シケプリ - Pages Shota.yam

独自試験対策頁
計測通論 A
(講義編)
山中
2010 年 2 月 9 日
1
注意:
このシケプリは平成二十一年度航空宇宙工学科四学期月曜日二限開講本田敏「計測通論 A」の講義内容
に従います。
最新版や他の独自シケプリ、その他雑多な情報はこちら↓
山中の webpage「Pages Shota.yam」:http://shotayam.xxxxxxxx.jp/
2
目次
1
計測システムとは
4
2
単位と標準 (SI 単位系)
4
3
測定誤差と不確かさ
5
4
測定法の分類・信号の選択
9
5
計測システムの静特性・動特性とその記述
9
5.1
静特性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
9
5.2
動特性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
6
負荷効果
19
7
センシング要素
23
7.1
分類法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
23
7.2
具体例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
23
信号要素
41
8.1
信号変換要素…Signal Conditioning Element . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
41
8.2
信号処理要素…Signal Processing Element . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
41
先端計測
46
8
9
3
1 計測システムとは
略。
2 単位と標準 (SI 単位系)
■量の空間 同種の量、つまり一次元線形空間であることが必要。基底が単位となる。物理法則とは量の関係
であり、基底の間の首尾一貫した体系が単位系である。最近では SI 単位系が使われる。
■長さ
metre。真空中光が 1/299792458 秒に進む長さとして定義されている。
歴史…エジプト文明の時代にはものさしがあり、数年に一度の補正義務が存在した。1790 年代には地球
の円周が測られ、メートルが定義された。1875 年にはメートル条約、1889 年にはメートル原器が作られた。
1960 年には 86 Kr の放射光波長、1983 年には光の速度を定義に用いる物理量とした。
■時間
セシウム 133 の固有振動数を元に定義されている。
歴史…水時計から。時間標準として地球の自転、地球の公転と移ってきた。現在はセシウム 133 のスピン方
向変化の固有振動数を用いている。
■温度
水の三重点を元に決められている。
■質量
キログラム原器を元に決められている。
天秤は質量を比較する装置としてかなり正確な装置であるが、両腕の長さが違った場合、誤差が出てくる。
ここで、両腕の長さを l1 , l2 、それぞれにつながれた皿を 1,2 とする。被測定物を 1,2 に載せたときの重さをそ
れぞれ m1 , m2 , 被測定物の真の重さを M とすると、
M l1 = m1 l2
(1)
M l2 = m2 l1
M
m1
=
m2
M
√
∴ M = m1 m2
(2)
(3)
(4)
つまり、両腕の長さの違いは、測定物を 2 回測定することでキャンセルできる。
また、最近は新しい質量標準として電気を使う Watt Balance(ワット天秤) たるものが考えられている。あ
る一定の水平方向の磁場 B の中に、磁場と直交し水平方向に伸びる長さ l、重さ m の導線があるとする。こ
れに電流 I を流して重力とつりあわせるとすると、
mg = BIl
(5)
また、この導線を速度 v で動かすとすると、起電力が生じる。
V = Blv
(6)
mgv = V I
(7)
これらから Bl を消去して
これにより m を測る。
4
3 測定誤差と不確かさ
■誤差
真の値と実測値の差。絶対誤差といわれ、絶対誤差を実測値でわったものが相対誤差といわれる。
誤差には大きく分けて偶然誤差 (TypeA の誤差) と系統誤差 (TypeB の誤差) があり、系統誤差にはさらに
理論誤差 (使う理論が間違えている)、機器誤差 (使う機器が間違えている)、個人誤差 (いつも値を小さめにい
う癖がある等) がある。この章では偶然誤差を扱う。
また、精度は偶然誤差と系統誤差により決まり、前者の精度は精密さ、後者の精度は真度といわれる。後者
の不確かさは校正後の不確かさであり、これは校正時に決められるものである。
■連続量と離散量、確率分布関数 確率分布関数 F (x) とは、ある確率変数が x 以下である確率を表す関数の
ことで、その微分 f (x) =
dF (x)
dx
を確率密度関数という。確率分布関数は確率変数が離散量のとき階段関数と
なり、確率密度関数は存在しない。また、確率密度関数は P (−∞) = 0, P (∞) = 1 を満たす。
■平均値 X1 , X2 , · · · , Xn が n 回の測定値、真の値が θ 、誤差が εi (Xi = θ + εi ) とする。誤差の分布につい
て、次を仮定する。
1. 誤差は互いに独立に分布する確率変数。(誤差の独立性)
2. 誤差は同一の分布に従う。(分布の同一性)
3. E(εi ) = 0(分布の不偏性),V (εi ) = E((εi − E(εi ))2 ) = σ 2 < ∞
1
n
ここで、不偏性と最小分散性の過程より、θ を算術平均
Xi の線形結合で表されることは仮定する。
Y =
n
∑
∑n
i=1
Xi にとるべきであることを示す。まず、θ が
li Xi
(8)
i=1
ここで不偏性より
θ = E(Y )
=
=
n
∑
i=1
n
∑
li E(Xi )
(9)
li θ
i=1
n
∑
=θ
li
i=1
∴1=
n
∑
li
(10)
i=1
また、
V (Y ) =
n
∑
li2 V (Xi ) = σ 2
n
∑
i=1
∑n
つまり、最小分散性を満たすためには、
i=1 li
li2
(11)
i=1
= 1 の条件で
∑n
2
i=1 li
を最小にすればよい。これは li =
満たされる。よって、θ には算術平均を使うべきであることがわかった。
5
1
n
で
■正規分布の仮定と導出
正規分布とは、すべての不偏推定量 g(X1 , X2 , · · · , Xn ) の中で、X が最小分散下
限である分布である。
まず、測定値 x0 , x1 , · · · , xn に対して、確率変数が X0 , X1 , · · · , Xn の n + 1 個ある同時確率密度関数
P (x0 , x1 , · · · , xn ; θ) =
n
∏
f (xi ; θ)
(12)
i=0
を考える。ガウスは「この関数がもっとも高い値をとるとき、それが一番ありうる確率密度関数ではないか」
と正規分布の仮定を読み替えた。いままでは、平均値を「最も確からしい値」として採用してきた。これを最
確値という。それに対して、このガウスの考え方により導き出された一番尤もらしい真の値 θ̂ を最尤推定量
という。さて、この最尤推定値を求める。このとき、確率密度関数は θ で偏微分すると 0 になるはずである。
