EEMセミナー EEM-FDM(FDTD法) 株式会社EEM 1 1. FDTD法 • FDTD法とは: • 電磁波の物理法則であるMaxwell方程式を厳密に数値 計算する方法の一つ • 時間領域差分法(Finite Difference Time Domain method) • 適用範囲が広く汎用的であり、最近のPCの能力の向上 により、いろいろな分野の設計・開発現場で使われるよう になった • 準静電界(~MHz)~電波(~GHz)~マイクロ波(>GHz) ~ミリ波(>>GHz)~光(>>THz)の広い周波数に適用可能 2 1.1 Maxwell方程式 ∂B ∇× E=− −J m ( Ampere 's law ) ∂t ∂D ∇ ×H = +J (Faraday ' s law) ∂t D=ϵ E (構成方程式) B=μ H (同 上: 磁気 版) J =σ E (Ohm 's law) * J m =σ H (同 上: 磁気 版) E :電界 D :電束密度 H :磁界 B : 磁束密度 J :電流 J m : 磁流 : 誘電率 :透磁率 : 導電率 * : 導磁率 3 構成方程式とOhmの法則を代入すると ∂H * ∇× E=− − H ∂t ∂E ∇ × H= E ∂t 電界と磁界の連立方程式になる →FDTD法ではこれを解く E,H : 場所と時間の関数(未知量) ε,μ,σ,σ* : 場所の関数(既知量) 4 1.2 離散化 Z Yee格子 ・電界の3成分、磁界の3成 分を計算する点がすべて 異なる Hz ・電界は辺の中心の接線 方向、磁界は面の中心の 法線方向 Ex Ey Hy Ez Hx ・rotを含むMaxwell方程式 と極めて相性がよい Y ・異なる誘電体の境界条件 (Etが連続)と相性がよい ・FDTD法を使用するときは Yee格子を念頭に置いてお くことが重要 X 5 FDTD法 時間的に電界Eと磁界Hを交互に計算す る (蛙跳び法、leap frog法) En E En+1 時間t H Hn-1/2 Hn+1/2 6 時刻t=nΔtで第1式のX成分を離散化する(Y,Z成分も同様) n 1 2 ∇ ×E x i , j , k 1 2 n 1 1 =− i , j , k 2 2 Hx 1 2 1 n− 1 1 1 1 i , j , k −H x 2 i , j , k 2 2 2 2 t 1 n 1 1 1 1 − i , j , k H x 2 i , j , k 2 2 2 2 * これから、t=(n-1/2)ΔtのHxとt=nΔtのEからt=(n+1/2)ΔtのHxが計算される H 1 n 2 x 1 1 i , j , k = 2 2 1 1 i , j , k 2 2 n− Hx 1 2 1 1 i , j , k 2 2 1 1 1 1 i , j , k * i , j , k t 2 2 2 2 t n 1 1 − ∇× E x i , j , k 2 2 1 1 1 1 i , j , k * i , j , k t 2 2 2 2 7 時刻t=(n+1/2)Δtで第2式のX成分を離散化する(Y,Z成分も同様) n ∇ ×H x 1 2 1 i , j , k 2 1 1 E n1 i , j , k −E nx i , j , k x 2 2 1 = i , j , k 2 t 1 1 i , j , k E n1 i , j , k x 2 2 これから、t=nΔtのExとt=(n+1/2)ΔtのHからt=(n+1)ΔtのExが計算される 1 E nx 1 i , j , k = 2 1 i , j , k 2 1 E nx i , j , k 2 1 1 i , j , k i , j , k t 2 2 t n 1 1 i , j , k i , j , k t 2 2 ∇× H x 1 2 1 i , j , k 2 8 1.3 波源モデル 波源は以下の2つのどちらかでモデル化される (1)電圧給電 ・アンテナモデルに相当 ・導線上の1点(Yee格子の電界 点)に電圧を強制的に与える →これが波源となり、系全体に電 磁波が伝搬する 放射 給電点 Vin アンテナ 平面波入射 (2)平面波入射 ・散乱現象に相当 ・外部から平面波を入射する →系全体に電磁波が照射され、電 磁界分布が決定される 散乱 物体 9 波源の波形としては以下の2通りがある (1)パルス ・有限時間のパルスを印加し、すべて の電磁界が外部に放射され、系全体 