知らないと損をする! 「中小企業金融円滑化法」

知らないと損をする!
「中小企業金融円滑化法」活用7つのポイント
よろず会計コンサルティング代表
八木 茂久
Copyright © 2011 Yorozu Kaikei Consulting All Rights Reserved.
内容
はじめに
~ 「中小企業金融円滑化法」とは? ~ .............................................................1
Point1.こんな会社は「金融円滑化法」の活用を考えよう! ............................................3
Point2.
「新規借入」か?「リスケ」か? ― 金融円滑化法のメリットとデメリット ― ..5
Point3.勇気を出していざ銀行へ ........................................................................................9
Point4.なにはなくとも「経営改善計画」 ....................................................................... 13
Point5.社長さん! あなたの口から説明して下さい ...................................................... 18
Point6.返済正常化へ向けて ― 改善計画達成の鉄則 ― ............................................... 20
Point7.リスケ後また資金繰りに行き詰ったら ............................................................... 23
おわりに
~ 経営改善に時間の猶予はない ~ ................................................................. 28
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はじめに
~ 「中小企業金融円滑化法」とは? ~
「亀井の知人の中小企業経営者 3 人が自殺したことがある。亀井は彼らから相談を受け
金融機関に掛け合ったが、貸し出しも返済猶予も断られ、社長は亀井あてに悲痛な遺書を
残して逝き、副社長も後を追って自殺。亀井は葬儀に行き、遺族と一緒に抱き合って泣い
たが、3 日後に新しい副社長が自殺した。社長になれば、今後は自分が債務を負わなければ
ならないからだった。 亀井は真っ当な経営者や従業員が無駄な死を選ばなくて済むよう、
制度改革を進めた。」
この文中の「亀井」というのは、言うまでもなく、一昨年の民主党政権交代時の金融担
当大臣であった亀井静香氏のことであり、その亀井元金融担当大臣が進めた制度改革こそ
が、「中小企業金融円滑化法」の導入でした。
冒頭の文章は、Wikipedia(インターネット上で誰でも書き込みができるフリー百科事
典)
『亀井静香』の記事からの転載であり、真偽のほどはよく分かりません。
しかし、そこに記載されている「真っ当な経営者や従業員が無駄な死を選ばなくて済む
ように」という目的に対して、
「中小企業金融円滑化法」が一定の効果を上げていることは
事実です。
東京商工リサーチが発表した平成 22 年の全国企業倒産状況によると、倒産件数は前年比
13.9%と大きく減尐しています。また、内閣府の自殺者数の統計資料によると、平成 22 年
9 月時点での自殺者数(1 月~9 月累計)は対前年比 4.6%と減尐しています。
中小企業金融円滑化法。
(以下、金融円滑化法といいます)
別名、
「モラトリアム法」
、
「返済猶予法」などとも呼ばれます。
平成 21 年 12 月 4 日に施行され、平成 23 年 3 月 31 日までの時限立法です(その後平成
24 年 3 月 31 日まで延長されました)。
法律の内容を簡単にいうと、次のとおりになります。
・銀行は、融資先から申込みがあった場合には、返済猶予等貸付条件の変更に極力忚
じなければならない。
(銀行の努力義務)
・銀行は、その対忚状況を金融庁へ報告しなければならない。虚偽の報告には罰則を
付与する。(銀行の報告義務)
さらに、この銀行の取組をバックアップし、半強制的に効果を上げさせるための仕組み
作りを、銀行の監督官庁である金融庁に課しています。
冒頭の記事の中に、
「・・・金融機関に掛け合ったが、貸し出しも返済猶予も断られ、
・・・」
.
とあるように、金融円滑化法施行前は、返済猶予などの貸出条件の変更に対して、銀行は
極めて厳しい高いハードルを設けていました。
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1
銀行が条件変更に対して高いハードルを設けていた理由は、監督者である金融庁の検査
....
マニュアルに、
「条件変更をした債務者は不良債権に分類すべき」という規定があったから
です。
金融庁は、金融円滑化法の導入を契機に、この諸悪の根源である検査マニュアルを改訂
しました。銀行が条件変更に忚じても、ただちには不良債権に分類しなくてもいいように
規定を変えました。
そして、条件変更への対忚を含めた中小企業支援に銀行がしっかりと取り組んでいるか
どうかを、重点的に検査・監督するようにしたのです。
金融庁が公表している『中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等の状況につい
て』では、平成 23 年 6 月末までの約 19 ヵ月間で、銀行が条件変更に忚じて実行した件数
は約 115 万件となっています。
これは、貸出件数ですから、1 社当たり平均 4 件の借入件数があると仮定すると、約 29
万社もの中小企業がすでに条件変更に忚じてもらっているということになります。
金融円滑化法導入前のデータがないので正確には分かりませんが、おそらくこれは飛躍
的な数字です。
中小企業にとって、返済猶予などの条件変更は、もはや、珍しいもの、難しいもの、恥
ずべきものではなくなり、非常に身近なものとなりました。
しかしながら、
「資金繰りが厳しいから返済をちょっと待ってくれ」と銀行に条件変更を
申し込むのは、まだまだ心理的に抵抗があるという経営者の方もいらっしゃるかもしれま
せん。
そんなあなたに、返済猶予などの条件変更を申し出た方がいいケース、条件変更をして
もらった場合のメリットとデメリット、条件変更をしてもらうための銀行手続、条件変更
中の心得などについてレポートにまとめました。
金融円滑化法の活用は、あなたが生まれ変わり、そしてあなたの会社が生まれ変わるひ
とつのきっかけ、チャンスかもしれません。
「資金繰りが厳しくて、毎月の銀行返済がもう限界だ」というあなたが、資金繰りを改
善するための方法を検討する際の一助として、このレポートが参考になれば幸いです。
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2
Point1.こんな会社は「金融円滑化法」の活用を考えよう!
支払には優先順位がある!
中小企業がお金を支払う項目は、大きく分けるとおおよそ次の6つです。
あなたは、これらの支払の優先順位を考えたことがありますか?
あなたならこのうちのどれを優先して支払いますか?
1.従業員給与
2.買掛金(仕入・外注)
3.経費
4.税金・社会保険
5.銀行返済
6.役員報酬
会社にお金が十分にない場合、これらの支払項目の優先順位は、高い方から順に、1→
2→3→4→5→6となります。
ところが、おそらくあなたがそうであるように、ほとんどの中小企業が、この中で5の
「銀行返済」を最優先し、従業員や仕入先への支払を後回しにしているのではないでしょ
うか?
