に掲載されました。「日雇い派遣の原則禁止の例外規定に関するリスクと

日雇い派遣の原則禁止の
例外規定に関するリスクと対処法
改正派遣法の及ぼす影響と、
「ポスト日雇い派遣サービス」を考察
常葉浩之 ときわ ひろゆき
㈱フルキャストホールディングス
代表取締役社長CEO(最高経営責任者)
1964年生まれ。 1987年、 慶應義塾大学経済学部卒。 1987年リクルート入社、 同社資産管理部長など
を経て2005年にMKSパートナーズ入社。 2006年5月、 三景取締役兼COO (最高執行責任者)。 2008年
フルキャストホールディングス入社、 取締役CFO (最高財務責任者) 就任。 2009年12月より現職。
改正労働者派遣法が、 平成24年10月より施行された。 ここで企業の実務担当者としても
影響が大きいと考えられるのが、 今般改正でも目玉となっている 「日雇い派遣の原則禁止」
条項 (改正法35条の3) である。 従来、 日雇い派遣 (登録型派遣のうち、 一日単位で派遣
にち じ
会社との契約を結ぶ労働形態) を活用していた派遣先企業は、 今後も日次単位での人員調
整を図るために、 改正法の (政令において 「例外規定」 として定められている) 範囲内で
継続的に活用を続けるか、 代替サービスを活用することとなる。
今回、 すでに平成24年10月時点で日雇い派遣事業から撤退したフルキャストホールディ
ングスの常葉浩之氏に、 法改正により人事担当業務へ波及する留意点、 今後予想される動
向を解説してもらった。
* 労働者派遣の実務事典
(小見山敏郎著、 労務行政
2013年1月) では、 改正労働者派遣法に関す
る内容と、 派遣先が対応すべき実務等を詳しく紹介しています (内容の詳細は、 本号の裏表紙をご
覧ください)。
派遣先会社への影響とポイント
●改正法でも 「例外規定」 に基づいて日雇い派遣活用を継続することは可能。 しかし 「雇
用機会の確保が特に困難である労働者の雇用継続等に必要な場合」 に当たる例外規定に
基づいた運用は、 ①派遣就業可能な労働者数の減少、 ②確認フローが加わることによる
コストアップや誓約書提出による運用のリスクを考えると、 今後困難が見込まれる
●改正法下で、 今後も日次単位での人員調達を図るには、 ①31日以上の労働契約を締結し
た労働者派遣、 ②日々紹介と雇用管理代行サービス活用といった方策がある。 しかし、
①は事実上不可能と考えられ、 ②代替サービスに切り替える際には雇い入れ手続きや労
働条件の検討、 給与計算方法や給与支払い方法の確認などが必要となる
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[図表1]。
1
はじめに
①日雇い派遣の原則禁止
②関係派遣先への派遣の8割規制
③離職した労働者を離職後1年以内に派遣労
平成24年10月1日より、 いわゆる 「労働者
働者として受け入れることの禁止
派遣法改正法」 (以下、 改正法) が施行され
た。 ちなみに、 法の正式名が 「労働者派遣事
④マージン率などの情報提供
業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業
⑤待遇に関する事項等の説明
条件の整備等に関する法律」 から 「労働者派
⑥労働者派遣契約解除の際の休業手当等の措
置
遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の
⑦有期雇用派遣労働者等の無期雇用への転換
保護等に関する法律」 に改正されたことから
もお分かりのとおり、 今回の改正は、 派遣労
推進措置
働者の保護のためのものであり、 この観点か
⑧均衡待遇の確保
らさまざまな改正が行われている。
⑨紹介予定派遣契約時における紹介後の労働
者の待遇明示
主な改正内容は下記のとおり多岐に及ぶ
図表1 改正法で派遣元(派遣会社)、派遣先企業に新たに課された事項
派
遣
会
社
● 日雇い派遣の原則禁止
● グループ企業派遣の
8 割規制
● 実績報告の義務化
● 離職後
1 年以内の人を元の勤務先に
派遣することの禁止
派
2
● 離職後
3
● 派遣料金の明示
5
● 待遇に関する事項などの説明
6
7
● 派遣労働者が無期雇用労働者か否か
を派遣先への通知事項に追加
● 均衡待遇の確保
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● 派遣先の都合で派遣契約を解除する
