Ⅳ コミュニケーション 1 コミュニケーションの重要性 (1)なぜ

~管理職編~
Ⅳ
1
コミュニケーション
コミュニケーションの重要性
(1)なぜコミュニケーションが必要か。
①コミュニケーションは、職場の人間関係を良好にし、業務を円滑に進めていくために必要不
可欠です。コミュニケーションが不足すると仕事上の報告や相談もうまくできず、情報・意
見交換や業務に支障をきたし、働く人の「心の健康」に大きな影響を与えることにもなります。
② 今 、 職 場 で は 、「 言 わ れ た こ と は す る が 、 自 分 か ら 進 ん で は し な い 」「 会 議 で 発 言 し た り 提
案 する こ とが 少 ない 」「 困っ た こと が あっ て も先 輩 や同 僚 に相 談 しな い 」な ど コミ ュニケ ー
ション不足が指摘されています。一方、先輩が成長を願って指導したつもりでも「怒られた」
「もう自分はダメだ」とすぐ挫折してしまう教職員もいます。
③こうした状況の中で、組織を活性化していくために必要なことはコミュニケーションです。
新人教職員を勇気づけ、業務が停滞している部下や悩みを抱えている教職員を立ち直らせる
きっかけづくり、さらには住民(県民)の思いや現場の状況を把握するためにはコミュニケ
ーションが欠かせません。
(2)コミュニケーションのポイント
①話し上手な人が必ずしもコミュニケーション能力が高いとは限りません。コミュニケーショ
ンとは、相手との意思疎通を図ることで、そこに相手を理解する意識がないと成立しません。
②コミュニケーション能力を高めるためには、話を聴いて理解するだけでなく、相手の態度や
表情、沈黙にも注意を払うことで、相手が何を伝えようとしているかを汲み取る必要があり
ます。
③重要なのは相手に話してもらうことです。自分だけ一方的に話しかけることはコミュニケー
ションとは言いません。上司や同僚にとっては、部下の話を如何に聴けるかがポイントとな
ります。
④聴くことができない人は、貴重な情報や提言を聞く機会を失っていることに気づかないので
す。
(3)コミュニケーションと不祥事防止
「 あ の と き 仕 事 の ミ ス を 話 せ て い た ら 」「 早 く 借 金 の こ と を 相 談 で き て い れ ば 」「 贈 り 物 を も
らったことを正直に言えていたら」など、早い段階で一言話せていたら事件や不祥事まで発展し
なかったケースもあるかもしれません。
(具体的には)
・個 人の不 祥事 は、 少し困 った 初期状 態か ら身 動きで きな い状態 に陥 り、 最後は 周りも見えな く
な って、 誰に も相 談でき ずに 引き起 こす ケー スがあ りま す。そ のた め、 早い段 階で一言「困 っ
て いる」「ミスをし た」「助け てほしい」 と言えるだけ で立ち直るこ とができる 可能性が高く な
ります。
・上 司の方 から おか しいと 思っ たとき にア プロ ーチが 取れ るかど うか は、 日頃か らコミュニケ ー
シ ョンが 取れ てい るかど うか がポイ ント とな ります 。そ うした 意味 でコ ミュニ ケーションが 事
故や不祥事防止には大きく関わっていると言えます。
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2
メンタルヘルスの視点でのコミュニケーションの方法
(1)声かけのポイント
普段から部下に関心をもち、人間関係を築いておくとともに、まず上司が率先して、部下に接
していくことが重要です。
(具体的には)
・部 下の行動 に関心をもつ ことができ れば、「良 くやってく れているね」「ここ気 をつけてね」 な
ど と何か を教 えた り、聞 いた り、相 手の 存在 を認め たり 、と軽 いア プロ ーチを 取る際に、タ イ
ミングよく「声かけ」ができるようになります。
・普 段から 人間 関係 が築か れて いるの であ れば 、比較 的変 化のあ った 場合 に察知 しやすく、別 の
場 所で話 をす るこ とも可 能で す。上 司で ある 自分に 話し づらい 心理 状態 も考え られるので、 ま
ず自分に話せる状況なのかを確認し、言えないというのであればそれをそのまま受け止めます
・も し第三 者や 別の 人を介 した 方がよ いと 判断 した場 合は 、代わ りに 声を かけて もらうことも よ
い でしょ う。 躊躇 してい ると 察知で きて いた 情報を うま く活用 でき ない ばかり か、さらにそ の
人が辛い状態になってしまう心配もあります。
(部下を持つ人のメンタルヘルスがわかる本:武藤清栄著)
(2)部下が相談しやすくするためには
まず、部下が「この職場で必要とされている」と実感することが前提です。
いざというときに、部下に心を開いて話をしてもらうためには、日頃から「この人は私のこと
を見てくれている」という認識をもたれていることが必要です。誰でも自分の日常を知らない人
