「生老病死」を凝視する — 脳と骨そしてムラージュへ

2013/10/30
九州大学文学部ゲストトーク
◎「生老病死」を凝視する
— 脳と骨そしてムラージュへ
私は、
「生命」や「身体」というテーマにこだわりを持ち、写真を撮り
続けてきました。
最初の写真集『象の耳』では、動物の細部に潜む 38 億年にわたる「生
命記憶」に迫り、次いで、写真週刊誌 FRIDAY の連載『病院の時代—バ
ラッド・オブ・ホスピタル』では、日本全国の病院を訪ね、「人」と「病」
と「医療空間」が織りなす、“生命の物語”をドキュメントしてきました。
そして、リハビリテーションの現場で日夜格闘している人々の姿をとらえ
た写真集『ロマンティック・リハビリテーション』では、この時代の「希
望と再生の姿」を模索しました。それと並行して、「脳」や「骨」という
生命の究極の形にも着目し、独自の身体イメージを創造する試みを続けて
います。今春からは、東大准教授石原あえか先生の研究分担者として、全
国の大学医学部皮膚科所蔵の「ムラージュ」(ロウ製皮膚病型模型)の撮影
も始めました。
今回お話しする予定の、「生老病死」とは、「生まれること」「老いること」
「病むこと」「死ぬこと」、つまり仏教でいうところの「四苦」であり、人と
生まれたからには逃れられない苦しみのことを言います。それでは、「生老
病死を凝視する」とは、どういうことなのか、私が 30 年以上にわたって撮
影してきた写真を見ていただきながら、「生命」「身体」のことに思いを馳せ
てもらえればと思っています。
写真家
東京造形大学教授
大西成明