81 第3章 大阪府におけるスポーツ産業 はじめに 第1章第2節で述べて

第3章
大阪府におけるスポーツ産業
はじめに
第1章第2節で述べているように、スポーツ産業の定義・分類は様々な説がある。例え
ば、国内全ての事業所・企業を対象として行われる「事業所・企業統計調査」
(総務省)に
おける産業大分類を見ても、スポーツ産業は、製造業、情報・通信業、卸売・小売業、教
育・学習支援業、サービス業と多岐に渡って属していると思われる。
本章ではスポーツ産業のフレームを、原田編著[2007]を援用し、図表3のように捉えて
整理してみたい。基本となるのは、伝統的なスポーツ産業の領域として挙げられることが
多い、「スポーツ用品産業(製造・卸売・小売の各企業群)」、「スポーツ施設空間産業(ス
ポーツ施設の維持管理業務を主体にした企業群)」、
「スポーツメディア・コンテンツ産業(テ
レビ、新聞、映画、漫画、アニメーションなどのコンテンツを制作する企業群)」であり、
これらの複合領域として現れてきた「総合型スポーツ用品産業(製造から小売までを総合
的に行う企業群)」、
「スポーツサービス提供産業(スポーツ施設でのスポーツサービスの提
供を主体にした企業群)」、「スポーツエンターテイメント産業(プロスポーツ企業群)」に
分類した。
図表3 本章におけるスポーツ産業のフレーム
テレビ、新聞、映画、漫画、アニメーション
などのコンテンツを制作する企業群
総合型スポーツ用品産業
(製造から小売まで総合的に
行う企業群)
製造・卸売・小売の各企業群
スポーツメディア・
コンテンツ産業
スポーツ用品
産業
スポーツサービス提供産業
スポーツ施設
空間産業
スポーツエンターテイメント産業
(プロスポーツ企業群)
資料:原田編著[2007]を参考に筆者作成。
81
(スポーツ施設でのスポーツサー
ビスの提供を主体にした企業群)
スポーツ施設の維持管理業務を主体
にした企業群
本章では、まず、スポーツ産業の中の「スポーツ用品産業」、
「スポーツ施設空間産業」、
「スポーツサービス提供産業」について、第1節で全国の動向を統計データと新聞記事を
中心に把握し、第2節から第4節で、大阪府の各スポーツ産業について、統計データによ
り、大阪府のポジションを確認するとともに、府内のスポーツ産業企業や団体への聞取り
調査も踏まえて記述する。第5節と第6節は、
「スポーツメディア・コンテンツ産業」、
「ス
ポーツエンターテイメント産業」という全国規模で大きな動きがある産業分野を、大阪を
意識しながら全国の視点でまとめる。第7節では前節までに記述したスポーツ産業企業や
アスリートを裾野から支える特定非営利活動法人(NPO法人)や企業、スポーツ団体の
取組を紹介する。
82
第 1 節 全国のスポーツ産業
わが国の平成 18 年の余暇市場は 78 兆 9,210 億円で、前年比 1.6%減少した。その内、
スポーツ部門の市場規模は、4兆 2,970 億円で前年からほぼ横ばいとなり、全般的に底打
ち感が強まり、市場はやや活性化してきている(財団法人社会経済生産性本部[2007])。本
節では、全国のスポーツ産業のデータと新聞記事に基づいて国内のスポーツ産業を概観す
る。
1.スポーツ用品産業
(1)
市場の推移
(競技からレジャー、ライフスタイルまで幅広いジャンルで市場規模の拡大が見られる)
平成 18 年のスポーツ用品市場では、対前年比がプラスになったのは、野球・ソフトボ
ール用品(2.0%増)、登山・キャンプ用品(1.4%増)、スポーツ自転車(4.5%増)、トレ
ーニング競技ウェア(6.8%増)、スポーツシューズ(2.6%増)である(図表3-1-1)。
市場規模が増加したジャンルは、野球・ソフトボール用品やトライアスロン・ロードレー
ス用の競技用自転車を含むスポーツ自転車のような競技用から、登山・キャンプ用品や一
部サイクリング自転車を含むスポーツ自転車のようなレジャー用、そして、スポーツカジ
ュアルと言われるようなデザイン性を追求したものを含むトレーニング競技ウェアやスポ
ーツシューズまで幅広い。
図表3-1-1
スポーツ用品の市場規模の推移(全国)
(単位:億円、%)
1.球技スポーツ用品
(1)ゴルフ用品
(2)テニス用品
(3)卓球・バドミントン用品
(4)野球・ソフトボール用品
(5)球技ボール用品
2.山岳・海洋性スポーツ用品
(1)スキー・スケート・ス
ノーボード用品
(2)登山・キャンプ用品
(3)釣具
(4)海水中用品
3.その他のスポーツ用品
(1)スポーツ自転車
(2)その他のスポーツ用品
4.スポーツ服等
(1)トレーニング競技ウエア
(2)スポーツシューズ
平成11年
平成12年
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
7,170
4,800
810
320
1,020
220
8,870
7,020
4,740
750
310
1,010
210
8,240
6,830
4,540
760
310
1,010
210
7,750
6,620
4,370
740
310
990
210
7,190
6,630
4,390
740
310
980
210
7,010
6,640
4,370
750
320
990
210
6,830
6,680
4,400
750
320
1,000
210
6,710
6,650
4,390
710
320
1,020
210
6,620
18年/17年
-0.4
-0.2
-5.3
0.0
2.0
0.0
-1.3
2,600
2,390
2,240
2,050
2,000
1,910
1,860
1,800
-3.2
1,780
2,760
1,730
3,180
1,420
1,760
3,590
2,140
1,450
1,640
2,600
1,610
3,290
1,510
1,780
3,530
2,080
1,450
1,560
2,440
1,510
3,450
1,550
1,900
3,560
2,080
1,480
1,480
2,220
1,440
3,520
1,520
2,000
3,570
2,070
1,500
1,460
2,150
1,400
3,440
1,430
2,010
3,530
2,040
1,490
1,470
2,060
1,390
3,390
1,340
2,050
3,610
2,130
1,480
1,480
2,010
1,360
3,390
1,320
2,070
3,720
2,210
1,510
1,500
1,970
1,350
3,440
1,380
2,060
3,910
2,360
1,550
1.4
-2.0
-0.7
1.5
4.5
-0.5
5.1
6.8
2.6
資料:財団法人社会経済生産性本部『レジャー白書
2007』より作成。
(若い女性を中心にランニング人口が増加)
エクササイズの中でも、減量を目的にビデオの映像に従って負荷の高い運動を7日間集
中的に行う「ビリーズブートキャンプ」のような激しい運動に注目が集まる一方で、手軽
にできるランニング人口も増え始めている。例えば、平成 20 年2月に開催された「東京マ
83
ラソン 2008」のエントリーは、3万人の枠に対して 15 万 6,000 人の応募があった。こう
したマラソン人口の増加のなかでも、「最長 10kmと短いコースのため初心者でも参加し
やすい千葉県富里市の『富里スイカロードレース』に参加した女性参加者は5年前と比べ
て約9割増の 5,123 人。総参加者に占める女性の割合も 33%と7ポイント上がった」(日
経流通新聞[2007 年7月 23 日])とあるように女性の増加が目立っている。
こうした女性の中には、おしゃれに楽しく走っている「ファンランナー」も多いといわ
れており、レディスランニングマーケットが注目されている。例えば、インナースパッツ
がついたランニング用のスカートが登場し、見られるのであればスタイルにも気を使いた
いという風潮に対応した商品が登場している。
また、ランニングシューズにおいても新たな市場が生まれている。
「東京マラソンなど市
民マラソンの開催が本格化してきた。少しでもタイムを上げようと、足のサイズや形状を
専用器具で計測してから靴を購入する市民ランナーが増えている」ことを踏まえ、アシッ
クスストア東京(東京都中央区)は、「三次元測定機を設置」し、「その結果をもとに、販
売員が足に合った靴をすすめる。靴との完全な密着感を求める上級者に対しては、中敷の
作成や、靴のオーダーメードにも応じる」
(日本経済新聞[2008 年 1 月 11 日])という取組
を行っている。店舗での計測サービスを導入することによって、本格的な競技者に加え、
ファンランナーの中間層という新たな購買層を取り込んだ事例である。
(中高年を対象とした健康維持を目的としたスポーツ用品の売れ行きが好調)
国内の多くのスポーツ用品市場は少子化の影響で横ばいが続いているが、特に中高年を
中心とした層の健康志向の高まりを受けて、山歩き用のトレッキングシューズや軽量化で
腕などへの負担を軽くしたテニスラケットなど、中高年に配慮した健康維持を目的とした
スポーツ用品の売れ行きが好調である。中高年層は、価格が高くても品質がよくて使いや
すい商品を購入する傾向がある。外資系小売業の進出やインターネットによる販売などの
競合が増え、販売価格が低下しがちな業界にとって利益の確保が見込める分野としての期
待が大きい。
(スポーツカジュアルの伸長)
スポーツ衣料は、新素材の開発や加工技術の向上によって、薄地でも軽くて温かい、活
動的なイメージでデザイン性が高いなどの様々な理由から、若い女性を中心にスポーツカ
ジュアル(スポーツ時以外にも普段着として着用)として購入されていくケースも増えて
いる。こうした流れを受け、メーカーの中には女性向けに小型・軽量化されたスポーツ用
品やデザイン性の高いヨガやダンスのウェアなどを投入する動きも見られる。ファッショ
ンとしての需要が高まればスポーツに関心が薄い女性を顧客として獲得することも可能な
だけに、メーカーだけでなく小売の段階における消費者へのアピールも重要になってくる。
このように、スポーツ用品も、「スポーツのために」から「日常でも」に変わってきて
おり、こうした動きがスポーツ用品市場の拡大をもたらすものと思われる。
84
(2)
小売業の概況
(事業所数、年間商品販売額は減少するが、売場面積は増加)
平成 16 年の全国のスポーツ用品小売業の事業所数と年間商品販売額は、それぞれ 17,262
箇所、1,433,409 百万円で、14 年と比べ、それぞれ、3.7%、7.5%減少している(図表3
-1-2)。一方で、16 年の売り場面積は 2,844,398 ㎡で、14 年と比べ 1.5%増加してい
る。6年から 16 年までの 10 年間を概観してみると、事業所数と年間商品販売額は減少傾
向を示しているものの、売り場面積は増加傾向を示していることがわかる。小売店の事業
所数が減少し、売り場面積が増加していることから、小規模小売店の減少と大規模小売店
の増加が推測される。
図表3-1-2
スポーツ用品小売業の事業所数、従業者数、年間商品販売額、売り場
面積(全国)
(単位:箇所、%、人、百万円、㎡)
対前回調
対前回調 年間商品販 対前回調
対前回調
事業所数
従業者数
売り場面積
査年比
査年比
売額
査年比
査年比
平成6年
20,073
-
72,857
-
1,883,325
-
2,256,896
-
平成9年
19,299
-3.9
70,471
-3.3 1,843,497
-2.1 2,445,901
8.4
平成11年
19,262
-0.2
75,683
7.4 1,694,401
-8.1 2,556,378
4.5
平成14年
17,923
-7.0
80,466
6.3 1,548,822
-8.6 2,801,956
9.6
平成16年
17,262
-3.7
76,327
-5.1 1,433,409
-7.5 2,844,398
1.5
資料:経済産業省『商業統計調査』産業編(平成16年)より作成。
(新たな流通形態が成長している)
流通別にみると、専門・一般スポーツ店の小売金額は、平成 16 年から 17 年にかけて 0.5%
減少しているものの、全体の4割弱を占めている(図表3-1-3)。17 年において対前
年比が増加しているのは、通販・インターネット(16.8%増)、カジュアル・セレクトショ
ップ(10.1%増),直営店・SIS(8.3%増)となり、新たな流通形態が成長しているこ
とがわかる。
(小売店において、多様なスポーツサービスの提供)
大型スポーツ専門店のゼビオ株式会社(福島県郡山市)は、スーパースポーツゼビオ葛
西店(東京都江戸川区)内での簡易型サーキットトレーニングジムの運営を開始した1。こ
のジムは、スポーツクラブ大手の株式会社ルネサンス(東京都墨田区)のサーキットトレ
ーニングジムのノウハウを取り入れた女性専用施設とし、スーパースポーツゼビオの「業
態表現に付加価値をつけるトライアル店舗」と位置づけている。フィットネス市場の裾野
を広げたいルネサンスと集客力を高めたいゼビオのニーズが一致し、スポーツ産業の中の
異業種が連携した事例である。
1
ゼビオ株式会社のニュースリリース資料(平成 20 年1月 24 日付け)、葛西店のページを参照した(ア
クセス日 平成 20 年3月 10 日)。http://www1.xebio.co.jp/
85
図表3-1-3
スポーツ用品
流通別小売金額
(単位:百万円、%)
平成16年
金額
構成比
金額
平成 17年
構成比 前年比
平成18年(見込み)
金額
構成比 前年比
ナショナル・スポーツ・チェーン
196,900
21.1
205,000
21.6
4.1
212,300
22.1
3.6
専門・一般スポーツ店
百貨店
375,600
67,600
40.3
7.3
373,700
68,700
39.3
7.2
-0.5
1.6
372,900
69,400
38.9
7.2
-0.2
1.0
GMS(総合スーパー)
HC(ホームセンター)
48,200
5.2
47,500
5.0
-1.5
46,200
4.8
-2.7
カジュアル・セレクトショップ
通販・インターネット
スポーツクラブ・スクール
その他小売業
直営店・SIS
9,900
14,900
9,100
14,400
72,500
1.1
1.6
1.0
1.5
7.8
10,900
17,400
9,400
13,900
78,500
1.1
1.8
1.0
1.5
8.3
10.1
16.8
3.3
-3.5
8.3
11,200
18,000
9,500
13,600
84,400
1.2
1.9
1.0
1.4
8.8
2.8
3.4
1.1
-2.2
7.5
932,400
100.0
950,400
100.0
1.9
959,700
100.0
1.0
全
体
資料:株式会社産業構造総合研究所(現、株式会社DELTAi.D.総合研究所) [2007]『2006 年ス
ポーツ用品市場構造研究』調査結果 PRESS RELEASE より作成(アクセス日 平成 20 年3月3日)。
http://www.isgr.co.jp/press/pdf/2006_sports_article.pdf
(注)ナショナル・スポーツ・チェーンとは、全国規模でチェーン展開をしているスポーツ用品店を指す。
SISとは国内外で資源開発から小売までを垂直統合した、効率的な商品の生産・流通・販売を行う戦
略的統合システムを指す。
(衣料・服飾の小売チェーン店によるスポーツカジュアルに着目した積極的な展開)
若手有望選手の出現に伴い、若者のゴルフ競技人口が男女問わず増えていることを踏ま
え、紳士服・婦人服及び雑貨などの企画・販売の株式会社ユナイテッドアローズ(東京都
渋谷区)では、
「ゴルフウェア事業に参入し、スポーツウェアにデザインの良さを求めてい
る 20~30 代の女性に着目し、自社店舗に加え、ゴルフ場でも販売する。また、卸売も手が
け、ゴルフ用品の小売店を通じ、ゴルフ場の用品売り場でも販売する」という取組を開始
している(繊研新聞[2008 年1月 25 日])。スポーツ専門小売店だけでなく、衣料・服飾の
小売チェーン店においてもスポーツカジュアルに着目した積極的な展開がなされている。
2.スポーツ施設空間産業
(全国的に多い学校体育・スポーツ施設や公共スポーツ施設)
現在、わが国には、239,660 箇所の体育・スポーツ施設が存在し、その内訳は、学校体
育・スポーツ施設 149,063 箇所(62.2%)、大学・高等専門学校の体育施設 9,022 箇所(3.8%)、
公共スポーツ施設 56,475 箇所(23.6%)、職場スポーツ施設 8,286 箇所(3.5%)、民間ス
ポーツ施設 16,814 箇所(7.0%)となっている(図表3-1-4)。スポーツ施設全体の内、
学校体育・スポーツ施設と公共スポーツ施設を合わせると8割以上であることから、日本
のスポーツ施設は、国や地方自治体主導で整備されてきたといえよう。
(民間スポーツ施設は、様々なサービスを提供)
施設分類別に、具体的な施設の内容を確認すると、学校体育・スポーツ施設など行政が
86
設置者であるものや企業が福利厚生のために設置している職場スポーツ施設では、体育館
や多目的運動広場、庭球場(屋外)が上位であるのに対して、民間スポーツ施設では、ゴ
ルフ場、ゴルフ練習場、トレーニング場などの構成比が高く、スクールなどソフト面の提
供ができる施設が中心となっている(図表3-1-5)。
図表3-1-4 全国の体育・スポーツ施設
(単位:箇所、%)
大学・高等専
学校体育・ス
公共スポーツ 職場スポーツ 民間スポーツ
施設分類
門学校の体育
合計
ポーツ施設
施設
施設
施設
施設
施設数
149,063
9,022
56,475
8,286
16,814
239,660
構成比
62.2
3.8
23.6
3.5
7.0
100.0
資料:文部科学省『我が国の体育・スポーツ施設』(平成16年)より作成。
図表3-1-5 体育・スポーツ施設の内容
上段:施設名
中段:施設数(単位:箇所)
下段:構成比(単位:%)
順位
学校体育・スポーツ 大学・高専体育施設
施設
(総数 149,063)
(総数 9,022)
公共スポーツ施設
職場スポーツ施設
民間スポーツ施設
(総数 56,475)
(総数 8,286)
(総数 16,814)
庭球場(屋外)
2,239
27.0
ゴルフ場
2,256
13.4
ゴルフ練習場
2,170
12.9
水泳プール(屋内)
1,655
9.8
庭球場(屋外)
1,385
8.2
トレーニング場
1,245
7.4
ダンス場
991
5.9
ボウリング場
627
3.7
体育館
601
3.6
キャンプ場
467
2.8
空手・合気道場
404
2.4
体育館
体育館
体育館
40,198
1,676
8,628
27.0
18.6
15.3
多目的運動広場
庭球場(屋外)
多目的運動広場
2
38,725
1,452
8,508
26.0
16.1
15.1
野球場・ソフトボール場
水泳プール(屋外)
多目的運動広場
3
29,953
1,117
6,829
20.1
12.4
12.1
庭球場(屋外)
トレーニング場
庭球場(屋外)
4
11,032
590
6,140
7.4
6.5
10.9
柔剣道場(武道場) 野球場・ソフトボール場 ゲートボール・クロッケー場
5
6,172
490
3,456
4.1
5.4
6.1
バスケットボール場(屋外)
球技場
水泳プール(屋外)
6
2,505
407
3,102
1.7
4.5
5.5
野球場・ソフトボール場 水泳プール(屋外)
キャンプ場
7
2,256
387
2,035
1.5
4.3
3.6
柔道場
陸上競技場
トレーニング場
8
2,185
333
1,775
1.5
3.7
3.1
卓球場
弓道場
水泳プール(屋内)
9
2,087
317
1,662
1.4
3.5
2.9
バレーボール場(屋外)
柔道場
柔剣道場(武道場)
10
1,931
288
1,220
1.3
3.2
2.2
資料:文部科学省『我が国の体育・スポーツ施設』(平成16年)。
1
87
野球場・ソフトボール場
1,081
13.0
体育館
1,048
12.6
多目的運動広場
907
10.9
トレーニング場
705
