乳幼児の発達と保育・福祉 1 単元・小単元 (1)人の一生と家族・福祉 2 小単元の目標 イ 乳幼児の発達と保育・福祉 (7時間) 乳幼児の心身の発達と生活、親の役割と保育及び子どもの福祉について理解さ せ、子どもの健全な発達のために、親や家族および社会の果たす役割が重要であ ることを認識させる。 家庭基礎を1年生で2単位履修している。生徒の家族構成は核家族が約2/3、 1人っ子も 10%程度で、比較的恵まれた環境で大切に育てられているという感 じを受ける生徒が多く、勉強と部活動中心の忙しい生活を送っている。そのため、 幼い子どもと触れ合う機会はほとんどなく、子どもについての具体的なイメージ をあげさせても語彙数は乏しく「子ども」への関心は低い。また、中学時代に保 3 本例における 育実習を経験した生徒も多いが、「かわいかった」、「楽しかった」という、子ど 生徒の実態 もと同じ立場で楽しんでしまったと思われる感想が大半であった。まだまだ自分 自身が子どもであり、子どもを生み育てる存在に自分がなるということは遠い将 来のこととしてほとんど意識していない。しかし、将来は結婚して家庭を築き子 どもを持ちたいと考えている生徒は多く、授業にも前向きで、特に実験・実習に は生き生きと積極的に取り組んでいる。 少子化・核家族化の進行で、生徒たちは生活の中で幼い子どもと接したり、乳 幼児を育てている親の姿を見ることも少なくなり、子どもが育っていく過程を知 る機会がほとんどない。また、生徒自身も青年期のまっただ中にあり、自分が育 てられてきた過程を振り返ることもなく、自立に向けて試行錯誤を繰りかえして いる。 そこで、子どものありのままを見つめ、できれば子どもと接して子どもについ て学ばせたい。VTR視聴や保育人形を用いた保育体験、児童文化財の製作をと 4 育 て た い おして、今「育てられている自分」に気付き、人の成長や発達過程を理解し、 「育 資 質 ・ 能 力 てる立場の自分」になろうとしていることを意識させ、子どもを育てることの意 義を考える力を付けさせたい。 そのため、「親の役割と保育」の項目を学習の最初に位置づけた。また、ライ フサイクルの中で親になることはひとつの選択肢ではあるが、子どもを知ること は自分の生き方を考えることにもつながると考えられ、幼いものをいつくしみ守 り育てようとする心を育てたい。さらに現在子どもが置かれている状況を知るこ とで社会の一員として、子どもの健全な発達のために地域や社会が果たす役割に ついても考えようとする態度を養いたい。 【参考文献】 ○家庭基礎21 実教出版 ○高校生のための生活学 大修館書店 ○家庭基礎21学習ノート 実教出版 ○人間の発達と保育 東京書籍 ○VTR「さくらんぼ坊や」 共同映画株式会社 ○VTR「赤ちゃんこのすばらしき生命」 NHKスペシャル ○VTR「赤ちゃんとともに育ち、育てる」 開隆堂 ○VTRクリップ 「子どもの成長」 「離乳のステップ」 ○「離乳食例」 http://gakuen.gifu‑net.ed.jp/gakusyu/gakusyu.html http://www.unicef.or.jp - 17 - 乳幼児の発達と保育・福祉 5 指導と評価の計画 【単元】 (1)人の一生と家族・福祉 イ 乳幼児の発達と保育・福祉 (ア)親の役割と保育 (イ)幼児の心身の発達と生活 主な学習内容 ね ら い 学 習 活 動 時間 関心・意欲・態度 2 ①保育人形の名前を考える 1)親の役割と保育 ○子どもとどのようにか ・生まれたときの様子や家族 ことで育てられた自分か かわったらよいかを考 の思いの聞き取り調査やV ・少子化 ら子どもを育てる存在と え、親の果たす役割に TR(検診・出産の記録) ・親の保育態度 しての自分に気付き、親 の視聴、保育人形に名前を ・育児のサポートシ ついて考えさせる。 