10.労使関係・労使コミュニケーション

10.労使関係・労使コミュニケーション
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-1 どうしたらストライキを防止できるのか
分からず困った
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
製造業
2000 年頃
3.体験の際の職種・職務
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
A.困難事例の概要
日本の親会社から着任したばかりで右も左もよく分からないような状況だった
が、周りの日系企業でストライキが起こっているのを見ると、自分の会社でも起
こるのではないかと不安になったが、どうしたらストライキを防止できるのか分
からず困った。
B.対処概要
日系企業の人事労務担当者による情報交換会に出席して聞いたところ、次のよ
うな事項が重要、という指摘があった。
1.平素の対応
(1)労働組合との平素からの良好なコミュニケーション
どのような労働組合か知る。協調的な労働組合をつくる。
(2)労働者教育の推進
インドネシア人に日本人を分かってもらう。日本人もインドネシア人を分か
ろうとする努力をする。権利には義務が伴うことの理解。会社がなくなれば賃
金もない。会社が良くなれば自分たち労働者の生活も向上する等々である。
(3)労務管理をインドネシア人に任せ切りにしない
183
10 労使関係・労使コミュニケーション
日本で労務管理を経験した日本人社員が必要。担当インドネシア人を一人に
して頼り切らないこと。複数配置する。
(4)労働事務所とのパイプをつくっておく
労使で折り合わない場合はすぐに調停官に入ってもらう。
(5)警察とのコミュニケーションを持つ
違法行為があった場合にはすぐに介入してもらえるようにする。
(6)コンサルタント会社、弁護士の活用
労働問題に詳しい弁護士を探しておく。
(詳しくない弁護士も多い。
)
(7)日系企業間の情報交換
労働組合は非常に緊密に情報交換をしている。経営者側も情報交換をする必
要がある。
2.賃上げ交渉等の時
(1)交渉のルールを労使間であらかじめ取り決めておくこと。
(2)具体的な金額折衝に入る前に会社の状況等をよく説明し、理解を得ること。
3.争議になったら
(1)きちんとした手続きを経ていない場合、文書での警告をきちんと出す。
(2)会社側はあくまでもインドネシアの法律に従った手続きを取ること。
労働事務所の調停官へ相談すること。
(3)コンサルタント会社、弁護士の活用。
(4)警察との連絡-邦人安全の確保。
(5)邦人に危害が及ぶ恐れが出た場合は、領事館へ相談をすること。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. ストライキは労使のコミュニケーション不足から発生する。単に賃金が低
くて不満といった原因から発生するものではない。このため、普段から労使で
184
10 労使関係・労使コミュニケーション
十分なコミュニケーションを取っておく必要がある。労使協議会のような場を
設置して定期的に意見交換を行うことが重要である。
2. 労働組合が会社にある場合、その労働組合が真に労働者を代表しているか、
組合員の不満・要望をくみ上げているか、組合員に対してきちんと指導力を発
揮しているか、を確認する必要がある。場合によっては、労働組合のあるべき
姿について意見交換を行い、望ましい方向に導いていくことも必要になる。
3. 日系企業の間の情報交換会に出席して情報を収集したり、大使館の労働担
当書記官に聞くと参考になる。
185
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-2 インドネシアの労働組合活動
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
インドネシアの労働組合活動が全般的にどのようになっているのか良く分から
ない。
B.対処概要
インドネシアの労働組合活動は、スハルト政権下では制限され実質的には1つ
の労働組合しか許されていなかったが、同政権の崩壊後、後を継いだハビビ政権
は改革政策の一環として ILO の基本的な条約を短期間にすべて批准した。その中
の第 87 号条約(結社の自由)批准後、労働組合の設立、分裂が急速に進み、2005
年 10 月現在、全国規模の総連合体が 3 つ、連合体が約 87 存在している。企業に
おける労働組合は、基本的に日本と同様の企業内労働組合となっており、職種別
の企業横断型労働組合ではない。企業内労働組合は上部組織に属していない単独
型もあるが、上部組織に属しているものも多い。企業内労働組合は上部組織に上
納金を納め、上部組織から組合活動について指導・援助を受ける。上部組織であ
る連合体や総連合体によってそれぞれ活動カラーがあるので、企業内労働組合が
どの上部組織に属しているか知ることが重要である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
186
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-3 労使交渉に関して日本人社員が監禁される
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 11 月頃
3.体験の際の職種・職務
取締役
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ首都特別州西ジャカルタ市
