液晶特許と歴史(1)

液晶特許と歴史
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●液晶 特 許と 歴史(1)
(1)D
(1)DSM液晶 特 許(E.Williams,
E.Williams, RCA社)
約10 0 年 前 レイ ニッツは有機 化 合物の融点測定の実験をしている最 中に、ある物質が固 体から液体
に速やかに融解しな いことを発見した。そ していくら精製 しても中間 的な 状態 は消えることはな かっ
た。この状態 が液晶 状態 で 、これ以 降液晶 に関す る注目す べき研究が数多くされたが、今日のディスプ
レイ への適用にはつな がらな かった。液晶 のディスプレイ への応用が具体化 したのは196 0 年 代に
入ってからで ある。
有機 材料に電界を印加す ることにより局部電界を制御す る、つまり光の通り道を液晶 分子で 制御して
ディスプレイ にす るという基本原理は196 2 年 RCA社のWilliamsによって考案され特許化 されてい
る。(DSM特許・USP−332 2 48 5,196 2 年 )この基本原理は現 在の液晶 技術で も変わらな
い。
そ して実際に液晶 ディスプレイ (LCD)として創出したのは同じRCA社のG.H.Heilmeierたちで ある。
Heilmeierはまずネマチック 液晶 に電圧を印加す ることにより液晶 の中の染料分子が印加電界に向くこと
を発見した。もちろん当時は常温 で ネマチック 液晶 相を示す 材料はな かったので 高温 で 実験している。
さらに別のネマチック 液晶 (負の誘 電率異 方性を有す る)において印加電界により透明 状態 が乳白色に変化
す ることを発見した。これは純粋な 光散 乱効果で ある。Heilmeierはこの現 象をDSM(動的散 乱モ−ド)
と名付けた。
次に彼らは室温 で ネマチック 相を示す 材料(シッフ塩基ネマチック 液晶 をいくつか混ぜ合わせて作った室温 液
晶 材)を作り出した。そ して実際に液晶 ディスプレイ を作ってみせた。
196 8 年 6 月の新聞 発表後、この新しい表示装置は世界的な 注目を浴び た。そ の後1973年
には液晶 ディスプレイ として初めてDSM液晶 をを使った電卓がシャ−プによって製 品化 された。
しかしDSM液晶 には次のような 欠点があるため次のTN 液晶 に置き換 えられていった。
1. 寿命が短く散 乱の角度依存性がある。
2 . 駆動周波数が2 0 0 M H z 以 下と狭 い。
3. 駆動電圧が2 0 〜30 Vと高い。
4. セグ メント表示で は消費電流が大きく表示が見にくい。
5. ドットマトリク ス表示においては走査線本数に限界がある。
DSM液晶 の発表以 降、196 8 年 にGH液晶 、1970 年 ECB液晶 、1973年 広視野角表示可
能な IPS液晶 な どが提案された。これらの技術の一部は次回紹介す るSTN 液晶 やTFT液晶 に生かさ
れている。
(2)T
(2)TN 液晶 特 許(Schadt,
Schadt , ロッツシ ェ 社)
現 在の液晶 ディスプレイ は技術的に分類す ると次の3つで ある。
1. TN (twisted nematic)液晶
2 . TN 形を高度化 し、単純マトリク ス方式のSTN 液晶
3. 薄膜半導体技術の複合化 によるアク ティブマトリク ス方式のTFT液晶
ここで は1番 のTN 液晶 について紹介します 。
DSM液晶 に限界が見え始めていた1970 年 、スイ スのF.Hoffmann‑LaRoche社のSchadtによる新し
い液晶 モ−ドつまりTN (twisted nematic)液晶 モ−ド(ねじれネマチック 効果)が発明 された。(TN 液晶
特許, スイ スPatent N r. 532 2 6 1, 1970 年 )
Schadtは電界により液晶 分子の長 軸が向きをそ ろえ、光学 状態 を変化 させる電界効果の研究に集 中し
ていた。当時液晶 分子の長 軸がラビング により基板界面で 揃う、また液晶 層 に入射した直線偏 光が回転
す ることは知 られていた。
Schadtは分子の長 軸方向に強い双極子モ−メントを持つ誘 電率異 方性が正の液晶 材を探し出し実験を重ね
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98/05/29
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ていた。
やっと1970 年 オン、オフの状態 が表示で きるようにな った。さらに分子配向の改善、電気 光学 特性
の向上、また室温 で ネマチック 相とな り正の異 方性を示す 液晶 材料を新しく合成した。
実際の表示装置を作ったのが1971年 で −10 〜6 5(摂氏温 度)の動作温 度範囲、応答時間 は14
0 ns、最 大コントラストは15:1で あった。この新しい技術に最 初に飛び 付いたのが、日本のセイ
コ−エ プソンで あった。1973年 TN 液晶 特許の使用許諾権を得 て、デジ タル腕時計を製 品化 してい
る。
ところで 実際に製 品化 される前 に日本人による液晶 技術が役に立っている。Schadtたちが最 初に発表し
たころの液晶 パネルは欠陥が多く使い物にな らな かった。
このTN 液晶 の線欠陥を除去す る技術を開発したのが、当時理化 学 研究所にいた小林 駿介で ある。彼は液
晶 分子の逆ねじれ、逆傾き、いわゆる転傾による線欠陥((ディスク リネ−ション)を除去す るには、ねじれ
角を約8 7度にす れば よいことを理論と実験で 明 らかにした。
またカイ ラル添加物を液晶 に混ぜるな どの技術で す べての欠陥を除去す ることに成功した。この技術
は1975年 特許化 された。(USP−57156 5)この技術は次回紹介す るSTN 液晶 で も生かさ
れ、企業の製 品化 に大きく貢献した。
TN 液晶 が実用化 されて、しだ いにディスプレイ の表示情報量が増大してくると、そ れにつれてフレ−
ム時間 が長 くな って液晶 の応答時間 に接近す るにつれ表示品質が悪くな ってきた。
TN 液晶 ディスプレイ をドットマトリク ス表示させるとク ロスト−ク が発生して表示が悪くな る欠点が
あった。そ こで 走査本数を増す ためにSTN 液晶 技術が登場す る。
次回は液晶 ディスプレイ の代名詞にな っている、アク ティブマトリック ス方式のTFT液晶 と単純マト
リク ス方式のSTN 液晶 について紹介します 。また広視野角モ−ドのス−パ−TFT液晶 についても触 れる
予定で す 。
署名は検証され
ていません。
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Sumiaki
Takei
電子署名者 :
Sumiaki Takei
DN: cn=Sumiaki
Takei, c=JP
日付 : 2001.05.12
19:48:36 +09'00'
理由 : この文書の
著者
98/05/29
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