の役割の重要性について ○子育てをとおし親自身 付けることをとおして、子 ステム 考えようとしている。 も成長することに気付 どもを生み育てることの意 (ワークシート 1‑(2)(3)) かせ、子どもを生み育 義や親としての責任と協力 てる意義について考え について考える。 ・社会全体で子育て支援する させる。 ○少子社会における子育 制度について知る。 て支援策を理解させ る。 2)乳幼児の心身の発○乳幼児の心身の発達に ・保育人形を用いた身体測定 は一定の順序と共通性 や乳幼児のVTRを視聴し 達と生活 があることを理解さ て、心と身体の発達を理解 ・発達 せ、発達段階に応じた する。 ・発達段階 保育の必要性に気付か ・保育人形を用いて保育を体 ・基本的生活習慣 せる。 験することにより、乳幼児 ・愛着 (アタッチメント) ○乳幼児の生活について とのふれあい方や発達に与 遊びと食事をとおし える影響が大切なことに気 ・児童文化財 ・乳幼児期の食生活 て、乳幼児期の特徴を 付く。 理解させる。 2 ②心身の発達をふまえて、 保育人形の世話をしよう としている。 ・離乳や離乳食の特徴をまと め、生活習慣形成に必要な ことを考える。 ・児童文化財を作製し、遊び が心と身体を育てることを 理解し、子どもとのかかわ り方を考える。 2 ③遊びの意義をふまえた児 童文化財の作製から、子 どもとの適切なかかわり 方を考えようとしてい る。 ○現代の子どもを取り巻 ・子どもの人権侵害について 3)子どもの福祉 く環境について気付か インターネットで調べ、ワ ・児童福祉の理念 せ、子どもの健やかな ークシートにまとめる。 ・児童福祉法 発達のために社会全体 ・児童福祉法、子どもの権利 ・児童憲章 ・子どもの権利条約 で支援する必要を理解 条約を読み子どもを取り巻 く環境について考える。 させる。 総時間数 (ワークシート 2‑(1)) (ワークシート 4‑(4)) 1 7 - 18 - 乳幼児の発達と保育・福祉 (ウ)子どもの福祉 学 習 活 動 に お け る 具 体 の 評 価 規 準 評価方法等 思考・判断 技能・表現 知識・理解 ①親の保育責任と子育てをサ ・ワーシート1「子どもを ①妊娠・出産のVTRを視聴 ポートするシステムや施策 し、父親、母親の役割に気 生み育てること〜親に について理解している。 付き、親の養育責任を考え なること」 (ペーパーテスト) ている。 ・視聴記録1 (VTR視聴記録1‑(4) ・行動観察 (6) ) ・ペーパーテスト ②VTRの視聴をとおして 発達には、親や周り人との 愛着やよい環境を整える ことが必要であることを 考えている。 (VTR視聴記録2) ②心身の発達には一定の順序 ・ワーシート2「からだと と共通性があることを理解 こころの発達〜子ども している。 の育つ力ってすばらし い」 (ペーパーテスト) ・視聴記録2 ・行動観察 ・ペーパーテスト ③生活習慣の確立には、発達 ①VTRクリップを視聴 ③さまざまな遊びが、心と身 ・ワークシート3「子ども 段階に応じた指導と保育 し、離乳食の特徴や与え 体の発達にかかわっている の生活〜生活習慣の確 者のかかわりが大切であ 方をまとめることがで ことを理解している。 立・食生活」 (ペーパーテスト) ることを考えている。 ・ワーシート4「子どもの きる。 (ワークシート 3‑(2) ) 遊びと生活」 (ワークシート 3‑(1)) ・行動観察 ・ペーパーテスト 授業実践例1 (2時間目/2時間) ④現代の子どもがおかれて ②自分の身近な範囲だけで ・ワーシート5「子どもの いる状況を知り、子どもが なく、世界のさまざまな 福祉〜世界の子供たち 健やかに育つためのよい 国の子どもたちの人権侵 は今〜」 環境のあり方について考 害を調べ、まとめること ・ワークシート6「子ども えている。 