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目次~参考資料 - 海外職業訓練協会

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まえがき
私ども財団法人海外職業訓練協会(略称:OVTA)は、民間企業が行う海外職業訓
練(海外等において外国人を対象に実施する職業訓練)を援助するために設立された
厚生労働省許可の公益法人です。主な事業として、民間企業等が行う海外職業訓練の
企画推進のために必要な情報資料等の収集・提供、指導・助言の実施、訓練教材・訓
練技法の開発等を行っております。また、厚生労働省の委託を受け企業活動の国際化
に対応した人材の育成を支援する「グローバル人材育成支援事業」を平成 17 年度よ
り実施しているところです。
本支援事業の一環として、当協会では国際人材の育成に係る調査研究を実施するこ
とになり、日本企業が海外進出に伴い直面する問題や対策に関する調査・研究を行う
委員会である「海外日系企業が直面する問題と対策に関する調査研究委員会」を発足
させました。平成 17 年度はインドネシアに焦点を当て、インドネシアに進出した日
系企業が現地においてどのようなトラブルや問題に遭遇し、それにどう対応したか、
そしてどのような教訓が得られたか、について日系企業関係者の方々に御経験に基づ
いた事例を御執筆いただきました。
その結果、103 件もの豊富な事例を取りまとめました「インドネシアの日系企業が
直面した問題と対処事例」を発刊できる運びとなりました。事例の中にはインドネシ
ア政府、人、習慣等について執筆された方の主観が入っているのではないか、と思わ
れるかもしれないものもありますが、本事例集の本旨は読者にインドネシアに対する
先入観をつくることではありません。インドネシアに関係する日本企業がインドネシ
アを良く理解し、より円滑に事業活動を行うことにより日本とインドネシア両国の友
好と経済の相互発展に資することを目的としたものであり、本事例集が関係者に幅広
く活用されることを期待しております。
最後に、
大変御多忙の中事例の執筆に御協力いただきました日系企業関係者の方々、
取りまとめていただきました委員各位にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
平成 18 年 3 月
財団法人 海外職業訓練協会
事例集活用にあたって
本事例集は、厚生労働省の委託により財団法人海外職業訓練協会が 2005 年度の事
業として行ったものである。インドネシアの日系企業の駐在員をはじめ、インドネシ
アの雇用、労働に精通している方々にお願いし、ご自分の体験などをもとにして事例
を執筆していただいた。ここに改めて感謝の意を表したい。
さて、インドネシアは、1997 年の通貨危機、引き続き発生した経済危機、1998 年
の暴動、スハルト政権の崩壊と自由化、民主化の進展と目まぐるしく変化してきた。
ユドヨノ大統領就任以来、民主化の流れの中で経済は順調に回復し、特に、四輪車
や二輪車を中心に消費が順調に伸び、インドネシアの総需要を増大させた。しかし、
2005 年後半になると、石油価格の高騰によりインフレが進行し、庶民の生活を圧迫し
た。順調に伸びてきた自動車関連の消費は、ガソリン価格の値上げなどにより、落ち
込んだ。インドネシア政府は、インフレを抑えるとともに、総需要を増大させる政策
を進めている。ユドヨノ政権になってから、海外からの投資を取り巻く環境も改善さ
れつつあり、通貨危機を機に国外退去した企業は、次第にインドネシアに戻り始めて
いる。
その一方で日本企業の対インドネシア直接投資は 1998 年当時の 3 分の 1 の状況で
ある。また、2003 年に制定された労働法は、最低賃金、退職金、労使関係にかかわる
様々な条件を規定しているが、労働者保護の側面が強く、海外からインドネシアへの
投資の妨げになっているという指摘を受けている。インドネシア政府は、この状況を
深刻に受け止め、労働・移住省においては、労働法の改正案を 2006 年の国会に提出
すべく準備をしている。改正労働法案については、経営者団体、労働組合などとの話
合いがすでに持たれている。
重要な点は、経済環境の側面や、労働環境の側面において、あるいは投資環境をめ
ぐる側面において、中長期的に、また短期的に、インドネシアの状況が目まぐるしく
変化していることである。
このように状況が不透明な中で、今回の事例集を策定することは大きな危険を伴う
ことかもしれない。すなわち、読者がこの事例集を手にされた時には、書かれている
内容が現実と異なる可能性が高いからである。
しかし、目まぐるしく変化する状況の中で、この事例集を出版することの意義はあ
る。インドネシアの 10 年前と現在とを比較すると変化している面もあれば変わらな
い面もある。あるいは、現在のアセアン諸国において共通する部分もあればインドネ
シアに特有な側面もある。大事なことは、これからインドネシアに派遣され、インド
ネシアの人たちと仕事する際に、
知っておくべき文化や習慣があるということである。
変わりゆく不確定性の危険の大きさと最低限知っておくことによって防げる危険の大
きさを比較し、後者の大きさを評価した。
まえがきに記されているように、本事例集の目的は、日本とインドネシアとの良好
な関係を築くための一助となるべきものであり、これまで、そして今後インドネシア
に赴任する日本人派遣者に、本来ならば起こさなくて済むようなトラブルを事前に回
避してもらうために書かれたものである。大事なことは、インドネシアと日本両国の
友好と両国のさらなる経済的な発展のために、一人ひとりがお互いを思い、行動する
ことである。その気持ちを胸に抱いて、変化することについては絶えずフォローし、
新たに生じる問題に対応する力を備えていただきたい。
なお、本書は、大きく本編と参考資料から構成されている。本編は、インドネシア
の日系企業が直面した問題と対処について 103 の事例を書いてあり、企業の進出・投
資から始まり、全体を 15 の領域に分類している。それぞれの領域の終わりには、関
連解説を示している。参考資料は 2 つあり、1 つは、インドネシアの雇用に関連する
ウェブサイトであり、いま 1 つは、インドネシアに派遣される人たちが知っておきた
