日本人の MTX 至適用量 について

なことも多く、また海外では生物学的製剤併用
下でのMTX用量に関する議論が深まっている。
*
金 子 祐 子
竹 内
勤
肝障害や嘔気等のため週 ㎎ までの増量は困難
㎎ まで使用可能となった。しかし、日本人では
日本人のMTX至適用量
について
激変するRA治療
はじめに
関節リウマチ︵ Rheumatoid arthritisRA︶
の治療はこの約 年でパラダイムシフトを迎え
薬として開発されたが、少量間欠投与法によっ
てRAに対する高い有効率と安全性が確立され、
外での臨床試験結果では、週平均 ∼ ㎎ のM
20
TX群は、エタネルセプトやアダリムマブ
︵A
10
RA治療の第一選択薬、 anchor drug
と位置づ
MTXの用量と有効性、安全性
本稿では、MTX至適用量に関する最新の知
ト︵MTX︶である。MTXはもともと抗腫瘍
見について概説する。
たが、その第一歩となったのがメトトレキサー
16
MTXは有効性が高く、よく研究されている
合成抗リウマチ薬︵DMARDs︶である。海
16
けられている。
海外ではMTXを週 ∼ ㎎ 使用するのが一
般的なのに対し、日本では長らく週8㎎ が上限
25
量であったが、2011年公知申請により週
15
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7
15
DA︶などのTNF阻害薬単剤と同程度の臨床
TNF阻害薬併用下でのMTX至適用量
されていたMTXは平均週 ∼ ㎎ であったが、
これまで欧米でTNF阻害薬の有効性を証明
的有効性が示され、MTXをTNF阻害薬と併
する試験で、併用薬あるいは対照薬として使用
用すると、臨床的にも関節破壊抑制効果につい
ても、TNF阻害薬単剤、MTX単剤より有意
最近、欧米から相次いでTNF阻害薬併用下で
肝酵素上昇しか認めなかったことが報告されて
いる。ただし、週 ㎎ 以上では、血漿中MTX
濃度はプラトーになるとの報告もある。
日本で行われた治験では、週2㎎ 、6㎎ 、9
㎎ の低用量の3群でやはり用量依存性に有効性
でMTX週2・5㎎ 、5㎎ 、 ㎎ 、 ㎎ の4群
に割り付けた試験である。主要評価項目である
週時
達 成 率 は、2・5㎎ 群、5
DAS28<3.2
㎎ 群、 ㎎ 群 で 有 意 差 を 認 め た
︵ p=0.016
︶が、2・5㎎ 群と5㎎ 群、 ㎎ 群と
㎎ 群の間ではどちらも差を認めなかった︵図
が認められたが、肝障害をそれぞれ3%、 %、 ㎎ 群 と
%に認めた。MTXには様々な副作用がある
10
達成率では、 週
①︶
。寛解である DAS28<2.6
以降に用量依存性に増加する傾向が認められた
ものの、TNF阻害薬併用ではMTX週 ㎎ 程
16
が、用量依存性に増加するとされているのは肝
障害、口内炎、消化管障害、血球減少、感染症
4)
15
であり、日本人では比較的低用量での肝障害が
20
2)
象に、ADAを開始すると同時に、二重盲検下
CONCERTO試験は、MTX未使用の罹
効性が高くなること、有害事象としてわずかな
病期間3∼4カ月程度の超早期のRA患者を対
れた。
に有効性が高い。少数であるがMTX週5㎎ 、
20
のMTX用量を比較する臨床研究結果が報告さ
10
㎎ 、 ㎎ 、 ㎎ について前向きに8週まで検
20
討した欧州での臨床研究では、用量依存性に有
15
多い可能性がある。
20
16
20
10
10
3)
10
26
1)
8
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10
22
① CONCERTO 試験における DAS28<3.2達成率
(文献4より)
度が至適用量である可能性が示された。
MUSICA試験は、MTX週 ∼ ㎎ で効
果不十分の罹病期間5∼6年のRA患者を対象
20
とした試験で、ADA開始と同時に二重盲検下
15
でMTX週7・5㎎ 群と ㎎ 群に割り付けた試
20
験である。主要評価項目であるDAS 低下量
5)
では、週 ㎎ が7・5㎎ 群を上回ったものの、
28
達成率、ACR / 達成率、関節
DAS28<2.6
超音波検査での滑膜血流改善程度でも7・5㎎
70
に対して、 ㎎ 群では3・2%で認めており、
生率では7・5㎎ 群では1例も認めなかったの
群の非劣性が証明された。また、重篤感染症発
50
まで日本人を対象とした報告はほとんどなかっ
海外においてTNF阻害薬併用下でのMTX
至適用量に対する議論が高まっているが、これ
日本人のMTX至適用量
れている可能性が報告されている。
有効性、安全性のバランスから7・5㎎ 群が優
20
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9
20
②米国での細胞内 MTX-PG 測定結果
(文献6より)
た。しかし前述のように、日本人ではより低用
量で有効性が高く、また肝障害をきたしやすい