の福祉〜世界の子供た ができる。 (ワークシート 5‑(3)) ちは今〜」 (ワークシート 6‑(1) ) ・行動観察 授業実践例2 - 19 - 乳幼児の発達と保育・福祉 6 授業実践例1 □学習指導案 科 目 名 家庭基礎 単 元 名 子どもの発達と保育・福祉 本時の主題 子どもの生活と遊び 指 導 観 子どもにとって「遊び」は生活の中心となるものであるが、少子化や住環境の変化などで豊かな遊びを経験する子ど もが減少してきた。児童文化財を作製することにより子どもは遊びの中でいろいろなことを学んでいくことを知り、子 どもとのかかわり方や十分遊べるような環境について考えさせたい。 本時の目標 ・子どもの遊びは、心身の発達と深くかかわっていることを理解させる。 ・子どもが遊びを通して健やかに育つためのかかわり方を考えさせる。 過程 導 入 指導内容 本時の目標確 認 5 分 遊びと発達 〜 遊びと発達 〜 (6時間目/7時間) 生徒の学習活動 評価について 1 子どものころの遊びをあげ、遊びが子ども にとってどのような活動かを知り、遊びを保 障するために必要なことを考えることが目 標であることを知る。 2 子どもにとって遊びのもつ意味を整理す ○予想される生徒の反応 ・運動能力や感覚能力を養う。 ・創造力や構成力を養う。 ・社会性を養う。 児童文化財の 製作 展 3 子どもと一緒に作って遊べる「紙飛行機」 と「紙コップのびっくりおばけ」を対象年齢 や発達させたい機能などを考え、作製する。 ○予想される生徒の反応 ・プリントの手順通りに作製する。 ・色やイラストなど子どもが興味を引くような工 夫をして作製する。 ・遊び方を考えながら作製する。 開 4 作製した児童文化財で子どもと遊ぶことを 想定してグループで遊ぶ。 40 ○予想される生徒の反応 ・自分が楽しんでしまう。 ・おとなと子どもに役割分担をしてルールを作る など発達させた機能を意江識しながら遊ぶ。 ・危険でないかなど遊ぶ環境に配慮した遊びを考 えて遊ぶ。 分 子どもの遊ぶ 環境 5 子どもの遊びをとおして子どもとのかか わり方や十分に遊べる環境について考える。 ○予想される生徒の反応 ・子どもと一緒におもちゃを作ったり、いろいろ な経験をさせてあげるためには、よい児童文化 財が必要だ。 ・子どもの立場に立って考えたり、接することが 大切だ。 ・安全に遊べる場所や友達が必要だ。 ま と め 5 分 ・子どもにとって遊びはからだと心の発達の原点 であることがわかり、おとなは子どもが十分に 遊べる環境を整備する責任があることを確認 する。 - 20 - 教師の指導 事前調査をグループで発表さ せることにより、子どもの遊び に関心をもたせ、本時の目標を 確認させる。 <Bを実現するための指導> ○評価規準【知】−③ さまざまな遊びが心と ○遊びの種類、時期、遊び方や 玩具の例、遊びにより発達す 身体の発達のかかわって る機能の手資料から整理さ いることを理解している。 せる。 <評価方法> ペーパーテスト <Cへの手だて> ○学習室VTRクリップから 「遊び」の項目を視聴し、遊 びの変化や運動機能、社会性 の発達に気付かせる。 ○評価規準【関】−③ 遊びの意義をふまえた 児童文化財の作製から、 遊 びを通して子どもと適切 なかかわり方を考えよう としている。 <評価方法> ワークシート4―(4) <Bを実現するための指導> ○子どものころの遊びを振り 返り、何が面白かったのかを 考えさせる。 ○1人で遊ぶ場合、仲間と遊ぶ 場合、おとなが相手となる場 合の遊び方を考えさせる。 ○からだを動かす遊びが少な くなったり、遊び仲間の少人 Aの例 数化の原因に気付かせる。 ・遊びの意義をふまえた児 童文化財の作製から、遊 びをとおして子どもと のかかわり方を自分の こととして具体的に考 <Cの手だて> ○子どもと遊ぶことを想定さ えようとしている。 せ、具体的に考えるよう助言 ・子どもが遊ぶための環境 する。 (時間、 空間、 仲間など) についておとなの責任 を具体的に考えている。 乳幼児の発達と保育・福祉 □工夫している点 ・遊びについての事前調査や身近な材料を用いて短時間にできる児童文化財を作製し、実際に遊ぶことにより遊びの楽しさを 思い出させ、遊びの特徴や意義についての理解を深めさせた。このことから子どもにとっての遊びは心とからだの発達に欠か せないものであることに気付かせ、子どもが十分に遊べるためのかかわり方について今の自分なりに考えていこうとする意欲 や関心を高めるようにした。 □実践後の評価結果 評 価 生徒の状況 記 述 例 学習活動における 具体の評価規準(B) 評価規準【関】―③ ・遊びの意義をふまえた児童文化財の 作製から、遊びをとおして子どもと の適切なかかわり方について考え ようとしている。 ・児童文化財の作製をとおして、子ど もの遊びについて関心をもち、子ど もの発達段階にあわせたかかわり方 が必要なことに気付く。 ・作製した児童文化財を用いて子ども と遊ぶことを想定して、よい児童文 化財とは何かについて考え、子ども への接し方を考えようとしている。 ・身近なもので子どもが喜ぶおもちゃ が簡単にできることがわかったし、 年齢に応じた遊び(3 歳くらいまで は感覚や運動を発達させ、5〜6歳 の子はゲーム感覚の遊び)を反応を 見ながら遊ばせる。 ・安全に配慮して、子どもが興味をも ち自発性を育てるおもちゃを与え、 子どもに目線を合わせて接したい。 「十分満足できる」と 判断される状況(A) ・遊びの意義をふまえた児童文化財の作製 から、子どもと適切なかかわり方につい て自分のこととして具体的に考えよう としている。 「努力を要する」と 判断される状況(C) ・遊びの意義をふまえた児童文化 財の作製ができず、遊びをとお して子どもと適切なかかわり方 を考えようとしていない。 ・作製した児童文化財を使った遊びをとお して遊びの意義がわかり、発達段階にあ わせた遊びを考えながら、遊ぶときの問 題点に気付き、おとなの責任について考 えようとしている。 ・児童文化財作製の意義がわから ない。 ・子どもとかかわることを考えよ うとしない。 ・子ども遊びは心身の機能を発達させるの にかかわってくるので子どもが遊ぶの にふさわしい場所(安全な広場、自然が あるところ) 、安全なおもちゃ、友達な どがいると思うし、それを整えてあげる ことが子どもに対するおとなの責任だ と思う。 ・子どもの立場に立って、子どもの発達段 階を考えて真剣に接することが大切だ と思った。 ・自分も楽しむ。 □授業後の課題と改善 ・本時は、 「乳幼児の心身の発達と生活」の終わりに位置付けたので、発達段階に応じた保育の必要性をふまえた上で遊びが子どもの発 達を支え促すことの大切さを理解し、子どもとのかかわり方を考えることができたと思う。また、 「親の役割と保育」を学び保育者と しての意識付けがあったことと児童文化財を作製して自分たちが遊んだことにより、子どもとして遊びを楽しんだ自分と保育者とし て遊びを見る立場を比較し、育てられた自分からこれから育てる立場としての自分の存在を意識し、子どもへのかかわり方を考えた と思われるが、具体的に記述するのは難しかったようである。 ・ここでは、子どもが十分に遊べるための環境を保障することは、おとなの責任であることに気付き、育てる立場から子どもにかかわ ろうとする関心・意欲を育てたいと考えた。生徒も子どもの生活に関心が薄く実習も短時間ではあったが、意欲的に取り組みかかわ り方を考えようとし、評価規準を関心・意欲・態度に設定したことはよかったと思う。