いインドネシアの労働用語について日本語の訳をつけたものである。あわせて参考に
していただきたい。
平成 18 年 3 月
海外日系企業が直面する問題と対策に関する調査研究委員会
座長 下田 健人
平成 17 年度「海外日系企業が直面する問題と対策に関する調査研究委員会」
委員会名簿
順不同・敬称略 平成 18 年 3 月現在
座長
下田 健人
麗澤大学 国際経済学部 教授
委員
上野 隆幸
松本大学 総合経営学部総合経営学科 専任講師
高橋 是乗
OVTA 国際アドバイザー
橋本 政彦
OVTA 国際アドバイザー
インドネシアの日系企業が直面した問題と対処事例
1. 企業の進出・投資
1-1 会社解散を実施しようとしたが、
実行に多大の時間と費用を要した··························· 3
1-2 インドネシアのどの地域に進出すれば良いか ················ 5
1-3 パートナーとなる現地資本をどのように探すか ············· 7
関連解説 ······················································· 9
2. 人の募集・採用・定着
2-1 労働者をどのように募集したら良いのか分からない·········· 15
2-2 新規社員雇用時の問題···································· 17
2-3 日本への研修出張後、転職をにおわせ昇給要求をしてきた···· 19
2-4 経理マネージャーを雇ったが能力不足だった················ 21
2-5 派遣社員の正式雇用に伴う問題···························· 23
2-6 地元労働者を雇用するように村長から圧力がかかった········ 25
2-7 採用強要のデモをかけられた······························ 27
関連解説······················································· 29
3. 賃金・人事考課・福利厚生
3-1 賃金問題と最低賃金との兼ね合いで生じた問題·············· 35
3-2 インドネシアにおける人事制度改革························ 38
3-3 従業員の賃金査定に際して································ 42
3-4 福利厚生面での要求の変化································ 44
3-5 インドネシア人の遅刻削減································ 45
関連解説······················································· 47
4. 能力開発
4-1 保全要員の能力開発······································ 55
4-2 役職者の責任追及と社員教育······························ 57
4-3 セミナーの励行·········································· 64
4-4 能力開発················································ 66
4-5 ローカル社員の能力開発の計画的な実行···················· 69
i
インドネシアの日系企業が直面した問題と対処事例
4-6 日本に研修出張させたが帰国日に姿を消してしまった········ 71
4-7 新入社員教育をどのように実施すれば
効果が上がるのか分からない······························ 73
関連解説······················································· 75
5. 従業員の動機付け
5-1 工場の稼働率がなかなか改善できなかった·················· 83
5-2 優秀な若手職員が転職してしまった························ 86
5-3 中東の工場へ従業員を継続して引き抜かれた················ 87
6. 昇進・キャリア形成
6-1 キャリアアップは火中の栗か······························ 91
6-2 非常に有能な若手社員をマネージャーに登用しようとしたところ、
自分が若輩であるとして受けてくれなかった················ 95
6-3 工場経営幹部を全員ローカル化させる······················ 97
6-4 人事考課(能力評価)での失敗···························· 99
関連解説······················································ 101
7. 労働時間・休暇
7-1 時間外勤務手当の処理をどうするかで苦労した············· 105
7-2 残業時間を含む労働時間確保のために、
就業規則を改定した····································· 107
7-3 残業が少なくなり不満が出た····························· 109
7-4 生産効率化の問題······································· 111
7-5 労働組合からお祈りのための時間を
労働時間に算入するよう要求された······················· 113
7-6 長期休暇··············································· 114
7-7 レバラン休暇で田舎に帰った労働者が戻って来なかった····· 115
7-8 労働時間の変更について································· 116
関連解説······················································ 118
ii
インドネシアの日系企業が直面した問題と対処事例
8. 職場・工場での問題