また、確率密度関数が最大のとき、その対数も最大である。ここで、log f (xi ; θ) = g(x − θ) と表されるとす
ると、
0=
である。(注:g 0 は
dg(X)
dX
n
∑
∂
log P (x0 , x1 , · · · , xn ; θ) = −
g 0 (xi − θ)
∂θ
i=0
(13)
を表す。)
ここで、議論が難しいので、最尤推定値が最確値 (平均値) と等しかったとしよう。このとき θ̂ = x =
1
n+1
∑n
i=0
xi である。このとき、g の性質をいくつかの例から考察する。
• xi = 0 のとき。当然平均値も 0 である。よって (13) 式から
g 0 (0) = 0
(14)
となる。
• x0 = u, x1 = −u, x2 = · · · = xn = 0 のとき。平均値は 0 である。よって上式と (13) 式から
g 0 (−u) = −g 0 (u)
(15)
がわかる。
• x0 = −u(n + 1), x1 = · · · = xn = 0 のとき。平均値は −u なので、
g 0 (nu) = ng 0 (u) (n ∈ N)
ここで u =
1
n
(16)
とすると
1
g 0 (1) = ng 0 ( )
n
つまり
g0
である。ここで g 0 (1) = a とすると g(x) =
(m)
n
=
(17)
m 0
g (1)
n
(18)
a 2
2x
+ C であり、
( n
)
a∑ 2
(n+1)C
P =e
exp
ε
2 i=0 i
(19)
となる。ここで、ε が大きくなると確率は下がるはずなので a は負の数のはずである。ところで、この議論の
∑n
目的は「P が最大になるとき、どのような条件が現れるか」であった。この式をみると、
ば、P が最大であることがわかる。以上より、最小二乗法が導かれる。
(注:この議論が論理的ではないことは自明です。心配しなくてかまいません。)
6
2
i=0 εi
が最小なら
■正規分布 上の a, C を、分散が σ 2 、全確率が 1 になるようにとれば、各々の確率密度関数は
f (ε) = √
(
)
(
)
1
1 ε2
1
1 (x − µ)2
exp − 2 = √
exp −
2σ
2
σ2
2πσ
2πσ
(20)
となる。ただし、µ は平均である。また、µ = 0, σ = 1 の分布を標準正規分布と呼ぶ。
■振り子の周期測定への直線の当てはめの最尤推定
振り子の周期を測る実験において、i 回振れたときの時
刻を ti とする。計測開始時刻を τ , 振り子の真の周期を T , 各計測時の誤差を εi とする。計測データは 2N 個
あるとする。
t0 = τ + ε0
(21)
t1 = τ + T + ε1
(22)
..
.
(23)
t2N −1 = τ + (2N − 1)T + ε2N −1
(24)
これらのデータから T を出すとき、もっとも分散が小さい方法を考える。
1. ti+1 − ti から τ を出すことを 2N − 1 組に対して行い、その平均値を出す。
このとき平均値 T̂ は
T̂ =
2N
−2
∑
1
1
(ti+1 − ti ) = T +
(ε2N −1 − ε0 )
2N − 1 i=0
2N − 1
∴ V (T̂ ) = E((
2.
1
N (ti+N
1
2σ 2
(ε2N −1 − ε0 ))2 ) =
2N − 1
(2N − 1)2
(25)
(26)
− ti ) より τ を出すことを N 組に対して行い、その平均値を出す。
このとき平均値 T̂ は
T̂ =
N −1
N −1
1 ∑
1 ∑
(t
−
t
)
=
T
+
(εN +i − εi )
N
+i
i
N 2 i=0
N 1 i=0
∴ V (T̂ ) = E((
N −1
1 ∑
1
2
(εN +i − εi ))) = 4 2N σ 2 = 3 σ 2
N 4 i=0
N
N
(27)
(28)
3. 最小二乗法より解を出す。
S=
2N
−1
∑
ε2i =
i=0
これに対して
∂S
∂τ
2N
−1
∑
(ti − τ − iT )2
(29)
i=0
∂S
= 0, ∂T
= 0 を解いて、τ, T を出す。途中省略して
V (T̂ ) =
6
σ2
N (2N − 1)(2N + 1)
(30)
が得られる。
3 番は確かに前者二つより小さい。しかし、計算を実際に行うのはかなり難しく、ミスする危険性を含めると、
オーダーとしてさほど変わらない 2 番を用いるのが適当であろう。
7
■制約条件がある最小二乗法
たとえば、三角測量等で三角形のそれぞれの角度を測る場合、角 A,B,C の角
度の測定値が Ai = α + εai , Bi = β + εbi , Ci = γ + εci と表されるとする。これに対して最小二乗法を適用す
る場合は、
S=
n
∑
(Ai − α)2 +
i=1
について
∂S
∂α
=
∂S
∂β
=
∂S
∂γ
=
n
∑
(Bi − β)2 +
i=1
i=1
∂S
∂λ
n
∑
= 0 を解けばよい。
8
(Ci − γ)2 + λ(−π + α + β + γ)
(31)
4 測定法の分類・信号の選択
測定法には直接測定と間接測定がある。直接測定とは基準となる量と直接比べることで、間接測定とは直接
測定で求められた値より計算で求値を出す方法である。間接測定について、この不確かさを用いた値から出す
には次式を用いる。ただし、y = f (x1 , x2 , · · · , xn ) とする。(y が求めたいもの。xi がそれを計算するのに用
いる計測値。)
∆y =
∂f
∂f
∆x1 + · · · +
∆xn
∂x1
∂xn
(32)
∆y を絶対不確かさ、∆y/y を相対不確かさという。
■零位法と偏位法
前者は「基準と同じかどうか」を示すもの。天秤など。後者はそれが目盛りとして出てく
るもの。バネバカリなど。
5 計測システムの静特性・動特性とその記述
ここでは TypeB の誤差を扱っていく。静特性, 動特性とはそれぞれ時間に依存しない、依存する誤差であ
り、大体の場合前者が代数方程式、後者が微分方程式にその影響が出てくる。
5.1 静特性
■一般論
まず非線形性。正規分布を使うとき、Input に対して Output は線形である必要がある。そこで、
非線形な Output は線形にして使う。直線を Output に当てはめるときには傾きと切片を考えなければならな
い。傾きを変える外乱を Modifying、切片を変える外乱を Interfering という。
■個々の事例
• 歯車…過去の信号に応じて Output が変わってくる。これは、歯車がかみ合うとき実際にはピッタリと
は噛合っていなくて隙間があり、その分だけ Output が変化することによる。
• 巻き線を用いた可変抵抗…巻き線の片端に導線を繋ぎ、もう片方の導線を巻き線の中間につけると、導
線間の長さに抵抗値は比例する。しかし、実際は抵抗値は連続的に変化せずに階段関数となり、巻き線
の直径だけ長さが変わると抵抗値が断続的に変化する。よって、完全な「比例」ではなくそこには誤差
がある。
■差動
Output を増幅する方法として差動というものがある。これは周期が違う二つの Input の干渉により
