IVP-News-121125-01-01 極少精子の凍結保存 ICSI の広まりにより、射出精液中の精子が極わずかしか存在しない症例でも、普通に受精させられる時代になって いる。また、TESE の技術進歩により精巣からの精子回収率が向上し、射出精液中に精子が全く存在しない症例で も挙児を得ている。以前は、TESE の手術に合わせて排卵誘発を行い、新鮮な精巣組織から採取した精子と採卵さ れた新鮮な卵子を用いて ICSI を施工することが行われていた。しかしながら近年では、事前に精巣組織を採取して 精子の有無を確認後に凍結保存しておき、採卵にて卵子が獲得できたことを確認後に融解して使用しているケース が多いと思われる。 ある程度精子数が多い場合は問題ないが、特に非閉塞性無精子症の場合のように、新鮮組織中に運動精子を僅かに 確認できる程度であった場合、凍結してしまうと融解後には運動精子を見つけられなくなってしまうことも多い。 そこで、以前から精子を数個という単位で凍結保存する試みが行われているが、最近臨床でも使えそうな方法が発 表されている。 クライオトップ®(Kitazato)を用いる方法 4) ① 精子をインジェクションピペット等でピックアップ後、クライオトップシート先端に作った精子凍結保護剤の 1uL ドロップに精子を移動する。 ② 急いで、液体窒素液面から 4cm の地点(-120℃)に移動し 2 分間静置して凍結する。 ③ 液体窒素に浸漬してキャップをする。 ④ 液他窒素タンクで保存。 ⑤ 融解は 2uL の Hepes-medium ドロップ 3 個にオイルをカバーしたディッシュを 37℃に加温。 ⑥ 液体窒素から出したクライオトップ先端を直ぐにドロップへ浸漬して融解。 ⑦ 他の 2 つのドロップでシート部分を良く洗浄。 ⑧ マニピュレーターで精子を回収する。 セルスリーパー®(Nipro)を用いる方法 4) ① 精子をインジェクションピペット等でピックアップ後、セルスリーパーコンテナ中央に作った精子凍結保護剤 の 3.5uL ドロップに精子を移動する。 ② 急いでコンテナをチューブに収納して、液体窒素液面から 0.5cm の地点に移動し 2.5 分間静置して凍結する。 ③ 液他窒素タンクで保存。 ④ 液体窒素から出したセルスリーパーを室温で 1 分間放置後、トレーを取りだす。 ⑤ トレーにミネラルオイルを被せて、37℃で 2 分間放置。 ⑥ マニピュレーターで精子を回収する。 高度生殖医療技術研究所(ARMT) IVP-News-121022-01-01 参考文献: 1) 遠藤雄史, 藤井好孝, 新谷香澄, 瀬尾百百代, & 本山洋明. (2010). Cryotop を用いたヒト運動精子 1 個の凍結保存法の検討. 日本受精着床学 会雑誌, 27(1), 63–66. 2) Endo, Y., Fujii, Y., Shintani, K., Seo, M., Motoyama, H., & Funahashi, H. (2011). Single Spermatozoon Freezing Using Cryotop. Journal of Mammalian Ova Research, 28(1), 47–52. 3) Endo, Y., Fujii, Y., Shintani, K., Seo, M., Motoyama, H., & Funahashi, H. (2012). Simple vitrification for small numbers of human spermatozoa. Reproductive biomedicine online, 24 (3), 301–7. 4) Endo, Y., Fujii, Y., Kurotsuchi, S., Motoyama, H., & Funahashi, H. (2012). Successful delivery derived from vitrified-warmed spermatozoa from a patient with nonobstructive azoospermia. Fertility and sterility, 98(6), 1423–7. Rapid-i®(Vitrolife)を用いる方法 5) 上記の方法はいずれも精子を凍結している保護剤が液体窒素に直接触れることになります。そこで、完全密閉式の 容器を使用した方法も発表されている。 ① 精子をインジェクションピペット等でピックアップ後、Rapid-i 先端のホールに作った精子凍結保護剤の 1.5uL ドロップに精子を移動する。 ② 急いで液体窒素蒸気中に移動し 2 分間静置して凍結する。 ③ Rapid-i の定法に従いチューブ内に密閉封入する。 ④ 液体窒素タンクで保存。 ⑤ 融解は 2uL の Hepes-medium ドロップ 3 個にオイルをカバーしたディッシュを 37℃に加温。 ⑥ 液体窒素から出した Rapid-i 先端を直ぐにドロップへ浸漬して融解。 ⑦ 他の 2 つのドロップでシート部分を良く洗浄。 ⑧ マニピュレーターで精子を回収する。 参考文献: 5) 江頭昭義, 大坪瞳, 田中啓子, 松隈豊和, 村上正夫, 永渕惠美子, 友原愛, 峰千尋, 伊福光枝, 塩田真知子, 南綾子, 村上貴美子, 大塚未砂子, 吉 岡尚美, 荒木康久, 蔵本武志. (2012). Rapid-i を用いた液体窒素非接触系による少数精子凍結保存に関する検討. 日本受精着床学会雑誌, 29(1), 170–175. これらの方法が必要な精子数の症例は必ずしも多くはないと思うが、TESE-ICSI を行っている施設では必要に迫ら れることがあると思うので、できればチェックしておきたいテクニックである。 2 高度生殖医療技術研究所(ARMT)
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