の電磁界がゼロになるまで計算する ・各点での時間波形をフーリエ変換し 周波数特性を計算する ・利点:多数の周波数での周波数特 性が一度の計算で求まる (2)正弦波 ・指定した周波数の正弦波を無限時 間印加し、系全体の電磁界が周期的 になるまで計算する ・収束後、1周期の時間波形をフーリ エ変換し、その周波数での電磁界と する ・利点:周波数が特定されているとき に効率よく計算できる 10 1.4 吸収境界条件 無限に広がる電磁波を有限の 領域で計算するために、物体の 周囲に適当な空間をとり、その 外側に吸収境界条件を設ける 解析領域 物体 ~λ 吸収境界条件 吸収境界条件としては以下の2通りがある (1)Mur1次 多くの場合はこれで十分であるが、精度上PMLが望ましい場 合がある (2)PML 精度は非常にいいが、計算時間と必要メモリーが少し余分に 必要になる 11 1.5 安定性条件 Δtには上限がある(Courant条件、c:光速) t≤ 1 1 1 1 c 2 2 min xi min y j min z 2k i j k 小さいセルを入力するとΔtが小さくなり、必要なタイムス テップ数が増え計算時間が増える →セルは必要以上に小さくしない 12 1.6 遠方界 FDTD法は有限領域の計算であるが、境界面の電磁界か ら積分計算によって遠方界(無限遠での指向性)を計算す ることができる。 exp − jkr F , r 遠方界 E r , ,= 放射 境界面(E,H) 解析領域 13 1.7 入力インピーダンス 入力インピーダンスは給電点での電圧と電流の時間波形の フーリエ変換の比から求める。 Z in f = F {V in t} F { I in t} 入力インピーダンスは給電波形Vin(t)によらない →給電波形は原理的には何でもよいが、通常、ガウスパル スまたは微分ガウスパルスを用いる(広帯域特性が安定し ているため) 入力インピーダンスZinと給電線の特性インピーダンスZ0 (ユーザー入力値)からVSWRと反射損失が計算される 14 1.8 利得 2 2 2 1 4πr g (θ , ϕ)= ∣E θ (r ,θ , ϕ)∣ +∣E ϕ (r , θ , ϕ)∣ P in 2Z 1 * P in =∑ ℜ {V in n I in n } (給電電力、n:給電点の和) n 2 { } 1.9 散乱断面積 2 2 1 2 ,= 2 4 r {∣E ,∣ ∣E ,∣ } E in 15 1.10 Sパラメータ Sパラメータは適当なサンプル点の電界の時間波形のフー リエ変換の比から求める (1+:ポート1の進行波、1-:ポート1の後退波) S 11 f = S n 1 f = ポート1 1- 1+ F { E 1- t } F { E 1+ t } F { E n t } F { E 1+ t } n1 ポート2 デバイス ポート3 16 1.11 FDTD法の計算時間と必要メモリー 計算時間 ∝ Nx * Ny * Nz * Nt 必要メモリー = (30 + 24 * Nf) * Nx * Ny * Nz バイト (例:Nx=Ny=Nz=100,Nf=1のとき54MB) ・Nx,Ny,Nz:セル数 解析対象の大きさ/波長と形状の複雑さで決まる ・Nt:タイムステップ数 解析対象の電磁界特性と収束しやすさで決まる ・Nf : 周波数の数 計算時間は、パルスのときはNfに無関係、正弦波のときはNf に比例する 17 1.12 GPU高速計算 EEM-FDMはGPU(NVIDIAビデオカード)高速計算に対応 計算条件: Nx=Ny=Nz=300,Nt=500 CPU : Intel i5 750 3.0GHz ハードウェア(CPU/GPU) CPU 1コア CPU 4コア GPU GTX460 計算時間 (速度比) 3861秒 (1.0) 924秒 (4.2) 87秒 (44.4) GPUを用いることに計算時間が格段に短縮され、作業効率が 大幅に向上する →バッチ的処理からリアルタイム処理へのパラダイムシフト 18 2.入力データ FDTD法で計算するには、ユーザーは以下のデータを 入力する必要がある。 1) 解析対象の形状 2) 解析対象の材質(金属、誘電率、透磁率) 3) 空間のセル分割 4) 周波数 5) 波源 6)その他の計算条件 19 2.1 解析対象の形状 解析対象を複数の基本図形に分解して入力する #1 #2 #3 データ入力上の注意: 予め図面上に入力すべき座 標値を記入しておくと作業が はかどる。 