8.5
卓球場
398
4.8
球技場
239
2.9
バレーボール場(屋外)
188
2.3
水泳プール(屋外)
147
1.8
水泳プール(屋内)
139
1.7
3.スポーツサービス提供産業
(1)
市場の推移
スポーツサービス提供産業について、主要な施設・スクールの状況を確認していく。
(ゴルフ場・ゴルフ練習場が最大の市場)
平成 18 年において、ゴルフ場の市場規模は1兆 1,070 億円で、スポーツ施設・スクー
ル全体の市場規模の 52.7%を占め、ゴルフ練習場(1,510 億円)も含めると、ゴルフ関連
でスポーツ施設・スクール市場の 59.9%を占めている(図表3-1-6)。
なお、市場規模の推移をみると、図表3-1-6に示したように、11 年以降、ゴルフ場、
ゴルフ練習場ともに減少傾向で、市場全体に占めるゴルフ関連の構成比も低下傾向にあり、
ゴルフ関連の構成比が 11 年では 68.1%であったものが、18 年までの7年間で 10 ポイント
近く低下している状況にある。
ただし、近年、女性を中心にゴルフブームの動きが見られるほか、「10 年にわたる施設
数減少の中で過剰供給状態は緩和され、淘汰を生き残った施設では逆に1施設当りの利用
者数・売上高が増加傾向にある。顧客サービスも経営能力も向上し、利益を着実に出せる
体質に変化している」
(財団法人社会経済生産性本部[2007])など、経営環境の変化を指摘
する声もある。
(増加傾向にあるのは、フィットネスクラブとテニスクラブ・スクール)
フィットネスクラブは、ゴルフ場に次ぐ市場規模であり、平成 18 年において 4,270 億
円、対前年比 6.2%の増加と最も高い増加率を示している(図表3-1-6)。11 年からの
推移では、14 年に若干減少しているものの、増加傾向といえる。
フィットネスクラブは、プール、ジム、スタジオの3施設を備えているのが標準とされ
ていたが、
「通常のクラブ出店基準を満たさないような地域に、小規模サーキットトレーニ
ング2施設が出店」し、「今や同業態に 20 社以上が参入しているが、いずれも業績は良い」
(財団法人社会経済生産性本部[2007])などにみられるように、ビルの1室を活用したよ
うな小規模サーキットトレーニング施設がみられるようになっている。
テニスクラブ・スクールは、18 年の市場規模は 630 億円で、対前年比 1.6%の増加とフ
ィットネスクラブに次いで高い増加率となっている(図表3-1-6)。テニスクラブ・ス
クールも 11 年以降、増加傾向にあるが、その要因の一つに、マンガを契機としたジュニア
テニスブーム3があった。また、「市場のけん引役となっているのは冷暖房完備のインドア
テニススクール」(日本経済新聞[2007 年 11 月 10 日])というコメントもあるように、こ
こでも、新しい業態がみられるようになっている。
2
「筋トレと有酸素運動を交互に行い、休みなく動き続けることによってオールラウンドの体力づくりを
目的とするトレーニング」
(財団法人社会経済生産性本部[2007])で、円周上に機器やマットなどを置き、
30 秒など短い時間で運動の種類を変えていくものである。
3 中学校の部活動テニスを題材とした少年マンガ「テニスの王子様」
(週刊少年ジャンプ、発行:株式会
社集英社)の人気で、スクールに通う子供が増えていたとの指摘がある。
88
図表3-1-6
スポーツサービス提供産業の市場規模の推移(全国)
(単位:億円、%)
平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 18年/17年
スポーツ施設・スクール
27,150
(1)ゴルフ場
16,320
(2)ゴルフ練習場
2,170
(3)ボウリング場
1,200
(4)テニスクラブ・スクール
490
(5)スイミングプール
2,760
(6)アイススケート場
90
(7)フィットネスクラブ
2,990
(8)スキー場(索道収入)
1,130
26,290
15,010
2,000
1,170
480
2,860
100
3,650
1,020
25,000
14,000
1,840
1,150
500
2,770
100
3,650
990
23,810
13,510
1,710
1,170
540
2,300
80
3,580
920
23,300
12,970
1,630
1,160
590
2,300
80
3,680
890
21,970
11,930
1,550
1,070
600
2,130
80
3,800
810
21,150
11,330
1,560
1,040
620
1,750
80
4,020
750
21,010
11,070
1,510
1,020
630
1,720
80
4,270
710
-0.7
-2.3
-3.2
-1.9
1.6
-1.7
0.0
6.2
-5.3
資料:財団法人社会経済生産性本部[2007]『レジャー白書』。
(2)
新たな動き
(ゴルフシミュレーション機器を導入したゴルフバーが出現)
最近、シミュレーションゴルフを楽しめるゴルフバーが東京を中心に各地でオープンし
ている。例えば、
「株式会社スリーディ(東京都大田区)が製造販売するシミュレーション
機器は、150 センチの画面にリアルなゴルフコースの画像が映し出され、客はその画面に
向かって球を打ち込む。方向や打ち出し角、フック、スライスを3つのセンサーで感知し、
正確な球筋や飛距離をはじき出すため、画面には実際に打った通りの打球が映し出される
仕組み」で、
「家庭用ゲーム機のゴルフゲームと似ているが、違うのは本物のゴルフクラブ
を使う点」というものであり、また、「韓国ゴルフゾン社のシミュレーションシステムは、
画像に合わせて足元のプレートが上下し、実際のコースと同じ傾斜を再現するので、傾き
を計算した打ち方も練習できる」
(日経流通新聞[2007 年 12 月 21 日])など、それぞれ工
夫を凝らしたものである。これらは、室内型ゴルフ練習場の最小型ともいえるが、ゴルフ
練習がハイテク機器のおかけで、楽しく手軽にできるところが人気の所以であろう4。ゴル
フバーでのシミュレーションゴルフは、新たなゴルフファンの掘り起こしに一役買ってい
るとの指摘もある。
4
「日本よりも韓国の方がシュミレーションゴルフが進んでおり、室内練習場 6,000 箇所のうち、30%の
施設が導入している。」株式会社ゴルフ用品界社ホームページ(「月刊ゴルフ用品界」19 年 11 月号要約)
を参照した(アクセス日 平成 20 年3月7日)。http://www.gew.co.jp/cont/korea/0711.html
89
第2節
大阪府のスポーツ用品産業
大阪府内には、日本国内はもとより世界に日本製のスポーツ用品を広めてきた大手スポ
ーツ用品メーカーの本社の他、各種スポーツ用品や高性能な部品・素材などを製造する中
小メーカー、老舗の卸売り企業、特定種目に専門特化した小売店などの集積がある。
国内では、少子化や体育会離れの影響でマーケット自身は縮小傾向がみられるものの、
海外市場では、日本製品の商品力・ブランド力による海外戦略の効果が表れ、活況を呈し
ているとの指摘がある。そして、益々進歩する機能的側面とともに、デザインが消費行動
を促進し、従来型の製造、卸売、小売という機能別の分業形態が崩れ、総合化が強まって
いる。
本節では、はじめに、大阪府内企業への聞取り調査の結果を中心に製造、卸売、小売の
各機能に着目し、それぞれの大阪府のデータを分析し、特徴を概観する。その後、近年盛
んとなっているスポーツ用品産業での機能の総合化の動きをまとめる。
1.製造機能
(1)
概要
(大阪府内のスポーツ用品産出事業所数と製造品出荷額は減少傾向)
平成 12 年と 17 年を比較すると、大阪府内のスポーツ用品産出事業所数と製造品出荷額
等はそれぞれ、20.0%、55.7%の減少となっている(図表3-2-1)。12 年、15 年、17
年と連続して製造品出荷額等がともに減少しているのは、
「バスケットボール・バレーボー
ル・ラグビー・サッカー等用具」、「スキー、水上スキー・スケート用具」、「運動用具(賃
加工)」であった。また、「釣道具、同附属品」や「その他の運動用具」、「運動用具の部分
品・附属品」においては、前回調査から 50%以上の減少となる年があり、変動が激しくな
っている。
一方、製造品出荷額等が同期間に連続して増加しているのは、「テニス・ピンポン・バ
ドミントン用具」と「トラック・フィールド用具、体操用具」であった。
「スポーツ用衣服」
と「野球・ソフトボール用具」は 12 年から 15 年には大きく増加したものの 17 年は減少し、
12 年の水準を下回っている。
(多様なスポーツ用品において出荷金額が全国で上位を占める)
平成 17 年の大阪府のスポーツ用品出荷金額の全国における順位とシェアは、「スポーツ
用衣服」
(3位、8.0%)、
「野球・ソフトボール用具」
(3位、9.8%)、
「バスケットボール・
バレーボール・ラグビー・サッカー等用具」
(2位、11.8%)、
「テニス・ピンポン・バドミ
ントン用具」
(3位、2.2%)、
「トラック・フィールド用具、体操用具」
(2位、6.9%)、
「運
動用具の部分品・附属品」(5位、4.7%)であり、多くの品目で上位を占めている(図表
3-2-2~図表3-2-7)。
90
図表3-2-1
スポーツ用品の出荷額及び産出事業所数(大阪府)
(単位:箇所、万円、%)
平成12年
平成15年
事業 製造品出荷額等
所数 (修理料を除く)
事業
所数
製造品出荷額等 対12年
(修理料を除く)
比
平成17年
事業
所数
製造品出荷額等 対15年
(修理料を除く)
比
スポーツ用衣服
19
226,083
13
317,432 40.4
14
221,686 -30.2
野球・ソフトボール
用具
19
170,137
20
237,545 39.6
15
166,127 -30.1
バスケットボール・
バレーボール・ラグ
ビー・サッカー等用
具
13
63,606
12
56,721 -10.8
10
51,953 -8.4
テニス・ピンポン・
バドミントン用具
10
33,492
10
36,876 10.1
7
37,810
ゴルフ・ホッケー用
具
14
94,343
8
52,350 -44.5
9
64,000 22.3
スキー・水上ス
キー・スケート用具
3
48,923
3
11,117 -77.3
2
-
トラック・フィール
ド用具、体操用具
15
58,125
12
64,603 11.1
11
75,282 16.5
釣道具、同附属品
49
2,648,407
38
1,323,975 -50.0
40
1,459,096 10.2
その他の運動用具
42
952,085
39
310,495 -67.4
33
運動用具の部分品・
附属品
22
135,374
20
170,898 26.2
22
68,990 -59.6
運動用具(賃加工)
49
127,809
46
107,459 -15.9
41
92,187 -14.2
合計
255
4,558,384 221
2,689,471 -41.0
204
2,018,073 -25.0
322,518
資料:大阪府『大阪の工業』(平成 12 年、15 年、17 年)より作成。
図表3-2-2
順位
1
2
3
4
5
都道府県
岡山県
新潟県
大阪府
秋田県
埼玉県
全国
「スポーツ用衣服」出荷金額の都道府県順位(平成 17 年)
産出事業所数
6
4
10
3
8
97
(単位:箇所、百万円、%)
出荷金額
全国シェア
3,543
12.9
2,452
8.9
2,185
8.0
1,139
4.2
420
1.5
27,397
100.0
資料:経済産業省『工業統計調査』品目編(平成17年)より作成。
(注)従業員4人以上の事業所を対象としている。
91
2.5
-
3.9
図表3-2-3
順位
1
2
3
4
5
都道府県
兵庫県
岐阜県
大阪府
奈良県
鹿児島県
全国
「野球・ソフトボール用具」出荷金額の都道府県順位(平成 17 年)
産出事業所数
6
3
12
13
3
81
(単位:箇所、百万円、%)
出荷金額
全国シェア
4,091
24.4
2,260
13.5
1,639
9.8
1,449
8.7
1,094
6.5
16,749
100.0
資料:経済産業省『工業統計調査』品目編(平成17年)より作成
(注)従業員4人以上の事業所を対象としている。
図表3-2-4
「バスケットボール・バレーボール・ラグビー・サッカー等用具」
出荷金額の都道府県順位(平成 17 年)
順位
1
2
3
4
5
都道府県
広島県
大阪府
東京都
愛知県
三重県
全国
産出事業所数
5
9
6
3
3
47
(単位:箇所、百万円、%)
出荷金額
全国シェア
2,317
52.9
518
11.8
305
7.0
202
4.6
20
0.5
4,384
100.0
資料:経済産業省『工業統計調査』品目編(平成17年)より作成
(注)従業員4人以上の事業所を対象としている。
図表3-2-5
「テニス・ピンポン・バドミントン用具」
出荷金額の都道府県順位(平成 17 年)
順位
1
2
3
4
5
都道府県
埼玉県
兵庫県
大阪府
静岡県
群馬県
全国
産出事業所数
10
3
7
4
4
53
(単位:箇所、百万円、%)
出荷金額
全国シェア
6,036
35.2
2,831
16.5
378
2.2
321
1.9
151
0.9
17,126
100.0
資料:経済産業省『工業統計調査』品目編(平成17年)より作成
(注)従業員4人以上の事業所を対象としている。
図表3-2-6
「トラック・フィールド用具、体操用具」
出荷金額の都道府県順位(平成 17 年)
順位
1
2
3
4
5
都道府県
千葉県
大阪府
埼玉県
東京都
群馬県
全国
産出事業所数
3
9
9
8
4
67
(単位:箇所、百万円、%)
出荷金額
全国シェア
5,875
59.0
686
6.9
468
4.7
297
3.0
290
2.9
9,953
100.0
資料:経済産業省『工業統計調査』品目編(平成17年)より作成
(注)従業員4人以上の事業所を対象としている。
92
図表3-2-7
「運動用具の部分品・附属品」
出荷金額の都道府県順位(平成 17 年)
順位
1
2
3
4
5
都道府県
長野県
高知県
愛知県
兵庫県
大阪府
全国
産出事業所数
10
6
8
6
14
99
(単位:箇所、百万円、%)
出荷金額
全国シェア
3,057
23.7
1,762
13.6
1,087
8.4
683
5.3
613
4.7
12,920
100.0
資料:経済産業省『工業統計調査』品目編(平成17年)より作成
(注)従業員4人以上の事業所を対象としている。
(2)
取組
(フィットネスウェアの開発とスポーツ人口の裾野を広げる取組)
株式会社ザ・ミス(大阪市中央区)は、エアロビクスをはじめ各種スポーツウェアの企
画・開発・生産並びに輸出入・販売を行っている。同社は、
「一般に、フィットネスウェア
は、人と違うものを好む傾向があるため、多品種少量生産が理想である。そのため、商品
アイテムは、年間2回のコレクションを開催し、各 200~250 型を発表している。カタログ
に掲載していない商品も含めると年間 700 アイテムぐらいの新商品を出している。また、
近年は、主に 30 代から 50 代の女性を対象にした特殊な素材を使った高付加価値商品の開
発に力を入れている」と高付加価値化に取組むとともに、同社のオフィスに併設されたス
タジオで実際に身につけて細やかなチェックを行って機能性も追及している。さらに、全
国の約 30 人のインストラクターと契約し、現場の目線で商品開発のアドバイスやトレンド
情報を提供してもらっている。
また、同社は、平成 14 年から毎年「DA MISS CUP」というエアロビクスの大
会を開催している。大会には子どもの参加が増加しているが、同社では、
「昔はスポンサー
企業が多く、エアロビクスの大会が頻繁に開催されていたが、近年は減少していることか
ら、年に1回の発表会という思いで大会に参加している」とその背景を分析している。ま
た、
「開催目的のひとつには、アマチュアの選手に目標を持ってもらうことがある。エアロ
ビクスは、歴史が浅いこともあって、高校生、大学生の層が薄い。今後は、現在参加して
いる子どもたちの成長とともに参加層が充実していくことも期待している」と、機能とフ
ァッション性を追及した商品開発と並行して、エアロビクスを行う人たちの層の定着・拡
大に向けた取組を行っている。
(品目や商品特性による生産の最適地の選択)
スポーツ用品の製造においては、国内と中国をはじめとする東アジアでの協力・自社工
場という生産拠点の棲み分けが見られる。ただし、価格を抑えるために中国で縫製を依頼
している小規模メーカーでは、
「中国では、まとまったロットを年間を通して発注しないと
協力工場が確保できない」との課題をコメントしている。また、ある大手メーカーでは、
93
「シューズは9割以上中国で生産しているが、スポーツウェアは、チームユニフォームな
どのサイズのばらつきや個別対応の商品が多いため、国内での生産の比率が高い」と指摘
し、また、あるスポーツウェアメーカーでも「体操服は、大半は中国で生産しているが、
追加注文に迅速に対応するためには、いくらかは国内で生産せざるをえない」と指摘して
いるなど、大量生産に向かない製品や需要変動への対応は国内生産という棲み分けが行わ
れている状況がうかがえる。また、ある大手メーカーからは、
「価格面では、国内より中国
での生産が有利であるが、検品が大変であることから、商品特性によって品質的に安定し
ている国産と中国での生産を使い分けている状況がある」と指摘もあった。
ミズノ株式会社(大阪市住之江区)は、「注文生産品の野球グローブの生産拠点を国内
から上海の自社工場に移す。既製品はすべて海外で製造しているが、国内技術者の高齢化
が進んだため、オーダー品も海外生産に踏み切る。将来は、プロやアマチュアのトップ選
手用を除いたすべてのグラブを海外で生産する方針だ。スポーツ用品メーカー間での競争
激化や野球市場の成熟化により、国内でのグラブ販売数は頭打ちとなっている。一方で、
国内工場の技術者の高年齢化が進んでおり、後継者不足と相まって技術継承が難しくなっ
ている」
(日本経済新聞[2008 年 1 月 19 日])とのことであり、技術者確保の側面も海外生
産への移管の要因となっていることがうかがえる。
このように商品の特性、ロット数、迅速な対応の必要性、製造の難易度、技術者の確保、
賃金などの条件によって、最適地を選択していることがわかる。
(自社工場と協力工場が近接して確保できる立地優位性)
株式会社淡野製作所(東大阪市)は、主に学校へ納めるトレーニング機器を製造してい
るため、中学校や高校に製品を納品するだけではなく、納品後の消耗部品の交換などのメ
ンテナンスも業務としている。同社によると「トレーニング機器を中心に自社企画の製品
が半数以上を占めることから、ものづくり企業が多い東大阪市という地域は、必要な協力
工場が容易に確保できる優位性がある。同業者の中には、製造部門を完全に手放したとこ
ろも多いが、自社に製造部門があることは、メンテナンスが必要な製品や少量品の製造に
とって強みになっている」と東大阪での立地の優位性を指摘している。東アジアへのもの
づくりの移転が指摘されるなか、多品種少量の製品やきめ細やかなメンテナンスを必要と
するトレーニング機器などについては、消費地の近くに工場を有するスポーツメーカーの
存在意義は大きいと思われる。
2.卸売機能
(1)
概要
(大阪府の卸売業の年間商品販売額は、2割強のシェアを占める)
大阪府の平成 14 年5におけるスポーツ用品卸売業の事業所数は 452 箇所、年間商品販売
額は 323,187 百万円で、全国のシェアはそれぞれ 13.4%、21.1%となっており、ともに東
5
16 年の商業統計調査は簡易調査であり、スポーツ用品卸売業のデータは公表されていない。
94
京に次ぐ地位となっている。(図表3-2-8)。
図表3-2-8
スポーツ用品卸売業の事業所数と年間商品販売額(平成 14 年)
事業所数
東京都
愛知県
大阪府
全国
779
224
452
3,364
全国シェア
23.2
6.7
13.4
100.0