8-1 昼の食事中に運転手にカバンを盗まれた··················· 123
8-2 従業員が会社の PC を使用して副業をやっていた············ 124
8-3 突然のサボタージュ····································· 125
8-4 悪霊に取り付かれたワーカー····························· 127
8-5 商売の横流し··········································· 130
8-6 給与を盗まれた········································· 133
8-7 総務担当者が地位を利用して高利貸しをしていた··········· 134
8-8 レンタカー代金をローカルスタッフに使い込みされた······· 135
8-9 従業員による製品屑の横領······························· 137
8-10 事務所内での盗難······································· 139
8-11 5S 活動の定着化 ······································· 141
8-12 近隣の村から仕事をやらせてほしいという要求があり、
対応に困った··········································· 144
8-13 会社所有の従業員社宅に 3 名の強盗が入った··············· 145
8-14 工場内が暑くて不満が出た······························· 147
8-15 ネットバンキングでの盗難事件··························· 149
8-16 ドライバーの残業管理··································· 151
8-17 現地マネージャーに現金を持ち逃げされた················· 153
9. 退職・解雇
9-1 労働事務所から P4D を経て P4P までの一例················· 157
9-2 問題のある社員の解雇··································· 162
9-3 違法サボタージュの扇動者を含む不良社員 5 人を解雇した··· 163
9-4 リストラによる早期退職································· 166
9-5 会社閉鎖と従業員解雇··································· 167
関連解説······················································ 172
10. 労使関係・労使コミュニケーション
10-1 どうしたらストライキを防止できるのか分からず困った····· 183
iii
インドネシアの日系企業が直面した問題と対処事例
10-2 インドネシアの労働組合活動····························· 186
10-3 労使交渉に関して日本人社員が監禁される················ 187
10-4 サボタージュ··········································· 189
10-5 労働協約の改定時に協定内容の見直し、
変更を申し出たが拒否された····························· 192
10-6 人事係員のルール違反の対処····························· 195
10-7 従業員から株主への突然のコンプレインレター············· 197
10-8 名誉棄損訴訟で裁判直前までになった····················· 199
10-9 突然のストライキ通告··································· 201
10-10 ストライキの発生理由··································· 203
10-11 会社外部からの扇動····································· 206
10-12 突然のストライキ······································· 207
10-13 会社内での労働組合結成への対応························· 209
10-14 ストライキ実施者による工場占拠と破壊活動··············· 210
関連解説······················································ 211
11. 日本人社員の問題
11-1 ローカルスタッフと日本人駐在員の待遇の問題············· 217
11-2 日本人指導員を 1 年で帰国させた························· 219
11-3 イミグレーション職員からの裏金の要求··················· 221
11-4 イミグレーションからのクレーム························· 223
11-5 日本からの出張者が急病になった························· 225
11-6 突然の国外退去命令····································· 227
関連解説······················································ 228
12. 宗教・慣習
12-1 突然の停電············································· 235
12-2 女性社員のジルバブ着用································· 236
12-3 労働時間中にお祈りに抜ける人が多く支障が出た··········· 237
12-4 お金の貸し借り········································· 239
iv
インドネシアの日系企業が直面した問題と対処事例
12-5 2 名同時にハジ休暇を要求されて
