平成 18 年度事業報告概要 事業の概要 当事業団は、開発途上国の人材育成に係る協力支援に対する強い要請と日本の中小企業からの外 国人研修生受入れと海外進出を通じての国際化の要望に応えることを目的として平成 3 年に設立 されて以来、これまで 15 年間にわたり、青少年を中心とした人材の健全な育成、国際相互理解の 促進、開発途上国に対する経済協力、わが国の社会と産業の健全な発展等に向け努力を重ね、内外 から高い評価を受けてきたところである。 また、昨今技能実習制度について主として団体監理型の研修生受入れにおいて不正行為が多発し ておりマスコミ等から強い批判が出されているが、当事業団においては他の受入れ団体の模範とな り、広く研修・技能実習制度の適正な実施と運用に係る周知を図り、不正行為事案の一掃、失踪事 案の根絶等研修・技能実習制度の適正かつ円滑な運営を図ることに全力を傾注した。 以下、実施した事業内容について報告する。 1 人材育成及び技術・技能者交流に関する調査研究関係事業 開発途上国の調査、外国人研修生の在留状況の把握等により国際相互理解の促進と我が国の 経済社会の健全な発展に資することを目的に、インドネシア、タイ、ベトナム等の経済関係情 報をはじめ、政治・文化等情報についても、現地駐在員事務所、国内関係機関等を通じ収集し た情報や研修生等の活動状況等について広報誌等を通じて広く中小企業等に無料で提供した。 また、インドネシア労働移住大臣、タイ労働大臣、ベトナム労働・傷病兵・社会大臣等とこ れらの国における人材育成について意見交換を行った。各大臣からは研修・技能実習制度は自 国の経済発展を担う人材育成に必要不可欠なものであり、国家建設の柱として極めて重要な役 割を果たすものであるので、当事業団を通じての研修生派遣受入れについて引き続き強く期待 している旨の発言があった。 2 人材育成及び技術・技能者の交流に関する講演会等の開催関係事業 (1) 「講演会」の開催 1 中小企業の国際化を支援し、開発途上国への理解促進を図るとともに広く一般の方々に対 し研修・技能実習制度の普及を図り、もって地域社会の健全な発展と外国人に対する差別、 偏見の防止及び根絶に資するため、3 月 5 日、「アイム・ジャパン講演会」を開催した。講演 会には、各界から 80 余名が参加し、まずインドネシア大使館一等書記官の最近のインドネシ ア情勢についての説明のあと、関西学院大学教授井口泰氏の「動き出した外国人政策の改革 と技能実習制度の展望」と題する講演を行った。講演は外国人労働者の受入れに関する政府 の政策、研修・技能実習制度の制度趣旨、目的、現状分析及び今後の展望等研修・技能実習 制度の正しい理解と普及に役立つ内容であるとともに、現在もっともマスコミ等で話題にな っている制度改革の見通しについての演題ということもあり、聴衆は極めて熱心に聴き入り、 質疑応答においても予定時間を大幅に超える数の質問が出され、関心の深さが伺われた。 (2) 人材育成支援事業 インドネシア及びタイの国情、生活慣習、国民性等についての十分な知識と理解を深め、 国際相互理解の促進、外国人への差別、偏見の防止及び根絶並びにより良い社会の形成促進 に資することを目的に、在日インドネシア及びタイの各大使館から公使、一等書記官等を講 師に招き、インドネシアについては本部、静岡支局及び関西支局、タイについては長野支局、 東海支局及び九州支局で「人材育成セミナー」を開催した。 3 人材育成及び技術・技能者の交流に必要な外国人研修生受入れ関係事業 (1) 受入れ数 本年度の研修生受入れ数は、2,456 名となった(インドネシア 738 社 1,850 名、タイ 180 社 521 名、ベトナム 12 社 85 名)。 (2) ベトナム研修生の本格的受入れ開始 平成 18 年 1 月にベトナム研修生を試験的に受け入れたが、同研修生の研修成果及び在留状 況ともに良好であったこと、また、同国からの本格開始についての強い要請を受けたことか ら、同国の人材育成政策に協力するため、平成 19 年 2 月から本格的に受入れを開始した。 (3) 受入れ企業に対する監理・指導の徹底 研修生受入れ企業(以下「受入れ企業」という。)における不正行為事案の発生、特に不 法就労者の雇用は、犯罪の温床や治安の悪化を招くものであり、研修・技能実習制度の根幹 を揺るがす重大な問題であることから、当事業団が事務局を務めている外国人研修生受入れ 2 団体中央連絡協議会において不正行為撲滅キャンペーンを行い、犯罪の防止及び治安の維持 を図るとともに、地域社会の健全な発展促進のため、適正な研修・技能実習の実施を呼びか けたところである。 