アグロバイオテクノロジーコース 1.コースの背景・目的 今やバイオテクノロジーは、人類生存の鍵を握る食糧、医薬等の生産や環境保全のための先端技術 としてその必須性が強調されている。開発途上国において部分的に活用できるバイオテクノロジーも 多いが、基礎理論と農学への応用というセットされた先進国からの技術移転は少ない。よって本コー スで技術者向けの研修を図ろうとするものである。 バイオテクノロジーは生物を有効利用する新技術であるが、本コースでは微生物及び高等動植物を 利用する分野について、理論と応用に関する講義並びに実験技術の実習を行い、開発途上国の研修員 にその大要を習得させる事を目的とする。 2.到達目標 (1)講義、実験実習、研修見学を通じてバイオテクノロジーについての基礎原理について理解す る。 (2)講義、実験実習、研修見学を通じてバイオテクノロジーの全体像と応用について理解する。 (3)微生物研究グループ:微生物のスクリーニング、同定、代謝、遺伝子操作について基礎的な 実験手法を習得する。 植物研究グループ:植物の組織培養、細胞融合、遺伝子・細胞工学、分子マーカーの応用に 関する基礎的な実験手法を習得する。 動物研究グループ:動物の受精、免疫、遺伝子・細胞工学に関する基礎的な実験手法を習得 する。 (4)各国に適したバイオテクニックを選択するための判断能力を習得する。 3.研修内容 (1)研 修 項 目:①講義:バイオテクノロジー概論、遺伝学、生化学、遺伝子工学、細胞工学等。 ②実験・実習:DNA の分離と取り扱い方、遺伝子工学的方法による 微生物の育 種法、動植物の組織培養法 ③研修見学 (2)研修指導法:生化学・遺伝学を包含する基礎的分野の講義及び酵素化学・遺伝子操作・組織 培養・分子育種・生理活性物質生産等に関する実験・実習さらに研修見学旅行 及び討論会等を通じて、微生物及び高等動植物を利用するバイオテクノロジー に関する知識及び実験技術を修得させ、バイオテクノロジーの全体像把握に資 する。講義・実験等は全て英語で実施する。 4.研修実施体制及び運営 (1)コースの運営の仕組み:コースリーダーと協力して、研修実施カリキュラムを策定し、それ ぞれに研修項目(分野)に権威のある講師、指導教官を選定する。 (2)研修指導者:神戸大学大学院農学研究科 教授 青木 健次 (3)研修監理員:日本国際協力センター(JICE)より1名配置。 (4)方 式:外国人受託研修員制度実施要領に基づく国立大学委託方式 1 植物保護のための総合防除コース 1.コースの背景 途上国は、気候変動や天災等に脆弱で、そうした異変による生態系への影響を受けやすい。気候変 動やグローバリゼーションによる物流の加速は病害虫の定着と異常発生をもたらし、農業生産の減少 につながる。農業が主要な産業である途上国においては、これが国民生活の悪化にもつながる。病害 虫被害を減少するための農薬は高価であり、また不適切な使用により、さらに生態系を悪化させてし まうことにもなる。そこで、持続可能な農業を実現するためには、農薬の適正使用による化学的防除、 天敵等を用いた生物的防除、栽培方法を工夫する耕種的防除・物理的防除などの様々な防除技術を組 み合わせた総合防除による病害虫管理のための包括的アプローチが不可欠である。 現在、地球規模の気候変動に伴い、途上国においてもこれら新しい事態に正しく対応することが大 きな課題となっている。本研修プログラムは、グローバルな見通しと人や環境に優しい総合防除の日 本における取り組みを学び、それぞれの国の気候条件や経済・社会システムに適した防除システムを 計画・実践できる人材の育成を目指す。 本研修プログラムは、平成 5 年度から 15 年間にわたり実施されてきた「植物保護のための総合防除 コース」の趣旨を踏襲し、ニーズをふまえて発展的に更新したものである。 2.案件目標及び単元目標 案件目標 植物保護のための総合防除の手法を習得し、安全且つ十分な食料生産及び環境保護に配慮した国 際的、地球規模的側面を含む最近の技術を理解することで、研修員が自国に適した総合防除計画 を策定し、実現することにより、研修成果の実質的な普及へつなげる。 