グリーンサイエンス研究センター

施設見学
グリーンサイエンス研究センター
担当者:澁谷博孝、塩見浩人、菊田安至、大橋一慶
田村 豊
場所: 33 号館(グリーンサイエンス研究センター)
概要
福山大学“グリーンサイエンス研究センター”は、文部科学省の私立大学学術研究高度化推進
事業である「ハイテクリサーチセンター整備事業」に基づき、平成 16 年 4 月に設置された研究施
設で、主に 2 つのプロジェクト「環境モニタリング・負荷軽減の技術開発」及び「グリーンケミ
ストリーに基づく食品素材・医薬品の開発」のもと、多くの大学教員、大学院生、企業の研究員、
博士研究員(外国人を含む)等が参加して、活発に研究を行っています。本施設見学では、中高
生が、最先端の研究が行われている研究施設の設備を見学すると共に、その中で行われている研
究の一端に触れることにより、理系分野の研究に対する理解を深めることを図った。
写真 1 グリーンサイエンス研究センター(33 号館)
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見学内容
(1)施設見学
グリーンサイエンス研究センター(33 号館)
は、環境負荷物質の定量、遺伝子解析、生体成分
分析、生体成分の分離・精製など、新しい研究分
野“グリーンサイエンス”の研究展開に求められ
る最新鋭の設備と分析機器を導入しています。そ
写真 3
れら設備・機器類は、高価であるため多くの研究
者が共同で利用できるようになっています。
遺伝子組換え植物温室前
その他、動物飼育室、細胞培養室、遺伝子解析
まず、全体説明をした後、共同利用施設の見学
室の見学を行いました。
を行いました。写真 2 は質量分析室内の風景です。
質量分析装置とは、その名の通り、化合物の質量
(2)研究室見学
を測定する装置ですが、研究目的に合わせて当施
設内には 4 種の機器が導入されています。それら
引き続き、グリーンサイエンス研究センター内
の 2 つの研究室の見学を行いました。
について、機器を目の前にして簡単に原理を説明
1 つ目は、生理活性解析研究室で、「ハムスタ
した後、どのような目的で使用されているのかの
ーの冬眠調節機構解明と脳低温治療法への研究
説明を行いました。
応用」を主な課題とした研究室です。脳卒中など
の脳虚血疾患や頭部損傷に対する低温療法、臓器
移植あるいは心臓手術など、体温を低下させるこ
とは臨床的にも極めて重要な治療手段です。しか
し、実際には体温を低下させることは様々な制約
や問題を抱えています。そこで、冬眠する哺乳類
であるハムスターの冬眠調節機構を解明するこ
とにより、体温調節を必要とするヒトに対する
様々な治療法への応用を目指した研究を行って
写真 2
質量分析室
います。
また、当研究所内には遺伝子組換え植物の栽培
に必要な P2 及び P1 基準(外部環境への影響を遮
断するために設けられた基準)に対応した温室、
環境負荷物質(ダイオキシン等)を取扱うための
前処理室等、厳重に管理された施設があります。
残念ながら、その施設内の見学はできませんでし
たが、遺伝子組換え植物温室前では、内部写真の
パネル等を用いた説明を行いました(写真 3)。
写真 4
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冬眠するハムスター
今回の見学では、パネルを用いた簡単な説明の
後、冬眠したハムスターや、その脳波等の遠隔解
析装置、及び昼夜の長さを含めた環境設定が調整
可能な生体リズム解析室内部の見学を行いまし
た。
写真 6 顕微鏡で見たガン細胞
に売られているジャムゥ(ジャワ人の伝承薬で日
本の漢方薬のようなもの)パッケージを見ながら
簡単な説明を行った後、薬用植物から活性物質を
写真 5
冬眠したハムスターを手に説明
分離する操作の流れを見学してもらいました。
もう一つは、創薬シーズ解析研究室で、「熱帯
薬用植物由来の新規創薬シーズの探索」を主な課
題とした研究室です。インドネシアで伝承されて
いる民間薬に用いられる様々な薬用植物から、ガ
ン細胞(写真 6)を用いた細胞毒性試験や、抗酸
化活性等の様々な活性試験を指標として、医薬品
の素材となる化合物を探す研究を行っています。
今回の見学では、パネル及び、インドネシアか
ら持ち帰った様々な乾燥薬用植物や、現地で実際
