Satellite Symposia, Abbott 6 June RAの核心にせまる RA患者における心血管(CV) リスクの理解とマネジメント Getting to the heart of RA: Understanding and managing the cardiovascular risks in people living with rheumatoid arthritis . Rheumatoid arthritis: more than one disease. Weinblatt M. Monitoring cardiovascular risk in rheumatoid arthritis. Kitas G. Determining cardiovascular risk in rheumatoid arthritis. Semb AG. Managing cardiovascular risk in rheumatoid arthritis. Nurmohamed M. 関節リウマチ (RA)患者の死亡率の高さには心血管病(CVD : Cardiovascular disease) が強く関係することが明らかになっている。RA 患者において心血管病を進展させるリスク因子も複数特定され、 これらリスク因子が疾患アウトカムのみならずRA患者の生命予後にも 大きく影響することを考慮すると、RA診療に心血管(CV) リスクの評価とモニタリングを組み入れることは喫緊の課題といえる。 シンポジウムでは最新のエビデンスとEULARリコメンデーションに基づき、RA患者におけるCVリスクとそのマネジメントについて議論が行 われた。 ここではその概要を紹介する。 RA患者と心血管病 組織、骨格筋、肝臓、血管内皮などの組織に作用し、 インスリン抵抗 性、脂質異常症、酸化ストレスの増加、血管内皮機能不全といったア 最近報告された9つの観察研究(RA患者39,901例) のメタアナリシ テローム形成につながる変化を引き起こす4)。 スにおいて、RA患者の心血管病の発症リスクは、一般住人と比較して また、炎症は動脈硬化病変の形成と進展をも促進している。TNFα 1) 48%有意に高いことが示された 。 また、一般住人と比較してRA患者で を中心とした炎症性サイトカインは、内皮細胞障害、単球の接着と血 は心筋梗塞のリスクは68%、脳血管発作のリスクは41%も有意に高い 管外遊走、血管壁の粥状化や内膜肥厚、 プラーク破裂の各段階に関 ことも示されている1)。 このRA患者の心筋梗塞のリスクは、糖尿病患者と ほぼ同等に高いことも報告されている2)。 与すると考えられている。 さらに、炎症の亢進によって総コレステロール (TC) は低下することが知られているが、RAの炎症時に低下するのは 米国のコホート研究3)によると、RA発症後10年間のCVイベント (冠血行 主にHDLコレステロール (HDL-C) であるためTC/HDL-C比はむしろ 再建術施行、無症候性・非致死性心筋梗塞、 うっ血性心不全、心血管死) 上昇しており5),6)、CVリスク上昇との関連が示唆されている。 の絶対発現率は、40∼49歳で10.2% (非RAコホートは2.1%)、50∼59 このようにRAでは、炎症が古典的CVリスク因子を増強させるととも 歳で11.9% (非RAコホートは 9.2%)、60∼69 歳で29.4%と、RA発症年 に、 アテローム性動脈硬化を促進し、CVリスクの上昇をもたらしている 齢とともに上昇していた。 この解析では実に60∼69歳のRA患者の全員 が、推定10%を超える10年間CVイベント発現リスクを有しており、20%を 図1 冠動脈疾患発症の予測因子 超えるリスクを有する患者割合も85%に達した。 また、古典的CVリスク因子 の有無別にみると、60∼69歳のRA患者の10年間CVイベント絶対発現 リスク因子 率は、 リスク因子を持たない患者では16.8%であるが、喫煙のリスク因子を 総コレステロール 持つ患者では26.9%に上昇した。 さらにCVイベント絶対発現率はリスク因 現在の喫煙 (vs 喫煙歴なし) 子が増えるに従い上昇し、複数のリスク因子(喫煙、高血圧、脂質異常症、 糖尿病) を持つ患者では60.3%であった。 これらより、RA患者においては個々のCVリスク・プロファイルに応じて、 収縮期血圧 CRP CVリスク低減に向けた治療戦略が必要と考えられる。 