守田健太朗

留学生レポート
スコットランドの稀有な体験
イギリス/グラスゴー大学
守田健太朗(法学部4年)
2012 年 1 月から 12 月まで一橋大学から派遣され、グラスゴー大学で交換留学生をしておりま
した守田健太朗と申します。今回のレポートではグラスゴー大学・日常生活・文化の魅力につ
いて書きたいと思います。
1、スコットランドとイングランド
スコットランド、グラスゴーと聞いて何を想像するでしょうか?音楽が好きな人はバグパイ
プ、サッカーが好きな人は仲村俊輔・セルティック、映画好きな人にはショーン・コネリ―、
ユアン・マクレガ―を思い浮かべるかもしれません。しかしほとんどの日本人にとってスコッ
トランドとはなじみのない、どこの国かもあやふやなエリアだと思います。実際私も派遣され
るまでスコットランドのことは一切知りませんでした。
まず日本語では普段UKのことをイギリスと呼び、大半の日本人にとってスコットランド・
ウェールズ・北アイルランド全てがイギリス(イングランド)という認識があると思います。
しかしこの四つのエリアではそれぞれの出身地域が重要な意味を持ちます。特にスコットラン
ド人はスコットランド人としての誇りが非常に強く、
もしEnglishと呼んでしまおうものならと
んでもない怒りをかうことになるでしょう。文化面だけでなく、スコットランドでは法律・紙
幣のデザイン・教育制度など多くがイングランドとは異なり強い自治(独立への道?)が進ん
でいます。特に今年スコットランドの独立選挙が2014年に行われることが決定し、ナショナリ
ズムがさらに高揚するかという重要な時期にきています。
2、文化の中心グラスゴー
私が一年間勉強した街グラスゴーはこのスコットランドで最大の街ですが、首都ではありま
せんし、主要な観光地でもありません。しかしスコットランドの中で一番ユニークな街です。
第一が言語です。スコティッシュ(スコットランドアクセント)は訛りが強いことで有名で
すが、グラスウィジャン(グラスゴーアクセント)はその中でも最上級、もはや英語には聞こ
えません。Rの発音は巻き舌、長母音が短母音になる、発音されない音がある、単語自体が違
うなど異なる点は無限に存在します。アメリカ人やオーストラリア人などネイティブの友達も
彼らが何を言っているかあまり理解できないといっており、私も当然ながら最初にグラスゴー
についたときは、何語を話しているのかさえもわかりませんでした。しかしこんなアクセント
ですが、留学を終えようとしている現在はなぜか愛着がわいていますし、他のイングランドの
アクセントが非常に簡単に聞こえます。
第二に人のあたたかさ、フレンドリーさがあります。どこにいても知り合いを作る環境は整
っています。実体験ですが、道端、カフェ、レストラン、タクシー、パブなど、あらゆるとこ
ろで年齢に関わらずグラスゴー人は話しかけてきます。
第三に新しいヨーロッパの若者文化の中心地という側面もあります。特に音楽とアートに関
するイベントは一年中ほぼ毎日たくさん見つけることができます。安価だが質の高いライブミ
ュージックはイギリスの中でも有名であり、海外の若手ミュージシャンを惹きつけています。
多くの学生はほぼ毎週このようなライブが行われるパブや箱に通いつめます。
3、グラスゴー大学
授業
グラスゴー大学は中心部からメトロで 10 分の学生街、
高級住宅地の近くに位置しているグラ
スゴーで一番大きく、歴史のある大学です。その歴史はイギリス国内で四番目に古く 1451 年か
ら始まり、アダムスミス、マッキントッシュ、など歴史的に著名な人々を多く輩出しておりま
す。学生数は 2 万 5 千人を越える巨大な総合大学ですが、留学生はそのうちの 15%以上を占め、
出身国は 100 を超えます。特にEU圏内からの学生はスコットランド政府からの奨学金が取り
やすいため学費がほぼタダ、さらに生活費も出ることもあり、大多数を占めます。スコットラ
ンドではスコットランド人の学費はタダですが、
イングランド人は 80 万円以上の学費を全額支
払わなければならなく、しかしEU圏内の他国の学生は優遇するという、なんともナショナリ
スティックな教育政策がとられています。
