みなと総研 - 一般財団法人みなと総合研究財団[WAVE]

みなとから未来へ
みなと総研
へ
来
未
ら
か
と
な
み
研
総
と
な
み
2015
AUTUMN
No.13
海辺活動アルバム
Waterfront Vitalization and
Environment Research Foundation
■慶南青年カレッジ実行委員会(通称:アジア・カレッジ)
13
No.
2 015
山口県と韓国慶尚南道の大学生有志が、平和学習、環境活動、地域文化体験や市民交流を通じて、相互理解と国際協力
のあり方を学んでいます。その中でも環境活動は、毎年長門市で開催する「日韓海峡海岸漂着ゴミ一斉清掃」に参加し、漂着
ゴミの回収と分析を実施しています。この実施結果を参考に自分たちでも実践できる環境改善活動に取り組んでいます。特に夏
プログラムでは、山口市で「環境フォーラム」を一般公開で開催し、両国の家庭ゴミ問題についての発表や、独自で取り組む海
■発行日 2015年10月
■発行
岸清掃(海底ゴミ調査)の実践活動結果や地域での環境聞き取り調査報告、
ディスカッションを通じて共通理解を深めています。
「みなと総研」では NPO 等の活動に対する助成を行っています
みなと総合研究財団では、港湾・
沿岸域に関する公益事業を実施しています
2 Framework
港湾における行政 ・ 企業 ・ NPO等の連携と
みなと総研の役割
一般財団法人みなと総合研究財団 理事長 鬼頭 平三
4 The Interview
■東京湾大感謝祭実行委員会 委員長 田久保 雅己
■NPO法人日本ビーチ文化振興協会 副理事長 吉澤 裕子
■NPO法人あおもり若者プロジェクト クリエイト 理事長 久保田 圭祐
■よこすか海の市民会議 渡辺 彰
12 The Contribution テーマ寄稿
■NPO法人北東アジア輸送回廊ネットワーク 理事 東山 茂
■NPO法人日本ウミガメ協議会 黒島研究所 主任研究員 亀田 和成
14 Report
欧州インフラ事情調査 〜欧州北部の都市を巡る旅〜
16 My Way My Style
江戸時代の東京湾を語る
館山市立博物館 学芸員 宮坂 新
18 みなと総研・Information
1.
自主調査研究
・港湾の物流、沿岸域の環境、クルーズ、港湾空間再生、港と文
化に関する調査研究を実施。
〒 105-0001 東京都港区虎ノ門 3-1-10 第2虎の門電気ビルディング3・4階
TEL.03-5408-8291(代表) FAX.03-5408-8741
特 集
環境再生や港湾活性化に向けた
行政・企業・NPO等の連携
みなと総研の公益事業
1.
自主調査研究
2.
多様な活動主体に対する支援
・日本沿岸域学会、東京湾再生官民連携フォーラム、リサイクル
ポート推進協議会などの活動を支援。
・NPO、大学等の活動に対して「未来のみなとづくり助成」を
実施。
・国・自治体等への技術的な支援を実施。
2.
多様な活動主体に
対する支援
3.
広報普及
3.
広報普及
・「みなと総研フォーラム」、
「港と文化を語る集い」の開催、広
報誌の発行など。
なお、上記の他に、これまでの知識と経験を活かして、幅広く調査研究事業を受託しています。
■お問い合わせ先
本広報誌「みなと総研」に関して、ご感想、ご意見等があれば、下記までご連絡ください。
E-mail:[email protected](担当:企画部 三上、鈴木)
Framework
従来、行政が担ってきた公(おおやけ)を、行政・企業・
NPO等の参画により支える「新たな公」への期待が高まっています。
今回の特集では、港湾環境、ビーチ利用、経済交流などで活動する NPO 等と
行政、企業、市民の連携による優れた取り組みにスポットライトを当ててみました。
特集を通じて、行政・企業・NPO 等の連携による今後の展望を考えるとともに、
みなと総研の果たす役割についても紹介していきます。
環境再生や港湾活性化に
向けた行政・企業・NPO
等の連携
様な主 体の意 見を聞 き、各 方 面の調 整
野において、従来のように公共機関が多
このため、地域づくりをはじめ様々な分
供が求められるようになってきています。
いてもより一層 きめ細 かいサービスの提
によって従 来 公 共が担ってきた分 野にお
りつつあり、また、社 会ニーズの多 様 化
て様々な公共サービスの継続が困難にな
況の逼 迫 といった社 会 情 勢の変 化によっ
近 年の人口減 少や高 齢 化の急 速な進
展、あるいは国、地 方 を 通じた財 政 状
応が求められ、多 様な活 動 主 体の参 画
な管 理や市 民 視 点によるきめ細かな対
まちづく りなどは、順 応 的で持 続 可 能
めていますが、水辺環境の再生、みなと
政の役 割が依 然として大 きな比 重を占
翻って港湾の分野を見てみますと、基
幹的な港湾施設の整備などについては行
れています。
愛着の醸成などにつながることが指摘さ
会貢献による自己実現や地域への誇りと
ながり、また、参加者個人にとっては社
港 湾にお け る 行 政 企
・ 業 N・PO
等の連携とみなと総研の役割
を 行い、 自らが実 行 するシステムから、
による「 新たな公 」の役 割が今 後ます
ながり」 を持つことによってより大 きな
行う仕掛けづくりや、個々の活動が 「つ
が、行 政では対 応 困 難な部 分を柔 軟に
後 も 全 国で展 開 されていく と思いま す
きている点でした。このような動きは今
応じて行政がお手伝いする形に変わって
て、その舞 台 装 置づく りなどを 必 要に
演 出 という 基 本 的なコンセプトに基づい
けでなく、地 域 経 済の活 性 化や新たな
の確保、環境問題への対応などが進むだ
よって、社会的には暮らしの安全・安心
「 新 たな 公 」 の活 動 が 拡 大 することに
の基軸として位置づけられたものですが、
形 成 計 画において地 域づくりのシステム
このよ う な 「 新 た な 公 」 の概 念 は、
平 成二十 年七月に閣 議 決 定された国土
くことが期待されています。
公 」 が活 躍 するシステムへと転 換してい
公 共 的 価 値の創 出に貢献 する「 新たな
によって、私的な利益の追求に留まらず、
当 財 団 としましては、 今 後 もこのよ
うな活動を通じて港湾分野における「新
役も積極的に担ってきています。
行政・企業・NPO等をつなぐ橋渡しの
動 主 体に対 する助 成・支 援、 あるいは
して実施していますが、併せて多様な活
と総研が自ら企画し、自主調査研究と
とま ちづく り、 里 海づく りなどはみな
生、建設副産物のリサイクル推進、みな
やNPOが担い手となった賑わいづくりの
開 発 そのものに対 する考 え 方が、市 民
真っ先に感じたのは、ウォーターフロント
ロント協会会長を務めさせていただいて、
主流でした。 しかし、昨年度ウォータフ
地域振興につなげるといったコンセプトが
もの)を整備し、
それを核に集客を図り、
させていただきましたが、当時は港湾文
するウォーターフロント開発のお手伝いを
地でブームだった港湾再開発をはじめと
私自身、平成四年に当時の運輸省港
湾局で民間活力推進室長として全国各
雇用の創出、社会サービスの充実にもつ
個 人、NPO、企 業 等の多 様な民 間 主
ます重要になってくると思われます。
ひっぱく
体が、いわゆる公(おおやけ)の担い手
として参 画し、それぞれが啓 発し合い、
力になるように行 政・企 業・NPO等の
たな 公」の中心的な役割を果たしていき
議 論し、調 整 を 図るなど協 働 すること
連 携の橋 渡しを 如 何に円 滑に行 うかが
たいと考えていますので関係各位の絶大
なご理 解とご支 援をお願いいたします 。
化交流施設などのいわゆる民活施設(箱
重要になってくると考えています。
みなと 総 研は、 公 益 法 人 改 革の一環
として平成二十三年七月に一般財団法人
に移 行し、今 年で丸四年が経 過しまし
た。この間、当財団の定款にも謳われて
いるとおり、「港湾、沿岸域、海洋等に
鬼頭 平三
関する総合的な調査研究や、多様な活
動主体との連携を通じて交通ネットワー
クや社 会の発 展に寄 与 する」 ことを 使
命として、前 身の財 団 法 人 港 湾 空 間 高
度化環境研究センター時代に業務の柱で
あった港湾の再開発、港湾・海域の環境
改善等に加え、物流、クルーズ、防災・
危 機 管 理、港と文 化など幅 広い領 域の
調査研究を実施してまいりました。
一般 財 団 法 人への移 行に際しては、右
記 改 革の趣 旨に照らし、公 益 目 的 財 産
をもって経費に充てる公益目的事業とし
て、①自主調査研究、②広報普及、③
多様な活動主体に対する支援、の三つの
事 業を位 置 付け、それまで以上に積 極
理事長
ひっぱく
特集
2
環境再生や港湾活性化に向けた行政・企業・NPO等の連携
