放送の「多元性・多様性・地域性」に関する議論の変遷

放送の「多元性・多様性・地域性」に関する議論の変遷
○橋本 純次 HASHIMOTO Junji
Keywords:放送制度、マスメディア集中排除原則、放送の地域性、地方局、地方分権
1.目的・意義
憲法 21 条の価値を保障するために、基幹放送普及計画と、それに連なるマスメディア集中排除
原則により確保される「放送の多元性・多様性・地域性」の諸概念については、放送制度をめぐる
議論において所与の前提であるかのように扱われているが、実際には明確な定義が存在していない。
その具体的な解釈は、研究者や学問領域ごとに異なり、また、それらの測定が困難であることにつ
いては、多くの論者が既に指摘している通りである。
基幹放送事業者をめぐる構造規制については、
「情報源の多元化」を直接の目的と捉える方針1や、
視聴者の「知る権利」から趣旨を導出する見解2、さらには、多元性・多様性と地域性を別次元の概
念と捉える考え方3などが主張されている。
人口減少社会において、放送制度は、地方局の持続可能性を担保することをはじめ、適切な構造
規制・行為規制を整備すべきであり、そのためには、こうした概念がなにを表すのか、また、現代
社会において、どのような制度設計が相応しいのかを明らかにすることは必要不可欠といえる。
本研究の目的は、放送制度にとって重要なこれらの三概念について、同概念群の整理を試み、さ
らに、それに基づく、社会状況の変化に応じうる放送制度の可能性について論じることである。
2.方法
マスメディア集中排除原則の趣旨について、法令の制定過程における国会での議論や、学術的見
解の変遷を検討する4。また、海外制度との比較や、CATV のような基幹放送以外のメディアの地域
性に関する議論などの参照を通じて、基幹放送の多元性・多様性・地域性について、立体的な把握
を試みる。
3.結論(一部)
これら 3 要素のうち、多元性・多様性と比較して、地域性については十分な検討がなされていな
い。しかしながら、立法当初と比較して、人口動態や地方分権の態様が変化していることに鑑みれ
ば、この点について十分な議論が尽くされる必要がある。
長谷部恭男(1992)『テレビの憲法理論 -多メディア・多チャンネル時代の放送法制』
、弘文堂、p.142
曽我部真裕(2011)「マスメディア集中排除原則の議論のあり方」、
『法律時報』83(2)、pp.93-96
3 橋本純次(2016)、
「人口減少社会に調和する放送制度のあり方 −民放構造規制を中心に」、
『情報通信
学会誌』33 (4)、pp.81-98
4 村上聖一(2016)「放送法第 1 条の制定過程とその後の解釈」
、
『放送研究と調査』6 月号、pp.90-105
の方法を参照する。
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