第31号 2013年8・9月号

函館
ハリストス正教会
2013年8・9月 第31号
発行者:函館ハリストス正教会 長司祭ニコライ・ドミートリエフ
〒040-0054 函館市元町3-13
TEL(0138)23-7387/FAX (0138)23-7939
URL http://orthodox-hakodate.jp
編集者:会報編集委員会
郵便振替 02660-5-1721
聖師父の教え(第18回)
―「信経」について(7)―
はて
【生神女マリヤ】
「天は畏れ、地の極は驚けり。神は身にて
人々に現れ」(イルモス第8調第9歌頌)。
「天は畏れ」というのは、神使たちですらこの
出来事に“びっくり”したという意味です。ま
生神女マリヤについて、信経には次のよう
に記されています。
「我ら人々の為、また我らの救いのために
くだ
せ い し ん
はら
どうていじょ
た、「爾(生神女マリヤ)の胎 は天より広きも
天より降り、聖神°及び童貞女 マリヤより身
のとなりたればなり」(前載の
イルモス)という表現もされて
と
を籍り人となり」。
とても短い記述ですが、こ
こから判ることの一つは、主
イイスス・ハリストスは、マリヤ
という女の人から身を籍った
の
がた
います。これは「地は載せ難
ほら
きものに洞 を献ず」(降誕祭
コンダク)という表現とも共通
するところがあります。つま
り、見ゆると見えざる万物を
せ きし ん
(「籍身」)ということです。
真の神が真の人間として
▲ 復活聖堂にも夏の訪れ
造られた創造者である神
肉体を持ったのですが、そ
を、受造物がその内に入れ
のためには人間の女性の胎を通る必要が
る(または戴く)ことになったという、前代未
ありました。
聞の奇蹟を言い表しています。
正教会の祈祷文は、このことについて次
のように言い表しています。
生 神 女 マ リ ヤ は「三 位 一 体 の 神(聖 三
-1-
啓蒙記事
の義人たちを地獄から引き上げるために地
獄に降り、同時に三位一体の神として、神・
者)」全体を胎に宿したのではありません。
生神女マリヤの胎に宿ったのは、三位一体
の神の第二位である神・子イイスス・ハリスト
スでありました。
これについて正教会の祈祷文は次のよう
に記しています。
さき
あ
父及び神・聖神°と共に宝座に居り、「在 ら
ところ な
ざる所 無 き」神として、一切を満たしていた
という真理です。
つまり、同じように、神・子イイスス・ハリスト
スは、体において生神女マリヤの胎に在り
ながら、三位一体の神として、神・父と共に
居たということをこの降誕祭の
ステヒラは私たちに教えていま
す。
いま
「生神女よ、爾は世の無き前 より在 す悟り
難き主、無形の父と同永在の者、聖三者の
一位の混合せざる神性の受け
し肉体を体内に宿せり」(降誕
祭早課セダレン)。
この三位一体の神(聖三者)
の奥義の深さは、次の祈祷文
によく表れています。
「童貞女は生みて胎は損な
旧約聖書時代の義人たちは
皆、神・父が約束された救世主
の出現を心待ちにしていまし
ことば
われず、言 は身を取りて父を
た。その救世主とは神・子イイ
スス・ハリストスでし た。そし て
離れず」(降誕祭晩堂大課挿
救 世 主 の 出 現 の た め に は、
句のステヒラ)。
神・子の籍身のために相応し
上記の「言」とは神・子イイス
い「神聖なる潔き童貞女」、生
ス・ハリストスであり、「父」とは
▲「七本矢の生神女」の
イコン
神女マリヤを待つ必要がありま
神・父を指していますが、この
した。
表現は、復活祭の次の祈祷文
生神女マリヤは「神の母」とも呼ばれます。
を思い起こさせます。
生神女マリヤ自身は神ではなく、私たちと
「像り難きハリストスよ、爾は体にて墓にあ
たましい
同じ人間です。しかし、正教会の祈祷文に
り、霊 にて神として地獄に在り、盗賊と偕に
「ヘルヴィムより尊く、セラフィムに並びなく