特集
3
的に取り組むこととしました。 例えば、
東京湾の環境再生、干潟・アマモ場の再
一般財団法人
みなと総合研究財団
近年、社会ニーズの多様化や国・地方の財政状況の逼迫などにより、
The Interview
東京湾の恵みに感謝し、
再生へのきっかけにしたい
田久保 雅己
美しい「海」を取り戻し、首都圏にふ
多くの生物が生息する、親しみやすく
「 東 京 湾 大 感 謝 祭 」 は、 快 適 に 水 遊
び が で き、 ま た、
「江戸前」をはじめ
加してくださいました。
後援、協力として計五十三の組織が参
組んでいるのが特徴で、昨年度は共催、
が協働、連携してイベント開催に取り
たっています。行政、NPO、企業等
部組織である当実行委員会が運営にあ
民連携フォーラム」を母体に、その下
取 り 組 ん で い る 組 織、「 東 京 湾 再 生 官
関係者が集い、意欲的に様々な活動に
らえればと思います。
京 湾 を 肌 で 感 じ た 参 加 者 の 皆 さ ん が、
乗 船 体 験 会 を 実 施 し た の で す が、 東
す。 昨 年 は ク ル ー ズ 船 や ボ ー ト 等 の
の環境を考えてもらえればと思いま
で す。 そ し て、 そ れ を き っ か け に 海
に親しみを持ってもらうことが必要
い も の で す。 そ こ で、 ま ず は 東 京 湾
道 で 目 に は 見 え に く く、 わ か り づ ら
狙 い で す。 環 境 再 生 の 取 り 組 み は 地
ます。
の取り組みを見ていただけたかと思い
体、組織の活動内容など、東京湾再生
んでもらえました。東京湾の現状や団
おり、赤レンガ会場の三階にも足を運
ホンウナギの稚魚の展示が配置されて
ショップ体験や本邦初公開の生きたニ
東京湾大感謝祭実行委員会
委員長
さわしい「東京湾」を創出するための
ー 東京湾大感謝祭の開催目的について。
ー 昨 年の 「 東 京 湾 大 感 謝 祭2014」
東京湾大感謝祭
イベントとして、二〇一三年から開催
東京湾再生に向けた様々な団体や組
織の活動を、一般の人々に広く知って
の成果は、どのようなものでしょうか。
についてお伺いします。
八万二〇〇〇人と多くの方々に来場し
ていただきました。中でも乗船体験会
やハゼ釣り教室など、体験型のプログ
ラムに人気がありました。
また、アンケートを活用し来場者が
自然と興味を持って会場全体を見てま
わる動線づくりを、と工夫を凝らしま
した。アンケート回答者は、現在の江
戸前の食の一つであるホンビノス貝が
試食できるというものですが、二階に
の中で、相当の膨らみがあると思って
組織は多くあり、東京湾というくくり
生は地道な取り組みですが、活動する
ン 大 賞 」 ※に 入 賞 し ま し た。 東 京 湾 再
の観光客や訪問者をもてなす機能が求
もいるでしょうし、東京湾には海から
二〇二〇年の東京オリンピックには
諸外国から船で東京に来たいと思う人
親しみのある場所になって欲しいのです。
あ る 試 食 コ ー ナ ー 付 近 に は、 ワ ー ク
います。活動の一つ一つは薄いかもし
む団体・個人を表彰する制度
触れよう、伝えよう、守ろう、選ぼう)に即した活動に取り組
五つのアクション(食べよう、
言 五つのアクション」を参考に、
※国連生物多様性の十年日本委員会が推進している「MY行動宣
められるのではないでしょうか。
海からのおもてなしを
がるのを、うれしく感じています。
す。こうやって各地とのつながりが広
な海がある長崎県平戸市が参加予定で
来られましたが、今年の出展には豊か
ます。昨年、伊勢湾の関係者が視察に
日本の海全体がきれいになればと思い
の よ う な イ ベ ン ト が 全 国 で 実 施 さ れ、
また、東京湾大感謝祭は官民が協働
した全国で唯一のイベントですが、こ
大切だと考えています。
れからは、その面を掘り下げる作業が
ではないと感じています。そして、こ
面になります。今、その広がりは半端
れませんが、一つ一つの点を集めると
●東京湾上(横浜港):
プレジャーボート、クルーズ乗船体験、SUP
レース、ハゼ釣り教室
再生活動を広く発表する場
されています。
もらおうと発表の場をつくるのが一番
きる方法を模索しています。
少しでも東京湾の環境を意識しても
その主催者として運営にあたる東京
湾大感謝祭実行委員会の田久保委員長
の目的です。
に、開催の経緯や今後の取り組みなど
ー ま ず は、 運 営 形 態 を お 聞 か せ く だ
昨年は会場を横浜赤レンガ倉庫に移
しての開催だったのですが、来場者は
東京湾再生を目指して官民の多様な
ー運営上の課題について。
二 〇一五年の開催
は何でしょうか。
ま す。 特 に 注 目 し て も ら い た い も の
京 湾 大 感 謝 祭 2015」 が 開 催 さ れ
二十三日(金)〜二十五日(日)に「東
ー 今 年 も 横 浜 赤 レ ン ガ 倉 庫 で、 十 月
一 つ は 運 営 ス タ ッ フ の 人 員 不 足 で、
今年は新たにスタッフを募集する予定
です。スタッフはボランティアですの
で、一挙に増員できるとは言い難いの
ですが、将来的には東京マラソンのよ
うにボランティアとしての参加がス
テータスになればと思います。
横浜港に停泊する全ての船舶が汽笛
を一斉に鳴らすというプログラムが
二十四日(土)と二十五日(日)のそ
れぞれ正午にあります。本来は不可能
なところを行政や関連企業の協力で実
現しました。実は横浜港では毎年、元
開催告知チラシ
下:「海藻おしば体験教室」 では、 子どもたちが作品づくりに挑戦を
また、限られた資金の中でいかに広
くPRできるかも大きな課題です。今
年は東京湾大感謝祭のホームページを
開設しましたが、その他の情報発信と
して、開催地の横浜市の広報誌への掲
載など、お金をかけずに広くPRがで
旦を迎える午前零時に同じように一斉
に汽笛を鳴らす「除夜の汽笛」が恒例
行事になっています。この港が荘厳な
雰囲気に包まれる横浜ならではの行事
を、今年のイベントで実現します。ま
た、昨年人気だった乗船体験会も引き
続き実施予定です。
るヨット愛好家として、現在の東京湾
ー最後に、長年、ヨットに乗っておられ
ー今後の抱負をお教えください。
す。東京湾もそんな楽しみ方ができる、
観光が楽しめる仕掛けが十分にありま
ろに整備されており、船など海からの
ヨット文化が根付いている海外の水
際にはレストランや桟橋がいたるとこ
など、決して美しいとは言えません。
ていたり、海に背を向けた建物が多い
海沿いの景色がコンクリートに覆われ
東 京 湾 の 環 境 は 二、三 十 年 前 よ り、
ず い ぶ ん と 良 く な り ま し た。 し か し、
への思いやお考えをお教えください。
昨年、母体組織の東京湾再生官民連
携フォーラムが、「生物多様性アクショ
湾の大切さを広めたいと思います。
もらうことが必要ですし、今後も東京
ることを、もっと多くの方に理解して
です。東京湾から様々な利益を得てい
面など、海から受ける恩恵は大きいの
過ごしています。しかし、生活や仕事
その多くの方々は東京湾を意識せずに
一都二県にまたがる東京湾の背後圏
に は 約 三 〇 〇 〇 万 人 が 住 ん で い ま す。
活動内容を紹介
「東京湾大感謝祭 2014」
歴任
下:東京湾再生についてのパネル展示で東京湾の状況や
さい。
東京湾大感謝祭の開催期間の設定、
企画、 運営
上:開会式の様子。田久保委員長(写真左から2番目)は、学生時代からヨッ
上:東京湾の海の生物に触れる子供たち
そして、来場者に楽しく遊びながら、
東京湾再生に興味を持ってもらうのが
東京湾大感謝祭実行委員会
●赤レンガ 1 号館 3F ホール:
シンポジウム、ワークショップ、歴史・文化
展示
トを趣味として海に親しみ、ヨット・ボート専門出版社で雑誌の編集長などを
上:現代の江戸前の食である活ホンビノス貝と活アサリ
4
環境再生や港湾活性化に向けた行政・企業・NPO等の連携
特集
5
●横浜赤レンガ倉庫:
広場ステージ、江戸前の食、ブース企画
●活動内容:東京湾大感謝祭の企画、運営、
実施
●委 員 会:行政、NPO、企業等、24名
の委員で構成
●組織運営:官民の協働、連携の中、企業
やNPOの自主的な活動を、行
政が支援する方式で、各主体
のノウハウを活かした、新し
い組織機能を構築中
下:人気を博した乗船体験会
横浜市消防音楽隊による開会式のオープニングセレモニー
東京湾大感謝祭 2014
プログラム
東京湾大感謝祭実行委員会
の販売。ホンビノス貝はアサリに似た味と食感です
写真提供:東京湾大感謝祭実行委員会事務局「東京湾大感謝祭2014」
The Interview
法人日本ビーチ文化振興協会
副理事長
ビーチスポーツを起点に
京丹後の海辺の楽しみ方を提案
ビーチスポーツフェスティバルin京丹後2015
吉澤 裕子