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写真 7
植物エキス調製の説明
感想
◆中学生の感想
・よく分からない機械がたくさんあっておどろきました。
・ハムスターを人工的に冬眠させていたのがすごかったし、とても感動しました。
・とってもハムスターの臭いがきつかったです。でも、とても可愛いなあと思いました。
・見た事のない機械がたくさんあったし、その事についての説明も難しかったけど、一番興味が
わいた。
・口の中のガン細胞を見て、下に沈んでいるのは黒く、上に浮いているのは、白っぽい色をして
いるんだと知って驚いた。
・夏なのにハムスターが冬眠していたので、薬でこんなこともできることを知ってすごいなあと
思いました。
・初めて実験室を目にして、すごいと思った。薬学にもっと興味がもてた。ここで実験してみた
いと思った。
・ハムスターが冬眠しているところをさわってみて、冷たかったのが驚きました。
・たくさんの機械があったり、どんな勉強するのか知ることができたのでよかったです。
・きれいだった。おもしろそうな機械がたくさんあった。ハムスターがかわいい。
・人工的に冬眠させることができると知って少しびっくりしました。
・冬眠するハムスターや遺伝子を組換えた植物などがあって、おもしろかった。
・ダイオキシンの研究やハムスターの冬眠を見てこんな研究をして薬などをつくることが分かっ
てよかったです。
・いろいろな所で、いろいろな分野のものを見れて良かったです。
・ダイオキシンの研究に1億円以上かけることがびっくり!!
・ハムスターは奇妙だった(笑)ガン細胞とかが面白かった。
・動物がこわかった。近づけないでほしい。
・バイオテクノロジーって素敵◇やってみたいなと思う。
・実際の実験室に入ったり内容を詳しく知ることができた。
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◆高校生の感想
・初めて動物の冬眠が見れてとても興味を持ちました。
・色々な機械がありどれも初めて見るものばかりで、同じものを測るだけでもこんなにたくさん
の機械があることを知りました。
・ハムスターの冬眠室やいろいろな実験器具が見れてよかったです。
・興味がわいてくる実験や研究ばかりだったので聞いたり見たりして楽しかったです。
・冬眠しているハムスターは冷たくてびっくりした。
・色々な機械をみることができておもしろかった。
・実際に研究室の中を見れたり、顕微鏡を見れたりして楽しかったです。
・インドネシアの薬の効用を表す袋が面白くて分かりやすいものだなと思いました。
・移植のための研究がすごかったです(脳を冬眠のような状態にする)。
・遺伝子組換え植物とかどうして厳重に管理されるのかなと思った。
・実際の大学の施設を見て回ることができてよかったです。
・遺伝子組換え植物には悪いイメージしか持ってなかったのですが、ダイオキシンが発見できる
ものも研究されていると聞き“理科”はすごいなと思いました。
・専門的な設備が見れてよかった。
・実際にガン細胞をみることができてよかったです。
・現在の地球についていろいろと考え、毎日研究されていることを知って、私もこんな勉強して
みたいなぁと思っています。理系選択者にとってすごく良いものでした。
・冬眠中のハムスターがかわいらしかったです。
・最先端の研究を見ることができて、とても良かったと思います。
・卵細胞には感激しました。
・遺伝子組換えの研究の部屋やラット・マウスの研究、質量をはかる場所などいろいろに行けて
よかった。
・ハムスターの脳の低温の実験がすごかった。
・とてもきれいな建物だった。
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◆担当者の感想(大橋一慶)
施設見学は、長い移動距離があり時間も限られていたことから、暑いなか、見学者にとっては少
し大変そうでした。グリーンサイエンス研究センターの見学内容が「大学における最先端研究」に
関するものであったため、特に中学生には難しかったかもしれませんが、上記の見学者の感想を読
むと、内容はともかく、少しは興味を持ってもらえたことが分かり、安心いたしました。しかし、
まだまだ改善の余地は多く、今後の検討課題としたいと存じます。
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