A.困難事例の概要
西ジャカルタで機械製造工場を操業していたが、
賃貸でコストが高かったため、
西ジャワ州の工業団地に移転することを検討していたところ、労働者が移転の条
件として、給料の大幅引上げ、支度金、社宅の提供等を要求し、ストライキを実
施した。ストライキ参加労働者は、不参加労働者の入場を拒否、日本人 2 人は中
に入れたが、夕方になって 2 人が帰ろうとしたところ、会社が回答をしない限り
帰さない、として監禁下に置いた。
B.対処概要
1.警察に救出を依頼して会社には来てもらったが、警察は監禁されているとい
うだけではだめで、何か不法行為がないと動けない、ということで動かなかっ
た。
2.入国管理事務所に相談、依頼したところ、職員が被監禁者のうち日本からの
短期出張者を査証不備ということで連れ出してくれた。
3.ストライキが法令に定める手続を踏んだものでない、いわゆる「違法ストラ
イキ」であったことから、会社は(イ)今回のストライキは違法であること、
(ロ)違法な手段による結果は受け入れないこと、
(ハ)職場に復帰すること、
(ニ)労使交渉は実施する、という内容の警告書を労働者側に手渡した。
4. 労働者側は警告書を受けて日本人を解放したため、その後改めて労使交渉を
187
10 労使関係・労使コミュニケーション
実施した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. このような事態が発生するとうろたえてしまうことが多いが、うろたえて相
手方の要求をすぐのむことのないようにすることが必要である。日本人職員の
解放を呼び掛けつつ、すぐにはそれに応じないことを前提に、日本人職員の身
体の安全の確保、飲食、トイレ、睡眠の保障を要求し、必要に応じてベッド、
飲食料の差し入れを行う。
2. 警察、労働事務所、総領事館にも連絡をする。ただし、警察は労使問題不介
入ということで介入を要望しても拒否してくる可能性はある。そのような場合
は総領事館から必要な働き掛けを行うこともある。
3. ストライキが正当な手続を経ていない場合は、労働者側に警告書を文書で手
渡すことが必要である。
188
10 労使関係・労使コミュニケーション
例10-4 サボタージュ
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県 チカラン
A.困難事例の概要
1999 年末に労働組合が結成され、
2000 年 2 月 24 日から賃上げ交渉を開始した。
その後、数回労使交渉を繰り返したが決着がつかず、3 月 13 日組合よりストライ
キの通告があった。更に話し合いを繰り返したが合意に至らず、3 月 15 日より労
働争議に突入した。Aksi Mogok Kerja Damai(サボタージュ〔英語では Slow Down
と訳す〕
)と称し、出勤するが仕事はしない、破壊活動はないが構外で座り込み、
垂れ幕、プラカード、太鼓、日本人駐在員が出社する際に奇声を上げるなどの嫌
がらせを行い、
アシスタントマネージャー以上の従業員も全体の流れに逆らえず、
全員が退出した。そこにはイスラムを通じた強力な結集力があった。総務、動力
保安要員は説得の結果、自主的に職場に就いたが、他は全員が争議に参加した。
スーパーバイザー、キーパー、オペレーター等のクラスは早く職場に戻りたいと
言う者が多かったが、D3(高専、短大卒)
、テクニシャン(大卒)
、フォアマン(高
専、短大卒)クラスの反対が強かったようだった。3 月 15~20 日の間は日に 2~3
回交渉したがまとまらず、日本人取締役の指名解雇を要求するなどあらぬ方向へ
向かった。
(1997 年通貨危機、1998 年暴動、スハルト政権崩壊、IMF 条件を取入
れ、民主化、革新[労働者は不理解]の声が高まり、組合運動、更に労組の上部団
体がはびこり、ストライキを打つことにより名声を博すといった風潮になり、い
つどこでストライキが起きても不思議ではない状況にあった。労働省等、行政は
数の多い労組に恐怖を抱き、労組側に付くようになっていた。
)
189
10 労使関係・労使コミュニケーション
B.対処概要
1. 3 月 16~19 日は祝日、土、日でクールダウンも兼ねて特別休暇としたが、
この間に日本人と外注社員の手で出荷を実施した。
2. 3 月 21 日ブカシ労働事務所を入れて、政労使の三者会議(トリパルテイ)
を実施した。事務所は会社側に譲歩を要請した。会社が拒否すると、時間経過
に焦り始めた労組が譲歩案を提出した。しかし会社案より相当高かったため、
会社側はロックアウトをちらつかせた。
3. 結局、争議の法定期限切れに焦った労組側が、会社案に全面合意し、反日
本人も取下げた。
4. 争議行為の処分につきノーワークノーペイを認めさせた。
(当時は難しかっ
た。
)
5. 首謀者の処分について労働事務所は、
「今回の争議は違法だが、争議行為は
労働者の権利である」との観点から認めなかった。
(争議での処分は労働者が怖
くて事務所は合意しない。
)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. 正当なるストライキとは何か、ロックアウトの条件は何かを正確に認識し
ておくこと。
2. 労働省、宗教省、警察、軍、の各々の責任範囲、役割を正確に認識してお
くこと。
3. 期限を切って交渉するのは良くない、妥結後さかのぼって精算すべきとの
労働事務所の助言があった。
4. これで終わり、ファイナルといった表現は絶対に避けること。しかしずる
ずると譲歩すると、まだいけると思い強気になってくる。交渉中に相手の話を
途切らないこと。