ときに講ずべき措置
8
9
10
11
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1 年以内の元従業員を派遣労
働者として受け入れることの禁止、
該当する場合には派遣会社へ通知
4
転換推進措置
先
1
● マージン率などの情報提供
● 有期雇用派遣労働者の無期雇用への
遣
● 均衡待遇の確保に向けた派遣元事業
主への協力
● 労働契約申し込みみなし制度
平成27年10月 1 日施行
問題研究
本稿では①日雇い派遣の原則禁止、 特にそ
の例外規定に着目し、 この例外規定に基づく
用環境の改善が図られやすい状況をつくり出
すことを狙いとしている。
運用のリスクについて考察するとともに、 従
しかし、 一方で 「全面禁止」 ではなく、
来日雇い派遣を活用していた企業にとっての
「原則禁止」 とし、 以下のとおりの例外規定
代替サービスの在り方についてみていきたい。
が設けられている。
2
日雇い派遣の
原則禁止について
[1]「原則禁止」の理由
今般の改正で、 日々又は30日以内の期間を
[2]例外規定について
適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがな
い業務の場合 改正施行令4条1項
<18業務>
①ソフトウェア開発、 ②機械設計、 ⑤事務用
定めて雇用する労働者派遣は例外規定を除い
機器操作、 ⑥通訳、 翻訳、 速記、 ⑦秘書、
て禁止となった (改正法35条の3)。
⑧ファイリング、 ⑨調査、 ⑩財務処理、 ⑪取
第35条の3
派遣元事業主は、 その業務を
迅速かつ的確に遂行するために専門的な知
識、 技術又は経験を必要とする業務のうち、
労働者派遣により日雇い労働者 (日々又は
30日以内の期間を定めて雇用する労働者を
いう。 以下この項において同じ。) を従事
させても当該日雇い労働者の適正な雇用管
理に支障を及ぼすおそれがないと認められ
る業務として政令で定める業務について労
働者派遣をする場合又は雇用の機会の確保
が特に困難であると認められる労働者の雇
用の継続等を図るために必要であると認め
られる場合その他の場合で政令で定める場
合を除き、 その雇用する日雇い労働者につ
いて労働者派遣を行ってはならない。
引文書作成、 ⑫デモンストレーション、 ⑬添
乗、 ⑯案内・受付、 ⑰研究開発、 ⑱事業の実
施体制の企画・立案、 ⑲書籍等の制作・編集、
⑳広告デザイン、 OAインストラクション、
セールスエンジニアの営業、 金融商品の営
業 (丸付き数字はいわゆる政令26業務に基づ
くもの)
雇用機会の確保が特に困難である労働者の雇
用継続等に必要な場合 改正施行令4条2項
1. 60歳以上の人
2. 昼間学生 (雇用保険法の適用を受けない
学生)
3. 副業として日雇派遣に従事する人 (生業
収入が500万円以上の場合に限る)
4. 主たる生計者でない人 (世帯収入が500
万円以上の場合に限る)
この日雇い派遣が禁止された理由は、 派遣
したがって、 改正法上は、 平成24年10月以
労働者保護の観点から、 短期の派遣という雇
降も例外規定に基づいて、 日雇い派遣を継続
用形態では、 派遣元・派遣先双方の役割が不
することが可能である。 しかし、 以下に述べ
明確で、 適切な雇用管理が果たされていなかっ
る理由から上記の例外規定に基づいた運用
たことを重大視したためである。 派遣という
はリスクが高いと筆者は考えている。
間接雇用から、 直接雇用に転換させることで
雇用管理責任を明確にし、 短期の労働者の雇
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3
例外規定に基づく
運用上のリスク
[1]派遣就業可能な労働者数の減少
[2]例外規定運用に対する懸念
例外要件のうち、 「雇用機会の確保が特に
困難である労働者の雇用継続等に必要な場合」
に関する要件の確認方法は、 以下のとおり規
リクルート ワークス研究所 「第2回日雇
定されている (厚生労働省職業安定局 「労働
い・短期派遣労働者の就業実態調査」 (2011
者派遣事業関係業務取扱要領」 から抜粋、 加
年12月5日発表) に基づいて試算すると、 例
筆、 修正)。
外規定の対象となる働き手の数は、 50%近
年齢が確認できる公的書類、 学生証、 配偶
く減少することが予想される[図表2]。 その
者等と生計を一にしているかどうかを確認で