入力しながら座標値を考える と効率が悪い。 20 基本形状 直方体、最も基本的、 なるべくこれで表現した 方がいい、 面と線も表現できる 球、 楕円体も可 中空四角筒、 四角柱、 円錐台 任意断面のとき使用 導波管用 円柱、 断面は楕円も可 四角錘台 21 直方体ユニット Z2 面の入力方法 Z Z1 X1 Y1 Y2 X2 X Y X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2を入力する Z1=Z2とすると平面(四角形)になる 線の入力方法 さらにY1=Y2とすると線分になる 22 入力した形状を3D表示で確認する 2頁目ではキーボードmでスライス、キーボードbで半透明 →物体内部の確認 材質ごとに色が異なる(灰色:完全導体、それ以外:誘電体) 3D図形表示 23 複数のユニットが重複するところではユニット番号が大きい 方(後に入力した方)の材質が優先される ユニット#1 ユニット#2 + = 空気(εr=1) スリット 24 異なる誘電体が接する所は平均の誘電率となる εr1 εr2 (εr1+εr2)/2 完全導体(PEC)と誘電体が接するときは境界でPECが 優先されるようにPECを後に入力する #1 #2 誘電体 PEC 25 2.2 解析対象の材質 解析対象の材質(電気的定数)として以下のものを入力する ・比誘電率 εr=ε/ε0 ・導電率 σ[S/m] ・比透磁率 μr=μ/μ0 ・導磁率 σ*[1/Sm] ※磁性体以外はμr=1,σ*=0でよい ε0 = 8.854 * 10-12[F/m] μ0= 4π * 10-7 [H/m] MKSA単位系 F:Farad, H:Henry, S:Siemens=1/Ω 26 2.3 空間のセル分割 ・3次元の直交座標であり、X,Y,Z 各方向に独立に空間をセルに分 割する。 ・単位セルは直方体になる。 ・各方向を複数の区間に分割し、 不均一に分割することが可能。 ・解析物体の周囲にも適当な空間 が必要(吸収境界条件のため) 27 セル分割のポイント セルサイズはλ/10が標準 λ/10 形状の境界で区間を 区切るのが望ましい 物体 隣接するメッシュサイズ の比(不連続度)は1:3 以内に抑える 1:3以内 メッシュの縦横比(アス ペクト比)は1:3以内に 抑える 1:3以内 ・電気的に重要な部分は小さ いめのセルにする。 ・誘電体内では波長が√εr 分の1になるので小さめのセ ルにする。 ・計算時間はNx*Ny*Nzに比 例するので計算精度と計算時 間を考慮して決める。 ・メッシュ数を各方向2倍にす ると計算時間は16倍になり (Courant条件込み)、必要メ モリーは8倍になるが、計算誤 差は半分になるに過ぎない。 →計算時間と計算精度のト レードオフ 28 2.4 周波数 ○Maxwell方程式は低周波から光領域まで共通のものであるか ら、FDTD法の対象とする周波数は原理的には制限はない。 ○上限周波数 セルサイズがλ/10以下、扱えるセル数は各方向で数百までで あるから解析領域の大きさは数十λまでとなる。 →これから上限周波数が決まる。 ○下限周波数 低周波では周期ΔTが大きくなるが、タイムステップΔtには安定 性条件から上限があり、従ってタイムステップ数が大きくなり、計 算時間がかかる。 →FDTD法は「解析領域<<λ」となる低周波の計算には不向き →周波数を固定した別の解法(周波数領域差分法)が適している 29 周波数特性の計算: FDTD法の計算する時間波形をフーリエ変換して周波数特性 を計算する。 フーリエ変換 時間波形 (FDTDが直接計算するもの) 時間 周波数特性 周波数 30 3. 操作方法 各処理ボタン 図形表示制御部 図形表示部 使い方は[ヘルプ] を参考 幾何データ 入力部 EEM-FDMの主ウィンドウ 31 3.1 処理ボタン 幾何データ以外のデータを入力す るウィンドウが現れる CPUで計算するか GPUで計算するか選 択する 計算を開始する ポスト処理を行う 2次元図形表示を行う 3次元図形表示を行う 動画表示を行う ポスト処理の各種設定を行う の順に作業をする ボタンの上にマウスを置くと簡単な説明が表示される 32 3.2 幾何データ入力部 ユニットを追加・挿入・削除する 現在のユニット番号とユニット総数が 表示される 現在のユニット番号を変える 基本形状の種類を選択する 