業務のやりくりに苦労した······························· 241
12-6 ある朝、突然ストライキを決行された····················· 243
関連解説······················································ 246
13. 危機管理・リスクマネージメント
13-1 98 年の暴動 ············································ 253
13-2 98 年 5 月の暴動 ········································ 255
13-3 98 年 5 月の政変から臨時便で帰国までの経験より ·········· 257
13-4 1998 年 5 月暴動時の教訓 ································ 259
13-5 工場隣接地に発生する自然発火火災······················· 262
13-6 工場への一部住民乱入事件······························· 265
13-7 地域住民のデモ········································· 269
14. 税金・役所との関係
14-1 追加納税額の削減交渉··································· 273
14-2 所得税納税に関する問題································· 274
14-3 Import VAT に関する大損害 ······························ 275
14-4 突然の個人所得税の請求································· 277
14-5 税金還付時に例年より多額の手数料を要求された··········· 279
14-6 EPTE(保税加工区)権利抹消処理························· 281
14-7 労働事務所との関係作り································· 283
14-8 建築許可をめぐる行政の許認可··························· 284
14-9 廃棄物処理の承認印をもらうのに特別費を請求された······· 286
関連解説······················································ 288
15. その他
15-1 転職する際のコツ······································· 293
15-2 現地法人に資金管理を任せきれない······················· 296
v
インドネシアの日系企業が直面した問題と対処事例
参考資料
1.インドネシアの労働関連ウェブサイト························· 301
2.インドネシア語/日本語 労働用語···························· 304
vi
1.企業の進出・投資
1
事例1-1
企業の進出・投資
会社解散を実施しようとしたが、
実行に多大の時間と費用を要した
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年頃
3.体験の際の職種・職務
取締役
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
1997 年の通貨危機、それに続く政治、社会危機により、原料を日本から輸入し、
製品の 8 割をインドネシア国内向けに販売していた会社の業績は急激に悪化した。
当社としては、将来性を検討してインドネシアからの撤退を決断し、現地パート
ナーの了解を求めたが、株主総会での解散決議に要する発行済み株式総数の 4 分
の 3 以上の賛成が得られず、最終的に解散決議が可能となるまで多大の時間と経
費を要した。
B.対処概要
1.日本の本社の業績内容をもとに、この合弁事業の継続が困難なことの説明
を行い、パートナーに会社解散の理解を求めた。
2.解散後に現地パートナーが不利益とならないこと、また従業員の処遇など
についても時間をかけて話合いを行った。
3.問題が長期化して争議に至らないように、弁護士や本社との連絡を密にし
て、友好的に解決することを第一とした。
4.問題点は、双方で文書を作成し、誤解の生じないように注意した。
3
1
企業の進出・投資
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.コミュニケーションを円滑にするためには、日ごろからパートナーとの情
報交換を密にして、友好関係を構築し、相互信頼に努める。
2.海外投資の際は、進出のみならず撤退のケースも織り込んだ進出計画を作
ることが望ましい。また、日本本社からのコントロールが容易なように、独
資での進出や出資比率 91%を単独で確保することによりインドネシア人株主
からの訴訟を回避できる条件を満たした進出計画が望ましい。
3.常日ごろから信頼できる顧問弁護士と関係をつくっておき、個別の問題に
ついても弁護士によく相談し、問題の解決に努める。
4.利害が絡めば感情的な対立が生じやすく、海外での誤解は問題をますます
複雑、拡大しかねないことを念頭に入れること。最終的には、どのような場
合も合意文書を作成することとし、冷静に対処して後日トラブルが起こらな
いように努める。
5.インドネシアでは、日本のようにスピーディにことが進まないのが日常な
ので、解決を急ぎ、焦って相手の術中にはまらないように注意する。
(参考資料)1. 企業進出・投資・撤退
1.1 関係法令 (1)株主総会 (2)解散 (3)進出
4
1
事例1-2
企業の進出・投資
インドネシアのどの地域に進出すれば良いか
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
インドネシア進出に当たり、インドネシアのどの地域に進出すれば良いか分か
らない。
B.対処概要
まず検討すべき点は、販売先(納入先)と原料の調達先のどちらに近い場所を
選択するかである。物理的に近いということはもちろん、輸送コストの軽減につ
ながるが、Just In Time Delivery を要求される昨今では、輸送にかかる時間的
