GC/MSD の検出器ゲインを 最適化するための クイックスタートガイド 著者 Harry Prest and Brian Hom 検出器ゲインを使用すると、化合物のレスポンスの長期的な安定性の向上、機器間の データ品質の共通化、診断の簡略化など、GC/MS に数多くの利点がもたらされますが、最 も大きな利点は、MS 検出器の動作濃度範囲を簡単に最適化できるようになることです。 このアプリケーションノートでは、目的の濃度範囲を対象化合物に合わせて最適化する アプローチについて詳細に説明します。 はじめに ゲインの基本原理は、化合物イオンの信号が取り込みメソッドのゲインの設定に直接比 例するということです。つまり、たとえばゲイン係数 = 1 からゲイン係数 = 5 のようにゲ インを調整すると、信号の増幅が 5 倍となり、すべての化合物のデータ解析で見られるレ スポンスも 5 倍になります。これにより、対象化合物の濃度範囲でのゲインの設定計画が 明らかになります。ゲイン (係数) が高すぎるとピークはフラットになり、高い濃度におけ る定量性が低下します。ゲイン (係数) が低すぎると、低濃度の対象化合物のレスポンス が小さくなりすぎます。 ※ 本ガイドラインはシングル四重極 MSD に適用される方法であり、トリプル四重極 MSD には適用 することができません。 手順 6. メソッドのゲイン係数をこの新しい値 (GFcalc) に設定し、 最大濃度の標準溶液を再度分析します。 1. 最適化された GC 条件 (インジェクタパラメータ、GC オーブ ンプログラムなど) と分析の MS パラメータ (スキャン範囲、 SIM イオンなど) で、Gain Factor (ゲイン係数) = 1 と設定し、 最大濃度の標準溶液を分析します (図 1)。 7. ピーク高さを再計算し、最大のピーク高さを持つ化合物が、 300 万カウントを上回り、600 万カウントに満たないピーク 高さとなっていることを確認します。 確認できたら、最小濃度の標準溶液を分析し、すべての化合物 (最大の強度と最小の強度の両方) について良好な検出結果が得 られることを確認します。すべての化合物を検出器の動作範囲 に収めるためには多少の犠牲が必要になることがあります。イ オン源ドローアウトレンズに関するテクニカルノートをご覧くだ さい [2]。この論理のフローチャートを図 2 に示します。 ゲイン係数を選択するための規則は非常に単純です。 • 図 1. 検出器の設定 すべての対象化合物のうち強度が最も高いイオンと最も低 いイオンの両方を対象の濃度範囲全体で検出できる最小の 2. 最も強度の高い抽出イオン信号を特定します。いずれかの化 ゲイン係数を選択します。 合物で最も強度の高いイオンを見つけ、ピーク高さの最大カ ウントを記録します。これには 2 つのアプローチがありま す。MassHunter GC/MS 定量ソフトウェアを使用したデータ 処理については、付録で簡単に説明します。 • このためには、これらの 2 つの化合物とそのイオンを特定 し、最大濃度の標準溶液と最小濃度の標準溶液の両方でゲ イン係数の選択をテストします。 もう 1 つのアプローチ (ChemStation を使用するもの) では、すべ ての化合物を特定し、定量データベースを構築します。 ゲイン係数 = 1.0 で 最大濃度の標準溶液を分析 1. 定量メソッドを一時的に設定し、そのピーク高さにより 化合物を定量します。 より大きいドローアウトレンズを 検討する 2. 各化合物の標的イオンについてピーク高さのカウントが 含まれるレポートを生成します。 いずれかの イオンのピーク高さが 8 x 10 6 カウントを 超えているか? はい はい 3. リストを確認し、化合物、そのリテンションタイム、 イオンの最大ピーク高さを使用して、 3∼4 x 10 6 カウントになるゲイン係数を計算する。 この新しいゲイン係数で標準溶液を再度分析 ターゲットイオンを特定します。 4. すべてのピーク高さのカウントが 800 万未満であることを 確認します。800 万カウントを超えるものがある場合は、 さらに大きいドローアウトレンズの使用を検討します [2]。 いいえ 5. レポートで、最も大きいピーク高さのカウントを見つけます。 これを LPHt カウントと呼びます。 より最適なゲイン係数を計算するには (GFcalc) : 新しい データファイルで、 イオンの最大ピーク高さが 3 x 10 6 カウントと 6 x 10 6 カウントの間に なるか? はい 同じ方法を使用して 最小濃度の標準溶液を分析 すべての化合物を 検出できるか? • ドローアウトレンズを最適化し、 このプロセスを繰り返す。