3D-CAD と汎用 CNC 工作機械による歯車のデザインと製造の技術研究

平成17年度 修士論文要旨
3D-CAD と汎用 CNC 工作機械による歯車のデザインと製造の技術研究
物理工学専攻 MK0401 嵯峨 拓人
(指導教員 高 三徳)
1. 緒言
近年、製造業・建築業において3次元 CAD/CAE /CAM
システムが急速に普及し始めている。このシステム
は設計・解析・生産という各工程を一貫化すること
で、全体を効率よく管理・統合しようというもので
ある。一方、歯車は伝達部品として機械や電気製品
に多く使用されている。従来、標準歯車は2次元の
設計図面で表示され、ホブ盤などの専用歯切り盤に
より加工される。しかし、最近、ロボットやコンピ
ュータとその周辺機械には、特殊な歯車または歯つ
き部品の応用が多くなっている。その試作段階では、
専用歯車加工の工作機械の導入より、3D-CAD と汎用
CNC 工作機械使用のほうが時間的にもコスト的にも
大きいメリットがある。そこで、2003 年より、研究
室と株式会社アラオカとでは、3D-CAD と汎用 CNC 工
作機械による歯車のデザインと製造の技術に関する
共同研究を始めた。表1に示すようにアラオカから
当研究室への特別寄付金研究および社内設備投資が
行われた。本人はこの共同研究のメンバーであり、
本修士論文の研究内容がこの共同研究の一部である。
一概に適応できないものの予備知識として掲載した。
特に角速度比が重要である。第3章「非円形歯車の
理論」では、非円形歯車について述べ、その設計計
算を機構学的・数学的に解説した。従来の設計方法
では実用に不向きな点や被動歯車の複雑な計算があ
るため、より簡易で実用的になるような方法を提案
した。第4章「歯車の設計」では、歯車設計に使用
されるインボリュート曲線出力ソフトの検証、歯形
の DXF データの出力ソフトの開発、特殊な形状の歯
車の設計について述べた。第5章「歯車の CAM」で
は、マシニングセンタおよび CNC ワイヤカット放電
加工機による歯車の加工を行った。第6章「考察」
では、非円形歯車設計のソフト化と検証方法につい
てまとめ、高減速傘歯車の耐久度などについて述べ
た。また、今後の課題を示した。第7章「結言」で
は、本研究についてまとめた。
3. 主な研究結果
図1に示すように、歯車創生の仕組みをシミュレ
ーションにより確認できた。
表1 特定寄付金研究と社内設備投資の一覧
(a) 円形歯車
図1
2. 研究内容および論文構成
本論文では、歯形の基礎理論、歯形曲線設計ソフ
トウェアの比較、歯車の3次元ソリッドモデリング
方法、非円形歯車の理論の改良とその法線を出力す
るソフトの開発、はすば歯車のねじれ理論の検証、
高減速比ベベルギアなどの特殊形状の設計・モデリ
ング、汎用 CNC 工作機械による歯車加工の技術、歯
車開発への応用・試作に関する研究を報告した。
本論文の構成は次のとおりである。第1章「序論」
では、本研究において歯車の研究と開発を行った背
景について述べ、研究の概要と目的を明らかにした。
第2章「歯車の基礎理論と応用」では、伝達装置で
ある歯車の基礎理論を示し、非円形歯車に対しては
(b) 楕円形歯車
歯車の創生シミュレーション
2 次 元 歯 形 設 計 ソ フ ト (KHK 、 Rhinoceros 、
InvJww、楕円系歯車歯形設計ソフト)、3次元 CAD
ソフト(HyperCAD)および独自に開発したソフト
を使用して、図2に示す歯車の3次元モデルを完成
し、各種の歯車のモデリング手法および一般的プロ
セスについてまとめた。
(a)
平歯車-フランジ-プーリ
(b) ヘリカルギア
(c) 傘歯車
(d) プーリ継ぎ手
(e) ギア-ナット
(f) 歯のクラウニング
(a) 加工シミュレーション
(c) 楕円形歯車の加工品
図4
(g) 楕円形歯車
図2
(h) おにぎり型歯車
完成した歯車の3次元モデル
CAM ソフト(HyperMILL)を用いて、3次元モ
デルのデータを NC プログラムに変換し、図3(a)
に示すような NC カッタパスを作成し、同図(b)のよ
うに加工シミュレーションを行い、NC プログラム
をマシニングセンタに転送して同図(c)のような歯
車をボールエンドミルで試作した。また、CNC ワイ
ヤ放電加工機を使用して、図4に示すように円形お
よび非円形歯車の試作を行った。なお、共同研究会
社の協力により、試作品の精度を測り、誤差の発生
要因を分析し、改善策を検討した。
(b) 加工シミュレーション
(a) NC カッタパス
図3
(c) 加工品
マシニングセンタによる歯車の試作
(b) 加工風景
(d) おにぎり歯車の加工品
CNC ワイヤ放電加工機による歯車の試作
4. 結言
本研究では、歯形の基礎理論、歯形曲線設計ソフ
トウェアの比較、歯車の3次元ソリッドモデリング
方法、非円形歯車の理論の改良とその法線を出力す
るソフトの開発、はすば歯車のねじれ理論の検証、
高減速比ベベルギアなどの特殊形状の設計・モデリ
ング、汎用 CNC 工作機械による歯車加工の技術、非
円形歯車開発への応用・試作に関する研究を行った。
主な研究結果は次のとおりである。
(1) 歯形 CAD ソフトウェアによって設計精度が異な
ることを調べた。一般の歯車図面作成でなく
CNC 加工のための歯車モデリングには、精度の
高い歯形 CAD ソフトを使用しなければならない。
(2) はすば歯車のねじれ理論の検証を行った結果、
ねじれ角度誤差の発生する要因としては、切削
力・切削熱による変形、切削びびり、送りの加
速と減速による慣性等が考えられる。
(3) 歯車、特に特殊な歯車の試作段階では、専用歯
車加工の工作機械の導入より、3D-CAD と汎用
CNC 工作機械使用のほうが時間的にもコスト的
にも大きいメリットがあり、有効な方法である。
関連の技術およびプロセスの研究を完成した。
(4) 今後の研究課題として、汎用 CNC 工作機械によ
る歯車加工の効率および精度の向上、微小歯車
の加工方法、非円形歯車の評価方法および実用
化等がある。
本研究の結果は株式会社アラオカの歯車の
CAD/CAM に応用されている。
主な参考文献
1)香取秀男 著、非円形歯車の設計・製作と応用、
日刊工業新聞社(2001)。
2)森田均 著、機構学、サイエンス社(1984)。