物性値をリストから選択する 座標値を入力する データの個数は形状で変わる 直方体の場合は X1<X<X2, Y1<Y<Y2, Z1<Z<Z2 の6個のデータ(X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2) を入力する 現在のユニットにコメントを記入する(オプション) 現在のユニット=編集中のユニット 33 3.3 データ入力ウィンドウ サブウィンドウが開く 最初に決定 する ここの設定に よって入力 データが変 わる 詳しくはそれ ぞれの[注]を 参考のこと 34 3.4 物性値編集ウィンドウ ・使用する材質を登録する ・ここで入力したデータが幾何形状入力部の[物性値]リストに追加される ・入力するデータ:比誘電率、導電率、比透磁率、導磁率 35 3.5 メッシュ編集ウィンドウ ・メッシュ(セル)を入力する。 ・X,Y,Z方向に独立に入力する。 ・複数の区間を使用することによって 不均一分割を行うことが可能 [説明あり]形式 注意: 区間数が3以上のときは両端の 区間のセルサイズは一次関数に なるように分割される(セルサイズ の急激な変化を避けるため)。 これをOFFにするには分割数に 負の値を入力する。 [説明なし]形式 36 3.6 集中定数編集ウィンドウ ・集中定数(RまたはLまたはC)を計算するときに使用する ・電界の向きと位置(Yee格子の電界点)と集中定数値 (R/L/C:MKSA単位)を入力する 37 3.7 観測点編集ウィンドウ ・主にSパラメーターを計算するときに使用する ・各観測点の電界の向きと位置(Yee格子の電界点)を入力する ・観測点1を通過する波の[伝搬方向]を指定する (1+と1-成分に分割するために必要) 38 3.8 給電点編集ウィンドウ ・アンテナの給電点のデータを入力する ・位置(Yee格子の電界点)、電界の向き、振幅、位相を入力する ・パルスのときはさらに[パルスデータ]が必要 正弦波のとき有効 通常、0(=既定値) でよい 収束を加速するた めに使用 39 給電点入力の注意 ・給電点は電磁界の源であるから正しく入力することが重要 (1)導線を入力する (2)給電点を入力する ・座標は辺の中心(Yee格子電界点) ・ユニットの中心で給電するには分割 数を奇数にする (3)3D表示で正しく入力されていることを確認する 40 給電点のモデル化: ・給電点には電界が強制的に加えられるのでその点に何があっ ても結果は同じ ・下の3つはどれも同じ結果を与える 導線 導線 導線 誘電体など ギャップ (1セル長) 給電点 (1) 給電点 給電点 (2) (3) 41 パルス波形について ガウスまたは微分ガウス推奨 (1)ガウスパルス (2)三角波パルス 収束状況はあまりよくない 給電点の電圧・電流波形 平均電磁界時間変化 (赤:電界、青:磁界) 計算結果は同じ 入力アドミッタンスの 周波数特性 42 ループアンテナとパルス形状の関係 (1)ガウスパルス 電流が減衰しない ループ形状では微分 ガウスを選択すること 磁界が減衰しない 計算結果がおかしい (2)微分ガウスパルス 低周波でゼロにならない =直流電流が流れ得る 給電点の電圧・電流 波形 平均電磁界時間変化 入力アドミッタンスの 周波数特性 43 仮想抵抗とは ・給電点に抵抗を加え、電流を 強制的に減衰させ、収束を速く すること ・収束が遅いとき有効なことが ある ・抵抗分は後で補正されるの で計算結果は同じ 収束遅い (1)仮想抵抗なし 収束速い (2)仮想抵抗=5Ω 収束さらに速い (3)仮想抵抗=10Ω 44 3.9 設定ウィンドウ ここで各種環境を設定する 入力時の座標単位 データ数がこれを超えるときは 予め大きな数値を入力して EEM-FDMを再起動しておく CPUで計算する とき、コア数を入 力すると計算時 間が短縮できる [データ確認3D]の表示項目を選択する 通常すべてONでよい 45 3.10 ポスト処理制御 図形出力する項目をONにする 右の当該タブで詳細を設定する [注]を参考のこと 46 ポスト処理とは? 計算終了後、図形処理を行うこと [ポスト処理制御]ウィンドウで設定を変えて繰り返し行うことができ る。 計算結果はsol.out(バイナリファイル)に保存される。 名前を変えて保存しておき、後で名前をsol.outに戻すと再度ポスト 処理を行うことができる。ただし、入力データの詳細は忘れがちな ので多用しないほうがいい。