(単位:箇所、百万円、%)
年間商品販売額 全国シェア
587,566
38.3
132,259
8.6
323,187
21.1
1,534,845
100.0
資料:経済産業省『商業統計調査』品目編(平成14年)より作成。
(2)
取組
(受発注のIT化が早くから進んでいた業界)
スポーツ用品は品種が多いのが特徴で、例えば、バスケットゴールの網から野球スパイ
クのピンなどの消耗部品、また、アスリート向けの用品からウォーキングやジョギング、
レジャー、サプリメントなどの一般消費者向けの商品まで幅広いことから、1990 年代後半
頃から配送センターへの設備投資が積極的に行われてきたという。それに伴い、受発注の
IT化が大手スポーツ用品メーカーのリードのもと、製造業、卸売業、小売業が一体とな
って早くから進められてきたため、流通コストの削減とリードタイムの短縮に寄与してき
たといわれている。
(メーカー直販の中抜き現象に対して、新たな販売ルートの開拓へ)
卸売企業は、従来から、メーカーの在庫リスクを軽減するための重要な機能のひとつを
担ってきた。また、スポーツ用品の特徴である少量多品種を扱う小売店にとっては、卸売
企業は、メーカーと一括して取引してくれることから、メーカーと少量取引の場合、割高
になる物流コストの削減などの面で利便性があった。
しかし、近年、メーカーにおいては、例えば、小売店から春物の受注をする場合、前年
の夏から秋に開催する展示会で小売店などから直接受注した数だけを生産するようになっ
てきている。そのため、卸売企業の中では、
「今日、メーカーの直販による中抜き現象が引
き続き強まり、従来型の問屋機能では成長戦略は構築できない」
(繊研新聞[2007 年 11 月
26 日])との警戒感もある。
したがって、例えば、多様なスポーツ用品の販売先を従来のスポーツ小売店以外に、一
見、スポーツとは無関係に見えるような靴・カバンの専門店、バラエティ雑貨店、健康用
品店などの新しい業態・店舗に販路を開拓する必要性も指摘されている。
(小売店の販売促進を支援する野球の日キャンペーン)
大阪スポーツ用品卸商業組合では、野球の日(8月9日)に親子でのキャッチボールを
呼びかけるキャンペーンを実施している。同キャンペーンは、8月は毎年小売店の売上げ
が落ちる時期でもあり、小売店の活性化を目的として始められた。最初の5年間は西日本
エリア限定の開催であったが、平成 19 年から全国展開となり、約 900 の小売店で実施され
95
ている。小売店では、組合が開発したキャンペーンののぼりやグラブ・ボールなどの抽選
会グッズ一式を用いて、親子でのキャッチボールを呼びかけながら、販売促進を図ってい
る6。
(展示会は各社単独開催が主流へ)
従来は、大阪スポーツ用品卸商業組合員企業が合同して、毎年、2月(秋・冬もの)と
8月(春・夏物)の年2回、インテックス大阪(大阪市住之江区)でスポーツ小売店を対
象にした展示会を開催していたが、現在、年1回(2月)の開催となっている。近年、商
品サイクルが益々短くなるなか、同展示会は主に業界の情報交換の場となっているとの指
摘がある。
一方、スポーツメーカーや卸売企業は各社単独で、新商品発表会を年4回開催している。
その際、メーカーから卸売企業に対して、小売店が1日で効率よく巡回できるように、発
表会の同日開催が呼びかけられるなど、利便性を図る取組も行われている。
3.小売機能
(1)
概要
(事業所数・従業者数・年間商品販売額・売り場面積ともに減少傾向)
大阪府の小売業は、平成 14 年から 16 年にかけて、事業所数、従業者数、年間商品販売
額、売り場面積ともに減少しており、それぞれ、32.6%、37.1%、47.8%、22.5%の減少
となっている(図表3-2-9)。東京都や愛知県も同様に減少傾向を示しているが、大阪
府と比較して減少率は低い。
図表3-2-9
都道府県別
スポーツ用品小売業の事業所数・従業者数・年間商品販売
額・売り場面積
(単位:箇所、%、人、百万円、㎡)
事業所数
従業者数
年間商品販売額
平成14年 平成16年 増加率 平成14年 平成16年 増加率
平成14年
平成16年
売り場面積
増加率
平成14年
平成16年
増加率
東京都
1,551
1,471
-5.2
7,623
7,437
-2.4
208,721
182,215
-12.7
199,321
211,148
5.9
愛知県
980
931
-5.0
4,868
4,414
-9.3
81,927
80,180
-2.1
178,858
171,676
-4.0
119,546
62,372
-47.8
154,335
119,554
-22.5
1,548,822 1,433,409
-7.5
2,801,956 2,844,398
1.5
大阪府
1,108
747
-32.6
5,480
3,446
-37.1
全国
17,923
17,262
-3.7
80,466
76,327
-5.1
資料:経済産業省『商業統計調査』産業編(平成 16 年)より作成。
6
キャッチボールを広める取組のその他の例としては、「日本プロ野球選手会は、街中でキャッチボール
をすることを復活させるために、各地で普及イベントを開催している。大人も子どもも現役選手やOBの
球を受けたり投げたりすることで、野球に親しんでもらうことが狙いだ。公園での原則球技禁止を変える
ため、けがをしにくいウレタン素材のキャッチボール専用球を開発し、実施可能な公園を回っている」
(毎
日新聞[2007 年 12 月6日])などがある。
96
(2)
取組
(地域密着型の小売店の減少)
近年、大型小売店との価格競争が厳しくなったことや少子化の影響による学校・クラブ
への納入品量が少なくなっていることから、地域密着型のスポーツ小売店の経営環境は悪
化している。さらに、従来は安定した取引を継続できていた体操服やクラブウェアなどの
学校販売においても、異業種が参入するなど、競争が激しくなっている。そのような状況
のなか、地域の小売店では、後継者がいなかったり、経営自体が困難になったため、廃業
に至ったり、主な取引先であった総合スポーツメーカーからの経営支援を受けたり、メー
カーの販売会社の一支店となるケースがみられるという。
ある地域密着型のスポーツ小売店では、以前は、例えば、地域の野球大会を主催したり、
草野球チームの支部が置かれたりするような、地域の人が交流する場としての機能も果た
していたが、近年、野球チームがなくなるなど、前述のような機能も失われつつあるとい
う。自らが情報発信するような機能を持たない地域の小売店は、今後、淘汰されていくの
ではないかとの指摘もある。こうした状況に対して、メーカーや卸売企業は、地域密着型
の小売店から得るトレンドや地域情報を商品企画などに活用しているところも多いことか
ら、小売店が減ることは、メーカーや卸売企業と地域をつなぐ接点が減少することを意味
しているとの指摘もなされている。
(コンサルティングを重視した営業への展開)
大手小売店の中にも、価格競争に頼らず、豊富な品揃えと顧客との対話による適切な商
品提案を重視した営業を行い、近隣に立地するスポーツ用品のディスカウントストアとの
差別化を図っているところもある。スポーツ用品には、オーダーやセミオーダーのような
用品が少なくないため、きめ細やかなコンサルティングに基づいた商品提案は他店との重
要な差別化要因となるだろう。
(インターネットと店舗の両方を活用して販路を確保)
近年、ナショナル・スポーツ・チェーン(全国規模でチェーン展開をしているスポーツ
用品店)などでは、自社開発ブランドや有名ブランド用品の取り扱いに注力する傾向が見
られる。そこで、販路が狭くなった中小小売業者の中には、新たな販路をホームページや
インターネットショッピングモールに求め、専任スタッフをつけて注力したところ、右肩
上がりの売れ行きを実現しているという事例がある7。他のインターネット販売に注力する
小売業者からは、
「当初、インターネットから用品を購入する客層と来店の客層は違ってい
たが、近年は両方を活用する客層が増えてきた感がある」との意見も聞かれた。
(顧客対象を絞り込んで専門特化した用品とサービスの提供)
有限会社アスリートカンパニー(大阪市東淀川区)は、代表者が自転車専門店であった
実家で習得した技術ノウハウと趣味としてはじめたトライアスロンの経験を活かして、ト
7
総務省「平成 17 年通信利用動向調査」によると、インターネット利用者数(推計)は、平成 17 年末で、
8,529 万人(推定人口普及率 66.8%)であり、上昇幅は縮小しているものの、なお増加している。
97
ライアスロン用の自転車を中心に、ウェア、ウェットスーツなど、トライアスリートが必
要とする用品をトータルに提供する専門小売店である。
同社では、平成元年の創業後、まずは、トライアスリートやこれからトライアスロンを
やってみたいと思っている人へ情報を届けるために、唯一の専門誌『トライアスロンジャ
パン』に広告を載せて、通信販売を行った。13 年頃からは、本格的にホームページを活用
するとともに、メールマガジン8を発行、インターネット販売も始めた。また、「気軽に来
店してもらうためには、高価なトライアスロン用の自転車だけでなく、ウェア、ウェット
スーツなども一緒に店頭に置いて敷居を低くすることにこだわった」と店舗での集客面に
も工夫を凝らしている。フル・セミオーダーのようなトライアスロン用の自転車とウェア、
ウェットスーツのように、仕入先も商習慣も違う分野を小規模な小売店で扱うことは容易
なことではないが、アスリートのニーズに応え、トライアスロンの裾野を広げることを考
えた事業展開をしていることから、全国からの問合せや来店が相次いでいるとのことであ
った。市場が小さいといわれているスポーツ種目においても、裾野を広げる工夫と顧客ニ
ーズに応える品揃えとサービスの提供によって、発展の可能性が大いに期待できると思わ
れる。
(スポーツ人口が少ない大会を主催・支援)
スポーツ用品の小売販売卸並びに輸出入業務を行っている株式会社スポーツタカハシ 9
(大阪市中央区)では、フットサル、スケートボードなどの大会を主催するとともに、ビ
ーチサッカー10大会の開催を支援している。
また、前述したアスリートカンパニーなどが主催して、平成 19 年5月に大阪舞州スポ
ーツアイランドで、トライアスロン競技の中の水泳を除いたランとバイクの二種目のデュ
アスロン大会を開催した。エントリー333 名、ボランティア&スタッフ 120 名、応援観戦
200 名、総来場者 750 名の大会となった。同大会では、競技に参加するのが楽しいことは
もとより、見ても楽しいものにするべく、競技中のアスリートの姿が見えるように周回性
を確保したコースを設定し、その都度順位がわかるようにしたり、会場ではフリーマーケ
ットの開催や出店を工夫したりするなど、家族やグループで参加してもらう工夫を凝らし
たという。
まだスポーツ人口が少ない種目であっても、大会自体が少ないこともあって、開催すれ
ば、全国から参加選手や観客が集まってくる。大会を開催するには、多くのボランティア
を必要とするなど準備も容易なことではないが、ユーザーに一番近いポジションに位置す
る小売店が積極的にスポーツの裾野を広げる取組を行っていることに注目したい。
8
平成 20 年2月 14 日現在、登録者 4,751 名。
同社のホームページを参考にした(アクセス日 平成 20 年2月 28 日)。
http://www.spotaka.com/topics/index.html
10 1チーム5人のメンバーで対戦するビーチサッカーは元々ブラジルで始まったもので、この 10 年間で
欧米に普及し、外国では有名なサッカー選手もしばしばビーチサッカーに転向することがあるが、日本に
おいては、まだマイナースポーツといわれている。
9
98
4.スポーツ用品産業の総合化と新規事業
(製造から販売まで一貫して自社で手がける)
従来の製造、卸売、小売という機能の分業形態がゆるみ、製造から小売まで一貫して自
社で手がける企業が散見される。例えば、スポーツ用品メーカーが自社製品を自社の販売
会社を通して直営店で販売したり(図表3-2-10①)、小売店が企画した商品を協力工場
でOEM生産し、自社で販売したり、他の小売店へ卸したり(図表3-2-10②)、卸売企
業が企画した製品を協力工場でOEM生産し、商店街の空き店舗などを活用して小売もす
る(図表3-2-10③)といったように従来ではみられなかった新しい動きが行われてい
る。
また、消費者との接点を持つことによって、商品開発や企業イメージ向上にも活かそう
と、スポーツ用品メーカーが、子会社を通して、フィットネスクラブやフットサルコート
の運営など、スポーツサービス提供産業への進出を図るといった多角化も見られる。
図表3-2-10
①
メーカー
②
メーカー
製造から小売までの流れのモデル
販売会社
直営店
OEM
小売店
小売店
OEM
③
メーカー
卸売企業
直営店
資料:筆者作成。
(科学的根拠に基づいた高付加価値製品・サービスの開発、販売)
自社で研究所を所有する企業は主に大手メーカーであるものの、中小メーカーにおいて
も、大学や行政の研究機関に調査研究を委託するなど、様々な形で、科学的根拠(エビデ
ンス)に基づいた高付加価値商品の開発に取組んでいる。
また、ある中小メーカーの直営店では、顧客に運動の特性にあった適切な商品提案を行
うためには特別な教育を必要とすることから、スタッフを社員として採用することにこだ
わり、価格競争ではなく、きめ細やかなコンサルティングと接客で他社との差別化を図る
取組を行っている。
さらに、平成 20 年度から義務付けられる生活習慣病予防の検診や保健指導制度を商機
とみて事業に参入するスポーツ用品メーカーが少なくない。国内市場では主力の競技者向
け商品が伸び悩んでいることから、成長が見込める事業として健康関連サービスへの取組
を強化している。例えば、スポーツ用品メーカーの株式会社デサントは、
「18 年の 12 月か
ら試験的に同社の社員向けにサービスを始めノウハウを蓄積」
(日経流通新聞[2007 年6月
99
1日])したうえで、メタボリック症候群(内臓脂肪型肥満などに起因した高脂血症、高
血糖症(糖尿病)、高血圧などの症状が複合した状況)の対策サービスに取組んでいる。
健康関連商品に対するニーズは依然高く、トレーニングメソッドなどのソフトとハード
を組み合わせた製品・サービスに加えて、科学的エビデンスを兼ね備えた製品開発への期
待が高いが、関係企業の連携による新規顧客の開拓や新規市場の創出が必須であるとの指
摘がある。
100
第3節
大阪府のスポーツ施設空間産業
日本のスポーツ施設は、学校・体育スポーツ施設をはじめ、公共スポーツ施設を中心に
整備されてきた経緯から、府内においても大阪市内 11を中心に、多くの公共スポーツ施設
が存在している。また、多くの民間スポーツ施設では、施設の賃貸や維持管理だけではな
く、会員や利用者を増やすために、スクールの運営や店舗経営など、様々なサービスが提
供されている。これらは、
「スポーツサービス提供産業」として第4節であらためて分析す
る。
本節では、はじめに大阪府内のスポーツ施設について概観し、指定管理者制度が導入さ
れた公共スポーツ施設について言及する。次に、民間スポーツ施設の維持管理業務を主体
にしている、府内でも数少ない企業に着目し、関連する動向をまとめた。
1.大阪府のスポーツ施設
(1)
概要
(民間スポーツ施設が占める割合が高いのは、スポーツサービスを提供している施設)
大阪府内のスポーツ施設について、民間施設が占める割合が高い順にみると、ボウリン
グ場、ゴルフ場、ゴルフ練習場、庭球場(屋内)、水泳プール(屋内)、トレーニング場とな
っており、それぞれ、100.0%、97.4%、74.6%、59.3%、55.1%と半数以上を占めている
(図表3-3-1)。これらの施設では、ボウリング、ゴルフ、テニス、スイミング、フィ
ットネスを楽しむ利用者のニーズに応じた様々な有料サービスが提供されている。
図表3-3-1
体育・スポーツ施設に占める民間スポーツ施設の割合(大阪府)
(単位:箇所、%)
総数
ボウリング場
ゴルフ場
ゴルフ練習場
庭球場(屋内)
水泳プール(屋内)
トレーニング場
球技場
庭球場(屋外)
野球場・ソフトボール場
陸上競技場
体育館
水泳プール(屋外)
多目的運動広場
28
39
63
27
178
298
72
858
213
47
2172
1784
2085
学校体育・スポー 大学・高専体 公共スポーツ 職場スポーツ 民間スポーツ 民間施設/
ツ施設
育施設
施設
施設
施設
総数
-
-
-
-
28
100.0
-
-
-
1
38
97.4
-
9
1
6
47
74.6
2
2
5
2
16
59.3
13
8
50
9
98
55.1
41
41
54
52
110
36.9
7
20
27
10
8
11.1
455
79
146
137
41
4.8
17
18
122
46
10
4.7
14
15
12
4
2
4.3
1801
93
200
53
25
1.2
1604
21
136
16
7
0.4
1774
75
179
55
2
0.1
資料:文部科学省『我が国の体育・スポーツ施設』(平成16年)より作成。
11
大阪市内には、各区に公共の屋内プールとトレーニングルームがある。
101
(2)
取組
(世界大会で使用される競技場では、高度な保守技術と設備投資が必要)
5万人を収容する長居陸上競技場(大阪市東住吉区)は、IAAF(世界陸上競技連盟)
のクラス1(最上級)に認定されている12。これは、世界陸上選手権大阪大会開催を前に、
大会開催に必要なクラス1への認証を得るために改修を行った(日本経済新聞[2007 年8
月 13 日])もので、
「トラックは奥アンツーカ株式会社(大阪市中央区)製」で、
「費用は、
2億6千万円」という記事にみられるように、世界のトップアスリートが競う世界大会で
使用されるような競技場では、高い技術による保守と設備投資が必要であり、また、大阪
府内企業がこうした競技場を支えているのである。
(スポーツ施設の周辺地域の変化)
大阪市長居障害者スポーツセンター(大阪市東住吉区)は、年間延べ30万人強の利用者
がある。「同センターの開設当時は、周辺の店舗では、障害のある人たちへの理解に乏し
い店舗もあったが、大勢来るようになると、障害のある人たちの来店を促すような工夫を
凝らす店舗も増加してきた。センターに合わせ、水曜日を定休にする店もあるなど、周辺
の商業にも変化が見られる」(毎日新聞[2008年1月9日])との報道にあるように、周辺
地域の店舗などが、スポーツ施設の集客力を活用して活性化を図る取組もみられる。
(民間事業者による公共スポーツ施設運営の動きと課題)
平成 15 年9月の地方自治法の一部を改正する法律の施行によって、指定管理者制度が
導入され、従来は出資法人などに限定されていた「公の施設」の管理を、民間事業者も含
めた幅広い団体に行わせることが可能となった。
これは、民間事業者のノウハウを、公共スポーツ施設の管理運営に導入し、利用者数の
増大、満足度の向上さらには自治体経費の削減を目指したもので、例えば、
「オリックス野
球クラブ株式会社が、都市公園法の管理許可制度を活用し、スカイマークスタジアム(兵
庫県神戸市)を経営している」
(原田編著[2007])など、公共スポーツ施設を利用したスタ
ジアムビジネスに着手するプロスポーツチームも出始めている。
大阪府内のいくつかの公共施設の指定管理者となっているスポーツ用品メーカーでは、
「スポーツ用品メーカーとして、スポーツをする人との接点をもつことは、利用者の声を
商品開発に活かしたり、企業の認知度を高めるなどの多くのメリットは感じているものの、
実際に運営してみて、企業として一定の利益を確保することの難しさも感じている。例え
ば、利用者は、安価な使用料に慣れてきたため、新たな自主事業を有料で実施するのが難
しい状況である」と運営上の課題を指摘している。また、あるスポーツサービス提供企業
は、
「シンボル的な公共スポーツ施設の指定管理者になることは企業の信用度も増すため、
今後も積極的に取組みたい。ただし、運営にあたっては、入札後、予測していなかったよ
12
IAAFは平成 11 年に選手の安全のためにトラックの性能を標準化した。最上級の認定を受けるには、