赤沈(ESR) RAにおける炎症とCVリスク von Willebrand因子 1 一般的に古典的CVリスク因子として、高血圧、脂質異常、喫煙、糖 尿病(インスリン抵抗性)、肥満、運動不足、性別(男性)、加齢などが挙 げられるが、RA患者の心血管病発症率の高さはこれら因子のみでは説 明できない。RA患者におけるCVリスクの上昇には、古典的CVリスク因 子の他に、 “炎症” が関与することが複数の報告で明らかになっている。 その機序については十分解明されていないが、炎症関節の滑膜か ら放出されるTNFαやIL-6などの炎症性サイトカインが重要な影響を及 ぼしていると考えられる。全身に放出された炎症性サイトカインは脂肪 2 4 冠動脈心疾患発症のオッズ比 (95%CI) 対象・方法 心筋梗塞の既往歴のない一般住人を登録したアイスランドのコホート研究において、追 跡期間中に冠動脈イベント (非致死性心筋梗塞または心血管死) を発症した患者2,459 例(発症例) と発症しなかった3,969例 (コントロール) を対象に、 ベースライン時の炎症性 マーカーと冠動脈イベント発症の関連を検討した。 オッズ比は、年齢、性別、登録時期、冠動脈疾患リスク因子、 社会経済的状況を調整後、 炎症性マーカーおよび古典的リスク因子の値が上位1/3と下位1/3に分布する患者の 間で比較した。 Danesh J, et al. N Engl J Med 2004; 350: 1387-1397改変 EULAR 2012 と考えられている。欧州心臓病学会(ESC) と欧州動脈硬化学会 (EAS) による脂質異常症のマネジメントに関するガイドラインでも、RA スクは、R F 陰 性 R A 患 者で1 . 2 8 倍(ハザード比1. 2 8 ; 9 5%C I 0.93-1.78) であったが、 RF陽性RA患者では2.59倍 (ハザード比2.59; などの自己免疫疾患ではアテローム性動脈硬化が促進される結果、 95%CI 1.95-3.43) に達した11)。 心血管病の発症と死亡のリスクが高いことが記載されている7)。炎症と このように、 RA関連CVリスク因子の存在により、 RA患者のCVリスクは 心血管病との関連を示す臨床報告として、一般住人コホートで冠動脈 さらに上昇することから、古典的CVリスク因子に基づいた既存のリスク評 疾患の発症例と非発症例(コントロール) の炎症性マーカーを検討した 価モデルに、 RA関連CVリスク因子の影響を組み込んだ評価が必要とされ 解析 8)では、ベースライン時のCRP高値やESR高値は、古典的リスク ている。 因子などで調整後も冠動脈疾患の独立した予測因子であることが示 なお、 古典的CVリスク因子である肥満はRA患者のCVリスクを上昇させ されている (図1)。同様にRA患者においても、炎症はやはりCVリスク ないという報告もあり、 むしろ低BMI (20kg/m2未満) のRA患者でCVイベ の独立した予測因子であることが報告されている9)。 ントおよび心血管死の増加が認められている3),12)。 これには、 リウマチ悪液 炎症と心血管病の強い関連を考慮すると、慢性炎症を特徴とする 質 (rheumatoid cachexia) とよばれるRAに特徴的な身体組成が影響して RA において炎症をコントロールすることはCVリスク低減させ、将来の いると考えられる。 リウマチ悪液質では、 産生が亢進した炎症性サイトカイン 心血管病の発症抑制や予後改善にも寄与すると考えられる。 (特にTNFα) が骨格筋でのタンパク質分解を促進し、 また、 痛みや倦怠感 によって日常動作が抑制されることにより、骨格筋量が減少している。 リウ RAに特徴的なCVリスク因子の影響 マチ悪液質では通常、 筋量の減少とともに脂肪量の増加がみられるが、 脂 肪量も減少して低BMIを呈する (classic cachexia) 一部の患者は疾患活 炎症によりCVリスクが大きく上昇するRA患者のCVリスクの評価で 動性が高く関節予後も不良で、 非常に高いCVリスクを有することが報告さ は、古典的CVリスク因子に加えて、RAに特異的なCVリスク因子も考 れている13)。 つまり、 低BMIのRA患者には脂肪量の少ない悪液質が存在 慮することが必要である。 これまでCVリスク上昇に関与すると報告され し、 コントロールされていない慢性炎症により心血管予後も不良である可能 たRA関連CVリスク因子として、RF陽性、抗CCP抗体陽性、ACPA陽 性があるため、 CVリスクの評価とマネジメントには特に注意が必要である。 性、赤沈亢進のほか、RAの活動性や重症度を示す腫脹関節数、関節 破壊進行、 リウマトイド結節等の関節外症状、 さらにRA治療薬などが挙 CVリスクのモニタリング げられている10)。 