再度計算したほうが確実(特にGPUで は)。 47 3.11 収束について FDTD法は反復計算なので、正しい結果を得るには十分収束 させることが必要である。 ポスト処理の[1 平均電磁界]で収束状況を確認する。 (1)正弦波のとき 1周期前との相対誤差の全領域平均 (2)パルスのとき 全領域の平均電磁界 赤:電界、青:磁界、縦軸は対数 48 ・新規にデータを作成したときは 必ず収束状況を確認する ・パラメータを変えたときも時々確 認する ・収束判定条件は、正弦波のとき もパルスのときも0.001が標準的 ・収束誤差が大きいときは計算 誤差もほぼそれに比例して大き い 収束が遅い原因: ・セルサイズの不連続度が 大きい ・誘電率(=波長)の不連続 度が大きい ・本質的に収束が遅い(共 振器など) (1)収束がよい例 (2)収束が悪い例 49 3.12 計算作業の手順 (1)計算対象を電気的特性を失わない程度に簡略化する。 部品点数が少ないほど、データ入力も考察も楽になる。 (重要でないが少しは影響あると思われるものは最後に追加して影 響を見る。) (2)紙の上ですべての座標を記入しておく。 (3)座標データとその他のすべてのデータを入力する。 (最初はなるべく少ない分割数(=大きいセルサイズ)にする。セルサ イズを半分にすると計算時間が16倍になることに注意) (4)計算を行う。 (5)計算が正しく行われていること、モデル化が妥当であることを確 認する。 (6)セルサイズを計算時間が許す限り小さくして精度よい値を得る。 50 計算がうまく行かなかったとき (1)形状データを確認する。 ・予期しない断線・短絡はないか。 ・導体と誘電体が接する所は導体になっているか。 (2)セルは適切に分割されているか。 (3)十分収束しているか。 ・前節のことを確認する。 計算精度をさらに上げるには (1)吸収境界条件にPMLを使用する。 (2)パルス波形は適切であるか。 (3)簡略化した形状を実モデルに近づける。 (4)セルサイズを小さくする。 51 新規にデータを作成するときの注意事項 ・最も近いと思われるサンプルデータから始めるのが便利 (製品添付のサンプルデータ(約50個)は正しく入力されている) ・データ変更は一回に一箇所とする 複数箇所変更すると結果がおかしいとき原因が特定できない ・セルサイズは必要以上に小さくしない (計算時間のため:ターンアラウンド=作業効率) (GPUでかなり緩和される) ・入力と計算作業が終了したら最後にパラメーターを変えて結果 が変わるか変わらないかチェックする > 吸収境界条件をMur⇔PMLと変えてみる > 収束判定条件を変えてみる > 正弦波⇔パルスを変えてみる > パルスの波形を変えてみる > その他いろいろ・・・ 以上のテストにパスする(不可解な現象が発生しない)と、計算結 果の信頼度が上がる 52 4.計算例 FDTDの用途 (1)各種線状/面状アンテナの解析評価 (2)電子機器の放射する電磁波の解析評価(EMC) (3)電磁波応用機器、電波吸収体の解析評価 (4)各種物体のレーダー断面積(RCS)の計算 (5)プリントアンテナ、伝送線路、マイクロ波回路の解析 (6)光の散乱特性の解析 53 (1)ダイポールアンテナ 近傍界分布図 放射パターン 入力アドミッタンスの周波数特性 54 (2)八木アンテナ 放射パターン(Z面) 電流分布(Z=0面) 放射パターン(全方向) 55 (3)ホイップアンテナ 放射パターン(Y面) 放射パターン(全方向) 入力インピーダンス周波数特性 56 (4)逆Fアンテナ 給電点 放射パターン(X面) 電流分布 放射パターン(全方向) 57 (5)パッチアンテナ(同軸給電) アンテナ 基板 グランド板 放射パターン(Y面) 反射損失周波数特性 電流分布(Z面) 58 (6)マイクロストリップアンテナ (仮想)給電点 誘電基板 アンテナ マイクロストリップ線路 観測点#1 グランド板 電流分布(7.2GHz) 放射パターン(全方向) Sパラメータ周波数特性(0-20GHz) 59 (7)フィルタ(マイクロストリップ線路型) (仮想)給電点 観測点1 観測点2 電流分布(5GHz:透過周波数) 電流分布(7GHz:遮断周波数) Sパラメータの周波数特性(0-20GHz) 60 (8)車体内外の電界分布 周波数=2.5GHz アンテナ 61 (9)ビルによる電波障害 ・2次元モデル ・周波数100MHz(VHF) ・計算領域の広さ=300mX100m ・入射方向=右から ビルの大きさ =10mX10m ビルの大きさ =20mX20m 電界分布 62 (10)電車内の電界分布 ・周波数2.5GHz(無線LAN) ・データ作成ライブラリ使用 アンテナ 電界分布 63 (11)フォトニック結晶光導波路 ・電界分布 ・波長=1.5μm ・データ作成ライブラリ使用 電界分布 64 (12)銀微粒子の電界分布 ・2次元モデル ・直径20nmの二つの銀球を1nm離して置く ・平面波入射 ・周波数700THz(波長429nm)で粒子間に最大電力(入射光の10000倍の電力)が 発生する ・比誘電率が負になるので分散性媒質としての解析が必要 電界分布 65 (13)メタマテリアル 負の屈折率 電界分布(1GHz,X方向) 電界分布(1GHz) Sパラメータの周波数特性(0-2GHz) 66 5 バッチ処理 ・指定したフォルダにあるデータをすべて計算するバッチ処理 プログラム(最適化などに便利) ・ホームページに公開 ・ポスト処理のバッチ処理も可能 ・複数データ作成にはデータ作成ライブラリが便利 ○使用方法 コマンドプロンプトで以下のコマンドを実行する > cscript fdm_sol.vbs データフォルダ 計算が終了すると計算結果sol.outが名前を変えて保存され ている 67 6 データ作成ライブラリ ○データ作成ライブラリとは? ・データをウインドウ上で入力するのではなく、データを作成 するプログラムを作成するためのツール ・EEMホームページに公開されているフリーソフト ○必要な知識は? ・CまたはJavaの初歩的なプログラミング知識(for文やif文 程度)が必要 ○どのようなときに使うのか? ・データ量が多く、規則的なとき ・何らかの電子データがあり、それを利用するとき ・パラメータを変えて繰り返し計算するとき 68 データ作成ライブラリを使用したプログラム例 #include "fdm_datalib.h" int main(void) { // (1) initialize fdm_init(); 初期化 // (2) title fdm_title("sample1"); タイトル // (3) domain fdm_domain(0); 計算方法(0/1/2) // (4) mesh fdm_xsection(2, -50e-3, +50e-3); fdm_xdivision(1, 20); X方向区間 X方向分割数 fdm_ysection(2, -50e-3, +50e-3); fdm_ydivision(1, 20); Y方向区間 Y方向分割数 fdm_zsection(4, -75e-3, -25e-3, +25e-3, +75e-3); fdm_zdivision(3, 10, 11, 10); Z方向区間 Z方向分割数 69 // (5) material fdm_material(2.0, 0.0, 1.0, 0.0); 物性値 // (6) geometry fdm_unit6(1, 1, 0e-3, 0e-3, -25e-3, 0e-3, 0e-3, 25e-3); 形状データ // (7) incidence fdm_feed(3, 0e-3, 0e-3, 0e-3, 1, 0); 給電点 // (8) observation point // (9) frequency fdm_freq(3e9, 3e9, 0); fdm_freq2(2e9, 4e9, 20); 周波数 // (10) solver fdm_iteration(1e-3, 2000, 100); 計算条件 // (11) output fdm_outdat("sample1.fdm"); } 出力ファイル名 return 0; 70 参考文献 [1]宇野亨「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」、コ ロナ社、1998 [2]電気学会編「計算電磁気学」第2章、培風館、2003 EEM-FDMドキュメント(理論説明書、取扱説明書) http://www.e-em.co.jp/document.htm EEM-FDMホームページ(詳細な技術情報) http://www.e-em.co.jp/fdm/eem_fdm.htm 71
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