「衝撃減衰率、垂直変位量、引張強度といった性能をはじめ、亀裂や剥離が皆無であることや平坦性など
9つの厳しい検査項目」を満たす必要があり、国内ではその他に、
「東北電力ビッグスワン(新潟市)、ユ
ニバー記念競技場(神戸市)」が認定されている(財団法人大阪 21 世紀協会[2007])。
102
うなメンテナンス費用が発生することもあり、民間企業として一定の利益を確保しながら、
良質なサービスを提供していく難しさも実感している」と述べているなど、民間事業者に
よる公共スポーツ施設運営には検討すべき課題もみられる。
2.民間スポーツ施設
府内には、かつては、日本生命球場、藤井寺球場、大阪球場と野球場を中心にシンボル
的な民間スポーツ施設が存在していたが、現在は、大規模な施設型民間スポーツ施設とし
ては、京セラドーム大阪と近鉄花園ラグビー場のみとなっている。
(命名権・商標権ビジネスが活発になる)
「大阪ドーム」は、平成 18 年7月 1 日からネーミングライツ・パートナーシップ契約
により、
「京セラドーム大阪」になった。スポーツ施設の命名権(ネーミングライツ)の売
却については、近年、地方公共団体を中心に積極的に行われている。スポーツ施設を所有・
管理運営する企業にとっても、自社名を冠したスポーツ施設の存在は、広告宣伝効果は高
いものの、命名権や商標権の売却については、契約の金額次第で検討の余地はあるだろう
との意見もある。今後、民間・公共にかかわらず、多くのスポーツ施設において命名権を
めぐる交渉は盛んに行われていくことが推測される。
(伝統的に使用されてきた天然芝のグランド)
「Jリーグ百年構想」の取組の中には、「あなたの町に緑の芝生におおわれた広場やス
ポーツ施設をつくること」と明示されている 13。Jリーグの公式戦はすべて、常緑の天然
芝のピッチで開催されているが、Jリーグのこうした考え方は、その後、全国各地に広ま
り、スポーツ施設はもとより、校庭や園庭にも芝生が普及するまでになっている。
プロ野球で使用される球場は人工芝のところが多いが、阪神甲子園球場の外野グランド
は、日本のプロ野球の本拠地としては稀少となった天然芝である。開場当初は外野も土の
グランドであったが、現在、一年中芝生でプレーできるようになった。
ラグビーにおいてもトップリーグなどは天然芝の競技場で行われている。近鉄花園ラグ
ビー場では「一流の競技環境に耐えうる芝生の管理はかなり専門的であるため、他場との
情報交換に加え、グループの造園土木会社にコンサルタントを依頼しながら、ノウハウの
研究に努めている。天然芝を、秋から冬にかけて開催されるトップリーグや全国高校大会
などの大きな試合時にベストコンディションにもっていくためには、夏芝(6月~8月)
と冬芝(約3週間)の養生が欠かせない。試合スケジュールとの兼ね合いで、養生期間を
何とか確保できるよう調整している。シーズン中でも、土日に試合があったら、その後、
1週間は養生させなければいけないし、毎週末試合をやれば、芝生への負担が重すぎる。
そのため、グランドの稼働日は年間 60~70 日ぐらいとなる」と、天然芝の維持管理が稼働
率に大きな影響を与えることを指摘している。
13
Jリーグホームページを参照した(アクセス日
http://www.j-league.or.jp/100year/lawn/
平成 20 年3月 10 日)。
103
一般に、天然芝のグランドは管理の負担が重いことに加え、競技場の稼働率を低くせざ
るを得ないことを考えると、年々天然芝に近い製品づくりや施工の技術が向上している人
工芝の採用も検討されるだろう。しかし、各スポーツ団体の理念により、歴史と伝統のあ
る試合は、天然芝の競技場で開催されることが条件となっていることもあることから、今
後もシンボル的競技場の役割として、天然芝のグランドが維持されていくことが推測され
る。
(人工芝で天然芝の環境性能の再現に取組む)
京セラドーム大阪は、芝のパイルの間に砂・ゴムチップが埋め込まれている天然芝に近
いタイプの人工芝で、野球だけでなくサッカー、アメリカンフットボール、ラグビーなど、
各種スポーツ競技に使用されている。
こうしたなか、天然芝の環境性能を人工芝で再現しようと取組んでいる企業のひとつに、
スポーツ施設用資材の製造、販売、施工などを行うクリヤマ株式会社(大阪市淀川区)が
ある。同社は、平成 19 年5月から2年間、福岡市、福岡大学との産学官共同プロジェクト
で実証・研究を続け、新たな技術開発を協力して進めている14。
本来、ラグビー、サッカー、野球などのスポーツを行う競技場のグランドは、環境面、
運動面から、天然芝が最適なのはいうまでもないが、前述したように、良質な芝コンディ
ションを保つための使用可能期間の制限や維持費を考えると、人工芝の採用も選択肢に入
れざるをえない施設の出現が今後予測されることから、人工芝の研究開発も進められてい
くことが推察される。
14
同社のホームページを参照した(アクセス日 平成 20 年3月 11 日)。
http://www.kuriyama.co.jp/mondoturf/product/fukudai.html
104
第4節
スポーツサービス提供産業
スポーツサービス提供産業は、ハードとしての施設・空間にソフトであるサービス・情
報が加味されて生まれた新しいタイプのビジネスである。その中には、例えばフィットネ
スクラブやテニスクラブに代表されるクラブビジネス、そしてスイミングスクールやテニ
ススクールに代表されるスクールビジネスが含まれる。従来は装置産業と位置づけられて
きたが、近年は、顧客満足を重視した接客サービスと独自の集客ソフトの構築が必要とさ
れる。
本節では、同産業の中でも一定の市場を形成し、成長が期待される大阪府のフィットネ
スクラブ、ゴルフ場、ゴルフ練習場、ボウリング場、テニス場について統計データをもと
に概観した後、聞き取り調査で得た情報をまとめる。
1.フィットネスクラブ
(1)
概要
(フィットネスクラブの定義)
フィットネスクラブの定義は必ずしも明確ではなく、アスレチッククラブ、ヘルスクラ
ブ、スポーツクラブなど様々な名称がある。経済産業省による特定サービス産業実態調査
では、調査対象の範囲として、①室内プール、トレーニングジム、スタジオなどの運動施
設を有し、②インストラクター、トレーナーなどの指導員を配置し、③会員にスポーツ、
体力向上などの個人指導を行う事業所(ただし、スイミングスクールのみの事業所は除く)
と定めている。
フィットネスクラブは会員制で運営され、会員には個人会員と法人会員がある。その他、
会員以外でもその都度利用料を支払えば利用することができるフィットネスクラブもある
が、その場合の料金は、会員より割高である。
(トレーニングジム、フィットネススタジオ、プールの装備が主流)
フィットネスクラブが保有する施設としては、トレーニングジム、フィットネススタジ
オ、プール、ジャグジー・スパ・サウナ・浴室があり、保有率はそれぞれ、96.1%、88.2%、
86.3%、79.7%であり、これらの施設を備えたクラブが主流と言えよう(図表3-4-1)。
それだけに、新規出店には、プール、ジム、スタジオの3施設を備えた標準的なクラブで
も、6~8億円の高額な設備投資を要するといわれている。
(大阪府の事業所数、年間売上高、個人会員数はいずれも増加傾向)
平成 17 年における大阪府内の事業所数は 153 箇所、年間売上高は 38,606 百万円、個人
会員数は、351 千人で、14 年から 17 年にかけてそれぞれ 7.7%、18.0%、14.0%増加して
いる(図表3-4-2)。大阪府の全国シェアは、それぞれ 8.1%、10.0%、9.1%で、い
ずれも東京都に次いで全国第2位である。
105
図表3-4-1
フィットネスクラブが保有する施設(大阪府、平成 17 年)
全国
保
有
す
る
施
設
事業所数
プール
トレーニングジム(アスレチックジム)
フィットネススタジオ
テニスコート
スカッシュ・ラケットボールコート
ゴルフ練習場
マッサージ・エステティック
アリーナ(体育場)
ジャグジー・スパ・サウナ・浴室
喫茶・レストラン
その他
1,881
1,503
1,776
1,605
192
178
303
618
136
1,410
221
319
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
図表3-4-2
(単位:箇所、%)
保有割合
大阪府
(大阪府)
153
-
132
86.3
147
96.1
135
88.2
10
6.5
9
5.9
18
11.8
53
34.6
14
9.2
122
79.7
16
10.5
33
21.6
フィットネスクラブ編』(平成 17 年)より作成。
都道府県別フィットネスクラブ事業所数・年間売上高・個人会員数
(単位:箇所、%、百万円、千人)
事業所数
年間売上高
個人会員数
平成14年 平成17年 増加率 平成14年 平成17年 増加率 平成14年 平成17年 増加率
東京都
254
247
-2.8
76,952
83,992
9.1
678
684
0.9
神奈川県
94
103
9.6
26,335
35,246
33.8
248
333
34.3
愛知県
104
111
6.7
17,960
19,925
10.9
197
229
16.2
大阪府
142
153
7.7
32,711
38,606
18.0
308
351
14.0
全国
1,708
1,881
10.1
325,919
385,770
18.4
3,292
3,853
17.0
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書 フィットネスクラブ編』
(平成 14・17 年)より作
成。
(年間売上高は、年・月会費が全体の7割以上を占める)
フィットネスクラブ業務の年間売上高の内訳をみると、年/月会費が全体の7割以上を
占めている(図表3-4-3)。その他の内訳では、スクール(7.2%)や食堂/売店(直
営)売上収入(4.9%)など、利用者のニーズに対応する形で収益を確保しているものも1
割強となっている。なお、入会金については、無料もしくは割引が常態化しているため、
低い構成比となっている。
(全ての年齢層で女性会員が多い)
大阪府における平成 17 年の男女別年齢層別個人会員数を見ると、男性と女性の会員数
と比率はそれぞれ 44.8%、55.2%で女性の方が多く、20 歳未満から 60 歳以上まで全ての年
齢層で女性会員の方が多くなっている(図表3-4-4)。男性会員の少ない年齢層は、50
歳代、60 歳以上であるが、今後、団塊の世代が定年退職期を迎えることから、新規会員と
して呼び込んでいきたい層であろう。健康志向を背景にフィットネスに対する潜在需要は
大きいものと思われる。
女性会員は、20 歳未満と 40 歳代を除いて、どの年齢層も3万人前後とほぼ一定数の会
員が存在している。40 歳代は男性会員も少ないことから、ともに、仕事、家事に忙しい年
106
齢層であるため、フィットネスに費やす時間の確保が困難な世代と推測される。また、男
性、女性とも 20 歳未満の会員が多いのは、幼児と小学生のプール会員が多いためと推測さ
れる。特に幼児・小学生のプール会員の多いクラブでは、自転車や徒歩で通える範囲が商
圏と言われているため、地域密着の販売促進活動は欠かせない。
図表3-4-3
フィットネスクラブ業務の年間売上高の内訳(平成 17 年)
全国
入会金
5,211
年/月会費
283,486
13,847
内 利用料金
訳 スクール
37,076
食堂/売店(直営)売上収入
18,954
その他
27,197
385,770
合計
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
図表3-4-4
男性
女性
合計
男女別年齢層別フィットネスクラブ個人会員数(大阪府・平成 17 年)
20歳未満
44,696
45,693
90,389
20歳代
23,247
31,809
55,056
30歳代
29,191
32,143
61,334
40歳代
21,505
25,579
47,084
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
(2)
(単位:百万円、%)
構成比
大阪府
(大阪府)
601
1.6
29,104
75.4
1,475
3.8
2,772
7.2
1,890
4.9
2,764
7.2
38,606
100.0
フィットネスクラブ編』(平成 17 年)より作成。
50歳代
17,875
28,872
46,747
(単位:人)
60歳以上
合計
20,553 157,067
29,790 193,886
50,343 350,953
フィットネスクラブ編』(平成 17 年)より作成。
取組
(月会費を割安にして会員数増加を図る)
住宅街にあるJRの駅に近いプール、ジム、スタジオを有するフィットネスクラブでは、
入会者が増加する2月から夏にかけて集中して入会キャンペーンを行っている。20 歳代の
若い世代は健康志向が他の世代ほどは高くないなどの理由から定着率が低いことを踏まえ、
会員募集にあたっては、新規会員数の増加とともに会員の定着率の向上を目的として、30
歳代以上の女性をターゲットとしている。
また、入会の呼び水となるよう、月会費が割安となる平日の昼間限定で利用できる会員
の募集を行っているが、これは、フィットネスクラブにとっても、施設が混み合うことな
く稼働率を高めることができるというメリットもある。
なお、秋から1月にかけてはキャンペーン効果が上がらず、新規入会者数が減少する傾
向があるため、この期間は会員の定着に力点を置いているとのことであった。
(多様なプログラムの提供で入会を促し、定着率を高める)
あるフィットネスクラブでは、会員に提供しているプログラムは、朝から午後3時まで
と午後6時以降に集中しているという。午後4時~6時ぐらいは、夕食の準備にあたる時
107
間帯のため会員の利用が減少することから、会員外でも利用できる有料のメニュー 15を集
中して実施している。これらの有料メニューは、会員のニーズや講師からの希望などを基
に決定しているが、有料メニューへの参加をきっかけに入会が促されるということもメニ
ュー決定の重要な判断材料である。
会員向けには、エアロビクス(運動系)、ヨガ・ピラティス(調整系)、武闘系、ダンス
系など、様々なプログラムを提供しているが、人気のあるクラスでは、開始前から行列が
できて人数制限しなければならないこともあるとのことである。
また、会員の中には、オープンとともに来館し、午後4時過ぎぐらいまで館内で過ごす
ことが生活のリズムとなっているような中高年齢の女性も見受けられるとのことであった。
(特定健診・保健指導への対応)
平成 20 年4月から医療保険者(国保・被用者保険)に対して、40 歳以上の被保険者、
被扶養者を対象とする、メタボリック症候群(内臓脂肪型肥満などに起因した高脂血症、
高血糖症(糖尿病)、高血圧などの症状が複合した状況)に着目した健診および保健指導の
事業実施が義務づけられる。このため、今後、新事業としてメタボリック症候群予防の運
動指導などのメニューを構築していきたいとするフィットネスクラブも多く、今後、法人
会員の各企業とどういう形で連携していくかを模索している。また、個人会員の中にも、
健康に良いことには投資を惜しまない層も存在するため、今後、単価の高いパーソナルト
レーニングのメニューを積極的に導入していこうともしている。
(インストラクターを自社で養成することによって差別化を図る)
差別化を図るためには、設備の更新に加えてインストラクターやトレーナーなどの人気
のあるスタッフの確保が不可欠となる。特に個人指導が行える技能とコミュニケーション
能力を有した優秀なパーソナルトレーナーの確保は容易ではないとの指摘があった。プロ
グラムの見直し、編成は一般に4月と 10 月に行われ、その時点でインストラクターと契約
するが、技量や経験によって報酬は様々である。近年、一部のインストラクターの報酬の
上昇や他店との取合いの状況も生まれている。そのため、社内で資格制度を導入し、イン
ストラクターを養成することで他社との差別化を図っているところも見られる。
(フィットネスクラブと会員のつながりを活かす動き)
自分のことをよく知っているスタッフやインストラクターから個々に合った用品が提案
されると、大規模小売店よりも価格が高くても、フィットネスクラブ内のショップで購入
する個人会員が多い。フィットネスクラブ側も、収益確保の面からショップでの販売を重
視している。
フィットネスクラブは多くの人が集まる場所であるという特性を活かして、情報提供機
能の多様化を考え、例えば、旅行業の資格を取得して新たな事業を計画しているところも
ある。
15
社交ダンス、太極拳、空手、フラダンス、バレエなどおけいこ系。
108
2.ゴルフ場
(1)
概要
(ゴルフ場の分類)
日本のゴルフ場の主流をなすのはメンバーコースであり、会員が安い料金で優先的にプ
レーすることができる。ほとんどのコースがビジターも受け入れるが、料金はメンバーと
比較して割高である。ゴルフ場は大きく3つのタイプに分類される。1つは、伝統と格式
を維持するゴルフ場であり、キャディのつかないセルフによるプレーが認められていない。
しかし、キャディサービスについては、以前は大学のゴルフクラブのアルバイト先でもあ
ったが、近年、部員の減少傾向もあり確保が難しく、キャディ人材の不足がみられる。こ
うしたことから、一定数しかキャディサービスが提供できないゴルフ場もある。
その対極に位置するのが、外資系企業による経営に転換したゴルフ場で、プレー料金を
引下げ、会員以外の一般のプレーヤーも利用しやすくすることによって稼働率を高める経
営志向である。プレー料金の値下げによって、ゴルフ練習場で数時間過ごすよりも、1日
中過ごすことができるゴルフ場でのプレーに割安感が出てきている。3つめは、両者の中
間に位置するゴルフ場である。
(大阪府のゴルフ場数、年間売上高、年間延べ利用者数はいずれも減少)
平成 16 年における大阪府内のゴルフ場数は 33 箇所、年間売上高は 23,036 百万円、年
間延べ利用者数は 1,646 千人で、13 年から 16 年にかけてそれぞれ 15.4%、21.9%、12.2%
減少している(図表3-4-5)。東京都、神奈川県、愛知県を含め全国的に、年間売上高、
年間延べ利用者数は減少しているが、大阪府の減少率は神奈川県とともに高い値となって
いる。また、全国に占めるシェアは、それぞれ 1.6%、2.4%、2.2%である。
図表3-4-5
都道府県別ゴルフ場数、年間売上高、年間延べ利用者数
ゴルフ場数
年間売上高
平成13年 平成16年 増加率 平成13年 平成16年
東京都
19
19
0.0
19,789
18,397
神奈川県
47
40
-14.9
49,522
39,127
愛知県
55
57
3.6
39,706
33,845
大阪府
39
33
-15.4
29,484
23,036
全国
2,067
2,026
-2.0 1,155,408
975,846
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
(単位:箇所、%、百万円、千人)
年間延べ利用者数
増加率 平成13年 平成16年 増加率
-7.0
952
937
-1.6
-21.0
2,526
2,172
-14.0
-14.8
2,453
2,403
-2.0
-21.9
1,875
1,646
-12.2
-15.5
77,041
73,884
-4.1
ゴルフ場編』(平成 13・16 年)より作成。
(平成 17 年以降、年間延べ利用者数は微増し回復のきざしが見られる)
関西ゴルフ連盟に加盟するゴルフ場の年間延べ利用者数をみると、平成 17 年から 18 年
にかけて、京都府、奈良県、大阪府、兵庫県でそれぞれ 2.7%、0.9%、0.7%、0.6%増加
しており、2府4県の合計値でも 0.7%の増加となっている(図表3-4-6)。
また、大阪府の 18 ホールあたりの延べ利用者数は 44,059 人と2府4県の中で最も多く
なっている。
109
図表3-4-6
関西ゴルフ連盟の加盟ゴルフ場、年間延べ利用者数
加盟クラブ数
