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STマイクロエレクトロニクス社、
F Cacho氏およびV. Fiori氏による寄稿
製造・販売する電気製品が長い期間にわたり正
常に動作することは私たちの願いであり、システ
ムの確実な動作が長期にわたって求められる製
品寿命という概念は必要不可欠です。そのため、
集積回路(IC)が正常動作可能な期間を把握す
ることは非常に重要です。しかし、ICを実際の使
用環境下に置き、自然発生的な故障や使用によ
る故障が発生するのを何年も待つという試験方
法は現実的ではありません。その代わりとして半
図1 走査電子顕微鏡で見た銅配線の画像。原子空孔の凝集により形成された
導体エンジニアが開発したのが、ICに大電流・高
ボイドが回路故障の原因となった。
温という負荷をかける加速寿命試験であり、この
試験の結果から寿命を予測することが可能です。当社でもこ
CMOS技術で製造する半導体デバイスでは、銅製の配線
のような試験をベースに半導体の寿命を予測するモデルを
は厚さわずか100 ナノメートル、高さもほぼ同じです。主要
作成しています。
な配線不良であるエレクトロマイグレーションは、伝導性を
このようなモデルはデバイスの故障時期を予測するもの
持つ電子が金属イオンと衝突することにより材料が丸ごと
ではありませんが、特定の条件下における故障率をある程度
移動してしまう現象です。
「電子の風」と呼ばれるこの現象
正確に予測することができます。半導体会社はできるだけ正
により、時間が経つにつれ多くの金属原子が元の位置から
確なモデル作りに多大な労力を費やしており、プロセスエン
はずれてしまいます。こうした金属原子移動の結果、結晶構
ジニアは故障発生のメカニズムに対するより深い理解を要
造に「穴」が発生し、これが時間を経て繰り返されることで
求されています。100億ドルの収益を誇るSTマイクロエレク
微細なボイドが形成され、開回路やデバイス故障につなが
トロニクスでは、IC故障の主要原因の一つである配線のエレ
ります(図1を参照)。このような原子空孔をもたらす質量
クトロマイグレーションが発生するメカニズムを、COMSOL
輸送は、静水圧応力の勾配、温度、電位といった複数の要
Multiphysicsを用いて研究しています。
因の影響を受けます。
複雑なマルチフィジックスな問題
寿命に大きく影響する金属配線の特性は複数あります。
半導体デバイスの小型化が進むにつれ、個々のトランジス
伝導体の体積、物性、電気化学的付着プロセス、配線を加
タを結ぶ金属配線における電流密度は増加しています。これ
工する化学機械研磨(CMP)プロセスなどがその例です。
までの寿命モデルは経験則に基づいたものでした。当社の
信頼性担当エンジニアは加速寿命試験を実施する際、
最新CMOS技術を市場投入するにあたり、故障モードの評価
最悪の条件を設定しようと考えます。マルチフィジックスモ
は重要な意味を持っています。
図2 ビアに接続し酸化膜に埋め込まれた銅
図3 銅配線内の切片プロットに現れた
図4 モデルの中心線に沿った原子空孔の
配線における相対的原子空孔濃度。原子空孔
フォン・ミーゼスの相当応力。最初の結晶
相対的濃度。ピークはビアや結晶粒界の周
は、予想通りビア周辺で相対的に高くなってい
粒界に位置するビアの周辺で最も高くなっ
辺で発生している。
る。また、結晶粒界においても広範囲にわたる
ている
ことが確認できる。
デリングを用いてエレクトロマイグレーションに対する理解を
ほか、異なる係数(エレクトロマイグレーションおよび構造力
深めれば、最悪の条件を実際に揃えたことを確認できるよう
学の双方)のモデル化や、
マルチフィジックスな現象(直流通
になります。
電から構造力学・伝熱という物理現象までさまざまな物理現
象の拡散方程式)を組み合わせたモデルの作成も簡単です
(図3を参照)。
微細構造の現実的なシミュレーション
私たちがCOMSOL Multiphysicsを選択した理由は、金属配
線におけるエレクトロマイグレーションに影響を与える物理的
モデリングの結果を検討し最初に得られた推察は、凝集ボ
要素すべてを効率よく処理できるその性能です。当社で作成し
イドの位置を原子空孔集合体の発生から決定可能であると
たモデルでは、原子空孔の形成を構造力学や熱拡散と組み合
いうことでした。また、印加電流、初期負荷、温度、そしてライ
わせています。私たちはまず、ソリューションの方向性を決め、
ンのジオメトリとの相関関係から最大濃度を予測できること
アプローチが正しいことを確認するための2Dモデルから着手
も判明しました。こうして私たちは金属配線寿命予測の初期
しました。しかし、実際に原子が拡散する通り道には金属間の
モデル作成に成功したのです(図4を参照)。
界面が複数関連するため3Dモデルの作成が必要となり、私た
ちはこの3Dモデルを使い、過電流による原子空孔の形成を現
加速試験は、予測性および正確性に優れていなければなら
実的な微細構造や質量輸送の条件下で調査しました(図2を
ないため、これらのモデリング結果は私たち信頼性担当チー
参照)。
ムにとって貴重な資料です。しかし、より深い理解が必要な
このモデルでは、濃度勾配による標準的な拡散、化学的ポ
物理的効果はまだ数多く残っています。私たちは現在、品質
テンシャル差がもたらす電子風(Electron Wind)、静水圧応
管理工程で必要な時間を減らし、最も厳しい試験条件を確
力、熱による原子拡散、という複数の物理現象を組み合わせ
実に揃えるため、COMSOL Multiphysicsを用いてより性能の
ています。COMSOL Multiphysicsはこのような現象のモデリ
高い故障予測モデルを開発しています。これらのモデルは、
ングに使用できる数多くのツールを備えています。結晶粒を
配線の最小サイズなどを定めるプロセス設計のルールについ
解析するためのジオメトリや、配線やビアなどさまざまなコン
ても私たちの見識を深めてくれました。
ポーネント間の界面を解析するジオメトリが簡単に作成できる
写真:
フランス、クロルの社屋前に立つSTマイクロエレクトロニクス社モデリングチーム。
左からSébastien Gallois氏、Romuald Roucou氏、Vincent Fiori氏、Florian Cacho氏。
モデリングチームの紹介
機械的・熱的シミュレーションのスペシャリストとしてSTマイクロエレクトロニクス社で働く両氏は、フラン
ス、クロルにある同社工場のモデリングチームに属しています。熱効果、ジュール加熱、非線形物理的効果
などの半導体関連シミュレーションに両氏が費やす時間は、勤務時間の約6割を占めています。
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