SOLIDWORKS アドイン電磁場解析 EMS による 非線形ローレンツ力

SOLIDWORKS アドイン電磁場解析 EMS による
非線形ローレンツ力駆動型線形動作電磁弁の解析
導入先
Massachusetts Institute of Technology | Department of Mechanical Engineering (ア
メリカ)
解析タイプ
静磁界
出力結果
磁束密度(テスラ)、ローレンツ力(N)
モデル
ローレンツ力を利用する線形動作電磁弁の解析を行いました(Figure 1)。
Figure 1 電磁弁。右図は全体図。左図は断面図。
Figure 1 の電磁弁は四角柱(銀色)の磁石、コイル(銅色)と鉄でできた磁経路(金色)から構
成されています。コイルは中心円筒に設置されたベアリング上をスライドする巻型に巻かれてい
ます。そのため、ローレンツ力によりコイルは円筒軸方向に移動できます。
解析目的
本解析はコイルにかかる力と電流の非線形関係に対する EMS の解析能力を検証することを目
的としています。上記のモデルにおいて、電流密度が小さい場合(106 A/m2 以下)にはコイルに
かかる力は実験的にも電流と線形関係にあることがわかっています。しかし、電流密度が大きく
なるとコイルが作り出す磁場の寄与が大きくなり、力と電流の関係が線形ではなくなります。
解析
有限要素法はかなりの計算リソースと計算時間を必要とするため、解析に影響しない部分を取
り除くことが重要となります。このモデルでは Figure 2 のように 25mm の厚さにスライスしたモデ
ルで解析を行います。例えばこの簡略化したモデルが全体のコイルの 10%しか含まない場合に
は、計算結果を 10 倍することでコイル全体にかかる力を求めることができます。
Figure 2 解析用に簡略化したモデル
また、電磁界解析ではモデルを Figure 3 のように空気層で囲む必要があります。これは磁場が
遠方ではほぼ 0 になるといった境界条件を利用するためです。
Figure 3 空気層
磁束の向き等の拘束条件を設定して、最後に磁経路の鋼鉄に対して BH カーブを設定する必
要があります。実際の電磁弁では 1018 鋼鉄(低炭素配合)が利用されます。1018 鋼鉄の BH
曲線は Figure 4 に示されます。
Figure 4 1018 鋼鉄の BH カーブ
解析結果
コイルに流す電流を大きな負の値から大きな正の値まで変化させてコイルにかかる力を解析し
たものを Figure 5 に示しています。電流密度が大きくなると実験的にも観測される非線形性が
計算されていることがわかります。このように EMS では電流と力の全体的な非線形性を正しく解
析することができます。また、Figure 6 には実験値との比較を示しています。Figure 7 ではコイ
ル電流が磁束密度に与える影響を確認しています。左図と右図はそれぞれコイル電流がない
状態とコイル電流がある状態の磁束密度を示したものです。コイル電流が磁束密度の流れに大
きく影響していることがわかります。
一般的には電流と力の非線形性は望ましくなく、排除したい現象となっています。EMS を利用
することにより、この非線形性を評価することができるため、最小化された非線形性を持つ設計
の作成や検証が可能になります。
Figure 5 コイルの電流密度と力の関係
Figure 6 コイルにかかる力と電流の大きさの関係(実験(赤)、EMS(青))
Figure 7 モデル断面の磁束密度(コイル電流無し(左図)、コイル電流あり(右図))