第4章 _プレゼンテーション(PDF/967KB)

第4章 プレゼンテーション
1. プレゼンテーションの準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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2. プレゼンテーションを行う際の留意事項・・・・・・・・・・・・・
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第 4 章 プレゼンテーション
国際社会では、プレゼンテーションが極めて重視される。よって、ビッドペーパー(立候補
提案書類)作成後は、プレゼンテーションをいかに効果的に行うかを考える。
国際会議の誘致に多くの成功実績を持ち、かつて IAPCO (International Association of
Professional Congress Organizer) のプレジデントを務めた Jorge Castex 氏は、「プレゼンテ
ーションにはグッドスピーカーが不可欠である」 と指摘している。どのようにしたら良いプレゼ
ンテーションができるのか、参考となる点を下記に示す。
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プレゼンテーションの��
(1) 最初に確認すべき事項
・ プレゼンテーションの日時・会場・広さ、開始時間、持ち時間
・ 利用可能な機材・メディア
・ 選考側の参加者数、参加者の顔ぶれ
・ プレゼンテーション側で出席可能な人数(スピーカーおよび陪席は何名まで可能か)
・ 資料配布の有無(事前および当日)
(2) スピーカーの選択
主催者の中でも著名で、プレゼンテーションを聞く側に対して影響力のある国際経験豊
富な方がスピーカーを担当するのが通例である。JNTO 海外事務所、コンベンションビューロ
ー、PCO(会議運営会社)から成るプレゼンテーションチームを編成して、プレゼンテーショ
ンを行うのも一つの方法である。
その場合には、誰が何を話せば一番効果が高いか、という観点から、事前に役割分担を
明確にしておくことが大切である。たとえば、学術プログラムの説明は主催者の担当とし、ソ
ーシャルに関する部分は他の協力者の担当とする、などの方法が考えられる。担当者・話す
テーマ・時間配分を明記した進行表案を用意して検討する。
プレゼンテーションを受ける側の顔ぶれを意識してスピーカーを決定することも重要であ
る。学術会議の誘致であろうと、通常の学会発表のように、聞く側が同じバックグラウンドを持
った人ばかりとは限らない。
(3) プレゼンテーションの内容
プレゼンテーションは、ビッドペーパーの単なるエッセンスではない。限られた時間内に、
なぜ日本で開催したいのか、開催した場合に会議主催者のメリットとなる点は何か、が必ず
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第 4 章 プレゼンテーション
伝わるようストーリー立てすることが重要である。パワーポイントを使用する場合、スライド割り
表を作成してストーリーを検討するのが通例である。
また、事前に各候補地のビッドペーパーを集めて比較分析し、プレゼンテーションでより
強調すべきポイントを明確に把握しておく必要がある。
最近は、候補地の魅力や学会トップのメッセージを3~5分程度にまとめたビデオメッセー
ジを映写することも増えている。編集面でも技術的にも飛びぬけた水準のビデオを作製して
いる候補地もあり、選考側に与えるインパクトは大である。効果的なプロモーションツールとし
て、積極的に利用していきたい。JNTO では、日本のイメージ画像や PR 用 DVD を提供して
いる。
(4) プレゼンテーションシートの作成
ビッドペーパーと同様、プレゼンテーションシートも視覚的にインパクトのある美しいデザイ
ンが望ましい。ロゴマーク案を作成していれば使用し、ビッドペーパーとの一体感を印象付
ける。
1枚のスライドにぎっしりと情報を詰め込むことは避ける。1スライド1テーマで構成するの
が一般的である。図表やチャートを組み込み、文字量はなるべく減らす。
プレゼンテーションのファイルに動画を挿入することも可能である。ただし、海外で現地機
材を使用する場合、ソフトのバージョン違い等による動作不良が発生することが多いので、
十分な事前検証が必要となる。
(5) 事前の準備
事前に出席者数を把握して、必要な部数のビッドペーパーを用意しておく。
当日のプレゼンテーション資料は、日本以外の国を推すディシジョンメーカーに事前に渡
る懸念があるので、どんなタイミングで、何を誰に配布するのかを慎重に分析、検討した上で
実行する。
また、現地で利用できるオーディオビジュアル機器の種類(PC,ビデオなど)やメディアの
受け渡し手段を事前に確認し、手配する担当者や当日の操作者などを決めて準備する。必
要があれば、機材の持ち込みも行う。
発表用の英語原稿も事前に用意しておく。原稿の作り方は、スピーカーの国際舞台での
