豚感染症について わが国では、家畜伝染病の危険度を再評価し、より効果的な防疫対策を確立す る為、家畜伝染病予防法の一部を改正した法律が1998年に施行されました。 届出を必要とする豚の監視伝染病 監視伝染病 疾病の種類 法定伝染病 牛疫・口蹄疫・流行性脳炎・狂犬病・水胞性口炎・炭疽 出血性敗血症・ブルセラ病・豚コレラ・アフリカ豚コレラ・豚水胞病 届出伝染病 類鼻疽・気腫疽・レプトスピラ症・サルモネラ症・ニパウイルス感染症・ 野兎病・トキソプラズマ病・オーエスキー病・ 伝染性胃腸炎・豚エンテロウイルス性脳脊髄炎・豚繁殖呼吸 障害症候群・豚水疱疹・豚流行性下痢・萎縮性鼻炎・豚丹毒・豚赤痢 ● 豚繁殖呼吸障害症候・・・PRRSウイルスの感染によって生じる。 伝播が早く、発病率が高い。 妊娠豚では異常産、子豚では呼吸困難を生じる。 (感染経路) 感染豚の鼻汁、糞便および精液に排出され、それが接触、 飛沫、交尾することにより感染するが、近隣農家間では 空気感染も認められている。 (臨床症状) 繁殖雌豚 生産子豚 (予防措置) 適切な換気や飼育密度の確保 ワクチン接種はPRRSウイルスに対する抗体検査により 豚集団の免疫状態を把握して適性に使用する。 食欲減退、発熱、異常産、泌乳停止 開脚姿勢、頭部や眼瞼の浮腫、震え ● 豚流行性下痢・・・・コロナウイルスである豚流行性下痢(PED)の 感染によって生じる伝染病で伝染性胃腸炎(TGE) 同様の形態を示すが、抗体的に区別される。 (感染経路) 疫学分析によると、ウイルス保有豚の導入、と畜場等の集合 施設間の往来、飼料運搬業者等の来場者等が主な侵入経路と されている。 (臨床症状) 嘔吐に続いて水様性下痢がみられ、その間は食欲減退と体重 減少が著しい。 (予防措置) 衛生管理に気をくばり、発生豚舎とは徹底隔離し洗浄、消毒 乾燥を繰り返しウイルスの常在化を防止、導入豚及び分娩前 の母豚にPEDワクチンを接種する。 ● サルモネラ症・・・・主に Salmonella Choleraesuis 及び S.Typhimurium の感染によって、黄灰白色の下痢便を生ずる急性又は 慢性の疾病であり、人畜共通感染症である。 ● (感染経路) 感染経路は不明ですが、カラスなどの野鳥の侵入後に発症す る事が多いことから、防鳥対策は重要である。 (臨床症状) S.Typhimurium:哺乳子豚から肥育豚まで幅広くみられ、黄 灰白色の下痢便を呈した後、進行は早く敗 血症型を呈する場合が多く、致死率が高い。 S.Choleraesuis :離乳後の幼若豚に多くみられ、呼吸器と消 化器に異常を呈し衰弱する慢性型である。 (予防措置) 消毒には塩素系薬剤が有効であり施設内、豚舎内及び踏込槽 に用いられ、予防の目的で飼料添加剤の投与が有効である。 豚赤痢 ・・・・豚赤痢菌 Brachyspira hyodysenteriae の感染により粘 血下痢便や削痩を呈し、主に2∼5ヶ月齢の肥育豚に 多発する急性及び慢性の伝染病である。 (感染経路) 豚の間の直接接触でなくても起こることが分かり、単に感染 した豚がいた場所に接近することにより疾病が発生する。 感染した糞は、車両、道具、衣服、長靴を通して拡散するこ とがある。 (臨床症状) 病態の進行に伴って、灰黄色軟便から緑褐色の粘血が混ざっ た泥状便、さらに重症例では黒褐色水様血便が出る。又、 40∼41℃の発熱、食欲不振、脱水症状がみられる。 (予防措置) 導入豚の隔離検査は不可欠です。 B.hyodysenteriae は乾燥や消毒に弱いので空舎期間を設けて 消毒、乾燥することが望ましい。治療にはリンコマイシン製 剤やチアムリン製剤が有効である。 ● 萎縮性鼻炎・・Bordetella bronchiseptica(Bb)及び毒産生 Pasteurella multocida(tPm)の混合感染又はいずれかにより呼吸器系 .異常をきたし鼻甲介の萎縮変形を主徴とする慢性疾患です。 (感染経路) 主な感染は、病豚及び保菌豚との接触又はくしゃみ、咳の時 飛沫を介して成立し、気候不順などの環境要因や移動などの ストレスも発病あるいは病態の進行を促す事になる。 (臨床症状) 初期には鼻汁漏出、鼻つまり、くしゃみ、アイパッチなどが 見られ、進行すると上顎の短縮による不整交合、鼻萎縮、鼻 湾曲などの症状を呈する。 (予防措置) Bb の不活化菌体、コンポーネント及びトキソイド、又は tPm トキソイドやこれらの混合ワクチンを用いる。治療には、サ ルファ剤の飼料添加、サルファ剤及びオキシテトラサイクリ ンの注射オキシテトラサイクリン及びカナマイシンの鼻腔内 噴射がある。 ★ いくつか豚の疾病について挙げましたが、疾病の早期発見に必要な感染の 特性や予防を図るためのワクチンの適切な接種と効果的な消毒方法の確立 は動物用医薬品の適正使用と共に生産現場の重要な課題です。
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