天堂に在り、父及び聖神°と偕に宝座に在
栄え」とあるように、人間でありながら、神使
りて、一切を満て給えり」(聖大パスハの主
よりも尊ばれるべき存在であることが判りま
日第一時課トロパリ)
す。
主イイスス・ハリストスが十字架に釘打たれ
人間として、その高い聖神°性ゆえに尊
た聖大金曜日の翌日、体は墓にありなが
崇される人たちとして「聖人」がいますが、
ら、アダムとエヴァをはじめとする旧約時代
「聖人」に神への転達を祈る時、私たちは
◎「七本矢の生神女」のイコンについて
8月13日(新暦26日)に記憶される生神女のイコン。預言者シメオンが預言した生神女マリヤが受
ける苦しみ、精神的な痛みを表わしたもの。剣が七本あるのは、生涯にわたる「全て」の苦しみを表
わしている。正教会において「7」は「全て」または「満ちている」ことを表わす。
-2-
啓蒙記事
その結果、凡そ人間の中で誰も祝福され
たことのない恩寵 ―― 「神の母」であると
いう恩寵を受けたのです。
「我らのために神に祈り給え」と言って“仲
介”を求めます。しかし、生神女マリヤに祈
る 時、「至聖な る生神女よ、我 らを 救い 給
え」と直接、救いを求めます。このことから
も、生神女マリヤが諸聖人よりも限りなく神
に近い存在であることが判ります。
ちなみに私たちは洗礼の時に諸聖人の
名前(携香女マグダラのマリヤ、致命女聖マ
リヤなど)を頂きますが、生神女マリヤの名
を聖名として頂くことはできま
せん。
生神女マリヤの胎は、楽園を
追放されて以来、救いを見い
出せずにいた人間と神の国の
間に道を開きました。生神女
は正教会の祈祷文の中で天と
生神女マリヤは、祈祷文の中で「恩寵を満
ち被るもの」と呼ばれますが、その恩寵に満た
された様相は、生神女マリヤの就寝(永眠)の
際にも見ることができます、
正教会では生神女就寝祭(12大祭)を8月
28日に記憶します。生神女の就
寝については、聖書にも信経に
も記されていません。しかし正
教会の聖伝に依る祈祷文は、
生神女の臨終の時、使徒たち
が見守る中、主イイスス・ハリスト
スが自らその霊を迎えたことを
次のように著しています。
かけはし
地との間に掛けられた「 梯 」と
ぞうぶつ
「一切の造物は爾(生神女マ
呼ばれます。
リ ヤ)を 送 り、爾 の 子(主イ イ ス
ス・ハリストス)はその不朽の手
生神女マリヤが神使ガヴリ
むてん
たましい
う
イルから「福音(処女マリヤが ▲「生神女就寝祭」のイコン
にて爾の無瑕 なる霊 を接 け給
身籠って男の子を生むであろ
えり」(生神女就寝祭早課)。
うという知らせ)」を受けた時、彼女が、「私
私たちは生神女マリヤが幼子イイスス・ハリ
は神の婢ですから、神が善しとされることが
ストスを抱いた構図のイコンをよく見ます。し
私の身に起こりますように」と言って従順に
かしこのページにある「生神女就寝祭」のイコ
「福音」を受け入れたこと ―― ここにダマ
ンは、主イイスス・ハリストスが、まるで少女の
スクの聖イオアンは人間の信仰の「自由な
ような生神女マリヤを抱いています。これから
従順」と「神の恩寵」との最高の関係を見る
天に昇って行く場面です。
ことができると説いています。
主イイスス・ハリストスがただ一人「母よ」と
主イイスス・ハリストスの十字架上の死は、
呼んだ女性、至聖なる生神女マリヤ。
預言者シメオンが生神女マリヤに「あなたは
生神女マリヤを記憶する日(生神女福音
剣で胸を刺し抜かれるであろう(あなたは剣
祭、生神女誕生祭、生神女就寝祭など)、
で胸を刺し抜かれるような苦しみを受けるで
正教会は水色の祭服を用います。生神女
あろう)」と預言した通りになりましたが、生神
マリヤの無垢、無瑕、貞潔、従順を表してい
女マリヤは、これも同じように従順に受け入
る色です。
れました。
(長司祭ニコライ・ドミートリエフ)
