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【沖縄大学】
【Okinawa University】
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小学校理科における昆虫を扱った出張授業の試み
盛口, 満
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of
Humanities and Social Sciences(14): 73-79
2012-03-10
http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/okinawa/9645
沖縄大学人文学部
沖縄大学人文学部紀要第14号2012
<実践報告>
小学校理科における昆虫を扱った出張授業の試み
盛口満
要約
小学校の同一学年の1年次と3年次の2回にわたって,昆虫をテーマとした出張
授業を行った。その授業実践を報告するとともに,出張授業を行う際には,どのよう
な観点が有効であるかを考察した。また,授業にあたっては,学生とT・T形式の授
業を行うことも試みた。
キーワード:小学校理科,昆虫,出張授業
はじめに
著者はこれまで,しばしば小学校において,理科または生活科の出張授業を行う機会があっ
た。今回,那覇市立高良小学校3年生5クラスで,昆虫についての授業をする機会を得た(2011
年11月17日)。この学年は,1年次においても,全クラス,著者が昆虫の授業を行ったことの
ある学年である。このため,授業中のやりとりから,1年次に行った授業内容のうち,どのよ
うな内容が,2年後の3年次になった児童たちに記‘億されているかが明らかになった。また,
授業を行うにあたって,本学のこども文化学科の4年次の学生にも参加してもらい,5クラス
の授業のうち,4クラスにおいて,1名ずつの学生とT・T形式で授業を行う試みも行った。な
お,授業案の作成は著者が行い,その後,学生たちはこの授業案に沿っての模擬授業をへて,
当日に臨んだ。当日は特に分担をはっきりきめたわけではなかったが,授業の主な進行を著者
が担当し,個々の発問や,教材の回覧などは学生が行った。
以上のような授業実践を記録するとともに,この実践から,今後,小学校における出張授業
において,どのようなことを模索すべきかを考察したい。
I.授業内容
以下に,実際に行った授業中のやりとりを記録する。なお,やりとりはクラスによって,異
なっている部分があったが,おおまかな内容は以下のようにとりまとめることができる。また,
やりとりのうち,教師側の発言のうち,(T1)は著者,(T2)は学生を意味する。児童の発言
はsとして表記することにする。
Tl:11年生のときの授業でどんなことをしたか,覚えているかな?」
S:「ゴキブリのこと」「触角がないクモとかは,昆虫じゃないってこと」「イナゴを食べた」「ゴ
キブリに似ているテントウムシがいる」
Tl:「そうだね。1年生のときは,虫の仲間わけや,テントウムシのように目立つ虫には理由
があるっていうことを授業でやったね。今日のテーマは,沖縄の虫。沖縄の虫ってどんなも
のがいるかな?」
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沖縄大学人文学部紀要第14号2012
S:「クワガタ」「トンボ」「ヤンバルテナガコガネ」「セミ」
T2:「今の発言の中に,セミってあったけれど,みんなはセミって,どんな種類を知っている?」
S:「アブラゼミ」「クマゼミ」「ツクツクボウシ」「ヒグラシ」「ミンミンゼミ」
(クラスによっては,「クロイワゼミ」や「クサゼミ」という発言もあった)
T2:「いろいろなセミの名前があがったけれど,この中に,沖縄にいるセミと,沖縄にはいな
いセミがいるよ」
S:「ヒグラシは沖縄にはいないよ」
Tl:「そうだね。あと,ツクツクボウシも沖縄にはいないセミだよ。ミンミンゼミはいるかな?