5. 労使交渉において要求のない所に積み増ししても効果はほとんどない。
6. 宗教問題は要注意。宗教省の問題だが、労働省まで敵に回す可能性が大き
190
10 労使関係・労使コミュニケーション
い。
7. 日本人が一枚岩であることが重要。インドネシア人の前では同僚の悪口を
絶対に言わないこと。
8. 交渉前に「Tata Tertib」
(交渉のルール)を労使間で締結し、労働事務所
に写しを提出しておくこと。
9. 労働問題は日頃の労使の付き合い、コミュニケーションを通じて相互の理
解を深めることが大切。(大変難しいが)急にやっても駄目。
10.問題が発生したら、当事者として解決に当たる気概を持つこと。(助言は
あくまでも助言にとどまる。決めるのは当事者自身。)
11.日常の管理を通じ、内外に協力者を作っておくこと。
12.扇動者等、不法ストライキを指導した従業員は、労働争議で解雇できなく
とも時間をかけて必ず解雇すること。
(直らないし、放置すれば次の扇動者が生
まれる。労働事務所も別件での解雇[正当な理由であることは必要]は認めてく
れる。
)
13.常に工場を巡回し、従業員の顔付き、態度、対応で何かを感知すること。
14.世間相場等、近隣の情報を把握しておくこと。
15.日本の親会社にインドネシアの労働争議の実態を理解してもらい、ストラ
イキを打たれたら恥ずかしい、もう駄目だといった意識を変え、積極的に支援
してもらうこと。
16.労働事務所に仲裁を求め、事務所が Kesepakatan Kerja Bersama(共同合
議書)(案)を作成し、これを拒否した場合、事務所の顔を潰し、敵に回す可能
性があるので、事前によく根回しすること。インドネシア語で書かれているの
でごまかされないようによく注意すること。事務所が常に中立とは限らない。
17.労働事務所は仲裁裁定を行う義務があるものの中々腰を上げない。日頃の
付き合いもさることながら、中央のトップからプッシュしてもらうなど中央と
のつながりも重要。
191
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-5
労働協約の改定時に
協定内容の見直し、変更を申し出たが拒否された
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 11 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州ボゴール県
A.困難事例の概要
インドネシアの労働法では、労働協約は 2 年ごとに改定するよう義務付けられ
ている。2000 年の改定時、2 年前に新規に協定された条項の見直しを行い、かね
てから労働協約の協定に不合理であると考えられる次の 3 項目、①労働法で定め
る条項の数値と重複して協定されている数値の削除、
②賃金構成の一部である
「諸
手当」の金額表示の削除、③労働法で定める条文の解釈の明確化を労働組合に申
し入れを行った。しかし労働組合からは、既得権を盾に応じようとしない。管轄
する労働・移住省支局の担当官は、2 年ごとの改定は、少しでも条件の引上げを
図ることだとして、協定内容の見直し、変更をすることができなかった。
B.対処概要
2 年ごとの協約改定で労使の合意が得られない場合は、前回の協定内容が継続
適用されると、労働・移住省より指導された。以後、毎年交渉してきたが応じら
れず、内容の見直し変更がされないまま、2003 年時点まで 98 年協定内容が適用
されてきた。
労働協約を新規に締結する場合、あるいは改定する場合、現労働法に抵触しな
いことはいうまでもないが、協約条項は労働法と重複した内容、数値での協定を
避けることが賢明である。
192
10 労使関係・労使コミュニケーション
1. 労働法で定める条項を尊守する姿勢を明確に条文に表現し、数値は労働法
に従うとした方が賢明である。例えば、労働法では残業の割増し率の数値が明
記されているが、労働協約に同様に数値を明記した場合、毎年の賃上げに伴い
自動的に残業計算の基礎給の賃率は上昇するにもかかわらず、2 年毎の協約改
定時に割増率の引上げが要求でき得る協約となる。
2. 労働法では、賃金の定義に「基本給」と「各種の手当」がうたわれている。
労働協約で賃金を定義付けする場合は、
「手当」の項目に金額表示を避けるこ
とが肝要である。協約での表示金額は 2 年ごとの改定の対象となり、毎年の賃
金改定とは別口に改定要求をされる。
「手当」の改定は賃上げ総額の配分論議
とすべきである。また、毎月固定的に支払われる「手当」は残業、退職金等の
基礎給とみなされるため、手当の項目自体を少なくすることが肝要である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. スハルト体制崩壊後の民主化促進時に、既存の労働組合と正式に労働協約
が締結された。当時の労働環境から労働法令の運用が目まぐるしく変わったの
だろう。
(
(注)参照のこと。
)新規に労働協約を作成し、締結する際、経営側
だけにより協定書の草案を作成するのではなく、労働法の解釈論議等について、
組合幹部を巻き込む形で行った上で草案を作るのが理想的であったと思われ
る。
2. 労働法で定める 2 年ごとの労働協約の改定は、労働法が改定された場合、
それに抵触する労働協約の改定を促す目的もあるのだろう。したって、日頃か
ら労使双方で労働法令の改定には傾注し、月次の労使懇談会(協議会)等で逐
次、協定条項の変更が可能な労使関係を築くべきであろう。
3. 労働法では労働者保護のために、
「労働条件は、労働法と労働協約でうたわ
れているどちらかの有利な方を適用する。
」とされている。したがって、労働