平成17年
滋賀県
24
1,046,930
京都府
23
1,011,249
奈良県
29
1,238,320
大阪府
29
1,560,249
和歌山県
16
594,268
兵庫県
98
3,875,794
合計
219
9,326,810
資料:関西ゴルフ連盟による集計値より作成。
(2)
(単位:箇所、人、%)
年間延べ利用者数
18ホール当り
平成18年
増加率
(平成18年)
1,042,713
-0.4
33,770
1,038,851
2.7
32,360
1,249,657
0.9
37,868
1,571,641
0.7
44,059
589,847
-0.7
32,094
3,899,901
0.6
33,364
9,392,610
0.7
35,123
取組
(店舗販売の強化)
ゴルフ場内の店舗では、市中のゴルフ専門店と同程度の充実した品揃えをしているとこ
ろも存在し、試打用のクラブをコースを回る前に貸し出すようなサービスも登場している。
(全国に先駆けて小学生を対象にしたゴルフ大会を開催)
関西では全国に先駆けて、平成 12 年より小学生を対象にしたゴルフ大会が開催される
など、長年、小学生ゴルファーの育成に取組んでいる。関西における小学生ゴルファーは、
ゴルフ人口の1%にも満たないものの、ここ2~3年で男女とも増加している。特に関西
の中・高校生に全国レベルの女性ゴルファーが存在していることが牽引しているのか、小
学生では、特に女児の比率が高い。
(営業時間終了後、ジュニアゴルファーに無料開放)
子どもの場合、親の影響でゴルフを始めて小・中学生までは続けても、高校生で辞める
率は高く、さらに、大学生においても、わずかながら減少がみられる。敷居が低くなった
と言われるゴルフであるが、やはり高価なスポーツである。そこで、平成 17 年頃から、関
西ゴルフ連盟に加盟するゴルフ場の内、約 50 のゴルフ場が営業時間終了後、ジュニアゴル
ファーに無料開放している。ただし、ゴルフ場を活用したいというニーズは高いものの、
交通の利便性の問題から、現在、土・日を中心に約半数のゴルフ場しか活用されていない
状況である。
3.ゴルフ練習場
(1)
概要
(ゴルフ練習場の分類)
ゴルフ練習場は、施設の形態から大きく4つに分類される。室内練習場は、打席数 10
打席以下で、規模は 30 坪前後、ビデオ機器などを導入し、都心部で増加している施設であ
る。また、屋上練習場は、打席数 15 打席前後、距離5~10m、規模 50~100 坪ほどである。
110
顧客層はサラリーマン中心なので利用時間は平日の昼休みと勤務後、土曜日の午後に集中
しており、収益性の点では不利であることから施設数は横ばいである。屋外練習場は最も
多いタイプの練習場であり、打席数 10~40 打席、距離 50~150m、規模 300~3,000 坪ほ
どであり、大半が喫茶、プロショップなどを併設している。打放し練習場は打席数 50 打席
以上、距離 150m以上、規模 5,000~10,000 坪ほどで、土・日・祝日に利用客が集中して
いる。
(ゴルフ練習場の開廃業の動き)
ゴルフ練習場の新規参入としては、例えば、不動産企業が、比較的都心部に近いエリア
であるが公共交通機関からはずれた交通の不便な遊休地の土地活用として始めたケースが
ある。また、ゲームセンターや温泉などもある総合レジャー施設の一画に立地している施
設もあるが、いずれも広い駐車場が併設されている。一方で、元々ゴルフ練習場であった
が、近年、マンションなどに建替えて廃業するところも散見される。
(大阪府のゴルフ練習場数、年間売上高、年間延べ利用者数はいずれも増加)
平成 16 年における大阪府内のゴルフ練習場数は 92 箇所、年間売上高は 13,101 百万円、
年間延べ利用者数は 7,320 千人で、13 年から 16 年にかけてそれぞれ 4.5%、8.4%、10.4%
増加している(図表3-4-7)。16 年の大阪府の全国シェアは、それぞれ 3.4%、6.6%、
7.1%である。
ある練習場では、
「平日の午前中はシニアや近隣からの来場が多く、午後6時を過ぎた頃
から、勤務後の来場者が増えてくる。土・日・祝は、午前中に1回、来場のピークがあり、
全体的に会社員のような層の来場が多い傾向がある。雨天時は、出だしは遅いもののゴル
フコースへ行けなかった人が来場するのか通常より減ることはない。ただし、強風の場合
は、危険防止のため周辺にはりめぐらしたネットが自動的に下がる構造になっているため、
必然的に営業できなくなる。数年前に来場動機について調査したところ、職場に近い、家
が近い、友人との待ち合わせという理由が多かった。以前は頻繁に見られた、会社の上司
が部下を連れて練習に来るという光景はしばらく途絶えていたが、近年また増えてきてい
る」と顧客を分析している。
図表3-4-7
東京都
神奈川県
愛知県
大阪府
全国
都道府県別ゴルフ練習場数・年間売上高・年間延べ利用者数
ゴルフ練習場数
平成13年 平成16年 増加率
204
179
-12.3
129
119
-7.8
184
167
-9.2
88
92
4.5
2,868
2,707
-5.6
(単位:箇所、百万円、%、千人)
年間延べ利用者数
年間売上高
平成13年 平成16年 増加率 平成13年 平成16年
増加率
23,382
23,678
1.3
9,889
9,481
-4.1
18,473
17,779
-3.8
7,442
7,858
5.6
12,850
12,809
-0.3
8,378
8,718
4.1
12,082
13,101
8.4
6,629
7,320
10.4
169,084 199,097
17.8
104,771
102,410
-2.3
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
111
ゴルフ練習場編』(平成 13・16 年)より作成。
(2)
取組
(ゴルフレッスンの運営)
ゴルフ練習場でのゴルフレッスンの運営は、レッスンプロと契約して自前で行うところ
も増えているようだが、講師の手配などが手間であるため、専門業者へ委託しているとこ
ろもある。後者の場合、ゴルフ練習場の収入は、レッスン中に貸し出す座席料と生徒が使
用するゴルフボール代である。来場者が比較的少ない平日の昼間の時間帯のレッスンが満
員になれば増収が期待できるが、現状は、土・日、平日夜は満員になることが多いものの、
平日昼間には空きがあることも少なくない状態である。
(施設の充実による差別化)
最近、バンカー練習場を新規に設置したゴルフ練習場では、バンカーの利用料自身は安
価なため資金回収は難しいものの、練習場の質を高めるひとつの投資と考えている。また、
猛暑対策として、冷房のきいた休憩ルームを設置するとともに、練習場にはスポットクー
ラーを使用したり、工場用の大型扇風機を使用するなどの対応をしている。なお、近年の
猛暑から暑さ対策の必要性は感じているものの、電気代の負担が大きいという課題も抱え
ている。
また、ゴルフ練習場内のゴルフショップで、定期的に試打会を開催したり、ゴルフクラ
ブの微妙な調整などが行える工房を併設するなど、来場者の多様なニーズに応える施設の
充実で他のゴルフ練習場との差別化を図っているところもある。
(プリペイドカードやポイントカード制による顧客の囲いこみ)
1かご 100 球で 1,000 円という価格を変更するとなると自動販売機を改造しなければな
らないこともあり、価格競争ではなく、施設の高級感で差別化を図ろうとしているゴルフ
練習場がある。また、プリペイドカードやポイントカード制を採用し、たまったポイント
は球の購入をはじめ、ショップやレストランでも使えるようにして顧客の囲いこみをはか
っている事例もみられる。
(24 時間営業を実施)
24 時間営業を実施しているところによると、「真夜中から朝方にかけて客足が途絶える
時間帯もあるが、その時間だけを閉めるのも非効率であり、1日をトータルでみて経営的
に成立しているため 24 時間の営業にしている。真夜中から朝方には、例えば、お店が閉店
したあとのオーナーやスタッフがお客さんと来場する姿や交代制の勤務をしているような
人の来場が見かけられる」とのことであった。
(地域との関係性を大切にする)
ゴルフ練習場は近隣の高齢者がアルバイトスタッフになるなど、地域とのかかわりも多
い。また、地元に迷惑をかけることがあるかもしれないので、練習場の責任者は、日頃か
ら地域の自治会にかかわるなど周辺地域との関係を大切にしている。例えば、地域の子ど
も達を対象にして、ゴルフのニュースポーツイベントを開催している事例や年間を通じて
レッスン料を無料化している事例がみられる。
112
4.ボウリング場
(1)
概要
(ボウリング場の分類)
ボウリング場の経営形態は付帯事業の種類から、ボウリング中心型で付帯施設としてプ
ロショップ、レストランなどが併設されているもの、並列型でプール、ビリヤード、サウ
ナなど他の事業との複合的経営が行われているもの、付帯施設中心型でいわゆる総合レジ
ャー・スポーツセンターと呼ばれるものの3つに分類できる(中小企業動向調査会編
[2000])。
(大阪府のボウリング場数、年間売上高、年間延べ利用者数はいずれも増加)
平成 16 年における大阪府内のボウリング場数は 62 箇所、年間売上高は 20,927 百万円、
年間延べ利用者数は、6,818 千人で、13 年から 16 年にかけてそれぞれ、横ばい、89.1%の
増加、4.5%の減少となっており、年間売上高の大幅な増加がみられる(図表3-4-8)。
全国、東京都、愛知県の年間売上高もそれぞれ、74.8%、118.8%、88.1%と大幅に増加し
ていることから、全国的にボウリング場の市場規模の増大がわかる。大阪府のボウリング
場の全国シェアは、それぞれ 6.5%、9.9%、7.9%で、いずれも東京都に次いで第2位で
ある。
あるボウリング場では、「景気の回復により、企業の福利厚生としてのボウリング大会
や手軽なレクリエーションとしてボウリング大会が開催されるようになってきたことから、
18 年9月頃から大阪を含め全国的に利用者数の伸びがみられる」と分析している。また、
別のボウリング場では、「10 月は、企業の内定式後のボウリング大会に利用されることも
多い。近年、大阪市内のボウリング場の閉館がいくつかあり、そこで練習していた競技会
に参加するような熱心なボウリング愛好者が、他のボウリング場へ流れてきている」との
意見が聞かれた。
また、一般にシニア層が元気であり、ボウリングブームを経験して上手なはずの団塊の
世代はまだ元気がない感じであるとの指摘もあった。
図表3-4-8
都道府県別ボウリング場数・年間売上高・年間延べ利用者数
ボウリング場数
平成13年 平成16年 増加率
東京都
70
68
-2.9
神奈川県
58
52
-10.3
愛知県
40
38
-5.0
大阪府
62
62
0.0
全国
994
948
-4.6
平成13年
12,981
8,743
8,302
11,065
120,908
年間売上高
平成16年
28,404
9,458
15,616
20,927
211,309
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
113
(単位:箇所、%、百万円、千人)
年間延べ利用者数
増加率 平成13年 平成16年 増加率
118.8
8,089
8,795
8.7
8.2
5,757
5,458
-5.2
88.1
6,059
6,246
3.1
89.1
7,139
6,818
-4.5
74.8
86,485
86,596
0.1
ボウリング場編』(平成 13・16 年)より作成。
(ボウリング場の収益構造)
ボウリング場の売り上げは、レーン利用料 65%、貸靴料 10%、レストラン、売店 10%、
物販その他 15%程度が標準的だといわれてきた(中小企業動向調査会編[2000])。スタッ
フにはプロボウラーもいて、雇用形態は、正社員と年棒制がある。通常は、会員にアドバ
イスをしたり、工房においてボールや靴のアドバイスなどを行っている。プロが常駐する
場内のショップでは、販売価格では、専門店にはかなわないため、販売目的というより、
会員の精神的フォローの役割が大きい。
(利用しやすいボウリング場に向けた設備投資)
設備投資について、あるボウリング場では、台の上にボールを置いて台の角度だけ決め
れば投げられる投球補助台の採用や全レーンに溝にボールが落ちないようにする装置(バ
ンパー)の設置で、子どもや障がいのある人たちへの配慮がなされている。また、通常、
7~8年でコンピューターの入れ替えが行われているため、投資負担は大きい。
(2)
取組
(附属設備を集客手段に活用)
宴会場を有するボウリング場でのボウリング大会の予約が好調である。ボウリング大会
とその後の宴会の手配を一度で済ますことができるのが幹事に好評である。1時間半プレ
ーをして、1時間半会食をするというパターンが一般的である。
(多様な試合を開催して新規来場者の開拓と会員の定着を図る)
あるボウリング場では、競技会やリーグ戦 16を定期的に開催しているが、例えば、1週
間で 23 リーグ、延べ 600 名の参加があり、参加者数は安定しているとのことである。また、
リーグ戦を行うフロアと一般客用のフロアが分けられ、試合に集中できるように配慮がな
されている。その他、権威のある大会を開催したり、アイドル的なプロボウラーをゲスト
に呼んだ大会、シニア大会などの年齢別大会など、様々な大会を開催することによって、
新規来場者の開拓と会員の定着を図っている。プロボウラーを招くとコストはかかるが、
プロボウラーのファンなど、参加者が増加するため費用対効果は高いとのことであった。
(ボウリング場間の連携)
12 月の忘年会シーズンの予約は、平成 15 年ぐらいから約3年間は大変少ない状態であ
ったものの、18 年では対前年比 30~40%の伸びを示したところもある。19 年 10 月の時点
で、12 月までの土・日の 18 時から 20 時までのスタートは既に予約で埋まっていたところ
もあった。予約を断る際は、協会加盟の他のボウリング場を紹介するなど、ボウリング場
間での連携が行われている。
16
競技会とは、飛び込み参加が可能な試合であり、リーグ戦は日程が既に決まっているため、あらかじ
め登録を必要とするという。
114
5.テニス場
(1)
概要
(大阪府のテニス場数、年間売上高、年間面貸し延べ利用者数はいずれも増加)
平成 16 年における大阪府内のテニス場数は 61 箇所、年間売上高は 4,438 百万円、年間
面貸し延べ利用者数は 841 千人で、13 年から 16 年にかけてそれぞれ 4.7%、1.4%、1.2%
減少している(図表3-4-9)。東京都、神奈川県、愛知県を含め全国的に増加基調であ
ることから、13 年から 16 年の大阪府のテニス場市場は回復が遅れていると言える。大阪
府の 16 年の全国シェアは、それぞれ 4.0%、8.0%、8.2%であった。
図表3-4-9
都道府県別テニス場数・年間売上高・年間延べ利用者数
テニス場(テニス練習場を含む)数
東京都
神奈川県
愛知県
大阪府
全国
平成13年 平成16年
155
156
161
182
79
92
64
61
1,349
1,531
増加率
0.6
13.0
16.5
-4.7
13.5
(単位:箇所、%、百万円、千人)
事業所全体の年間売上高
年間面貸し延べ利用者数
平成13年 平成16年 増加率 平成13年 平成16年 増加率
10,210
11,018
7.9
1,054
1,323
25.5
17,427
17,532
0.6
750
1,000
33.3
2,590
3,952
52.6
422
573
35.8
4,503
4,438
-1.4
851
841
-1.2
46,820
55,162
17.8
7,985
10,253
28.4
資料:経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
(2)
テニス場編』(平成 13・16 年)より作成。
取組
(優秀なインストラクタ-の確保に向けて)
インストラクターは、テニスの技術が優れているのはもとより、例えば、スクール生が
優先するのが楽しさなのか、技術向上なのかによって指導法が異なることから、スクール
生のニーズにいかに応えられるかが条件になる。生徒を集められるインストラクターは業
界で取り合いとなっている。そこで、常時募集することによって、優秀なインストラクタ
ーの確保に努めているところがある。
(設備の充実による差別化)
一般にインドアのテニスコートでも、倉庫を改造したものから建物の中にあるものまで
イニシャルコストのかけ方にはさまざまなレベルがある。施設の新旧が生徒の募集や定着
に影響するため、定期的な施設の更新は不可欠であり、設備投資金額は必然的に大きくな
る。インドアのテニスコートには、冷暖房完備のものもあるが、空間が広すぎてコストが
合わないことから、ルーフファンを設置して対応しているところもある。床は、クッショ
ン性を高めるために、ゴムの上にカーペットが貼ってあるものを採用している。ひざを痛
める危険性が大幅に減少するため、特に中・高年層に人気がある。
「最近は、空調はもちろん託児室などのサービス機能も充実。従来型の会員制テニスク
ラブが減少する一方、進化したインドアスクールが少しプレーから遠ざかった経験者や初
心者を取り込んでいる」(日本経済新聞[2007 年 11 月 10 日])との指摘もある。
115
第5節
スポーツメディア・コンテンツ産業
スポーツの普及にとって、テレビや新聞などのメディアがその情報をいかに伝播し、見
るものがそれをどのように受け取るかという点はきわめて重要である。また、各種スポー
ツをテーマにした映画やアニメーションは、数々のブームを巻き起こし多大な影響を与え
てきた。
本節では、メディアの中でも主にテレビと新聞に着目し、スポーツに対する取組と大阪
の位置づけについてまとめたい。
1.スポーツに関する情報の受発信
(1)
情報入手の概要
(スポーツに関する情報の入手先は8割以上がテレビのニュース・スポーツニュース)
平成 19 年におけるスポーツに関する情報の入手メディアの第1位は、テレビのニュー
ス・スポーツニュースで、85.1%であった(図表3-5-1)。入手割合は 17 年から微増
しているが、常に8割以上が入手している。さらに、ニュース以外のスポーツ番組から情
報を入手しているのが 47.8%であり、テレビから多くのスポーツ情報を得ている。
(新聞メディアからの情報入手は約5割)
平成 19 年における情報の入手メディアの第2位は、新聞(一般紙)で、50.4%であっ
た。これも入手割合は 17 年から微増しており、約半数の人が新聞(一般紙)からスポーツ
の情報を入手している。そして、スポーツ新聞、夕刊紙からの入手は 10.1%、スポーツ新
聞サイトからの入手は 4.1%であることから、新聞メディアも一般紙、スポーツ新聞、夕
刊紙、スポーツ新聞サイトというように多様な形態で情報発信がなされていることがわか
る。
(携帯電話やパソコンを使って多様なメニューから情報を入手)
パソコンや携帯電話を使ってスポーツに関する情報を得るメニューとしては、ポータル
サイトのニュース、スポーツ新聞サイト、メールマガジン、メールニュース、競技団体・
チーム・選手の公式サイト、スポーツ情報専門サイトがあり、それぞれ平成 19 年の入手割
合は、17.0%、4.1%、3.6%、3.6%、3.4%であった。多様なメニューが携帯電話やパソ
コンを通じて提供されており、個々が入手しやすいメディア環境から情報を入手している
ことが推測される。
116
図表3-5-1
スポーツに関する情報の入手メディア(上位 10 項目:複数回答)
0
20
40
60
80
100
(%)
80.0
81.5
85.1
テレビのニュース・スポーツニュース
44.1
46.2
新聞(一般紙)
50.4
44.4
44.0
テレビのスポーツ番組(ニュース以外)
47.8
ポータルサイトのニュース
17.1
19.9
17.0
スポーツ新聞、夕刊紙
10.0
11.3
10.1
ラジオ
5.2
5.9
6.3
スポーツ新聞サイト
5.6
5.8
4.1
メールマガジン、メールニュース
競技団体・チーム・選手の公式サイト