Output をだすものである。
• ストロボによる振り子の周期の測定
振り子の周期が T , ストロボの周期が U として T > U がわかっているとする。ストロボで N 回発光
すると振り子が見かけ上一周期しているとすると
N (T − U ) = T ∴ T =
9
N
U
N −1
(33)
不確かさは
∆T
∆N
=−
T
N (N − 1)
(34)
である。
• サンプリングオシロスコープ
オシロスコープは基本的に波の一周期ずつに掃引するが、その周期があまりにも短い場合は掃引の速度
が追いつかないときがある。そのときはこれを使う。
たとえば、その Input の周期が T だったとすると f (t + nT ) は一定である (n ∈ N)。よって、あるサ
ンプリング間隔 ∆t をとって、時間軸 i∆t のところに f (i(∆t + T )) をプロットすれば、然るべき波形
が得られる。これは、本来 ∆t でデータを読み込むべきところを ∆t + T で読み込んでいるので、測定
機器設計の難易度を落とすことができる。
• ノギス
ノギスの目盛りで 0.1mm を読み取るときは副尺を用いて、その副尺と目盛りがあっているところを探
す。これは、副尺の目盛りが 10mm を 9 等分しているため、本尺の目盛りと干渉するためである。
• 差動ネジ
図1
差動ネジ
G が物体を挟む片方、B がもうひとつの挟む側と繋がっている。また B と C は、互いに図の左右方向
に移動しても互いに回転しない。S1 のネジの刻みは一回転で P1 ,S2 のネジの刻みは一回転で P2 、S1
と S2 のネジの刻みは逆方向についているとする。(例えば、S1 が時計回りで締まるとすれば、S2 は反
時計回りで締まる。)
回転軸が左に進む方向に回転軸を N 回転させたとする。このとき、B と回転軸は相対的に P1 N だけ
進む。また、C は回転軸に対して P2 N だけ戻る。つまり、C は B に対して (P1 − P2 )N だけ左に進む
こととなる。これの優れている点は、細かい刻みを作ることなく、P1 と P2 の差を小さくすれば、回転
軸一回転に対して進みが少ない装置を作れることである。これはマイクロメーターに使われる。
■その他の事例
• 伸びの計測
10
図2
伸びの計測
図3
伸びの計測
1 が被計測物、2,3 が挟むもの、4 が 2,3 をひきつけるバネ 5,6 がダブルエッヂ (角柱) である。二つ目
の図にあるように、ダブルエッジには鏡 7,8 が付いている。
1 が伸びるとダブルエッジが回転し、鏡が回転する。すると鏡に当てられていた光の光路が回転に応じ
て変化する。この光をどこかに投影するとその光の位置が変わるので、それによりエッジの回転角、そ
こから 1 の伸びを計測する。このように、伸びを鏡の回転、光路の変化と変換し、変位を増幅する方法
を光てこという。この方法は、ダブルエッジが二つあるので、1 が曲がった場合も曲がりを相殺できる
というところにある。
• 熱膨張率の計測
11
図4
熱膨張率の計測
図5
熱膨張率の計測
前者の図が元々の熱膨張計測。温度調節した電気炉の中で試験片を膨張率が少ない石英で挟み込み、両
端のマイクロメータで試験片の膨張率を測る。しかし、この試験では石英の膨張がやはり問題となって
くる。これを相殺するのが後者の機構。これでもやはり石英の膨張があるが、中心部以外は相殺され、
中心部は温度管理が行き届いているのでどれだけ石英が膨張しているか計算が可能である。さらに後者
では光てこを用いている (M がミラー。P が支点で回転する。)
• 温度の計測
図6
温度の計測
(A) が元々。X が温度変化すると抵抗値が変わる。Rv を調整して D,C の電位を同じにすると
R1 Rv = R2 X が成り立つ。よって X の抵抗値を測ることができる。しかし、この式では温度変化する
導線の抵抗 r が誤差として入ってしまう。これを補正するために (B) が考えられた。(a),(b) それぞれ
において次式が成り立つ。
r1 + X
Rv + r3
=
R2
R1
Rv0 + r1
r3 + X
=
R1
R2
1 0
∴ X = (Rv + Rv )
2
ただし R1 = R2 とした。この条件がなくとも X は求まる。
• 長さの計測
12
(35)
(36)
(37)
図7
長さの計測 1
W は直線に動く。動くと B の干渉計で長さがわかる。M の Microscope で 0 から例えば 1m まで動く
とき B で真の値がわかる。これでスケールの校正をする。このように基準尺と測定対象を直線上に並
べて動かすと誤差が少なくなる、というのを Abbe の原理という。しかし、これでは W を直線的に動
かすのが難しくなってくる。
図8
長さの計測 2
そこで、エッペンシュタインの原理を用いる。これは図のように使う。標準尺と下の光を見る干渉計は
固定されていて、コーナーキューブと対物レンズのセットが動く。これは後者のセットが標準尺に関し
て傾いたときでも、a が対物レンズの焦点距離と同じとき、正確に測れる。
13
図9
長さの計測 3
これの方がわかりやすい。移動台が θ だけ傾いた場合 C1 を通る経路は 4e1 θ 、C2 を通る経路は 2e1 θ
だけ経路が増える。よって 2e1 = e2 なら誤差が出ない。
5.2 動特性
微分方程式について、1 階と 2 階がある。
■一次系 (1 階) の例 (温度計)
測る温度が TF 、温度計の温度を T とする。TF > T とする。微小時間当たり
の熱の流入量がセンサーの熱エネルギー変化量である。
U A(TF − T )dt = M CdT
(38)
ただし U : [W/(m2 · K)] を熱伝導係数、A : [m2 ] 実効面積、t : [s] 時間、M : [kg] センサ質量、C : [J/(kg · K)]
比熱、dT : [K] 微小時間 dt の間の温度変化。これを解いて
T = (T0 − TF )e− τ + TF
t
ここで τ =
MC
U A [s]
(39)
を時定数と呼ぶ。
これは入力 x が TF 、出力 y が T であり、
τ
dy
+y =x
dt
(40)
と一般化できる。
■二次系 (2 階) の一般論 az” + bz 0 + cz = x たる微分方程式について。入力 x(t), 出力 z(t) として、一般に
2 階定係数線型方程式の解 z は同次解 (初期条件により決まる過渡成分) と特解 (定常解) に分かれる。工学的
には定常解が必要なので、定常解の考察をする。
14
入力 x(t), 出力 z(t) の関係を L{x(t)} = z(t) と表す。これには線形性と時不変性 L{x(t + h)} = z(t + h)
が成り立つ。x(t) = e−jωt とすると、
zω (t) = L{e−jωt }
−jω(t+h)
zω (t + h) = L{e
ここで t = 0, h → t とおきなおすと
−jωh
}=e
(41)
−jωt
L{e
−jωh
}=e
zω (t)
zω (t) = zω (0)e−jωt
(42)
(43)
ここで出てきた zω (0) を ω の関数としてみて、周波数伝達関数と呼ぶ。尚、一般に入力が正弦波振動のとき
