有力特許と日本人

有力特許と日本人
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●有力 特 許と 日本人
前 回にひき続き有力特許を出している日本人を4人紹介します。
(5)分
(5)分割ワード線特 許(穴見 健二, 三 菱 電機 )
この技術はもともと16 kSRAMから6 4kSRAMの大容量化 に向かう中で 考案された。6 4kで
はワード線を構成す る多結晶 Siが長 く、抵抗が大きいため高速化 が難しくな ると考えられていた。そ こ
で 、解決策を思索す る中で 次のアイ デアが浮かんだ 。
「別の線を設け列系の信 号と論理をとって分離したワード線を駆動す れば よい。こうす れば 選択す るメモ
リセルの数も減るので 、そ れに比例して消費電力も減るはずで ある。」
しかしこれを実用化 す るには2 層 Al技術が必要で 、当時す ぐには実用化 出来な かった。しかもこの
技術を使って分割ワード線を実用化 したのは、当の三 菱 電機 で はな く他社の2 56 kSRAMによって
で ある。(当時三 菱 電機 は1層 Alに固 執 していた。)三 菱 電機 が実用化 したのは1MSRAMにな っ
てからで ある。
この技術は現 在多くのメーカーで 使われており、特に高速SRAMにおいてこの技術は有効で ある。また
DRAMで もこの技術が採用され始めている。
(6)L
(6)LDDの 特 許(江崎豪彌, 松 下 電子工 業 )
MOSLSIは年 々微細化 されており、このまま従来のスケーリング 則で いくとドレイ ン耐圧が低下
す ることはわかっていた。ドレイ ン近傍の高電界を低減す るには、半導体理論からドレイ ンの不純物分布
をな だ らかにす れば よいことは誰 にで もわかっていた。
そ して低濃度、高濃度拡散 のドレイ ンを持つMOSFETの試作例もIBMより発表されていた。ただ そ
の為には1枚余分のマスク が必要で あり、しかも位置合わせの微細な 精度(当時 0.3 um 程度)がで きな
かった。
そ こで 位置合わせに頼らずに微細な 低不純物濃度の領域を作る方法 を考案した。
つまり
「ドライ エ ッチング において、ステップカバレジ とエ ッチング の異 方性を利用して(段差 部で 膜が残る)自
己 整合的な 微細な 寸法 の絶縁膜側壁が作れる。」
そ の寸法 は、堆積膜厚とエ ッチング だ けで 制御で きるから位置合わせ以 上の寸法 精度が得 られる。そ
して低濃度、高濃度のイ オン打 ち込みを行えば ドレイ ン端部に低濃度の拡散 層 領域がで きる。現 在LDD
を使わな いサブミク ロンデバイ スはな い。
短チャネル化 とともにホットキャリアが関与した破壊耐圧が低下す るので 、ドレイ ン構造の改良がどうし
ても必要で ある。6 4kDRAM(3 umプロセス)にな って動作電圧は12 Vから5Vに移行し、4MD
RAM(0.8 umプロセス)まで 続いた。16 MDRAM(0.5 umプロセス)で はLDD構造で も耐圧の限界
にきており、電源電圧は 3.3Vに下げ ている。
そ れにしてもLDD技術の当初の評価は実用性に乏しいというもので あった。そ れが今で は必須の技術
にな っている。
発明 者は言 う。
「発明 の評価は難しい。発明 時の非常識は今日の常識という大きな 価値観の変化 を越えて評価しな ければ
な らな いからで ある。」
(7)フ
(7)フラッシ ュメモリー特 許(桝岡富士 雄 , 東北大学 )
半導体デバイ スで 日本人が発明 し世界で 認知 されたものは数少な い。そ の中で フラッシュメモリーは
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98/05/28
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今後ハードディスク 等に置き換 わるで あろうと言 われている重要な メモリーで ある。フラッシュメモリーは
電気 的一括消去で きるメモリ−で 、不揮発性で ある。
最 初に提案されたフロ−ティング ゲ −トに電荷を注入す る不揮発性メモリ−はイ ンテル社のE P R O M で あ