な要素も考慮すべきである。インドネシア国内市場向けの製品の場合、納入先に
近い方が納入コスト・時間削減のメリットは大きい。製品を輸出する場合、もし
くは、
原料の大半を輸入する場合は、
港へのアクセスが非常に重要になってくる。
インドネシアで調達できる安価な原料を利用する場合は、原料の調達先に近い方
がメリットが大きい。
一方、労働集約型の製品の場合、人件費の占める割合が大きいため、賃金の安
い地域を選択するべきである。ジャカルタ等の大都市周辺は最低賃金も高く、付
加価値が低いので、労働集約型の産業は競争力を失いつつある。
工場建設に当たっては、工業団地への立地は絶対条件と考える。インドネシア
の場合、政府は各種インフラを用意してくれないため、インフラの整った工業団
地が便利なこと、
入居後も操業に当たってさまざまなサポートが期待できること、
5
1
企業の進出・投資
特に日系の企業が多く進出している工業団地では、横のつながりもでき、情報入
手が簡単になることなど、工業団地への入居はメリットが多い。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
6
1
事例1-3
企業の進出・投資
パートナーとなる現地資本をどのように探すか
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
インドネシア進出に当たり、パートナーとなる現地資本をどのように探すか分
からない。
B.対処概要
まず、インドネシア進出に当たり、販売先をどのように考えるのかによって、
パートナーの必要性を検討する必要がある。以前は現地資本との提携が義務付け
られていたが、現在では、製造業の場合、外資 100%でも会社設立が可能となっ
ている。今まで労務・総務面や、財務面、地元政府との折衝におけるサポートを
期待するため、現地資本との提携を考えていた傾向もあるが、現在では日系企業
向けのサポートをする企業が数多く存在するため、あえて現地資本と提携するメ
リットはない。
むしろ、現地資本との提携は、販売面でのサポートが得られる場合に限定すべ
きと考える。例えば、ほぼ製品全量を輸出する場合、もしくはインドネシア国内
向けであっても、販売先が日系企業の場合、あえて現地資本と提携を組む必要は
ない。
一方、インドネシア国内向けの製品を製造するために投資する場合、販路の確
保が最も大切であると考えられるので、この場合、例えば今まで自社製品の
Distributor として起用していた現地資本又は自社製品の販売に当たって有効と
7
1
企業の進出・投資
思われるDistribution Network を既に持っている現地資本などが提携相手として
適している。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
8
1
企業の進出・投資
1 企業の進出・投資 関連解説
新規進出、投資家が考慮すべきインドネシア国内の法律には、主に次のような
ものがあります。
①外国資本投資法(1967 年法律第 1 号)
②国内資本投資法(1968 年法律第 6 号)
③会社法(1995 年法律第 1 号)
④税法(2000 年法律第 16、17、18、19、20 号)
⑤共同所有に関する 1994 年政令第 20 号
(出典)http://www.asean.or.jp/invest/guide/indonesia/1-03.html
操業開始後にかかわってくる経済法令としては、次のものが重要です。
①税法
②労働法
③独占禁止法
(出典)「インドネシアの投資制度 -ジョイン事業調査報告書-」
日本貿易振興会 投資交流部
各法律は、次のウェブサイトを参考にしてください。
税法
http://www.asean.or.jp/invest/guide/indonesia/1-03.html
http://www.jjc.or.id/syokokaimnalmokuji.html#zeisei
労働法
http://www.jjc.or.id/roudou/roudouindex.html
独占禁止法
http://www.jjc.or.id/syokokaimnalmokuji.html#dokusen
9
1
企業の進出・投資
1.1
関係法令
(1)株主総会
株式会社法第 66 条
第1項 取締役会は年次株主総会を開催し、
会社の利益のために一般総会を開催で
きる権限を有する。
第 2 項 第 1 項の株主総会は、正当な議決権を有するすべての株式の 10 分の 1 を
連帯して代表する一名あるいは複数の株主、
又は会社定款が定める場合に
は 10 分の 1 より少数の株主の請求に基づき開催することができる。
第 3 項 第2 項の開催請求は理由を付した書面をもって取締役会あるいはコミサリ
ス会に提出する。
第 4 項 第 2 項の株主総会では第 3 項にある理由に関連した問題についてのみ討議
することができる。
(出典)「中小企業投資促進マニュアル」
http://www.jjc.or.id/shokokai/mnal605.html
(2)解散
株式会社法第 114 条
会社は以下の理由により解散する
第 1 項 株主総会の決議
第 2 項 定款に定めた存続期間が終了
第 3 項 裁判所の決定
(出典)「中小企業投資促進マニュアル」
http://www.jjc.or.id/shokokai/mnal609.html
(3)進出
94 年大統領令第 20 号により、外国企業はインドネシア進出にあたって、①イ
ンドネシア企業との合弁(外資の出資比率は最大 95%)
、あるいは②外資 100%出
資、のいずれも選択できる。
外資 100%を選択した場合は、操業開始後 15 年以内に持株の一部を直接譲渡ま
10
1
企業の進出・投資
たは証券市場を通じて、インドネシアの個人又は法人に譲渡することが義務付け
られているが、その比率は明示されておらず、株主間の合意で決定すればよいと
されている。
(出典)国際機関アセアンセンター「インドネシア投資ガイド」
1.2
インドネシアにおける企業
(1)企業の資本形態
2004 年の上場企業(233 社)については、華人系企業が全体の 63%を占めてお