RA関連CVリスク因子が存在すると、心血管病の進行も増悪する。 RA患者は高いCVリスクを有しているが、RAの日常診療におけるCV 心血管病の末期像といえるうっ血性心不全の発症リスクを非RAコホー リスクの評価とモニタリングは十分ではない。英国の調査によると、外来 トと比較した検討では、古典的CVリスク因子で調整後の心不全発症リ RA患者の7割が高血圧 (収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧 表1 RAおよび炎症性関節炎のCVリスク・マネジメントに関するEULARリコメンデーション 関節リウマチ (RA)、関節症性乾癬(PsA)、強直性脊椎炎(AS) のCVリスク・マネジメントに関する10のリコメンデーション リコメンデーション エビデンスレベル 推奨度 1. RAはCVリスクが高い状態にあると認識する (エビデンスは少ないがASとPsAにもあてはまる) 。 CVリスクの上昇は、古典的心血管リスク因子と炎症の両方が関与していると考えられる。 2b-3 B 2. 疾患活動性の適切なコントロールがCVリスクの低減に必要。 2b-3 B 3. 各国ガイドラインに従ったCVリスク評価がすべてのRA患者に推奨される (AS、 PsA患者も年1回は評価)。 抗リウマチ治療が変更された場合は、 CVリスクを再評価する。 3-4 C 4. RA患者のCVリスクを1.5倍増加させる因子を考慮したリスク評価モデルを適用する。 CVリスクが1.5倍となる条件は、 RA患者が以下3項目のうち2項目に該当する場合である。 ■ 罹病期間が10年を超える ■ RF陽性 または 抗CCP抗体陽性 ■ 関節外症状がある 3-4 C 5. SCOREリスク評価モデルを利用する場合は、TC/HDLコレステロール比を取り入れる。 3 C 6. 各国ガイドラインに従った治療介入を実施する。 3 C 7. スタチン、ACE阻害薬 および/または ARBは、抗炎症作用を有するため治療オプションとして望ましい。 2a-3 C-D 8. Cox2阻害薬とNSAIDsのCVリスクへの影響はまだ明らかになっていないため、 心血管病の既往患者やCVリスク因子を有する患者への投与には慎重を要する。 2a-3 C 3 C 3 C 9. ステロイドは、必要最低量で使用する。 10. 禁煙が推奨される。 CV:Cardiovascular、 SCORE:Systematic Coronary Risk Evaluation Peters MJ, et al. Ann Rheum Dis 2010; 69: 325-331 EULAR 2012 ≧90mmHgまたは降圧薬服用) であったが、 そのうち4割の患者は高血 14) 古典的CVリスク因子で調整後、抗TNF製剤投与患者ではMTXを除く 圧と診断されておらず降圧治療が行われていなかった 。 非生物学的DMARDs投与患者と比較して、CVリスクは6割低下して RA患者においては、個々のCVリスク因子をモニタリングすると同時 いた。 なお、 ステロイド投与患者では、 ステロイド非投与患者と比較して に、 リスク評価モデルから推定される複合的CVリスクを考慮して、治療 CVリスクが有意に上昇しており、 リスク上昇にはステロイド用量依存性 方針に反映していくことが重要である。複合的CVリスクの算出に用い が認められた (p=0.04)。 また、観察研究のメタアナリシスにおいて20)、 られるリスク評価モデルとして、SCOREモデルやFraminghamスコア 抗TNF製剤投与患者ではDMARDs投与患者と比較して、CVイベント などがある。SCOREモデルでは、年齢、収縮期血圧、TC値(または 発症リスクが44%有意に低下することが認められた (図2)。 この解析 TC/HDL-C比)、性別や喫煙などの古典的CVリスク因子をもとに10 では、心筋梗塞(19%低下)、脳血管発作(31%低下) についても、抗 年間の心血管死のリスクが推定される15)。 このモデルにはRA関連CV TNF製剤投与患者で有意なリスク低下を認めた。 リスク因子は含まれていないため、RA患者に適用する場合は、RAに関 なお、英国のBSRBRレジストリの解析(追跡期間中央値1.66年) で 連するCVリスク因子も考慮して、 リスクを評価することが必要となる。 は21)、抗TNF製剤投与6ヵ月でのDAS28に基づく有効例は無効例と EULARから、RAおよび炎症性関節炎のCVリスク・マネジメントに 比較すると、心筋梗塞発症リスクが64%有意に低下していた (表4)。 