増補三訂 葬儀概論(2013年3月第3刷・11月第4刷)

補遺
増補三訂葬儀概論
( 2013 年 3 月 第 3 刷 の 主 な 修 正 点 )
▼ p89
行政解剖と司法解剖
*解剖費用は、司法解剖が国及び都道府県、行政解剖が都道府県、病理解剖が病院、
個人が申し出たときは個人が、それぞれ負担することになっていますが県や事例によ
り異なります。
監察医制度のない地域では「行政解剖」を一般に「承諾解剖」とよんでいます。
死因が診療していた傷病以外のもの、診察して間もなく診療が行われても診断が不
十分な場合には、医師は死体検案書を発行します。但し、犯罪が関係している疑いの
ある死体(異状死体)は医師が警察に届け出る必要があります。
▼ p328
墓地、埋葬等に関する法律
「 4 . 墓 地 、 納 骨 堂 、 火 葬 場 の 経 営 に は 都 道 府 県 知 事 の 許 可 が 必 要 で あ る こ と ( 第 10
条 )」 に 以 下 の 追 記 を 挿 入 し ま す 。
* 平 成 24 年 4 月 1 日 よ り 法 律 が 一 部 改 正 さ れ 、「 墓 地 、 納 骨 堂 及 び 火 葬 場 に 係 る 経 営
許 可 ( 新 規 )、 変 更 許 可 ( 拡 張 、 縮 小 )、 廃 止 許 可 施 設 へ の 立 ち 入 り 検 査 等 、 施 設 の 整
備改善命令等は都道府県知事から市区長【町村は除く】へ移譲された。
( 2013 年 11 月 第 4 刷 の 主 な 修 正 点 )
▼ p69-70 火 葬 の 推 進 と 施 設 の 近 代 化
補足
戦 前 の 1940( 昭 和 15)年 に 55.7% と 初 め て 過 半 数 に 達 し た 火 葬 率 は 、戦 後 一 気 に 上
昇 し ま す 。特 に 1952( 昭 和 27)年 に 火 葬 場 整 備 費 に 対 す る 国 の 融 資 制 度 が 発 足 す る と 、
各地方自治体で火葬施設の新設、統廃合、改善が推進され、火葬率上昇の大きな要因
となりました。
1960( 昭 和 35) 年 に 63.1% と 6 割 を 超 え る と 、 1965( 昭 和 40) 年 は 71.8% 、 1970
( 昭 和 45)年 79.2% 、1975( 昭 和 50)年 86.5% 、1980( 昭 和 55)年 91.1% 、1985( 昭
和 60) 年 94.5% 、 1990( 平 成 2) 年 97.1% と 増 え 続 け 、 1995( 平 成 7) 年 に 98.3% 、
2000( 平 成 13)年 に 99.1% 、2010( 平 成 22)年 に は 99.9%( 厚 労 省 衛 生 行 政 報 告 例 )
となっています。
土葬については墓埋法では禁止されていませんが、多くの自治体が条例や規則等で
禁止して特別な場合以外の火葬は現実的に困難となっています。日本の火葬率は世界
一の高水準です。
現在では「火葬場らしくない」近代的施設として無煙化、無臭化、緑地化を進め、
地 域 住 民 の 嫌 悪 感 を な く す た め「 斎 場 」
「 斎 苑 」な ど と 称 す る と こ ろ が 多 く な り ま し た 。
火葬施設の主なものは東京、沖縄などを除き公営化されました。
火 葬 施 設 の 全 国 団 体 と し て は 、 1972( 昭 和 47) 年 に 日 本 火 葬 施 設 整 備 管 理 協 会 が 厚
生 省 ( 当 時 ) の 肝 入 り で 発 足 、 そ の 後 日 本 環 境 施 設 管 理 協 会 と 名 前 を 変 え 、 1995( 平
成 7) 年 に は 日 本 環 境 斎 苑 協 会 が 発 足 し ま し た 。
阪神・淡路大震災で火葬場の一部が稼働停止し、大きな影響が出たことから、災害
1
時 の 対 策 、 周 辺 火 葬 場 と の 連 携 に も 取 り 組 ん で い ま す 。 2003( 平 成 15) 年 以 降 は N P
O日本環境斎苑協会として活動しています。また任意団体として発足した火葬研究協
会 が 2009( 平 成 21) 年 一 般 社 団 法 人 火 葬 研 と し て 活 動 し て い ま す 。
2011( 平 成 23) 年 の 東 日 本 大 震 災 に お い て も 多 く の 火 葬 場 が 被 災 、 あ る い は 停 電 や
燃料がないことで停止を余儀なくされました。一部では公衆衛生上の理由から、火葬
できない遺体の仮埋葬も行われました。しかし、遺族の火葬を求める声が強く、宮城