の出力を周波数応答といい、この議論は定係数線形常微分方程式で使える。
■二次系 (2 階) の例 (振動計) 図 10 振動計
図のような状況を考える。重り m が上からバネ k で吊るされていて、下にダンパー c が付いているとする。
箱全体の変位を x、重りの変位を y とする。地震では z = y − x のみしかわからず、x を推測するしかない。
運動方程式は
my” = −cz 0 − kz
0
z” + 2ζωn z +
√
ただし ωn =
k
m, ζ
=
√c
2 mk
ωn2 z
= −x”
(44)
(45)
である。入力 x(t) = e−jωt に対して出力 zω (t) = zω (0)e−jωt として運動方程
式に代入して zω (0) を求めると、
( )2
ω
−
ωn
ω
zω (0) = 2
= ( )2
ω + 2jζωn ω − ωn2
ω
+ 2jζ ωωn − 1
ωn
2
15
(46)
(
|zω (0)| = √(
(
ω
ωn
)2
ω
ωn
)2 (
)2
− 1 + 2ζ ωωn
argzω (0) = arctan (
•
ω
ωn
)2
2ζ ωωn
)2
ω
−1
ωn
(47)
(48)
À 1 のとき
|zω (0)| ' 1
(49)
φ = arctan(0) = π
(50)
z = −x
(51)
これは変位振動計として使える。
•
ω
ωn
¿ 1 のとき
(
zω =
ω
ωn
)2
e−jωt = −
1
x”
ωn2
(52)
これは加速度振動計として使える。
•
ω
ωn
' 1, ζ À 1 のとき
1 −jωt
e
2ζj
1 0
=
x
2ζω
z=−
(53)
これは速度振動計として使える。
尚、加速度計は、ωn が大きいとき、つまり m が小さく k が大きいとき条件が満たされる。これは実際図のよ
うに作られる。
図 11
加速度センサー
16
また、このとき、ゲインが定義されることがあるが、これは次式で定義される。
¯
¯
¯
¯
¯ Z (0) ¯
¯ ω
¯
20 log10 ¯ ( )2 ¯
¯ ω
¯
¯ ωn ¯
ゲインは
ω
ωn
が小さいとき一定値 0(加速度センサー)、大きいとき
(54)
ω
ωn
の対数に比例する (変位センサー)。

1 t > 0
■ステップ関数 しばらく (40) 式について考える。入力としてステップ関数 u(t) =
を考える。
0 t < 0
( )
このとき、t = 0 で y = y0 とすると t > 0 について y = 1 + (y0 − 1) exp − τt が得られる。このカーブは測
定により容易に求められる。
■任意入力 x(t) に対する系の応答
∑
t/∆t
x(t) = lim
∆t→0
{u(t − n∆t) − u(t − (n + 1)∆t)}x(n∆t)
(55)
n=0
は恒等式として成立する。(おそらく、落ち着いて解釈すれば当たり前。ただ階段関数に近似しているだけ。)
これを用いれば、ステップ応答を f (t) として
∑
t/∆t
y(t) = lim
∆t→0
{f (t − n∆t) − f (t − (n + 1)∆t)}x(n∆t)
n=0
∑ f (t − n∆t) − f (t − (n + 1)∆t)
x(n∆t)∆t
∆t→0
∆t
n=0
∫ t
=
f 0 (t − τ )x(τ )dτ
0
∫ t
=
f 0 (τ )x(t − τ )dτ
t/∆t
= lim
(56)
0
ただし、n∆t −−−−→ τ とした。ここでインパルス応答 g(t) = f 0 (t) を定義すると、
∆t→0
∫
∫
t
g(t − τ )x(τ )dτ =
y(t) =
0
t
g(τ )x(t − τ )dτ = (g ∗ x)(t)
(57)
0
(最後は定義。) となる。
■デルタ関数
インパルス応答を出力する入力を考えるとそれは u0 (t) である。これは定義されにくいが次の
ように定義され、デルタ関数 δ(t) と呼ばれる。
∫
δ(t) = 0 t 6= 0
(58)
∞
x(t)δ(t)dt = x(0)
−∞
∫
(59)
∞
δ(t)dt = 1
(60)
−∞
また、インパルス応答では、t < 0 には入力がないので g(t) = 0 となる。これを因果律という。このことから
前節の y(t) について更にいえて
∫
y(t) =
∞
g(t − τ )x(τ )dτ
0
17
(61)
さらに x(t) が t < 0 で 0 なら
∫
∞
y(t) =
−∞
g(t − τ )x(τ )dτ
(62)
が成り立つ。
x(t) = ejωt について y(t) =
∫∞
0
g(τ )ejω(t−τ ) dτ である。ここで y(t) =
G(jω)ejωt として周波数応答関数のようなものを得ようとすると
∫ ∞
g(τ )e−jωτ dτ
G(jω) =
(63)
■周波数応答関数とフーリエ変換
0
が成り立つ。つまり、周波数応答はインパルス応答のフーリエ変換となる。
■ラプラス変換 被っているところは略。つまんでいくと
• L{f (t − τ )u(t − τ )} = e−τ s L{f (t)}
• L {δ(t)} = 1
また、入力 x(t) と出力 y(t) の関係が線形微分方程式で表されるとき、L {x(t)} = X(s), L {y(t)} = Y (s) と
すると、すべての初期条件が 0 のときこれらは
Y (s) = G(s)X(s)
(64)
たる関係で表される。このとき G(s) を伝達関数という。伝達関数はインパルス応答のラプラス変換である。
18
6 負荷効果
例えば、電圧を測るとき、電圧計のせいで元々の電圧と計測時の電圧が変わる。これは計測機器の負荷に起
因するもので、負荷効果と呼ばれる。
■電気的負荷効果
鳳・テフナンの定理から導出されるある 2 端子に対する等価回路の電圧を ET h 、抵抗を
ZT h とする。その端子に計測機器をつなぐとし、その抵抗を ZL とする。RL に流れる電流, 電圧は、
ET h
ZT h + ZL
ET h
VL = iZL = ZT h
ZL + 1
i=
となる。出力が元々の端子間電圧だとすると、VL ' ET h となるのが然るべきであり、そのためには
(65)
(66)
ZL
ZT h
→∞
とすればよい。
■増幅器 図 12 増幅器
わかりやすく変圧器を考えてよい。変圧器のばあい、端子が 4 つ出ているがそれぞれ 2 つずつに鳳・テフナ
ンの定理を用いると図のような等価回路ができる。この等価回路の場合 ZIN をできるだけ大きくしたほうが
負荷効果が小さくなり、また ZOU T をできるだけ小さくしたほうが出力がそのまま取り出せる。
■AC 負荷の例 (回転計)
19
図 13 回転計
tacho generator とも呼ばれる。これは回転歯車が磁石が入ったコイルのそばで回ることによりコイルを貫
く磁束が変化し、それにより起電力が変化するものである。磁束 Φ が Φ = a + b cos mθ(m は歯数) とすると
dΦ
dΦ
=− ω
dt
dθ
= (mb sin mθ)ω
E=−
(67)
= mbω × sin mωt
つまり、起電力の平均値や最大値は ω に比例する。これより ω を測ることができる。また、負荷効果に対し
