北方山草 29 (2012) コラム④ 君はヒグマの糞を踏んだことがあるか 昨年の秋、北海道は木の実の不作からヒ グマの「大量出没警報」を発令、これほど 当たった予報もないほどに連日の出没だっ た。ヒグマだって好んで街中を歩く訳でな く、たまたま出てしまい若グマの冒険心で 探検したのだろう、中央区盤渓、西区平和、 南区南の沢などは私が札幌に住んでいた当 時は藻岩山原始林の続きの立派な山で人は 住んでなかった。札幌市中央区にヒグマが出 没、東京の人が聞いたらそりゃ驚きますよ、 でもヒグマも棲む自然豊なところにあなた も暮らしているのです。 今年も雨竜沼湿原はヒグマ 3 頭が出没して 力一杯掘り返して採食しました。2005 年以 来、毎年の恒例行事です。8 月 10 日に木道 沿いで初の掘り返し、デッカイ糞の置き土産 をご覧になったでしょうか。9 月中旬頃まで 連日連夜、夜討ち朝駆けで大好物ハクサンボ ウフウ(セリ科)の生育地の湿原入口テラス、 浮島橋周辺、ペンケペタン川沿いなど人目 に触れる場所を好んで激しく掘り返し、周 辺植物も一緒に食欲たるや豪快の一言、そ して食後の脱糞は彼らの鉄則。洗面器山盛 り一杯の糞が木道の上に「置き土産」 、時に 大人の腕の太さの俵状のウンコの山。この ウンコの元がヒグマのソウルフード・ハク サンボウフウで、全道どこのヒグマも採食 する。湿原には他にエゾボウフウ、イブキ ゼリと外見が良く似た 3 兄弟が同所的に分 布、植物好きでも見分けが難しいのにヒグマ は嗅ぎ分けてハクサンボウフウだけを食べ、 エゾボウフウはチラ見でやり過ごしている。 ヒグマの食性、行動跡、ウンコなどの生態 の一部を間直で観察するには雨竜沼、高原 温泉のように監視員もいない、知床のよう に「2 時間自粛ルール」もない、地元役場は 無関心で困ったものです。今のヒグマは「新 世代ベアーズ」と呼ばれ、人を恐れず無頓 着なので昼間でも木道近くの川沿いなどを 徘徊しています。皆さん、雨竜沼はヒグマ の遊び場でいつも出没している事を忘れな いでください。 木道の置き土産を踏んだ時、グニュとい う、牛糞のように軟らかすぎず、馬糞ほど堅 くなく、抵抗を感じながら靴底が木道を踏 む感触が伝わる、何とも切ない悲しい気分、 靴底の跡と押し広げられた糞、木道に残さ れた踏んだクソ、皆さんの山歩きの幸ウン を祈る。 (佐々木 純一) ハクサンボウフウ 木道の置き土産・ヒグマの糞 − 104 −
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