り、外資系企業が 20%、プリブミ系企業が 10%、政府系企業が 5%、インド系企
業が 2%と続いている。
(2)インドネシア進出日系企業数
企業数:1,028 社
企業名:トヨタ自動車、ホンダ技研、三菱自工、松下電器産業、日本電気、帝人、
花王、味の素、ヤクルト、日清食品、旭硝子、三菱倉庫、UFJ 銀行など
(2005 年 4 月時点)
(出典)http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=01
11
2.人の募集・採用・定着
2 人の募集・採用・定着
事例2-1
労働者をどのように募集したら良いか分からない
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
インドネシアに現地法人を設立したが、工場にて働く労働者をどのように募集
したら良いか分からない。
B.対処概要
最も多く用いられる手段としては、新聞広告を出して募集すること及び各地方
政府の内部にある労働局の職業紹介所を利用することの 2 つのやり方がある。新
聞広告の場合、応募数が多くなり、書類選抜を行うのに時間と手間がかかり過ぎ
ることもある。職業紹介所を利用する場合は、特に地元周辺の労働者を募集する
時に便利であるが、この職業紹介所のデータベースは常に最新のものとはなって
おらず、応募者が既にほかの会社で勤務していたという事態が発生するので、注
意を要する。
日系企業としては、まず核になる従業員(スーパーバイザークラス)を雇用す
ることをお勧めする。その場合、日本にて研修を行ってきた労働者が最も適して
おり、そういった研修生を雇用する企業が多い。もちろん日本にて良い収入を得
た経験があるため、インドネシアの新工場での給与に満足のいかない研修生もお
り、研修生すべてに問題がないとは言えないが、採用に当たっては、面接などを
通じて十分に本人の能力・性格とともに給与面での確認を行うべきである。
(IMM
Japan[財団法人中小企業国際人材育成事業団]などインドネシアから日本に研修
15
2 人の募集・採用・定着
生を受け入れている機関を通じて募集するのが良い。
)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.まずは、会社の核となる財務・経理部長及び人事・総務部長に優秀な人材
を採用することが肝要である。これら人材の募集に当たっては、コンサルタ
ント会社や、人材派遣会社からの紹介を利用することが良いと思われる。
2.先に採用した人事・総務部長を中心に従業員の採用を進めることになるが、
100%人事・総務部長を信じるのではなく、時に応じて工業団地管理会社や同
業他社、近隣で既に操業されている企業などから、経験談や最新の情報を得
ておくことをお勧めする。
3.応募者が日系企業に勤務しており、まだ退職していないにもかかわらず、
応募してくるケースがよくある。こういった場合、通常日系企業間では、従
業員の引き抜きを行わないという暗黙の了解があるので、できれば採用を決
定する前に、当該日系企業に対して問い合わせを行い、採用する場合は事前
に通知をしておくことが良い。
4.優秀な人材と判断した場合でも、過去に数社転職をしている場合は、それ
ぞれの会社にて問題を起こして解雇されている場合もあるので注意が必要で
ある。こういった場合、例えば工業団地管理会社に人材の照会を行い、過去
の評判を事前に確認しておくことをお勧めする。
16
2 人の募集・採用・定着
事例2-2
新規社員雇用時の問題
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1994 年 4 月頃
3.体験の際の職種・職務
代表取締役社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ
A.困難事例の概要
会社を創業して初めて新規社員(ワーカー)を雇用する際、ペーパーテスト・
面接をすべて現地の協力者に任せて行った。その結果、ペーパーテストに合格し
た社員をすべて雇用することとなったが、後に多くの問題が起こった原因は、す
べて最初に雇用した一部の社員による扇動であった。
B.対処概要
社員面接時には私も同席していたが、ただ同席をしていただけで、言葉も分か
らず、インドネシア人男性の顔はすべて同じに見えた。よって、すべては現地の
協力者の指導の元で行われ、一番大事な社員の雇用が人任せであったことに問題
があった。
新規投資を行う場合、まずはインドネシアに慣れること。日本人の場合は社員
面接時にはある程度人柄が分かるようになることが必要だが、慣れることによっ
てインドネシア人の人柄が分かるようになると思う。また言葉を少しでも話せる
ことで、話し方や言葉遣いなどにより人柄が分かるようになる。
当社の場合は、その後社員の雇用を日本人の指導の元で行い、他人には任せな
いようにした。
17
2 人の募集・採用・定着
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
新規投資する場合、日本人担当者を早めにインドネシアに派遣し、インドネシ
アに慣れさせること、言葉の勉強などをさせることが大事ではないか。JJC
(Jakarta Japan Club)などにインドネシア語の勉強会など色々な形で勉強がで
きる環境がある。よろずインドネシア(http://yorozu.indosite.org/)なども参
考にしたら良い。
18
2 人の募集・採用・定着
事例2-3
日本への研修出張後、
転職をにおわせ昇給要求をしてきた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2005 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
担当役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ市
A.困難事例の概要
生産管理システム構築のため、試用期間中だった社員を本採用に替え、日本の
本社に出張させて、研修も兼ね開発に参加させた。
出張を終えて帰国する直前に、非公式ではあるが、給料を上げてもらえないか
との相談があった。また帰国直後、日本での研修の修了証明書を欲しいとのメー
ルが送られてきた。
B.対処概要