それでは優先順位が全く逆になっています。
支払の優先順位は、
「その支払をストップしたときの商売に与える影響の大小」で考えな
ければなりません。
給与が支払われなければ、従業員のやる気が下がり、お客に対するサービスの質が悪く
なります。そういう状況が続けば、中には辞めていく従業員も出てくるでしょう。すると
人手が不足し、お客への対忚がますますおろそかになります。結果、顧客離れが進み、売
上不振に陥ります。
仕入先や外注先に対する支払を止めると、お客に売る商品の仕入ができなくなったり、
仕事を請けてもらえなくなったりします。支払を待ってもらった仕入先・外注先だけでは
なく、噂を聞いた他の仕入先や外注先も取引してくれなくなることもあります。最悪の場
合は、その噂がお客にまで広がってしまい、倒産しそうな会社ということで、お客が離れ
ていってしまいます。
このように、従業員と仕入先・外注先は、商売を続けていく上において、非常に大きな
影響を持っているため、支払の優先順位も高いのです。
一方、税金や社会保険料を納めなかったからといって、必要な商品が仕入れられなくな
ったり、お客が会社の商品を買ってくれなくなったりするということはありません。
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3
銀行への返済も同じです。
銀行への借入返済をストップしても、商売は続けていくことができます。
お客がいて、お客に商品やサービスを提供してくれる従業員や仕入先・外注先がいてく
れさえすれば、商売は続けられます。
このように考えると、税金・社会保険料の納付や銀行借入返済は、本来、優先順位が低
いのです。
(ちなみに、役員報酬を最も優先順位が低い 6 番目としているのは、経営者としての道
義的責任を考慮してのことです。しかし、不当に高額でなければ、本来は従業員給与と同
様に優先されるべきものと考えます。なぜなら、従業員と同じように、経営者自身が幸せ
でなければお客が満足するサービスを提供できないからです。したがって、個人資産が潤
沢で役員報酬をもらわなくても当分の間十分やっていけるというのであれば優先順位は 6
番目で構いませんが、個人資産がなくて、明日生活するお金にも困るというのであれば、
当然ながら従業員給与と同じく優先順位は 1 番にすべきです。
)
優先順位を間違えると命取り
10 年程前に『借りた金は返すな!』という本が世に出て以降、銀行交渉に関する本が数
多く出版されるようになりました。最近は中小企業の間でも、
「銀行も一般企業と同じよう
に、交渉すれば取引条件をなんとかしてもらえる」という認識が広まりつつあります。
一方で、
「銀行への返済が一番先」、「銀行への返済をストップしたらえらいことになる」
と思い込んでいる中小企業もまだまだ多いのが現状です。
まずは、認識を改めて下さい。
銀行借入返済の優先順位は、役員報酬を除けば、一番後ろです。
それを間違って、銀行返済を一番先にもってくると、先に述べたように会社の存続に関
わってきます。無理して銀行への返済を優先しようとすると、「商品・サービス品質の低下
→ 顧客離れ → 売上・利益減尐 → 資金不足」という悪循環に陥ります。
これは、輸血によって命を取り留めた出血多量の患者が、体力が回復する前に、献血を
行うのと同じです。命取りになります。
まずは、輸血された血を自分の手・足や各臓器に行き渡らせ(従業員、仕入・外注先へ
の支払)
、体力回復の下地を作るのが先です。献血(銀行返済)は、完全に体力が回復した
あとでいいのです。
あなたの会社は大丈夫ですか?
あなたの会社は次のような会社に該当していませんか?
□
従業員への給料の支払が遅れている。
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4
□
仕入先や外注先・下請企業への支払を待ってもらっている。
(先日付小切手の振出や手形サイトの延長を含む)
□
電気代や賃借料など経費の支払が遅れている。
□
税金や社会保険料の滞納がある。
□
社長の報酬が毎月未払になっている、あるいは、支払額が 30 万円以下とわずか
である。
単なる資金不足だけでも会社の存続は危ういにもかかわらず、このような会社は、限ら
れたわずかな資金までも優先順位が一番低い銀行返済に回してしまって、さらに自らの首
をしめています。
これらの会社は、支払の優先順位にしたがって次のようなシナリオで商売の継続を目指
すべきです。
1.銀行返済ストップ(返済猶予)
↓
2.商売継続に不可欠な支払(従業員、買掛金、経費)を優先
↓
3.経営改善
↓
4.銀行返済再開
「1.銀行返済ストップ(返済猶予)」のために金融円滑化法を利用することになります。
Point2.「新規借入」か?「リスケ」か?
― 金融円滑化法のメリットとデメリット ―
何事にも長所と短所、利点と欠点があります。
金融円滑化法の利用を決断する前に、金融円滑化法を利用した場合のメリットとデメリ
ットをみておきましょう。
資金捻出の3つの方法
銀行への借入返済負担が重く、毎月の給与や買掛金、経費支払の資金(これらの資金を
「運転資金」といいます。
)が不足している場合に、会社がその資金不足を解消する方法と
して、一般的に次の 3 つが考えられます。
①
新規借入
②
リスケ(返済猶予)
③
借換
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5
1 つ目の新規借入は、文字通り、運転資金として必要な資金を、既存の借入とは別に新
たに銀行から借り入れるものです。
2 つ目のリスケは、銀行用語で「リスケジュール」の略です。
リスケは、返済条件の変更を意味し、銀行との交渉によって、会社の返済能力に合わせ
て今ある借入金の返済スケジュールの見直しを行うことです。具体的には、毎月の元本返
済額の一部減額や、元本の返済自体を一定期間ストップしてもらいます。
3 つ目の借換は、
「借入の一本化」とも言い、新規借入とリスケの中間的なものです。こ
れは広い意味でのリスケとも言えます。
例えば、今、残りの返済期間が 5 年、3 年、8 年の 3 本の借入があったとします。そこ
でこれらの借入残高合計と等しい額で、新たに返済期間 10 年の新規借入を行い、今ある 3
本の借入はすべて返済してしまいます。これで、返済期間が延長されたのと同等の効果が
得られることになります。
(実際の借換では、全くの同額ではなくて、その時に必要な運転
資金をいくらか上乗せして増額することもよくあります。)
メリットとデメリット
上記 3 つの資金捻出方法のうちどれを採用するかを決めるためには、まず、各方法のメ
リットとデメリットを知る必要があります。
各方法には次のようなメリットとデメリットがあります。
資金捻出方法
新規借入
リスケ
(返済猶予)
借換
(既存借入一本化)
メリット
デメリット
・追加で資金が必要になっ
・借入残高が増加し、今後
たときに、新規の借入が可
の返済負担が前よりも重
能
くなる
・借入残高を増やさずに、
・リスケ前の返済条件で返
新規借入と同じ効果を出
済を再開するまで、新規の
せる
借入は不可能
・借入残高を増やさずに、
・複数の銀行から借入があ
新規借入と同じ効果を出
る場合、どこで一本化する
せる
のか調整が難しい
・追加で資金が必要になっ
たときに、新規の借入が可
能
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新規借入の場合、今後追加で資金が必要になったときに、また新たに融資を受けること
ができますが、一方で借入残高が増加し、その分返済負担が以前より重くなってきます。
通常、資金不足に陥っている会社はすでに借入過多となっており、新規で借りた資金も
既存の借入返済に充当されるだけで、あっというまに底をつく可能性が高いです。そうな
ると、毎月の返済負担が増えたという事実だけが残ることになり、あまり得策とは言えま
せん。
リスケの場合は、借入残高はそのままで、返済猶予で浮いた分だけ新規借入をしたのと
同じ効果が得られます。
しかしながら、一旦リスケをすると、原則リスケ前の条件で返済を再開するまでは、銀
行は新規の融資を受け付けてくれません。
金融庁が中小企業向けに作成している金融円滑化法のパンフレットには、リスケをした
からといって新規の融資が受けられなくなることはない、といった意味のことが書かれて
いますが、実際には新規融資は無理と考えておいたほうがいいでしょう。
リスケ中に資金がさらに不足するようになっても銀行からは一切新規借入はできません
ので、リスケを申し込むときには、毎月無理なく返済できる金額まで最初に一気に減額し
てもらう必要があります。
借換の場合、新規借入のように返済負担が増加することもなく、またリスケのように今
後の新規融資が受けられなくなるということもないので、その点で 2 つの方法よりメリッ
トがあります。
ただ、既存の借入が複数の銀行にある場合に、どこの銀行で一本化するのか、その選択
によって後々の銀行との付き合いにも禍根を残すこともあるので、慎重な判断と対忚が必
要です。他の銀行に融資を取られてしまう側の銀行を説得するのが難しいということもあ
ります。
また、返済額を最大ゼロに減額してもらえるリスケに比べると資金繰り改善の効果は小
さくなります。
あなたの会社にはどの方法がいいのか?
