植物育種学レポート(1) 私は、マメ科植物の育種をすすめてみたいと考え

植物育種学レポート(1)
私は、マメ科植物の育種をすすめてみたいと考えた。そう考えるに至った出発点はア
フリカの食料問題にある。
①アフリカは、農業労働者の比率が世界で最も高く、また、それらの大半が小規模
農家である。プランテーション農業が盛んであり、自国向けの主食作物の収量が低い。
特に、サブサハラアフリカでは、穀物の単収は1トン/ha 程度になっており、かなり低
い。そのため、食糧生産が人口増加に追いつかず、安価な輸入穀物に頼っているのが現
状である。
アジアにおける緑の革命では、農業機械や大量の肥料などの資本投入を行うことで収
量を圧倒的に向上させた。しかし、アフリカではそのような資本投入は世界一低い。な
ぜなら、アフリカは、数年に一度は厳しい干ばつに見舞われるために単収が年ごとに不
安定であり、大規模な資本投資をすると不作の年にコストを回収できないリスクが大き
いからである。また、アフリカの土地では微量元素が溶脱しているため、大量の肥料を
投入すると、微量元素が不足し欠乏症を引き起こす。すなわち、アフリカは緑の革命が
効果的ではない土地であるということだ。
論文「生物多様性はアフリカの革命を支える」S.S.Snap ら(2010)米国科学アカデ
ミー紀要によると、マラウィのトウモロコシ畑で、マメ科植物との様々な輪作や混作を
試み、単作と比較したところ、低木性マメ科植物との輪作が最も高い生産性を発揮した
とのことである。このことから、私は、輪栽式に最適な作物の育種を進めたいと考えた。
アフリカの農業に大きく貢献しているものに、アフリカイネとアジアイネから誕生し
たネリカがある。その収量を上げるためには、栽培方法も工夫する必要がある。②窒素
固定をすることで土壌の肥沃度を保つことができるマメ科植物の次にネリカを育てる
ことで、収量を高めることができることがわかっている。当然、化学肥料を適切な量投
入すれば、収量を高めることは可能だが、アフリカの化学肥料の価格はとても高く、貧
しい農家は肥料を使う余裕がないのが現状である。そこで、ネリカやメイズなどの主食
穀物を化学肥料なしで高い収量で生産するために、マメ科植物に注目した。
現在アフリカで栽培されているマメ科植物には、ササゲやラッカセイ、キマメなどが
ある。中でもササゲは耐乾性に優れ、さらに窒素固定能力も高い。ササゲを用いた輪栽
式を体系化することをアフリカの食料問題の解決策の一つにしたい。
ササゲはアフリカだけでなくアジア、日本にまで広がっているため、世界のさまざま
品種をアフリカの不良環境で生育し、多収となる品種を選抜する。その後、多収となる
品種に共通の遺伝子を特定し、交雑させることでより良い品種を目指す。長期間になっ
てしまうが、ネリカやメイズと輪作したときに、それらの収量がササゲの品種によって
有意な差を生み出すかどうか、差があるとしたらどのような品種の、そして、どの遺伝
子が原因となっているのかを、遺伝子を網羅的に解析することで解明したい。もしそれ
ができれば、輪作に最適なササゲを誕生させることができる。
ササゲの育種と併行して、より効率的な輪作の方法も模索したい。
参考文献
①耕地生態学授業プリント(6世界の食料安全保障-自給農業の意義―)
②ネリカ米の貧困削減への効果:ウガンダの事例
国際開発高等教育機構リサーチフェロー 木島 陽子
http://jica-ri.jica.go.jp/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jbic/re
port/review/pdf/32_04.pdf
③西アフリカ半乾燥熱帯におけるマメ科輪作がソルガム収量と土壌肥沃度に及ぼす効
果
農学国際専攻 平成17年度博士課程進学
盛 朝子
http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/gakui/data/h22/126340/126340a.pdf
④ササゲ、ダイズ:乾燥耐性の解析、オートファジーの制御
九州大学 作物学研究室
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/sakumotsu/gakunai4.html