平成26年度 第1学期終業式 講話 皆さん、おはようございます。 1学期が

平成26年度 第1学期終業式 講話
皆さん、おはようございます。
1学期が終り、明日から夏休みに入ります。通常の授業はなくなり、補講や部活動があるといっても、自分の
自由になる時間は、ふだんより多くなるはずです。1日24時間という枠は、人によって変わるわけではありませ
ん。ところで、皆さん一人一人が持つ24時間を誰が使っているのでしょうか? 自分に決まっていると思います
か? その自覚がありますか?
ふだん、皆さんは、朝起きて、夜寝るまでの時間のうち、自分が自覚して時間を使っていると思えるのはどの
くらいありますか? 時間を自覚して使うというのは、何か目的がないとできないことです。例えば一人で、ぼー
っとテレビを見ているのも、一見、自分の時間を使っているようですが、目的がなく自覚がなければ、逆にテレビ
に支配されてしまっているのと同じになって、自分の時間を別のものが使っていることになります。そうなると、
自分の時間を自分が使っていると言えなくなります。
夏休みは、自分の自由になる時間がふだんより増えるといいましたが、それは、自分で自分の目的を自覚して
配分する時間が増えるという意味です。気づいたら、他の誰か、何かに使われてしまうような時間の過ごし方はも
ったいない。自分を成長させるような時間の使い方を是非考えてほしいと思います。
さて、この夏休みに皆さんに自覚した時間を過ごしてもらうために、考えてほしい言葉を2つお話しします。
これは私から皆さんへの宿題でもあります。
1つめは、ブラジル人作家パウロ・コエーリョという人の小説「アルケミスト 夢を旅した少年」の中にある
言葉です。この小説は20年前に書かれたもので、当時、世界中で売れた本です。この本は図書館にもあります。
主人公は、羊飼いのサンチャゴという少年で、彼はエジプトのピラミッドに自分を待つ宝物が隠されているという
夢を見ます。夢を信じたサンチャゴは羊を売り払って、ピラミッドを目指します。物語全体を通じて、本質的に正
しいことを目指していれば、きっと応援がある、運命も見方してくれるという思いに突き動かされながら、旅を続
ける少年の純粋な思いを感じ取れる本です。
この小説には、考えさせられる場面がいくつも出てきますが、その1つに、次のような場面が出てきます。
サンチャゴは、旅に出る前に、ある老人と出会い、その老人から次のような話を聞きます。ある店の主人が、
世界で最も賢い男から「幸福の秘密」を学んでくるようにと、息子を旅に出しました。その若者は砂漠を歩き回り、
ついに世界で最も賢い男の住む美しい城に行き着きました。その若者は2時間待たされて、ようやくその賢者に会
うことができました。幸福の秘密を聞きたいという若者に、賢者は、今、説明する時間はないので、宮殿をあちこ
ち見て回り、2時間したら戻ってくるように言いました。ただし、そのとき、賢者は若者に油が2滴入ったスプー
ンを渡し、歩き回る間、油をこぼさないようにと命じました。
若者は、目をスプーンにくぎ付けにしながら、宮殿を歩き回り、2時間後に戻ってきました。戻ってきた若者
に、賢者は、宮殿内の様々な美しいものを見たかと尋ねましたが、若者は、スプーンの油が気になって、何も見な
かったと告白しました。賢者は、もう一度戻って、宮殿内を見てくるように命じました。少年は再びスプーンを持
って、宮殿内を歩き回り、美しい芸術品や庭園などを見て回り、賢者のところに戻り、見たものを報告しました。
賢者は、若者の報告を聞きながら、スプーンの油はどうしたかと尋ねました。若者は、持っていたスプーンを見る
と、油はどこかに消えてなくなっていました。そのとき、賢者は、若者にこう言いました。
「では、たった一つだ
け教えてあげよう。
幸福の秘密とは、
世界の素晴らしさを味わい、
しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ。
」
皆さんへの宿題の1つめは、最後の賢者が語った「幸福の秘密とは、世界の素晴らしさを味わい、しかもスプー
ンの油のことを忘れないこと」という言葉をどう考えるかということです。いくつもの解釈ができるはずです。
さて、もう一つ。ギリシャの詩人でアルキロコスという人がいます。この人がメモのようなものを残しており、
そこに次のような言葉が書かれています。
「キツネはたくさんのことを知っているが、ハリネズミはでかいことを
1つだけ知っている。
」これを聞いて皆さんはどう考えますか。これは、どちらが優れているという比較ではあり
ません。例えば、人のタイプをキツネ型とハリネズミ型に分かれるとして論じた本がありますが、どちらのタイプ
にも、歴史に名を残す人物がいると述べています。例えば、キツネ型に属する人は。シェークスピアやアリストテ
レスやゲーテなどだそうで、ハリネズミ型に属する人は、プラトンやドストエフスキーやニーチェだそうです。優
劣がないとするならば、この言葉をどう考えればいいでしょうか。
1
今、2つの言葉についてお話をしました。もう1度2つの言葉を言うと、
「幸福の秘密とは、世界の素晴らしさ
を味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないこと」
、そして「キツネはたくさんのことを知っているが、ハリ
ネズミはでかいことを1つだけ知っている」
。私は、この2つの言葉には共通するものがあると思っています。み
なさんはどう考えますか?
あらかじめ言っておきますが、正解はありません。皆さん自身が、自分が考えた解釈を心から納得できるか、
あるいは誰かに納得してもらえるか、ということだけが、正解といえば正解です。
長い夏休みです。考える時間はたくさんあるので、じっくり考えてみてください。自分なりの答えが思いついた
ら、私に教えてくれるとうれしいです。
2学期始業式で成長した皆さんの姿に会えることを期待しています。以上です。
2