EEM-FDMセミナー資料

EEMセミナー
EEM-FDM(FDTD法)
株式会社EEM
1
1. FDTD法
• FDTD法とは:
• 電磁波の物理法則であるMaxwell方程式を厳密に数値
計算する方法の一つ
• 時間領域差分法(Finite Difference Time Domain
method)
• 適用範囲が広く汎用的であり、最近のPCの能力の向上
により、いろいろな分野の設計・開発現場で使われるよう
になった
• 準静電界(~MHz)~電波(~GHz)~マイクロ波(>GHz)
~ミリ波(>>GHz)~光(>>THz)の広い周波数に適用可能
2
1.1 Maxwell方程式
∂B
∇× E=−
−J m ( Ampere 's law )
∂t
∂D
∇ ×H =
+J (Faraday ' s law)
∂t
D=ϵ E (構成方程式)
B=μ H (同 上: 磁気 版)
J =σ E (Ohm 's law)
*
J m =σ H (同 上: 磁気 版)
E :電界
D :電束密度
H :磁界
B : 磁束密度
J :電流
J m : 磁流
 : 誘電率
 :透磁率
 : 導電率
 * : 導磁率
3
構成方程式とOhmの法則を代入すると
∂H
*
∇× E=−
− H
∂t
∂E
∇ × H=
 E
∂t
電界と磁界の連立方程式になる
→FDTD法ではこれを解く
E,H : 場所と時間の関数(未知量)
ε,μ,σ,σ* : 場所の関数(既知量)
4
1.2 離散化
Z
Yee格子
・電界の3成分、磁界の3成
分を計算する点がすべて
異なる
Hz
・電界は辺の中心の接線
方向、磁界は面の中心の
法線方向
Ex
Ey
Hy
Ez
Hx
・rotを含むMaxwell方程式
と極めて相性がよい
Y
・異なる誘電体の境界条件
(Etが連続)と相性がよい
・FDTD法を使用するときは
Yee格子を念頭に置いてお
くことが重要
X
5
FDTD法
時間的に電界Eと磁界Hを交互に計算す
る
(蛙跳び法、leap frog法)
En
E
En+1
時間t
H
Hn-1/2
Hn+1/2
6
時刻t=nΔtで第1式のX成分を離散化する(Y,Z成分も同様)
n

1
2
 ∇ ×E x i , j , k 
1
2

n

1
1
=− i , j  , k 
2
2

Hx
1
2

1


n−
1
1
1
1
i , j , k  −H x 2 i , j  , k 
2
2
2
2
t
1

 
n
1
1
1
1
− i , j , k  H x 2 i , j , k 
2
2
2
2
*


これから、t=(n-1/2)ΔtのHxとt=nΔtのEからt=(n+1/2)ΔtのHxが計算される
H
1
n
2
x


1
1
i , j , k  =
2
2

1
1
 i , j , k 
2
2

 

n−


Hx
1
2

1
1
i , j , k 
2
2
1
1
1
1
 i , j , k   * i , j , k   t
2
2
2
2
t
n
1
1
−
 ∇× E x i , j , k 
2
2
1
1
1
1
 i , j , k   * i , j , k   t
2
2
2
2

 



7
時刻t=(n+1/2)Δtで第2式のX成分を離散化する(Y,Z成分も同様)
n
 ∇ ×H x
1
2

1
i , j , k
2


 
1
1
E n1
i , j , k −E nx i , j , k
x
2
2
1
= i , j , k
2
t
1
1
 i , j , k E n1
i , j , k
x
2
2



 


これから、t=nΔtのExとt=(n+1/2)ΔtのHからt=(n+1)ΔtのExが計算される


1
E nx 1 i , j , k =
2


1
 i , j , k
2

 