ては電圧計の抵抗を上げることにより対処できる。
■DC 負荷の例 (抵抗型変位センサー)
図 14
抵抗型変位センサー
20
図の左上のようなものが元々の抵抗型変位センサー。接点を動かせる抵抗の全抵抗値を Rp , 全長を dT , 全
体にかかる電圧を Vs とし、計測器の抵抗を RL , 電圧を VL , 変位を d とする。相対変位を x =
d
dT
で定義する
と、測定器に関するテフナンの等価回路のパラメータは
ET h = Vs x
1
1
1
=
+
RT h
Rp x Rp (1 − x)
1
RL
∴ VL = E T h
= Vs x R P
RT h + RL
x(1
−
x) + 1
RL
(68)
(69)
(70)
ここで計測のために Vs を大きくしたいとする。すると Rp を大きくする必要があるが、こうすると相対的に
RL が小さくなり負荷効果が大きくなってしまう。
■負荷効果による非線形性
非線形性 N (x) は、求める出力 ET h と実際の出力 VL の差として定義される。
R
N (x) = ET h − VL = Vs
ここで
RP
RL
x2 (1 − x) RLp
1+
Rp
RL x(1
− x)
(71)
¿ 1 とすると
N (x) ' Vs
Rp 2
x (1 − x)
RL
(72)
となる。計測装置を作るためには N (x) を小さくしたほうがよい (例えば、線形でなければ正規分布を厳密に
使うことはできない)。この方法としてのひとつの例が図の右上にあるもので、この場合グラフが x が 1/2 で
N (x) = 0 となり、かなり線形性が増す。(右下のグラフ参照。)
■一般の負荷 一般の負荷において電気回路の考えを応用するとき、
• 電圧にあたる量…across variable, effort variable, 位差量,y
• 電流にあたる量…through variable, flow variable, 流通量, ẋ
• 電力に当たる量…energy, power, 作用, y ẋ
と表す。空間全体においてこれらが定義される場合、キルヒホッフの電圧則, 電流則はそれぞれ roty =
0, divẋ = 0 と言い換えられる。以下に例を示す。
位差量
流通量
力
速度
モーメント
角速度
圧力変化
体積
温度変化
体積流率
温度変化
熱流率
また、以下の量も定義される。
21
名前
定義
例
impedance
y
ẋ
R y
ẋdt
抵抗
stiffness
compliance
stiffness の逆数
y
inertance
■インピーダンス行列と 4 端子行列
キャパシタンス
インダクタンス
dẋ
dt
図 15
インピーダンス行列
電気のように位差量と流通量がある場合、これは地震計のように単一入力に対して単一出力があるのではな
く二つの入力に対して二つの出力があることとなる。つまり、図のように I1 , I2 の入力がある場合、E1 , E2 の
出力があるわけで、それらが線形の場合、
( ) (
E1
Z11
=
E2
Z21
Z12
Z22
)( )
I1
I2
(73)
のように表される。これをインピーダンス行列という。尚、ここで Z12 = Z21 , Z12 = −Z21 の場合をそれぞ
れ相反定理、反相反定理という。しかし、実際は E1 , I1 が与えられて E2 , I2 が求められる場合も多い。これ
の場合同様に
( ) (
E1
A
=
I1
C
という行列を考える。これを 4 端子行列という。
22
B
D
)(
E2
I2
)
(74)
7 センシング要素
7.1 分類法
測定対象による分類や入出力に関するエネルギーに着目する分類がある。後者については、以下の表のよう
になる。
エネルギー
例
放射エネルギー
可視光, 赤外光
機械的エネルギー
変位, 速度, 加速度, 圧力, 流れ
熱的エネルギー
温度, 熱流, 熱伝導
電気的エネルギー
電圧, 電流, 抵抗, 誘電率
磁気的エネルギー
磁束密度, 磁界, 透磁率, インダクタンス
化学的エネルギー
化学成分,pH
また、センサーの信号変換による分類もされる。
名前
形式
変更形センサー (modifier)
入力 energy と出力 energy が同一形態。
自己励起形センサー (self-generator)
入力 energy と出力 energy が異なる形態。
変調形センサー (modulator)
入力 energy の他に変調信号が入力される形態。
また、センサーには保存法則、場の法則 (構造形センサー)、統計法則 (熱雑音)、物質法則 (物性形センサー)、
熱平衡現象、輸送現象、量子現象等の物理法則が使われる。
また、大体の場合出力は後で処理がしやすい電気信号になる。電気信号とは電子素子の値が変わる場合が
多く、具体的には抵抗 (resistive sensing elements), 静電容量 (capacitive sensing elements), インダクタンス
(inductive sensing elements), 電磁誘導 (electro-magnetic sensing elements), 熱電 (thermo-resistive sensing
elements), 圧電 (piezo-electric sensing elements), 電気化学 (electro-chemical sensing elements) を変える。
7.2 具体例
7.2.1 抵抗
■変位センサー (ポテンシオメータ) 前節で説明した。尚、図のように回転変位を測るものもある。
図 16
回転変位のポテンシオメータ
■温度センサ 抵抗温度計とサーミスターがある。
23
• 抵抗温度計
金属の抵抗 RT はテイラー展開して
RT = R0 (1 + αT + βT 2 + γT 3 + · · · )
(75)
のように表される。ただし R0 は 0C ◦ での抵抗値。α, β, γ は温度係数と呼ばれる。金属の場合、α に
対して β, γ は小さく、この性質を利用して金属コイルを測温抵抗体として用いる。特に白金は化学的
に安定で再現性がよいため、よく使われる (実際温度計の目盛りの標準は白金の抵抗値となっている)。
図 17 各金属の温度特性
• サーミスター
24
図 18
サーミスター
形は右上のようなもの。基本的にはシリコンでできていて Mn,Co,Ni,Fe 等を不純物として混ぜ、求め
るものを作る。温度特性は
( )
β
RT = K exp
T
( (
))
1
1
RT = R1 exp β
−
T
T1
(76)
(77)
と表される。ただし、K, β は定数で、二つ目の式は T1 のときの抵抗を R1 としたときの表式である。
ただし β は負であり、グラフで表すと図の左上のようになりかなり扱いが面倒である。
• サーミスターの出力の線形化
よって線形化を試みる。
図 19 サーミスターの線形化
図のような場合を考える。RT がサーミスターの抵抗、RL が計測器の抵抗で、Output Voltage の部分
25
が出力信号となる電圧である。ここで計測の範囲を Ta から Tb までとする。それぞれの温度でのサー
ミスターの抵抗値を Ra , Rb とすると
Va =
RL
RL
Vs , V b =
Vs
Ra + RL
Rb + RL
(78)
