「コミュニティがつなぐ安全安心の創造」 京都大学防災研究所 林 春男 想定を超える規模の災害 2011.3.11 Tohoku Earthquake and Tsunami Disaster(Mw=9.0) 研究開発領域の目標 ① 防災・減災に関わる既存の研究開発、現場における取組や施策、制度 等の現状を科学的に整理・分析し、同時に起こりうる様々な危機・災害 を一元的に体系化し、効果的な対応を図るために必要な新しい知見の 創出及び方法論の開発を行う。 ② 危機・災害対応に係る都市・地域の現状と問題を把握・分析し、安全・安 心に関わる知識・技術、社会制度、各般の関与者(行政、住民、学校、 産業、NPO/NGO等)を効果的に連携させることにより、安全な都市・地 域を構築するとともに、人々に安心を提供するため、現場に立脚した政 策提言、対策の実証を行う。 ③ 研究開発活動及び得られた研究開発の成果が、当該地域・研究領域の 枠を超えて活用され、普及・定着するよう、情報共有・意見交換や連携・ 協働のための関与者間のネットワークを構築する。 3 研究開発プロジェクトの規模・実施期間 (イメージ) *「プロジェクト企画調査」:次年度以降の研究開発プロジェクト応募に向け、構想を具体化し、有効な提案とするための調査検討を行うもの 領域の設置期間: 発足年度から6年間の見込み 各研究開発プロジェクトの実施期間: 原則約3年の予定 (延長の可能性あり) 初年度、2年度、3年度に公募し、各年度数課題を採択 4 「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地域の創造」 採択15プロジェクト 地域分布図 分散居住被災者の生活再建支援 25 立木 PJ キーワード 採択 年度 →宮城県名取市 ピアサポートによる惨事ストレスケア 代表者PJ 26 松井 PJ →対象フィールド 医療の地域レジリエンスの向上 →全国 (地縁によらないコミュニティ) 研究開発プロジェクト (カテゴリーⅠ) 防災情報構造化技術の効果的活用 26 棟近 PJ 24 →埼玉県川口市 研究開発プロジェクト (カテゴリーⅡ) 乾 PJ →宮城県 津波から命を守る沿岸域の再生 災害時動物医療の確立 24 石川 PJ 26 羽山 PJ 津波防災と地域継承まちづくり 25 山中 PJ →宮城県岩沼市 →武蔵野市・三鷹市 →福島県 伝建地区の総合防災事業の開発 24 横内 PJ →栃木県栃木市 →茨城県桜川市 →徳島県 コミュニティレジリエンスの知 エデュテインメント救護訓練 26 岡村 PJ 25 太田 PJ →東京都新宿区 →宗像市 地島 中山間地水害後の農林地復旧支援 24 朝廣 PJ →福岡県八女市 逃げ地図、世代間・地域間連携 自律型防災コミュニティの構築 25 松尾 PJ →兵庫県豊岡市 →三重県紀宝町 住民防災自助醸成 型手法の開発 26 倉原 PJ →大阪市、伊丹市 等 レジリエントな大都市圏の創造 25 廣井 PJ →中京圏 26 木下 PJ →岩手県陸前高田市 →神奈川県鎌倉市 →静岡県下田市 (静岡県以西も) 5 被害低減モデル 従来の防災のモデル:予防中心 f Where D: 被害 H: ハザード(理学) E: 暴露量(都市計画) V: 脆弱性(土木建築構造) → 脆弱性の克服 「レジリエンスモデル」 • 新しい防災のパラダイムの確立 f Where R: レジリエンス D = f (H,E,V) A: 人間活動 T: 時間 レジリエンスモデル R = f (D,A,T) R = f (H,E,V,A,T) 予防力+回復力 レジリエンス:事業継続能力の向上 100% 機能 被 害 (事業中断) 脆弱性 復旧時間 頑丈に Robustness 多重に Redundancy 資源豊かに Resourcefulness 素早く Rapidity 災害発生 時間 をもとに作成 レジリエンスモデルの充実のために • 回復力の研究の強化必要 R = f (D,A,T) R = f (H,E,V,A,T) 予防力+回復力 総合的な災害対策としての 理学・工学・社会科学の守備範囲 観測を主体として、 「未知のリスク」に備える 被害量 マチを主体にして、 「将来のリスク」を予防する 理学 プランニング 社会科学 人の力を主体にして、 「万が一」に備える モノを主体にして、 「今あるリスク」に備える 工学 1 10 102 103 再現間隔(年) 104 105 回復力の研究 だれが いつ なにを 12 災害対応過程のモデル化(何を・いつ) 時間経過 失見当期 災害対応業務 いのちを守る 社会のフロー を復旧する 社会のストック を再建する プランニング/ ロジスティクス 1Hr 10Hrs 102Hrs 103Hrs 104Hrs 105Hrs 3つの研究課題 • 失見当期をできるだけ短くする – 情報処理・情報共有のあり方 • 災害対応オペレーションを効果的に実施できる – 防災基本計画に基づく応急対策の質の向上 – 復興過程の理論化 • 災害対応マネジメントを効果的に実施できる – 災害対応の標準化 – 研修・訓練プログラムの充実 15 紀元後の世界と日本の人口の推移:産業革命 (ml) 10,000 II I 9,000 III 140 8,000 7,000 6,000 70 5,000 4,000 Alvin Toffler I: 農業革命(Agricultural Society) II: 産業革命(Industrial age Society) III: 情報革命(Information age Society) 3,000 2,000 1,000 Japan World 0 0 0 100 200 300 400 話題提供「多様な主体が目指すもの」 林 春男 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 2100 H26領域シンポジウム 2015.1.27 16 コミュニティが持つ5つの機能 • ウォーレン(Warren):1975 1. 生産・分配・消費 いきる Production‐distribution‐consumption 2. 社会化・教育 Socialization 3. 平和維持・秩序維持 Social Control くらす 4. 社会参加 Social Participation 5. 相互扶助 Mutual Support 万一に 備える Warren, R (1975)., A COMMUNITY MODEL, in K. Kramer and H. Specht (eds.), Readings in community organization practice. 2nd. Ed. Englwood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall 17 「万一」:自然のゆらぎ(1/f) 頻度 地震 雪崩 規模 http://www.cmth.ph.imperial.ac.uk/people/k.christensen/papers/published/thesis.pdf まとめ:時代に応じたコミュニティ • 人間は一人では暮らしていけない → 群の必然性 – 生理的早産により保護の必要性、長寿化による介護の必要性 • 農耕革命によってコミュニティが形成 – 地域性、共同性、つながり性:共同管理、共同防御システム – 非日常的なイベントに対する相互扶助システム:労働力、資金の提供 • 工業化に伴う都市への人口の集中により変質 – – – – 専門機能分化による共同性の必要性の低下 価値・関心の多様化によるつながり性の低下 モータリゼーションの普及・ICTの普及:地域性の必要性の低下 工業化システムの導入:効率 • 情報化時代の共同防御システムはどのようなものか – – – – 認識と現実のひずみへの対処 国家と対峙する存在をコミュニティという:NGOからCBOまで 個人を守らないコミュニティも存在しうる 多くの種類の縁を組み合わせる力
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