1
E nx i , j , k
2

1
1
 i , j , k  i , j , k  t
2
2
t


 
n

1
1
 i , j , k  i , j , k  t
2
2
 ∇× H  x
1
2

1
i , j , k
2


8
1.3 波源モデル
波源は以下の2つのどちらかでモデル化される
(1)電圧給電
・アンテナモデルに相当
・導線上の1点(Yee格子の電界
点)に電圧を強制的に与える
→これが波源となり、系全体に電
磁波が伝搬する
放射
給電点 Vin
アンテナ
平面波入射
(2)平面波入射
・散乱現象に相当
・外部から平面波を入射する
→系全体に電磁波が照射され、電
磁界分布が決定される
散乱
物体
9
波源の波形としては以下の2通りがある
(1)パルス
・有限時間のパルスを印加し、すべて
の電磁界が外部に放射され、系全体
の電磁界がゼロになるまで計算する
・各点での時間波形をフーリエ変換し
周波数特性を計算する
・利点:多数の周波数での周波数特
性が一度の計算で求まる
(2)正弦波
・指定した周波数の正弦波を無限時
間印加し、系全体の電磁界が周期的
になるまで計算する
・収束後、1周期の時間波形をフーリ
エ変換し、その周波数での電磁界と
する
・利点:周波数が特定されているとき
に効率よく計算できる
10
1.4 吸収境界条件
無限に広がる電磁波を有限の
領域で計算するために、物体の
周囲に適当な空間をとり、その
外側に吸収境界条件を設ける
解析領域
物体
~λ
吸収境界条件
吸収境界条件としては以下の2通りがある
(1)Mur1次
多くの場合はこれで十分であるが、精度上PMLが望ましい場
合がある
(2)PML
精度は非常にいいが、計算時間と必要メモリーが少し余分に
必要になる
11
1.5 安定性条件
Δtには上限がある(Courant条件、c:光速)
 t≤
1

