的に意識障害をはじめとする多
彩な精神神経症状をきたす症候群である。肝性昏睡とほぼ同義語として用いられ、
軽症のものから深昏睡まで幅がある。また、精神神経症状が明らかでなく定量的精
神神経機能検査ではじめて指摘される潜在性肝性脳症もある。肝性脳症の原因とな
る疾患には、劇症肝炎から肝硬変、Eck瘻症候群、尿素サイクル酵素異常症までさま
ざまなものがあり、したがってその病態も多岐にわたる。
日常診療においてもっとも多く診るものは肝硬変によるものであり、潜在性脳症
は約30%、顕性脳症は約20%存在する。肝硬変に脳症が発症するメカニズムは、
①腸内細菌によって産生され門脈に吸収された脳症惹起因子(アンモニアが代表)
が、肝臓での代謝を逃れ、高濃度のまま脳に到達して中枢神経機能を障害すること
によること②血中Fischer比の低下が、血液-脳関門を通り抜けてそのまま脳内に反映
され、アミノ酸から産生される神経伝達物質である脳内モノアミンのバランス異常
を来たすことによる。肝性脳症は黄疸や腹水と並んで肝不全の重要な徴候の一つで
あり、出現した際には早急な対応が必要である。
本講では、肝性脳症の診断と治療について日本消化器病学会の肝硬変診療ガイド
ライン2015の内容を中心に概説する。
演題2
新規難吸収性抗菌薬概要
岩佐 元雄 先生
三重大学 消化器・肝臓内科 病院教授
肝硬変における肝性脳症の病態モデルや肝性脳症を来した患者の観察から種々の
脳症誘発因子が推定されているが、現在もアンモニアが最も重要な要因であること
に疑いはなく、肝性脳症の治療戦略としてアンモニア対策は欠かせない。
本邦においては硫酸カナマイシン、硫酸ポリミキシンBといった腸管非吸収性抗菌
薬によるアンモニア産生菌の抑制が試みられているが、長期の使用に適してはおら
ず、合成二糖類で改善が得られない難治例に投与するのが一般的である。
海外では、この目的でフラジオマイシン(ネオマイシン)が用いられてきたが、
1985年にリファマイシン系抗生物質であるリファキシミンがイタリアで承認されて
以来、リファキシミンの肝性脳症に対する有効性を示す成績が次々と報告され、最
近では2年間という長期の安全性も示され、欧米を中心に顕性脳症の再発リスクを抑
制する薬剤として高い優先度で使用されるに至っている。
本セミナーでは、リファキシミンの臨床効果、海外における位置づけを述べ、近
日使用可能となるリファキシミンを基軸とした肝性脳症治療戦略について考えてみ
たい。