福島の原発事故被害者を訪ねた海外活動家のコメント

福島の原発事故被害者を訪ねた海外活動家のコメント
フランス
ジャン-フランソワ・ジュリアード (グリーンピース・フランス 事務局長)
「原発事故の被害者に会い、証言を直接聞くために福島を訪れました。福島で何が起きたかを語り続け、し
っかりと心に留め置くことは、環境NGOの義務だと感じています。お会いした福島の方々が何度も『事故前
には、こんな事態が起きるとは想像もしなかった。原発の技術は 100%安全なので心配は無用だと言われ
てきた』と話すのを聞きました。これは今、フランスをはじめヨーロッパ各地で語られていることと全く同じで
す。福島の人々の声にもっと耳を傾け、老朽化した原発の延命ではなく、自然エネルギー利用へと今こそ
舵を切るという、フランス国民のために正しい決断をすることをフランソワ・オランド大統領に呼びかけます」
ドイツ
マーティン・ドーナット (ドイツ、リュッホ=ダンネンベルク 地方議員)
「もっとも印象に残ったことは、人々が電力会社と政府を信頼することができず、自分たちで何とかせねばと
奮闘し、NGO からの支援を緊急に必要としているということです。見せかけの「除染成功」のもとに、被害者
たちは汚染が残る地域への帰村を促されています。子どもたちは放射能に汚染された地面の上で遊び、除
染作業は適切に行われていません。『チェルノブイリから学べなかった。原発は動かすことはできるが、(事
故が起きれば)止めることはできない』とお話を伺った農家の方が言いました。悪いのは市民ではなく、技
術です。意図せずドイツを脱原発に導いた日本の方々の苦しみを、ドイツに持ち帰り伝えたいと思います」
インド
スンダラジャン・ゴマティナヤガム (インド、クダンクラム原発反対活動の中心人物)
「Idinthakarai での反原発運動は今日、インドでもっとも重要な戦いであると認識されました。なぜでしょうか。
わたしは福島原発事故に心からの感謝を述べたいと思います。数年前、インドのような国と比べれば格段
に発展している日本でさえ深刻な事故が起きるという事実に世界は気づかされました。私の地元の人々も
例外ではありません。事故により重篤な被害を受けながら、他の方法では不可能だった気づきを与えてく
れたということに、感謝します。母国に戻ったら、原発に反対を続ける地元の人々に、福島の人々の粘り強
さを伝えます。福島は私たちにとって一つのお手本でしたが、今回の訪問を境に、それ以上の意味をもつよ
うになりました」
サティヤジット・チョヴァン (インド、ジャイタプール原発反対活動の中心人物)
「インドのジャイタプール原発に反対する活動家の一人として、福島を訪れ被害者の証言を直接聞く機会は、
非常に意義深いものです。被害者の苦悩に触れ、母国に持ち帰るために参加しました。インドと日本の間
には多くの違いがありますが、故郷の土地との結びつきの大切さは理解できます。しかし、どうしても理解
できないのは、日本の政府が他国に原発を売ろうとしていることです。日本がすべきは、本質的に危険な原
発という技術から世界を引き離すことであるべきです」
ポーランド
アンジェイ・スラヴィンスキ (観光関連業、地元の反原発運動のリーダー)
「すべてが驚きの連続でした。報道に目を配り、数回の来日経験もありましたが、福島の方々との直接の対
面によって私の考えはより明確になりました。お会いした福島の方とその家族がどのような苦しみを経験し
たか、今の私にはわかります。そしてほとんどの方が全く、もしくは非常に限られた支援しか行政から受け
ていません。また、放射線レベルと健康への影響について、行政がいかに間違った情報を人々に与えてき
たかも知りました。そして、現在もそのようなことが続いています。政府が国で最初の原発を建設しようとし
ているポーランドでは、私の村のたった 2 キロ先に予定地があり、私たちはやはり情報操作されています。
福島の状況について、ポーランド政府は、除染はうまく進んでおり、人々は十分に賠償されていると伝えて
いますが、真実ではありません。私と妊娠中の妻、そして地域の人々は、福島原発事故からの教訓「原発