ため派遣会社においては、 マッチングそのも
きる公的書類、 所得証明書、 源泉徴収票の写
のができなくなるか、 マッチングにかかる時
し等によることを基本とする。 ただし、 合理
間の増加、 コストの上昇が引き起こされる。
的な理由によりこれらの書類が用意できない
結果として派遣先企業からすれば、 希望どお
場合、 これらの書類等のみでは判断できない
りの労働者、 労働量の提供を受けられなくな
場合等には、 やむを得ない措置として日雇い
るか、 受けられたとしても手数料の値上げを
労働者本人からの申告 (誓約書の提出) によ
要請される可能性が高い。
ることとしても差し支えない。
図表2 日雇い派遣禁止の影響
高齢者
0.8
−%−
学生 (※1)
19.0
禁止対象 (例外規
定対象外) (※3)
53.6
世帯・本業年収
500万円以上 (※2)
26.6
資料出所:リクルート ワークス研究所 「第2回日雇い・短期派遣労働者の就業実態調査」
特別集計
<分析データの概要>
2011年7∼9月のフルキャスト社での主たる雇用契約が 「1カ月以内」 と回答した3549人
を集計
※1:夜間学生を含む学生数から算出
※2:世帯月収もしくは本業収入が月収40万円以上の割合から算出
※3:例外規定に当たる18業務の従事者の数は算出していない (フルキャスト社の日雇
い派遣では、 18業務従事者は非常に少ないため)
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問題研究
収入要件は前年の収入により確認すること
とするが、 当年の収入が500万円を下回るこ
とが明らかとなった場合は例外として認めら
れない。
なお、 例外要件に該当するかどうかの確認
になり、 労働者の賃金低下か派遣サービスの
手数料値上げにつながる可能性もある。
したがって、 誓約書の提出による運用が常
態化することが想定されるところだが、 この
場合は当然ながら毎回公的書類を確認してい
は、 労働契約の締結ごとに行う必要がある。
ないために、 結果として違法派遣になってし
労働契約の締結時には書類等による確認がで
まう可能性がある。 誓約書の提出による運用
きなかったが、 その後、 書類等による確認が
をする派遣会社が 「指導」 「改善命令」 など
できるようになった場合には、 事後的であっ
の処分を受ければ、 こうした運用が早晩でき
ても書類等により確認することを基本とする。
なくなる可能性は高い。
要件の確認方法のポイントは、
①確認書類としては、 公的書類を基本とする
こと、 やむを得ない場合は日雇い労働者本
人からの誓約書の提出も認める
[3]例外規定自体の継続性に対する懸念
先述したとおり、 今回の改正は、 派遣労働
者の保護を主旨としており、 特に日雇い派遣
②確認のタイミングとしては、 労働契約の締
が禁止された理由は、 派遣という間接雇用か
結ごとが基本とすること、 誓約書の提出で
ら直接雇用に転換させることで雇用管理責任
対応した場合でも書類等による確認ができ
を明確にし、 短期の労働者の雇用環境の改善
るようになった場合には、 事後的であって
が図られやすい状況をつくり出すことにある。
も書類等により確認する
つまり、 「適正な雇用管理に支障を及ぼすお
ということである。
それがない業務」 の場合の例外規定はともか
したがって、 取扱要領どおりの運用では、
く、 「雇用機会の確保が特に困難である労働
公的書類を労働契約の締結ごとに確認するこ
者の雇用継続等に必要な場合」 の例外規定は、
とが必要になる。 日雇い派遣の場合、 1日単
この状況が解消されれば、 当然改正法の主旨
位で、 しかも前日に労働契約を締結するケー
にのっとり、 廃止されるものと解釈している。
スも多く、 基本どおりの運用は、 労働者にとっ
こういった中、 今後日次単位での人員調達
ても非常に大きな負担となる。
具体的には、 一般的に登録型派遣の場合、
はどう図るべきか、 そして日雇い派遣の代替
となるサービスを活用する時の注意点は何か
について考察する。
労働者の多くは登録後、 派遣会社の事業所に
立ち寄ることなく、 自宅や学校などと派遣先
企業の就業場所を往復するのみである。 しか
し、 取扱要領にのっとった運用では、 就業前
にその都度派遣会社の事業所に立ち寄り、 公
的書類等を提示してから就業場所に向かわな
4
ポスト日雇い派遣
サービスについて
[1]労働者派遣サービスの担う機能
くてはならず、 このための時間と交通費を新