どの方法を選ぶかは、上述の各方法のメリットとデメリットを考慮する他、各社の業績
や財政状態、資金繰りの状況によっても違ってきます。
新規借入の場合、当然ながら銀行による融資審査があります。
直近の決算書や試算表で 2 期連続営業赤字や債務超過、営業キャッシュ・フロー(営業利
益+減価償却費)がマイナスの場合は、銀行のプロパー融資(信用保証協会の保証がつい
ていない銀行独自の融資)はまず受けることはできません。
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対象条件を満たしていれば利用できる、景気対忚緊急保証制度による信用保証協会の保
証付き融資や日本政策金融公庫や商工組合中金などの公的金融機関のセーフティネット貸
付もありますが、今後の返済負担が重くなるので、将来の資金繰りが確実に見込める会社
以外はおすすめできません。
借入金残高がすでに月商の 6 ヵ月分以上ある借入過多の会社は、リスケか借換を考えた
方がいいでしょう。
ベストなのは、将来の不測の事態に備えて借入余地を残しておける借換です。
ところが、借換も新しい借入で既存の借入を返済するというスキームですから、新規借
入の融資審査があります。したがって、赤字や債務超過や営業収支がマイナスの会社では
銀行の審査が通らずに借換ができない可能性がでてきます。
平成 23 年 3 月末までは、政府の緊急保証制度で、銀行が全くリスクを負わない信用保
証協会100%保証付き融資が利用できます。この場合、信用保証協会さえOKであれば
銀行もOKというスタンスですが、緊急保証制度が打ち切られる 4 月以降は、銀行も通常
の審査態勢に戻って審査が厳しくなると考えられます。
また、借換後の返済額に見合う十分な営業キャッシュ・フローが見込める会社でないと、
借換をしてもすぐにまた銀行返済に行き詰って、結局最後はリスケをお願いする必要が生
じます。
とりあえず借換の相談を銀行にしてみましょう。それでも決算書の内容が悪く借換の融
資審査が通らなかった会社は、次善の手段として金融円滑化法を利用してリスケを考えま
しょう。
金融円滑化法の施行前は、銀行はなかなかリスケに忚じてくれませんでした。
それは、リスケを行うとその貸出債権はいわゆる不良債権として銀行は開示しなければ
ならなくなり、監督官庁や世間の手前、そういう恥ずかしい金額はできるだけ尐なく抑え
ておきたいという理由からです。
金融円滑化法によって、リスケを行っても不良債権に数えなくてもいいという取扱にな
り、銀行のリスケに対する敷居はほとんどないに等しくなりました。
リスケを申し込む側も後ろめたさを感じる必要は全くありません。
どうしても資金繰りが厳しくて、従業員給与や買掛金の支払を待ってもらってまで銀行
返済を続けているようであれば、金融円滑化法を利用して銀行に返済猶予をしてもらい、
それを還元して従業員や仕入・外注先の協力を仰ぎ、経営の立て直しを図りましょう。
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Point3.勇気を出していざ銀行へ
金融円滑化法第 4 条第1項には、
「金融機関は、中小企業者から債務の弁済に係る負担の
...........
軽減の申込みがあった場合には、できる限り、当該貸付けの条件の変更等を行うよう努め
るものとする。
」とあるとおり、リスケ(返済猶予)をしてもらうことを決断したならば、
当然ながら、まずは銀行にリスケの申込みをすることが前提になります。
銀行に初めてリスケの依頼に行く際の注意点をいくつか以下に記します。
交渉はあくまでも対等に
......
常日頃から、銀行には、
「資金繰りに困っているときに、助けてもらっている」と感じて
いる上に、今度は返済を待ってもらうという負い目から、リスケを銀行に申し込みに行く
と、どうしても弱い立場に自分を置きがちです。
しかし、リスケも含め銀行取引も商取引の一環です。
あなたが取引先と価格や納期の交渉を行うのと全く変わりません。
ですから、遠慮して銀行の言いなりになるのではなく、対等の立場で、しっかりと主張
すべきところは主張すべきです。
リスケは毎月回収すべきお金が回収できず、銀行にとっては不利な取引になることから、
それをできるだけカバーしようと、逆に、金利のアップや担保・保証人の追加など会社に
とって不利になる条件を言ってきます。
これらの不利な条件を、自分の立場が弱いから仕方がないと言って、すべて銀行の言う
とおりに受け入れてしまうと、後になって泣くことになります。
できないものはできないと、歯をくいしばって、はっきりと「No」と言いましょう。
言うまでもなく、
「金融円滑化法があるから銀行はリスケに忚じて当然だ」と逆に高飛車
な態度に出ることもダメです。
あくまでも謙虚に、けれども、お互いが対等の立場として歩み寄れる着地点を求めて、
粘り強く交渉する必要があります。
まずはメインバンクへ
借入が複数の銀行からある場合、どの銀行から申し込みに行けばいいのか迷うところで
す。
まずはメインバンクへ申し込みに行って下さい。
「メインバンク」とは、通常、借入残高が一番多い銀行です。
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メインバンク以外の銀行(以下サブバンクといいます)は、基本的にメインバンクの動
向を気にします。
サブバンクに先にリスケの申し込みに行っても必ず、
「メインの○○銀行さんはどうでし
たか?」と聞いてきます。
「メインバンクがOKであればうちも検討してみよう」というス
タンスです。
したがって、まずはメインバンクを説得しリスケの承認をしてもらうことが先決です。
メインが動き出すことで、他のサブバンクもいっせいに動き出してくれるというのが、
借入先が複数ある場合の基本形です。
もし、メインがOKでもサブバンクが動いてくれない場合はどうするか?