る。これは1971年 2 kビットのFAMOSと呼ば れる物だ った。そ の後東芝 からSAMOSと呼ば れるメ
モリ−も開発されたが、E P R O M は16 Mビット以 降開発されていな い。
このE P R O M は消去のためボ−ドから取り出し、紫外 線を照射す る必要があり、また窓のあいた特殊パッケ
−ジ が必要な ので コスト的に高くつき、使いやす さの点で 限界がある。E E P R O M はこれらの問題は解決で
きるが、セル面積(2 トランジ スタ構成)が大きい。
E P R O M とE E P R O M の両方の問題点を解決す るのがフラッシュメモリ−で ある。フラッシュメモリ−の名前 の
由来は、一括消去を写真のフラッシュにイ メ−ジ して、出願者が命名したそ うで ある。1980年 に最 初N
OR型を出願し、1989年 N AN D型フラッシュメモリ−の特許を出願している。
フラッシュメモリ−で セルに情報を書き込む場合、高電圧を印加しな ければ な らな いが、ホットエ レク トロ
ンを用いる場合2 種類の外 部電源が必要で ある。トンネル効果が利用で きれば 外 部電源は単一電源で す
む。桝岡たちはN AN D型に関してはF−N トンネリング 電流を流して電子を注入す る方法 も開発してい
る。今後、書き込みはトンネリング 電流の方法 に統一されていくで あろう。
最 後にもう一度書いておきます が、フラッシュメモリ−はイ ンテル社の発明 で な く日本人の発明 で ある。
イ ンテル社自身がそ れを認めており、イ ンテルはそ れを改良したもので あると社報で はっきり述べてい
る。
(8)P
(8)PiN ダイ オ−ド特 許(西 澤 潤一, 東北大学 )
1940年 頃は鉱石 検波器用に黄鉄鉱によるダイ オ−ド(整流器)の研究が行われていた頃で あるが、そ の後真
空管によって置き換 わった。西澤は当時黄鉄鉱に一本針を当てて特性を計っていたが、モットとショット
キ−の発表した整流理論に全く合わな かったため悩んで いた。
そ んな 時ロシアの論文に
「半導体の表面に薄い絶縁物の膜を付けて金属と接触 させると、ダイ オ−ドとしてよい特性がで る」
と書かれていることを知 った。西澤は黄鉄鉱に溶かした薄いセルロイ ドを塗って特性を計るとな るほ ど
良い特性が得 られた。ここまで な らロシアの論文を再確 認しただ けで ある。西澤は結晶 の一部だ け抵
抗を高くす る(キャリアの少な い所を作る)方法 を模索した。そ してN 型Siの結晶 に酸化 物質(グ リコ−
ルを 硼化 してアルコ−ルに溶かした物)を表面に垂らして電極に負電圧を印加して陽極酸化 し、そ の後針
に負電圧を印加す ると、す ば らしく良好 な ダイ オ−ド特性を示した。
つまりP型, N 型の間 にキャリアの少な い領域を作ってダイ オ−ドとして使うアイ デアが確 認されたわけ
で ある。また、この研究の過程で イ オン注入法 も考案し、特許出願している。
この特許は1950年 9月11日に出願されているが、同様の特許をアメリカのGE社が16 日後にアメリカで 出
願していた。
出願の時はN 型Siと金属針のダイ オ−ドで 確 認していたが、そ の後シリコン結晶 によるPiN ダイ オ−ド
を作り上げ 、国内並び に外 国にデ−タを持って行った。日本, ヨ−ロッパで は嘘つき扱いされたが、アメ
リカで はどうやって作ったのかと激しく詰め寄られたというエ ピソ−ドがある。
下記につ いては次回の更新 時に紹介し ます 。
(9)HEMTの特許(三 村高志, 富士 通 )
(10)半 導体レーザ ー特許(林 巌雄, 光技術研究開発)
(11)静 電誘 導トランジ スタ特許(西 澤 潤一, 東北大学 )
署名は検証さ
れていません
。
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Sumiaki
Takei
電子署名者 :
Sumiaki Takei
DN: cn=Sumiaki
Takei, c=JP
日付 : 2001.05.12
20:07:18 +09'00'
理由 : この文書の
著者
98/05/28
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