労働者派遣というサービスは、 派遣元企業
たに負担しなくてはならない。 また、 派遣会
である派遣会社が、 以下の二つの機能を担っ
社側でも就業前の確認作業はコスト上昇要因
ている。
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●
●
求人需要のある派遣先企業と求職希望の労
日々紹介と雇用管理代行サービス
働者をマッチングする機能
①日々紹介サービス
当該労働者と労働契約を締結し雇用主とし
これは、 求人需要のある企業に対して労働
て労働者の雇用管理を行うという機能
者を必要な日に必要な人数だけ人材紹介する
したがって、 ポスト日雇い派遣サービスは、
サービスであり、 平成24年10月以降、 当社は
①31日以上の労働契約を締結した労働者によっ
もとよりこれまで日雇い派遣サービスを提供
て日雇い派遣サービスを行うか、 ②上述した
していたさまざまな会社でも行っている。 こ
二つの機能を別々に提供する、 すなわち、 日々
とマッチングという機能に関して言えば、 ほ
紹介と雇用管理代行サービスを行うか
ぼ今までどおりのサービスといえる。 加えて、
の
いずれかになる※。
これまで、 マッチングにしか価値を感じてい
※ポスト日雇い派遣サービスには、 請負という選択
なかった企業にとっては不必要なサービス
そ
肢もあり得るが、 請負の場合、 請負事業主に指揮
(雇用管理代行) が削 ぎ落とされることで、
命令権があり、 注文主から独立して業務を行う必
外部コストの流出を抑えることができる。
要があることから、 多くの現場では現実的な実施
は困難だと判断している。
ただし、 間接雇用から直接雇用になること
で、 採用の意思決定、 雇用管理といった雇用
主自らが行う必要のある業務が発生すること、
[2]ポスト日雇い派遣サービスについて
厚生労働大臣の認可事業者しか職業紹介事業
31日以上の労働契約を締結した労働者によ
は行えないこと、 港湾運送業務、 建設業務に
る日雇い派遣サービス
ついては労働者派遣事業同様に職業紹介はで
平成24年9月20日に厚生労働省よりQ&A
きないこと
という形で 「31日以上の労働契約を締結する
には注意が必要である。 また、
短期での就業を希望する労働者の多くは、
派遣について」 のガイドラインが開示されてい
必要な時に必要な額のお金をもらえること"
る。 それによれば、 「31日以上の労働契約を締
に価値を感じているため、 こうしたニーズに
おおむ
結する派遣については、 概ね週20時間以上の
応えることも採用効率の観点からは必要にな
就労時間での労働契約が妥当」 とされている。
る。 したがって、 自社で日払いを行うか、 不
これを受けて、 すべての各都道府県労働局
可能な場合には金融機関が提供する 「前払い」
に確認したところ、 同様の回答を得ている。
サービス (給与の月払い振り込みの前に、 す
また、 あわせて労働契約書に就業日と就業場
でに働いた分の給与の前払い申請、 受け取り
所が明記されない場合の取り扱いも確認した
ができるサービス。 例としては三井住友銀行
が、 ほぼすべての労働局で指導の対象となる
グループが提供している 「即給」 など) を利
ということだった。 したがって、 今までのよ
用するといった手当ても必要である。
うに派遣会社においてタイムリーにシフト調
②雇用管理代行サービス
整するようなイメージの派遣を継続させるこ
これは、 日雇い派遣から日々紹介に転換、
と、 すなわち、 派遣先会社では日雇い派遣と
すなわち直接雇用になることによって発生す
いうサービスを派遣会社から受けることは事
るさまざまな雇用管理業務、 例えば、 労働条
実上不可能と言わざるを得ない。
件通知書の作成、 給与関連業務などを代行す
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[2]マッチング機能の進化による時間単位で
るサービスである。
注意点は、 雇用主が自ら行わなければなら
ない業務、 例えば、 労働条件通知者を手交す
る、 給与の支払い
などは代行させられな
いという点だ。
の生産・シフト調整と就業機会の提供
インターネットの出現と発達によって国際
競争が激化した現在において、 より短いサイ
クルでの生産・シフト調整が必須となってい
る。 しかし、 これまでの派遣の場合は、 派遣
会社が雇用主としてさまざまな事前準備が必
5
今後の可能性