そして、ビーチバレーボール大 会の運
営には、専 門 的なノウハウが必 要になる
ービ文 協は地 域 特 性 を 活 かし た 海 辺
例えば、観光シーズン前に市がバスを
チャーターし参加者を送迎して、大規模
活かしたビーチマラソン(ビーチラン)大
ー今後の課題をお聞かせください。
活 用 方 法 の 提 唱、 啓 発 活 動 を 全 国 で
約三年前に、京丹後市から私たちに
本イベントを実施したいと要望を受け
会 を 企 画、実 施しました。 そしてその
京丹後でビーチスポーツ 「ビーチスポーツフェスティバルi
n京丹後2015」は日本海に面した
たのがきっかけです。同市の自然豊か
結果を踏まえ、今年の夏に本イベントが
運営資金の確保が課題だと思います。
本イベントに限らず、イベントは一、
二年で
ので、 私 たちが主 管 として参 加 し、 運
京都府京丹後市の海岸を会場に、ビー
な 海 辺 が「 世 界 ジ オ パ ー ク 」 ※の 認 定
開催されました。
な海岸の漂着ゴミの回収を行っています。
チ ス ポ ー ツ を 楽 し む イ ベ ン ト と し て、
を平成二十二年に受けました。そこで、
ー本イベントの成果や反響はいかがで
行っていま す。 ま ずは本 イベントに参
今年初めて開催されました。本イベン
課題となり、その方法の一つとして本
したか。
営業務を行いました。 将来は、このノウ
トは京丹後市と地元の団体、企業、N
イベントが検討されました。
ファミリー層を中心に約四〇〇〇人の
動 員に及び、来 年の開 催 を 希 望 する声
まさに官民が一体となった取り組みです。
POなどが協働、連携して海辺の活用
ー京丹後市では、市、地元の団体、企業、
もあり、参加者には好印象を持っていた
画 し た きっか け や 経 緯 な ど を お 教 え
方法の一つとして実施したものです。
NPOの協働、連携が非常にうまくいっ
だ き ました。 当 初はやったことがない、
伺いします。
将来は地元主体でイベント
を調達する仕組みや組織が必要ですし、
うことが重 要です。 そのためには資 金
終わらせるのではなく、長く継続して行
うことができればと考えています。
そこで、本イベントに主管として参
画した日本ビーチ文化振興協会
(以下、
ているそうですが、その秘訣や要因は
とビーチスポーツへの疑問があったようで
これを地域外にどうアピールするかが
ビ文協)の吉澤副理事長に、開催の経
何だとお考えですか。
ラフで楽しかった、と満足していただいた
緯や協働、連携の課題などについてお
京丹後市が中心となり、地元の団体、
企業、NPOとが一丸となって取り組んで
ようです。
市が中心となって地元の三十の団体等の
皆さんとともに「日本一の砂浜海岸づく
その資 金でイベントの運 営ができれば理
の課題は何だとお考えですか。
ー本イベントを通して見た協働、連携
ー本イベントの運営体制は。
想 的です。 私 どもが開 催 するビーチバ
行政、企業、NPO等の各主体が思い
を一つにまとめるためには、京 丹 後 市 長
一回のイベント開 催では効 果はあ り ませ
り 実 行 推 進 会 議 」 という 組 織がつくら
レーボール大 会は参 加 者にエントリー料
のような旗振り役となる人が必要です。
行政が主導して行う場合は、地元住
民にしっかりと説明して理解を得る必要
ん。 例 えば年一回で一万 人の参 加 を 見 込
れており、本イベントを含め、様々な海
をいただき、コートの設 営のための人 件
また、それとは別に行 動 力のある地 元
があります。ビーチスポーツはここ数年
むのであれば、一カ月に一〇〇〇人の参加
新たに設立した実行委員会が主催者
として運 営にあたり、市 と前 述の組 織
費に充てています。このようにイベントの
の人が必 要です。 各 地 域には普 段から
で人気が出てきて、各地域からイベント
を見込んだイベントを毎月行う方が、地
辺の活 用 方 法や必 要なことなどが議 論
参加者が費用を負担することも一つの方
自 分たちで海 辺 を 利 用している人たち
開 催に向 けた相 談 をいただいていま す。
域外の方々にアピールする効果も高まる
は共催として参加されました。
法と思います。
が必ずいます。 特にマリンスポーツをやっ
しかし、海岸は多くの地元住民にとって、
と思います。
されています。
また、海辺の安全確保も課題です。 海
水 浴だけではなく、イベント開 催 時のい
ている人たちです。 彼らの中から、そう
日常の風景の一部に過ぎない存在ですし、
外と難しいとのこと
トを実施する課題は何でしょうか。
ー地 域 でビーチスポーツによるイベン
さらに地 域 活 性 化のためには、 定 期
的に行う仕組みも必要になります。 年
のです。
ばと思います。
世界的に貴重な地質、地形、火山などの地質遺産を複数有する
※ユネスコにより発足した組織・世界ジオパークネットワークが、
身 が、 何 も ない海 辺 を ど う 過ごす か、
その楽しみ方を考えてほしいということ
●設 立:2004年8月
●活動内容:
1. 海辺とのふれあい 「裸足の文化」 推進活動
2. ふるさとの浜辺再生 「里浜づくり」 推進活動
3. ビーチスポーツ、レクリエーションの普及推進活動
4. 海辺に関する正しい知識の啓発活動
5. 裸足による健康づくり、 青少年の育成について普及
推進活動
6. 海辺環境美化、 保全活動
7. ビーチデザインコーディネート
自然公園を認定する制度
NPO法人日本ビーチ文化振興協会
です。
例 えば普 段、 陸 上で実 施している運
動会の種目をビーチで裸足でやる。 実際
にやっていただくと子どもも大人も開放
的で楽しいと好評です。このような体験
を通し納得していただいた上で、次に地
ポーツを活用した海辺の活性化について」
域特性を活かした企画を考える。 費用
朝日健太郎&浅尾美和トークショー。テーマは「ビーチス
「海辺図書館」。竹を利用した日除け「パーゴラ」
下:真剣勝負の取り組み、
の下、裸足でゆったりした気分で読書
「ビーチ相撲」
をかけた大規模のビーチスポーツイベント
ざというときに備えて、ライフセーバーの
いう人物を見つけて協働、連携をお願い
イベントを行 う 意 義が見 出しにくいので
上:飛 ば す 距 離 を 競 う
にするかどうかは、最後に考えればいい
力が大変重要になってきますし、海辺で
する。 そうすれば彼らのネットワークを
そして、いざイベントを開催するとな
れば、運 営ノウハウは私たちのような組
「ビーサン跳ばし」 は意
海辺の過ごし方を考える
自身を守る正しい知識を学ぶ必要があり
す。 私たちが各 地 域で最 初にお話しす
下:アスリートも一緒に参加します。写真左はビーチフラッグス日本チャンピオン
介してスタッフも集まり、イベント運営も
上:ライフセービング競技の一つでもある「ビーチフラッグス」
ます。 避難訓練自体をイベント化にする
ビーチバレーボール大会の表彰式。写真左がビ文協理事長・朝日健太郎
遊佐雅美選手
すが、実際に体験してみると、意外にも
いるからだと思いま す。 京 丹 後 市では
ハウを 地 元に伝 授 して、 地 元 主 体で行
日本の地域特性を活かした海辺活用
方法の提唱、 啓発活動や企画、 運
営
ください。
NPO法人日本ビーチ文化
振興協会
本イベントも、三年前から皆さんと協
議 を 行い、昨 年 と今 年は長い海 岸 線 を
N
P
O
織をどんどん利用して学んでいただけれ
ビーチバレーボールスクール、
ビー
チフラッグス、ビーチ相撲、ビー
サン跳ばし、スタンドアップパドル
ボード、海辺図書館、HAMA−1
グランプリなど
ることは、ま ずは地 元 住 民の皆 さん自
●内 容:ビーチバレーボール4人制大会、
スムーズに進みます。
●会 場:京丹後市夕日ヶ浦海岸
のも効果があると思います。
●開催日:2015年7月18日、19日
6
環境再生や港湾活性化に向けた行政・企業・NPO等の連携
特集
7
ビーチスポーツフェスティバル
in 京丹後2015 開催概要
写真提供:NPO 法人日本ビーチ文化振興協会
The Interview
法人あおもり若者プロジェクト クリエイト
理事長
青森駅前のビーチを活かした
まちづくりに挑みます
あおもり駅前ビーチプロジェクト
残るビーチをつくるプロセスに地 元 高 校
ー青森県とクリエイトの役割分担につ
したビーチづくりのためのワークショップ
二〇一五年四月、青森駅の目の前に
広がる海域にビーチをつくる「あおも
生が参 加して、地 域 と密 接に関わるこ
いてお教えください。
のためのまちづくりと、ビーチづくりは
り駅前ビーチプロジェクト」のキック
とは 長 期 的に見 れば、 地 元への愛 着に
を実施しました。
オフミーティングが青森県等により
もつながると思いました。これには大き
青森県は事業計画の立案からハード面