こ 16) 関するリコメンデーションが発表されているが (表1) 、RA患者のCVリ の結果は、炎症の抑制がCVリスクを低減するという仮説を支持するも スクを増幅させる因子を、 リスク評価モデルに取り入れることを推奨して のである。 また、速やかな疾患活動性の改善に伴う心筋梗塞発症率の いる。 リコメンデーションでは、罹病期間が10年を超えること、RF陽性ま 早期減少は、炎症が関与するとされるプラーク破裂がTNFαの阻害に たは抗CCP抗体陽性、関節外症状という3項目のRA関連CVリスク より抑制された可能性が示唆される。 因子のうち少なくとも2項目に該当する場合に、推定CVリスクは1.5倍 にすべきとされている。 個々のCVリスク因子の多くは、治療介入により修正可能である。各 国のガイドラインに従ってCVリスクを定期的に評価し、治療を行うこと が推奨される。 CVリスクを考慮したRA治療 CVリスクの低減を考慮したRA治療においては、治療薬のCVリスク への影響も見過ごすことはできない (表2)。特にステロイドは炎症を抑 まとめ ■ RA患者でのCVリスク上昇には、古典的CVリスク因子とRA関連 CVリスク因子が関与し、慢性炎症が強く影響している。 ■ RA患者におけるCVリスクのマネジメントでは、 高血圧や脂質異常と いった古典的CVリスク因子の改善に向けたTreat toTarget、 さらに RAの治療目標である臨床的寛解の達成に向けたTreat to Target (すなわち炎症の抑制) という、両方向からの治療アプローチが重要 である。 ● ● 個々のCVリスク因子と、 リスク評価モデルで推定される複合的 CVリスクの両方をモニタリングし、修正可能なリスク因子への治 療介入を検討する。 制することでCVリスクを低減する可能性がある一方、脂質異常、 インス リン抵抗性や耐糖能異常、 高血圧、肥満などを悪化させCVリスクの上 昇をきたす可能性もある。 このためEULARリコメンデーションでは、 ステ ロイドはできるだけ低用量、短期間の使用にとどめることが推奨されてい る。 NSAIDsやCox2阻害薬についてはエビデンスが十分でないもの RAの日常診療にCVリスク因子のモニタリングを組み入れる。 ● 古典的CVリスク因子を改善するために、 適切な血圧と脂質レベ ルを目指した治療や生活習慣の改善を行う。 炎症を効果的に抑制するためにも、治療目標に向けてRAの疾患活 動性を適切に制御していくことはリウマチ専門医の責務といえる。 ● の、 アテローム血栓症のリスクを上昇させるという報告があるため、心血 管病の既往患者やCVリスク因子を有する患者への投与は慎重に行う べきと記載されている。 また、 MTXによる血中ホモシステイン上昇を防ぐ ためにも、 葉酸の投与が勧められる。 CVリスク因子に対する治療介入として、 禁煙、食事療法や運動など の生活習慣の改善が推奨されている。RA患者で心血管病をエンドポイ ントとした脂質異常症治療薬や降圧薬の臨床試験は現在報告されて いないが、EULARガイドラインでは、 スタチン、ACE阻害薬やアンジオテ ンシンⅡ受容体拮抗薬は抗炎症作用を有することからCVリスク因子を 有するRA患者に対する治療オプションとして望ましいと記載されてい る。炎症をコントロールするRA治療薬は、CVリスクの低減に寄与すると 期待される。実際、MTX投与患者における心血管死やCVイベントのリ 表2 CVリスク因子に対するRA治療薬の影響 治療薬 CVリスク因子への影響 NSAIDs/Cox阻害薬 高血圧 ヒドロキシクロロキン MTX スク低下が複数の報告で示されている17)18)。 ↑脂質、糖尿病 ↓メタボリックシンドローム ↑ホモシステイン さらに、脂質異常や動脈硬化の進展、RAの炎症病態に対するTNFα ステロイド 高血圧/脂質異常症 インスリン抵抗性 の作用を考慮すると、抗TNF療法はそれらを阻むことでCVリスクを低減 生物学的製剤 血圧 身体組成(body composition) できる可能性が示唆される。