ミンミンゼミの鳴き声を聞いたことある?」
S:「あるよ」
(ミンミンゼミは沖縄にはいないが,テレビなどのメディアの発達により,セミの声の代表
がミーンミーンであると思っている児童が多い。そのため,ミンミンゼミの声を実際に聞い
たことがあると誤認している児童もいる)
Tl:「ミンミンゼミも,沖縄にはいないセミだよ。沖縄にいるのは,クマゼミや,リュウキュ
ウアブラゼミ。ほかにもまだ,ここに名前があがらなかったセミもいるよ」
(T2:イワサキクサゼミの標本を,机間を持って見せて回る。「小さい」「ハエのよう」と
言った声があがる。イワサキクサゼミは5月ごろ,沖縄島南部で多く見られるセミである
が,那覇の小学校の児童たちは,見たことがないと答えるものも少なくない)
T2:「日本のセミはみんなが名前を挙げてくれたものも含めて,全部で32種類いるよ」
S:「それだけ?」
Tl:「そうだね。多いか少ないかは,ほかのものと比べてみないとわからないね。日本のセミ
の種類数を,ほかのところと比べてみよう」
S:「じやあ,アメリカ!」
(アメリカは広さに違いがありすぎるから,日本と同じような島国であるイギリスと比較を
してみようと話をする)
T2:「問題をだすよ。日本には32種類のセミがいたけれど,イギリスのセミは何種類だろう?」
S:UO種類?」「10種?」
T2:「じつは,2種類しかいないよ」
S:「ええっ!」
Tl:「なぜ,イギリスにはセミの種類が少ないと思う?」
S:「家ばかりで,木が少ないから」
Tl:「那覇も街中だけど,セミはいるよ。セミって,いつ出てくる虫だろう?」
S:「夏!」「わかった。イギリスは寒いから」
Tl:「そうなんだ。イギリスは,寒いから,セミが2種類しかいないんだよ。アリとキリギリ
スの話を知っているよね。」
S:「うん」
Tl:「この話も,もともとはアリとセミっていう話なんだそうだよ。ところが,ヨーロッパに
は寒い国が多くて,セミがいないところもあるから,セミじゃなくて,キリギリスに代わっ
てしまったそうだよ」
S:「イギリスには,どんな名前のセミがいるの?」
Tl:「ごめん,ごめん。イギリスのセミの名前はわからないなあ。でも,日本にはいない種類
のセミだよ。さて,こうしてみると,セミは暖かいところのほうが,種類が多いことがわか
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盛口:小学校理科における昆虫を扱った出張授業の試み
るね。イギリスと比べると,日本はセミの種類が多い国といえるね。でも,日本より,もっ
と南の国にいったら,どうだろう?」
S:「もっと種類が多い」
Tl:「そうだね。そして,種類が多いと,その中には,いろんなセミがいたりするよ」
S:「毒のセミっていうのも,いるの?」
T1:「いい質問だね。1年生の授業のとき,毒を持っている虫と,そうじやない虫について考
えてみたね。毒を持っている虫は,食べられないよ……ということがわかるように,目立つ
色をしていたね。熱帯には毒のセミもいて,毒を持つセミは,やっぱり,赤と黒といった目
立つ色をしているよ。ただ,今日は,毒のセミではな蝿くて’一番大きなセミの標本をもって
きたよ」
(T2:マレーシア産,テイオウゼミの標本を,机間を持って見せて回る)
S:「うわ−つ」「名前は?」「大きさ,どのくらい?」「計ってみよう」
(児童たちは,定規を持ち出して,テイオウゼミの大きさを測っていた)
T1:「ほかの虫についても,見ていこう。ナナフシは知っているかな?」
S:「この前,○○君が,3匹見つけたよ」
(T2:生きたナナフシを,机間を持って見せて回る)
S:「うわ−つ」「頭,小さいね」「なんだか,かわいい」
Tl:「ナナフシにも種類があるんだよ。だから,ひとつひとつ,名前がついている。今,見せ
た種類はアマミナナフシのオスだよ」
S:「アマミ……?甘いの?」
Tl:「違う,違う。奄美大島で見つかったという意味だよ。日本にはナナフシは約20種いる
よ。中には,趣の生えているものもいる」