しかし、この実習から子どもとのかかわり方 をおとなの責任として考え、地域社会のあり方へと考えを発展させる生徒は少なかった。 ・本時は多くの生徒が実習内容に関心を示し、授業の流れを作ることができたが、評価規準を満たすための短時間で効率よくできる実 習内容や事前準備についても十分検討しなければならないと思う。また、考える視点については、前時の関連事項のポイントなどを 整理したり、具体例を示すなど興味だけに終わらないように注意する必要がある。 - 21 - 乳幼児の発達と保育・福祉 7 授業実践例2 □学習指導案 科 目 名 家庭基礎 単 元 名 子どもの発達と保育・福祉 本時の主題 子どもの福祉 指 導 観 豊かといわれる日本の社会にいながら、子どもたちは必ずしも幸せな生活をすごしているわけではないことや、世 界に目を向ければ戦争などで子どもの人権が脅かされている状況があることを気付かせ、子どもが健やかに生きて育 つにはどのようなことが必要かを考えさせたい。 本時の目標 世界の子どもたちが生活している環境をまとめ、子どもを取り巻くよい環境のあり方や課題について考えさせる。 過程 導 入 5 分 指導内容 本時の目 標確認 開 40 分 生徒の学習活動 1 (7時間目/7時間) 評価について 子どもの生活環境を調べ、子どもが生 活するためのよい環境について考える ことが目標であることを知る。 教師の指導 ・自分の生活の中で、人権が 無視されていると思われる ことがないかを思い出させ、 本時の目標を確認する。 <Bを実現するための指導> ○評価規準【技】−② 自分の身近な範囲だけで ○資料集の「子どもによる子 どものための 『子どもの権利 なく、世界のさまざまな国の 条約』 」を読ませ、具体的な 子どもたちの人権侵害を調 例を示す。 べ、まとめることができる。 ○予想される生徒の反応 ○ユニセフのHPから「子ど <評価方法> ・児童は人として尊ばれる。 もの人権」をキーワードに ワークシート6―(1) ・社会の一員として重んぜられる。 世界の子どもが置かれてい ・よい環境の中で育てられる。 子どもを る状況を検索させる。 Aの例 取り巻く 3 世界の子どもたちはどのような環境で ・自分の身近な範囲だけでなく 環境 暮らしているかインターネットで調べ <Cへの手だて> 世界のさまざまな国の子ど てまとめる。 ○見つけられない生徒には、 もたちの人権侵害を自分の 具体的なテーマを指示する。 課題としてまとめることが ○ 予想される生徒の反応 できる。 ・ストリートチルドレンや人身売買についてま ・さまざまな状況の子どもたち <Bを実現するための指導> とめている。 ○事例を調べたグループで大 に対して自分なりの感想や ・子どもがモノとして扱われ悲惨である。 切だと思われる条件を話し 解決策についてまとめてい ・先進国の経済援助が必要。 合わせ、それを実現するた る。 ・募金活動など自分にもできることをしたい。 めの方法を考えさせる。 4 今、日本の子どもにとって健やかに育 ○「児童福祉の理念」につい つために大切だと思うことをダイヤモ て確認する。 ○評価規準【思】―③ ンドランキングで考える。 現代の子どもがおかれてい <Cへの手だて> る状況を知り、子どもが健や ○自分が調べた事例から考え ○ 予想される生徒の反応 させ、援助する。 ・家庭(家族) ・親 ・教育 ・自然 かに育つためのよい環境のあ り方について考えている。 ・思いやり ・社会保障 <評価方法> 5 子どもが育つためのよい環境とは何かを考 ワークシート5―(3) える。 児童福祉 の理念 展 〜 子どもをとりまく環境 〜 2 「児童憲章」 「児童福祉法」 「子どもの 権利条約」を読み、児童福祉の理念を知 る。 Aの例 予想される生徒の反応 ・現代の子どもが置かれている ・親がいて平和で自由に行動できる環境。 