1
1
1
c


2
2
min  xi min  y j min  z 2k
i
j
k
小さいセルを入力するとΔtが小さくなり、必要なタイムス
テップ数が増え計算時間が増える
→セルは必要以上に小さくしない
12
1.6 遠方界
FDTD法は有限領域の計算であるが、境界面の電磁界か
ら積分計算によって遠方界(無限遠での指向性)を計算す
ることができる。
exp − jkr 
F  ,
r
遠方界
E r ,  ,=
放射
境界面(E,H)
解析領域
13
1.7 入力インピーダンス
入力インピーダンスは給電点での電圧と電流の時間波形の
フーリエ変換の比から求める。
Z in  f =
F {V in  t}
F { I in  t}
入力インピーダンスは給電波形Vin(t)によらない
→給電波形は原理的には何でもよいが、通常、ガウスパル
スまたは微分ガウスパルスを用いる(広帯域特性が安定し
ているため)
入力インピーダンスZinと給電線の特性インピーダンスZ0
(ユーザー入力値)からVSWRと反射損失が計算される
14
1.8 利得
2
2
2
1 4πr
g (θ , ϕ)=
∣E θ (r ,θ , ϕ)∣ +∣E ϕ (r , θ , ϕ)∣
P in 2Z
1
*
P in =∑ ℜ {V in n I in n } (給電電力、n:給電点の和)
n 2
{
}
1.9 散乱断面積
2
2
1
2
  ,= 2 4 r {∣E   ,∣ ∣E   ,∣ }
E in
15
1.10 Sパラメータ
Sパラメータは適当なサンプル点の電界の時間波形のフー
リエ変換の比から求める
(1+:ポート1の進行波、1-:ポート1の後退波)
S 11  f =
S n 1  f =
ポート1
1-
1+
F { E 1- t  }
F { E 1+ t  }
F { E n t }
F { E 1+ t  }
n1
ポート2
デバイス
ポート3
16
1.11 FDTD法の計算時間と必要メモリー
計算時間 ∝ Nx * Ny * Nz * Nt
必要メモリー = (30 + 24 * Nf) * Nx * Ny * Nz バイト
(例:Nx=Ny=Nz=100,Nf=1のとき54MB)
・Nx,Ny,Nz:セル数
解析対象の大きさ/波長と形状の複雑さで決まる
・Nt:タイムステップ数
解析対象の電磁界特性と収束しやすさで決まる
・Nf : 周波数の数
計算時間は、パルスのときはNfに無関係、正弦波のときはNf
に比例する
17
1.12 GPU高速計算
EEM-FDMはGPU(NVIDIAビデオカード)高速計算に対応
計算条件:
Nx=Ny=Nz=300,Nt=500
CPU : Intel i5 750 3.0GHz
ハードウェア(CPU/GPU)
CPU 1コア
CPU 4コア
GPU GTX460
計算時間 (速度比)
3861秒 (1.0)
924秒 (4.2)
87秒 (44.4)
GPUを用いることに計算時間が格段に短縮され、作業効率が
大幅に向上する
→バッチ的処理からリアルタイム処理へのパラダイムシフト
18
2.入力データ
FDTD法で計算するには、ユーザーは以下のデータを
入力する必要がある。
1) 解析対象の形状
2) 解析対象の材質(金属、誘電率、透磁率)
3) 空間のセル分割
4) 周波数
5) 波源
6)その他の計算条件
19
2.1 解析対象の形状
解析対象を複数の基本図形に分解して入力する
#1
#2
#3
データ入力上の注意:
予め図面上に入力すべき座
標値を記入しておくと作業が
はかどる。
入力しながら座標値を考える
と効率が悪い。
20
基本形状
直方体、最も基本的、
なるべくこれで表現した
方がいい、
面と線も表現できる
球、
楕円体も可
中空四角筒、 四角柱、
円錐台
任意断面のとき使用
導波管用
円柱、
断面は楕円も可
四角錘台
21
直方体ユニット
Z2
面の入力方法
Z
Z1
X1
Y1
Y2 X2
X
Y
X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2を入力する
Z1=Z2とすると平面(四角形)になる
線の入力方法
さらにY1=Y2とすると線分になる
22
入力した形状を3D表示で確認する
2頁目ではキーボードmでスライス、キーボードbで半透明
→物体内部の確認
材質ごとに色が異なる(灰色:完全導体、それ以外:誘電体)
3D図形表示
23
複数のユニットが重複するところではユニット番号が大きい
方(後に入力した方)の材質が優先される
ユニット#1
ユニット#2
+
=
空気(εr=1)
スリット
24
異なる誘電体が接する所は平均の誘電率となる
εr1
εr2
(εr1+εr2)/2
完全導体(PEC)と誘電体が接するときは境界でPECが
優先されるようにPECを後に入力する
#1
#2
誘電体
PEC
25
2.2 解析対象の材質
解析対象の材質(電気的定数)として以下のものを入力する
・比誘電率 εr=ε/ε0
・導電率 σ[S/m]
・比透磁率 μr=μ/μ0
・導磁率 σ*[1/Sm]
※磁性体以外はμr=1,σ*=0でよい
ε0 = 8.854 * 10-12[F/m]
μ0= 4π * 10-7 [H/m]
MKSA単位系
F:Farad, H:Henry, S:Siemens=1/Ω
26
2.3 空間のセル分割
・3次元の直交座標であり、X,Y,Z
各方向に独立に空間をセルに分
割する。