私がこの大学を選んだ理由は、東ヨーロッパ、特にロシア連邦・ソ連の政策・外交を勉強し
たかったためでした。グラスゴー大学にはイギリスの中でもオックスフォード大学・UCLな
どに次ぐ優秀な中欧・東欧研究所があるため、一橋大学では勉強できないような専門的な多数
のコースが設けられており、非常に満足できる授業内容でした。主にこの東欧研究の授業を履
修しましたが、他にも国際法、イギリスのメディア政策、イギリスの公共政策などの授業も同
時に履修しました。その中でも Slavonic Studies、Constructing Identity in Soviet Russia、
Post-Communist Russia and the Former Soviet Union の三つは自分の中で非常に面白かった
です。
Slavonic Studies ではソビエトロシア時代の映画における、プロパガンダ政策、検閲、共産
主義についてチェコ、ポーランド、ソビエトロシアの三国について学びました。この授業では
授業中に多くの映画のクリップを使って説明され、同時にディスカッションもあり、とても楽
しめました。
Constructing Identity in Soviet Russia では民族のアイデンティティをテーマにソビエト
ロシアのナショナリティ政策、各少数民族のアイデンティティ維持の問題、西と東という概念
について学びました。このコースは学生が 10 人しかいない 2 時間の授業であり、ディスカッシ
ョン主体で毎週のリーディングもなかなか多く大変でした。しかし中央アジアの国々の勉強な
どは新鮮で、また課題も 1950 年代、60 年代の『The guardian』の記事を分析して発表・少数
民族のオーラルヒストリーを調査するなどユニークでとても興味深かったです。
Post-Communist Russia and the Former Soviet Union ではソビエトロシア崩壊後の経済政
策・政治体制・ナショナリティと外交政策の三つに分かれていましたが、その中でもナショナ
リティと外交政策のパートは自分の大学生活の中で一番面白い内容の授業でした。ロシア連邦
の元ソビエト連邦諸国への外交政策とその逆の外交政策について、ロシア連邦国内のナショナ
リティ政策は現在の国際関係でロシアの動きを考える上でも非常に有益な内容でした。
学生生活
勉強以外の時間はできるだけ、様々なヨーロッパの国々の文化の理解に努めました。大学の
Society では International Society、Central and Eastern European Society、salsa Society
に参加し、毎週可能な限りイベントに参加し、異なる国の学生と交流しました。International
Society は毎週末にスコットランド旅行を手配してくれていたため、留学生の友達たちとハイ
ランド、ネス湖、セントアンドリューズ、エディンバラなどに行ったのはいい思い出です。寮
ではイングランド人、ウェールズ人、北アイルランド人、スコットランド人たちとその他の留
学生たちとフラットをシェアしていました。毎日が異なるネイティブのアクセントに囲まれて
いたので、最初の学期はかなりつらかったですが、一瞬一瞬が日本ではできない勉強だと思っ
て楽しみました。
また長期休みが夏にあったので、ヨーロッパで 10 カ国以上を旅行し、またオランダのユトレ
ヒト大学で 2 カ月間サマースクールにも参加することができ、グラスゴー大学の留学生とは異
なる出身国の学生たちと共に勉強することができました。この一年間で私の視野は果てしなく
広がったと思います。
4、最後に
私の留学は如水会の皆さま方、明治産業株式会社様、明産株式会社様、国際課の皆さまをは
じめ、私の留学を支えてくださった全ての方々のおかげで実現したものでした。心よりお礼を
申し上げます。この奨学金のおかげで金銭面の心配なく、一年間勉強と留学生活を楽しむこと
ができました。本当に感謝しております。ありがとうございました。
(2012/12/26)
グラスゴー大学のメインビルディング(左)とネス湖旅行の際の集合写真(右)
ハイランド旅行の際の写真
グラスゴー最後の夜に友達
たちと