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で き ご と
全国公会・東日本主教々区会議・北海道ブロック会議
平成25年度全国公会・東日本主教々区会議開催
▲平成25年度東日本主教々区会議(仙台)
6月29日(土)・30日(日)、仙台正教会
において、東日本主教々区会議が行わ
れた。聖体礼儀において上武佐正教会のイオアン菊池兄が輔祭に叙聖された。
7月13日(土)・14日(日)、東京復活大聖堂において、全国公会が行われた。聖体礼儀にお
いて北鹿正教会のイオアン釜谷輔祭が長輔祭に昇叙された。
北海道ブロック拡大宣教会議開催
5月25日(土)、26日(日)、北海道ブロック拡大宣教会議が函館正教会を会場として行われ
た。2013年(平成25)度の活動は以下の通り。
・2013年8月6日(火)~8日(木) 「キャンプだホイ!2013 in 上武佐」
・2013年9月14日(土)~16日(月・祝) 聖歌研修会(会場:釧路正教会)
・2013年11月23日(土・祝)、24日(日) 誦経者研修会(会場:函館正教会)
・2014年1月25日(土)、26日(日) 宣教会議(会場:札幌)
・2014年5月24日(土)、25日(日) 拡大宣教会議(会場:道央)
函館正教会〔婦人会総会、詠隊総会〕
平成25年度婦人会総会、詠隊総会開催
6月2日(日)、婦人会総会が行われた。教会の婦
人会は「携香女」である。主ハリストスの「体」である
教会のために自分は何ができるのか、何が主に喜
ばれることなのか、という温かい配慮の心が活動の
原点。無理をせず、できることをがんばろう。
同日、婦人会総会に継いで詠隊総会が行われ
た。奉神礼において欠かすことのできないメンバー
▲ 「善き地に落ちた種は実を結び…」
である。高齢化は否めないが、さらに善い聖歌を献ずることができるよう、結束を新たにした。
両総会とも管轄司祭、執事長が臨席し、感謝と励ましの言葉を述べた。
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で き ご と
「旧ロシア人墓地」整備・清掃
▲ 美しく整備される墓地 ▲
6月1日(土)、「旧ロシア人墓地」において毎
春 恒例 の整 備・清掃 作業 が行 わ れ た。函 館
市、ロシア極東連邦総合大学函館校、ロシア
領事館、函館正教会の四者が合同で行うもの
で、毎年札幌からサープリン総領事夫妻も参
加している。昨年は、キリル総主教聖下が成聖
された白い石の十字架が設置され、今年は色
とりどりの花の苗が植えられるなど、多くの人た
ちの配慮に依って、年々整備が行き届いてきている。
清掃作業の後、参加者約20名が白い石の十字架の前に集まり、ニコライ神父の司祷で、故
国を遠く離れてこの墓地に眠る全ての永眠者の霊の安息のために祈りを捧げた。
「新島襄と幕末の箱館」展開幕(函館市立博物館)
▲展覧会のポスター
6月14日(金)、函館市立博物館において「新島襄と幕末の箱館」展
オープニングが行われ、函館正教会から管轄司祭が出席した。工藤
壽樹函館市長、大谷實同志社大学総長らがテープカットを行った。
新島襄は本州から函館に渡り、脱国するまでの一か月余をロシア領
事館内の聖ニコライのもとで過ごし、ロシア病院で目の治療を行うなど
している(1864年5月~6月)。
今回の展覧会のために、函館正教会から初代聖堂の写真と新島の
脱国に関わった澤辺琢磨の写真を貸し出している。展覧会は9月1日
(日)まで行われる。
「でんけん」総会
函館市には「伝統的建造物保存地区」(以下「でんけん地区」)と呼ばれる地域がある。この
ような「でんけん地区」は、文化財保護の目的で全国に100箇所以上指定されており、代表的
な所では神戸市の北野坂一帯がある。函館市の「でんけん地区」は、西部地区の約50戸の建
物が「伝統的建造物」の対象となっており、その中に函館ハリストス正教会も含まれている。函