・単位セルは直方体になる。
・各方向を複数の区間に分割し、
不均一に分割することが可能。
・解析物体の周囲にも適当な空間
が必要(吸収境界条件のため)
27
セル分割のポイント
セルサイズはλ/10が標準
λ/10
形状の境界で区間を
区切るのが望ましい
物体
隣接するメッシュサイズ
の比(不連続度)は1:3
以内に抑える
1:3以内
メッシュの縦横比(アス
ペクト比)は1:3以内に
抑える
1:3以内
・電気的に重要な部分は小さ
いめのセルにする。
・誘電体内では波長が√εr
分の1になるので小さめのセ
ルにする。
・計算時間はNx*Ny*Nzに比
例するので計算精度と計算時
間を考慮して決める。
・メッシュ数を各方向2倍にす
ると計算時間は16倍になり
(Courant条件込み)、必要メ
モリーは8倍になるが、計算誤
差は半分になるに過ぎない。
→計算時間と計算精度のト
レードオフ
28
2.4 周波数
○Maxwell方程式は低周波から光領域まで共通のものであるか
ら、FDTD法の対象とする周波数は原理的には制限はない。
○上限周波数
セルサイズがλ/10以下、扱えるセル数は各方向で数百までで
あるから解析領域の大きさは数十λまでとなる。
→これから上限周波数が決まる。
○下限周波数
低周波では周期ΔTが大きくなるが、タイムステップΔtには安定
性条件から上限があり、従ってタイムステップ数が大きくなり、計
算時間がかかる。
→FDTD法は「解析領域<<λ」となる低周波の計算には不向き
→周波数を固定した別の解法(周波数領域差分法)が適している
29
周波数特性の計算:
FDTD法の計算する時間波形をフーリエ変換して周波数特性
を計算する。
フーリエ変換
時間波形
(FDTDが直接計算するもの)
時間
周波数特性
周波数
30
3. 操作方法
各処理ボタン
図形表示制御部
図形表示部
使い方は[ヘルプ]
を参考
幾何データ
入力部
EEM-FDMの主ウィンドウ
31
3.1 処理ボタン
幾何データ以外のデータを入力す
るウィンドウが現れる
CPUで計算するか
GPUで計算するか選
択する
計算を開始する
ポスト処理を行う
2次元図形表示を行う
3次元図形表示を行う
動画表示を行う
ポスト処理の各種設定を行う
の順に作業をする
ボタンの上にマウスを置くと簡単な説明が表示される
32
3.2 幾何データ入力部
ユニットを追加・挿入・削除する
現在のユニット番号とユニット総数が
表示される
現在のユニット番号を変える
基本形状の種類を選択する
物性値をリストから選択する
座標値を入力する
データの個数は形状で変わる
直方体の場合は
X1<X<X2, Y1<Y<Y2, Z1<Z<Z2
の6個のデータ(X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2)
を入力する
現在のユニットにコメントを記入する(オプション)
現在のユニット=編集中のユニット
33
3.3 データ入力ウィンドウ
サブウィンドウが開く
最初に決定
する
ここの設定に
よって入力
データが変
わる
詳しくはそれ
ぞれの[注]を
参考のこと
34
3.4 物性値編集ウィンドウ
・使用する材質を登録する
・ここで入力したデータが幾何形状入力部の[物性値]リストに追加される
・入力するデータ:比誘電率、導電率、比透磁率、導磁率
35
3.5 メッシュ編集ウィンドウ
・メッシュ(セル)を入力する。
・X,Y,Z方向に独立に入力する。
・複数の区間を使用することによって
不均一分割を行うことが可能
[説明あり]形式
注意:
区間数が3以上のときは両端の
区間のセルサイズは一次関数に
なるように分割される(セルサイズ
の急激な変化を避けるため)。
これをOFFにするには分割数に
負の値を入力する。
[説明なし]形式
36
3.6 集中定数編集ウィンドウ
・集中定数(RまたはLまたはC)を計算するときに使用する
・電界の向きと位置(Yee格子の電界点)と集中定数値
(R/L/C:MKSA単位)を入力する
37
3.7 観測点編集ウィンドウ
・主にSパラメーターを計算するときに使用する
・各観測点の電界の向きと位置(Yee格子の電界点)を入力する
・観測点1を通過する波の[伝搬方向]を指定する
(1+と1-成分に分割するために必要)
38
3.8 給電点編集ウィンドウ
・アンテナの給電点のデータを入力する
・位置(Yee格子の電界点)、電界の向き、振幅、位相を入力する
・パルスのときはさらに[パルスデータ]が必要
正弦波のとき有効
通常、0(=既定値)
でよい
収束を加速するた
めに使用
39
給電点入力の注意
・給電点は電磁界の源であるから正しく入力することが重要
(1)導線を入力する
(2)給電点を入力する
・座標は辺の中心(Yee格子電界点)
・ユニットの中心で給電するには分割
数を奇数にする
(3)3D表示で正しく入力されていることを確認する
40
給電点のモデル化:
・給電点には電界が強制的に加えられるのでその点に何があっ
ても結果は同じ
・下の3つはどれも同じ結果を与える
導線
導線
導線
誘電体など
ギャップ
(1セル長)
給電点
(1)
給電点
給電点
(2)
(3)
41
パルス波形について
ガウスまたは微分ガウス推奨
(1)ガウスパルス
(2)三角波パルス
収束状況はあまりよくない
給電点の電圧・電流波形 平均電磁界時間変化
(赤:電界、青:磁界)
計算結果は同じ
入力アドミッタンスの
周波数特性