T2:「さつきは,セミの種類数について,日本とイギリスで比べてみたね。今度は,ナナフシ。
イギリスには何種類,ナナフシがいると思う?」
S:U0種?」「??」
T2:「じつは0種類」
S:「ええっ?」
Tl:「なぜだろう?」
S:「寒いから?」
T1:「そうだよ。セミに限らず,昆虫は暖かいところのほうが,種類が多いんだよ」
S:「イギリスの人はナナフシを知らないのかな」
T1:「テレビとか本とかでは,知っているだろうね」
S:「北海道にはナナフシはいないの?」
T1:「北海道の人と会ったとき,ナナフシを見たことがないというので,びっくりしたことが
あるよ。では,日本よりも,もっと暖かいところに行ったら,ナナフシの種類はどうなるだ
ろう?」
S:「種類が多くなる」
T1:「そうだね。それで,種類が多くなると,いろいろな姿のナナフシもその中にみられるよ。
今日は,大きなナナフシを持ってきたよ」
(T2:東南アジア産の,巨大なトビナナフシの仲間の標本を,机間を持って見せて回る)
S:「うわ−つ」「すげ−つ」「これって,枝に隠れられるの?」
Tl:Tl年生のときにも,ゴキブリの話をしたけれど,またゴキブリの話を考えてみよう。今
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沖縄大学人文学部紀要第14号2012
度は,日本の中でゴキブリの種類数を比較してみよう。北海道,東京,沖縄でゴキブリの種
類数を比較してみるよ。まず,北海道には何種類ゴキブリがいるかな」
(最初のうちは,ゴキブリの種類数といっても見当がつかないので,かなり大きな数を口にす
る児童もいる)
T2:「北海道には,もともと,ゴキブリは0種。東京は5種。じやあ,ここからが問題。沖縄に
は,何種類ぐらいいると‘思う?3択にするね。1番は20種類,2番は40種類,3番は60
種類。そのうちのどれだと思うか,手をあげてみてくれる?」
(60種ぐらいと考える児童が多い)
T2:「答えは2番の,40種類ぐらい」
(T1:ここで,ゴキブリには屋内で見られるものと,屋外で見られるものがいることについ
て,一言説明をする)
Tl:「日本の中でも沖縄は,ゴキブリの種類数が断然多いことがわかるね」
S:「鹿児島は?」
(鹿児島県本士のゴキブリの種類数は,このとき,正確な数をひかえていなかった。本土の中
では種類数は多いけれど,それでも沖縄県のゴキブリの種類数と比べたら,ずいぶんと少な
いと思うよと答えるにとどまった。あらためてその種類数を調べると,鹿児島県本土のゴキ
ブリの種類数は,朝比奈1991によると,20種となっている)
Tl:「沖縄は南の島。南にあるってことは,ゴキブリに限らず,虫の種類が多いってことだよ。
ゴキブリは沖縄だけでも40種以上もいるけれど,この数を,ほかのところと,比較してみ
よう。ハワイも沖縄と同じような南の島だけれど,ゴキブリの種類数はどのくらいだろう?」
(ハワイのイメージはと問うと,児童らは「あったかい」「海がキレイ」「山や森がある」と
答えた)
T2:「ハワイには,ゴキブリが何種類ぐらいいるかな?沖縄より多い?同じぐらい?少な
い?このうちの,どれだと思う?手をあげてみてね」
(クラスによって,予想は多少,異なったが,手をあげてもらった後で,それぞれ,理由につ
いて,発表をしてもらう)
S:「多いと思う。沖縄よりもあったかいから」
S:「同じだと思う。沖縄みたいにあったかい島だから」
S:「少ないと思う。暑すぎるから」
S:「少ないと思う。ホテルとかたくさんあって,キレイなところだから,食べ物がなさそう」
(ハワイの気候について,簡単に話をする。平均気温は沖縄より上だけれど,決して暑すぎる
ほどではないことに触れる)
T2:「じつは,ハワイには,もともとゴキブリは全然いません。0です」
S:「え−つ」
T1:ハワイにはもともとゴキブリは全く棲みついていなかったが,現在は,ゴキブリが
19種,棲みついていることを紹介する。その上で,もともとゴキブリが棲みつけなかった
理由について,ハワイが火山島起源であることと,ハワイが太平洋の真ん中にあることから