館正教会は、国の重要文化財としては市教育委員会文化財課にお世話になり、市の伝統的
建造物としては市都市建設部都市デザイン課にお世話になっている。
函館正教会は「でんけん」の役員を長年に亘って勤めている。「でんけん」の活動は、年間
三回の会議、一回の地域清掃、一回の総会の他、「でんけん」コンサートや「でんけん」会報
の編集・発行などがある。今年度は6月27日に「でんけん」の総会があった。街並みを美しく守
り、人々が暮らしやすい地域として「でんけん地区」の活性化を図るために活動を行っている。
-5 -
で き ご と
コンシューマ・サークル来堂
▲ 来堂された皆さん
6月18日(火)、どうなん「学び」サポートセンターの米田義昭
理事長(写真後列右端)と同センターのコンシューマ・サークル
の皆さんが函館正教会を訪れ、聖堂を拝観した後、信徒会館
においてニコライ神父を囲み、懇談のひと時を過ごした。イコン
について、またソビエト時代の宗教事情について質問が出さ
れ、問題意識を持ってよく勉強していることが伺われた。
掲示板の設置(正門脇)
▲ 新しく設置された屋外掲示板
一昨年、正門脇に立っていた木製の掲示板が老朽化によっ
て破損したため、撤去した。その後、執事会で検討を重ね、こ
の度新しい掲示板が設置された。お年寄りや子供にも見易いよ
うに、高さを若干低めに設定してある。聖堂拝観時間、教会奉
事・行事予定、各地の正教会マップ、教会史や聖歌CDなどの
頒布品のお知らせなどを掲示していく予定。港が丘通りを通る
多くの人たちの目にとまることとなる。
畑とバラの近況
今年も、5月の初旬にイリヤ坂下洋光兄(上磯)がトラクターをダン
プに積み、函館正教会の司祭館裏まで来て、畑を耕してくれた。
その後、司祭宅でじゃがいも(種いもはイリナ田中利代子姉〔上
磯〕から頂いた)とビーツ、リュボフ下田節子姉がビーツ、イオアン
盛田誠兄とイオシフ落合良治兄が枝豆、チンゲン菜、かぶ、とうも
▲ 可憐な花(じゃがいも)
ろこし、トマト、にんじん、さつまいも、かぼちゃ、ピーマンなどを植え、畑は種々の野菜で“満
杯”状態となっている。陽射しが強く、暑くなってきた今日この頃だが、盛田兄と落合兄が汗を
流して、草取りや添え木などの手入れをしている。
境内のバラは、信徒たちで世話をするようになって二年目となった。盛田兄が中心となって
「花がら摘み」や「枝はらい」などを行っている。7月に入って、一番花が綺麗に咲き始めた。
「正教会の手引き」改訂版発刊(教団)
「正教会の手引き」の改訂版(写真左)が教団全国宣教企画委員会から発
刊された。ガイドブックのような構成になっており、簡潔にまとめてあるので、
知りたい項目だけを拾い読みすることができて便利。巻末には用語集も付い
ている。一家庭に一冊備えたい本である。
教会で頒布中(一冊800円)。
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歴史のひとコマ
馬場家のもう一つの墓
立待岬に馬場家の墓がある。墓碑銘の筆頭には「ディミ
や お ぞ う
イトリイ馬場八百蔵」、「エリザヴェタ馬場ナヲ」夫妻の名を
読み取ることができる。
八百蔵は、八王子千人同心の一人で、甲斐武田家の遺
臣であった(右上の写真の墓石に「武田菱」の紋が見え
な な え
る)。彼らが集団で蝦夷開拓のために七飯村に渡ってきた
まさあき
たみのり
のが1856年(安政3)頃で、夫妻には政昭 (長男)と 民則
(次男)という二人の息子がいた。民則は、函館代言人組
合会長や函館区会議員を務めたアントニイ馬場民則。彼
も立待岬のこの墓の碑銘に名を連ねている。彼が永眠し
た時(1908年)には、シメオン三井神父が正教新報に追悼
文を寄せている(『函館ハリストス正教会史』 94頁参照)。
しかしこの墓碑銘の中に馬場政昭の名は無く、つい先
日まで私たちは八百蔵に息子が二人いたことさえ知らな
かった。
▲ 立待岬の馬場家の墓