経験や好みによっても異なるが、比較的安全なのは、全スピーチを原稿にするというやり方
である。現在はパワーポイントの使用が通例のため、スライドごとにスピーチ原稿を作成する
ことが多い。見て・聞いて・納得するプレゼンテーションとなるよう心がける。
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第 4 章 プレゼンテーション
スピーチ原稿の構成では、次の点を考慮する。
・ 論理を明確に分かりやすく書く。
・ 見やすく大きな文字で書く。
・ ビッドペーパーを補足し、理解を深めるために、具体的な実例を挙げる。
・ データや著名人の言葉を引用し、スピーチ全体をより信憑性のあるものにする。
(6) 事前リハーサル
本番で説得力のあるプレゼンテーションを行うためには、リハーサルを重ねることが不可
欠である。特に複数でプレゼンテーションを行う場合、事前の打ち合わせ程度で本番に臨
むのは、非常に危険である。
多忙な中でも、極力プレゼンテーション担当者全員が集まってリハーサルを行うことが望
まれる。基本的なスピーチマナーの確認はもちろん、タイムキーパーを決めて進行管理を行
いながら、問題点を洗い出しあって精度を上げていく。
出席者からの質問を想定し、回答内容・回答者まで決めた「想定問答集」も英語で用意す
る。スピーチはうまくいっても質問にうまく答えられないと高い評価は受けられない。
Column
キャスティングの妙
ある国際会議の誘致のために、韓国チームが行ったプレゼンテーションに立
ち会う機会を得ました。プレゼンターは 3 人。最初にあいさつに立ったのは地
元首長。次に誘致主体の協会代表が説明。最後には若い研究者が登場しました。
フランスに留学していたとのことで、なんとフランス語で説明を開始。誘致し
ようとしている会議の本部がフランスにあり、公用語が英仏語であることを十
分意識した、心憎い配慮です。
プレゼンテーションの後、おおかたの下馬評を覆して、韓国での開催が決定。
プレゼンターの役割分担の大切さを改めて感じました。
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プレゼンテーションを行う�の�意事�
プレゼンテーションで 100%のパフォーマンスが発揮できるよう、現場でもさまざまな確認
や段取りが重要である。
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第 4 章 プレゼンテーション
(1) 現場でのチェック
海外でのプレゼンテーションは、電気系統の違いなどによるトラブルがつきものだが、本
番会場での準備時間は限られている。短時間にできる限りのチェックを行い、進行時のリス
クを排除する。
・会場備え付け機器の動作確認(PC、プロジェクター、マイクなど)
・持ち込み機材の動作確認(うまく接続しない場合の使用・不使用判断、代替手段)
・選考側の手持ち資料内容の確認、追加資料配布の可否
・スピーカーと機材操作者が別の場合、若干のテストランによりタイミングを確認
(2) 質問には肯定的に答える
スピーチは無事に終えても、質疑応答で適切な対応ができないと評価が低くなる。適切な
応答をするためには、関係者間でブレーンストーミングを行って、想定質問を事前に可能な
限り洗い出し、回答を用意することが必要である。質問に回答する担当者も決めておく。
この回答はできるだけ肯定的で前向きな答えや解決策を提示するものでなければならな
い。質問の中には無理難題もあるが、「ノー」 と言うことは致命的になる恐れがある。その場
合は「ノー」 と言わず、次のように対応する。
・ 直接的な答えは「ノー」 であっても、質問者の意図に沿うような代替案を提示する。
・ 代替案を思いつかない場合には、全力で実現へ努力をすると説明し、切り抜ける。
・ 決定までに数時間の余裕がある場合には、プレゼンテーション終了後にすぐ関係方面
と連絡調整し、前向きの回答を出す旨を説明し、回答を留保してもらう。
Column 当日、なんでもあり
ある国際会議では、プレゼンテーションで使用できるスライドは 5 枚まで、とい
う指示があったにもかかわらず、各スライドから「ワイプ」するような形で、さら
に大量のスライドを見せた国がありました。
もちろん日本は 5 枚の制限を守っていましたが、
アニメーションを重ねることで、
制限枚数内で数多くのアピールができるよう工夫しました。
どの国も誘致には必死で、あの手この手を使ってきます。日本らしさを守りつつ、
相手の手管をうまく利用する臨機応変ぶりも発揮したいものです。
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第 4 章 プレゼンテーション
【参考資料 14】
日本を紹介するプレゼンテーション資料の例
【参考資料 15】
ITS(高度交通システム)世界会議 プレゼンテーション資料
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