状況を知り、子どもが健やか ・子どもの存在を認め惜しみなく愛情が注がれ に育つためのよい環境のあ る環境をおとなたちがつくる。 り方について考えを深めて いる。 本時のま 世界や日本の子どもたちを取り巻く問題や課題 とめ を知り、おとなと同様の権利をもっていることを理 解し、子どもが育つのにふさわしい家庭や社会環境 の整備の大切さを確認する。 ○ ま と め 5 分 □工夫している点 ・インターネットを利用して、日本だけでなく世界の子どもたちが置かれている状況をリアルタイムに知ること で、子どもたちを取り巻く課題について幅広く理解させ、解決策を考えるように導いた。また、ダイヤモンド ランキングにより順位をつけることで、自分の考えを明確にさせ、自分と他の生徒の考え方を比較し、考えを 深めることができるようにした。 - 22 - 乳幼児の発達と保育・福祉 □実践後の評価結果 評 価 生徒の状況 記 述 例 学習活動における 具体の評価規準(B) 評価規準【技】−② ・インターネットにより、自分の身近な 範囲だけでなく、世界のさまざまな国 の子どもたちの人権侵害を調べ、まと めることができる。 ・子どもがおかれている状況と子どもの 権利を侵害している点を結びつけまと めることができでいる。 ・紛争による子どもの就労(アフガニスタ ン)…教育も情報も与えられていない ことがショックだった。 ・子どもの人身売買(ナイジェリア)… 生存権に違反している。 学習活動における 具体の評価規準(B) 評 「十分満足できる」と 「努力を要する」と 判断される状況(A) 判断される状況(C) ・インターネットにより、自分の身近な範囲 ・自分の身近な範囲だけでなく だけでなく、世界のさまざまな国の子ども 世界のさまざまな国の子ども たちの人権侵害を調べ、自分の課題として たちの人権侵害をまとめるこ とらえ、まとめることができる。 とができない。 ・子どもの権利が侵害されている状況をわか ・どのようなことが子どもの人 りやすくまとめ、状況を分析して解決する 権侵害に該当するのか考えよ ための方策までまとめている。 うとしていない。 ・誘拐結婚(エチオピア)…女の子の人権無 ・未記入 視。教育の徹底や働く場所の確保が必要。 ・出生証明がない(インドネシア)…子ども の権利条約 7 条に違反。日本などの先進国 の経済的援助や安いお金で交付できるよう 国のシステムを見直す。 ・すべて子どもに予防接種を(カボン等)… 国際的な組織でその重要性を訴えるような 継続的な活動がいると思う。 「十分満足できる」と 判断される状況(A) 「努力を要する」と 判断される状況(C) 価 評価規準【思】―③ ・現代の子どもが置かれている状況を知 り、子どもが健やかに育つためのよい 環境のあり方について考えている。 ・現代の子どもが置かれている状況には人権 を無視されるなど課題があることを知り、 子どもが健やかに育つためのよい環境を整 備することについて考えを深めている。 ・子どもが健やかに育つための よい環境について考えていな い。 生徒の状況 ・子どももおとなと同じ。人としての権 利をもっていることを考える視点にし ている。 ・子どもを育てるのは親や家庭だけでな く、周りの人や社会環境がかかわって いることに気付いている。 ・子どもを育てることは次世代を育てている ことに気付き、親や家庭だけでなく地域の 人々や、行政がかかわっていくことが必要 であることを考えている。 ・日本だけでなく他の国についても考える視 点に入れている。 ・子どもをよい環境で育てるこ とについて自分が主体とな って考えようとしていない。 記 述 例 ・親や周りの人がみんなで子どもを支え 惜しみなく愛情がそそがれる環境で あり、子どもを一人の人間として認め てくれる環境であればいいと思う。 ・子どもが健康で安全な生活ができ人と して尊ばれるように社会の一員とし て認め、親や周りの人が安心して愛情 を与えられる環境。 ・子どもをおとながもっと知り、子どもの権 ・未記入 利が守られるように親や政府、地域の人々、 ・今のままで十分 企業も協力し合うことがおとなの責任であ ると思う。 ・ダイヤモンドランキングで書いたこと全て だと思うが、平和であるためには国同士が 理解し合うことが必要だし、子どもの権利 が守られるためにはおとなにも経済的、心 理的余裕があることが必要。そのために世 界の人みんなが子どものことを考えること が大切だと思う。 □授業後の課題と改善 ・本時は、 「乳幼児の発達と保育」のまとめとして位置づけた。 「親の役割と保育」で自分が子どもを育てる立場になることを意識し、そ の立場で乳幼児の心身の発達と生活について発達段階や個性に応じた保育が必要なことを理解した。その上で本時の学習により、現代 の社会では、子育ては親だけでなく社会的な支援や環境整備も必要であることに気付くことができたと考えられる。しかし、子どもが 伸びやかに育つ環境や子育てを支える社会的な支援について、地域社会あるいは自分が果たす役割を具体的に考えた生徒は少なかっ た。 ・本時は、評価規準に【技能・表現】と【思考・判断】の 2 つを設定したが、時間的に内容を深めるには不十分であった。できれば 2 時間分として設定できればよいと思うが、無理な場合は【技能・表現】をはずしでもよいと思う。特に今回は二人に1台のノートパソ コンを用意し設定するなど準備にも多くの時間がかかりすぎた。生徒の関心を高めることには効果的であったが、1時間の場合はプロ ジェクタの使用などで工夫できると思う。ここはまとめでもあるので、児童福祉の理念を認識させ、子どもの育つ環境について考えさ せたいと考え【思考・判断】で評価できる内容に重点をおきたい。また、共通の事例から子どもが健やかに育つための条件を考えさせ ることで、より焦点が絞られ具体的な記述ができるのではないかと思った。 - 23 - 乳幼児の発達と保育・福祉 ワークシート1<子どもを生み育てること〜親になること> 事前課題1 【関】‑① あなたの名前はどのようにして付けられたのか聞いてみよう。 (1)あなたが 15 歳の子どもの親になったと仮定しよう。自分の子どもに期待する次の項目につい てあなたの期待度を考え、1〜3に○印をつけてみよう。 子どもに対する期待事項 強く期待 少し期待 期待しない ①勉強ができる。 1 2 3 ②楽しく遊んだり運動したりする 1 2 3 ③きちんとした身なりをする。 1 2 3 ④ユーモアがある。 1 2 3 ⑤親の言うことを素直に聞く。 1 2 3 ⑥勉強以外にも打ち込めるものをもつ。 1 2 3 ⑦あきらめないで粘り強く取り組む。 1 2 3 ⑧人と意見が異なるとき、自分の意見をはっきり述べる。 1 2 3 ⑨我慢しても他人と協調する。 1 2 3 ⑩男の子は男らしく、女の子は女らしくする。 1 2 3 ☆結果からあなたの理想とする親の姿を考えてみよう。 (2)赤ちゃんの誕生を想定して、2人ペア(父親・母親)で保育人形に名前を付けてみよう。 ☆ 男の子?・女の子?・初めての子ども?それぞれ条件を決めておこう。 【関】‑① ☆ なぜその名前に決めたしたのかを書いてみよう。 【子どもの名前】 【理由】 名前を付けた感想 (3)親になるってどんなことだろう。考えて書いてみよう。 - 24 - 【関】‑① 乳幼児の発達と保育・福祉 視聴記録1<赤ちゃんこのすばらしき生命> 【思】‑① ☆VTR「赤ちゃんこのすばらしき生命」を視聴して次のことをまとめてみよう。 (1)胎児は胎内で何をしているのだろう。(キーワード: 羊水、生活のリズム、音) (2)出産のメカニズムをまとめてみよう。