CRI 6月号特集 要約版 2005 年 5 月 19 日 (配布先:国土交通記者会、国土交通省建設専門紙記者会、大阪建設記者クラブ) ㈱長谷工総合研究所 高級賃貸マンション市場の動向 株式会社長谷工総合研究所(東京都港区、所長:山本 理)では、表題のレポートをまとめました。 レポートの全文は、5 月 25 日発行の「CRI」2005 年6月号に掲載いたします。 2000 年以降、高級賃貸マンションの供給が増加している。大規模再開発に伴う住宅供給に加えて、積極的に 賃貸住宅事業に参入するデベロッパーも多くなっている。また、供給増によって、高級賃貸マンションの概念 にも広がりが見られるようになった。今月号のレポートでは、首都圏における高級賃貸マンションについて、 デベロッパー等へのヒアリングをもとに、市場動向をまとめた。 ◆都内23区の都心部で賃貸住宅の供給が増加。 国土交通省が公表する住宅着工統計をみると、都内23区の都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)にお ける貸家着工戸数は増加傾向で、2004年には1万1,978戸と1万戸を上回り、1988年以降では最多となった。 特に、港区での貸家着工戸数は大幅に増加し、2004年は5,012戸と2003年(2,089戸)を2倍以上上回った。 ◆高級賃貸マンションの市場規模が拡大。高級賃貸マンションの考え方にも変化。 デベロッパー等へのヒアリングでは、「港区内での高級賃貸マンションは、1995年の4,000戸程度から現在 では1万1,000戸程度に増加している」という。2000年頃からデベロッパー各社が都心部での賃貸住宅、特に、 高級賃貸マンションの供給に注力したことが背景にある。 供給増によって高級賃貸マンションの概念も拡大し、従来の、月額賃料は30万円以上、外国人赴任者等を ターゲットにし、ある程度の広さを持つ高グレードの賃貸マンションという考え方から、最近では、都心部 の15坪・月額家賃20万円台の物件も、高級賃貸マンションに含まれるようになっている。 ◆供給増加によって、入居者層も変化。日本人入居者も増加。 近年の供給増加によって、高級賃貸マンション市場にも変化が見られる。 ①物件の優勝劣敗がより明確化。 都心部の高級賃貸マンションは、築年の古い、規模の小さいものも多く、近年供給された大規模物件 と比べると、競争力は見劣りする。その結果、都心部では新築物件へ住み替えが行なわれ、空いた物件 は値下がりする。値下がりした都心部の賃貸物件に、目黒・世田谷・文京といった周辺地域の居住者が 住み替える。こうした周辺地域から都心部へ、都心部では古い物件から新しい物件に住み替えるという 人の移動がみられるようである。 ②新しい需要層として、日本人入居者が増加。 デベロッパー各社へのヒアリングでは、「供給増によって需要層も変化している。日本人の入居者が増 えている」という見方が多く、月額家賃が100万円以上の最高級クラスの物件でも、日本人入居者が増え ているとの声が多かった。10年前には、日本人で借りたい人もいなければ、貸し手もいなかったが、現 在では日本人入居者も普通になったといわれている。 ◆良質な賃貸住宅ストックが賃貸需要の拡大を生む。 賃貸住宅は、個人や個人に近い法人がオーナーである物件が圧倒的に多く、高級賃貸マンションといえど も事情は変わらない。そのため、従来の高級賃貸マンションは、物件規模が小さく、日常の管理も見劣りし、 大規模修繕や必要な更新投資も行なわれにくく、経年とともに設備・仕様等の競争力が低下し、賃料も下が るという傾向が見られた。しかし、大規模物件を中心に最近供給された物件では、長期運営を前提に適正な プロパティマネジメントと更新投資が行われている。こうしたマネジメントが浸透すれば、良質な賃貸住宅 ストックが増え、それが賃貸需要を増やすことも期待できる。 資産デフレ、終身雇用の崩壊、若年リッチ層の出現といった社会環境の変化も、賃貸住宅事業には追い風 である。だが一方で、都心部の月額家賃20万円台のコンパクト住戸を中心にした物件では供給過多という指 摘もある。マクロの視点で見れば決して悪くない環境下、需要を取り込む物件づくりとマネジメントに、事 業者の手腕が問われる。
© Copyright 2024 Paperzz