にプライバシーに関わることを話しにくいものです。そのために、仕事の区切でほめたり、仕事
のプロセスに関してコメントすることなどが大切です。
(具体的には)
・日常のやりとりが大事で、互いに力を抜いて話すためには柔和な表情も重要です。
・実際に何かあったときは事実関係だけでなく、どう思ったのか、やりきれない思いがあるので
あれば、その気持ちを聞くことが第一歩です。
・相 手の立 場に なっ て聞く こと は、相 手の 立場 で相談 を受 けるだ けで なく 、相談 事に対して上 司
で ある自 分が そう 接した ら部 下はど う思 うだ ろうか 、と いうこ とま で考 えて聴 くということ で
す。
・そ して、 その 話の 中から 相手 の希望 や考 えを 確認し 、そ れに気 づい てあ げられ なかったこと を
素直に返していきましょう。「何で早く相談しないのだ」と言うと部下は萎縮するだけです。
(部下を持つ人のメンタルヘルスがわかる本:武藤清栄著)
(3)SOSに気づかないことが多い
部下の困った状態を放置しておくと、自分一人で好転させることができないケースもあります。
それを察して声をかけることが上司の声かけです。声かけの結果、ようやく本音が言えて他の
人からのサポートを受け入れ、仕事や健康状態が改善することもあります。しかし、互いに忙し
かったり、部下は落ち込んでいることをばれないようにしたりして、上司が変調に気づくことが
遅れがちです。それを防ぐのが声かけや日頃からの話し合いです。
一度、声かけしただけでは、反応しない場合があります。その場合は様子を見て、2週間程度
を限度に、それ以上は放置せず、声かけを行い、話を聴くようにしましょう。
(具体的には)
・助言や忠告、質問を加えずに、相手の話を中断させないように聴き(傾聴)、内容についても受
け入れる(受容)ことが必要です。
・こ の傾聴 、受 容が できる と相 手の気 持ち が和 み、安 心感 が生ま れ、 落ち 着いた 気持ちになっ て
聞き手の信頼感も生まれるようになります。
(「地方公務員メンタルヘルスQ&A」地方公務員災害補償基金発行)
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コーチングによるコミュニケーションの方法
(1)コーチングにおけるコミュニケーションのコツ
コーチングとは、スポーツで選手の能力を引き出し、成長させ、良い結果を出す手助けをする
「コーチ」の役割をビジネスに応用したものです。
職場の中でコーチングとは、職員との会話を重ねることによって相手の優れた点や能力を引き
出し、掲げた目標に向かって取り組むことができるようにサポートする人材育成方法といってい
いでしょう。
コーチングで重要なことは、相手の個性や特徴を知り、能力を引き出し、やる気を出させ、自
発的な行動を促すための、コミュニケーション手段であるという点です。
(2)コーチングの内容(聴く、認める、信じる)
〔ただ聴く〕
①しっかりと話を聴く(この人は聴いてくれると思われることが重要)
話を聴いてもらうことで部下は、信頼されている、自分は肯定されていると実感できます。
聴く方が説教したり、途中で「なぜ」と口出したり、結論や評価を言ってはいけません。
< 聴くことに不要なもの:自分の意見、分析、評価、共感、先入観、解決しようとすること>
②話を聴いていることを相手に伝えるスキル
相手が気持ちよく話すことができるために、話を聴いているというシグナルを与える必要
があります。例えば、うなずく、相手の話を繰り返す、相手の話を要約する。
話の結論や解答は「話し手の中にある」のでそのことに気づかせるように誘導することが
重要です。
〔認める〕
①存在を認める
自分のチームに欠かせない戦力であること、常に気にかけていることを伝えます。
人の 存 在を 認 める 第 一歩は 名前 を覚 える ことで す。「○ ○さ ん、 おはよ う」 とあ いさつ の
時に名前をつけてみましょう。
②変化を認める
変 化 が あ る か な い か わ か ら な い 場 合 は 、 よ く 観 察 し ま し ょ う 。「 元 気 が な い 」「 張 り 切 っ
ている」など短期的な変化に気づくことが肝要です。どうしたらよくなるかサポートしまし
ょう。
③結果を認める
良い結果でも悪い結果でもその結果を具体的な点を挙げて認めましょう。部下は自分が見
られている、認められていると感じ、安心して仕事に取り組むことができます。
〔信じる〕
大事なことは、部下の力を信じ、部下が解決策を持っていることを信じることです。
その答えを部下が引き出せるようサポートしましょう。
〔「 I」メッセージ〕
相 手を 認め、 ほめ ると きに重 要な こと は、「あ なたは すば らしい」で はなく、「私はすば
らしいあなたと一緒に仕事ができてうれしい」と自分の思いを伝える方が相手に実感を与え
ることができます。
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