「人身傷害補償保険」

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人傷保険の請求方法には、先に人傷保険金全部ま
たは一部を取得したうえで加害者に損害賠償金残
額を請求する方法(人傷先行または自己過失分請求)と、
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「人身傷害補償保険」
加害者から損害賠償金を取得した後に人傷保険金を請求
する方法(賠償先行)があります。ただし、自己過失分請
求ができない約款もあります。
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ここ数年、被害者に過失がある場合、被害者は人
傷保険金と損害賠償金を合わせていくら取得でき
るか、人傷先行の場合、人傷保険会社は、どの範囲で損
害賠償請求権を代位取得するかが議論されてきました。
人身傷害補償保険とは、被保険者が自動車の運行
この点、人傷先行の場合につき多数の判例が訴訟基準差
等に起因する急激かつ偶然な外来の事故によって
額説をとり(東京地判平19.2.22、東京高判平20.3.13等)
、
被った損害について、責任の確定や過失割合の決定を待
請求権代位につき保険法が差額説を採用したことから、
たずに、保険契約(約款)上の損害額の算定基準により算
人傷先行の場合には、
「人傷保険金は、損害額のうち、被
定された金額が支払われる保険です。現在、任意保険中
害者の過失割合に対応する損害部分(加害者に損害賠償
の人傷保険付保率は80%を超えています。人傷保険は各
請求できない部分)から優先的に充当され、被害者は最
保険会社ごとに約款が異なっており、保険法施行により
終的に、損害賠償請求における総損害額と同額を取得で
約款が大きく改訂されました。無保険車傷害保険が特約
き、人傷保険会社は被害者の権利行使を害さない残額(過
ではなく、完全に人傷保険に組み込まれた約款もあり、
失相殺される部分を超えた、被害者が加害者に損害賠償
今後もさらなる改訂が予想されます。したがって、適用
請求できる部分に充当される額)についてのみ損害賠償
される約款を直に確認されることを強くお勧めします。
請求権を代位取得する。
」との訴訟基準差額説で定着した
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被保険者については、約款によって、①記名被保険者
と思われます。また、前記3の「裁判で認定された金額に
とその一定の親族(配偶者、同居の親族、別居の未婚の子)
よる」と規定した約款では、人傷先行・賠償先行のいず
及び②被保険自動車の搭乗者等とするものと、②に限定
れでも被害者の受領合計額が同一になりました。
しているものに分かれます。ただし、いずれにおいても
近時、人傷先行で人傷保険会社が自賠責保険金を回収
特約で被保険者を限定または拡大できます。
した場合、被害者の総損害額のうちどの部分に充当され
るかにつき議論がされていますが、この点につきまして
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上記①の被保険者の場合、予想を超えたリスクを
は、赤い本2011年版に森健二裁判官の論文が掲載されて
排除するために免責事由として搭乗自動車に一定
います。
の限定があります。約款によって異なりますが、①二輪
損害賠償債務の遅延損害金への充当問題、費目拘束問
自動車及び原動機付自転車、②記名被保険者及びその家
題、被保険者死亡の場合の相続財産性問題等、人傷保険
族の所有自動車・常時使用自動車等が除外されています。
に関しては今後も議論が続くものと思われます。
また、被保険者の故意・重過失、無免許運転、薬物使用
運転、酒気帯び運転等、傷害保険一般の免責事由もあり
ます。
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人傷保険の特徴は、まず、被保険者の過失の程度
を問題としないことです。また、保険金は実損て
ん補方式によって支払われますが、原則として各保険会
社の支払基準(人傷基準)による支払です。ただし、加害
者に対する判決または裁判上の和解が存在する場合には、
裁判で認定された金額によるという約款もあります。ま
た、保険金を支払った人傷保険会社は、被害者の加害者
に対する損害賠償請求権を代位取得します。
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(東京弁護士会 垣内 惠子
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