または、 [LPHt counts] [3 × 106 counts] = [1.0] [GFcalc] • 一部の化合物にさらに低い濃度範囲 を適用する または はい 一部の化合物にさらに低い濃度範囲を適用する このゲイン係数およびメソッドで検量線を作成し、 サンプルを分析する [3 × 106 counts] = [GFcalc] [LPHt counts] 図 2. ゲイン最適化手順のフローチャート 計算したゲイン係数 (GFcalc) は、小数点以下 1 桁まで入力するこ とができます (x.x)。 2 付録 : EVALDEMO.D を使用した最適なゲイン係数の推定の例 1. MassHunter 定性分析ソフトを使用して、C:\MassHunter\GCMS\1\data ディレクトリの EVALDEMO.D ファイルを読み込みます。 カウント ×106 +TIC スキャン evaldemo.d 4.2 4.0 3.8 3.6 3.4 3.2 3.0 2.8 2.6 2.4 2.2 2.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 5.1 5.3 5.5 5.7 5.9 6.1 6.3 6.5 6.7 6.9 7.1 7.3 7.5 7.7 7.9 8.1 8.3 8.5 8.7 8.9 9.1 9.3 9.5 取り込み時間 (分) 2. タイプを BPC (ベースピーククロマトグラム) に設定して Extract Chromatograms (クロマトグラムの抽出) (メニュー項目 Chromatograms (クロマトグラム) の下) を使用します。 3 9.7 9.9 3. (TIC Scan (TIC スキャン) ボックスをオフにして) User Chromatograms (ユーザーのクロマトグラム) の ONLY BPC Scan (BPC スキャンのみ) をハイライト表示します。 4 参考文献 4. 次に Integrate Chromatogram (クロマトグラムの積分) (Chromatograms (クロマトグラム) メニュー項目の下) を実行 します。結果を表示できるように Peak Table (ピークテーブル) ( 1. ゲインノーマライズされた装置のチューニングによる性能向 上 : その利点と特徴 (5989-7654JAJP). ) をオンにします。 2. 5977 EI Source Selection Guide (5991-2106EN). 詳細情報 これらのデータは一般的な結果を示したものです。アジレント 製品とサービスの詳細については、アジレントのウェブサイト www.agilent.com/chem/jp をご覧ください。 5. 表のピーク高さの見出しを 2 回クリックし、BPC のピーク 高さが高いものから低いものの順になるようにテーブルを 並べ替えます。これで、最も強度の高いイオンのピーク高 さがリストの先頭に移動します。 6. この最大の高さの値を記録します。この場合、この値は 1607889 で、クロマトグラムの 2 番目のピークのものです (6.431 分)。最小の強度を持つ標的イオンは 8.955 分の化合 物のものです。 これが 1.0 のゲイン係数で収集されたものと仮定すると、次の式 により適切なゲイン係数を計算できます。 3,000,000 Better Gain Factor = 1,607,889 = 1.87 _ 1.9 1.0 これは、サンプルを新しいゲイン係数 1.9 で再度取得し、BPC で ピーク 2 を確認し、ピーク高さが適切な範囲内 (高さが 300 万カ ウントと 600 万カウントの間) であることを検証する必要がある ことを示します。この範囲内であれば、最小濃度の標準溶液を このゲイン係数で取り込み、最小の強度を持つピークの強度を 確認する必要があります。この例では、これは 8.955 分のピーク (ピーク 4) です。 5 www.agilent.com/chem/jp アジレントは、本文書に誤りが発見された場合、また、本文書の使用により付随的 または間接的に生じる損害について一切免責とさせていただきます。 本資料に記載の情報、説明、製品仕様等は予告なしに変更されることがあります。 アジレント・テクノロジー株式会社 © Agilent Technologies, Inc. 2013 Printed in Japan March 22, 2013 5991-2105JAJP
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