RA患者10,156例を対象としたCORRONAレジストリの解析(追跡期間中央値22.9ヵ月) において (表3)19)、 Gasparyan AY, et al. Curr Vasc Pharmacol 2010; 8: 437-449. Toms TE, et al. Curr Vasc Pharmacol 2010; 8: 301-326. EULAR 2012 RA治療薬によるCVリスクの低減 表3 表4 DMARDsおよびステロイド投与における 複合CVイベント (CORRONAレジストリ) 抗TNF療法の有効例と無効例の比較 抗 TNF 療法有効例と無効例における心筋梗塞発症(BSRBR レジストリ) 無効例(n=1,638)有効例(n=5,877) 曝露期間 (N) ハザード比 95% CI 抗 TNF 製剤 4,585 0.39 0.19 - 0.82 心筋梗塞の発症件数 MTX 4,791 0.94 0.49 - 1.80 心筋梗塞の発症率;/1,000患者ー年(95% CI) 他の非生物学的 DMARDs 1,724 リファレンス ー 患者ー年 発症率の比 発症率の比;年齢と性別で補正 プレドニゾロン † 非投与 6,689 ー リファレンス 3,141 1.78 1,090 2.62 17 35 9.4 (5.5-15.0) 3.5 (2.5-4.9) リファレンス 0.38 (0.21-0.67) リファレンス 0.38 (0.22-0.68) リファレンス 0.36 (0.19-0.69) リファレンス 0.31 (0.12-0.81) † リファレンス 0.46 (0.20-1.06) 1.06 - 2.96 性別ごとの発症率の比;多変量解析 女性 ≧7.5 mg/ 日 9,886 † 発症率の比;多変量解析 性別ごとの発症率の比;多変量解析 男性 <7.5 mg/ 日 1,815 1.29 - 5.31 † 年齢、 性別、 重症度、 BMI、 社会的はく奪、 喫煙既往、 合併症、 ベースライン時の服薬により調整 複合CVイベント:心筋梗塞、 一過性脳虚血発作/脳卒中、 心血管死 対象・方法 対象・方法 米国の CORRONA レジストリに登録された RA 患者 10,156 例を対象に心血管病発症と 治療薬の関連を検討した。 ハザード比は、 年齢、性別、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症、 心筋梗塞または脳卒中の既往、改訂 HAQ スコア、 アスピリン服用、 ナプロキセン服用、 非選 択的 NSAIDs 服用、 Cox2 阻害薬服用により調整して算出した。 英国の BSRBR レジストリに登録された抗 TNF 製剤投与 RA 患者 8,659 例および DMARDs 投与(生物学的製剤未投与)RA 患者 2,170 例を対象に心筋梗塞発症と 治療薬の関連を検討。 その後、DAS28 変化量(0∼ 6ヵ月) が入手可能であった抗 TNF 製剤投与患者 7,515 例について、抗 TNF 製剤有効例(EULAR 改善基準 good また は moderate) と無効例で心筋梗塞発症リスクを比較した。 Greenberg JD, et al. Ann Rheum Dis 2011; 70: 576-582. 図2 1) Avina-Zubieta JA, et al. Ann Rheum Dis 2012; 71: 1524-1529. 2) 抗TNF製剤によるCVリスクの低減 Lindhardsen J, et al. Ann Rheum Dis 2011; 70: 929-934. 3) Kremers 抗TNF製剤投与RA患者における複合CVイベントの 相対リスク (DMARDs投与患者との比較) 効果量 (95% CI) Weight* (%) 試験 Dixon WG, et al. Arthritis Rheum 2007; 56: 2905-2912. HM, et al. Arthritis Rheum 2008; 58: 2268-2274. 4) Sattar N, et al. Circulation 2003; 108: 2957-2963. 5) Yoo WH. J Rheumatol 2004; 31: 1746‒1753. 6) Peters MJ, et al. Int J Clin Pract 2010; 64: 1440-1443. Jacobsson et al.(2005) 0.48(0.27-0.86) 18.95 7) Catapano AL, et al. Atherosclerosis 2011; 217: S1-S44. 8) Danesh J, Naranjo et al.(2008) 0.64(0.49-0.83) 23.71 et al. N Engl J Med 2004; 350: 1387-1397. 9) Goodson NJ, et al. Arthri- Carmona et al.