単元目標 (1)総合有害生物管理(IPM、総合防除)を植物保護の現場に普及できるよう、その背景と理論的基 礎および実際を説明できる。 (2)植物病害とその総合防除についてよく理解し、適切な現地指導を行なうことができる。 (3)害虫とその総合防除についてよく理解し、適切な現地指導を行なうことができる。 (4)雑草とその総合防除についてよく理解し、適切な現地指導を行なうことができる。 (5)総合防除における化学的制御およびバイオテクノロジーの応用について理解し、現場におい て指導・解説が出来る。 (6)自国に適した総合防除計画を策定する。 3.研修内容 (1)研修項目: ①有害生物管理の理論と応用にかかわる諸分野の専門家による講義、先進的な基礎研究機関 の視察、および普及試験機関における野外研修。 ②病原微生物の感染機構と防除手法についての講義と討論、および病原微生物の同定と接種 実験、抵抗性の遺伝的解析に関する実習。 ③害虫の発生予察と生物的防除を含む防除手法についての講義と討論、および昆虫飼育と個 体数推定、天敵増殖、抵抗性の遺伝的分析に関する実習。 ④雑草防除の理論と実際についての講義と討論、および雑草の化学的・生態的制御に関する 実習。 ⑤有害生物管理のための化学制御と GMO を含む先進バイオ技術の利用についての講義と討論、 および生理活性物質の合成と生物検定に関する実習。 (2)研修指導方法: 実習(室内実験)を中心に講義・見学・現地指導により病害虫総合防除を指導する。 2 4.研修実施体制及び運営 (1)コース運営の仕組: 神戸大学大学院農学研究科に依頼し研修を実施、運営する。受入関係機関との調整により、 研修カリキュラムを策定し、それぞれの研修項目(分野)に経験のある講師、指導官を選定 する。学外者については、その所属先である関係機関に対し文書により依頼する。実習は、 あらかじめ提示した各種専門テーマにつき希望を取り、それに応じて神戸大学大学院農学研 究科の担当研究室に配属して指導する。 (2)研修指導者(コースリーダー) :神戸大学大学院農学研究科 教 授 竹田 真木生 准教授 前藤 薫 (3)研修監理員(コーディネーター) : (財)日本国際協力センターから1名配置する。 3 JICA研修員受入実績 【アグロバイオテクノロジーコース】 日 程 人数 内 訳 平成16年 3月14日~8月8日 8名 チリ(2) ,エジプト,ネパール, パラグアイ,タイ(2) ,ベトナム 平成17年 3月21日~8月13日 8名 チリ,中国,コロンビア, エルサルバドル,タイ,トルコ, ベトナム,ジンバブエ 平成18年 3月13日~8月5日 6名 ベリーズ,ブラジル,チリ, モーリシャス,ペルー,ベトナム 平成19年 3月19日~8月11日 9名 中国,コロンビア,エジプト, マレーシア,マリ,フィリピン, チュニジア,トルコ(2) 平成20年 3月17日~8月9日 8名 コロンビア,マダガスカル, ミャンマー(2) ,パラグアイ, スリランカ, (2) ,チュニジア 人数 内 【植物保護のための総合防除コース】 日 程 訳 平成16年 5月26日~9月7日 10名 平成17年 5月23日~9月3日 9名 アルゼンチン,中国,ハイチ,ケニア, ニカラグア,セネガル,スリランカ, ウガンダ,バヌアツ 平成18年 5月22日~9月2日 10名 アルゼンチン,ハイチ,ケニア, マレーシア,オマーン,パレスチナ, ペルー,ソロモン,スリランカ,シリア 平成19年 5月21日~9月1日 12名 アルゼンチン,カンボジア, インドネシア,ケニア,ニカラグア, オマーン,ソロモン,スリランカ, ジンバブエ(2) ,アフガニスタン, ベナン 平成20年 5月26日~9月6日 13名 アルゼンチン,ベナン,チリ,ドミニカ, インドネシア,ケニア(3) , パキスタン(2) ,スリランカ(2) , ウガンダ 4 アルゼンチン,ブラジル,ケニア, ラオス,マラウイ,モザンビーク, ニカラグア,パラグアイ,ツバル, ベトナム
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