(右より長谷部一弘氏、墓石を挟
んで馬場民準氏、ニコライ神父)
▲ 上藤城の馬場家の墓
たみのり
函館正教会に馬場民準氏(埼玉県在住)が訪ねて来られたのは昨年の秋のことであった。
たみのり
たみのり
民準氏にとって民則は祖父にあたる。
民準氏は馬場家の祖先について詳しく調べており、私たちは多くの新事実を知ることとなっ
た。
民準氏は、馬場政昭の墓が七飯の上藤城にあることを突き止めたのだが、その時(季節は
冬だった)、墓にみかんが一つと萎れた花が供えてあったというのだ。民準氏は「馬場政昭の
縁故の方がご存命であれば、是非お会いしたい」とのことで、情報を求めて函館正教会を訪
ねて来られたのであった。
民準氏は、昨年11月にも教会に立ち寄られた。帯広市開拓130周年記念行事で行われた
依田勉三(1853~1925)を記念する式典に参列し、本州に帰る帰途であった。依田勉三は、
筆舌に尽くしがたい苦労をして十勝地方の産業の基礎を築き、開墾に関する業績に対し緑
綬褒章を受けた人で、「十勝開拓の父」と呼ばれる。実は、馬場政昭の娘サヨが、依田勉三の
後妻に入っており、馬場家と依田家は親戚なのであった。
依田勉三の生涯を日記風に著した『風吹け、波立て』(松本晴雄著)の中には、サヨの祖父
八百蔵が永眠した時(明治31年2月9日)のことについて、「正午に神父の祈祷があり、一時に
出棺、尻沢辺へ埋葬し、三時に戻って酒飯が出され、五時に帰宅した 」、「朝五時
※次頁へ続く
-7-
歴史のひとコマ
※前頁から続く
に起き、六時にサヨと馬場へ出向くが、同家
は聖堂へ行って留守であった。そして聖堂へ
行き、神父の説教を聞いて九時に帰り、…」な
どと記されている。
明治31年の函館正教会管轄司祭はペトル
山縣神父である。ちなみに八百蔵・ナオ夫妻
に洗礼を授けたのは、年代から推測すると、
聖ニコライであったと思われる。初めて聖ニコ
ライが馬場家を訪ねてきた時、ナヲは大変驚
いて腰を抜かしたというエピソードが馬場家に
伝わっている。
馬場政昭について調べてみると、政昭は箱
館戦争のときに旧幕府軍側で戦っており、旧
▲ ディミイトリイ馬場八百蔵兄(左)と
エリザヴェタ馬場ナヲ姉(右)
(※函館の井田写真館で撮影したもの
馬場民準氏提供)
し み ず だ に きんなる
幕府軍降伏後に、箱館府知事清水谷公考暗殺(未遂)を企てた一味であったとのこと。信憑
性は定かではないが、ある資料によると政昭はこれらの事件の後、「キリスト教の人となった」と
という。
『函館ハリストス正教会史』編纂の時にお世話になった長谷部一弘氏にも連絡し、馬場
氏、長谷部氏、ニコライ神父と私は、今年6月、七飯の上藤城に向った。そして今回も、まだ供
えられて間もない生花と盛り塩があるのを私たちは目にしたのである。政昭は墓碑銘によると
明治33年11月25日に52歳で永眠している。
お く つ き
政昭の墓に正教会らしきものは何も記されていなかった。墓表面には「馬場家奥津城」と記
しろやま
されている。神道で埋葬されたのであろうか。この一帯は城山地蔵堂と呼ばれる一角で、明治
13年に墓地として認可されている。 私たちはその後、立待岬の馬場家の墓に寄った。前述
の尻沢辺の墓がこの場所だったかどうかは確定できないが、この辺り一帯は昔尻沢辺と呼ば
れていた。当時馬場家の住まいがあった青柳町から一番近い墓地である。現在の墓石は、眼
科医だったフォティナ馬場みつ姉が平成11年に再成したもので、フォティナ姉の墓碑銘が最
後である。フォティナ姉の姉妹たちは、子供時代に近所(青柳町)に住んでいた石川啄木の
妻節子が馬場家に醤油や米を借りに来たのを覚えているという。
ちなみに北方民俗研究家モイセイ馬場脩兄もこの墓に眠っている、
馬場家の墓から10~15メートルほど登ると、ロシア海軍病院医師だったゼレンスキイから写
真技術を学んだと言われている写真家田本研造氏の墓がある。
(S.Y.)