協約は労働法に抵触しない内容で、労働法の条文の明確化、解釈の統一を図る
ことが賢明である。その上で、労働法でうたわれていない条件項目を明確に表
193
10 労使関係・労使コミュニケーション
現することが肝要である。
4. 労働協約の締結は、日本では会社と組合の労使協定であるが、インドネシ
アでは、管轄する労働・移住省の地方事務所も関与する。つまり、政労使によ
る三者協定となる。協定書には三者の確認サインが必要とされる。
(注)1997 年に改正労働法が成立し、その翌年より施行される予定であったが労
使等の反対により施行されず、改めて制定作業が行われた。その結果、2000
年に労働組合法が成立し、施行され、また 2003 年に労働法が成立し、施
行された。
194
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-6 人事係員のルール違反の対処
関連情報
1.企
業
の
業
種
サービス業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2005 年 3 月~2005 年 7 月
3.体験の際の職種・職務
機械修理ディレクター
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
当社も社員数が多くなり、知り合いからの紹介で人事係員を採用したが、この
人事係員がくせ者であった。この人事係員は紹介者の手前もあり、初めのころは
会社の規則をよく守り、システムどおりに動いていた。3 ヵ月の研修期間を過ぎ、
1 年契約に切り替えて 2 ヵ月くらいから平日に休みが多くなり、勝手に会社の人
事のルールを変えたり、会社の許可無しに新しい規則を作ったりした。4 ヵ月を
過ぎた頃には 1 ヵ月の半分以上を休むようになり、本人に注意すると、
「サキット
(sakit:病気)
だ。
」
という返事が返ってきた。
医者の診断書は出したかと聞くと、
「後で出す。
」との返事で出てこない。病気でない休みを振り替えで出勤するよう
に告げると、いやだと言う返事だった。
(もちろん有給はしっかり取っている。他
の社員は会社の規則だから素直に聞いてくれる。
)
また自分に都合の良い会社の規
則のみ従い、自分に都合の悪い規則は会社の規則が間違いだから従えない、と言
い出す始末であった。それどころか他の社員に、この会社は社員に対して悪いこ
とばかりだと触れ回るようになった。
B.対処概要
この件をインドネシアのマネージメントコンサルタント会社に相談した。そし
て本人に直接面談し、内容を聞き出してもらった。結果として、契約期間が残っ
ているなら、その分の給料を支払ってでも早く辞めさせることとの話だった。本
195
10 労使関係・労使コミュニケーション
人が過失(会社の規則に従わないなどの過失数件)を認めたために警告書を出し
た。
それからパソコンを調べてみると、
会社の機密をフロッピーに取り込んでいて、
持ち出す寸前だった。それ以来経理部を部屋にし、関係者のみに合鍵を渡すこと
にして、鍵をかけるようにした。その後、2 ヵ月分の基本給のみ渡して解雇した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
どんな親しい人の紹介でも、採用する本人の前歴を調べて採用することが大切
だと思う。
(良い勉強になった。
)当社は機械のプラント及び機械のメンテナンス
を主にした事業を行っているので、社外に機密が漏れることは大きなマイナスで
ある。人を雇うということは大変なことであり、国が異なると意味の取り違えな
ど言葉の弊害や文化の違いもあるのでよほど気を付けなくてはいけないと思う。
196
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-7 従業員から株主への突然のコンプレインレター
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 11 月~2001 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
取締役社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
社長交代着任後三ヵ月経った頃、突然日本の親会社及び一部ローカル株主あて
に、従業員大多数の署名を集めたリストを添付して、コンプレインレターが送り
付けられた。その要求内容は、
「人事担当サブマネージャーを辞職させること、さ
もなくばストライキを打つ。
」というもの。当時当社は組合未結成だった。
B.対処概要
レターの内容が日本の常識から見ると非常に幼稚な問題を直訴していて、社会
人としての体を成していないと感じた。また、この時期当国で労働問題が起こる
とすぐにストライキを打つという一種のムードがあり、それに乗った形の要求だ
ったことから、以下の段取りで対処した。
1.手紙を受け取った株主には対処のしようがないこと、また、責任者である社
長には送付されていなかったことを理由に、まずは社内で話し合いを持つよう
提案し、グループ・リーダー以上の者全員に集まってもらい、従業員対マネー
ジメントの話合いを開始した。
2.この会議では余り意見が出ず、順番に発言を求めても同様だった。若干一方
的ではあったが、マネージメント側も反省すべきは反省し、今後コミュニケー
ションの場を定期的に持つことや、意見箱の設置などを提案した。当該人事担
当辞職問題には時間をくれるよう申入れして、次の会議日程も提案し、一旦会
197
10 労使関係・労使コミュニケーション
議は終了した。