説明をする)
S:「ハワイに,カブトムシはいるの?」
T1:「カブトムシも0種だよ」
S:「え−つ」
S:「カタツムリは?」
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盛口:小学校理科における昆虫を扱った出張授業の試み
Tl:「カタツムリは1000種以上いるよ。カタツムリは,空も飛べないし,海も泳げないけれど,
流木の中にまぎれてハワイまでやってきて,ハワイでいろんな種類にわかれたと考えられて
いるんだよ」
(南の島でも,ハワイと沖縄では見られる虫に大きな違いがあることを確認する)
Tl:「沖縄は,ほかの陸地に近い島だから,ハワイと違って,セミもゴキブリも種類が多く見
られるんだよ。でも,沖縄もやっぱり,島。だから,棲みつけない虫もいるよ。みんなは,
フンコロガシを知っているかな」
S:「うん」
Tl:「でも,フンコロガシを見たことはないよね。フンコロガシは,沖縄にはいない虫だよ」
(T2:アフリカ産のフンコロガシの標本を,机間を見せて回る。児童たちからは,「カブト
ムシのメスみたい」「頭にギザギザがあるよ」「ニオイをかがせて」といった声)
Tl:「なぜ,フンコロガシはフンを転がすんだろうね?」
S:「自分の巣に運ぶから」
T1:「なぜ,巣まで運ぶの?」
S:「食べる」
(Tl:フンコロガシは,フンを自分自身と,幼虫のエサにすることを,フンコロガシの写真
集で生態写真を見せながら,確認。T2:実際のフン玉を,机問を見せて回る。児童たちか
らは,「うわ−つ」「触りたい」「ざらざらしている」「中に卵はあるの?」といった声)
T1:「フンコロガシは,なぜ,わざわざ,フンを玉にして転がすのかな?その場でフンを食
べてもいいんじゃないかな?」
S:「敵に食べられちゃう」「動物に踏まれたりするかも」
T1:「そうだね。そんな理由がありそうだね。ほかにも理由があるよ。虫たちにとって,動物
のフンは,ごちそうなんだよ。だから,うっかりしていたら,他の虫に,全部食べられちゃ
うかもしれない。だから,さっさと玉にして,他の所にもっていってから,ゆっくり食べる
というのが,フンコロガシのやり方なんだ」
(T2:フンに集まるさまざまな虫の標本が入った標本箱を,机間も持って見せて回る)
Tl:「沖縄は島で,山や森に棲む動物が少ないから,フンコロガシがいないんだ。一番,近く
では,台湾にはいるよ」
S:「昔,沖縄と台湾はつながっていたんでしょう?」
Tl:「いい発言だね。だから,そのころは,ひょっとして,沖縄にも,今よりももっと動物が
いて,フンコロガシもいたけれど,その後,動物が減ってしまったからフンコロガシもいな
くなってしまったのかもしれないんだ。このフンは,誰のものかわかるかな?」
S:「ゾウ!」
T2:ゾウのフンを,机間を見せて回る)
Tl:「そう,ゾウのフン。沖縄からも,ゾウの化石が見つかっているよ。そのころは,ゾウの
フンを食べる虫も棲んでいたのかもしれないよ」
(T1:ゾウのフンを食べる,東南アジア産の大きなフン虫を,机間を見せて回る)
Tl:「今日のまとめをするね。沖縄は南の島だから,日本の中でも,いろいろな虫がいるとこ
ろだったよ。しかも,沖縄は中国大陸に近いから,ハワイのような島と違って,虫がやって
きやすかったんだ。ただ,沖縄も島だから,棲みつけなかった虫もいる。それと,やってき
た虫のうち,島の外にでることができなくなった虫で,沖縄にしかいない虫になっちゃった
ものもいるんだよ。それが,たとえば,ヤンバルテナガコガネや,沖縄のカブトムシ」
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沖縄大学人文学部紀要第14号2012
S:「沖縄のカブトムシは,角が小さいんでしよ」
(Tl:沖縄のカブトムシと本土のカブトムシの比較標本を,机間を見せて回る。児童から
は,「ホントだ。角が小さい」「あ−,沖縄のカブト,かわいい」といった声)
T1:「沖縄には,沖縄ならではの虫がいるから,たとえば,本土産のカブトを買って飼ってい