RL
Va + Vb
Vs =
Rc + RL
2
(79)
となる。ここで
Vc =
となるように RL を定めれば、グラフは直線に近づくだろうと考える。このとき、
RL =
Ra (Rb − Rc ) + Rb (Ra − Rc )
2Rc − Ra − Rb
(80)
となる。
次に最小二乗法を考えてみる。つまり
∫
Tb
S=
Ta
{
RL
− AT − B
RL + RT
}2
dT
(81)
が
∂S
∂S
∂S
= 0,
= 0,
=0
∂A
∂B
∂RL
(82)
を満たすとき、出力が一番直線に近いときの RL と、その出力を Vs で割ったものが一番近い直線の傾
き A と切片 B が求められる。しかし、これは解析的に解けないことがわかる。実際は以下のような数
値積分を考える。
f (RL ) =
RL
RL +RT
とすると、(82) 式は
∫
Tb3 − Ta3
T 2 − Ta2
+B b
3
2
(83)
Tb2 − Ta2
+ B(Tb − Ta )
2
(84)
Tb
f (RL )T dT = A
Ta
∫ Tb
f (RL )dT = A
Ta
Tb
∫
{f (RL ) − AT − B}
Ta
となる。まず A0 , B0 を
Va +Vb
2
RT
dT = 0
(RL + RT )2
(85)
= Vc となるように定める。以降
i
を定める ((85) 式が 0 になった時点で終わりなので、各行程では与
1. Ai−1 , Bi−1 と (85) 式より RL
えられた Ai−1 , Bi−1 において左辺ができるだけ小さくなるように値を求める。十分小さくなった
ところで打ち切る。)
i
と (83) 式,(84) 式より Ai , Bi を求める。
2. RL
を繰り返せばよい。
• 補足 (電子体温計)
26
図 20
電子体温計の回路図
電子体温計では電圧の変化を使わず上のような回路図で動いている。Rx が抵抗温度計。まず、Vc の最
大値を V2 , 最小値を V1 とする。Vc が V1 に達したとき SW1 をつけ SW2 を切ると Vc の電位は時定数
1
Rx C
で上がっていく。次に Vc が V2 に達したとき SW2 をつけ SW1 を切ると時定数
1
R1 C
で落ちてい
く。これを繰り返すと下の図のようになる。
図 21 Vc の変化
この波形の振動数を調べれば Rx がわかり、それにより温度が求められる。
■ストレンゲージ
strain gauge。歪ゲージともいう。金属や半導体で作られる。
図 22
ストレンゲージ
図のような抵抗を考える。A と書かれている断面に電極をつけ、l 方向に電流を流すとする。材料の比抵抗
27
を ρ[Ω · m] とする。この抵抗は
R=ρ
l
A
(86)
で表される。この抵抗の l 方向に力がかかり歪みが生じたとすると、相対変化は
∆R
∆l ∆A ∆ρ
∆ρ
=
−
+
= (1 + 2ν)eL +
R
l
A
ρ
ρ
(87)
となる。ただし、l 方向のひずみを eL , ポアソン比を ν とした。第二項は圧電効果 (piezo-resistive effect) と
呼ばれる。温度一定の場合、第二項も eL に比例し
G=
∆R
R0
e
(88)
は定数となる。これを Gauge factor という。尚、R0 は 100Ω 程度にとられる。
合金の場合、G は温度不変であるが値が小さく、対して半導体の場合、値は大きいが ∆ρ/ρ の温度依存性が
大きいため使いにくい。しかし、下図のような回路を組めば、すべての抵抗が定数倍されても Output の電圧
は変わらず、温度変化が保障され、また変化量も大きくなる。
図 23 ストレンゲージの回路
また、実際のストレンゲージは下図のようにシート状にされて計りたい部分に貼り付けられる。可変抵抗部
分は sin カーブを描いている部分で細かい導体 (半導体) でできている。
図 24
ストレンゲージのモデル
実際の例を見ていく。
28
図 25
ストレンゲージと片持梁
上に 1,3 の抵抗、下に 2,4 の抵抗を貼り付けると 1,3 の抵抗が上がり 2,4 の抵抗が下がるので Output 電圧
は下がる。
図 26 柱
Active axis と力がかかる方向を,1,3 は垂直に 2,4 は平行にすると 1,3 は伸び 2,4 は縮むので 1,3 は抵抗値が
上がり 2,4 は抵抗値が下がるので Output 電圧が下がる。
図 27 回転棒
29
上二つと同様。これら 3 つの例に共通することは、伸びる strain gauges と縮む strain gauges を用いて、
温度変化で全体として抵抗値が変わった場合でもそれが Output に影響しないように工夫している点である。
■熱線風速計 細い抵抗線 (直径 5µm 程度) に電流を流すと温度が上がる。しかし、風が吹くとこの温度の上
がり方は緩やかになる。これは次式のようにあらわされる。
i2 Rw − (Tw − T )(a + bv n ) = Cw
dTw
dt
(89)
ただし Rw :熱線の抵抗、Tw :熱線の温度、T :流れの温度、v:流速、Cw :熱容量、i:熱線を流れる電流、a, b, n:実
験で決まる定数。
具体的な実験方法として、まず熱線に流す電流を一定にする方法が考えられる。しかし、こうすると
dTw
dt
が
値を持ち、時間応答性が悪くなる。そこで、以下のような回路を使う。
図 28
熱線風速計
まず、温度 TW を決め、その温度のときの Rw の抵抗を R とする。この回路を組むと Tw 及び Rw は一定
に保たれる。例えば風がやみ TW が上がったとすると RW が上がり、オペアンプの − の方の電位が + の方
の電位より高くなる。よって回路に流れる電流は減少し、Tw が減少する。この原理により Tw は一定に保た
れ、定電流法より反応性がよくなる。
■光導電効果 CdS などに光を当てると抵抗値が変化する。これを読み取る。
図 29
光導電素子
30
7.2.2 静電容量
図 30 コンデンサーの模式図
コンデンサーは図の場合 C = ε A
d となる。これは図のように、極板間距離がかわる、極板面積が変わる、誘
電率が変わるなどで容量が変わる。
■水位センサー 図 31
水位センサー
同軸を持つ二つの円筒面を極板としたコンデンサーを考える。水位が変わると合成の誘電率が変わるので、
コンデンサーが変わる。
■圧力センサー 図 32
圧力センサー
圧力センサー。左図で上の空間から圧力がかかると極板が変形する。このとき静電容量が変化する。
31
モデルを考えよう。右図において M が変形する極板として、F2 と M で成るコンデンサーを C1 、F1 と M
で成るコンデンサーを C2 とする。また、M の変形を M の平行移動に置き換え、x だけ変位するとする。こ
のとき
C1 = ε
A
A
, C2 = ε
d−x
d+x
(90)
となる。このとき下図のような回路を考えると、
図 33
圧力センサーの回路
電位は
V =
x
Vs
2d
(91)
となる。
■電子機器の操作
実際は以下の回路を使う。
図 34
キャパシタンス測定回路
図のように二つの同じ定電流源を用意する。右の三角のやつで VH まで達したら左のスイッチを下に切っ