3.その当日午後に従業員の主だったメンバーが社長に話ありとして、
「今夜もう
一度ローカルのマネージャーを外して直接話合いを持ちたい。
」との申入れがあ
った。それに応えて会議を持った結果、
「人事担当のみではなく、今のローカル
マネージメント(二名)も同様に辞めてもらいたいが、会社の状況からすれば
それは難しいだろうとの判断で人事担当の辞職を求めている。これは絶対に譲
れない。時間も長くは待てない。
」と再度の念押しとなった。
4.当方からは、①株主と相談し、人事担当の問題対処を一ヵ月以内に報告する、
②原因はコミュニケーション不足であるので、今後定期的な会合の場を持つ、
③そのための従業員側の委員会を作ってメンバーを決める、④昇給・昇格等で
の不満についてはルールをもう一度よく双方で確認し合う、といった約束をし
た。
5.結果としてストライキは回避でき、お互いのコミュニケーションが大事との
共通認識ができた。この委員会がその二年後に発展的に組合結成となって今日
に至っている。
(その後現在まで大きな紛争案件はない。
)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.会社設立当初から採用していた従業員に、当時の経営者が甘い約束をした気
配があり。
(主だった者達に 3~4 年後にはマネージャー格にする等。
)
2.さらに当初の人事担当が女性で、相談事(借金申し入れ等)に強腰にルール
で説明できておらず、それが急に厳しくなったと錯覚させていた。
3.なんといっても本当の意味でのコミュニケーションを怠っていたことは、マ
ネージメントの反省が必要。
(突き上げられてやるのは逆効果。
)
4.昇給・昇格のガイドラインがあるにもかかわらず、周知徹底不足では個々人
が勝手な解釈をしてしまう。
198
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-8
名誉棄損訴訟で裁判直前までいった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2001 年 10 月~2002 年 9 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州
A.困難事例の概要
購買担当者が安い消耗品を高く見積もって、差額を着服していたことが発覚し
た。
1.別の者が急ぎで偶然同じ店で物を購入した時と、価格が大きく異なっていた。
2.ドイツ製と記入され、高級品だから高いと説明していたが、現物は廉価なイ
ンドネシア製のものだった。
3.店ごとの領収書が異なるのに、サインが同じ。
以上の証拠を突き付けたが、店員とグルになっており、本人を連れてきて確認
したものの、すべてが店側の間違いと説明されて不正が暴けなかった。一旦不正
はなかったということにして騒ぎを終了させた。その後、本人は購買担当者とし
て安いものを購入する能力が乏しい、として配転を命じたところ、名誉棄損で不
当な扱いを受けたとして訴訟すると言われた。
自称弁護士という者も、マフィアまがいの脅しで「警察・裁判所にツテがあり、
裁判になっても会社は絶対に勝てないから、素直に金を出せ。
」と言う。
B.対処概要
対処のため雇ったローカル弁護士からも、重大な問題に発展すると言われ(警
察や裁判所を味方に付けるには、相手以上の金額が必要との由。
)交渉を依頼した
が、全く話を進めず、費用のみを要求された。そこで工業団地事務所に相談し、
199
10 労使関係・労使コミュニケーション
日本人弁護士事務所を紹介してもらい事情を説明したところ、
1.解決を焦って弱気な交渉しない。
2.金はかかっても徹底抗戦の構えを見せる。
3.警察・政府高官とコネクションがあるように見せる。
というアドバイスを受け実行した。
結局、元従業員は毎月の生活費が底をつき、支援者も離れていき、裁判でも自
分たちのコネ以上の強力なコネが会社側にあることから勝てないと思ったのか、
通常の解雇手続きで納得して本件は終了した。この間約 11 ヵ月を要した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.ローカルの弁護士は相手の弁護士とグルになっている場合が多く、100%は
信用しない。
2.工業団地事務所や他社の日本人など、相談できる人脈を作っておく。
3.日ごろから標準的な価格を覚えておき、受入れ時に品物と伝票が一致して
いるかを別の人間に確認させる。
4. 購買は信頼のおける者にさせ、定期的に交代させる。
5. 安易に早期解決を考えず、粘り強く交渉する。
200
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-9
突然のストライキ通告
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
ある日、
不当解雇を理由に、
組合からストライキを実施する旨の通知を受けた。
組合側から指摘を受けた不当解雇とは、数ヵ月前に倉庫から補修部品が盗まれた
時に、警備員が寝ていたことが判明し、その警備員はそれ以前にも数回夜間に寝
ていて盗難に遭っていたため、解雇を申し渡したもの。実際には、警告書はまだ
2 回しか出していなかったが、日頃の勤務態度が良くないとして解雇通知した。
組合側としては、
この決定を不服としてストライキの実施を通知してきたもので、
その対応に苦慮した。
B.対処概要
労働組合とは日頃からコミュニケーションを取っていたため、事前の話合いも
なく、いきなりストライキの実施通知が出たことに、非常に落胆した。
組合としては、本人が盗みを犯して認めているのであれば、解雇もやむを得な