県 で 仮 埋 葬 さ れ た 約 2,000 体 が 掘 り 起 こ し 、 再 納 棺 さ れ ま し た 。 掘 り 起 こ し に は 現 地
の葬儀社があたり、腐敗が進行し、強い臭気、関節で分断される等の状態の遺体を尊
厳をもって扱ったことは記憶されるべきです。
火葬をめぐる地域習俗の違い、火葬を葬儀 のどの時点で行うかということと、火葬
場の拾骨の方法は、全国で大きく 2 つに分かれます。
東京や関西その他では葬儀・告別式の後に火葬を行います。これが一般的ですが、
北 海 道 の 一 部( 函 館 ・ 根 室 )、東 北 地 方 全 域 、茨 城 、千 葉 北 部 、栃 木 の 一 部 、新 潟 の 一
部、長野、山梨の一部、静岡北部、鳥取の一部、熊本の一部、沖縄の一部その他では
葬儀・告別式に先立って火葬を行います。
これは古くからの慣習というよりは、火葬導入にあたって、多くの地域で火葬を土
葬の代わりと考えたのに対し、前記の地域では葬儀の最終局面を墓地ヘの納骨と見る
考えから火葬を葬儀・告別式に先行させたものと思われます。
また、拾骨の方法は、日本列島を能登半島と静岡中部を結ぶラインで分けると、東
側が全部拾骨、西側が部分拾骨で骨壺の大きさが異なります。西側でも広島や山口の
一部、四国や九州の一部などでは全部拾骨が見られます。
部 分 拾 骨 の 場 合 で も 、大 阪 の よ う に「 本 骨 」と 言 わ れ る 第 二 頚 堆( 通 称「 喉 仏 」、白
骨と言われる)に指骨・頭蓋骨の一部を加えたものと、それ以外である「胴骨」と言
われる足から頭までの一部の骨とを分けて拾骨して、本骨等は本山納骨(高野山、本
願寺等)をし、その他の胴骨は家の墓等に納骨したり、あるいは全体の 3 分の1程度
を拾骨するなど、さまざまな地域慣習の違いが見られます。同時に、戦後に人間の移
動が多く行われるようになったため、自分が住んでいる地域の慣習とは異なる拾骨方
法を希望する例も出てきています。
( 補 足 ) 2012 年 衛 生 行 政 報 告 例 ( 生 活 衛 生 関 係 ) に よ れ ば 、 胎 児 を 除 く 死 体 総 数 は
129,681.火 葬 率 は 99.98% で 、埋 葬( = 土 葬 )は 0.02% で 総 数 は 237 体 と な っ て い ま
す。
▼ p 77 東 日 本 大 震 災
( 補 足 ) 2013 年 11 月 8 日 付 警 察 庁 発 表 に よ れ ば 、 死 者 15,883 人 、 行 方 不 明 2,651 人
( 岩 手 県:死 者 4,673 人・行 方 不 明 1,143 人 。宮 城 県:死 者 9,537 人・行 方 不 明 1,296
人 。 福 島 県 : 死 者 1,606 人 ・ 行 方 不 明 207 人 。 行 方 不 明 者 の ほ と ん ど は 家 族 申 述 に 基
づく死亡届を提出、各自治体では受理済み。したがって、各自治体公 表の死者数合計
は 約 18,500 人 と な る )。2012 年 12 月 復 興 庁 発 表 に よ れ ば 、発 災 3 日 目 の 避 難 者 数 は 約
47 万 人 、 2012 年 12 月 現 在 の 避 難 者 数 は 321,433 人 、 う ち 県 外 へ の 避 難 者 は 岩 手 県 か
ら 約 1,700 人 、宮 城 県 か ら 約 8,100 人 、福 島 県 か ら 約 58,000 人 、と 原 発 事 故 発 生 に よ
る 福 島 県 か ら の 避 難 者 が 突 出 し て 多 い 。 2013 年 3 月 現 在 、 復 興 庁 の 調 査 に よ る と 「 震
災 関 連 死 」と 各 自 治 体 が 認 定 し た 数 は 、岩 手 県 が 389 人 、宮 城 県 862 人 、福 島 県 1,383
人 、 そ の 他 54 人 の 計 2,688 人 に の ぼ る 。
2
▼ p100-101 死 体 火 ・ 埋 葬 許 可 証
死亡届を市区町村に提出して受理された後、死亡届を受理した市区町村はこれに対
して許可証を発行します。
(市区町村によっては許可証を受けるのに許可申請書や許可
証 の 写 し の 交 付 申 請 書 を 要 す る と こ ろ も あ り ま す 。)
埋 葬( = 土 葬 )ま た は 火 葬 は 死 亡 後 24 時 間 以 内 は で き ま せ ん 。但 し 、一 類・二 類 ・
三 類 感 染 症 を 保 持 し た 遺 体 の 場 合 に は 、原 則 火 葬 で 、か つ 、24 時 間 以 内 で あ っ て も
葬ができます。