金融円滑化法第 4 条第 4 項では、
「金融機関は、貸付に係る債権を有する他の金融機関が
いるときは、その者との緊密な連携を図るよう努めるものとする。」と規定されています。
もしサブバンクが動いてくれない場合は、サブバンクと調整してもらうようにメインバ
ンクに依頼しましょう。
逆に、もしメインバンクが動いてくれない場合は、サブバンクをまず口説き落として、
周りを固めてしまってから、メインバンクと交渉するという手もあります。
信用保証協会の保証付き融資や日本政策金融公庫などの政府系金融機関からの借入があ
る場合には、これらの政府系金融機関にまず相談してみるのも手です。
メイン・サブに関係なく、特に地方の営業店などでは、担当者自身の知識不足や経験不
足から取り合ってもらえないこともあります。
そうした場合は、その銀行の本部に直接訴えましょう。各行の本部には「貸付条件の変
更等に係る苦情相談窓口」が設置されています。
本部に掛け合ってもダメな場合は、銀行の監督官庁である金融庁にホットラインが設置
されているのでこちらで相談してみましょう。
金融円滑化ホットライン: 0570-067755
全銀行一律同条件
リスケ交渉をする際の各行への条件提示(返済額や猶予期間)は、「全銀行一律同条件」
というのが大原則です。
例えば、3 行の銀行から借入をしている場合、そのうち 1 行だけ返済額を半分にし、残
り 2 行は返済をゼロにする、というのはダメです。
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なぜなら、返済をゼロにされた 2 行は、半分の返済を受ける 1 行に対して不公平感を抱
いて、納得しないからです。こうなると交渉は進まず、リスケのスキーム全体が破綻しま
す。
メイン、サブに関わらず、すべての銀行にリスケを依頼するとともに、その条件につい
ても同じにしなければなりません。
条件を同じにするというのは、例えば次のように返済条件を決めるということです。
・各行の借入元本残高に比例して各行への返済額を決める(プロラタ返済)
・借入一口当たり一律 5 万円の返済をする
・すべての銀行のすべての借入について元本返済をゼロにする
手ぶらはNG、提出資料の準備を忘れずに
リスケをしてもらうには、銀行にリスケの申し入れをすればいいのですが、ただ、その
際に、手ぶらで行ってはいけません。
資金繰りが緊急を要する場合を除き、以下に挙げる資料を十分準備してから初回申込時
に持参しましょう。
これらの資料を持って行かない場合は、リスケの交渉で不利になったり、交渉に時間が
かかったりと、いくら金融円滑化法で返済猶予の努力義務が銀行にあるといえども、交渉
が難航する可能性が高くなります。
(リスケ交渉に必要な資料)
①
条件変更依頼書
銀行に対してリスケをお願いする旨と、リスケの条件を提示します。
②
金融機関別取引明細書
会社の借入状況を銀行が確認できるように、金融機関別にすべての借入につ
いて下記の事項を記載します。
・借入残高
・毎月の返済額、利息額
・返済日
・短期借入金と長期借入金の別
・借入期間
・貸付種別(証書貸付か手形貸付かなど)
・信用保証協会保証付き融資かプロパー融資の別
・保証人
・担保
③
経営改善計画書
経営改善計画書の内容は、次章にて詳述します。
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11
リスケの場合も、銀行内で審査があります。
担当者がまず稟議書を起案し、それが融資上席者から支店長へ、そして本部の審査担当
者から審査上席者まで廻覧されてそこでやっとリスケ承認の決裁が下りるわけです。
逆にいうと、支店長から本部の審査上席者まで全員が納得できるような稟議書を、最初
の担当者に作成してもらわなければリスケの承認はスムーズにいかないことになります。
これらの提出資料は、こちらの状況や思いを十分に酌んだ稟議書を担当者に作成しても
らうための助けとなるものです。担当者の立場に立って稟議書を書き易くしてあげること
が、リスケ承認の可能性とリスケまでのスピードを高めることになります。
申込の前に手元資金の確保を
提出資料の準備のさらに前に準備しておくべき重要なことがあります。
それは手元資金の確保です。
なぜかと言えば、資金をある程度確保しておかなければ会社を再建するための原資が確
保できないのと、いくら改善計画を綿密に立てたところで、現実にはそのとおりに進むと
は限らず、また予期しなかった不測の事態も起こりえるからです。
先述したように、リスケのデメリットとして、リスケ後は新規融資を受けられなくなり
ます。その状況で資金ショートするようなことがあればアウトです。
資金がないからリスケをするのに、矛盾した話のように聞こえますが、可能な限りの資
金をリスケ申込までに確保しておきましょう。
.
どうしても資金の確保が難しければ、リスケ申込前に 3 ヵ月間だけ銀行返済をストップ
して資金を確保しましょう。
このとき、今月は資金がないため返済ができない旨を銀行に必ず通知しておきます。
通知せずに返済が延滞すると、期限の利益を喪失したということで、担保処分や連帯保
証人への取立をされても文句は言えません。
一言事前に断っておけば、銀行はこうした早急な動きにまず出ることはないです。
リスケ前に返済を自主的にストップしようとする場合は、予め返済口座から預金を抜い
ておく必要があります。
返済は口座自動引き落としですから、返済口座に預金を入れたままでは返済を止めるこ
とができません。返済口座から預金を全て引き出して、返済日に引き落としをされないよ
うに対策をとっておくことが必須です。
また、返済口座が売上入金口座と一緒の場合、売上金の入金と同時にそのまま自動的に
返済に回されてしまうケースがあります。そうならないためには、早いうちに売上の入金
口座を、融資を受けていない他の銀行の口座に変えておく必要があります。売上入金口座
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12
の変更は、すべての取引先に「振込口座変更依頼書」等で振込口座の変更を依頼しなけれ
ばなりません。
Point4.なにはなくとも「経営改善計画」
経営改善計画の内容
リスケ交渉の際の提出資料で最も重要になってくるのが「経営改善計画書」です。
銀行にとって一番の関心は、たとえリスケで一時的に返済猶予を行ったとしても、返済
猶予期間終了後にまた元通り正常に返済してもらえるかどうか、ということです。
銀行は、返済猶予期間中に資金ショートを起こして会社に倒産されては困るのです。ま
た、会社の業績が改善せずに返済猶予期間終了後も返済資金が十分に獲得できないままで
は困るのです。
リスケ中に資金ショートで倒産することはない、リスケ後は業績が改善してまた元通り
正常に返済ができるようになる、ということを会社自らが証明する資料が経営改善計画書
です。
経営改善計画書はおおよそ次のような内容から成ります。
1.資金繰り悪化の要因分析
2.今後の施策(計画概要書)
3.5ヵ年損益計算書
4.5ヵ年キャッシュ・フロー計算書
5.5ヵ年貸借対照表
6.今後1年の月次資金繰り表
7.銀行別借入残高推移表
3~6の各数値計画に関しては、リスケの必要性をアピールするために、できれば
A.リスケ前
B.リスケせずに自力で経営改善を目指した場合
C.リスケ後
の3通りのパターンについて作成し比較できるようにしましょう。
最低でも「A.リスケ前」と「C.リスケ後」の2通りの作成が必要です。
「経営改善計画はなくてもいい」は本当?
金融庁が中小企業者向けに作成した金融円滑化法のパンフレット。
その中で、これまでは経営改善計画がなければ銀行はリスケに忚じてくれなかったが、
金融円滑化法以降は、申込時点で経営改善計画がなくてもリスケに忚じてくれるように対
忚が変わった、という旨の記述があります。
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確かにそのとおりです。
もともとリスケに対する銀行の消極的な態度を変えて、中小企業の要望通り銀行がどん
どんリスケを行うように促すのが、金融円滑化法の狙いです。
では、なぜリスケに対する銀行の態度がそのように 180 度変わったのか?
一般的に、リスケをするとその企業の債権は不良債権となり、銀行は決算上それに対し
て貸倒引当金を多額に積む必要がありました。不良債権が増えると、当然ながら銀行の業
績が悪化し、自己資本が目減りします。最悪、営業停止ということにもなりかねません。
銀行が営業を続けるには自己資本比率いくら以上なければならないという決まりがあるの
です。
...........
ただし、
「リスケをしても経営改善計画がある場合は不良債権から除くことができる」と
いう救済ルールが特別に認められていました。
だから、金融円滑化法施行前は、経営改善計画がある場合以外、銀行はリスケをしたが
らなかったのです。
金融円滑化法の導入で、リスケ企業の債権を不良債権から除くことができる特別救済ル
ールの条件が緩和されました。
.....
リスケ実行時点で経営改善計画がないとダメだったのが、リスケ実行から 1 年以内に経
営改善計画を作成すればよくなったのです。
このお陰で、リスケに対する銀行のハードルは低くなり、たとえ経営改善計画がなくて
もリスケを受け付けてくれるようになりました。
また、金融円滑化法では、経営改善計画を作成するノウハウを持たない中小企業に対し
て、銀行が、経営相談や経営指導等を行い、経営改善計画の作成も手伝うことを求めてい
ます。
では、本当に経営改善計画がなくてもいいのでしょうか?