可能性がある。
MTXは単回投与では速やかに血中から消失
するため、血漿中MTX濃度は良い指標とはな
りにくいことが知られているが、近年、細胞内
にMTXが輸送された後に代謝酵素によって変
換された MTX-polyglutamates
︵MTX PG︶
が、体内のMTXの濃度マーカーとして有用視
されるようになった。
X PG濃度を測定するMAGIK試験を進行
を開始後、MTXを増量しながら赤血球中MT
慶應義塾大学リウマチ内科では、多施設共同
研究として、MTX未投与患者を対象にMTX
−
中である。中間解析では、日本人RA患者では
6)
よりも1・5倍程度高いMTX PG濃度が達
ほぼ同量のMTX内服で、米国での報告︵図②︶
からは、欧米と同程度のMTX量は必要がない
成されており、細胞内MTX PG濃度の観点
−
−
10
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−
可能性が指摘された。現時点では、日本人のM
文献
Seideman P : Methotrexate the relationship between
dose and clinical effect. Br J Rheumatol, 32, 751-753
(1993)
TX至適用量を確定することはできないが、今
後の日本人を対象とした研究により日本人独自
のエビデンスを作り、MTXの最適な治療法が
確立されることが期待される。
おわりに
Schiff MH, et al : Head-to-head, randomised, crossover
study of oral versus subcutaneous methotrexate in
patients with rheumatoid arthritis : drug-exposure
limitations of oral methotrexate at doses ≥15 mg may
be overcome with subcutaneous administration. Ann
Rheum Dis, 73, 1549-1551 (2014)
柏崎禎夫ら 慢性関節リウマチに対するL 377
︵メトトレキサートカプセル︶の至適投与量検討試
験、炎症、 、437∼458︵1996︶
Kaeley G, et al : Impact of methotrexate dose reduction
upon initiation of adalimumab on clinical and
ultrasonographic parameters in patients with moderate
Rheum Dis (2014), doi : 10.1136/annrheumdis2013-204769
Burmester GR, et al : Efficacy and safety of ascending
methotrexate dose in combination with
adalimumab : the randomised CONCERTO trial. Ann
−
RA患者を寛解を目標として治療する戦略は
現実となり、現在はより効率良く安全に、MT
Xや生物学的製剤を使用する方法の模索が盛ん
に行われている。本稿で述べたMTXのように、
欧米のエビデンスが日本人に外挿できないこと
も多いと考えられ、今後さらなる研究発展が望
まれる。
︵慶應義塾大学医学部 リウマチ内科 講師︶
︵
*慶應義塾大学医学部
リウマチ内科
教授︶
−
Dervieux T, et al : Red blood cell methotrexate
to severe rheumatoid arthritis. EULAR, Paris (2014)
5)
6)
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1)
2)
3)
4)
16
7)
polyglutamates emerge as a function of dosage
intensity and route of administration during pulse
methotrexate therapy in rheumatoid arthritis.
Rheumatology, 49, 2337-2345 (2010)
Ta k a h a s h i C , K a n e k o Y, Ta k e u c h i T, e t a l :
Methotrexate polyglutamates in erythrocytes correlates
with clinical response in Japanese patients with
rheumatoid arthritis. EULAR, Paris (2014)
7)
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