(2007) 0.16(0.09-0.30) 18.38 tis Rheum 2005; 52: 2293-2299. 10) Kitas GD, et al. Ann Rheum Dis Solomon et al.(2008) 0.30(0.12-0.73) 14.11 2011; 70: 8-14. 11) Nicola PJ, et al. Arthritis Rheum 2005; 52: 412- Jacobsson et al.(2008) 0.90(0.78-1.03) 24.86 全例(I 2=89.3%, p=0.000) -1 0.46(0.28-0.77) 100.00 1 10 *DerSimonian-Laird法によるrandom effects model 複合CVイベント: 心筋梗塞、脳血管発作、 うっ血性心不全 420. 12) Kremers HM, et al. Arthritis Rheum 2004; 50: 3450-3457. 13) Summers GD, et al. Nat Rev Rheumatol 2010; 6: 445-451. 14) Panoulas VF, et al. Rheumatology 2007; 46: 1477-1482. 15) Conroy RM, et al. Eur Heart J 2003; 24: 987-1003. 16) Peters MJ, et al. Ann Rheum Dis 2010; 69: 325-331. 17) van Halm VP, et al. Arthritis Res Ther 対象・方法 抗 TNF 製剤投与と DMARDs 投与を比較して CV イベント (心筋梗塞、脳血管発作、 うっ血 性心不全) を報告している RA 患者観察コホート研究の文献を抽出し、抗 TNF 製剤による 治療と CV イベントとの関連についてメタアナリシスを行った。 Barnabe C, et al. Arthritis Care Res 2011; 63: 522-529. 2006; 8: R151. 18) Westlake SL, et al. Rheumatology 2010; 49: 295307. 19) Greenberg JD, et al. Ann Rheum Dis 2011; 70: 576-582. 20) Barnabe C, et al. Arthritis Care Res 2011; 63: 522-529. 21) Dixon WG, et al. Arthritis Rheum 2007; 56: 2905-2912. RAにおけるCVリスクを考慮した治療とは 八田 和大 先生 天理よろづ相談所病院 総合診療教育部 部長 RAにおける心血管イベントの発現頻度は、 日 RAの日常診療においてCVリスクのモニタリン 展にはTNFαを中心とした炎症性サイトカイン 本では欧米ほどは高くないとされるが、 ライフス グが必要とされるが、 定期的な臨床検査の項 が関与していることが明らかになっている。 抗 タイルの変化に伴い日本人RA患者でも心血 目に非空腹時脂質 (総コレステロールやHDL TNF療法によって患者のCVリスクが減少す 管病の増加が懸念されている。 日本人RA患 コレステロール) 、 血圧値の測定を加えること る可能性も報告されている。 生物学的製剤の 者で心血管病を検討した報告は少ないが、 日 で容易に実行可能と考えられる。 CVリスクの 作用機序や脂質プロファイルの違いによって 本のRAコホート研究によると、 心血管病によ 適切なマネジメントによりRA患者のCVイベン CVリスクへの影響は異なると予測されるが、 る死因は、 悪性腫瘍や呼吸器疾患に次いで トを抑制できれば、 生命予後の改善という高い 疾患活動性の適切なコントロールを基本とし 日本人において 多いことが報告されている※。 治療ゴールにも近づくことができる。 RA患者の ながら、 炎症性サイトカインを制御し、 かつCVリ も心血管病がRA患者の生命予後に影響しう CVリスク上昇には慢性炎症が強く影響する スクを悪化させない治療薬選択も考慮される ることは明らかであろう。 こと、 CVリスク因子の悪化や動脈硬化の進 ことが望まれる。 ※ Nakajima A, et al. Scand J Rheumatol 2010; 39: 360-367. EULAR 2012
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