〔お知らせ〕 馬場民準氏が、七飯上藤城の城山地蔵堂にある馬場家の墓に生花を
供えて下さっている方を探しています。差支えなければ、お心当たりがある方は教会
までお知らせください。
-8-
お 知 ら せ
献金について
教会献金はどのような場合に、
どのように行ったら良いのでしょうか。
「定額献金」とは、各信徒が自分にとって可能な額を決めて、毎月行う献
金です。各家庭で額を定めて、世帯主の名前で献金することもできます。
金額の目安については「その家庭で毎月とっている新聞代を目安とする」とアドバイスして
いる教会もありますが、継続して行う献金ですから、各自、自分の経済状態と相談して、無
理なく継続できる額にします。全く収入が無い方は別として、定額献金は信徒が“できれば
必ず”行うべき基本的な奉仕です。
定額献金は、旧約時代に信徒が「収入の十分の一」を神殿に納めていたことに由来しま
す。毎日元気で暮らし、働けることに対して、この命を下さった神様に感謝する意味があり
ます。
献金は熱心な信仰の現れです。献金において努力することによって、その努力を見てお
られる神様は、人間の心を観る神様ですから、さらに豊かな恩寵を与えて下さいます。そし
て教会はさらに豊かになってゆき、信徒の信仰生活を益々豊かに育みます。教会への奉
仕は献金も含めて、自由な意思と喜びをもって行うことが大事です。これが教会と奉仕の
理想的な姿です。
定額献金は、住んでいる場所と関係なく、所属する教会へ納めます。函館正教会に所
属している信徒は、函館正教会へ納めます。
多くの信徒家庭が代から代に渡って、献金において努力しています。まだ定額献金を納
めたことのない信徒のご家庭、または納入がしばらく途絶えているご家庭がありましたら、
是非、「教会に献金できる喜び」を味わってみましょう。
私たち函館正教会信徒の努力によって、函館正教会を見ゆると見えざる両面(物心両
面)において豊かで美しい教会にしていこうではありませんか。
定額献金
定額献金の他に、教会には、奉事献金(埋葬献金、パニヒダ献金、洗礼献金、婚配献金な
ど私祈祷に対する奉事御礼です)、大祭献金(教会暦の中で最も重要な祭日である復活祭と
降誕祭の時に納めます)、感謝献金(人生の節々で神様に感謝する気持ちを表すものです)、
墓地献金(「ハリストス正教会墓地」に墓碑を持っているご家庭が、墓地の整備や除草などの
費用を賄うために納める墓地管理費です)があります。
函館ハリストス正教会
執 事 会
-9-
お 知 ら せ
婦人会より
画 像
主日昼食会の準備について、今年度の婦人会総会において出された提案・審議を受け、
婦人会役員会で検討し、「試行案」を次のようにまとめました。
・主日昼食会のお当番は、月二回とします。
プラス
・一回は、今まで通りの食事の準備を行い、もう一回はパンと紅茶 + 添えるものを一品(惣
菜でも汁物でも構いません)を準備します。
・教会から支給される食材の材料費は、二回分で6,000円以内とします。
◎上記は現在の所、「試行案」です。暫く上記の要領で行い、何か改定すべき点がありました
ら、婦人会役員までお申し出ください。
函館正教会 敬老会のお知らせ
函館正教会恒例の敬老会を下記の日程で予定しています。
信徒全員で賑やかにお祝いしましょう。
期日:9月22日(日)
聖体礼儀の後、聖堂において敬老感謝祈祷を行います。
(当日は敬老感謝祈祷の後、「秋のパニヒダ」も行います)。
ご祈祷の後は、信徒会館においてささやかな祝賀の食事を用意致します。
敬老会ではない方々も是非ご参加下さい(食費:500円)。
※北海道ブロック聖歌研修会(会場:釧路正教会)が9月14日(土)~16日(月・祝)の日程で