火
火 葬・埋 葬 許 可 証( 法 律 で 言 う「 埋 葬 」と は「 土 葬 」の 意 味 で し か 使 用 さ れ ま せ ん 。
最近は埋葬=土葬がほとんどないために「火葬許可証」と表現される例が増加。厚労
省資料でも近年は「火葬許可証」と表現)は、死亡届を受理した市区町村が発行しま
すが、火・埋葬許可証があれば、どこの地であっても火葬(または埋葬)することが
できます。但し、死亡届を提出した市区町村とは別の土地で火葬(または埋葬)をす
る場合は、願書が必要なことがあります。
誰も火葬または埋葬する人がいない場合には死亡地の市区町村がこれを行います。
火葬した後に墓地等に納骨(焼骨の埋蔵または収蔵)する場合には火・埋葬許可証
に火葬済みであることの証印を火葬場で受け、それを墓地等の管理者に提出する必要
があります。
*「火葬が終わると火葬許可証は埋葬許可証に変わる」と説明している実用書があり
ますが、これは法律的に埋葬=土葬ということが理解できていないための誤解です。
墓地または納骨堂に納めるときに火葬場の管理者から「火葬済」との押印された火葬
証 明 証 を 付 す 必 要 が あ り ま す 。墓 地 に は 火 葬 さ れ た 骨 = 焼 骨 の「 埋 蔵 」、納 骨 堂 へ は 焼
骨の「収蔵」というのが墓埋法に定められた言い方です。
分骨する場合には、火葬場の管理者より、分骨する数だけの分骨証明(=火葬証明
書 )を 発 行 し て も ら い 、分 骨 す る 際 に 墓 地 等 の 管 理 者 に 提 出 す る 必 要 が あ り ま す 。( 分
骨証明は、いったん納骨した本骨の埋蔵または収蔵元の管理者から、埋(収)蔵証明
書 と し て 得 る こ と も 可 能 で す 。)
▼ p217 相 続 税 の 計 算 ( 注 )
平 成 25 年 度 税 制 改 正 大 綱 が 決 定 し 、2015( 平 成 27)年 1 月 1 日 よ り 相 続 税 、贈 与 税 は 、
① 基 礎 控 除 額 は 、 こ れ ま で 「5000 万 円 + 1 千 万 円 ×法 定 相 続 人 数 」だ っ た の が 「 3000 万
円 + 600 万 円 ×法 定 相 続 人 数 」と な り ま す 。基 礎 控 除 額 の 引 き 下 げ に よ っ て 、課 税 対 象
者を拡大するとともに、②基礎控除後の法定相続分相当額が 2 億円超以上の場合、税
率 の 5% 引 き 上 げ を し 、 最 高 税 率 は 現 行 の 50% か ら 55% に な り ま す 。 ③ 保 険 料 負 担 者
兼被保険者の死亡によって法定相続人が受け取った死亡保険金には非課税控除の規定
が あ り 、 改 正 前 は 「 500 万 円 ×法 定 相 続 人 数 」 で あ っ た の が 、 改 正 案 で は 非 課 税 控 除
が 「 500 万 円 ×法 定 相 続 人 の う ち 次 の 者 の 数 。 ① 未 成 年 者 ② 障 害 者 ③ 相 続 開 始 直 前 に
被相続人と同一生計であった者」となっています。それ以外にも、教育資金の一括贈
与に係わる贈与税の非課税措置や相続時精算課税制度が拡充され事業継承が 容易にな
る、等の改正が行われました。
▼ p328
⒊
墓地、埋葬等に関する法律
火葬許可証
そのために許可証(火・埋葬許可証)を公布すべきこと(第 8 条)
3
*「火・埋葬許可証」とは「火葬または埋葬の許可証」の意味です。墓埋法では埋葬
(「 土 葬 」の 意 )も 認 め て い ま す が 、実 際 に は 9 割 以 上 の 市 区 町 村 が 条 例 等 で 死 体 埋 葬
( 土 葬 )を 禁 止 、規 制 し て い る の で 、「 火 葬 許 可 証 」と 表 記 す る 市 区 町 村 が 増 加 し て い
ます。火葬した焼骨を墓地に埋蔵、納骨堂に収蔵するには「火葬済」との証印がつい
た「火葬許可証を墓地・納骨堂の管理者に提出することが義務付けられています(第
14 条 )。「 改 葬 」 の と き は 改 葬 前 の 墓 地 ・ 納 骨 堂 の 所 在 す る 市 区 町 村 か ら 得 た 「 改 葬 許
可 証 」を 、
「 分 骨 」の 埋 蔵( 収 蔵 )に あ た っ て は 火 葬 場 管 理 者 の 分 骨 証 明( 実 際 に は「 火
葬 証 明 書 」) ま た は 分 骨 の 元 が あ っ た 墓 地 ・ 納 骨 堂 の 管 理 者 が 発 行 す る 「 埋 蔵 ( 収 蔵 )
証明書」を提出されることが義務付けられています。
4