紫草 28-1 卒業式式辞 3月7日に第42回卒業式が厳かに挙行されました。当日の式辞を掲載いたします。 四十二期生二七二名の皆さん、卒業おめでとうございます。 また、保谷高等学校第四十二回卒業式を挙行するに当たり、多数のご来賓の皆さま、保 護者の皆さまにご臨席をたまわりましたこと、高い席からでございますが、教職員を代表 し、心より感謝申し上げます。 さて、卒業生の皆さん、三年前の今頃を思い出してみてください。保谷高校に入学する ことに期待と不安を抱いていたことと思います。そのとき抱いていた未来に対する夢や希 望は何だったでしょうか。そのときの夢や希望にどれだけ近づけたでしょうか。夢は簡単 には叶えることが出来ないからこそ、「夢」であるといわれています。だからこそ、夢は人 を動かす原動力にもなっています。「初心忘するべからず」という有名な言葉があります。 また、 「初志貫徹」という言葉もあります。夢を叶えるためには、気持ちを常に新鮮に保つ ことが大切です。高校生活の三年間は成長著しい時期であり、大きな一歩を踏み出す力を ためられた時期です。今、保谷高校を卒業するにあたり、初心に帰り、もう一度「夢」を あたため直して、大きな目標として「夢」を掲げ、広い世界に進んでください。 ふと振り返ると、皆さんが保谷高校に入学した時はちょうど校舎改修のときでした。施 設の制約から皆さんの教育活動に少なからず大変な思いをさせたことと思います。しかし、 制約は人を大きく育てます。それは、皆さんの三年生になってからの姿で分かりました。 本校のグランドで行う体育祭は暫くぶりであり、ノウハウのない中での一からのスタート でした。その中で、三年生の委員会を中心に見事にやりとげることが出来ました。文化祭 でも、本校伝統の演劇を質の高いものに高め、かつ、委員会を中心とした新たな取組や閉 会式での工夫が見られました。文化祭後はいよいよ各自の進路に向けて本腰を入れた活動 が熱心に見られました。文化祭のときには既に進路が決定した人たちも、将来に向けて、 これから受験に向かうひとと同様に学習に身を入れている姿がすがすがしく見られました。 皆さんは三年生になり最上級生であるという自覚とともに、行事ごとにクラス・学年がま とまり、クラスエール交換会の企画など、卒業生のみなさんと担任を中心とする先生との 「チーム保谷」が出来上がっていくようすを目の当たりにし、皆さんの成長を感じました。 皆さんはこれから世界各国の人々と交流する社会、グローバル社会に旅立ちます。グロ ーバル規模で社会が急激に変化していきます。遠い国・地域で起こったことが、すぐに我々 の生活に影響を与えます。そのような社会で、みなさんが活躍できるようにと願って、保 谷高校は担任の先生を中心に皆さんを応援してきました。皆さんはそのように社会で活躍 できる基礎となる力は得られたものと信じています。文化祭の閉会式で見られたみなさん の団結力や工夫はそのひとつです。相手を自らと同様に大切にする皆さんの心は、国際社 会のなかで、自国の文化・伝統の尊重と相手国の文化・伝統の尊重を通した相互理解につ ながります。ちょっとした工夫や新たなことへのチャレンジは課題を自ら発見し、協働し て解決していく力につながっていきます。先日、ある大学生が卒業制作で時計に時刻を書 かせるというからくり時計を制作して注目を集めているという記事がありました。この大 学生によると、 「人間がやったら単純なことでも、機械がやったら大変なこと」を機械にや らせてみようという発想から制作が始まったとのことでした。人間がやったら大変なこと を機械にやらせるというのが一般的ではないかと思いますが、発想の逆転が素晴らしい驚 きを私たちに提供してくれています。そして、この発想を技術的にどう可能にするか、多 くの課題が出てきてひとつひとつ解決していくわけです。技術力の高さも注目ですが、発 想がすばらしい。皆さんもこのような発想、あるいは技術の基礎となる力は持ち合わせて います。このような、人に感動を与える発想をひらめくためにも、保谷高校三年間で得た 力を元に、もう一度、三年前の夢と希望をあたため直してください。きっと素敵なことに つながるはずです。 サッカーのJリーグチェアマンが、Jリーグクラブチーム契約担当者五十三人のアンケ ート結果から、「長くプレーするには人間力こそ問われる」と新人選手へ訓話をしました。 ここに出てくる「人間力」と本校の教育目標にある「人間味」とは少し違いがあるのです が、先ほどのからくり時計同様、知識・技能や技術以上に「人間らしさ」 「人間だからでき ること」が大切であるという点では重なる部分があります。教科書にも出てくる中国の古 典「史記」には「桃李もの言わざれども下おのずからみちをなす」という有名な一節があ ります。これは「ももやすももは何も言わないが、花や実を慕って自然と人が集まり、そ の下には自然と道が出来る」 「徳のある人の下には自然と人が集まる」というたとえとして 使われます。皆さんには、保谷高校卒業後も、本校での経験を活かし、一層「人間味」を 豊かにし、グローバルな社会で活躍することを願っています。 結びに当たり、保護者の皆さまには、この三年間、本校の教育活動にご協力いただきま して誠にありがとうございました。本日、成長著しいお子様を保護者の皆さまと一緒に送 り出せますこと、皆さまへの感謝とともに誇りに思っております。地域の皆さまにおかれ ましても、厳しくも温かく本校生徒を見守っていただきましてありがとうございました。 卒業生が社会で活躍することで、地域の皆さまに貢献できるものと思っております。 卒業生二七二名の皆さん、洋々たる前途を健やかに、そして幸多からんことを祈念し、 式辞といたします。 修了式講話 3月25日に平成27年度修了式を実施しました。 当日の講話です。 みなさんは、下町ロケットという小説は知っていますか。阿部寛さん主演でドラマにも なりました。下町の町工場が宇宙開発事業で大企業と渡り合うという話でした。あの小説 に出てくる「佃製作所」にはモデルとなる会社はないと言われていますが、非常に似てい る会社が北海道にあります。HPには資本金1000万で従業員は17名とありました。 この小さな会社がロケット開発に挑んでいます。その会社のHPを見てみると、『「どう せ無理」を「だったらこうしてみたら?」に。』といフレーズが大きく目に入ってきます。 もう少し読むと、「どうせ無理」という言葉は、人の可能性を奪います。興味を持たな くなり、やる前に諦め、考えなくなってしまいます。 「だったらこうしてみたら?」という言葉は、人の可能性を広げます。やったことが無い ことに挑戦し、あきらめず、より良くを求めるようになりますとあります。 「より良く」を求めるためには「やったことがないことに挑戦し、あきらめない」する と「人の可能性」が広がる。1学期終業式で話した「社会が求める人物像」にもつながる ものがあると思います。 みなさんは「どうせ無理」と言ったことがありませんか。その時、友人や先輩、あるい は親や先生から「だったらこうしてみたら」と言われたことはありませんか。 是非、みなさんが「だったらこうしてみたら?」と言えるようになれればうれしいと思 います。 短い春休みですが、新たな学年に向けてエネルギーをチャージしてください。 東京都立保谷高等学校 校長 樋口博文
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