はいらない」に学びます。今回お会いした福島の方々と今後も連帯し、より強く効果的にポーランドでの反
原発を訴えていきます。前双葉町長の井戸川克隆氏を招き、原発がいかに危険かということをポーランド
の大臣や町長らに訴え、双葉町民や福島県の方々がどのような困難を経験したかを共有していただけれ
ば、非常に光栄です」
韓国
ユン・ホセブ (韓国、国民大学名誉教授)
「福島の方々は今も苦しんでおり、健康に生きる権利や、幸せな生活は意図的に壊されています。お会いし
た方々は、韓国の私の家族や友人と何ら異なるところはありません。だからこそ、もし韓国で同じ事故が起
きたら、どのような悲劇が起きるか想像することができます。人々は、困難に直面し、情報は限られ、騙され、
打ち捨てられ、忘れられるでしょう。もし私たちの次の、これから生まれ来る世代が、『原発しか選択肢はな
かったのか』と尋ねることができたとすれば、どうでしょうか。真実から目を背けることは止めるべきです。安
全でクリーンでより安価な他の選択肢が、私たちにはあるのですから」
福島の原発事故被害者を訪ねた海外活動家、スピーカーの略歴
フランス
1) ジャン-フランソワ・ジュリアード、40 歳。グリーンピースフランスの事務局長。 1998 年にアジア担当として国
境なき記者団に加わり、2004 年より調査部長、2007 年より事務次長を務める。2008 年の北京オリンピッ
クの際は開会式ボイコットキャンペーンでは指導的な役割を果たし、点灯式において抗議活動を展開した。
2008 年 9 月に事務局長就任。2012 年 2 月、国境なき記者団を退職、グリーンピースフランスの事務局長
に就任。
ドイツ
2) マーティン・ドーナット 50 歳。父であり祖父でもある。造園家及びセラピストトとしても働く。地方議員として
公職につくリュッホ=ダネンベルク郡ゴアレーベンは、過去 35 年間、高レベル放射性廃棄物深層地質処理
場の設置予定地となっている。反核市民イニシアティブの議長を務める。
ウェブサイト:www.bi-luechow-dannenberg.de。
インド
3) スンダラジャン・ゴマティナヤガム、41 歳。環境運動のメンバー。自身を「いわば常勤の環境活動家であり、
パートタイムのソフトウェアのプロ」と紹介する。タミル・ナードゥ州のカルパッカムとクダンクラム両原発に反
対する活動の最前線で活躍。原発反対を支持する一大市民団結運動に加わり、2011 年の東電福島第一
原発事故に対しても抗議活動に従事。彼は、クダンクラム原子炉に対する最高裁判所訴訟の主要な原告メ
ンバーでもある。インドにおける原子力損害賠償法の遵守を主張。
4) サティヤジット・チョヴァン、41 歳。 エンジニア。ジャイタプールにおける反核運動の発端から活動に従事。
ムンバイに拠点をおき、市民のために、市民とともに活動を継続していた。現在はジャイタプールにある草
の根レベルの原発反対活動グループで、企画動員及びメディア・コーディネーションを担当。隔月に発行さ
れる会報ジャイタプールタイムズの編集者として、原子力の危険性に関し、市民及び意思決定者を啓蒙し
ている
ポーランド
5) アンジェイ・スラヴィンスキ、 54 歳。旅行関連業者及び地域の反原発活動を主導する指導者。彼の住むク
ロコーヴァは新しい原発の設置が検討されている三地域に含まれる。地域の反原発住民委員会をとり仕切
る(http://www.niedlaatomu.pl/)傍ら個人経営のツーリスト牧場を営む。チェルノブイリの管財人訪問を共
同主催したり、デモや会議など様々な反核イベントにも携わった。
韓国
6) ユン・ホセブ、71 歳。グリーンデザイナー及び韓国にある国民大学名誉教授。ソウル大学の芸術学部を卒
業後、15 年間クリエーティブデザイナーとして働く。大学に戻り、その後 18 年間ヴィジュアルコミュニケーシ
ョンについて教鞭をとる。ストップ地球温暖化、ワンマンショー、エブリデ―・アートデ―、エブリデ―・アース
デーなど様々な環境問題を題材として韓国、日本、タイにて多くの展覧会を開いた。福島の原発事故後、自