それに対する私の答えは、やはり「経営改善計画はリスケ申請時に作成しておくべき」
ということになります。
それは次の 5 つの理由によります。
1.数値の裏付けがないまま口頭で「頑張ります」、
「努力します」といっても、経営改
善による返済再開の可能性を銀行担当者に納得してもらえない。
2.経営改善計画がない場合、銀行担当者に、会社が意図するポイントを押さえた稟議
書を作成してもらえず、銀行内のリスケ承認決裁が取れない可能性が高くなる。
3.銀行に経営改善計画を作成してもらうことを期待しても、銀行は慢性的に人手不足
で、大口の融資先でない限り対忚はしてもらえない。
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4.どうせ 1 年以内に作成しなければならないのであれば、初めから作成しておいた方
がいい。
5.リスケは目的ではなくあくまでも手段。最終的な目的は、リスケで返済猶予を受け
ている間に、経営改善し、資金繰りを正常な状況に戻すこと。そのためには、1 日
でも早く経営改善計画を作成して、それに取り組み始める必要がある。
経営改善計画書作成のポイント
銀行がリスケを承諾するには、法的に強硬手段をとるよりも、リスケに忚じた方が銀行
にとって得である、と納得してもらわなければなりません。
「現状、業況が厳しいが、リスケによって資金繰りを安定させ、その間に経営改善に取
り組み、また元通り返済を再開できるようになる」ということを銀行に理解してもらうた
めのツールが経営改善計画書です。
ここでは経営改善計画書を作成する際のポイントを示します。
① 資金繰り悪化の要因分析
原因がはっきりと分かれば、その改善策は自ずと見えてきます。
その際、会社外部の要因と会社内部の要因に分けて考察しましょう。
また、過去 3~5 年程度の決算書や部門別(事業別、得意先別、商品別 etc.)売上・
粗利益等の財務データの推移を分析しましょう。
② 自社の現状分析
SWOT分析(自社の強み・弱みと自社を取り巻く脅威やチャンスを分析)などを利
用して自社の現状を分析し、今後の方向性や戦略を定め、それを経営改善計画に反映し
ましょう。
③ 計画は言葉だけでなく数字で具体的に
今後の施策(計画概要書)については、売上を上げるにしても、
「営業力の強化」と
漠然と書くだけではダメです。
例えば「現状の売上の内訳A商品○○円、B商品○○円、C商品○○円のうち、□□
□の対策を打つことによりB商品の売上△%アップが期待できる。それにより、年間○
○円の売上向上を目標とする。
」などというように、数字で具体的に示す必要があります。
これで経営改善計画書全体の説得力が格段に増します。
④ 数値計画だけでなく、それを達成するための行動計画も合わせて作成
③とは逆に、損益計算書や資金繰り表などの財務数値だけの計画書もダメです。
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財務数値だけの計画書は、単なる数字合わせで終わってしまい、結局、計画が「絵に
描いた餅」になります。
銀行は、提出された経営改善計画が実際に実現可能なものかどうかを見ます。銀行に
実現可能性を信頼してもらうには、数値目標を達成するための方策を、会社の各人毎に
割り振って具体的行動に落とし込む必要があります。
例えば、上記③の売上を上げるための対策について、「営業部長が、●月までに、▲
▲地域において、飛び込みで営業を■■件行う。
」というように、担当者、期限(期間)
、
場所、対象、方法などを明確に決めて、それを計画書にも記載しなければなりません。
⑤ 計画書の各帳票間の整合性を保つ
経営改善計画に含まれる損益計算書、資金繰り表、貸借対照表、今後の方策(計画概
要書)などの各書類の整合性がなければなりません。
帳票間の整合性がなければ、経営改善計画自体の合理性を銀行に認めてもらえずにリ
スケの承諾を得られなくなります。
例えば、今後の方策で売上高を毎年5%ずつ増やして行くと言っておきながら、資金
繰り表で売上収入が 10%ずつ増えているというようなことは絶対に避けなければなりま
せん。これだけで経営改善計画の信頼性はガタ落ちです。
⑥ 「経常収支」をプラスにする計画
「経常収支」とは、資金繰り表において、会社が本業の仕事を行った結果残るお金の
ことで、損益計算書でいうと経常利益に相当します。
「経常収支」がマイナスであるとい
うことは「仕事をすればするほどお金が減っていく」ということになります。
こうなると、リスケ以前の問題であり、たとえ借入返済を減額、ストップしても資金
繰りは回りませんから、銀行は「リスケを行っても資金繰り破綻の可能性が高い」と判
断し、リスケを受けてもらえません。
銀行借入を返済する財源は、あくまでも会社が本業で稼いだお金「経常収支」です。
現時点で「経常収支」がマイナスの会社は、計画期間のできるだけ早い段階で「経常
収支」をプラスにして、リスケ終了予定期限には、月次の「経常収支」が毎月の借入返
済合計を上回る計画にする必要があります。
⑦ 銀行だけに負担を負わせない
銀行にとっては、リスケで貸出期間を延ばすことで、それだけ回収不能になるリスク
が高まり、リスク負担が増えることになります。
ですので、リスケという形で企業を支援する銀行側は、リスケを申し込む会社側にも
努力を要請します。
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銀行から真っ先に言われるであろうことは、
「役員報酬の見直し」と「経費の見直し」
です。これらは、経営改善を図る中、当然見直しをかけて無駄を削減するなどして資金
収支の改善を図る必要があります。
ただし、役員報酬については、安易な引き下げに忚じると、個人の住宅ローンや税金
の支払ができなくなったり、生活費もままならなくなったりしますので、いくらまでな
ら削減できるか事前にしっかり計算しておくべきです。社長が肉体的にも精神的にも健
康で経営できる状態でなければ経営改善はおぼつかないですから。
⑧ 売上を無理に上げようとしない
「売上を上げていかなくては、銀行からの評価が下がる」という思い込みで、極端な
右肩上がりの売上予測を立てる改善計画をよく目にしますが、これは逆にマイナスにな
ります。
昨今の経済情勢から中小企業の売上が簡単に増えることなどないということは、銀行
は百も承知しています。極端な右肩上がりの売上計画を立てると、経営改善計画の合理
性、実現可能性の観点から、銀行の信用を著しく損ねます。
リスケ後の返済が可能な最低限の売上を考え、営業努力でカバーできる程度の売上上
昇率に抑えた固めの計画を目指して下さい。
なお、売上増加の計画を立てた場合、それに伴って増える経費があるにも関わらず、
それを計画に折り込むのを忘れてしまうことがよくあるので注意して下さい。
例えば、営業力を強化するために増やした営業マンの人件費や、チラシやダイレクト
メールなどの広告宣伝費がそうです。
⑨ 5 年後の着地点は、
「黒字」
、
「債務超過解消」
、「債務償還年数 10 年以内」
経営改善計画書は、通常、将来「5 年」分に関して作成します。
リスケを申し込むときに銀行が経営改善計画を要求する(金融円滑化法ではリスケ後
1 年以内)ということを先述しましたが、経営改善計画ならどんな計画でもいいかとい
うと、実はそうではないのです。
.
.
銀行が要求する経営改善計画は、「実現可能性が高い」、「抜本的」な経営改善計画と
いう条件が付きます(これを略してよく「実抜計画」といいます)。
ここでいう「抜本的」という意味が、5 年後(場合によっては最大 10 年以内)に、
①黒字、②債務超過解消、③債務償還年数 10 年以内、の 3 つをクリアするということ
です。
この条件は銀行のバイブルである「金融検査マニュアル」に規定されており、これら
の条件を満たす経営改善計画が提出されて初めて、銀行はリスケ債権を不良債権から除
外できるようになるのです。
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ですから、
「抜本的」でない経営改善計画をいくら銀行に提出しても、リスケは認め
てもらえません。
リスケを銀行に承諾してもらおうと思えば、5 年後*の着地点において①経常黒字、
②債務超過解消、③債務償還年数 10 年以内**、を目指した経営改善計画を作成しましょ
う。
ちなみに③の債務償還年数の計算方法は次のとおりです。
【債務償還年数=有利子負債(銀行借入+社債)/(当期純利益+減価償却費)】
*
中小企業の場合、最大 10 年まで認めてもらえることもある
**
業種(不動産賃貸業、旅館業などの設備産業など)や当初借入の資金使途(設備
資金)によっては債務償還年数が最大 20 年まで許容されることもある
Point5.社長さん! あなたの口から説明して下さい
改善計画の「実現可能性」は社長の口にかかっている
銀行にリスケを承諾させるには、提出した経営改善計画が「実現可能性が高い」、
「抜本
的な」経営改善計画でなければなりません。
経営改善計画の「実現可能性が高い」ということを銀行に認めてもらうには、まず、
「経
営改善計画書の作成ポイント」で先に述べたように、計画書の各帳票間の整合性が取れて
いる、言葉だけでなく数字の裏付けがある、数値目標を達成するための具体的行動計画が
ある、ということが最低限必要です。
しかしこれだけでは、経営改善計画が本当に「実現可能性が高い」のかどうか銀行は判
断できないのです。
というか、経営改善計画が本当に実現するかどうかなんて実際のところ誰も分からない
のです。神様や仏様でない限り、将来のことは誰にも見通せません。
あるメガバンクの担当者は、
「銀行マンの 9 割 9 分は経営改善計画通りに行くとは端から
思っていない」と言っていました。
では、銀行は何を根拠に「実現可能性が高い」と判断するのでしょう?