42
ループアンテナとパルス形状の関係
(1)ガウスパルス
電流が減衰しない
ループ形状では微分
ガウスを選択すること
磁界が減衰しない
計算結果がおかしい
(2)微分ガウスパルス
低周波でゼロにならない
=直流電流が流れ得る
給電点の電圧・電流
波形
平均電磁界時間変化
入力アドミッタンスの
周波数特性
43
仮想抵抗とは
・給電点に抵抗を加え、電流を
強制的に減衰させ、収束を速く
すること
・収束が遅いとき有効なことが
ある
・抵抗分は後で補正されるの
で計算結果は同じ
収束遅い
(1)仮想抵抗なし
収束速い
(2)仮想抵抗=5Ω
収束さらに速い
(3)仮想抵抗=10Ω
44
3.9 設定ウィンドウ
ここで各種環境を設定する
入力時の座標単位
データ数がこれを超えるときは
予め大きな数値を入力して
EEM-FDMを再起動しておく
CPUで計算する
とき、コア数を入
力すると計算時
間が短縮できる
[データ確認3D]の表示項目を選択する
通常すべてONでよい
45
3.10 ポスト処理制御
図形出力する項目をONにする
右の当該タブで詳細を設定する
[注]を参考のこと
46
ポスト処理とは?
計算終了後、図形処理を行うこと
[ポスト処理制御]ウィンドウで設定を変えて繰り返し行うことができ
る。
計算結果はsol.out(バイナリファイル)に保存される。
名前を変えて保存しておき、後で名前をsol.outに戻すと再度ポスト
処理を行うことができる。ただし、入力データの詳細は忘れがちな
ので多用しないほうがいい。再度計算したほうが確実(特にGPUで
は)。
47
3.11 収束について
FDTD法は反復計算なので、正しい結果を得るには十分収束
させることが必要である。
ポスト処理の[1 平均電磁界]で収束状況を確認する。
(1)正弦波のとき
1周期前との相対誤差の全領域平均
(2)パルスのとき
全領域の平均電磁界
赤:電界、青:磁界、縦軸は対数
48
・新規にデータを作成したときは
必ず収束状況を確認する
・パラメータを変えたときも時々確
認する
・収束判定条件は、正弦波のとき
もパルスのときも0.001が標準的
・収束誤差が大きいときは計算
誤差もほぼそれに比例して大き
い
収束が遅い原因:
・セルサイズの不連続度が
大きい
・誘電率(=波長)の不連続
度が大きい
・本質的に収束が遅い(共
振器など)
(1)収束がよい例
(2)収束が悪い例
49
3.12 計算作業の手順
(1)計算対象を電気的特性を失わない程度に簡略化する。
部品点数が少ないほど、データ入力も考察も楽になる。
(重要でないが少しは影響あると思われるものは最後に追加して影
響を見る。)
(2)紙の上ですべての座標を記入しておく。
(3)座標データとその他のすべてのデータを入力する。
(最初はなるべく少ない分割数(=大きいセルサイズ)にする。セルサ
イズを半分にすると計算時間が16倍になることに注意)
(4)計算を行う。
(5)計算が正しく行われていること、モデル化が妥当であることを確
認する。
(6)セルサイズを計算時間が許す限り小さくして精度よい値を得る。
50
計算がうまく行かなかったとき
(1)形状データを確認する。
・予期しない断線・短絡はないか。
・導体と誘電体が接する所は導体になっているか。
(2)セルは適切に分割されているか。
(3)十分収束しているか。
・前節のことを確認する。
計算精度をさらに上げるには
(1)吸収境界条件にPMLを使用する。
(2)パルス波形は適切であるか。
(3)簡略化した形状を実モデルに近づける。
(4)セルサイズを小さくする。
51
新規にデータを作成するときの注意事項
・最も近いと思われるサンプルデータから始めるのが便利
(製品添付のサンプルデータ(約50個)は正しく入力されている)
・データ変更は一回に一箇所とする
複数箇所変更すると結果がおかしいとき原因が特定できない
・セルサイズは必要以上に小さくしない
(計算時間のため:ターンアラウンド=作業効率)
(GPUでかなり緩和される)
・入力と計算作業が終了したら最後にパラメーターを変えて結果
が変わるか変わらないかチェックする
> 吸収境界条件をMur⇔PMLと変えてみる
> 収束判定条件を変えてみる
> 正弦波⇔パルスを変えてみる
> パルスの波形を変えてみる
> その他いろいろ・・・
以上のテストにパスする(不可解な現象が発生しない)と、計算結
果の信頼度が上がる
52
4.計算例
FDTDの用途
(1)各種線状/面状アンテナの解析評価
(2)電子機器の放射する電磁波の解析評価(EMC)
(3)電磁波応用機器、電波吸収体の解析評価
(4)各種物体のレーダー断面積(RCS)の計算
(5)プリントアンテナ、伝送線路、マイクロ波回路の解析
(6)光の散乱特性の解析
53
(1)ダイポールアンテナ
近傍界分布図
放射パターン
入力アドミッタンスの周波数特性
54
(2)八木アンテナ
放射パターン(Z面)
電流分布(Z=0面)
放射パターン(全方向)
55
(3)ホイップアンテナ
放射パターン(Y面)
放射パターン(全方向)
入力インピーダンス周波数特性
56
(4)逆Fアンテナ
給電点
放射パターン(X面)
電流分布
放射パターン(全方向)
57
(5)パッチアンテナ(同軸給電)
アンテナ
基板
グランド板
放射パターン(Y面)
反射損失周波数特性
電流分布(Z面)
58
(6)マイクロストリップアンテナ
(仮想)給電点
誘電基板
アンテナ
マイクロストリップ線路