要なため、 1日以上のリードタイムが必要だっ
た。 今回日々紹介サービスを活用すると、 こ
今般の改正法はネガティブに捉えられるこ
れまでの派遣先企業が直接雇用を行うことに
とも多く、 特に派遣会社への影響は大きい
なる。 派遣元としては、 雇用管理責任の一部
(ちなみに、 改正法の施行によって当社グルー
から解放されることで、 よりリードタイムの
プでは売り上げの70%程度が影響を受けるこ
短いサービス提供が可能になる。 つまり、 従
とになる) が、 それでも改正法の施行をネガ
来は事前準備のため1日以上のリードタイム
ティブに捉えるべきではないと考えている。
が必要だったところが、 将来的には就業数時
むしろこれから述べるように、 改正法施行を
間前でのマッチングも可能になり、 生産・シ
きっかけとして、 派遣会社がよりサービスレ
フト調整を時間単位で行うことも可能になる
ベルを上げることで、 企業の生産性・競争力
日が来る。 その結果、 生産性がさらに向上す
の向上を支援し、 また労働者にはよりきめ細
ることは明らかであろう。
かい就業機会を提供していくことが可能とな
るからだ。
一方で急速な少子高齢化社会の進行と価値
観の多様化によって労働者サイドのニーズも、
かつてのように世帯主1人が働くというもの
[1]非正規社員の「給与管理業務」のフルアウ
トソースによる効率化
から、 世帯構成員それぞれが働く、 しかも働
きたい時、 働きたい時間だけ働く
という
上述した雇用管理代行サービスは、 他社の紹
スタイルに変化している。 先述のとおり、 間
介する労働者や自社採用しているアルバイトに
接雇用から直接雇用に転換することでリード
も対応が可能である。 したがって、 正社員以外
タイムを短縮し、 時間単位の生産・シフト調
のすべての従業員に対象範囲を広げることでア
整を実現させ、 例えば2∼3時間の就業機会
ルバイトの給与管理業務から一切解放されるこ
を提供する、 まさにこうした対応が可能になっ
とも可能になる。 アルバイトの給与管理業務
ていくだろう。 したがって、 9時から17時で
は、 就業形態が多岐にわたるため、 システム化
の就業は無理だけれども、 1日2∼3時間な
しても投資効果が出ないケースが多い。 人事担
ら働ける、 フルタイムでは働けないが、 たま
当者が手作業で処理している結果、 効率化が進
たま空いた時間で小遣い稼ぎをしたいという
まないケースが大半だ。 まさにこの部分をす
意向を持った主婦、 高齢者、 学生などにも今
べて代行させることができれば、 人事部門の
後は就業機会を提供することが可能になって
効率化を一気に推し進めることが可能になる。
いくだろう。
あ
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必要である。 実際、 導入までにかかる期間は、
6
最後に
それぞれの企業によってかなり差があるが、
おおむね1カ月程度の期間を要することが多
これまでの派遣先企業が、 日雇い派遣から
い。 以下に、 日雇い派遣から代替サービスへ
日々紹介や雇用管理代行サービスに切り替え
転じる際の主な検討事項、 確認事項をまとめ
る際には、 雇い入れ手続きや労働条件の検討、
た[図表3]。
給与計算方法や給与支払い方法の確認などが
図表3 代替サービス導入までの主な検討・確認事項
項
労
働
目
条
内
件
●
雇い入れ手続き
●
●
給与計算方法
給与計算結果の
データ授受方法
前払いサービス
●
●
●
●
前払い資金準備
118
●
容
サービス活用企業
における一般的な
担当部門
時給や手当などの労働条件の検討
利用部門
人事部門
直接雇用する上での雇い入れ手続きの検討
(必要書類など)
日次での対応が必要となるため、 短期雇用ということを勘案して
極力簡略化することが重要
人事部門
法務部門
締め日や支払い日、 計算時間、 端数処理など、 給与計算方法の確
認
人事部門
給与計算結果の授受方法の確認
(インターネットバンキング等への取り込みなど)
経理部門
「前払い」 サービスの導入の検討
「前払い」 サービスを導入する場合には、 「前払い」 サービスの利
用申し込みや口座開設の検討
人事部門
経理部門
「前払い」 サービスを導入する場合には、 前払い資金準備の検討
(自社で日払いをするためには、 日次での小口現金準備が必要)
経理部門
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