行われるため、函館正教会では、「敬老会」と「秋のパニヒダ」を9月22日(日)に行います。
消息
〔 パニヒダ 〕
7月6日(土)、フェオフィラ薄井禮子姉の五年祭が行われた(写真
右)。今年は、長女の森田泰子さんが洗礼を受け(聖名:エリザヴェ
タ)、母フェオフィラ姉と同じ正教会信徒として、パニヒダに参祷できた
ことが、何よりの親孝行であった。ワシリイ薄井忠一神父の墓前にも
花を供えてリテヤを行った。
- 10 -
お知らせ/上磯
8・9月の聖名祭
(聖名祭が8月の方は8月4日、9月の方は9月1日に行います)
聖体礼儀に引き続き行いますので、該当する方は是非ご参祷下さい。
画 像
消息
6月7日(金)、エレナ坂下ヨシ姉の三年
祭、ステファン坂下武夫兄の七年祭が行われた。栃木
や札幌から子、孫たちが集まった。
【お知らせ】
8月13日(火)午前10時より、聖堂においてパニヒダを行い、その後、野崎墓地において墓
地祈祷を行います。墓地の方へも多くの方々のご参祷をお願い致します。糖飯と記憶録を
ご持参下さい。
9月23日(月・祝)午後7時より、聖堂においてパニヒダを行います。糖飯と記憶録をご持参下さい。
永眠した祖先の霊の安息のために祈ることは、
正教会の古くからの伝統であり、信徒の大切な勤めです。
- 12 -
坂下家パニヒダ
▲
上磯ハリストス正教会だより
8月の奉事・行事予定
8月の奉事・行事予定
8/3(土) 函館
上磯
4(日) 上磯
函館
17:00
19:00
10:00
10:00
主日徹夜祷 福音経:ルカ114端24:36-53
主日晩課代式祈祷
主日代式祈祷
五旬祭後第6主日聖体礼儀 第5調
使徒経:ロマ110端12:6-14/福音経:マトフェイ29端9:1-8
※聖体礼儀の後、8月の聖名祭モレーベンを行います
13:00 信徒学びの会/婦人会
6日(火)~8日(木) 北海道ブロック「キャンプだホイ!2013 in 上武佐」
10日(土)、11日(日) ニコライ神父、上磯正教会出張
10(土) 上磯 19:00 主日晩課式
11(日) 上磯 10:00 主日聖体礼儀
函館 10:00 五旬祭後第7主日代式祈祷 第6調
使徒経:ロマ116端15:1-7/福音経:マトフェイ33端9:27-35
13日(火) 上磯 10:00 パニヒダ及び墓地祈祷(聖堂でのパニヒダの後、野崎墓地へ移動)
14日(水)~8月27日(火) 生神女就寝祭の斎
17(土) 函館 17:00 主日・主の顕栄祭徹夜祷
〔主日〕福音経:イオアン64端20:11-18/〔祭日〕福音経:ルカ45端9:28-36
上磯 19:00 主日晩課代式祈祷
18(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷
函館 10:00 五旬祭後第8主日・主の顕栄祭 聖体礼儀 第7調
〔主日〕使徒経:コリンフ前124端1:10-18/福音経:マトフェイ58端14:14-22
〔祭日〕使徒経:ペトル後65端1:10~19/福音経:マトフェイ70端17:1-9
※顕栄祭聖体礼儀では、奉神礼の伝統として果物の成聖を行います。
秋の実りの祝福の意味ですので、希望者は各自葡萄などの果実をご持参下さい。
13:00 執事会/聖歌練習
24(土) 函館 17:00 主日・生神女就寝祭徹夜祷
〔主日〕福音経:イオアン65端20:19-31/〔祭日〕福音経:ルカ4端1:39-49,56
上磯 19:00 主日晩課代式祈祷
25(日) 上磯 10:00 主日代式祈祷
函館 10:00 五旬祭後第9主日・生神女就寝祭聖体礼儀 第8調
〔主日〕使徒経:コリンフ前128端3:9-17/福音経:マトフェイ59端14:22-34
〔祭日〕使徒経:フィリッピ240端2:5-11/福音経:ルカ54端10:38-42,11:27-28