の整 備、プロジェクトの推 進 体 制づく り
無 関 係のよ うに思 え ま した。 しかし、
実 施 さ れ ま し た。 本 プ ロ ジ ェ ク ト は、
な意 義があ り、海 を 中 心としたまちづ
を行います。 また、企業等への参画の呼
海を中心としたまちづくり
二〇二〇年までに旧青函連絡船の発着
く りに結び付 く きっかけにも なると 考
びかけ等も行います。一方、私たちクリ
得意分野の組み合わせで
地であったバース(岸壁)周辺をビー
えて、参画に至りました。
ラムを 企 画しま す。 そして参 加 者の募
エイトは県と協働で年間を通じたプログ
ー具体的にビーチづくりは、どのよう
集、PR活 動、プログラムの実 践 等の実
本プロジェクトを 通じて、地 元に永 遠に
チにする計画で、ビーチづくりととも
に、このビーチを活用した地域づくり
に挑む一大プロジェクトです。
に行われたのですか。
題、今後の展望などについてお伺いし
トライトを当て、これまでの経緯や課
クリエイト)の久保田理事長にスポッ
若者プロジェクト クリエイト(以下、
トと地 元 高 校 生の約四十 名の参 加 者 全
チづくり体験を実施しました。クリエイ
クリエイトが地元高校生とともに、ビー
フィールドとして基盤を整備し、六月に
今 年四月のキックオフミーティング後、
五 月 には 青 森 県 がプロジェクトの実 証
由は、役 割 分 担 を 明 確にしたことだと
現 在、両 者の協 働、連 携は非 常にう
ま くいっていると感じていま す。 その理
務を担っています。
ます。また、事業の実施主体である青
員がバケツリレー方 式で砂や石 を 運び、
そこで、本プロジェクトに青森県と
協 働、 連 携 し て 取 り 組 む、 あ お も り
森県からのコメントもいただきます。
ー本プロジェクトへの参画のきっかけと
の海 辺づく り 活 動では、企 業 とも 連 携
放流しました。 七月の地元新聞社主催
予定地に次々に投入し、最後にアサリを
経緯をお聞かせください。
した住民参加によるアマモの移植を行い、
務局長を講師に、地元高校生を対象に
同時に本プロジェクトで監修をお願いして
今 年二月に青 森 県 から 打 診 が あ り、
四月には参画を決定しました。
最 初 は、 私 た ちの活 動 目 的で あ る、
地 元の若 者が主 体 となった地 域 活 性 化
画してよかった」 と感じています。
りに大きく貢献するはずです。そのこと
を 多 くの人に理 解してもらい、一緒にま
久保田 圭祐
地域の若者によるまちづくりを通じ
た、 地域社会の課題解決のための
企画、 運営
ー本 プロジェク トの成 果 と 反 響 は、い
とお考えですか。
続く計画です。 どのような課題がある
ー本 プロジェク トは、二〇二〇 年 ま で
情報発信を行いたいと考えています。
くことが、最大の課題ですし、積極的に
ジェクトへの興味を継続的に持っていただ
のためには、地 元 住 民の皆さんに本プロ
トの推進体制づくりを行い、クリエ
に、このビーチを活かしたまちづくりに
んに海への愛着を持ってもらいたい。 さら
げだと考 えていま す。 また、多 く
巻き込むクリエイトの求心力のおか
本プロジェクトが順 調に進められ
ているのは、 地 元 高 校 生や 住 民 を
イトには様々なプログラムを実 践し
業等が連携して取り組むプロジェク
行っています。 また、地元住民や企
青 森 県は、プロジェクトの全 体 計
画の策定と事業のハード面の整備を
かがでしょうか。
青森県も少子高齢化による人口減少
が問題になっています。 その中で、若者
ー今後の展望をお聞かせください。
参 加 した 地 元 高 校 生からは、「 参 加
する前は本当にビーチになるのか不安で
たちがこうした活 動に参 加 することは、
したが、参 加して実 感が沸 き ました」、
愛着を育むことにもつながり、まちづく
ついても 考 え、 実 践 していき たいです。
の人の楽しみながら、参加していた
技師
「ビーチづく りはハードでしたが頑 張れ
私たちが考 える「 観る海から、楽しむ
だいている姿が、我々のモチベーショ
ンにもつながっています。
海・参 加 する海へ」の深 化を目 指して、
今後も活動していきます。
今 年 度 は、八〜 十 月にクリエイ
トによるプロジェクトPRキャラバンや
「 海 とま ちづく り 」 勉 強 会、高 校
生によるビーチづく り 体 験 第二弾、
小学生の海辺観察会、環境教育推
進フォーラムなどを 実 施。 十一月か
三上 惠
らはクリエイトとともに来年度の事
青森県 東青地域県民局
地域整備部 青森港管理所
業計画の策定を行う予定です。
平田 昌樹
本プロジェクトをきっかけに、多くの皆さ
地 域 活 性 化にとって重 要 な 住 民に地 域
あおもり駅前ビーチプロ
ジェクトでの行政の役割
学生や地域づくりに興味がある大学生を受け
NPO法人あおもり若者プロ
ジェクト クリエイト
1.クリエイトまち塾:「商店街が学校になる」をコ
ンセプトに、 商店街・地元大学生・高校生が
三位一体となり、 地域活性化に取り組む地元
高校生への通年型社会教育プログラムの実施
2.首都圏での地域活性化事業:青森県出身の大
ていただいています。
楽しむ海・参加する海へ
いる、海辺つくり研究会の木村理事・事
思います。 行政やNPOにはそれぞれ得
意分野があります。 それをうまく組み
つ、久保田理事長(写真中央)
と本プロジェクト監修のNP
ちづくりに取り組みたいと思います。 そ
NPO法人あおもり若者プロジェクト クリエイト
N
P
O
「ビーチができたら終わり」ではあり
ません。そこからが本当のスタートです。
合わせることが、プロジェクトを進める上
●活動内容:
総括主幹
で重要になると考えています。
今年4月のキックオフミーティングでビーチ予定地に立
入れ、首都圏で青森の魅力を発信する活動の
実施
3.まちづくり事業:様々なイベントを通じたまちづ
くりのお手伝いを実施。実施例:「高校生がつ
くる東北新幹線開業前夜祭」(2010年)、
「あ
おもり高校生カフェ事業」(2013〜2014年)
等
●設 立:2009年任意団体として設立
2014年NPO法人化
青森県 東青地域県民局
地域整備部 青森港管理所
ました。 自 分に対 する大 きな自 信にも
今年 7 月に実施したビーチづくりのためのワークショップでは、 久保田理 今年 6 月のビーチづくり体験ではバケツリレーで次々
と砂や石を投入
事長(写真左)も参加して、 高校生たちとアイデアを出しあいました
8
環境再生や港湾活性化に向けた行政・企業・NPO等の連携
特集
9
O法人海辺つくり研究会の木村理事・事務局長(写真右)
完成したビーチで参加した地元高校生全員の記念撮影
なりました」 といった声が寄せられまし
た。こうした声を聞いて私たちも、「参
今年7月の地元新聞社主催の海辺づくり活動では、地元住民100名が参加してアマモの移植を行いました
写真提供:青森県
The Interview
企業に支えられて約十年、
横須賀に根付かせ広めたい
自 生 しているのを 発 見 し ま した。 そこ
浦 郷 工 場の護 岸 付 近で、 偶 然アマモが
散見され、子どもたちがケガをしないか
周辺ではコンクリート片などの障害物が
していただきました。 さらに観察場所の
渡辺 彰
ーまずは、主催を務める、よこすか海
で 現 地 調 査 を 行い、 自 生アマモ場での
心配でしたが、同社の協力もいただいて
よこすか海の市民会議
の市民会議・渡辺氏にお伺いします。
生 物 観 察 会を開 催したい旨を伝 え、工
深浦湾のアマモ場観察会
観察会を始めたきっかけとその経緯
をお聞かせください。
それらの撤 去など、周 辺の清 掃 活 動が
ています。
欠かせない地元企業の協力
うにと努めています。
ースムーズな連携体制が実現した要因
整 備、駐 車 場、トイレ、水 道 施 設、会
草 刈 りや護 岸 までの木 道による経 路の
いただいています。 観察会準備ヤードの
( 株 )リフレックスには敷 地 内の
一方、
護岸を一部開放とともに、様々な協力を
募集や運営を行っています。
主 催 者 として私たち、よこすか海の
市 民 会 議が日程 調 整や企 画、参 加 者の
力体制について、お教えください。
以前、別の企 業 敷 地 内 外での観 察 会
を 実 施したことがあ り ま すが、現 在の
います。
ただき、今のスムーズな連携につながって
の活動に十年前から継続して応援してい
そして協 力 的な対 応 をしていただき ま
で、歴代工場長の皆様にとても熱心な、
協力を依頼した十年前、当時の工場
長が理 解 を 示してくださり、す ぐに許
は、どのようなことでしょうか。
議 室などの提 供です。 そして、観 察 会
運営はその経験が下地となっていると思
ー(株)リフレックスとの連携方法や協