て、VL まで下がったらそれを右の三角で感知して左のスイッチを上に切る、ということを繰り返す。三角の
電位は下のようになる。
32
図 35 キャパシタンスの電位変化
A
Cx = ε d+x
とすると、この周波数は f =
d+x
εAI
と表される。つまり、x に対して線形化されている。
7.2.3 電磁誘導
図 36 変位計
図のような場合、
L1 =
L0
,
1 + α(a − x)
で大体近似できる。
33
L2 =
L0
1 + α(a + x)
(92)
図 37
(
図のような回路を組めば V = Vs
L2
L1 +L2
−
1
2
)
変位計回路図
x
= − 2(1+αa)
というように線形化できる。
■差動変圧器 Linear Variable Differential Transformer 図 38
差動変圧器
図のようなもの。コイルの中の磁性体を動かし相互インダクタンスを変化させる。また、V1 , V2 の出力を反
転させて足しているので、出力は V1 , V2 の差となる。よって、交流の振幅は磁性体が丁度 V1 , V2 のコイルの
間にあるときに 0 となる曲線を描く。
34
図 39
電圧の図
これで、変圧器としての役割は果たされる。しかし、これを変位測定器として用いる場合、いまのままでは
振幅しかわからず、符合が反転しているのかがわからない。よって中央からずれた距離の絶対値はわかるが、
どちら側にずれているのかがわからない。これは以下の方法で対処される。
方法 1 (回路図略。) 整流する方法。つまり、V1 の出力は常に正、V2 の出力は常に負となるように半波整流
のダイオードブリッジを組み、その和を出力とすればよい。
方法 2 位相検波器、Phase sensitive demodulator を用いる。これは、参照電圧が正の時は 1、負の時は −1
を入力信号にかけて出力するというもの。これを使うと、参照電圧と入力信号の位相が完全に合うときは出力
は常に正、参照電圧と入力信号の位相が完全に逆転するときは出力は常に負となる。つまり、参照電圧に図の
Primary の電圧、入力電圧に Vout を使えば、ダイオードの半波整流と同じ出力が得られる。尚、最初に示し
た回路図では右にこの方法が成され、右端の出力では半波電圧が得られる。
■ロックインアンプ 図 40 ロックインアンプ
図に示されたもの。P.S.D. を用いる。被測定光にほぼ時間的変動がないとする。被測定光が微弱な場合、増
幅処理などをするとノイズがかなり載ってしまう。そこで、非測定光をチョッパなどで周期的な信号にして、
35
またそのチョッパの周期を電気信号にし、参照電圧とすればよい。
数式的に説明する。チョッパの周波数を fs とする。被測定項を S, ノイズを N とすると、測定信号は
es = S cos 2πfs t + N
(93)
er = E cos 2πfs t
(94)
また、参照信号は、適当な値 E をつかい、
と表せる。P.S.D. の本質は「積」なので、積を考えると
1
1
SE(cos 4πfs t) + SE + N E cos 2πfs t
2
2
(95)
となる。ここで、Low pass filter をこの信号に掛けると周期的に変動する項はカットされ、 21 SE という N を
含まない信号が得られる。
■変位計
図 41 変位計
図 42
電圧の図
36
図のようなもの。変位すると方形波が得られるようになっている (左ではそれがコイル、右ではそれが磁石
によってなされる)。しかし、方形波だけではどちらに移動したかがわからないので、同じセンサーを 1/4 波
長ずれたところにおく。そして S1 が正のときの S2 の変位を記録するようにすると、順方向と逆方向では逆
の動きをするので、見分けが付く。
7.2.4 熱電
■ゼーベック効果
図 43
ゼーベック効果
図のように、異種金属 A,B をつなぎ、その接点をそれぞれ T1 , T2 とすると、
∫
VTAB
=
1 ,T2
T2
(αA − αB )dT
T1
で表される電圧が生まれる。これをゼーベック効果という。法則として以下がある。
1. 電圧は長さや途中の熱分布に依らず、接続点の温度のみに依存する。
2. 間に何かを挟んでも、その間に温度変化が無ければその影響は無い。
3. 上は接続点においても成り立つ。
= VTAC
+ VTCB
4. (中間金属の法則) 図の通り。VTAB
1 T2
1 T2
1 T2
5. (中間温度の法則) 図の通り。VTAB
= VTAB
+ VTAB
1 T2
1 T3
3 T2
37
(96)
図 44 ゼーベック効果の法則
ここで、T1 を 0C◦ にとり、B を白金に取ると、電圧は A と T2 の関数となる。これをプロットすると図のよ
うになる。
図 45 V と T の関係
38
図 46 パイプの温度測定
例として、パイプの温度を調べることを考える。(a) のようにすると T2 の温度がわからず、T1 の温度を測
定することは不可能。(b) だと、これは法則の 3 により (a) と状況が同じになるので同様に計測不可能。(c) に
なって、Control room の温度が計測できれば、計測可能。(d) では室内温度から基準温度との差を計算して
出力を変更している。
39
図 47 走査型トンネル顕微鏡
7.2.5 圧電
圧電効果…力を与えると分極し、電圧をかけると変位が生じるというもの。結晶中ミクロに分極しているも
のが全体の変形でバランスが崩れることにより起こる。水晶やロッシェル塩などが使われる。
力を F , 分極を q とすれば、q = dF となる (d:圧電係数)。これは direct piezoelectric effect である。また
電圧を V , 変位を x とすれば、x = dV となる。これは inverse piezoelectric effect である。ここでの d は
direct piezoelectric effect と同じ係数となる。
この d が一致することを証明する。1 次元で考える。電気系, 機械系の対応として四端子行列が考えられる。
( ) (
S
α
=
D
d
d
ε
)( )
T
E
(97)
ここで E:電場,D:電束密度,T :応力,S:ひずみ,α:電界一定の弾性コンプライアンス,ε:応力一定の誘電率,d:圧電
ひずみ係数である。
初期状態を E = 0 とする。内部エネルギーは
dU = T dS + EdD
(98)
である。(d は微分形式の d。)T, E を独立変数にするためにギプスの自由エネルギー G(T, E) = U −T S −ED
を考えると、
dG = −SdT − DdE
∂G
となる。よって S = − ∂G
∂T , D = − ∂E となる。よって
∂S
∂E
(99)
2
∂ G
= − ∂T
∂E =
∂D
∂T
となり、確かにこれらは同じ値に
なる。これを相反定理という。
■走査型トンネル顕微鏡 仕組みとしては、物体表面に鋭い針をナノ・オーダーで近づけ、物体と針の間を電
子雲を介して流れる電流 (トンネル) を一定値に保ったまま、表面を移動させる。この作動には圧電効果が使
われる (たとえば 0.1V dt で 0.1nm 動く。) これは電流をつかうので絶縁体には使えない。これに対して、電
