トヨタ 自動車が取り組む 新しいWEBコミュニケーションの 形とは

トヨタ自動車株式会社
e-TOYOTA 部長
友山茂樹氏
1981 年トヨタ自動車(株)入社。生 産 技
術部、FA システム部、生産調査部、国内
企画部を経て、2000 年 GAZOO 事業部部
長、E コマース / 車 情 報 サイト『GAZOO』
を立ち上げる。2002 年 e-TOYOTA 部部長、
トヨタのインターネット戦略を統括しつつ、
第二世代テレマティクス『G − BOOK』を
立ち上げる。2003 年トヨタモーターアジア
パシフィック(シンガポール)に出向し、ア
ジアにおける CRM 戦略、e-CRB を確立。
2004 年帰 任しトヨタ自動車 e-TOYOTA 部
長に復帰。現在は GAZOO、G-BOOK 事業
を運営するデジタルメディアサービス ( 株 )
の代表取締役社長も兼任。
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CRM から CRB へ !
トヨタならではの一歩踏み込んだ Web 戦略
WEB STRATEGY(以下、WS) トヨ
期待されているのでしょうか。
のカタログ請求やお問い合わせなどへの
対応ですね。いわゆる BtoC の情報サー
友山氏 まずは toyota.jp ですが、これ
Web というメディアもしくはツールを
ビスです。ただ、当社が考える『ユー
は明確にプロモーションを主要な目的と
どのように位置付けて活用しているの
ザー・コミュニケーション』は、さらに
して運営しており、コンテンツの役割と
か。
まずはその点からお聞かせください。
一歩踏み込んで CtoC、
つまりコンシュー
しては、最終的にはコンシューマーが購
マー同士での情報交換が行える場の提供
入にいたるまでのプロセスを意識してい
友山氏 たとえば 10 年前と比較して、
も考えています。これに対して『CRM』
ます。当社のビジネスにおいては、トヨ
コンシューマーの方々がインターネット
は、当社の自動車製品のオーナーを意識
タ自動車はマニュファクチャアリングと
を利用する機会は劇的に増加していると
したものです。今回『レクサス』におい
して存在しており、販売はディーラーが
いえるでしょう。それに伴い、Web コ
てより明確に打ち出したブランド戦略で
担うもので、それぞれのビジネスは明確
ンテンツが果たす役割も人々のライフス
すが、レクサスオーナーだけでなく、す
に区別しています 2 。マニュファクチャ
タイル全般に及ぶほど、広範囲なサービ
べてのオーナーに対してよりきめ細やか
アリング、
ディーラー、
そしてコンシュー
スを展開する必要性があると思います。
なサービスを提供していくために Web
マーという三者で成り立つわけです。し
ただし多様なサービスを単に Web で展
を活用することで、さらに “ オーナーさ
たがって toyota.jp の役割としては、強
開するというのでは、コンシューマーの
まとの長期的な関係を築いていく ” とい
力なプロモーションをコンテンツとして
そこで当社では、Web の役割を 6 つ
に分けて考え、それぞれに必要な機能・
う目的をもっています。その意味では
展開しつつ、購入プロセスとしてコン
CRM ではなく『CRB』(B=Building) と
シューマーをディーラーへとつなげる機
も呼んでいます。
能が主要なものとなります。
WS
現 在 御 社 で は「toyota.jp」 や
広報活動を主体としています。基本的な
「toyota.co.jp」
、
「GAZOO.com」 な ど 複
会社情報をはじめとして、IR はもちろ
toyota.co.jp のほうは、企業としての
サービスを展開しています 1 。ひとつ目
トヨタ自動車が取り組む
新しいWEBコミュニケーションの形とは
昨年度売上高 9 兆 2,183 億円を計上する日本を代表する
グローバルカンパニーであるトヨタ自動車。日本ブラ
ンド戦略研究所による日本の有力企業約 250 社の Web
サイトの価値測定 (2005 年度 ) では、トヨタ自動車の
Web サイトが同社の売り上げに貢献した金額は 868 億
円。3 年連続でのランキング 1 位を獲得している。
トヨタでは、2002 年 1 月に IT を活用したマーケティ
ング戦略を統括する組織として『e-TOYOTA 部』を設
立。前身は同社のコンシューマー向け総合サービスの
新しいビジネスモデルを立ち上げた『Gazoo 事業部』
。
e-TOYOTA 部では Gazoo だけでなく、IT を活用したあ
らゆる情報提供サービスを統括・管理するという目的
と、総合的な CRM を目指すものだ。
世界に君臨するトヨタ自動車の企業パワーの底流には、
徹底的にムダをなくすという基本思想をもったトヨタ
イズムが流れている。この思想は e-TOYOTA 部の活動
にどう生かされているのだろうか。e-TOYOTA 部長で
ある友山茂樹氏にお話をうかがった。
ういった役割を持ち、どのような成果を
タ自動車が展開するビジネスにおいて、
理解が及ばない可能性があります。
リーディングカンパニーの WEB 戦略に迫る
数のサイトを展開していますが、これら
のサイトや各コンテンツは、それぞれど
は『プロモーション』
。商品を中心とし
て周辺サービスまでを Web を通じてプ
ロモートしていくというものですね。次
に『ユーザー・コミュニケーション』
。
これも重要ですね。そして『IR』
。企業
1
トヨタ自動車がWebに与える6つの役割
としてのスタンス、環境への取り組みな
プロモーション
商品を中心として周辺サービスまでを Web を通じてプロモートしていく
ども含めての情報公開。また『e コマー
ユーザー・
コミュニケーション
一般消費者からの対応。いわゆる BtoC の情報サービス。さらに、コン
シューマー同士での情報交換が行える場の提供という CtoC も含む
IR
企業としてのスタンス、環境への取り組みなども含めての情報公開を行う
e コマース
GAZOO.com などで行っている自動車関連商品の販売など
ビスを行う『CRM』を機能的に展開す
オペレーション・
リンケージ
パートナー企業も含めてグローバルにオペレーションを共有するための
ネットワーク
るという役割もあります。
CRM
顧客 ( オーナー ) へのきめ細やかなサービスを行う。CRB とも言う
ス』やパートナー企業も含めてグローバ
ルにオペレーションを共有するための
『オペレーション・リンケージ』もあり
ます。さらに顧客へのきめ細やかなサー
WS いまおうかがいした 6 つの役割の
トヨタ自動車が Web を使って展開する業務、サービスの 6 つの方向性
中で『ユーザー・コミュニケーション』
と『CRM』とでは、どのような違いが
あるのでしょうか。
友山氏 『ユーザー・コミュニケーショ
ン』は、具体的には一般消費者さまから
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トヨタ自動車と
ディーラー各社の役割分担
上記の理念から、トヨタ自動車のサイト
では直販は行わず、トヨタ自動車に興味
をもったユーザーをディーラーへ橋渡し
する役割に徹している
トヨタ自動車
マニュファクチャアリング
明確に区別
ディーラー各社
セーラー
文 = 仲町六朗
撮影 = 橘田龍馬
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