いが、本人が盗みを犯したのではなく、勤務時間中に盗難に遭ったという理由の
みで 3 回目の警告書を待たずに即刻解雇することはおかしいとの主張であった。
その後、警備員全員と話し合いを行い、当該警備員には解雇ではなく、3 回目の
警告書を出すこと、警備のシステムの改善を警備員も参加して行っていくことを
組合側と約束し、結果としてストライキは実施されなかった。
201
10 労使関係・労使コミュニケーション
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.解雇に際しては、法律により定められている条件があるので、まずは法律
と照らし合わせて判断すべきである。また法律的に解釈して、会社側が正し
くとも解雇に当たっては、本人及び組合に対する十分な説明と話し合いが必
要である。
2.普段のコミュニケーションがもっとも大切であるとの認識の上に立ち、日
頃、組合との話し合いの場を作ってきたと自負していたところが過信であっ
た。やはり経営者として十分と思っていても、その思いが 100%相手に伝わ
らないことも多いので、常に謙虚に物事に対処していかなければならない。
202
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-10 ストライキの発生理由
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
ストライキがなぜ起こるのかよく分からない。
B.対処概要
1.ストライキの原因
ストライキは労使のコミュニケーション不足から発生する。しかし、ストライ
キの原因となる使用者と労働者との間の意見の相違について、労働者側の不満を
分析していくと以下の表のようになっている。
表1 2002~2004 年のストライキの発生状況(労働者の要求別)
2004 年 12 月 31 日現在
原 因
2002 年
2003 年
2004 年
最低基準に係るもの
レバラン手当の権利
1
11
10
4
残業の権利
7
7
6
休暇の権利
13
9
3
労働社会保険
最低賃金
P4P/P4D の決定
1
2
2
8
6
12
36
32
14
4
4
2
レバラン手当:略称は THR
P4P :中央労働紛争終了委員会 P4D :地方労働紛争終了委員会
203
10 労使関係・労使コミュニケーション
原 因
2002 年
2003 年
労働協約
1
0
1
労働組合
8
0
0
解雇
16
21
20
退職金支払い
11
14
5
サービス金
1
2
1
賃金不払い
4
7
12
120
112
80
21
12
8
12
7
12
合 計
2004 年
最低基準以外のもの
ボーナス
スンバコ
3
復職
4
4
7
41
28
24
給与リスト
3
10
11
皆勤手当
5
0
3
10
1
4
食事メニュー/食事手当
ケータリング
2
0
1
団結
病気通知
29
36
23
賃金/レバラン手当引上げ
33
41
35
交通
30
25
25
昇進
0
2
1
脅迫/恨み
9
6
5
インセンティブ/福祉
42
48
34
法令より多額の退職金
14
8
13
宗教施設
5
0
1
シフト手当
3
1
2
制服
6
2
5
労働契約
28
10
14
人事担当課長
13
9
2
企業閉鎖
2
1
0
-
40
25
312
291
255
雇用関係上の身分
合 計
(注)ストライキは複数の要求事項を掲げて実施されることが多い。
3
主要生活必需品 9 品目
204
10 労使関係・労使コミュニケーション
このように、賃金に関する不満が一番多いが、福利厚生も大きな原因となる。
労働者の不満を汲み上げるためには労働組合から意見を聞くこと、また、目安箱
のようなものにより労働者の声を直接汲み上げる仕組みも検討すべきである。
人事担当課長が厳しすぎるということでその解雇を要求してのストライキもあ
る。これは、人事は経営側の専管事項ということが理解されていないためである
が、そのようなことは常日頃のコミュニケーションにより労働者側に理解させて
おく必要がある。
2.ストライキのきっかけ
ストライキが起こるきっかけは、労働組合が組合員の意思を統一してスト権を
確立してストライキを実施する、というものはほとんどなく、扇動者が声をかけ
て労働者が集まり、突然に発生する、というものが多い。この扇動者は労働組合
の指導者である場合もあるが、外部から入ってきた専門的な扇動者である場合も
多い。いわゆる山猫ストライキというものがしばしば発生する。
3.ストライキの行方
労働法においては、ストライキの実施手続きが定められているが、その手続き
を無視したストライキも多く、このため使用者から無断欠勤とされて解雇の手続
きに進んでいくケースもある。そのような場合は、法定の退職金にある程度積み
足して退職ということで決着することが多い。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
205
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-11 会社外部からの扇動
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
どうやったら扇動者が会社に入り込むのを防ぐことができるか分からない。
B.対処概要
外部からの扇動者は、労使コミュニケーションがうまくいっていないところに
入り込んでくる。扇動者が入り込むことができないように労使コミュニケーショ
ンを良くしておくことが必要である。労働・移住省の高官は、扇動者が入り込め