8/31(土) 函館 17:00 主日徹夜祷 福音経:イオアン66端21:1-14
上磯 19:00 主日晩課代式祈祷
顕 栄 祭
函館正教会では、「主の顕栄祭」を8月18日(日)に
お祝いします。顕栄祭には、主・神に祝福された秋
の実りに感謝するために、ぶどうやりんごを聖堂に
持参し、神父さんに成聖のお祈りをしてもらう古くか
らの習慣があります。希望者は果物をカゴや器に
盛って、聖堂にご持参下さい。
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9月の奉事・行事予定
9月の奉事・行事予定
9/1(日) 上磯
函館
10:00 主日代式祈祷
10:00 五旬祭後第10主日聖体礼儀 第1調
使徒経:コリンフ前131端4:9-16/福音経:マトフェイ72端17:14-23
※聖体礼儀の後、9月の聖名祭モレーベンを行います
13:00 信徒学びの会、婦人会
7日(土)、8日(日) ニコライ神父、上磯正教会出張
7(土) 上磯 19:00 主日晩課式
8(日) 上磯 10:00 主日聖体礼儀
函館 10:00 五旬祭後第11主日 代式祈祷 第2調
使徒経:コリンフ後141端9:2-12/福音経:マトフェイ77端18:23-35
14日(土)~16日(月・祝)
14(土) 上磯 19:00
15(日) 上磯 10:00
函館 10:00
21(土) 函館
北海道ブロック聖歌研修会(会場:釧路正教会)
主日晩課代式祈祷
主日代式祈祷
五旬祭後第12主日 代式祈祷 第3調
使徒経:コリンフ前158端15:1-11/福音経:マトフェイ79端19:16-26
17:00 主日・生神女誕生祭徹夜祷
〔主日〕福音経:マルコ70端16:1-8/〔祭日〕福音経:ルカ4端1:39-49,56
上磯
22(日) 上磯
函館
19:00 主日晩課代式祈祷
10:00 主日代式祈祷
10:00 五旬祭後第13主日・生神女誕生祭聖体礼儀 第4調
〔主日〕使徒経:ガラティヤ215端6:11-18/福音経:イオアン9端3:13-17
〔祭日〕使徒経:フィリッピ240端2:5-11/福音経:ルカ54端10:38-42,11:27-28
23(月・祝) 上磯
28(土) 函館
13:00
19:00
13:00
17:00
聖体礼儀後、敬老会感謝祈祷/秋のパニヒダ
(※各自、糖飯と記憶録をご持参下さい)
敬老会祝賀会/執事会
秋のパニヒダ(※各自、糖飯と記憶録をご持参下さい)
イースターエッグ講習会(第一日目)
主日・十字架挙栄祭徹夜祷
〔主日〕福音経:マルコ71端16:9-20/〔祭日〕福音経:イオアン42半端12:28-36
上磯
29(日) 上磯
函館
19:00 主日晩課代式祈祷
10:00 主日代式祈祷
10:00 五旬後第14主日・十字架挙栄祭聖体礼儀 第5調
〔主日〕使徒経:コリンフ後170端1:21-2:4/福音経:マトフェイ89端22:1-14
〔祭日〕使徒経:コリンフ前125端1:18-24/福音経:イオアン60端19:6-11,13-20,
25-28,30-35
13:00 イースターエッグ講習会(第二日目)
【2013年第3回イースターエッグ講習会のお知らせ〔函館〕】
2009年からスタートし、今では市内のみならず本州からの受講者も通っている好評の講習会です。
9月28日(土)、29日(日)は今年最後の講習会となります。信徒の皆さんも是非ご参加下さい。楽しい
時間があっという間に過ぎます。(お道具の数に限りがありますので、お早目にお申込み下さい)。
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