スポーツ情報専門サイト
3.5
3.6
3.6
3.8
6.0
3.6
平成17年
平成18年
平成19年
3.8
4.4
3.4
資料:ヤフーバリューインサイト株式会社「C-NEWS」と三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社
の共同調査結果「2007 年スポーツマーケティング基礎調査」
http://www.yahoo-vi.co.jp/research/photo/00416.pdf(アクセス日 平成 20 年3月8日)。
(注)全国 15 歳(中学生を除く)~69 歳のアンケートパネル(男性 1,000 名、女性 1,000 名、計 2,000
名)の回答結果。
(2)
各種メディアの取組
(メディアにおける多チャンネル化が進む)
放送メディアを大別すると、地上系無線放送メディア、衛星放送メディア(放送衛星<
BS>系メディア、通信衛星<CS>系メディア)、有線放送メディア(都市型ケーブルテレ
ビ、有線放送)となる。
スポーツ番組の専門放送局を運営する株式会社ジェイ・スポーツ・ブロードキャスティ
117
ング17(東京都江東区)は、野球、サッカー、ラグビー、格闘技、モータースポーツ、バ
スケットボール、サイクルロードレース、卓球、ダンスなど、多彩なプログラムを日本で
唯一、4チャンネルマルチ編成している。近年、スポーツ有料チャンネルの契約数は右肩
上がりの増加傾向を示している。視聴率が重視される地上系無線放送メディアでは、多様
なスポーツの番組を全てカバーできないが、スポーツ専門チャンネルによって豊富な国内
外のスポーツ番組が網羅的に放送されるため、視聴者の多様なニーズに応えることが可能
になっている。ただし、多くのスポーツを有料でしか見られない状況が本当に良いのかに
ついては議論の余地があるだろう。
一方、通信情報イノベーションが加速し、テレビ放送が多チャンネル化し、無料放送か
ら有料放送へ徐々に視聴者の関心が移行し始めている状況下で、コミュニティ放送として
立ち上がったケーブルテレビ局が、地域スポーツの振興へ大きく貢献することが期待され
ている。第4章第2節で滋賀県のケーブルテレビ局に関しての先行研究を取り上げている
が、大阪府内では、Jリーグのガンバ大阪が地域のケーブルテレビと連携して広報に励む
など、プロチームにおいても地元ケーブルテレビ局との協力体制は欠かせないようだ。
(放映権を保持する理由)
各メディアにおいて、制作費がかさんで赤字になったり、視聴率が上がらなかったとし
ても、放映権を保持する理由のひとつには、例えば、野球やサッカーのような人気のある
スポーツや国際大会などの放映権は他社との獲得競争が厳しく、一旦権利を手放してしま
えば、他社にすぐに買い取られ、再び買い戻すのは困難であるという事情がある。さらに、
現在低迷しているスポーツにおいても、アイドル的な選手が突然輩出されたり、強いチー
ムが登場してブームが沸き起こることもあるなど、スポーツの人気は予測できない面があ
ることからも放映権を保持しておくことが必要との意見もある。
(地上波放送で放映が制限されるスポーツ種目や試合)
地上波での放映の中では、放送時間帯が深夜に移行したり、準決勝戦以降しか放映され
ないなど、放映が制限されるスポーツも現れてきた。その大きな理由は視聴率であり、そ
れによって、スポンサー料(広告料)も変わってくるため、視聴率が伸びない試合やスポ
ーツが影響を受けている。スポンサー企業側からみると、自社が訴求したい消費者の視聴
率が高いこと18を求めているもので、量(視聴率)のみならず、質(どのような人が見て
いるか)も重要なのである。また、例えば、野球のように攻守交替の場面などにコマーシ
ャルを入れやすい種目に対して、サッカーなどのようにコマーシャルを入れにくい種目が
あるように、スポーツ自身の特性にも大きく左右される。
17
同社ホームページを参照した(アクセス日 平成 20 年2月 29 日)。
http://www.jsports.co.jp/index.html
18 個人視聴率の集計区分の俗称で、購買力のあるF1層と言われる 20~34 歳の女性の視聴率が重視され
る傾向にあるという。指標となる視聴率は、全ての番組において、1分ごとに世帯・個人別に、年齢、性
別などの詳細なデータがとられている。
118
(新聞メディアも国を超えて協力体制へ)
毎日新聞社は、北京五輪において、中国青年報、朝鮮日報との協力体制を構築し、「3
社それぞれの紙面で、従来の五輪報道とはアプローチの仕方を変えた、新鮮で深みのある
記事掲載を約束した」
(毎日新聞[2008 年1月 15 日])と発表した。オリンピックという国
際的なイベントを文化の違う3国のそれぞれの記者が独自の視点から論じたものが同じ紙
面で展開されることにより、読者が、北京オリンピックについて、結果のみならず、それ
ぞれの国の文化としてのスポーツを認識することに寄与するものと思われる。
(新聞紙面におけるスポーツ記事の割合は増加)
新聞社は、長年にわたって、野球をはじめ、ラグビー、駅伝、マラソンなど、関西で開
催される多くの歴史的なスポーツ大会を主催しているが、紙面の中のスポーツ面は、20~
30 年前は約1ページであった。しかし、近年、週末などは約4ページを割くようになり、
スポーツ記事の割合が増加している。さらに、従来は、野球やプロレス・相撲など、限ら
れたスポーツに人気が集中していたが、近年、多様な競技を楽しむ傾向に変化しているこ
とがあるとの指摘がある。
また、スポーツ担当部門は、多くはスポーツを長年担当している記者で構成されている
が、社会部、経済部、学芸部などからの異動でスポーツを担当することもあり、文化とし
てのスポーツや、社会現象の中でのスポーツなど、様々な分野を背景としたスポーツとい
う視点での記事がみられるようになってきた。今後も幅広い層にスポーツへの関心を拡げ
るには、このような多角的な視点での分析が重要になってくるだろう。
(スポーツをテーマにした映画やマンガ・アニメーションの影響)
一過性の流行とも言われる「ブーム」であるが、スポーツの場合もこれまでにいくつか
の「ブーム」がみられる。例えば、平成元年に公開された映画「私をスキーに連れてって」
のヒットがスキーブームの火付け役となり、スキー人口が増加したという。スキー用具の
専門小売店では、その頃スキーを楽しんだ世代が、近年、ファミリーで再びスキーを行う
ようになってきていると分析している。一過性の流行がその後、どのようにスポーツ人口
に影響するかといった点で、この事例は多くの示唆に富むものといえよう。
時代的背景が異なるため、同様のアプローチでブームをひきおこすのは難しい面もあろ
うが、スポーツをテーマにした映画やアニメーション(テレビ放送などの動画)、音楽など、
多様なコンテンツでのアプローチは、スポーツ市場を広げる起爆剤となる可能性もあるだ
ろう。
マンガやアニメーションとスポーツ用品との連動でいえば、ミズノ株式会社(大阪市住
之江区)は、週刊少年サンデー(発行:株式会社小学館)で連載中のマンガ「MAJOR」
(NHK教育テレビで「メジャー」として放送されている)に関して、オリジナルロゴと
主人公である吾郎のイラストをプリントした少年野球品を販売している。マンガやアニメ
ーションの読者・視聴者層である少年野球層へのアプローチとして有効であると考えてい
る。同社では、同モデルの更なる充実を行い、より入門モデルにシフトすることで、アニ
119
メ視聴をきっかけに野球を始めたいと思った子供たちをターゲットとし、更なるファン拡
大を狙っている19。
2.メディアにおける大阪の位置づけ
(大阪の立地優位性)
ある大手新聞社では、オリンピックなど、国際的なスポーツに関しては、主に東京本社
が担当しているという。近年、インターネットから海外のスポーツ選手の情報も入手でき
るようになり、大阪での立地の不都合は緩和されたものの、多くのスポーツ団体の本部が
東京にあることから、東京本社では、情報が直接入手できるメリットがあるという。
一方、大阪府内には、野球やラグビーなどの高校スポーツに関して伝統高が多いことや、
近鉄花園ラグビー場(大阪府東大阪市)を有し、近隣には阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)
という選手たちのあこがれの聖地が存在することによって、テレビ局や新聞関係者にとっ
て立地メリットがあるという。
(スポーツは、大阪文化のコンテンツの位置づけ)
あるテレビ局では、野球の中継は、関西文化のコンテンツ制作の位置づけで放映してい
る。全国的に、地元のプロ野球球団は熱烈に応援される傾向があるが、大阪の場合、特に
その傾向が強く、阪神甲子園球場の存在から、甲子園に出場した高校野球出身のプロ野球
選手を特に応援する傾向があるとの指摘もある。
近鉄花園ラグビー場において、毎年 12 月末から翌1月の初めにかけて開催される全国
高等学校ラグビーフットボール大会は、昭和 55 年度大会以降、毎日放送20が全国ネットに
よるテレビ中継を実施し、平成 12 年からは事前番組として「花園伝説~ここがすべての出
発点~」を放送している。同番組の名選手編では国内トップ選手が1日1人登場して当時
を振り返り、名勝負編ではこれまでに展開された歴史に残る試合を1試合ずつ流している。
このように、試合の中継だけでなく、同大会の魅力や関心を高めるような番組を制作する
ことによって、ラグビーをしている人たちはもとより、観戦者の裾野を広げることにも貢
献している。
19
ミズノ株式会社のホームページ(2007 年 11 月 27 日付けニュースリリース)を参照した(アクセス日
平成 20 年3月3日)。 http://www.mizuno.co.jp/whatsnew/news/nr071127/nr071127.html
20 同社ホームページを参照した(アクセス日 平成 20 年2月 29 日)
。
http://www.mbs.jp/rugby_common/hanazono/
120
第6節
スポーツエンターテイメント産業
スポーツエンターテイメント産業は、スポーツの伝統的3領域(スポーツ用品産業、ス
ポーツ施設空間産業、スポーツサービス提供産業)が全て重なった中心部分に位置すると
考えられる。そのひとつの企業群が、プロスポーツチーム経営を主体としている企業21(以
下、「プロスポーツ企業」と記す)である。本節では、はじめに、「みる」スポーツの市場
規模を確認し、プロスポーツ企業の経営と観客数を増やす取組についてまとめる。
1.スポーツ観戦
(1)
概要
(野球を中心とした市場)
「みる」スポーツで最大の市場規模を誇る野球市場において、平成 18 年の動員数は、
13,965 千人と対前年比 0.4%増加となったが、市場規模は単価の上昇を受けて 60,758 百万
円と同 4.9%の増加となった(図表3-6-1)。サッカーは、12 年以降増加基調にあった
動員数が、18 年は前年割れとなり、これに伴い、13 年以降拡大していた市場規模も前年割
れとなった。
図表3-6-1
スポーツ観戦の市場規模
野球
サッカー
格闘技
相撲
計
平成16年
動員数 市場規模
12,392
55,152
8,232
17,375
1,913
13,749
628
5,498
23,165
91,774
動員数
13,906
9,544
1,807
581
25,838
平成17年
増加率 市場規模 増加率
12.2
57,942
5.1
15.9
19,355
11.4
-5.5
12,978
-5.6
-7.5
5,088
-7.5
11.5
95,363
3.9
動員数
13,965
9,444
1,746
633
25,788
(単位:千人、%、百万円)
平成18年
増加率 市場規模 増加率
0.4
60,758
4.9
-1.0
19,207
-0.8
-3.4
12,330
-5.0
9.0
5,463
7.4
-0.2
97,758
2.5
資料:ぴあ総合研究所[2007]『ぴあ総研 エンタテイメント白書 2007』より作成。
(注)野球、サッカーの推計方法は以下のとおりである。
野球:社団法人日本野球機構の管轄で行われる、一軍選手が出場する公式戦及び「連盟選手権試合」
(ペナントレース)開催中に行われる非公式戦を対象範囲とする。
サッカー:J リーグ/各国トップリーグ加盟クラブあるいは各国A代表の出場する、リーグ戦あるい
はカップ戦を対象範囲とする。
(スポーツ参加市場規模の内、スタジアム観戦市場は、約2割を占める)
スポーツ用品の購入、スポーツ施設利用・会場費、スポーツのスタジアム観戦など、過
去1年間のスポーツ活動への参加にかかる支出を対象としたスポーツ参加市場規模(平成
19 年9月調査)は3兆 8,773 億円となった(図表3-6-2)。スポーツ参加市場の内、
21
財団法人日本プロスポーツ協会のホームページによると、平成 20 年2月現在の加盟団体は、財団法人
日本相撲協会、社団法人日本野球機構、社団法人日本プロゴルフ協会、社団法人日本女子プロゴルフ協会、
社団法人日本プロサッカーリーグ、日本プロボクシング協会、社団法人日本プロボウリング協会 有限責
任中間法人日本ダンス議会、株式会社日本レースプロモーション、新日本キックボクシング協会、日本中
央競馬会、地方競馬全国協会、日本自転車振興会、社団法人全国モーターボート競走会連合会、日本小型
自動車振興会の計 15 団体である(アクセス日 平成 20 年2月 10 日)。http://www.jpsa.jp/01.html
121
施設利用・会費市場が5割近くを占めているのに対して、スポーツのスタジアム観戦市場
は、約2割となっている。
図表3-6-2
スポーツ参加市場規模(平成 19 年)
回答者数
年間平均支出額
608
901
771
30,443
30,634
53,178
スタジアム観戦市場
用品購入市場
施設利用・会費市場
合計
-
-
(単位:円/人、百万円、%)
市場規模
構成比
828,500
21.4
1,265,500
32.6
1,783,200
46.0
3,877,300
100.0
資料:ヤフーバリューインサイト株式会社「C-NEWS」と三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社
の共同調査結果「2007 年スポーツマーケティング基礎調査」(アクセス日 平成 20 年3月8日)。
http://www.yahoo-vi.co.jp/research/photo/00416.pdf
(注)全国 15 歳(中学生を除く)~69 歳のヤフー・バリュー・インサイトのアンケートパネルに対して
実施し、男性 1,000 名、女性 1,000 名、計 2,000 名の回答結果。(調査期間:平成 19 年9月 1 日~9月
4日/4日間)。
(2)
観客を増やす取組
(試合の前後にイベントやショータイムを取り入れて演出する)
バスケットボールbjリーグに所属する大阪エヴェッサ(会社名:ヒューマンスポーツ
エンタテインメント株式会社)は、観客動員数を伸ばすために様々な取組を行っている。
同社に所属するダンスチームによってショーを行ったり、吉本興業株式会社(大阪市中央
区)と協力関係を結び22、試合前にタレントを呼んだイベントを催すなど、観客にとって、
試合自身はもとより、試合前後も楽しめるような工夫を凝らしている。
原田が「bjリーグの特徴は、(中略)アリーナで行われる初のプロスポーツ・リーグ
という点にある。スタジアムや屋外球場と異なり、天候に左右されず、音や照明といった
演出効果を最大限に高めることのできる空間は、エンターテイメントスポーツとしての発
展の可能性を秘めている。バスケットボールのゲームという『コアプロダクト』を中心に、
チアダンス、ファッション、ミュージックといった『サプリメント』によって、他のプロ
スポーツとは異なる商品アイデンティティを構成することが可能となる」(原田編著
[2007])と指摘しているように、それほど当該スポーツに関心のない人も誘って一緒に観
戦できるなど、観戦者の裾野を広げることにも貢献すると思われる。
2.プロスポーツ企業の経営
(1)
概要
(広告料収入が営業収入の半分近くをしめるJリーグ)
Jリーグ(社団法人日本プロサッカーリーグ)を事例に取り上げてみると、平成 18 年度
22
吉本興業スポーツマネジメントサイトを参照した(アクセス日
http://www.yoshimoto.co.jp/sports/evessa/index.html
122
平成 20 年3月8日)。
のJ1とJ2を合わせた営業収入は、69,148 百万円で、その内、広告料収入は 32,367 百
万円であり、営業収入の 46.8%と半分近くを占めている(図表3-6-3)。J1とJ2
の営業収入はそれぞれ 54,341 百万円、14,807 百万円と大きく異なるものの、広告収入の
占める割合は、それぞれ 47.7%、43.6%とほぼ同じ構成比となっている。
間野が、
「『リーグ総体収入』の増加策には、放送権料、入場料収入の増大が必要となる。
しかし、多チャンネル化や有料放送が拡大し放送権料が頭打ちになる中、今後はビジネス
の根幹ともいえる集客による入場料収入の確保がポイントといえよう。そのためには、試
合内容を充実するとともに、スタジアムやアリーナの施設としての魅力を高める必要があ
る。これまでの単なる器や箱ではなく、快適で滞留時間も長く購買意欲をそそるような、
新しいビジネスへの展開が今後のリーグの経営に不可欠である」(原田編著[2007])と指
摘しているように、プロスポーツ企業自身の創意工夫はもとより、スポーツ施設を所有す
る行政や企業とも連携しての「みる」スポーツの環境の整備が求められる。
図表3-6-3
Jクラブ経営成績(平成 18 年度)
(単位:百万円、%)
内訳
J1総額
金額
J2総額
比率
金額
J1・J2総額
比率
金額
比率
営業収入
54,341
100.0
14,807
100.0
69,148
100.0
(広告料収入)
25,906
47.7
6,461
43.6
32,367
46.8
(入場料収入)
11,455
21.1
2,513
17.0
13,968
20.2
(Jリーグ配分金)
5,645
10.4
1,530
10.3
7,175
10.4
(その他)
11,335
20.9
4,298
29.0
15,633
22.6
営業費用
55,153
-
17,173
-
72,326
-
(事業費)
44,663
-
14,188
-
58,851
-
(選手・チームスタッフ人件費)
26,018
-
8,560
-
34,578
-
(一般管理費)
10,490
-
2,985
-
13,475
-
営業利益
-812
-
-2,367
-
-3,179
-
経常利益
-634
-
-1,856
-
-2,490
-
-1,341
-
-1,893
-
-3,234
-
当期純利益
資料:
『平成 18 年度Jクラブ個別経営情報開示資料』より作成(アクセス日
http://www.j-league.or.jp/aboutj/jclub/2006-7/pdf/club2007.pdf
(注)
「選手・チームスタッフ人件費」に含まれる項目は以下である。
・監督・コーチ及び他のチームスタッフ人件費(下部組織を含む)
・選手人件費(報酬の他、支度金、移籍金償却費を含む)
平成 20 年3月 11 日)。
(「みる」スポーツに適したスポーツ施設の不足)
プロスポーツの試合を行う施設は、一定数の収容人数の規模があり、公式競技の開催が
可能な設備が整っていなければならないが、このような条件を満たす施設は、公共スポー
ツ施設である場合が多い。しかし、これらの施設は、試合が開催される土日には、一般の
予約でほとんど埋まっているという状況がある。
123
使用できるとしても、原田が、「(バスケットボールプロチーム)大阪エヴェッサの一試
合平均の集客は 2,130 人であった。この数字は、体育館の座席の少なさにもよるもので、
なみはやドームでのサブ体育館のように、固定席に加え、セットバックを組んで、ようや
く 2,000 席を確保した結果得られたものである。この点、bjリーグの興行を通して、
『見
るスポーツ』を意識して建設されていない、公共体育館の使い勝手の悪さが顕著になった」