流の代わりにファンデルワールス力を感知しながら針を動かす原子間力顕微鏡というものもある。これにも圧
電効果を利用した作動方式が使われる (針の動きは傾きとして光てこを用いて増幅される)。
40
図 48
抵抗ブリッジ
8 信号要素
8.1 信号変換要素…Signal Conditioning Element
図のような偏位ブリッジを考える。特に抵抗ブリッジを考えればよい。R2,3,4 は固定で RI がセンシングエ
レメントの入力に正の比例をする抵抗 (RM IN から RM AX まで動く) だとする。ここで条件として RM IN で
ET h = 0 だとすると
となる。ただし、r =
ET h
x
1
=
−
Vs
x+r 1+r
R3
R2 ,
x=
RI
RM IN
(100)
とした。これは r = 1 のとき、x = 1 の近くで傾きが最大となる。
8.2 信号処理要素…Signal Processing Element
例として A/D 変換器を取り上げる。
これには標本化 (一定時間ごとに値を読み取る) と量子化 (一定の間隔で値を読み取る) が必要である。
標本化にはサンプリング定理がある。
信号の最大周波数が f0 だとすると、
∆t <
1
2f0
(101)
のサンプリングで元の信号を復元できる。
量子化の細かさを表すものとして分解能がある。これは「nbit」という表記で 1/2n に信号を分割する。
n = 8, 12, 16 が使われる。量子化の方式には比較方式 (逐次比較型)、積分方式 (二重積分型)、オーバーサンプ
リング方式 (Σ∆ 変調型) がある。順に説明する。
41
図 49 RI に対する ET h の動き
図 50 並列型
■比較方式 (逐次比較型)
与えられた電位が参照電位より高いか低いかを見分けて量子化する。
図で「並列型 A/D 変換器」と書かれているものは R の間から取った電位が上から順に一定間隔で下がって
いる。これらの電位をアナログ入力の電位とコンパレータで比較し、どの二つの参照電位の間にアナログ入力
の電位があるのかを調べる。一度に量子化できるが、8bit でも抵抗とコンパレータを 256 個並べなければい
けないので、かなりかさばる。
42
図 51
逐次比較型
図 52 R-2R ladder
図 53 D/A 変換器
対して逐次比較型は図のようになっている。これは天秤と同じで、まず半分の電位より大きいか小さいかを
調べ、どちらなのかがわかったら更にその領域の半分より大きいか小さいかを調べ、どちら n(ry という方
式。よって基準の電位の半分、1/4,1/8,· · · の電位が必要となるが、これは図 52 のようにして作られる。これ
は A,B,C,D の電位がそれぞれ Vs , Vs /2, Vs /22 , Vs /23 となる回路であり、付け足そうと思えば同様に付け足せ
る。これを実際に組み合わせて使うときは図 53 のような回路になる。
43
図 54
■積分方式 (二重積分型)
二重積分型
図 54 の回路がそれ。これは Vi の電位が正のときのみ使える。まず Vi の方へス
イッチが繋がれると比較器へ流れる電流はグラフのように、丁度
∫
V dt に比例する値となる (オペアンプの使
い方は電気工学通論参照)。そこでこの時間 T が一定値になったときに、今度は −Vs という負の電位である方
へスイッチを倒すと、今度は電流が減っていく。この傾きは Vs に比例する。つまり、T と t の関係より Vi が
図の式のように導かれる。この t を量子化することによって信号の量子化を行うことが出来る。
■オーバーサンプリング方式
図 55 の回路。予測回路とは、メモリーにある信号と入力信号を足し合わせた
ものが出力となる回路である。手順としては、
「前の時刻の信号が入力信号から引かれる → 比較器でその正負
を判別し、正なら 1, 負なら −1 を出す。→ その信号が予測回路で前の時刻の全体の信号と合わされ、その時
刻の信号となる。
」という流れ。わかりやすくいうなら、
「前の時刻の出力より入力信号が大きければ 1 を、小
さければ −1 を前の時刻の出力に付け加える」という考え。このアルゴリズムで出力すると、図 56 のように
なる。しかし、これではあまりにも変化が大きいと出力が「追いついて」いかなくなる。この話は簡単で、一
回入力を積分した後それをデジタルにすればよい。この考え方で書かれた回路が図 57。これは回路の重複す
る部分を省略することで、もともとの回路よりも簡単にすることが出来る。
8.2.1 信号の選択
■同 期 検 波 (位 相 検 波) 基 本 原 理 を 説 明 す る 。例 え ば 信 号 S(t) が S(t) cos(ωt) で 伝 え ら れ て い
る と す る (ω は 既 知)。す る と 、こ れ は 同 一 周 波 数 の 基 準 信 号 R cos(ωt + φ) を 乗 ず る こ と に よ り
(
)
RS(t) 21 cos φ2 + cos(2ωt + φ) となり、Lowpass filter で RS(t) cos φ2 となる。
また、繰り返しで信号が生じる (同一の信号が繰り返して来る) 場合、平均応答法 (同期加算) が使われる。
44
図 55 オーバーサンプリング方式
図 56
∆ 変換でのデジタル変換
図 57 ∆Σ 変換
45
これは、繰り返される信号の平均値をとるものであり、オシロスコープの原理がこれである。
■自己相関関数 (相互相関関数)
信号 y(t) に対して、自己相関関数 Ryy (β)(φyy (τ ) と書くときもある) を次
で定義する。
∫
T0
Ryy (β) = lim
T0 →∞
例えば y(t) = b sin(ω1 t + ϕ) とするとき、Ryy (β) =
0
b2
2
1
y(t)y(y − β)dt
T0
(102)
cos(ω1 β) となる。これに対して次の定理がある。
Wiener-Khinchine の定理 広義定常確率過程のパワースペクトル密度は、対応する自己相関関数のフーリエ
*1
変換である。
∫
∞
Ryy (β) =
φ(ω) cos ωβdω, φ(ω) =
0
2
π
∫
∞
Ryy (β) cos ωβdβ
(103)
0
話を変えてノイズ処理の話。ノイズはランダムであり、信号とは統計的に独立、つまり無関係である。
ここで、信号を S, ノイズを N として、y(t) = S(t) + N (t) を考える。S(t) = b sin(ω1 t + ϕ) であり、N は
[0, ωc ] で flat な white noise とする。
∫
ωc
sin ωc β
(104)
β
0
1
A sin ωc β
Ryy (β) = R(S+N )(S+N ) (β) = RSS (β) + 2RSN (β) + RN N (β) = b2 cos ωβ +
(∵ RSN (β) = 0)
2
β
(105)
RN N (β) =
A cos ωβdω = A
これはつまり β が大きくなるにつれて、自己相関関数にノイズが占める割合が減少することを表す。
9 先端計測
いや、試験にでないっしょ。略。
*1
これは、実際使うとすれば、ノイズをどう扱うかです。white noise の自己相関関数を扱うときはこれを使わなければなりません。
例は直後に書いてあります。
46