それは、
「経営改善に向けた社長の強い意志」です。
「社長の強い意志」を示すには、経営改善の内容を、社長自らの言葉で社長の口から銀
行に説明する必要があります。
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リスケ申込の際に、会計事務所や資金調達コンサルタントなど社外の専門家に付いてき
てもらって、経営改善計画の内容を一から十まで説明を任せているようではいけません。
銀行は、
「この社長は本当に計画の内容を理解しているのか?」
「この社長には本気で経営
改善する気があるのか?」と疑って、結局、「この社長では経営改善計画の実現可能性は低
い」と判断します。
もちろん、会計数値のテクニカルな説明は専門家に助けてもらえばいいのですが、経営
改善計画の骨格となる方針・戦略・シナリオ、それを達成するための具体的方策と行動計
画については、社長が自分で説明できるようでなければなりません。
さらに、経営改善計画の説明を求める際に、銀行は必ず、資金繰り悪化の原因や利益の
源泉など会社の現状分析ができているかどうか聞いてきます。これらに対しても社長は把
握して明確に回答できるようにしておきましょう。
これだけはやめよう!経営改善計画の外部専門家への丸投げ
社長が自分の口で経営改善計画を銀行に説明するためには、経営改善計画を社長自ら作
成必要があります。
銀行は見ています。その計画が外部から押し付けられたものではなく、社長が自分で作
ったものであるかどうかを。
もちろん、簿記や経理の知識が不足していて予測損益計算書や予測資金繰り表なんか到
底自分で作成できないという社長も多いでしょうから、そういう方は、会計事務所や経営
コンサルタントなどの外部専門家の助けを借りればいいと思います。それは何も恥ずかし
いことではありません。そのために専門家がいるのですから。
ただ、その場合でも「丸投げ」だけはやめて下さい。
あくまでも、経営改善に向けての方針・方策と基本的数字(例えば、売上向上のために、
どの商品を何%増やすか、どの経費をいくら削るか、など)は社長が考えて決めるように
すべきです。それが一人で無理なようであれば、会計事務所などと相談しながら社長の考
えや思いを改善計画に織り込むようにして下さい。
丸投げして他から押し付けられた計画を説明しても銀行は分かります。社長の自分の気
持ちや思いが入っていないので、言葉に迫力や意志が感じられないからです。
どうか、自分で納得して作った経営改善計画を、
「これで絶対に経営改善するんだ」とい
う熱意と情熱を持って、銀行に説明して下さい。
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Point6.返済正常化へ向けて
― 改善計画達成の鉄則 ―
これまでは、主に、銀行にリスケを承諾してもらうためにはどうしたらいいか、という
観点から述べてきました。
ここでは、銀行にリスケを承認された後、再び返済を正常化するためにはどのようにし
ていけばいいかについて述べたいと思います。
一に実行、二に実行
銀行にリスケを認めてもらえれば、あとは、6ヵ月後、1年後に迫る正常返済再開にむ
けて、経営改善を実現すべく、とにかく経営改善計画を実行するのみです。
先にも述べたように、リスケをすると、最低でも元の条件で返済を再開しない限り、新
規の借入はできません。
ですから、一旦リスケをしたなら、後は背水の陣で経営改善をやるしかありません。
ランチェスター経営コンサルタントの第一人者である竹田陽一氏によると、従業員が
100 人以下の会社の業績は、その 96%~100%が社長一人の力で決まるそうです。
言い替えると、社長一人がその気になりさえすれば必ず業績がアップするということで
す。
そのことを肝に銘じて、強い意志を持って改善計画の実行に取り組んで下さい。
三、四がなくて五に検証
経営改善計画は、とにかく実行することが一番ですが、実行するだけではダメです。
何事もやりっぱなしはいけません。
計画を実行したら、実際の結果が計画に比べてどうであったか検証する必要があります。
実績と計画のズレを把握することが大事なのです。
カーナビは当初設定したルートからはずれると、それを察知して、はずれた地点から目
的地に行く新たなルートを自動的に探してくれます。
ここで、カーナビが「最初のルートからはずれた」ことを察知しないままだとどうなる
でしょう?当然ながら、目的地にたどり着くことができません。
経営改善も同じです。
実績が計画からズレたことを認識しないまま放っておくと、経営改善して銀行返済を再
開するというゴールに到達することはできません。
経営改善計画と実績とのズレを認識したなら、次に、元のルートに戻ってまたゴールを
目指すための新たな道筋を見つけなければなりません。
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そのためには、計画通りに行かなかった、実績が計画からズレてしまった原因を探る必
要があります。
計画は様々な仮定、仮説によって作成されています。
例えば、単価 10 万円のA商品を 30 個販売して売上を月 3 百万円増やすという数値目標
に対して、「月 1,000 件の訪問営業をする」という行動計画を立てていたとします。
これは、
「月 1,000 件の訪問営業のうち、商談に忚じてもらえる割合(商談率)が 30%、さ
らにそのうち成約する割合(成約率)が 10%」という社長の頭の中の仮説に基づいたもの
です。
ところが実際は、月の訪問件数は 800 件、商談率 25%、成約率 5%で合計 10 件しか売れ
ず、A商品の売上は 1 百万円しか増えなかったとします。
この場合、訪問件数や成約率や商談率が予想(仮説)より下回った原因をそれぞれ分析
します。訪問件数が尐なかったのは、マンパワーの不足なのか、訪問効率が悪いのか、商
談率・成約率が下回ったのは、営業マンのスキル不足なのか、販売単価が競合他社と比べ
て高いのか、あるいは、そもそも仮定した率が実態とかけ離れていたのか、という具合で
す。
この差異原因分析が的確でないと、元のルートにもどろうとする新たな道筋まで誤って
しまい、袋小路に入ることになります。
きちんと測定する仕組みを作る
計画と実績のズレを把握し、その原因を分析して実行結果を検証するためには、実績を
きちんと測定する仕組みが必要です。
実績測定のためにまず必要となるのは試算表です。
試算表から実績損益計算書が得られ、これを改善計画で作成した予測損益計算書と比較
して、差異を把握することができます。
会計伝票を自社で入力しいつでも試算表が出せる会社は問題ありませんが、会計事務所
に記帳を代行してもらっている会社は、毎月に記帳してくれるように会計事務所に依頼す
るか、あるいは自社で自計化するように切り替えるかして、月次の試算表を毎月必ず入手
できるようにする必要があります。
試算表だけでは測定の仕組みとして不十分です。
経営改善計画は、通常、事業別や商品別、得意先別、地域別などのように、細かくター
ゲットを定めて策定しているはずです。売上や粗利に関して、全社まとめていくらアップ
するというどんぶり勘定ではなく、例えば、A事業について○○円増やす、B商品を××%
増やす、という具合です。
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これらの事業別等の売上・粗利に関する実績は試算表には出てきません。
別に販売管理ソフトなどで、事業別等の売上・粗利に関する販売実績データを収集する
必要があります。
試算表と事業別等販売実績データだけではまだ足りません。
先に述べたように、計画は、様々な仮定、仮説によって作成されています。
これらの仮定、仮説が正しかったかどうかの検証も必要ですから、これも測定しなけれ
ばなりません。