身の作品を通し、原発のない未来を求めて、社会に積極的にメッセージを送っている (ウェブサイト:
www.greencanvas.com/)。
日本
高田 久代、国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当
大学卒業後、ニュージーランドに渡航し、2005 年より現地 NGO の Zero Waste New Zealand Trust でス
タッフとして勤務。2009 年よりグリーンピース・ジャパンのキャンペーナーとなり、海洋生態系問題や有害物
質問題に取り組み、2010 年 7 月より気候変動・エネルギー担当を務めている。東京電力福島第一原子力
発電所の事故以降、グリーンピースが定期的に実施している福島第一原発から飛散している放射能の実
態調査に携わる。
福島の原発事故被害者を訪ねた各国グリーンピース職員のコメント
ハインツ・スミタル (グリーンピース・ドイツ、エネルギー問題担当)
「私は福島の事故以降、幾度も日本を訪れてきました。ドイツは福島の事故を受け、危険な原発からの脱
却を決めました。私はドイツの多くの人々は日本にとても親しみを持ち、それゆえに事故で苦しむ人々に心
を痛めていると思います。菅野さんとご家族が子供たちを守るために難しい判断を迫られたこと、以前は酪
農をしていた長谷川さんが飯館村から避難する際に牛を処分しなければならなかったこと、有機農家の大
河原さんが『希望』を持つために“えすぺり”という直営所を開いたことをドイツの人々に伝えます。大河原さ
んの人形劇から、彼女が『原発は危険だ』ということを片時も忘れられないのだと感じました。『目を開き、見
えない舞台裏を見てください』と彼女は私に言いました」
ホゼファ・マーチャント (グリーンピース・インド、キャンペーナー)
「インドでの原発推進のロビー活動では以前、『いかに原発が安全であるか』という例として日本がよく挙げ
られていました。私たちの国では“日本”が原発産業の広告塔だったのです。しかし、原発産業はもうそれ
ができなくなりました。今度は『より安全な原子炉を作るために、日本はその教訓から私たちに学ぶ機会を
与えてくれている』と言っています。“安全”という言葉が頻繁に使われます。福島の方々と直接出会った今、
特にこの言葉がとても皮肉に思えます。原発立地周辺で安全が確保されることはなく、原発が本当の安全
性を証明することはできないのです」
イヴォ・ロシュ (グリーンピース・ポーランド、気候変動・エネルギー問題担当)
「私は今回、福島の方々にお会いできたことをとても光栄に思います。私たちはポーランドで原発の建設を
止めるために活動しています。そして私たちの活動の大きな支えとなっているのが原発予定地の住民の
方々です。福島で起こった事故が再びポーランドで起こるようなことを防ぐ唯一の確実な方法は、原発建設
を阻止することです。私は今、原発事故が起きた際に必要な措置を効率よくとることがいかに不可能である
か、行政機関がいかに容易に面倒事を切り捨て、市民感情を操り、重大な危険にさらされている人々を騙
すのかというがわかりました。福島の原発事故被害者の一人が言った『原発産業の嘘に惑わされてはいけ
ない』というメッセージとその背景にある理由を、私はポーランドの人々に伝えたいと思います」
チャン・ダウル (グリーンピース・韓国、気候変動・エネルギー問題担当)
「原発事故をしっかりと制御し国民を守ることのできる政府など、存在しないということを今回の訪問で目の
当たりにしました。韓国は福島から距離が近いにも関わらず、未だに収束しない福島の事故から何も学ぼ
うとしないのはとても残念なことです。それどころか、2035 年までに現在の 23 基から 39 基へと原子炉の数
を増やそうとしています。例えば、8 基の原子炉が建設されようとしているプサン周辺には 343 万人が住ん
でいます。この様な場所で原発事故が起これば、過去に類を見ない過酷な事故となるでしょう。韓国を含む
原発国は、福島の被災者の方々のことを忘れず、そして同じことがすぐにも自分たちにも起こり得るのだと
いう事を決して忘れてはなりません」