なかなか飲み込みも良く、システム構築に十分活躍できる社員であり、辞めら
れるのは痛い。といって出張から帰り、要求すればすぐ給料が上げてもらえると
いう先例を作るのは良くないと考えた。
また日本出張中に親しくなったとはいえ、
現地責任者の頭越しで本社の幹部と交渉するという先例を作るのも良くないと考
え、現地責任者と連絡を取りながら次のように対応した。
昇給の話については、差しでざっくばらんに話をした。
「何で自分が選ばれたの
か。
」との話に対しては、
「本業務に関する能力・意欲もあると思われたから。
」と
答えた。
「給料は前の会社に比べてもずっと安いから上げてもらえるか。
」
との話に対し
ては、
「試用期間を繰り上げて本採用にしたばかりであり、まず日本の研修の経験
19
2 人の募集・採用・定着
も踏まえて仕事の実績を上げてから、現地のボスと話しなさい。
」と答えたら一応
納得した。
証明書の件は、
「講習会ではなくあくまで業務出張であり、修了証明書を出すよ
うな話ではない。ただし将来円満に退社する際は、会社からの勤務実績証明書に
日本出張のことを記載する。
」とメールで回答した。本人からは、
「会社を今辞め
る気はなく、出張前に今後 2 年間は辞めないと約束をしているので心配しないで
くれ。
」との返事があった。この約束に関しては現地責任者から聞いていたが、あ
えて当方からは触れなかった。
その後は落ち着いて仕事をしており、
辞めるとか給料アップの話は出ていない。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
この問題はなかなか難しい。話を正面から受け止め、かつ会社側の立場を説明
し、毅然とした対応をすれば、むやみに辞めていかないと思う。
今回のケースでも、出張に出す前に帰任後 2 年間は辞めないとの約束をさせて
おいたことが、法的効力はともかく、本人の自覚と拘束力にそれなりの効果があ
ったようだ。
一方 Job-Hopping(転職)はある程度覚悟せざるを得なく、代わりの者でも仕事
ができる体制を作って、辞められても大丈夫なようにするとともに、社員に足元
を見られないようにしていくしかないと思われる。
20
2 人の募集・採用・定着
事例2-4
経理マネージャーを雇ったが能力不足だった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
担当役員
4.場所(州または都市)
ブカシ市
A.困難事例の概要
会社設立時は、経理・税務処理を社外のコンサルタントに任せていた。実質操業
が始まるのに合わせ、社内経理体制を整備するために、公募で経理マネージャー
を雇い入れた。
売り込みは、それまでも外資系(韓国系)の会社に勤め、経理・税務事務に精通
しているということであった。直接話をしても信頼できそうで、かつ実務的にも
通じているように思われた。本社から経理担当を派遣し、現地会社としてやるべ
き業務内容を打ち合わせた。
しかし 2~3 ヵ月経過しても要求した資料が出てこないので、
直接打ち合わせて
みた。いろいろ言い訳をするのはともかく、会計の常識的事項が分かっていない
ことが判明し、経理マネージャーとしては不適格と判断された。
B.対処概要
経理実務担当者として 20 代半ばの女性を雇用してマネージャーの下に付けた。
この女性はスウェーデン系の会社に勤めていたとのことであった。話をしても反
応が早く、会計・経理・税務の実務も良く分かっているようなので、彼女を中心
に回していく方針にした。しかしマネージャーに遠慮してか、仕事がやりにくそ
うであった。
マネージャーの試用期間の期限が近づいたため、その上司であり人事も担当し
21
2 人の募集・採用・定着
ている総務部長は、試用期間を延ばして様子を見たいといったが、本採用せずに
試用期間切れで辞めてもらうことにした。ただ、期間切れの直前であり、予告期
間がなかったので、1 ヵ月分の給料は支給するが出社には及ばないということに
した。
この決定を総務部長経由で本人に伝えたところ、
特に不満もなく退社した。
女性社員をアシスタントマネージャーにし、
アシスタントを付け経理を任せた。
またコンサルタントに任せていた業務を自社で行う予定も、若干先延ばしにする
ことにした。その後、経理業務はスムーズに行われており、近いうちに自社で実
施する見込みである。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
インドネシアに限らないが、専門家の採用は難しい。経験、知識に関する本人
からの情報は当てにならない。言葉を知っているだけでも、さも自分でしていた
ような話をする傾向がある。
公募で採用する際にはなかなか見抜くことができず、後で失敗と分かることに
なる。また、当社の場合もそうであったが、日本からの派遣社員が技術畑で経理
に疎い場合などは、見抜けないまま任せきりになり、大きな失敗につながる危険
性がある。相当個人差があるので、実際やらせてみて判断せざるを得ない。年齢、
性別、経験年数もあまり関係なく、個人差が大きい。
ただし、あまり若い人にマネージャーなどの肩書きを与えると、全体のバラン
スが悪くなる。また後で昇格等が難しくなり、かえって不満を残すので、この辺
りは工夫するしかない。採用する時も、試用期間を長めに契約しておくと良い。
また試用期間の延長もできる。
仮に良くないと思ったら早め、特に試用期間中に解雇するのが良い。試用期間
中なら解雇は問題ないが、試用期間を超えると解雇は非常に難しくなる。
ただ経理担当者というのは専門性があり、信頼できる人を常時確保しておくの
は、インドネシアでは非常に難しいようである。
22
2 人の募集・採用・定着
事例2-5
派遣社員の正式雇用に伴う問題
関連情報
1.企
業
の
業
種
サービス業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1991 年 3 月~1991 年 7 月頃
3.体験の際の職種・職務
人事・総務課長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
前任の日本人責任者が、派遣会社と契約を締結し、数名の運転手を派遣社員と
して当社の社有車の運転に従事させていた。そのうちの一部が、派遣会社との雇