先の例でいうと、1 ヵ月当たりの訪問営業件数や商談率、成約率がそうです。
その他、チラシを打ったりダイレクトメールを送付したりした場合の反忚率なども測定
するようにしましょう。
以上をまとめると、計画と実績のズレを検証するためには、次の 3 つの測定データが必
要ということです。
①
試算表
②
事業別、商品別、得意先別、地域別等の販売データ
③
その他、仮説・仮定を検証するためのデータ
これらのデータは、迅速に入手できるようにすべきです。
アメーバ経営の京セラのように毎日、日次でデータを入手するのが理想ですが、それが
できなければ週次、月次でもかまいません。
データを入手しても、それが 1 ヵ月後や 2 ヵ月後では意味がなくなります。
折角収集したデータが翌月の経営に生かせないまま、実績と計画のズレがどんどんひど
くなり回復が不可能となるからです。
翌月 5 営業日くらいまで、最低でも翌月 10 営業日頃までには月次のデータが経営者の
ところに上がってくる仕組作りが必要です。
素早く軌道修正
カーナビが、当初設定したルートから外れた時に、すぐさま新しく別のルートを見つけ
てくれるように、計画が未達で実績との間にズレが生じたならば、その原因を分析した上
で、すぐさま計画を修正して、次のアクションを起こす必要があります。
経営計画は生ものです。
経営計画を机の中に仕舞いこんでいれば、すぐにいたんで使い物にならなくなります。
なぜなら、会社を取り巻く状況や前提が、当初経営計画を作成した時と異なってくるか
らです。
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例えば、毎月 1 千万円ずつで年間 1 億 2 千万円の売上を上げる計画の場合を考えましょ
う。4 ヵ月経過時点で売上は 2 千万円しかなかったとします。そうすると、年間 1 億 2 千万
円の売上目標達成には、残り 8 ヵ月で 1 億円、月にすると 1,250 万円ずつ売上を上げるよ
うに計画を修正しないと当初目標はクリアできません。
当初は 12 ヵ月で 1 億 2 千万円の売上を上げればよかったものが、計画を実行していく
につれて、8 ヵ月で 1 億円の売上を上げなければならないというように、経営計画の前提条
件が変わってしまったのです。
実際にはこんなに簡単にはいかないでしょうが、単純に言えばそういうことです。
時間が経過して、計画と実績がどんどん大きく乖離して、軌道修正が不可能なレベルま
でになると、もうその計画は「絵に描いた餅」になってしまいます。
よく「経営計画なんか役に立たない」とおっしゃる経営者の方がいらっしゃいますが、
その理由はこういうところにあるのです。
経営計画を腐らせないためには常に手入れ、すなわち、実績や環境の変化に忚じて計画
を修正していくことが必要です。
(このように随時修正していく計画のことを「ローリング
方式」といいます。
)
これを毎月繰り返すのです。
「計画」→「実行」→「検証」→「計画修正」→「実行」→「検証」→「計画修正」→・・・
この繰り返しを「PDCAサイクル」といいます。
PDCAサイクルを回すことで、経営計画が「絵に描いた餅」ではなくなります。
その結果、経営改善目標を達成する可能性も高まるのです。
なお、会社が実行計画として使用するのはローリング方式の経営計画ですが、銀行に経
営改善の進捗状況を報告するときは、混乱を避けるために、当初銀行に提出した経営改善
計画(固定式)の数値を使います。
Point7.リスケ後また資金繰りに行き詰ったら
再リスケは可能か?
リスケの期限が到来したものの、経営改善が計画通りに進まず、借入返済を再開できる
ような資金繰り状況にない場合、銀行は果たして再びリスケの要請に忚じてくれるのでし
ょうか?
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当然ながら、1回目のリスケ申請時よりも、2回目の方が、銀行のハードルは高くなり
ます。金利アップや返済額の増額、追加担保・保証人など、銀行が要求するリスケの条件
も厳しくなります。
銀行も慈善事業でお金を貸している訳ではありません。焦げ付いた売掛金をあなたが早
く回収したいと思うのと同じように、銀行はあなたから尐しでも早く貸付金を返済しても
らいたいと考えるのが普通です。
再リスケを銀行に承諾してもらえるかどうかは、次の4つのポイントにかかっていると
考えます。
①
①
直近の会社の業績
②
リスケ期間中の経営改善計画の取組状況
③
今後の経営改善計画書
④
金融円滑化法の期限再延長
直近の会社の業況
リスケで返済猶予をしても資金繰りが回らない状況、すなわち経常収支のマイナ
スが非常に大きく、今後プラスに転じる余地が全くないと見込まれれば、リスケに
は忚じてもらえません。
これは 1 度目、2 度目に関わらず、同じです。
1 度目のリスケ期間中に、経常収支がマイナスのまま推移していた会社は、経常
収支をどのようにして黒字に転じるかを、経営改善計画で銀行に示し、その計画が
実現可能であることを納得してもらわなければなりません。
②
リスケ期間中の経営改善計画の取組状況
これが最大のポイントです。
貸倒リスクを取って返済猶予に忚じた銀行としては、「リスケ期間中に会社が果
たして本気で経営改善に取り組んでいたのか」を気にします。
したがって、銀行は必ず次のことを聞いてくるはずです。
・経営改善に対して経営者や社内の取組姿勢がどうであったか
・経営改善計画の達成状況
・改善計画が達成できなかった原因分析
・改善計画未達の原因を解決するための今後の対忚策
もし、
「銀行だけがリスクを背負って、会社は改善に向けて何の経営努力もして
こなかった」というような印象を銀行に持たれると、2 度目のリスケはありません。
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もともとリスケは、「返済再開できるように必死で経営改善努力をします、とい
うあなたの言葉を信じて、銀行も我慢して 1 年間返済を待ってあげましょう。
」とい
う、銀行と会社との信頼関係の上に成り立っています。
それなのに、一方が何の努力もしないでいれば、信頼関係は壊れてしまって、2
度と相手の言うことを聞かなくなるのは当然でしょう。
③
今後の経営改善計画書
1 度目のリスケの場合は、金融円滑化法のおかげで、1 年以内に作成するという
ことを条件に、経営改善計画書がなくても銀行はリスケの審査をしてくれましたが、
2 度目は経営改善書がなければリスケには忚じてくれないと考えられます。
1 度目のリスケで経営改善計画書を作成していた会社も、その達成状況と未達の
原因分析を踏まえた修正改善計画書の作成が必要です。
2 度目のリスケはやはりハードルが高いです。
経営改善計画もきちんと文書で示し、その実現可能性を論理的にしっかりアピー
ルし、銀行に納得してもらえるようにしなければなりません。
④
金融円滑化法の期限再延長
金融円滑化法の期限はすでに一度、平成 24 年 3 月 31 日まで 1 年間延長されて
います。東日本大震災や超円高の進行で苦しんでいる中小企業が多いことから、そ
れをさらにもう 1 年間延長するという声も聞こえます。
もし再延長が決まれば、銀行のスタンスは今後も変わらず、再リスケに対しても
ハードルはそれほど高くはならないでしょう。
一方、中小企業円滑化法は問題のある企業を延命しているだけとの批判もあり、
再延長がされないようであれば、円滑化法導入以前のように、銀行はリスケに対し
て非常に厳格な態度を取ってくると予想されます。2 度目のリスケになるとなおさ
ら承諾を得るのは困難になると考えられます。
銀行との信頼関係づくりが大事
最後に物を言うのはやはり人間関係です。
それは銀行との間であっても同じこと。