そこで、同協議会の中心的構成員である当事業団としても、他の受入れ団体の模範となっ て不正行為事案の根絶を期すべく組織を挙げて、次の対策に取り組んだ。 ア 「受入れ企業総点検月間」における総点検の実施 イ 労働関係法規の遵守に関する要請文書の送付 ウ 研修・技能実習の実施状況及び不法就労者雇用の有無等の実態把握 エ 職員に対する第一次受入れ機関の役割・責務についての研修の実施 オ 適正な受入れ環境の整備を図るために研修生受入れ申込企業に対する「審査委員会」に よる適格性等の総合的な確認 (4) 駐日インドネシア大使及び在大阪同国総領事による優良技能実習生に対する賞詞の授与 優秀な技能実習修了生 1,359 名に対し賞詞が授与された。 (5) 集合研修 集合研修では、通常の日本語教育、生活習慣教育等の他に、安全衛生意識の高揚を図り、 労働災害防止の徹底を図るため、安全衛生教育として床上操作式クレーンの運転(吊り上げ 荷重 5 t未満)及びアーク溶接作業の特別教育(学科部分)を実施した。 (6) 研修生の健康管理 入国したすべての研修生に対し健康診断を実施するとともに、健康管理及び保健衛生指導 の徹底を図った。 (7) 研修生・技能実習生からの相談電話への対応 研修生・技能実習生(以下「研修生等」という。)の悩み事等の相談について迅速で親身 な対応を図るため、イブクー(日本在留のインドネシア人婦人をカウンセラーとして委嘱) による電話相談及び当事業団本部相談コーナー(フリーダイヤル)を通じて相談に乗った。 (8) 「受入れ企業懇談会」の開催 研修・技能実習制度の適正な実施と運用を図るとともに、法務省の「研修生及び技能実習 生の入国・在留管理に関する指針」等の周知徹底を図るため、全国6ヵ所で「受入れ企業懇談 会」を開催した。 (9) 「研修・生活指導員懇談会」の開催 3 研修・技能実習制度の適正な実施と運用を図るため、受入れ企業の研修・生活指導員を対 象に全国7ヵ所で「研修・生活指導員懇談会」を開催した。 (10) 研修生等の安全衛生教育対策の推進 安全衛生意識の高揚と労働災害防止の徹底を図るため以下の諸対策を実施した。 ア 技能講習受講への支援 イ 第 8 回研修生安全衛生大会の実施(全国 7 ヵ所で開催、研修生等延べ 1,526 名が参加) ウ 受入れ企業に対する安全衛生ステッカー及び研修生等に対する安全手拭の配付 エ 安全週間、衛生週間等に当たり災害防止のための文書による指導 オ 自主点検の実施依頼及び取り纏め (11) 作文コンクールの実施 研修生等の日本語能力の向上を図ることを目的とする第 9 回作文コンクールを実施した。 応募は、312 編に及び、最優秀賞 1 名、優秀賞 2 名、優良賞 3 名、佳作 4 名を選出し、表彰 状及び副賞を授与した。 (12) 安全衛生ポスターコンクールの実施 研修生等の安全衛生意識の高揚と災害防止に資することを目的とする第 2 回安全衛生ポス ターコンクールを実施した。応募総数 51 作から最優秀賞 1 名、優秀賞 2 名、優良賞 3 名、佳 作 5 名を選出した。 (13) フォトコンテストの実施 研修生等の日本での思い出作りの一環としてフォトコンテストを実施した。応募総数 125 作から最優秀賞 1 名、優秀賞 2 名、優良賞 3 名、佳作 4 名を選出した。 (14) 日本語能力試験の受験奨励 毎年 12 月に行われる日本語能力試験の受験を奨励するため、受験希望者に当事業団負担に よる願書の無料配布を行った。その結果、1,844 名が受験し、合格者は 866 名(1 級 1 名、2 級 18 名、3 級 795 名、4 級 52 名)であった。 (15) 研修生等福利厚生活動 研修生等が一堂に集い、交流を深め、研修又は技能実習中に生じる悩みやホームシックの 解消を図りできるだけ快適な 3 年間を過ごせるよう「研修生休日の集い」を合計 34 回開催し た(延べ 3,900 名が参加)。 この集いには、駐日インドネシア大使、在大阪同国総領事、駐日タイ公使参事官等も出席 4 され、研修生等を激励された。 (16) 国際研修コンサルタントの活用 国際研修コンサルタントを毎月 2 回受入れ企業に派遣し、研修・技能実習環境の実態把握 に努めるとともに、当事業団担当職員と協力しつつ、研修生等からのトラブル等の早期解決 に努めた。 (17) 失踪防止対策 失踪は研修・技能実習制度の目的に反するとともに、社会の健全な発展を妨げるものであ ることから、当事業団挙げて失踪防止に取り組むとともに、派遣国に対しても、派遣国側で 講ずべき対策について、的確な対応を強く要請した。 (18) 研修生等の入国、在留等の手続支援 適正かつ円滑な研修・技能実習制度の推進を図るために、次の諸事項を実施した。 4 ア 研修生入国手続の支援 イ 「生活指導説明会」の開催 ウ 研修生等に係る在留等の手続きの支援 エ 技能実習修了式及び帰国報告 オ 研修・技能実習を修了して帰国した者(以下「帰国生」という)に対する就職支援活動 中小企業の海外進出に関する調査研究関係事業 (1) 情報資料の提供 開発途上国に進出を希望する中小企業等に対し、有益かつタイムリーな海外進出の関係情 報を提供することにより、国際相互理解の促進及び海外投資による開発途上国に対する経済協 力を図ることを目的に、本年度は、インドネシア及びタイに関する投資環境(投資関連法令、 税制、申請方法、進出企業等)を掲載した「インドネシア・タイ投資情報」を年 12 回作成し、 広く一般に無料で提供した。 また、インドネシア、タイ、ベトナム等へ進出を希望する中小企業等の投資相談及び海外 進出企業による帰国生の採用等についての相談に応じるとともに、無料で外部専門機関の紹介 を行った。 (2) 現地訪問団の派遣 国際相互理解、特にタイに対する理解の促進を図るとともに、外国人への不当な差別又は 5 偏見の防止及び根絶並びに海外投資及び海外地域への経済協力の促進を目的に、受入れ企業、 タイへの進出希望企業、その他一般を対象に、9 月 15 日から 23 日までタイ大使館労働担当官 事務所と協力して「第 2 回タイ労働事情調査視察団」を派遣した。現地では労働省等訪問、 日系企業視察、タイ東北部を中心に現地事情視察、研修生等の家族訪問等を行った。 参加者は、いずれも現地を自分の目で見て、手で触れることで強い印象を受け、今後の事 業展開に向けて大変参考になったとの意見が多かった。 (3) 「経済・投資・労働環境セミナー」の開催 インドネシア、タイ、ベトナム等の開発途上国への海外進出を検討している中小企業を支援 するとともに、開発途上国に対する経済協力及び人材育成、公正かつ自由な経済活動の機会 の確保、促進及びその活性化に資することを目的に、3 月 5 日、総評会館において、広く一般 を募り「経済・投資・労働環境セミナー」を開催した。タイ大使館公使による現地事情の解説 のあと、アジア経済研究所による「タイ・インドネシア・ベトナムの投資・経済概況」、タイ 進出企業による「タイ進出と研修生の活用事例」の講演を実施した。その後の質問も実務に即 した内容で、大変活発に行われた。講演内容はいずれも最新のデータの紹介等分かりやすい ものであり、海外進出に役立つものであった。 5 企画広報関係事業 (1) 広報、宣伝活動 雑誌、業界紙等に対する広告、寄稿、ホームページへの掲載、各種パンフレットの配布等 により、当事業団の事業内容等を一般に普及、浸透させるとともに、開発途上国の人材育成及 び国際貢献並びに中小企業の国際化の促進の必要性を社会一般に対し認識させることを目的 とする広報、宣伝活動を行った。 これにより、国際相互理解の促進、開発途上にある海外の地域に対する経済協力、外国人 への深い理解の醸成及びより良き社会形成の推進の実情についての周知を効果的に実施する ことができた。 (2) 「IMM Japan News」及び「みんなのひろば」の発行 広く一般への研修・技能実習制度の啓蒙及び研修生等の研修状況への理解を図り、もって 外国人に対する不当な差別及び偏見の防止、国際相互理解の促進並びに地域社会の健全な発 展を目的に、「IMM Japan News」については、隔月刊として 76 号から 81 号を発行、各所に 6 配布した。 また、研修生等の日本語能力向上は研修・技能実習の効果向上に役立つとともに、国際相 互理解を深め、研修生等の地域社会との交流を深めることにつながることから、研修生等の 日本語能力向上を図ること等を目的に、研修生等向けの情報誌「みんなのひろば」を隔月刊 として 37 号から 42 号を発行した。 なお、「みんなのひろば」については、全文にルビを振り外国人にも理解し易い内容とし ていることから、研修生等を中心に大変好評であった。 6 その他 平成18年5月27日に発生したジャワ島中部地震により被災したインドネシア国民に対する支援 のために、受入れ企業、研修生等、国際研修コンサルタント及び当事業団関係者に義援金を募り、 寄せられた義援金を、インドネシア労働移住大臣に直接お届けした。 7
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