観測点#1
グランド板
電流分布(7.2GHz)
放射パターン(全方向)
Sパラメータ周波数特性(0-20GHz)
59
(7)フィルタ(マイクロストリップ線路型)
(仮想)給電点
観測点1
観測点2
電流分布(5GHz:透過周波数)
電流分布(7GHz:遮断周波数)
Sパラメータの周波数特性(0-20GHz)
60
(8)車体内外の電界分布
周波数=2.5GHz
アンテナ
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(9)ビルによる電波障害
・2次元モデル
・周波数100MHz(VHF)
・計算領域の広さ=300mX100m
・入射方向=右から
ビルの大きさ
=10mX10m
ビルの大きさ
=20mX20m
電界分布
62
(10)電車内の電界分布
・周波数2.5GHz(無線LAN)
・データ作成ライブラリ使用
アンテナ
電界分布
63
(11)フォトニック結晶光導波路
・電界分布
・波長=1.5μm
・データ作成ライブラリ使用
電界分布
64
(12)銀微粒子の電界分布
・2次元モデル
・直径20nmの二つの銀球を1nm離して置く
・平面波入射
・周波数700THz(波長429nm)で粒子間に最大電力(入射光の10000倍の電力)が
発生する
・比誘電率が負になるので分散性媒質としての解析が必要
電界分布
65
(13)メタマテリアル
負の屈折率
電界分布(1GHz,X方向)
電界分布(1GHz)
Sパラメータの周波数特性(0-2GHz)
66
5 バッチ処理
・指定したフォルダにあるデータをすべて計算するバッチ処理
プログラム(最適化などに便利)
・ホームページに公開
・ポスト処理のバッチ処理も可能
・複数データ作成にはデータ作成ライブラリが便利
○使用方法
コマンドプロンプトで以下のコマンドを実行する
> cscript fdm_sol.vbs データフォルダ
計算が終了すると計算結果sol.outが名前を変えて保存され
ている
67
6 データ作成ライブラリ
○データ作成ライブラリとは?
・データをウインドウ上で入力するのではなく、データを作成
するプログラムを作成するためのツール
・EEMホームページに公開されているフリーソフト
○必要な知識は?
・CまたはJavaの初歩的なプログラミング知識(for文やif文
程度)が必要
○どのようなときに使うのか?
・データ量が多く、規則的なとき
・何らかの電子データがあり、それを利用するとき
・パラメータを変えて繰り返し計算するとき
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データ作成ライブラリを使用したプログラム例
#include "fdm_datalib.h"
int main(void)
{
// (1) initialize
fdm_init();
初期化
// (2) title
fdm_title("sample1");
タイトル
// (3) domain
fdm_domain(0);
計算方法(0/1/2)
// (4) mesh
fdm_xsection(2, -50e-3, +50e-3);
fdm_xdivision(1, 20);
X方向区間
X方向分割数
fdm_ysection(2, -50e-3, +50e-3);
fdm_ydivision(1, 20);
Y方向区間
Y方向分割数
fdm_zsection(4, -75e-3, -25e-3, +25e-3, +75e-3);
fdm_zdivision(3, 10, 11, 10);
Z方向区間
Z方向分割数
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// (5) material
fdm_material(2.0, 0.0, 1.0, 0.0);
物性値
// (6) geometry
fdm_unit6(1, 1, 0e-3, 0e-3, -25e-3, 0e-3, 0e-3, 25e-3); 形状データ
// (7) incidence
fdm_feed(3, 0e-3, 0e-3, 0e-3, 1, 0);
給電点
// (8) observation point
// (9) frequency
fdm_freq(3e9, 3e9, 0);
fdm_freq2(2e9, 4e9, 20);
周波数
// (10) solver
fdm_iteration(1e-3, 2000, 100);
計算条件
// (11) output
fdm_outdat("sample1.fdm");
}
出力ファイル名
return 0;
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参考文献
[1]宇野亨「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」、コ
ロナ社、1998
[2]電気学会編「計算電磁気学」第2章、培風館、2003
EEM-FDMドキュメント(理論説明書、取扱説明書)
http://www.e-em.co.jp/document.htm
EEM-FDMホームページ(詳細な技術情報)
http://www.e-em.co.jp/fdm/eem_fdm.htm
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