ないよう人の城、石垣を造り上げることが必要と指摘していた。
小グループによる改善提案活動や品質向上活動を実施し、グループ同士で互い
に競わせ合うと労働者の意識が高まり、外部からの扇動にも動ずることがなくな
って良い、との指摘もあった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
206
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-12 突然のストライキ
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 4 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
ある日、始業時間になっても工場の生産ラインに従業員が出てこないというこ
とがあった。食堂に集まって、それぞれが勝手にしゃべっていた。
B.対処概要
原因を知るために労働組合の委員長等に尋ねると、
「食堂へ集まれ。
」
、
「労働組
合をせっかく作ったのだから何かしよう。
」
「組合費を払っているのだからストラ
、
イキを一度やってみよう!」との声があったとのこと。
その後食堂で話し合いを行ったが、特別な要求もなかったので、午後から職場
に復帰することを約束し、騒動は終了した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. 98 年以降、労働組合の上部団体がたくさんできたため、オルグが工場へ頻
繁に来るようになった。そんな状況の中で、当社の労働組合も作られたので形
はできたが、組合幹部も何をしてよいか分からない状態であった。組合を作る
前に十分に話し合いをするべきであった。
2. 労働組合を作りたいという要求がある前に情報はキャッチできるので、現
地マネージャー任せにせず、日本人駐在員が慎重に対応する必要がある。
3. 組合との対話が大切なので、毎月1回の労使懇談会はできるだけ駐在員も
207
10 労使関係・労使コミュニケーション
参加する。言葉の問題で参加しない場合でも、マネージャーから十分に情報を
得て組合との折り合いを良好にしておく。
4. だめだと分かるような要求でも、
「一応要求してみよう。
」ということで言
ってくるケースがよくある。それらを含めて、例えば「10 の要求に対してい
くつ OK するか?」を組合の反応を見ながら決めていく。
5. 労使懇談会だけでなく、普段のコミュニケーションがもっとも大切である。
208
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-13 会社内での労働組合結成への対応
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
労働者が労働組合をつくろうとしているが、どう対応したらいいのか分からな
い。
B.対処概要
労働者が企業内で労働組合をつくろうとしているときにそれを妨害することは
不当労働行為になるので妨害はしてはならない。労働組合ができることになった
背景を知った上で、労働組合と意思疎通を円滑にする仕組みをつくることが重要
である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
209
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-14 ストライキ実施者による工場占拠と破壊活動
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
ストライキ実施者が工場を占拠し、さらに破壊活動を行った。
B.対処概要
ストライキは、インドネシアの法令にのっとり平和的に実施されなければなら
ないが、工場の不法な占拠、破壊活動は労働運動の範囲を超えており、警察の介
入を依頼することが必要になる。労働事務所、総領事館にも連絡を取る必要があ
る。日本人職員の安全を最大限重視しつつ、ストライキ実施者と交渉を行う。ス
トライキ実施者の破壊行為等については、
「誰がいつ何をした」といったことにつ
いてきちんと証拠を押さえた上で警察に処理を依頼する必要がある。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
210
10 労使関係・労使コミュニケーション
10 労使関係・労使コミュニケーション 関連解説
10.1
労働協約
(1)労働協約とは
労働法第 1 条
第 21 項 労働協約(Joint Working Agreement=Perjanjian Kerja Bersama)と
は、既に労働分野に責任を負う政府機関に登録されている(単一)労働
組合又は複数労働組合と、雇用主、経営者又は雇用主団体との間の交渉
の結果としての合意事項であり、
就労条件と労使双方の権利と義務を記
載したものである。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0201.html
(2)記載の必要な項目
労働法第 124 条
第1項
労働協約は少なくとも以下を記載する。
a. 経営者の権利と義務
b. 労働組合及び労働者の権利と義務
c. 労働協約有効期間及び発効日
d. 労働協約作成者の署名
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
(3)労働協約と労働法
労働法第 124 条
第2項
労働協約内の規定は、現行法規に反してはいけない。
第3項
第 2 項でいう労働協約内容が現行法規に反している場合、
その反する規
