NECユーザー事例 先進のIT技術導入で お客様満足度の向上を 〜関西アーバン銀行における NECの携帯渉外支援システムの導入〜 関西アーバン銀行 事務統括本部長 熨斗 大阪の中心地・心斎橋に本店を構える関西アーバン銀 敬氏 関西アーバン銀行 事務統括部 次長 山中 照久氏 メガバンクでは、渉外員はお客様への提案活動を中心 行は、三井住友銀行グループに属する第二地方銀行です。 とした営業活動に専念することもできますが、都市型の地 都市型リテールバンクとして、地域金融機関の特徴である 方銀行としてきめ細かなサービスを提供しつつソリューシ きめ細かなサービスに加えて、メガバンクの先進性を併せ ョン営業を強化すべき当行の場合は、中小企業のお客様 持ち、お客様に付加価値の高い金融サービスを提供して との集金などの日常業務もこなしつつ、先進のITを活用 います。 して営業活動を行っていかなければなりません。しかし、 また経営戦略の一つにIT戦略を掲げ、最新鋭の業務シ 従来からある手書きの書類を使用しながらパソコンなどの ステムや行内情報インフラの充実を積極的に展開しており、 高度な新しいツールを同時に使いこなすことを要求するこ 07年7月、携帯電話を活用した渉外支援システムの試行 とは、渉外員にとっては大きな負担になると認識していまし を開始し、集金・預り業務における預り証発行の携帯電話 た。一方、業務効率化の観点からは、帰店後の事務手続 でのシステム化を邦銀で初めて実現しました。 きの時間を、少しでもお客様に対応するサービス提供の時 間に変えることはできないだろうかと検討していました。 また、コンプライアンス強化という流れの中では、業務の チェック体制をどう効率的に強化するかという点も課題と 関西アーバン銀行として新しい渉外支援システムを検討 してありました。手書きの伝票を人手でチェックするのでは するに至った背景としては、都市型の地方銀行としていか コストもかかりますし、ミスも発生します。ITをうまく活用す に営業活動の生産性をあげるのかという課題があり、多く ることで無人化できれば、この点でも合理化や精緻化が推 のベンダーから営業支援システムの提案を受け、ITを活用 進できるのではないかと考えました。 した効率的な営業活動を目指して、新しいシステム導入の 検討を開始しました。 18 FIT No.26 2007 Autumn 合理化のためのIT活用 にこだわった中で、パソコン やハンディ端末、スマートフォンと呼ばれるようなものなど、 いろいろな端末を考えました。 メガバンクではパソコンを携帯してお客様へ説明に行くケ ースも多いと聞いています。つまり、いかに情報を提供する かということが大切なのです。これは技術的には目新しい さらに、 ①いつも行う業務で操作に慣れる ②必要な情報は都度アクセスして入手するということを体 で覚える ことではなく、当行の渉外員も必要があれば実施しており ③使ってみて楽になったと実感する ます。しかし、地銀の渉外営業はそればかりではありませ ④慣れてきたら徐々にメニューを増やしていく ん。集金のような日常業務をこなしながら、IT端末を活用 これが、携帯電話が本支店と渉外員をつなぐツールで した取引も出来ないかという問題意識を持っていました。 あるということを理解してもらうために必要なステップであ ところが、現場では、業務によっては似つかわしくないと り、このシステムが定着するための重要なポイントでした。 か、パソコンなどの端末だけで日常業務をこなすのは無理 そこで、まず慣れてもらうために、お客様からお預かりし ではないかといった抵抗や、ほかの端末を用意したほうが たものを支店に持ち帰って渡すという、日常業務の作業動 いいのではないかという議論もあったのです。 作線上に組み込んで使いこなしてもらい、携帯電話で業務 を行うということに慣れてもらうというステップの検討を始め ました。 今回実現した機能は次の4つです。 しかし、普段パソコンなどを使いなれていない人にいき なりやらせてもうまくいきませんし、複数端末を使いこなす ことはできません。そんな高度なツールを使わなくても営 業活動はできると認識している渉外員にツールをいくつも ①携帯電話とモバイルプリンタによる集金・預り処理のシス テム化 ②預り証発行の都度、携帯電話からサーバーに集金・預 り情報を送信 持たせても、 「手間がかかるもの」 ・ 「慣れないもの」は使わ ③PCブラウザからの各種帳票表示/出力機能 れなくなっていきます。これでは宝の持ち腐れです。 渉外 ④税務署から印紙税申告納付の承認を受けた預り証を発 支援システムを導入しよう と考えたときに、本当にこれが 行(写真1) 定着するのか、定着しないまま終わってしまうの 写真1:渉外員が持ち歩く携帯電話とモバイルプリンタ ではないかということが一番憂慮した点でした。 ですから、 「日常的に毎日起こる業務で使って もらわなければならない」 という結論に達しまし た。 いくつか端末の候補がある中で、当行の場 合は、営業活動をするマネーアドバイザー (MA) の女性が選定のポイントとなりました。資料をた くさん持ち、さらにパソコンのような重くて大き なものを持ち歩いても使いこなせません。日頃 MAの方たちが使っていて違和感のないもの、 使いやすいものといえばやはり携帯電話です。 早く慣れてもらうためには、身近なツールを使う のが近道と考え、携帯電話を選択しました。 FIT No.26 2007 Autumn 19 さないことで解決しました。業務が終わると携帯電話には 残らないので、万が一携帯電話を紛失した際の情報漏え このシステム導入に当たって特にこだわったのは、 「安全 いリスクが減ります。また、担当者ごとに利用できるメニュ で使いやすい」ということです。 ーや参照できる情報の範囲をあらかじめ決めて設定して ①ガイダンス機能 おけるようになれば、持ち出し申請などの許可をいちいち 今回導入したシステムは、決められた手続きについて入 力ミスがあると処理が完了できないガイダンス機能がありま 取らなくてもよくなります。 ⑤事故や災害への対応 す。過去に発生したミスを分析してみて、ミスが起こりそう 地震などの天災、事故などがあったときの対応として な箇所で確認漏れや不整合があった場合は、エラーメッ GPSを取り入れています。業務継続の観点を考慮し、万が セージが表示されるようなガードをかけました。意識しなく 一地震があったとき、あるいは強盗に遭ったときなどに所 ても、ガイダンスどおりに確認することで、発生しているミス 在地確認ができるほか、SMS(ショートメッセージサービス) の7割は防げるのではないかと考えています。また、いちい を利用した一斉メール配信機能を利用して本部からサポ ち手順を考えなくてもよいので、作業効率の向上が期待さ ートできます。 (図1) れます。 ②入力サポート・学習機能 文言の入力は、いちいち入力画面を開いて自分で入力 しなくてもプルダウンで選択できるように、あらかじめ選択 開発の時間に余り余裕がなく、使いやすさ、安全性も兼 肢を本部側で設定しておくようにしました。意識しなくても ね備えたシステムを構築するという困難なプロジェクトであ サーバーにある情報にアクセスするという行為に慣れてい ったことは当初から見えていました。当行の場合は、経営 きます。また、自分がよく使うプルダウンの選択肢は学習機 陣がIT活用に積極的で使い勝手などに関しても助言があ 能によってプルダウンリストの上位に来るようにしました。書 ったこと、またその決定のスピードが速かったことが、一番 くよりも早い、楽になったということが実感できます。実際 の成功のポイントといえます。 に動かしてみて定着するかどうかは、この「楽になった」 と 思ってもらえるかどうかにかかっています。 すいと言ってもらうためには、現場の声を聞くことが一番で ③少ない画面遷移 した。試行店の支店長をはじめ渉外員や内勤の職員に積 いかに画面をわかりやすくするか、画面遷移を少なくす るかという点でも苦労しました。次々画面が変わって自分 が何をしているのかわからなくなるということを避けるため、 20 システムそのものに関して言えば、現場の営業に使いや 極的に使っていただき、現場でなければわからない貴重な 指摘を出してもらえたことも大きな秘訣でした。 その現場の声をシステムへ反映するに当たっては、端末 できるだけ一枚の画面で収まるようにしました。画面遷移 を供給してくれたKDDIやブラザー工業、システム全般の が少なくなることで、処理スピードも上がりました。 サポートをお願いしているNECから全面的な協力をいた ④アプリ方式による安全性の確保 だき、カスタマイズや細かい点まで柔軟に対応してもらうこ 顧客情報が如何に残らないようにするか、万が一残って とができました。情報系の基幹システムとの連携を担当し しまったときにいかに捨てるか、つまり、お客様の情報が ていただいたNECには、合理化面で大きな成果をあげて 漏れないようにするにはどうしたらいいかという観点から、 いただき感謝しています。厳しいお願いをすることもありま セキュリティの確保には最も神経を使いました。必要な情 すが、今後も勘定系を支えるカウンターパートナーとして、 報は都度サーバーのデータを参照し、端末には情報を残 今回のような周辺のシステムについてもスピード感のある対 FIT No.26 2007 Autumn 図1:利用イメージ 応を期待しています。 このように、経営陣の早い意思決定と営業店・ベンダー の全面的な協力があって初めて実現できたシステムだと評 価しています。 安心して取引が出来る」 という評価をいただけることを目 指してシステムをレベルアップしていきます。 セキュリティという観点でも、渉外員にツールとしての有 効性を認識させることで定着化を目指します。リスクとして あった紙の資料の持ち出しやその情報漏えい防止に使う 神経、そのための手続きの煩雑さから解放し、 「必要であ ればいつでも安全に情報が参照できる、この携帯電話さ IT化によって期待することは、行員が「ミスをしない為 に、チェックをしたり注意を払ったりする負担」を減らして えあればお客様のニーズに十分応えられる」 という環境に 変えたいと考えています。 「楽になった」 と感じるだけではなく、 「何も考えなくてもミス 今年度中に全店展開を予定しており、業務メニューとし は発生しない」環境を作ることだと考えています。手続きは てもまだまだ拡充していく予定ですが、渉外員にとってこの 機械に任せて正しい事務を行い、きちんと印字された預 携帯電話が「自分と本支店を繋ぐサポーター」 という意識 り証を発行すること、さらにそれがシステムとして管理され の元で使ってもらえるようになれば、あとはメニューを増や ていることをお客様にきちんとご確認いただくことが重要な すだけです。この携帯電話での預り証の発行システムから のです。 始まって、ビジネスのスタイルは大きく変わっていくと期待し ベテランほど取引先の情報は頭の中に入っており、こん ています。 な情報ツールは要らないと言う声も聞こえてきます。今後 は、今回のシステムをレベルアップすることで、行員には情 報の記憶に力を注ぐのではなく、お客様のニーズを聞いて 最適な商品・サービスを提供できることに専念してもらいた いと考えています。 「関西アーバン銀行の渉外員は全員事 務ミスがなく、行動がシステムで管理されていて透明度が 高く安心感がある。また、いろいろな提案をしてくれるので、 関西アーバン銀行 本店所在地: 大阪市中央区西心斎橋1丁目2番4号 創 業: 1922年(大正11年) 7月 資 本 金: 370億円 店 舗 数: 96支店他 7出張所 従 業 員 数: 1,735人 http://www.kansaiurban.co.jp/ FIT No.26 2007 Autumn 21
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