(原田編著[2007])と指摘するように、公共スポーツ施設は、元々、市民が手軽にスポー
ツを親しむことを目的に作られたものであるため、スポーツを「みる」場としては、不都
合なところが多い構造であるのが実情である。したがって、試合を行う場合でも、放送設
備などの付帯設備代や椅子などの準備と撤収の経費も相当な額にのぼっている。
また、ガンバ大阪は、現在、万博記念競技場(大阪府吹田市)がホームグランドである
が、サッカー専用グランドではないことから、陸上トラックがあったり、屋根の部分がな
く、集客が天候に左右されるため、ホームタウン重点4市(高槻市、吹田市、茨木市、豊
中市)のいずれかに専用スタジアム(3万人収容規模)を確保したいとの思いがある。今
後、都市部の工場跡地のような広大な敷地の活用策の1つとして、
「みる」スポーツに適し
たスポーツ施設の建設が模索されることも推察される。
(2)
取組
(集客の状況に応じたチケット価格の設定で入場料収益を上げる)
プロスポーツ企業にとって、観客席を一席でも多く埋めることは、確実な収入増となる。
プロ野球の試合のチケットでは、以前から、例えば、巨人戦など人気のある試合は通常の
試合よりチケット価格が高いケースもみられたが、近年は、集客の状況に基づいた、より
現状に則した多様なチケット価格が設定されるようになった。例えば、オリックス・バフ
ァローズの場合23、通常の試合と比較して、阪神や巨人との試合チケットは高めに設定さ
れている。さらに、他の試合では細かく座席区分され、料金も細かく区別されているが、
阪神や巨人との試合では座席区分は通常より少なく、こうした面からもチケット価格の高
めの設定が確認できる。
また、例えば、6回終了後からの入場ではチケットの価格を安く設定したり、飲食料品
やグッズなどとチケットをセットで販売したりするなど、各チームとも工夫を凝らしてい
る。
また、Jリーグにおいても、「Jリーグ1部の大宮アルディージャは平成 19 年度のシー
ズンから、対戦カードや試合日程により、料金を二種類に分けている。カード別の集客状
況を調べ、観客の多く集まる試合のチケット価格を去年より 500 円引き上げて、例えば正
面スタンドの中央指定席を前売りで 4,300 円にした。それ以外の試合は値段を据え置いた。
主催 20 試合のうち、11 試合で料金を引き上げた」
(日本経済新聞[2007 年7月9日])とい
23
オリックス・バファローズのホームページを参照した(アクセス日
http://www.buffaloes.co.jp/ticket/regular/
124
平成 20 年3月 13 日)
う動きもみられる。今後、サッカーJリーグでのこうした取組の広がりが推測される。
(携帯電話サービスを活用して試合直前までチケットの販売を行う)
チケットの販売ルートにも変化がみられる。「福岡ソフトバンクホークスは平成 19 年度
のシーズンから、試合直前に安く空席を買える携帯電話向けサービスを始めた。同社の携
帯利用者が対象でサービス利用料は月 525 円。試合開始2時間前に空席があった場合、500
円で座席引換券を購入、球場でチケットと交換する。基本的に球団側が席を割り当てる。
席の空き具合によって、バックネット裏の指定席になる場合もあれば外野席になる場合も
ある」
(日本経済新聞[2007 年7月9日])という事例がみられるように、情報化の進展が、
いつでも気軽に観戦できるためのシステム構築につながっている。こうした取組の成果と
して、観戦者の裾野が広がることが期待される。
(自立した経営を目指すプロスポーツ企業)
いわゆるバブル経済崩壊による不況を境に、チーム運営の採算性が重視されるようにな
った。スポンサー企業を増やすには、チームの自立経営を目指すノウハウの確立が重要で
ある。プロスポーツチームの経営の柱は、チケット販売収入と広告によるスポンサー収入
であるが、スポンサーの獲得のためには、プロスポーツの広告効果を明らかにすることが
有効であるものの、測定の費用が高額であることなどが課題とされている。
大阪発祥の企業や大阪本社の企業であっても、国内外でビジネスを幅広く展開する企業
においては、数多くあるプロチームの中で、大阪のチームであることや特定の種目のスポ
ーツを応援することに根拠を見出せないとの声もある。そのようななか、例えば、多くの
中小企業のスポンサーを対象にした多様な協賛金のメニューを作ることも有効な取組であ
る。小口の協賛金による多様なスポンサー向けのメニューによって、それまでスポーツの
協賛をしたことがなかった中小企業の協賛を促す効果がある。例えば、従業員に試合のチ
ケットを配布することで福利厚生に寄与し、企業内の一体感を醸成するなど、費用対効果
は高いとの指摘がある。
(プロスポーツチームは地域を意識した経営を志向)
Jリーグに関して、原田は、「成功を収めた理由の一つとして、ホームタウン制度の採
用がある。これまでの日本のプロスポーツには、地域で独占的に試合をすることを認める
『フランチャイズ』の考え方はあったが、地域と一体になってスポーツを育てようとする
『ホームタウン』という概念はなかった。
(中略)ホームタウン制度を適用し、チームから
企業名をはずしたことによってクラブと地域の一体感が増し、住民や自治体から有形・無
形の支援を受けることが可能になった。さらにクラブをスポンサードする企業は、間接的
な地域支援というメセナ的要素をマーケティングプランに取り込み、企業イメージを高め
ることができるようになり、結果としてクラブ・スポンサーの多様化が進んだ」
(原田編著
[2007])と、ホームタウン制度の意義と効果を分析している。特定の企業のイメージが強
すぎると、様々な関係性から他のスポンサー企業が限定されてくるという状況を変えた制
度ともいえるだろう。
125
また、プロスポーツチームの歴史が長い野球でも、原田が「プロ野球を取り巻く状況は、
平成 16 年の選手会のストライキ、近鉄とオリックスの合併、半世紀ぶりの東北楽天の新規
加入といったプロ野球再編問題によって大きく変化することになる。プロ野球の経営につ
いては、従来の企業随従型経営から、地域密着と固定ファンづくりを志向したパリーグチ
ームが観客動員数を伸ばし、チームの収益構造を大きく改善させた。とくに、平成 17 年か
らは、各球団の有料入場者数を報告することが決まり、経営の透明化に向けて、小さくと
も意味のある一歩が踏み出された」
(原田編著[2007])と指摘しているように、大きく方向
転換してきている。両スポーツ界ともに、地域を意識した経営を志向していることがわか
る。
(児童・生徒との交流からファン層の拡大へ)
観客動員数の増加による入場料収入の増加について、『2007Jリーグスタジアム観戦者
調査報告書』24における平成 17 年と 18 年の観戦頻度の比較を見てみると、J1、J2そ
れぞれに、17 回以上が 3.6%増加、24 回以上が 7.9%増加と、熱烈なファン層の拡大が推
察される。
ガンバ大阪の観客の年齢分布を見ると、18 歳以下の割合が 18 年は 4.0%であったのが、
19 年には 11.5%となった。19 年のJ1リーグ全体の平均が 6.3%であるのと比べて、若い
層の観客数が多いことがわかる。ガンバ大阪の担当者に取組の様子を聞いたところ、
「6年
ぐらい前から、ホームタウン重点4市である高槻市、茨木市、吹田市、豊中市の中から毎
年2市を決めて毎年2回各回 30 校前後の小学校に、ガンバ大阪の選手 30 人が 10 班に分か
れて訪問している。各校では、体育館で生徒との交流を行ったり、4時間目に訪問した場
合、一緒に給食を食べたり、様々な形で交流するようにしている。その際、児童を翌月の
試合へ招待する応募ハガキを置いて帰り、希望者は招待するようにしている。この学校訪
問は、ガンバ大阪というチームとホームグランドである万博競技場を知ってもらうことと
併せて、ホームタウンへの地域貢献の意味で重要であるため、今後とも続けていきたい」
とのことであった。また、10 数年前から試合前に行われている小学生の招待試合に出場し
た小学生がプロ選手になるケースも出てきた。児童をはじめ若い世代への地道なアプロー
チが 18 歳以下の観客数の割合の多さに表れているといえるのではないだろうか。
24
Jリーグホームページを参照した(アクセス日 平成 20 年2月 10 日)。
http://www.j-league.or.jp/aboutj/2007kansensha.pdf
126
第7節
スポーツの裾野を広げる
健康で豊かな生活を実現するためのサービスや用品はもとより、誰もが楽しく身体を動
かす機会や場を求めている。また、トップレベルのアスリートは、現役選手として活躍で
きる期間は限られているが、その経験や能力を使って次世代アスリートの育成はもとより、
スポーツに親しむ人の裾野を広げることに貢献することが期待される。本節では広い視野
でスポーツの振興を支える取組についてまとめたい。
1.生涯スポーツの視点
(1)
障がい者のスポーツ
(日本初の障がい者スポーツセンターは大阪市に設置)
財団法人日本障害者スポーツ協会によると、障がい者のスポーツとは、障がい者のため
に特別に考案されたスポーツだけを指すものではなく、原則として健常者が行っているス
ポーツを、障がいがあるためにできないことがある、障がいがあるためにスポーツによる
事故の心配がある、障がいを増悪化させるおそれがある、競技規則が複雑なため理解しに
くいなどの理由でルールを一部変更して行っているものを指す。
大阪には、障がい者に対応したスポーツ施設・環境の充実への取組の歴史がある。例え
ば、その中心となってきた大阪市長居障害者スポーツセンター 25(大阪市東住吉区)は、
昭和 49 年に日本で最初の障がい者スポーツセンターとして開設された施設である。最寄駅
に近接しているため、自立した身体障がい者の平日の利用が多いのが特徴である。同セン
ターの担当者によると、「自由参加型の各種スポーツ教室が開催され、『いつ一人で来館
しても指導員や仲間がいて、安心していろいろなスポーツを楽しむことができる』という
理念をもって運営している。利用者は、受付で利用カードを提示し、利用するスポーツ施
設を申し出て受付を済ませると、各場の指導者は、利用者との対話の中で障がいの状態や
健康状態、利用目的などを察知し、希望に沿った利用が出来る」とのことである。
また、「行事ボランティアを募ることもあるが、通常は、ボランティア養成講習会を受
講したボランティアさんに都合のいい時に来てもらって、ボランティアの仕事を自ら探し
てもらい、利用者と一緒に楽しんでもらいたい」との運営方針で、「定期的に開催してい
るボランティア連絡会でその旨を伝えるようにしている」とのことである。平成 17 年度の
延べ利用者数は、318,172 人に上っている(社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協
会[2006b])。
(障がい者スポーツの指導者の育成)
障がいのある人がスポーツを行うことができるように4レベルの指導者資格制度が整
25
平成9年には、大阪市舞洲障害者スポーツセンター(大阪市此花区)が開設された。同センターは、
駅から離れた臨海部に立地していることから、主に土・日に家族・友人と共にスポーツを楽しむために利
用される傾向がある。平成 17 年度は、259,079 人の延利用者があった(大阪市障害者福祉・スポーツ協
会[2006a])。
127
備されている26。各都道府県と指定都市において実施される指導者養成講習会は、障がい
者の指導者養成と障がい者への理解、スポーツ振興を目的に開催され、各講習会の全過程
を修了した人は、財団法人日本障害者スポーツ協会の指導者制度に基づき、指導者として
登録することができる。平成19年7月31日現在の登録者を見ると、指定都市である大阪市
と堺市を加えて、大阪府内の登録指導者数は、都道府県の中で、全国第1位となっている
(図表3-7-1)。
図表3-7-1
日本障害者スポーツ協会公認障害者スポーツ指導者登録数
(平成 19 年7月 31 日現在)
大阪市
堺 市
その他大阪府
大阪府小計
東 京 都
全国
スポーツコーチ 上級指導員 中級指導員 初級指導員
9
30
72
363
0
0
1
16
3
24
214
980
12
54
287
1,359
12
68
155
1,410
86
528
2,114
19,626
(単位:人)
計
465
17
1,218
1,700
1,633
22,268
資料:特定非営利活動法人日本障害者スポーツ指導者協議会ホームページより作成
(アクセス日 平成 20 年3月 13 日)。http://www.jcsid.or.jp/newpage11.html
(障がい者理解と障がい者のスポーツ振興-車椅子バスケットボール大会)
「2008 国際親善女子車椅子バスケットボール大阪大会」27が平成 20 年2月 14 日から 16
日の日程で大阪市中央体育館において開催され、小・中学生約 8,500 人を含め、11,500 人
が観戦した。本大会では、約 200 人のボランティアが、道案内や駐車場係、受付や会場係、
アトラクションへの参加と様々な場面で活躍した。大会関係者によると、
「車椅子バスケッ
トボールを通して、障がいへの理解とちょっとした工夫で同じスポーツが出来ることを理
解していただくと同時に、単なる競技会ではなく、車椅子体験教室や選手が学校を訪れる
など障がいのある選手とのふれあいや国際交流にも努め、大会を開催するときは、必ず支
えているスタッフやボランティアさんたちが居ることにも視点を向けていただきたい」と
の思い28があった。
同大会では、各試合のハーフタイムには、チアリーディングなどのアトラクションが行
われるなど、競技はもとより大会全体を楽しむ工夫がなされていた。小・中学生が大会に
26
財団法人日本障害者スポーツ協会によると、
「中級指導者は、初級指導員の資格取得期日から2年以上
の指導経験(80 時間または 10 日程度)を有する者。上級指導者は、中級指導員の資格取得から3年以上の
指導経験(120 時間または 15 日程度)を有する者。スポーツコーチは、中級または上級指導員の資格取
得者で競技団体協議会に加盟の競技団体の推薦を受けた者」である。(アクセス日 平成 20 年2月 10
日)
。http://www.jsad.or.jp/pdf/H19koshu_yotei.pdf
27 国際親善車椅子バスケットボール大阪大会実行委員会事務局ホームページを参照した(アクセス日
平成 20 年2月 26 日)。http://www18.ocn.ne.jp/~osakacup/index.html
28 高橋明氏のブログを参照した(アクセス日 平成 20 年3月 13 日)
。
http://akira1.blog.ocn.ne.jp/akira/2008/02/index.html
128
参加しやすい日程や場所、広報の方法などに知恵を絞り、一般の観戦者はもとより、小・
中学生、ボランティアなど、多様な人が「みる」、「支える」ような大会の開催の一つひ
とつが、スポーツの裾野を広げる効果的な取組と思われる。
(障がい者のスポーツを通し、障がい者雇用につながってほしい)
特定非営利活動法人アダプテッドスポーツ・サポートセンター 29の高橋明理事長は、企
業と障がい者のスポーツとの関係について、「(障害者のスポーツが)市民に知られること
で、障害者の雇用にもつながってほしい。障害者雇用促進法は、企業に従業員の1.8%以上、
障害者を雇うよう定めています30が、守られていないケースが多い。障害者のスポーツを
通し、人間の可能性を理解する企業やスポーツを支援してくれる企業が現れてほしい」
(毎
日新聞[2008年1月9日])とコメントしている。そして、
「例えば、各種スポーツにおいて、
実業団のアスリートが存在するように、社員の立場で、障害者のスポーツアスリートが現
れることも今後考えられるのではないか」との具体的な提案があった。障がい者のスポー
ツと企業との関係には、企業が支えることはもとより、今後、企業にとっても様々な可能
性が展開できる分野であると思われる。
(2)
ニュースポーツ
(誰もが、いつでも、どこでも、いつまでも、気軽に自由に楽しめるもの)
ニュースポーツとよばれている種目を特徴別に分けてみると、日本では、あまりメジャ
ーになっていないスポーツ、メジャーなスポーツのルールや用具をアレンジしたスポーツ、
メジャーなスポーツにつなげるリードアップゲーム、古くからの遊びが発展したもの、新
しい発想・理念のもとに考案されたものなどに分けられる(北川[2000])。
ニュースポーツがもっている特性は、レクリエーションの理念と同じく、誰もが、いつ
でも、どこでも、いつまでも、気軽に自由に楽しめるものとして、生涯スポーツ振興の原
動力として多くの関係者から期待されるものである。例えば、タグラグビー 31は、初心者
と経験を積んだプレーヤーとに分けてルールが設定され、だ円形のボールを持って走り、
味方にボールをパスし、腰に付けた2本のひらひらしたタグを、お互いに取ったり取られ
29
アダプテッドスポーツとは、英語で障がい者体育を意味するadapted(適応させた)physical activity
からの造語で、体格、体力、年齢、性別、技術といった個性や特徴に合わせ、道具やルールを工夫した「そ
の人に合わせたスポーツ」。ゴルフのハンディ、球技のネットの高さや、球の大きさ、重さに中学生用が
あることなども「適応」例だ。近年、「共生社会」実現への環境整備が進み、アダプテッドスポーツは、
障がいのある人もない人も一緒に楽しめる「共生スポーツ」として注目されている。(毎日新聞[平成20
年1月9日])。
30 障害者雇用促進法(概要)
障害者の雇用を促進するため事業者に対し従業員数の一定比率 (障害者雇用率=民間 1.8%、国地方
自治体 2.1%)を障害者とするように義務づける。障害者雇用率を達成できないときは、身体障害者雇用
納付金を徴収する一方、一定比率以上の障害者を雇用する事業者には、調整金を支給する。国、地方自治
体は障害者に対する職業リハビリテーション事業 (職業指導、職業訓練、職業紹介等)を実施する。
31 財団法人日本ラグビーフットボール協会のホームページを参照した(アクセス日 平成 20 年2月 23
日)
。http://www.rugby-japan.jp/future/tag/2004/tag_rule.html
129
たりしながら、ボールを持ってコートを自由自在に駆け回り、相手ゴールを目指すスポー
ツで、財団法人日本ラグビーフットボール協会が中心となって育成・普及に努めている。
(ニュースポーツの普及のための要因)
ニュースポーツが順調に普及しそうな要因をいくつか整理してみると、行政や企業が主
催(協賛)する大会、イベントに採用されている、用具などにスポンサーがついている、
組織的に意欲的な取組がなされている、組織の体制や機能が正常で、封建的、権威的な体
質を持っていない、年齢、性別、運動能力を問わず、誰もが楽しめ、単純だが奥が深い種
目であるなどが挙げられる(北川[2000])。また、北川は「スポーツの普及は、行政主導
の力が大きく影響する場合が多いようで、例えば、全国スポーツ・レクリエーション祭32の
種目に採用されれば、各都道府県から選手を派遣することになり、普及のスピードは極め
て速くなる。また、企業の宣伝やマスコミに多く採用される種目からも目を離すことがで
きない」(北川[2000])とも指摘している。
スポーツクラブでのニュースポーツの導入例では、「元はクロスカントリースキー選手
の夏場のトレーニング方法で、90 年代にフィンランドで一般にも普及が始まった専用のポ
ールを持って歩くスポーツ、
『ノルディックウォーキング』は、スポーツクラブティップネ
ス吉祥寺において、館外のプログラムとして平成 19 年秋から毎週続けられている」(毎日
新聞[2008 年2月 23 日])などにみられるように、ニュースポーツに取組むようになるき
っかけには、スポーツクラブなどにおけるニュースポーツを活用したプログラムへの参加
という場合も多く、特に関西圏よりも関東圏にこうしたプログラムが多い傾向があるとの
指摘がある。ニュースポーツは、紙媒体やインターネット、テレビなどの各種メディアに
よる情報に接する機会を多くすると同時に、次の段階として、実際にやってみる機会を提