当日は子どもたちが危 険な場 所に行か
いま す。 このよう な 立 地での観 察 会 を
した。 現 在の武田工場 長にも、私たち
可 をいただき ました。 そして、現 在 ま
ないように、見守りのために職員を配置
多 くいらっしゃいます。 親 子で参 加され
ー 参加者の様子や反応は、いかがですか。
うで保護者にも好評です。
ね、と親 子の会 話が弾 むことも あるよ
ますが、海の自然環境に接してい
( 株 ) リ フ レ ッ ク ス は、 横 須 賀
市内の数カ所で工場を操業してい
他の地域へと広げたい
参加者は毎回多く、小中学生たちの
声がうるさいぐらいに賑やかで活気があ
ー最後に、観察会など海の環境への理
るところは少なく、浦郷工場は稀
地域市民との交流の場
き た 十 年 間、 当 会 員の若 返 りに伴い、
りま す。 子 どもたちには、こうした楽
解 や 関 心 づく り、 場 づく り に向 け た、
ると、帰 宅 後に今日はこんなふうだった
ボランティアスタッフも若い方が増えてき
しい体験をきっかけに、海の環境にも目
にも条件が整っていました。
良好な連携が不可欠だと思います。
ました。 積極的な様々なアイデアが寄せ
今後の課題や展望をお教えください。
私自身は横須賀市育ちで海が好き
を向けてほしいと思います。
はありません。 しかし、一企業の協力と
なので、観察会が実施された当初
られ、観察会などへの意見交換が活発に
努力によってこのような場づくりが実
から、活動に参加しています。
なり、組織も活性化されました。 昔は
現します。一般には安全面での問題が
そして、当時の工場長が賛同し
たのをきっかけに、以降も後任者
条件になるとは思われますが、海岸線
リサイクル事業を展開する当社
は、廃棄物を扱っており、環境を
横 須 賀 港 付 近の海 岸 線は工場の敷 地
や港湾や防衛施設がほとんどを占め、一
に接する企業での環境活動の一つの選
担うという面では、海浜の観察会
一緒に参 加 する保 護 者は、アマモ場の
観察といった活動や経験が少ないせいか、
択肢として、他の港湾区域にも反映さ
などの活動とは共通点がありま
小難しいことを言っている市民団体といっ
れていくことを望んでいます。
だくことで、地域の方々と直接交
が 受 け 継 ぎ、 協 力 し て き ま し た。
そ し て 今 後 も、( 株 )リ フ レ ッ ク ス の
協力を仰ぎ観察会を継続しつつ、横須
流ができますし、当社の考え方や
います。
株式会社リフレックス
営業部 技術開発部 部長
武田 信文
ながる非常に良い機会だと思って
でき、企業イメージのアップにつ
す。また、工場内を訪問していた
賀市に広くこの活動を根付かせていき
●設 立:2003年
●活動内容:
東京湾内湾・外湾・相模湾の三つの海に囲ま
れた横須賀の利点を活かし、
「海と遊ぶ」、
「海
を楽しむ」 をテーマに、 市民・子どもたちを
対象にした体験・体感イベントの実施、 市開
催委員会などへの参画と提案など。 昨年度の
実施例:「深浦湾リフレックス前のアマモ場観
察場所の清掃」、「長井の海の観察会」、「深
浦湾の海の観察会」、「よこすか海の野外料
理会2014」 など
事業内容を知っていただくことが
よこすか海の市民会議
たいと考えています。
般 市 民が気 軽に立ち入れる場 所が多 く
に清掃活動を
メモを取ったり熱心に話を聞かれる方が
同社工場内の深浦湾口で熱心に観察する地元の小中学生たち。観察は通称・海のリーダーと呼ばれるスタッフの
する小 学 生も多 く、若い人たちが活 動
の中心になっています。
参加者26名と記念撮影を。背後には米海軍基地がうっすらと
たイメージも あ り ましたが、 今は参 加
よこすか海の市民会議と(株)
リフレックスの社員が事前
自生アマモ場を発見して 横須賀の深浦湾で地元の小中学生を
対象とした
「深浦湾のアマモ場観察会」
場に協 力 を 依 頼したところ、護 岸 まで
●協 力:
(株)リフレックスほか
湾は特に静 穏で、アマモの生 育に適して
が実施されています。
●後 援:横須賀市
できるようにと注意し、
(株)リフレック
できました。
●主 催:よこすか海の市民会議
いたようです。
の通 行など敷 地 利 用が可 能になりまし
場内及び深浦湾口アマモ場
スに必要以上の負担や迷惑をかけないよ
二〇 〇 四 年に別 企 画のアマモ移 植 実
験 を 開 催しました。 その参 加 者がシー
●会 場:
(株)リフレックス・浦郷工
周辺で行います
ボランティアスタッフも参加し枝を束ねたボサで漁を
また、 私たちの活 動にも 良い効 果が
あります。 協 力 体 制のもとで活 動して
当日は観察前に危険な生き物を説明
この観察会は、深浦湾に面する工場
地帯の工場敷地に隣接する自生アマモ
たアマモ場の生物観察会
その後 も、観 察 会 を 定 期 的にサポー
トしていただき、良好な協力関係が続い
た。 護 岸の前 面には浅 瀬があり、深 浦
横須賀の海の環境への理解や関心
を高めるための海の生 物 観 察 会、
体験漁業、 海浜清掃などの企画、
運営
カヤックで移 動 中に( 株 )リフレックス・
よこすか海の市民会議
また、私たちも敷 地 内の安 全な通 路
を確認し、子どもたちがスムーズに通行
場が会場です。地元企業の(株)リフ
レックスとよこすか海の市民会議との
協働、連携によって観察会での工場敷
地の一部開放が実現し、二〇〇六年か
ら毎年開催されています。
そこで、よこすか海の市民会議の渡
辺氏と(株)リフレックス・浦郷工場
の武田工場長に実現に至った経緯や取
り組みなどについて、お伺いします。
●活動内容:地元の小中学生を対象にし
続けて開催していくためには、企業との
●開 催 日:2015年8月1日
10
環境再生や港湾活性化に向けた行政・企業・NPO等の連携
特集
11
深浦湾のアマモ場観察会
写真提供:よこすか海の市民会議
北東アジア輸送回廊による
国際交流の活性化を目指す
わが国と北 東アジア諸 国(ロシア、モン
NPO法人北東アジア輸送回廊ネット
ワーク(NEANET/ねあねっと)は、
性の向上を図るとともに、当NPOと
に移転し、関係者との間の地理的利便
みなと総合研究財団(みなと総研)内
二十七年四月からは、事務局を(一財)
を新たにしたところです。また、平成
年」に向けての問題認識について思い
「北東アジア交流白書について」 第四回 十月十六日予定
「ユーラシア横断中国欧州輸送回廊」
第三回 九月二十五日予定
「二〇一五年日中経済協力会議の報告」
第二回 八月七日
「中国・モンゴルにおける環境ビジネス」
法人北東アジア輸送回廊ネットワーク
理事
ゴル、 中 国、 韓 国 等 ) との物 流 及び人
みなと総研との協力・連携等がしやす
環日本海経済交流への取り組み
流 両 面での交 流 を 促 進 するための情 報
いような環境を整えました。
概要と活動経過
交換や調査研究等を目的として、平成
いは団 体であ り、 関 東 地 域 居 住 者のほ
流に熱い思いを有する各界の個人、ある
してき ま した。 メンバーは 環 日 本 海 交
係 者との連 携のもと幅 広 く 活 動を継 続
れは、北 東アジアのビジネスの最 前 線で
話 会 を 開 催 することとしていま す。 こ
当NPOとみなと総 研 との共 催 企 画
として、 今 年 度から北 東アジア政 策 懇
【北東アジア政策懇話会の開催】
その記載内容としては、各者からの寄稿・
NPOのホームページにて閲覧可能です。
を 編 集していま す。 本 白 書の内 容は当
執筆を依頼し、「北東アジア交流 白書」
平 成二十六年から毎 年、わが国の環
日 本 海 各 地 域の対 岸 諸 国との交 流の実
【北東アジア交流白書の編集】
か日本海側各地の関係者及び対岸諸国
実 務 をされておられる方々に最 前 線 情
提 供 情 報のほか、日 本 海 側 各 地 域にお
うな人工海浜にも産卵に訪れます。し
かもしれませんが、ウミガメはこのよ
市町村の海水浴場など様々です。意外
沖縄本島には多数の人工海浜があり
ます。ホテルのプライベートビーチや
が確認されました。
カ所でウミガメの上陸、もしくは産卵
た三十九カ所の人工海浜のうち、十九
得ました。これらを含めると、調査し
おいて、過去にウミガメの産卵情報を
話を聞いたところ、十八カ所の砂浜に
車場で見つかったケースがありまし
際に、護岸が傾斜型の人工ビーチにお
に出ることを防ぐ効果があります。実
たとしても、ウミガメが砂浜から道路
では、親ガメや子ガメが光に誘引され
い印象があります。しかし、人工海浜
また、一般に垂直護岸は、ウミガメ
が砂浜を登る時に障害となるため、悪
東山 茂
亀田 和成
12
環境再生や港湾活性化に向けた行政・企業・NPO等の連携
現在の主な活動
地域にいる海外メンバーも含んでいます。
報をお話していただこうとするものであ