定は法の下で無効となり、法規の規定が有効となる。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
211
10 労使関係・労使コミュニケーション
10.2
就業規則
(1)就業規則とは
労働法第 1 条
第 20 項 「就業規則」とは、労働条件及び会社規律を記載した、経営者によって
書面にて作成された規定をいう。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
労働法 108 条
第1項 10 人以上の労働者を就業させる経営者は、大臣もしくは指定官吏による
承認後有効となる就業規則を作成する義務を負う。
第 2 項 第 1 項でいう就業規則作成義務は、労働協約を有する会社には無効とな
る。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
(2)労働協約と就業規則
労働法第 129 条
第 1 項 経営者は、その会社に労働組合がまだある間は、労働協約を就業規則に
変えることは禁じられる。
第 2 項 会社に労働組合がなくなり、労働協約が就業規則に変えられる場合、就
業規則にある規定は、労働協約にある規定を下回ってはならない。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
10.3
労働組合
(1)関連法令
労働組合に関連する法律として、
2000年第21号労働組合法と2004年1月14日付け
法律第2号産業紛争解決法が挙げられる。
212
10 労使関係・労使コミュニケーション
産業紛争解決法による紛争解決のメカニズムは次の通りである。
1)紛争当事者間の二者協議
協議開始から 30 就業日以内に合意に達した場合は、合意書に署名し、現
地の産業紛争関係裁判所に登録する。
協議開始から 30 就業日以内に合意に達しなかった、あるいは協議が決裂
した場合は、紛争を現地の労働担当機関に登録する。
2)調停・仲裁・仲介
紛争登録後 7 就業日以内に、調停官による調停、あるいは仲裁人資格を有
する仲裁人による仲裁を選択する。期限内に調停か仲裁を選択できなかった
場合は、仲介官による仲介に任される。
調停・仲裁・仲介いずれも期間は申請受理より 30 就業日。調停及び仲介
は、調停官あるいは仲介官の提案に紛争当事者が回答する形で合意を模索す
る。調停・仲介で合意に至ったケースは、合意書に署名して現地の産業紛争
関係裁判所に登録する。合意に至らなかった場合は、産業紛争関係裁判所に
紛争解決を申請できる。
仲裁では、まず和解を模索し、和解に至ったら和解証書に署名して現地の
産業紛争関係裁判所に登録する。和解が得られない場合に仲裁人の裁定を受
ける。仲裁人の裁定は拘束力があり、最終的なものである。
3)産業紛争関係裁判所での解決
調停あるいは仲介で合意に至らなかった場合に解決を申請する。仲裁の場
合は、和解に至らなければ仲裁人の裁定を受けることになるので、産業紛争
関係裁判所へ訴え出ることはできない。公判期間は初公判から 50 就業日。原
則、産業紛争関係裁判所の判決は最終的・恒久的なものである。
産業紛争関係裁判所は、各州都にある県/市の地方裁判所と最高裁判所に
設けられるもので、現行の中央/地方労働紛争解決委員会(P4P/P4D)に代
わる機関となる。二者協議や調停・仲裁・仲介における合意の登録先でもあ
り、労使紛争等の管理がまとめられた。それぞれの段階での紛争処理期間も
213
10 労使関係・労使コミュニケーション
明確に定められ、スピーディーで公正な紛争処理の実現に期待がかかる。
4)産業紛争解決法の施行延期
政府は、2005 年 1 月 13 日付け 2005 年第 1 号政令にて、2004 年第 2 号産
業紛争解決法の施行の 1 年延期を決めた。当初は 2005 年 1 月 14 日に施行予
定であったが、2006 年 1 月 14 日に延期された。
産業紛争裁判所及びその特別判事等がそろわないことが理由。延期期間中
は引き続き旧令に当たる、中央/地方労使紛争調停委員会(P4P/P4D)を通
じた解決を定めた 1957 年第 22 号法、及び 1964 年第 12 号解雇法に従う。
(出典) http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/idn/invest_11?print=1
(2)労働組合の現状
現在、労働組合法に基づき、正式に設立された全国規模の総連合体としての組
織は 3 つある。そのほかに連合体としては政府の認定している 87 団体がある。
○全インドネシア労働組合総連合(KSPSI)
昔からあった全インドネシア労働組合連合(SPSI)という連合体が、2001 年 8
月に再登録した。傘下には 18 の産業別の組合がある。
○インドネシア労働組合総連合(KSPI)
2002 年 2 月に新規登録した。傘下の連合体は 10。労働組合の大半が、海外の労
働組合や労働関係機関と連携をとっている。
○インドネシア福祉労働者組合(SBSI)
傘下には 11 の産業別の組合がある。
現在、多くの連合体が、このいずれかの総連合に加入している。
日系企業に関しては、KSPSI 傘下の労働組合を有しているところが多い。これ
らの労働組合は、お互いに競い合いながら、傘下の労働組合の拡大に躍起になっ
ている。また、会社によっては、労働組合のあるところに、2 つ目の組合を作ろ
うとする動きが出て、問題が起こることがある。
(出典) http://www.ovta.or.jp/info/asia/indonesia/06labor.html
214