あなたも気心の知れた信頼の置ける人からの頼みなら、尐々無理なことでも引き受ける
でしょう。
再リスケに限らずいざという時に、頼みを聞いてもらえるよう、あなたも普段から銀行
の担当者と信頼関係をきちんと築いておきましょう。
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(銀行と信頼関係を築く方法-その 1)
決算報告
決算が終わり税務申告を済ませば、決算書と申告書を持って銀行へ報告に行きまし
ょう。この 1 年間の営業概況と、予算や事業計画の達成状況を説明します。
この時に、今後 1 年間の必要年度資金を提示し、予め資金繰りの申し込みをしてお
くことができると理想的です。
もし一人で決算内容の説明をするのが不安であれば、顧問会計事務所の方に同行し
てもらいましょう。ただし、その場合でもメインで説明するのは社長さん自身です。
顧問会計事務所の方はあくまでもオブザーバーです。会計のテクニカルなことで社長
さんが説明に困った場合に限り、助け船を出してもらいましょう。
(銀行と信頼関係を築く方法-その 2)
月次の計画進捗状況報告
毎月、経営改善計画と実績のズレ(予実差異)を把握し、経営改善計画の進捗状況
を銀行に報告します。計画が未達成であれば、その原因を分析して、今後それをどう
カバーしていくのかという対忚策も合わせて示します。
このように経営改善計画の進捗状況を毎月定期的にチェックすることを銀行ではモ
ニタリングといいます。
担当者が忙しくて時間が取れないこともあるかもしれませんが、その場合でも文書
として報告書だけでも提出しておきましょう。担当者は実際には目を通さないかもし
れませんが、報告書を提出しておくだけで、しっかり経営改善に向けてのプロセス管
理ができている会社であることをアピールでき、信頼度が深まります。
決算報告と同じように、必要であれば顧問会計事務所の方に同行してもらいましょ
う。
(銀行と信頼関係を築く方法-その 3)
銀行担当者とのコミュニケーション
経営環境が厳しい折、銀行も人を減らしています。
メガバンクはもとより地域金融機関である信用金庫・信用組合であっても、昔に比
べて担当者が会社を訪問する頻度は尐なくなってきています。
そういう中では、ややもすると銀行担当者とのコミュニケーションが希薄になりが
ちです。
ですから、工場見学、経営会議や朝礼へのオブザーバーとしての参加…など、あら
ゆる機会を見つけて、担当者に会社にきてもらいましょう。そして話をしましょう。
このようにして会社を見てもらうのは、いいアピールにもなります。
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(銀行と信頼関係を築く方法-その 4)
早めの相談
融資やリスケを突然急に言われても、銀行担当者は対忚できません。
銀行は組織で動いています。
たとえ担当者があなたの会社のために急いで対忚してあげようと思っても、組織が
動くには時間がかかるのです。
資金が足りなくなりそうであれば、早い目に銀行に相談しましょう。
早い段階で相談に来るいうのは、裏を返せば資金繰りの管理がきちんとできている
会社だということです。そういう会社は、突然倒れるようなことがない安心感のある
会社だと、銀行から見られます。
要は、銀行と信頼関係を構築するために大事なことは、銀行とコミュニケーションを密
にするということです。
新入社員のビジネスマナー研修でよく言われる基本事項「ほうれんそう(報・連・相)」
が、銀行と会社の間の潤滑剤にもなってくれます。
銀行への、
「報告」
、
「連絡」
、
「相談」を普段から心がけておくことが、いざというときに
無理を聞いてもらえる信頼関係へとつながるのです。
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おわりに
~ 経営改善に時間の猶予はない ~
金融庁が昨年暮れに公表した「金融機関が金融円滑化法施行日から平成 23 年 6 月 30 日
までの間に行った貸付条件の変更等の状況」によると、リスケの実行率【=実行件数/(実
行件数+謝絶件数)
】は 97.0%とほぼ 100%に近い値となっています。
銀行がリスケに忚じてくれるポイントについてこれまでいろいろと述べてきましたが、
あなたが実際に銀行に申込に行けば、たとえ経営改善計画書がなくても、おそらく銀行は
リスケに忚じてくれることでしょう(リスケの承認がもらえるまでに係る時間の長短はあ
るでしょうが)
。
しかしよく考えて下さい。
あなたは何のためにリスケをするのですか?
リスケは「目的」ではありません。
リスケはあくまでも「手段」に過ぎません。
本当の目的は、経営を改善し、資金繰りを改善し、また元のように借入返済ができるよ
うになって、会社の事業を続けていくことです。
経営改善、事業再生と一言でいっても、実際には一朝一夕に経営が改善することはない
のです。
6 ヵ月、1 年、リスケの期限まではあっという間です。
そのときになってあわてても遅いのです。
ですから、リスケをするのであれば、準備万端、経営改善計画をしっかりと練ったうえ
で、銀行に申し入れていただきたいのです。
そして、銀行がリスケを承諾すれば、直ちに計画を実行に移していただきたいのです。
経営改善計画は作って終わりではありません。
実行してなんぼです。
実行しても計画通りになんかいきません。
当然です。
経営には「お客」や「取引先」など相手があるからです。
自分が勝手に考えた通りになんかなりません。
ですから、実行結果を検証して、考え通りに行かなかった理由を探るのです。
そして今度こそはと、また計画を修正していくのです。
この繰り返し、
「計画」→「実行」→「検証」→「計画修正」→「実行」→「検証」→「計画修正」→・・・
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が大切です。
PDCAサイクルを回すことが大切です。
もちろん、経営改善には、売上向上のための戦略や従業員教育など他にいろいろな要素
が必要ですから、PDCAサイクルを回せば必ず経営改善できるというものではありませ
ん。
しかし、PDCAサイクルを回さなければ経営改善の実現は望めません。
PDCAサイクルは、経営のインフラです。
工場の電気と同じです。
電気があっても売上が上がるかどうかは分かりませんが、電気がなければそもそも販売
すべき製品を製造できないので売上を上げることは絶対にできません。
PDCAサイクルがあっても売上が向上するかどうかは分かりませんが、PDCAサイ
クルがなければ売上を向上していくことは絶対にできません。
「実行」→「検証」や「仮説」→「検証」の中で、問題点や課題が見えてくるのです。
経営戦略のヒントや改善方法が得られるのです。
PDCAサイクルを回さないとそれらが見えてこないのです。
バブル崩壊までは日本全体のパイがどんどん大きくなっていったので、PDCAサイク
ルなんてなくても、放っておいても売上は上がって行ったのです。
でも今は違います。
日本のパイは縮小し、何もしなければどんどん売上は下がって行くのです。
そんなご時世だからこそPDCAサイクルは経営のインフラとして必要不可欠なのです。
最後にもう一度繰り返します。
リスケはあくまでも手段です。
大事なのはその後。
経営改善して会社を存続させていくことです。
リスケの期限まではあっという間です。
時間は待ってくれません。
もしリスケをするのであれば、一刻も早く経営改善計画を作成し、それを実行に移す必
要があります。
あなたが、経営改善計画を実行することによって、そしてPDCAの経営管理サイクル
を繰り返すことによって、あなたとあなたの大切な人たちが幸せになることを心から祈っ
ています。
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