(キーワード:陣痛のシグナル、陣痛) (3)子どもが育つことについてVTRを視聴した感想をまとめよう。 ☆VTR「赤ちゃんとともに育ち、育てる」を視聴して次のことをまとめてみよう。 (4)出産までお父さんと胎児はどのようにかかわっていたのだろう。 【思】‑① (5)生まれてからお父さんとお母さんの乳児との接し方の違いは? (6) 父親、母親の役割についてVTRを視聴した感想をまとめよう。 - 25 - 【思】‑① 乳幼児の発達と保育・福祉 ワークシート2<からだとこころの発達〜子どもの育つ力ってすばらしい> (1)保育人形(マイベビー)の世話をしよう。(抱き方については別紙参照) 気をつけたこと、なぜそうしたのかまとめてみよう。 ア.ミルクを飲ませる。 イ.げっぷをさせる。 ウ.おむつを換える。 エ.あやす。 - 26 - 【関】‑② 乳幼児の発達と保育・福祉 視聴記録2<さくらんぼ坊や> 【思】‑② ☆VTR「さくらんぼ坊や」を視聴して次のことをまとめてみよう。 (1)子どもが発達するために必要なことは何だろう? (子ども自身は? 幼稚園の先生は?何をしているのだろうか?) ☆あやちゃんの(側転)場合 ☆しげのちゃん(跳び箱)の場合 ☆ひろゆき君(お絵かき)の場合 ☆卒園式の出しものへの取り組み (2)VTRを視聴して子どもの発達ために必要なことをまとめてみよう。 - 27 - 乳幼児の発達と保育・福祉 ワークシート3<子どもの生活〜生活習慣の確立・食生活> (1)離乳のステップ 時 期 【思】‑②【技】‑① 【技】‑① VTRクリップをみてまとめよう。 離乳初期 離乳中期 離乳後期 離乳完了期 5〜6ヶ月 7〜8ヶ月 9〜11ヶ月 12〜15ヶ月 食事の状態 乳児の状態 VTRクリップを見て家庭で離乳食を与える場合のポイントをまとめよう。 (2)基本的生活習慣の確立に必要な保育者のあり方を考えてみよう。 - 28 - 【思】‑② 乳幼児の発達と保育・福祉 ワークシート4<子どもの遊びと生活> 【関】‑③ (1)おもちゃ(児童文化財)を作って遊んでみよう。 ☆ 年齢 ☆ 作るもの 才 紙ひこうき ・ 紙コップのびっくりお化け 作ったもの 工夫したところ (2)作ったおもちゃで子どもとの遊び方を考えてみよう。 (3)この遊び(おもちゃを一緒に作る場合も含め)で子どもはどのようなことを学ぶだろうか。 ☆心身の発達段階を参考にして考えよう。 (4)子どもと遊ぶときにあなたはどのようなことに配慮しますか。 ☆児童文化財の種類 ・ 遊び方 ☆あなた自身の接し方や遊ぶ環境 - 29 - 乳幼児の発達と保育・福祉 ワークシート5<子どもの福祉 〜世界の子どもたちは今〜> 【思】‑④ (1)今の日本の子どもにとって大切だと思うことを下の空欄に書き込もう。 この中で特に大切だともうことを 9 個選んでダイヤモンドランキングという方法で並べてみよう。 順位を付けた理由も書いておこう。 自由 友達 お金 愛情 健康・安全 平和 安心な住まい 遊び ダイヤモンドランキング 1 ←もっとも大切と思うこと 2 3 2 ←次に大切と思うこ と 3 3 4 4 5 (2)1位にランク付けした項目と理由を書こう。 【1位にランク付けした項目】 【理由】 (3)子どもの権利が守られよい、子どもが育つ環境について考えてみよう。 - 30 - 【思】‑④ 乳幼児の発達と保育・福祉 ワークシート6<子どもの福祉〜世界の子どもたちは今〜> 【技】‑② (1)世界の子どもたちを知ろう。 ユニセフの HP(http://www.unicef.or.jp)から、世界の子どもの生活を調べ子どもの人権にか かわると思われる問題をまとめてみよう。 【調べた国名】 【人権にかかわる内容】 - 31 -
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