供していくことが普及にとって重要である。
(ニュースポーツの普及を支える組織体制)
多くのニュースポーツの本部とオフィスの場所を同じくし、様々なニュースポーツの普
及を支える特定非営利活動法人ニューフレンドリー情報センターの吉田正信代表理事は、
「ニュースポーツを普及させるには、全国や国際大会開催のためのオフィシャルルールを
制定するとともに、より幅広い年代の競技人口を増やすために、コートの広さを変更した
りするなど、オフィシャルルールをゆるやかにアレンジしたものを制定する必要がある。
そして、ニュースポーツは普及するにつれ、本部を中心に全国に支部ができていくが、支
部には、専任スタッフがいることは少なく、ボランティアでの運営がほとんどであるため、
本部から支部に大会を運営するための必要な情報、例えば、大会開催場所や協賛の可能性
のある企業のリスト、補助金を申請するための資料などの情報を提供することによって、
運営の負担を減らすような支援体制が重要である」と指摘している。また、「ニュースポ
32
財団法人日本体育協会によると、
「全国スポーツ・レクリエーション祭は、勝敗のみを競うのではなく、
誰もが、いつでも、どこでも気軽にスポーツ・レクリエーション活動を楽しみ、交流を深めることを目的
として、昭和 63 年から各都道府県持ち回り方式で毎年開催されている、生涯スポーツの一大祭典」であ
る(アクセス日 平成 20 年3月 13 日)。http://www.japan-sports.or.jp/event/spo-rec.html
130
ーツで使用する用具は一般に市販されていないものが多く、貸し出しや購入の仕組みを整
備することが必要である。例えば、キンボール 33の場合、専用の大ボールは、ニュースポ
ーツ用品メーカーを通じて、キンボールの発祥の地、カナダから輸入している。そして、
大ボールに名前を記載する企業などのスポンサーを募り、そのスポンサー料を大会運営費
やボールの購入費にあてることもある。ニュースポーツに関する用具は、インターネット
による販売も行われているが、実際に販売量が多いのは、個人から直接の申込みよりも支
部からの注文が多い」という。ニュースポーツの普及により、スポーツに親しむ人の裾野
を広げるだけでなく、スポーツ用具メーカー、スポンサー企業、大会開催地の地域振興な
ど、様々な分野への波及効果が期待される。
2.アスリートのケア
(1)
スポーツトレーナー
(スポーツトレーナーの養成)
スポーツトレーナーは、アスリートの筋肉の状態をみていくのが特徴であり、トラブル
を抱えたアスリートの痛みをなくすことはもとより、現役復帰できることと、トラブルが
再発しないように、身体の使い方やコンディショニングトレーニングまで指導することを
目的としている。大阪市には、都心部を中心に、学校法人と民間企業が運営するスポーツ
トレーナーを養成する専門学校が集積している。
ある専門学校では、平成4年頃までは、エアロビクスやフィットネスのインストラクタ
ーを養成するコースの人気が高かったものの、次第にインストラクターの市場が飽和気味
となり、報酬も下降してきたことを背景に、新たな専門職としてスポーツトレーナーの学
科を新設した。同学科では、はじめにトレーナーとしての基本を学び、順にスポーツトレ
ーナー、野球トレーナー、ゴルフトレーナーというように専門的に学んでいくコースが設
定されている。同学校では、平成 19 年 10 月現在、学生は、高校・大学の新卒者と社会人
の割合が1:4で、高校卒業後に入学してくる学生が近年徐々に増えている。社会人では、
30 歳前後の人が6~7割を占めているという。
(スポーツトレーナーの活動の場の広がり)
4~5年くらい前から、アマチュアの野球チームにおいて、スポーツトレーナーの必要
性が監督などからも認められるようになり、チームでトレーナーを確保する例も少なくな
い。プロチームや実業団には専属のトレーナーが以前から存在していたが、選手の人数に
対して少数であるため、選手の中には、個人専用のトレーナーを依頼する例も見られる。
プロゴルフにおいても、トレーナーの役割が高くなり、例えば個人もしくは4~5人の選
33
特定非営利活動法人ニューフレンドリー情報センターのホームページによると、「キンボール
(KIN-BALL)は、 直径 122cm、 重さはわずか約1kg のボールで、メインのキンボール・コンペティショ
ンゲームは、このキンボールを使用し、4人1組で構成されたチーム (おのおのピンク、グレー、ブラ
ックに色分けされた3チーム)が 13~21m ×16~21m のコートサイズ内でヒット(サーブ)やレシーブ
を繰り返す新しいゲーム」である(アクセス日 平成 20 年2月 10 日)。
http://www.newsports-21.com/kin-ball/home.html
131
手で依頼したトレーナーがツアーに帯同する光景も見られるようになった。ゴルフ練習場
の中のコンディショニングルームやジムがあるところでは、トレーナーが常駐していると
ころもある。
株式会社デサントは、
「デサント」ブランドで本格的にスポーツシューズの販売を始める
にあたって、数多くの有名スポーツ選手を指導してきた実績をもつトレーナーと組んで商
品開発を行った(日経流通新聞[2008 年2月 18 日])。また、他社では、プロスポーツ選手
が愛用するアンダーウェアの開発に、スポーツ選手の筋肉の状態を熟知するベテランのト
レーナーが開発にかかわった例もある。今後、スポーツトレーナーとしての専門性が、直
接、アスリートの体のケアに貢献するとともに、スポーツ関連用品の開発などに反映され
るなど、活動の場の広がりが予測される。
(スポーツトレーナーの普及に当たっての課題)
スポーツトレーナーは、技術、安全性、考察力、経験が必要であり、即効的効果が求め
られる専門職である。例えば、トレーナー養成の専門学校を卒業してもアスリートのパー
ソナルトレーナーになることは容易ではなく、経験と信頼が重要である。例えば、最初は、
整骨院に勤務、もしくは開業し、そこに選手が通院してきたり、ボランティアでチームに
かかわっていきながら能力を高め、チーム専任もしくは、パーソナルトレーナーとしての
採用を待つ。
また、トレーナーの普及に当たっては、現在のところ認定制度がないため、実力にばら
つきがあることが課題であるとの指摘がある。学校や企業など、アスリートを抱えている
ところでは、トレーナーを求める潜在ニーズは高いものの、依頼するにあたって、どこに
どのようなトレーナーがいるかわからないなど、マッチングの仕組みが整っていないこと
が、普及の障害になっているとの指摘があった。
(2)
スポーツ選手のセカンドキャリア支援
(セカンドキャリア支援)
第1章第1節で触れた企業スポーツの問題と同第2節で触れたセカンドキャリア問題
にも関連するが、ある企業のスポーツチームの場合、以前は、全ての選手を退部後も身分
を保障する社員として雇用していたが、約 10 年前から、選手限定で契約する場合と引退後
も社員としての身分を保障する契約との2通りになった。
財団法人日本プロスポーツ協会では、選手が現役を引退した後の人生をどう送っていく
かということを課題とし、この問題を解決すべく、現役・引退選手の今後を考える「キャ
リアサポート事業」、
「経営者教育事業」、
「プロ・市民スポーツ交流事業」の3つ柱を掲げ、
取組んでいる34。また、Jリーグでは平成 14 年に社団法人日本プロサッカーリーグキャリ
アサポートセンターを発足させた。セカンドキャリア支援の取組内容としては、就職・就
34
財団法人日本プロスポーツ協会ホームページを参照した(アクセス日
http://www.jpsa.jp/01.html
132
平成 20 年2月 10 日)。
学ガイドブックの発行や、サテライトスタッフ(就職・就学先の場となる企業・大学を訪
問)の設置、
「進路相談会」の実施などがあり、現役選手のキャリアデザイン支援では、
「イ
ンターンシップ制度」や選手OBがクラブを訪問して仕事の経験などを話す「OB交流会」、
パソコンや英会話などの学習環境を充実させる「就学支援金制度」など、日本のスポーツ
団体としては極めて先進的な取組が行われている35。
日本野球機構(NPB)では、
「19 年 10 月、NPB内に『セカンドキャリアサポートセ
ンター』がオープンしたが、開設以来の相談数は十数件にとどまっている。同センターは、
元野球選手を採用したいという企業を募り求人紹介するだけでなく、進路相談にも力を入
れる」
(毎日新聞[2008 年1月 15 日])と再就職支援の活動を軌道に乗せようと動いている。
種目による差異としては、「指導者の道にしても、プロアマの垣根のないサッカーは、
プロだけではなくアマの指導者への道もある。コーチの資格制度も世界的に統一されてい
る。プロ野球の場合は球団のコーチになるためには縁故関係がないと難しく、アマを指導
するにはクリアすべき関門がある」
(日本経済新聞[2007 年6月 20 日])と、サッカーと野
球の環境の違いを指摘する意見もある。
(引退したプロ選手を正社員として採用し、地域スポーツにかかわることを奨励)
本章第1節でもとりあげたゼビオ株式会社は、「平成 20 年4月から、社会人になってか
らも地域スポーツの現場への関与を望む契約社員を子会社の正社員として採用する。勤務
時間内に社会でコーチなどとして働くことを奨励する。小売業界で新規採用が難しくなっ
ていることに対応、従来の正社員勤務体系にはなじまない元スポーツ選手などを囲い込む。
このほど立ち上げた全額出資子会社ゼビオスポーツマネジメント(同市)が採用する。平
成 21 年3月末までに最大 300 人を採用し、近い将来、1,200~1,300 人に増やす。スポー
ツ系の専門学校などからの新卒採用や引退したプロ選手の中途採用もする。ゼビオが各種
学校での指導員や競技の審判員などの業務を探して斡旋するほか、社員個人が見つけてき
たこれら業務も認める。社内教育制度も導入し、スポーツトレーナーや公認審判員なども
育成する。来客の多い週末は売り場で働き、平日は地元高校の部活動のコーチを務めると
いった働き方が可能になる」(繊研新聞[2008 年2月2日])という取組を行っているが、
同社にとっては、スポーツに精通した人材が確保でき、そして、引退したプロ選手の能力
を地域で生かすことによって地域に貢献し、元プロ選手にとっては、今までの能力が生か
せるセカンドキャリアとして、企業、地域、スポーツ選手の3主体がうまくマッチングし
た注目すべき事例と思われる。
(大学や専門教育機関での『学び』も1つの選択肢)
永松が「昭和 59 年には社会体育指導者の養成を目的として鹿屋体育大学(鹿児島県 鹿
屋市)と国際武道大学(千葉県勝浦市)が開講し、学校体育の枠組みから外れた空間にお
35
教育マルチメディア新聞を参照した(アクセス日 平成 20 年2月 23 日)。
http://www.kknews.co.jp/maruti/rensai/051105_5a.html
133
けるスポーツやフィットネスの指導を担う指導者や経営者を養成する高等教育機関の先駆
けとなった。その後、スポーツ科学や健康科学に関連する学部や学科を設ける大学は増加
を続けており、スポーツや健康づくりに関連した業務に従事する人材育成はより専門化し
高度化することになろう」
(原田編著[2007])と指摘しているように、スポーツを学ぶ場は
近年、急増している。
例えば、卓球の松下浩二選手は現在、早大スポーツ科学研究科のトップスポーツマネジ
メントコースに所属し、プロスポーツビジネスに関する様々な課題について研究を深めて
おり、
「日本のトップアスリートは選手生命を終えたあと、コーチになったりスポーツメー
カーに入ったりというのが一般的な道だ。もちろん、それは経験を生かす一つの方法だが、
それを土台にしてさらに深めたり、付加価値を付けたりするのに、大学での『学び』は有
力な選択肢になると考えている。同じコーチとして教えるにしても、大学で教育方法など
を学び直し、指導者としての力量を上げてから現場に戻れば、より効果的なコーチングが、
できるかもしれない」(日本経済新聞[2008 年1月 25 日]]と学びの場の活用を指摘して
いる。
全国的に社会人大学院が増え、多様な健康・スポーツに関する専門教育機関が生まれて
いる中で、スポーツ選手のセカンドキャリア形成において、大学や専門教育機関での『学
び』も1つの有効な選択肢となり得るだろう。
134
第8節
小括
第1節では、まず、スポーツ用品市場における競技からレジャー、ライフスタイルに至
るまで幅広い品目での市場規模の増加と、東京マラソンなどの市民マラソンを契機とした
女性のファンランナーの増加による市場の創出・拡大の状況を確認した。次に、スポーツ
用品小売業では、小規模小売店舗の減少、大規模小売店舗の増加という流れのなかで、通
販・インターネット、カジュアル・セレクトショップなどの新たな流通形態が成長してい
ることがわかった。、また、国内のスポーツ施設では、8割以上が学校体育・スポーツ施設
と公共スポーツ施設であるが、具体的な施設内容から民間スポーツ施設との違いを確認し
た。スポーツサービス提供産業においては、特にフィットネスクラブの市場規模が大幅な
増加傾向を示しており、また、ゴルフシミュレーション機器を活用したゴルフバーという
新たな業態にも注目した。
第2節では、大阪府内のスポーツ用品産業の状況をみたが、多くのスポーツ用品の製造
において出荷金額の全国シェアが高いことがわかった。また、生産の最適地の選択に関し
ても考察を加えた。卸売企業では、メーカー直販の中抜き現象に対して、新たな販売ルー
トの開拓を模索しつつ、既存取引先の活性化を意図したキャンペーンも実施している。小
売企業では、地域密着型の小売店が減少しているなか、インターネットと店舗の両方を活
用して販路を確保したり、顧客対象を絞り込んで専門特化した用品とサービスの提供で、
差別化を図っているところがあった。また、スポーツ人口が少ない種目の大会を主催する
ことで、顧客の獲得を図るとともに、スポーツ人口の拡大に貢献している事例も確認でき
た。また、大手スポーツメーカーを中心に、製造から販売まで一貫して自社で手がける業
態が増加しており、科学的根拠に基づいた高付加価値製品やサービスの開発に努めている
現状を確認した。
第3節では、大阪府のスポーツ施設空間産業について、大阪府内の公共スポーツ施設や
民間スポーツ施設などの設置数を確認するとともに、指定管理者制度が導入された公共ス
ポーツ施設について課題を挙げるとともに、施設の維持管理業務を主体にしている府内で
も数少なくなった民間スポーツ施設に着目し、関連する動向をまとめた。
第4節では、大阪府のフィットネスクラブ、ゴルフ場、ゴルフ練習場、ボウリング場、
テニス場について状況をまとめた。フィットネスクラブでは、全ての年代で女性会員が多
く、利用日時の限定による会費の引き下げや多様なプログラムの提供などで会員数の増加
と退会者の減少を図っていることに加えて、優秀なインストラクターやトレーナーの確保
のための取組も確認した。ゴルフ場では、長年、ジュニアの育成に積極的であったことが
奏功したのか、延べ利用者数では回復のきざしが見られる。ゴルフ練習場の中には、施設
の充実による差別化や 24 時間営業によって、顧客の裾野を広げているところがあり、地域
との関係性を大切にした取組も確認した。ボウリング場は、景気の回復により、利用者も
増加しているが、多様な大会の開催などで利用者の新規開拓・定着を図っていた。テニス
135
場に関しては、インドアのテニス場が人気で、利用者に配慮した施設の充実により、集客
を図っていた。
第5節では、スポーツに関する情報の受発信状況を確認し、その中心となっているテレ
ビと新聞について、スポーツに対する取組状況やこれらのメディアにおける大阪の位置づ
けを確認した。
第6節では、プロスポーツチーム(企業)に焦点をあて、「みる」スポーツに適したス
ポーツ施設の不足などの課題もあるなか、経営の自立と観客数を増やす取組についてまと
めた。また、地域を意識した取組やその成果の一端について、Jリーグを中心に確認した。
第7節では、生涯スポーツの視点から、障がい者のスポーツは大阪が日本の先進地であ
り、指導者も数が多いこと、また、だれもが、いつでも、どこでも、いつまでも、気軽に
自由に楽しめるニュースポーツの普及は、スポーツに親しむ人の裾野を広げるだけでなく、
用具メーカー、スポンサー企業、大会開催地の地域振興など、様々な分野への波及効果が
期待されることを確認した。また、自己の限界に挑戦するアスリートたちにとって、体の
ケアを担当するスポーツトレーナーの重要性が高まっており、その活動は、様々なジャン
ルのスポーツや場面へと広がっていること、および、アスリートのセカンドキャリアのた
めの支援の取組状況を確認した。
136
<第3章
参考文献・資料>
1.文献
社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会[2006a]『平成 17 年度
ーツセンター(大阪市長居障害者スポーツセンター
大阪市障害者スポ
大阪市舞洲障害者スポーツセンタ
ー「アミティ舞洲」)スポーツ振興部 年報』
社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会[2006b]『大阪市障害者スポーツセンター平
成 17 年度年報』
財団法人大阪 21 世紀協会[2007]『OSAKA 21st CENTURY PLAN NEWS』No.99
北川勇人・日本レクリエーション協会[2000]『ニュースポーツ事典』遊戯社
高橋明[2004]『障害者とスポーツ』岩波新書
中小企業動向調査会編[2000]『業種別 業界情報
2000 年版』経営情報出版社
社会経済生産性本部[2007]『レジャー白書 2007』
原田宗彦編著[2007]『スポーツ産業論第4版』
ぴあ総合研究所[2007]『ぴあ総研
杏林書院
エンタテイメント白書 2007』
2.資料
繊研新聞 2007 年 11 月 26 日
繊研新聞 2008 年1月 25 日
繊研新聞 2008 年2月2日
日経流通新聞 2007 年6月1日
日経流通新聞 2007 年7月 23 日
日経流通新聞 2007 年 12 月 21 日
日経流通新聞 2008 年2月 18 日
日本経済新聞 2007 年6月 20 日朝刊
日本経済新聞 2007 年7月9日朝刊
日本経済新聞 2007 年8月 13 日夕刊
日本経済新聞 2007 年 11 月 10 日夕刊
日本経済新聞 2008 年1月 11 日朝刊
日本経済新聞 2008 年 1 月 19 日朝刊
日本経済新聞 2008 年1月 25 日夕刊
毎日新聞 2007 年 12 月6日朝刊
毎日新聞 2008 年1月9日朝刊
毎日新聞 2008 年1月 15 日朝刊
毎日新聞 2008 年2月 23 日朝刊
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3.統計
大阪府『大阪の工業』(平成 12、15、17 年)
経済産業省『工業統計調査』品目編(平成 17 年)
経済産業省『商業統計調査』産業編(平成 16 年)
経済産業省『商業統計調査』品目編(平成 14 年)
経済産業省『サービス業基本調査』
経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書 フィットネスクラブ編』
(平成 14、17 年)
経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
ゴルフ場編』(平成 13、16 年)
経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
ゴルフ練習場編』(平成 13、16 年)
経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
ボウリング場編』(平成 13、16 年)
経済産業省『特定サービス産業実態調査報告書
テニス場編』(平成 13、16 年)
総務省『事業所・企業統計調査』各年
文部省『我が国の体育・スポーツ施設』(平成 16 年)
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