ける交 流 実 績一覧、 港 湾 統 計 及び入 管
かし、人工海浜は卵やふ化した子ガメ
そして、外灯や商業施設があり、ウ
ミガメへの影響が大きいと考えられた
た。そして、この原稿を書いている最
ズに応えるもので、現在も新たな設置
北東アジア交流に関する情報交換、
関連する調査研究の実施、個別事
業への協力
情報交換会の様子
十六年に設 立されたものです。 それ以
そして、北 東アジアの輸 送 回 廊 等につい
り、皆様に時宜にかなった情報を提供で
統 計データ、NEANETの歩み年 表が
来、都 内に事務 局を置 き、各地域の関
て最新情報が入手できるネットワークづ
きるものと考えています。 当NPOとみ
績について、 会 員 及 び 関 係 者の皆 様に
くりを心掛けています。詳細については、
含まれていますので、是非一度、ご覧いた
以上のような当NPOの活動に対しま
して、今後とも皆様のご鞭撻をお願い申
だければと思います。
で、関 心 ある方の積 極 的なご参 加 をお
し上げます。 また、新規会員も募集中
にとって良い環境とはいえません。例
人工海浜は二十九カ所でした。そのう
中にも、道路に出てしまった母ガメが
今回の調査を通して、ウミガメの保
全 に つ い て 気 づ く こ と が あ り ま し た。
計画があります。人工海浜に訪れたウ
実施したものです
全国のウミガメ関係者のネット
ワーク。沖縄八重山に付属の研究
所がある
設立10周年記念シンポジウムの様子
当NPOのホームページ(
http://neanet. なと総 研のそれぞれのホームページ等で
事 前に参 加 者 を 広 く 募 集 しつつ、みな
待 ちしていま す。 今 までの開 催 実 績 と
につき、ご関心ある方は、お気軽にお問
と総研内の会議室にて開催していますの
平成二十六年一月には、設立十周年
を迎えての記念シンポジウムを新潟に
今後の開催予定は、以下の通りです。
合せ等をいただければと存じます。
現 在、新たなホームペー
goraikou.com/
ジを構築作業中)をご参照ください。
お い て 開 催 し、 過 去 十 年 の 活 動 成 果
第一回 六月二十六日
えば、子ガメは光の方向に向かう習性
ちウミガメの産卵が確認された砂浜
交通事故に遭うという痛ましいニュー
法人日本ウミガメ協議会
黒島研究所 主任研究員
を 振 り 返 る と と も に「 こ れ か ら の 十
沖縄島の人工海浜における
ウミガメの産卵状況調査
ウミガメの研究
があるため、後背に外灯があると海に
は、八カ所でした。ウミガメは、数年
スがありました。
確認しました。また、砂浜の管理者に
た ど り つ く こ と が で き ま せ ん。 ま た、
間隔で同じ砂浜に産卵に戻ることが多
人工海浜とウミガメの産卵
卵は脆く、人の踏みつけの影響を受け
いため、これらの砂浜は特に注視する
を な す も の で す。 ビ ー チ で の 観 光 は、
いて、子ガメが護岸を乗り越えて、駐
ます。
必要があります。
サンゴ礁の青い海と白い砂浜は、多
くの人々を惹きつけ、沖縄観光の中核
各地でウミガメ調査・保護活動が実
施されていますが、活動場所の多くは
注目されず、その現状は明らかになっ
常駐の管理者がいる砂浜では、柵を設
ミガメとどのように接するべきか、こ
家族連れや多数の友人らで気軽に楽し
ていません。そこで、平成二十六年六
置し、人が卵を踏みつけないようにし
れから各砂浜の実態に合わせた対策が
ビーチを踏査して
月十六日〜八月六日の期間で三十九カ
ていました。ウミガメという動物に対
必要になるでしょう。
産卵が多い自然の残っている地域で
所の人工海浜を踏査し、ウミガメの産
しての保護意識の高さを感じる一方
※本調査は、平成二十六年度「未来のみなとづくり助成」により
めます。人工海浜は、このようなニー
卵状況や卵・子ガメへの影響がある要
で、管理者がいない砂浜こそ、注意が
す。ウミガメ産卵の少ない人工海浜は
素を調査 ※しました。
必要と考えられます。本調査中にも海
へ行けない子ガメを見つけました。
NPO法人北東アジア輸送回廊
ネットワーク
管理者によって人工海浜に設けられた保護柵
N
P
O
特集
環境再生や港湾活性化に向けた行政・企業・NPO等の連携
特集
13
NPO法人日本ウミガメ協議会
外灯で夜間でも明るい人工海浜
N
P
O
人工海浜は九カ所において、ウミガ
メ類の上陸三十回、及び産卵二十回を
管理者が不在で放置された子ガメ
テーマ寄稿
テーマ寄稿
The Contribution
The Contribution
R eport
欧州インフラ事情調査
〜欧州北部の都市を巡る旅〜
平成 27 年 5 月 31 日から 10 日間をかけ、一般財団法人建設コンサルタンツ協会(JCCA)と合同で欧州インフラ事情調査を実
施しました。今回は、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツの 4 カ国を総勢 28 名(団長:東京都市大学・中村英夫名誉総長)
で訪問、視察しました。中でも選りすぐった現地レポートを、参加した若手研究員の所感を交えてご報告します。
ル・アーブル(フランス)
す。12 世紀まではイギリスへ貨物を運ぶための港として
栄えますが、対岸のル・アーブル港の発展により物流機能
ヨーロッパでも第 2 位の規模を誇ります。今回はウォー
ターフロントのハーフェンシティ再開発を中心に視察を
ル・アーブルは、パリを流れるセーヌ川右岸の河口に位
は衰退しました。
アントワープ港は欧州 3 大港湾の一つで、スヘルデ川
行いました。このエリアは 1880 年頃から倉庫群が立
置し、海峡を挟んでイギリスと向かい合うみなとまちです。
この衰退は、新たな開
を遡ること 65km、欧州の生産と消費の心臓部にあり、
ち並び栄えましたが、物流がコンテナに移行することで
ル・アーブル(Le Havre)の綴りは、英語で言えばザ・ハー
発を抑制し、クロード・
自国のみならず背後圏にとっても重要な役割を果たしてい
1960 年頃より衰退していきました。このプロジェクト
バー。つまり、港そのものが地名となったみなとまちです。
モネなどの印象派の画家
ます。
は ま だ 10 〜 15 % 程 度
公式訪問として訪れたル・アーブル港は、年間 250 万
が題材とした美しい景観
公式訪問では、アントワープ港の最大の強みである広大
の進捗ですが、水際での
TEU 以上のコンテナ取扱量を誇るとともに、バルク船、
を今に残すことになりま
な倉庫キャパシティー、拡大が続く開発エリア、内陸水運
プロムナード整備、高さ
フェリー、大型客船なども
した。
や鉄道を活用した環境に配慮した貨物輸送などが、企業誘
や見栄えのそろった建物
致につながっていることを理解できました。周辺エリアに
など、
「親水性の確保」や
▲色とりどりの建物が軒を連ねる水際線
寄港するフランスを代表す
る総合港湾です。環境施策
は美術館や港を紹介す
「街並みの調和」といった
るポートパビリオンが
コンセプトをしっかりと
ゲントは輸送インフラに恵まれた重要な流通拠点都市で
充実しており、地元市民
感じ取ることができるも
す。北海からは運河と水門でつながっており、8 万トンま
に対する港湾のイメー
のでした。
での船舶を受け入れるこ
ジアップに力を入れる
とが可能です。今回は聖
など、参考にすべき点を
バーフ大聖堂など、華や
多く発見できました。
にも重点を置き、残された
ゲント(ベルギー)
湿地や世界遺産である市街
地等とともに、環境と調和
した港湾であるとの印象を
受けました。
▲訪問時に荷役作業中のCMA−CGMの大型
コンテナ船
ドーヴィル(フランス)
かな中世ヨーロッパの街
ノルマンディーの代表的なビーチリゾートであるドーヴィ
当時にタイムスリップし
ルは、ビーチを中心にリゾート施設がコンパクトにまとまっ
たような感覚にとらわれ
たみなとまちです。19 世紀からリゾート地としての整備が
ました。 ブルジョア階級が保養に訪れるようになり、高級なヴィラや
ホテル、カジノが建設さ
視察の最終訪問地であるベルリンでは、第二次世界大戦
▲ 「Antwerp Port Authority」 公式訪問
並 み を 目 の 当 た り に し、
アムステルダム(オランダ)
アムステルダムは、中世にハンザ同盟との貿易により発
▲ゲント市庁舎と鐘楼
の豪商の邸宅、飾り窓、アンネ・フランクの家などで広く
ブルージュ(ベルギー)
知られています。街の中心部では、車道と歩道の間にある
が徹底されていました。
港の象徴はマリーナ付
ホール、鐘楼、州庁舎などに囲まれた、かつての繁栄を映
中世の風情と近代的な
住 宅 で、150 バ ー ス の
す絶景が広がっていまし
都市としての性格を合わ
マリーナと直背後に集合
た。石畳の道を歩いたり、
せ持つアムステルダムは、
馬車に乗って巡ることが