ても,外には逃がさないでね。それでは,今日の授業は,これで,終わりです」
S:「今日はイナゴを食べないの?また,食べさせてよ」
S:「今度は,いつ,授業に来るの?」
Ⅱ、授業を振り返っての考察
「小学校の3年の理科には,昆虫を扱う単元がありますが,小学校の教員には女性が多く,
どちらかというと,昆虫が得意ではありません。そこで,小学校に来て,授業をしていただけ
ませんか?」
これが,著者が初めて小学校で授業を行う際に,現場の教員からかけられた声である。
言うまでもなく,小学校の現場において,日常の様々な教育活動は,担任をはじめとする現
場の教員が行っており,児童たちとの密接な関係‘性の中で日々の授業も行われている。そのよ
うな場へ,1時間だけの出張授業という形で,出向くとき,いったいどんなことが有効なこと
なのだろうか。その点について,先の著者が現場の教員からかけられた声を振り返ることとし
たい。
日常の教育活動に,出張授業という形で,非日常的な教育活動が加わる意義は,その非日常
‘性をどこまで意識できるかによるのではないだろうか。つまり,たとえば昆虫をテーマとする
場合なら,出張授業に「やってくる先生」は,「虫が好きな,ちょっと変わった先生」と位置付
けられるほうが,児童にとって,出張授業の意味がはっきりするであろう。また,その授業に
おいては,普段とは異なった昆虫についてのアプローチがあることが望まれると言うことであ
るだろう。
そのため,今回の出張授業においても,そのような観点から,実物標本を多用することを心
掛けた。また,フンコロガシやゴキブリといった,児童たちが誰でも名前を知っている昆虫で
ありつつ,一方で嫌われていたり,見たことがないことなどから,その実態をよく知らない(つ
まりは,誤解をしていたりする)ものを教材として取り扱うこととした。
小学校への出張授業はしばしば行う機会があるものの,同一学年に,複数回行う機会は多く
はない。また,同一テーマ(昆虫)で,複数回の授業を行うことは,今回が初めてであった。
そのため,出張授業の内容を,児童がどのように意味づけするかは,授業後の感想文でしかつ
かむことができなかった。今回,1年次から2年間が経過した時点で,再度,昆虫の授業を同
一学年の児童に対して行ったわけであるが,このことから,思いのほか,1年次の授業内容の
ことを覚えていることがわかり,驚かされた。授業中のやりとりであったことから,「1年次の
授業でやった内容で覚えていることは何か」ということに対しては,断片的な内容しか聞き取
れていない。しかし,昆虫の生態系の中の位置づけに基づいた「テントウムシは毒である」と
言う視点,身近な昆虫として「ゴキブリ」を教材に選んだこと,五感に訴えるものとして「イ
ナゴの佃煮」を食べた経験といったものが,児童たちの記‘億に強く印象づけられていたことが
分かった。そのようなことから,先に書いたような出張授業の位置づけや,それに基づく教材
選びは,児童たちにとって,一定の教育効果を上げたのではないかと考えられた。
今回,授業においては,それぞれ1クラス,1名ずつ,学生4名とT-T形式で授業を行っ
た。著者と学生との授業分担に関しては,今後もなお検討する点が多いと感じている。が,今
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盛口:小学校理科における昆虫を扱った出張授業の試み
回参加した学生は,たまたま,いずれも女子学生であったのだが,昆虫標本や生きたナナフシ
などを,机間を持って回ることに,まったく臆することがなかった。このような経験は,将来,
学生たちが実際の小学校の現場に立ったとき,「女‘性の教員は,どちらかというと,昆虫が得意
ではない」という現状を振り返ると,現状と異なった実践を,現場において生み出す可能』性も
育むことになるのではないかとも考えている。
参考文献
朝比奈正二郎(1991)『日本産ゴキブリ類』中山書店
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