親しみやすくリラックス
できるコンパクトな街並
した雰囲気であふれてい
みでした。運河クルーズ
ました。
▲マリーナと集合住宅が成す独特な景観
オンフルール(フランス)
セーヌ川左岸の河口に位置するオンフルールは、船溜ま
りをヨットや色とりどりの建物が彩る美しいみなとまちで
70 年、安保法制で揺れる日本ですが、「平和」について
考える上で戦争のリアリティを感じる有意義な体験となり
ました。
一般財団法人みなと総合研究財団
主任研究員 村田 浩隆、井手 俊範、他
自転車専用道路が印象的で、ここでは自転車優先のルール
世界遺産であるブルージュのマルクト広場には、ギルド
観を有しています。
の無数の弾痕が残されており、またベルリンの壁跡、チェッ
展し、バルト海交易の中心地となった都市です。17 世紀
れました。
住宅が立ち並ぶ独特の景
▲赤レンガの倉庫群
クポイントチャーリーなどは東西冷戦の象徴です。戦後
始まり、1863 年に鉄道が開通したことで、パリの多くの
15
アントワープ(ベルギー)
▲アムステルダムの自転車専用道路
で は、「 水 の 都 」 と 言 わ
れる街の美しさを体験す
ることができました。
▲ブルージュの運河クルーズ
ハンブルク(ドイツ)
ハンブルク港はエルベ川河口から 100km に位置し、
▲調査団集合写真(ベルリン・ブランデンブルク門にて)
14
※1「幕末の東京湾警備」:
東京湾で海防対策が取られたのは、老中松平定信による寛政5(1793)年の沿岸巡視からで、文化7(1810)年に会
津藩と白河藩がそれぞれ、相州側と房総側の警備を命じられ、現地でそれぞれ 3 万石余の所領を与えられて警備体制が
具体化します。会津藩は三浦半島の三崎・平根山・鴨居の陣屋を拠点に周辺に砲台を築き、白河藩は房総南部の百首・
波左間・白子の陣屋を拠点に台場を築いて警備にあたりました。最前線が安房洲崎と城ヶ島の安房崎を結ぶラインで、
警備の主眼は上総富津岬と三浦半島観音崎を結ぶラインの南側で進入を阻止する体制でした
(出典:「平成 24 年度 特別展 幕末の東京湾警備」/編集・発行:館山市立博物館より一部抜粋)
※2「安房の干鰯−いわしと暮らす、いわしでつながる−」
:
❸
❹
語る出土品、甲冑などを展示
③民俗展示室では昔の館山の民家が再現されており、 当時
の風情が体験できます
❺
④戦時の館山の暮らしや様子を展示した 「終戦70年企画 収蔵資料展『戦時のたてやま』」。かるた、 紙芝居、 すご
ろく等の玩具なども展示されており、 宮坂さんが企画を
⑤⑥城山公園内にある館山市立博物館(本館)。 地域の歴
い
—わしと暮らす、いわしでつな
狭き門を通り抜け、つかんだ幸運
温暖な気候と変化に富む海岸線、緑あふれる野山
など自然に恵まれた千葉県館山市。そこは、滝沢馬
琴 の『 南 総 里 見 八 犬 伝 』 の モ デ ル に な っ た 戦 国 大
名、里見氏ゆかりの史跡が残る歴史のまちでもあり
ます。
その里見氏の居城跡の城山公園内にあるのが、郷
土の歴史と民俗の博物館、「館山市立博物館」です。
地域の歴史を伝えるとともに市民向けの講座等、地
域に親しまれる催しを開催しています。今回は当博
物館の学芸員の宮坂さんに、学芸員としての仕事と
その魅力、館山で働く思いなどをお伺いしました。
宮坂さんは現在、展覧会の準備、講座などの教育
普及活動や博物館で所蔵・展示する資料の収集、調
査研究などに携わっています。中でも、地域の一般
の方々を対象とした古文書講座は、学生時代から取
り組んでいる研究テーマでもあり、特に思い入れが
あると言います。
館山市立博物館の学芸員になる以前は、国税庁所
管の税務大学校の租税史料室に五年間、非常勤の研
究調査員として働きました。そして、「もっと多く
の お 客 様 と 触 れ 合 え る と こ ろ で 働 き た い 」 と 東 京・
深川江戸資料館に職場を移しました。非常勤での仕
事でしたが、多くのお客様を相手にした経験ができ、
今に活かされているそうです。その後、館山市立博
物館の学芸員の募集を知り応募、二〇一〇年に合格
しました。学芸員の資格は大学院生時代に取得して
いましたが、常勤の学芸員として職に就くには、場
合によっては二〇〇〜三〇〇という倍率にもなる狭
き門です。宮坂さんは、ご自身が幸運だったと言い
ます。
「展覧会では解説会というのがあり、参加者に説
明しながら館内を回るのですが、参加者からも貴重
な話を聞くことがあります。地域の歴史は、やはり
地域の皆さん自身が一番よくご存知です」と話され
ます。地域や人とのコミュニケーションが、博物館
の魅力をますます高めているようです。
若い人の集客に結びつく企画を
館山市は最近、移住者が多いまちとして注目され
ています。とはいえ、五年前に来た当時、何となく
まちに寂しさを感じたそうで、若い人を引き付ける
場がほしいというのが今の願いです。博物館の来館
者は二十〜三十代が少ない傾向があり、このような
現状を打破する企画が大きな課題と考えています。
「昨年度は館山市や商店街、博物館が連携した初
めての展示イベントを開催しました。商店街の空き
店舗を利用して、昭和二、三十年代のおしゃれな包
装紙を直接、壁に貼って展示するなど、斬新なイベ
ントで大きな反響がありました。今後も若い人の集
客に結びつく、夢のある企画を実現したい」と館山
を盛り立てようと思いを語ってくださいました。
館山市では、宮坂さんをはじめ若手職員を中心と
したチームによる事業を進めています。これから始
まる地方創生のための取り組みに、期待と不安の中、
新たな一歩になると感じている宮坂さん。 今後も、博物館を核として歴史をわかりやすく伝
えるとともに、館山をより魅力的なまちへと、地域
に根ざして取り組んでいかれることでしょう。
■館山市立博物館(本館)
二
http://www.city.tateyama.chiba.jp/hakubutukan/
千葉県館山市館山三五一
すが、どうしても参加したくて頑張って復活し、参
域の皆さんは先生でもあると言います。
ご自身の仕事の魅力を再認識したそうです。また地
加しました」と。この常連の参加者の話に感動し、
た。話を聞くと、「体調を崩して欠席していたので
ばらく顔を見なかった常連の参加者を見つけまし
仕事のやりがいはどこにあるのでしょうか。博物
館で開催した古文書講座の講師を務めたある時、し
地域の皆さんが先生
交流を知るのが重要と思ったのです」。
地域を知るには東京湾を通して江戸や他の地域との
たことが資料からわかっています。江戸時代の安房
り、特に江戸や三浦半島との間で海運が盛んであっ
は、江戸時代、陸上よりも海上の交通が発達してお
来て視点が変わりました。周囲を海に囲まれた館山
「東京出身ということもあり、以前は江戸周辺の
村を中心に江戸時代を研究していましたが、館山に
そして、 館 山に来て宮 坂さんは、ご自 身の古 文 書
研究への姿勢や考え方が大きく変わったと言います。
した研究を数多く手掛けているのです。
ることが重 要 と館 山 市 立 博 物 館では、これら海に関
紹 介しました。 館 山 を 知ってもらうには東 京 湾 を 語
や絵図、道具類などを展示して、安房の干鰯について
」 ※2も 印 象 深いものだったと言いま す。 この展
がる —
覧 会では鰯 漁や干 鰯(ほしか)などに関 する古 文 書
特別展 「安房の干鰯
について紹介しました。 また、平成二十五年度開催の
史 を 語る貴 重な品々を 展 示し、幕 末の東 京 湾の警 備
そ うです。 この展 覧 会では当 時の絵 図や砲 弾 等の歴
携 わった 数々の展 覧 会で 特に印 象 深いのが、 平 成
二十四年 度 開 催の特 別 展 「 幕 末の東 京 湾 警 備 」 ※1だ
史博物館としての展示のほか、 館山に残る江戸時代の古
館山市立博物館 学芸員 宮坂 新
①②歴史展示室では里見氏に関連した資料や館山の歴史を
東京湾を語ることで 、館山を知る
❷
−
16
17
博物館から地域を発信
(出典:「平成 25 年度 特別展 安房の干鰯−いわしと暮らす、いわしでつながる−」/編集・発行:館山市立博物館より
一部抜粋)
❶
干鰯・〆粕を扱う問屋は江戸と相模国浦賀(現神奈川県横須賀市)にあり、房総で生産された干鰯類は、地元で消費さ
れるものを除き、これらの問屋に出荷しなければなりませんでした。 陸路や河川輸送という手段がある他地域と異なり、
安房は海運が唯一の輸送手段であり、五大力船を利用して江戸・浦賀へと干鰯が運ばれました。また、上総から安房へ
干鰯加工用の生鰯を運ぶ際には、押送船が利用されています
❻
文書を使って地域の歴史と古文書を学ぶ講座なども開催
江戸時代の東京湾を語る
My Way
My Style
みなと総研・Information
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2
「2015秋 期クルーズポート・セミナー」
参加者 募 集中!−11月11日・12日 at 東 京−
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クルーズポート・セミナーは、クルー
クルーズ船寄港の経済効果、クルーズ
詳細内容は、みなと総研ホームペー
ズに関する知識や最新情報などの総合
船の安全寄港、そしてクルーズ船の誘
ジをご覧ください。
的な知見を短期間に取得することを目
致・受入など、クルーズの実務に即し
的に開催しています。
たセミナーを予定しています。
今回のセミナーは第3回目の開催と
多数の皆様のご参加をお待ちしてい
なりますが、クルーズを取り巻く現況、
ます。
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●受 講 料:18,000円
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●募集人員:80名
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●場 所: ニッショーホール
東京都港区虎ノ門 2-9-16
日本消防会館
神戸大学 名誉教授 井上 欣三
大阪大学 教授 赤井 伸郎
商船三井客船(株)常務取締役 山口 直彦
(株)ミキ・ツーリスト カンパニー長 糸川 雄介
マーキュリートラベル(株)代表 東山 真明
から理解することは、今後、港湾社会を担っていくリーダーにとって重要であるとともに、情報発信することで、一般
市民の港湾への理解向上にも貢献するものです。
みなと総研では、中村英夫先生(東京都市大学名誉総長)のご指導を賜り、「港と文化を語る集い」を開催するなど、
長らく、港と文化をテーマに取り組んできました。本研究会は、港と文化の取り組みをさらに進め、歴史的考察、みな
●お問い合わせ先
とまちの賑わい・観光振興なども含め、港と社会に関する幅広い知見を得ることを目的に、平成26年11月に自主調
クルーズポート・マスター制度委員会
査研究会としてスタートしました。
事務局(みなと総研内)
これまでに、『港と日本酒』、『港とJAZZ』、『瀬戸内海の港と水運の歴史的考察』、『港を活かした地方創生』など
TEL :03-5408-8294
について、調査研究を進めています。
E-mail:[email protected]
担当:畑中、和田
n
一般財団法人みなと総合研究財団
2
首席研究員兼企画部長 三上 圭一
プショナルツアーです。研究会として、
導のもと、全国のみなとまちから厳選し
この企画により飛鳥Ⅱの乗客が満足さ
た10銘柄の日本酒の利き酒会を実施。
れることを期待するとともに、これを起
日本酒は奥が深く、 日本酒の愉しみ方
点として、 今後は外国人旅客でも、 み
を学ぶ機会となりました。
なとまちと日本酒を愉しめる機会が創
今号の巻頭言「Framework」で、当財団の鬼頭理事長が述べているとおり、みなと総研は多様な活動主体に対する支援を主
要な事業に位置づけています。このためみなと総研では、複数の職員がNPO等の事務局を担当したり、助成事業により活動
ど、 港湾関係者のみならず一般の方々
を支えています。今後も皆様のお役に立てるよう、努力していきます。
にも、 港湾についての 「愛着」 を深
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していただきました。また、 先生の指
は、港と日本酒の歴史や日本酒の流通、
みなとまちの酒蔵巡りによる観光振興な
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いで造られる日本酒の違いなどを講演
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『港と日本酒』をテーマとした研究で
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テーマ『港と日本酒』の活動内容
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第一線で活躍する若手中堅職員の紹介
私たちがNPO等を後押しします!
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める取り組みを念頭に活動しています。
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港 絢子
福田 一郎
本野 晃郎
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「東京湾に興味を持っ
てもらう事」 が大切だ
と考えています。 東京
湾は豊かな海です。
港を核とした静脈物流
システムの事業化に向
け、会員の方々のサポー
トを行っていきます。
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日本沿岸域学会
宇於崎 康寛
中島 正雄
鈴木 雅史
1988 年設立の 30 年
弱の歴史を有する産官
学が融合した学際的学
会 で 会 員 数 は 約 500
名です。
東京湾の環境再生や江
戸前の復活に向け、 会
員の皆様と一緒に活動
してまいります。
みなと総研は、 海辺の
活動や港湾の調査研究
を行う団 体 の 皆 様を、
積極的に応援します。
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未来のみなとづくり
助成
東京湾再生官民
連携フォーラム
3.『クルーズと日本酒』企画の提案
1. みなとまちの酒蔵めぐり
日本酒を観光資源のひとつと捉え、
一般財団法人みなと総合研究財団
1
リサイクルポート
推進協議会
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東京湾の環境をよくす
るために行動する会
をベースにしたフレンチを堪能するオ
出できればと希望を抱いています。
活動内容を下記にて紹介します。
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海に学ぶ体験活動協
議会(CNAC)
平成 18 年度の立上げ
時から携わらせていた
だ き、 今 で は 全 国 の
海好きの皆さんとつな
がっています。
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我々は、ややもすると港湾を工学や経済の視点でしか見ないのですが、歴史、文化、文明、生活などの幅広い切り口
http://www.wave.or.jp/
●予定講師陣(順不同):
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港湾は、古来より人・物・情報の窓口となり、文化や文明が開化する場でもありました。
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●開 催 日: 平成27年11月
11日(水)
・12日(木)
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「港と社会研究会」について
●みなと総研 ホームページ
< 開催概要 >
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自主調査研究会「港と社会研究会」が発足
『港と日本酒』等の活動がスタート!
港から 10km 圏内にある酒蔵を抽出
酒蔵ツーリズムなどの企画提案を行っ
主任研究員 松本 秀司
し、 仕事やプライベートで近くに赴い
ています。その先駆けとして郵船クルー
た際に酒蔵を訪れ、 酒蔵の風情や周辺
ズの胸をお借りして、「飛鳥Ⅱ秋のク
の街並みや歴史、 そして地酒を嗜み、
ルーズ『愉しい日本酒』企画」を提案
その情報を共有しています。 みなとま
しました。内容は、 ①船内イベントとし
ちに融け込んだ酒蔵や、角打ちや小料
て日本酒に詳しい講師による講演や利
理屋で堪能する地酒や地肴は、 行った
き酒会。 ②寄港地の特性を活かした日
人にしか味わえない格別なものです。
本酒をテーマとしたイベント開催。 ③
日本酒利き酒会
寄港地の地酒や珍しい酒器などの船内
2. 日本酒勉強会
販売などです。 結果として、 本年秋に
去る平成 27 年5月 12 日に日本酒
は金沢港での企画案の一部を採用して
輸出協会会長の松崎晴雄先生をお招き
いただけることとなりました。金沢港の
して、日本酒の歴史から山沿いと海沿
近隣にある酒蔵を巡り、 その後、 酒粕
門司港角打ち
風景
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