用契約終了に伴い、当社の正式社員としての勤務を希望したので、彼らとの間に
雇用契約を締結し、当社の社員として採用した。法律的には問題ないと思われた
が、本件に対して派遣会社の社長から、道義に反する営業妨害だとして警察沙汰
にされ、その解決に忙殺された。
B.対処概要
1.派遣会社の社長と直接話し合い、何が問題なのかを明確にした。
2.派遣会社との契約書などに基づき、顧問弁護士のアドバイスを得ながら、
法律問題などをチェックした上で、金銭による円満解決を目指した。
3.将来この問題の蒸し返しがないように配慮した同意文書を作成し、双方署
名を取り交わした。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.コミュニケーションを円滑にするためには、現地語、英語の習得に努力す
る。
2.インドネシアの法律問題については、常日ごろから信頼できる顧問弁護士
23
2 人の募集・採用・定着
と関係をつくっておき、個別の問題については弁護士によく相談し、問題の
解決に努める。
3.最終的には、どのような場合も合意文書を作成することとし、後日のトラ
ブルが起こらないように対処する。
4.インドネシアでは、日本のようにスピーディに事が進まないのが日常なの
で、解決を急ぎ、焦って相手の術中にはまらないように注意する。
24
2 人の募集・採用・定着
事例2-6
地元労働者を雇用するように
村長から圧力がかかった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
労働者を募集していることを聞きつけた近隣の村の村長が、村からの人材を採
用するよう要求してきた。断ると操業を妨害されるケースもあったと聞くので、
どのように対応してよいのか困った。
B.対処概要
近隣の住民との協調関係は、避けては通れないものであり、近隣住民の採用に
ついてはむしろ、積極的に対応する方が得をする場合が多い。たとえば近隣住民
を積極的に採用している企業では、繁忙時に残業を実施せざるを得ない場合、家
が近く、通勤に時間が取られない近隣の従業員に残業を頼みやすいことがあり、
また残業時の交通費がかからず、コスト面でもメリットがあるとの話もある。
近隣住民採用に当たっての問題点としては、能力的に採用基準を満たしていな
いため採用できないことが多いという点が挙げられる。能力的に劣る労働者を無
理に雇用する必要はないが、村との協調を考えた場合、まず少なくとも採用試験
は受けさせ、他の労働者と同じ土俵の上に上げるということが必要。その上で、
その試験の結果を客観的に判断し、不採用の場合はその理由を本人及び村の関係
者に伝えることが必要である。
(大抵の場合、客観的な事実があれば、無理に採用
を要求することはない。仮に操業妨害等の行為が行われた場合は、工業団地管理
25
2 人の募集・採用・定着
会社や地元警察、労働事務所に報告し、アドバイスをもらう。
)
近隣住民を採用した後に発生する問題としては、その労働者が問題を起こした
際に解雇しにくいことや、一度採用してしまうとその村の「採用枠」のようなも
のができ、ある一定の人数は村から採用せざるを得ないようになってしまうなど
の問題がある。
労働者の解雇については、近隣住民だからという理由で区別するのではなく、
問題を起こした労働者に対する対処方法をきっちりと確立し、日ごろからそれを
組合(もしくは、従業員代表)と話し合い、お互いに理解しておくことが大切で
ある。
そういったシステムを確立しておけば、
近隣住民だから解雇できないとか、
その補充に同じ村の人間を雇えといった要求に対しても、きちんと対応できるこ
ととなる。
近隣住民に対しては、あいまいな態度で協調関係を築くのではなく、できるも
のはできる、できないものはできないと毅然とした態度で交渉すべきである。そ
れでも問題が発生した場合は、問題が大きくなる前に、工業団地管理会社と連絡
を密にして情報交換を行い、必要に応じて地元警察、労働局等の協力を仰ぐこと
をお勧めする。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
近隣住民や村長などとの話し合いに際しては、日本人は言葉の問題もあり、参
加できない場合が多いので、まずは人事・総務担当のローカル・マネージャーを
教育し、会社としての方針をはっきりと伝えることができるよう準備しておくこ
とが必要である。また、マネージャーを通じて交渉の経緯を把握するとともに、
自らも必要に応じて参加することをお勧めする。
26
2 人の募集・採用・定着
事例2-7
採用強要のデモをかけられた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年 10 月頃
3.体験の際の職種・職務
担当役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
A.困難事例の概要
住民が「地域住民を雇用せよ」とデモを組み会社に押しかけてきた。
B.対処概要
村長を訪ねて相談した。当社の実情を説明し、理解と協力をお願いした。
当社の工員は技能を要求され、地域住民を簡単に雇うわけには行かない。しか
しオフィスボーイは単純な仕事でもあるので、地域住民から雇う用意がある旨を
話し、村長の推薦する人を雇いたいから良い人を紹介して欲しいと頼んだ。
村長の推薦する人をオフィスボーイとして雇い、働きぶりが良いので数ヵ月後
工員として正式雇用した。補充のオフィスボーイもまた村長に推薦してもらった
人を採用した。このようにして年 1~2 名は、村長経由で雇用している。
これによりデモ等に対しても、すべて村長が窓口になって対応してくれるよう
になり、地元ともスムーズにいっている。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
進出当初より地元との良好な関係を作っておくことが大事である。
これは労働、
雇用問題だけでなく、何かの原因で治安が悪化した時にも有効であり、安全対策
面からも重要である。
村長に話を通し、面子を立てておくといろいろ面倒を見てくれる。進出当初と
27
2 人の募集・採用・定着
その後も、
レバラン等の節目は定期的に若干の寄付やあいさつをしておくと良い。
28
2 人の募集・採用・定着
2 人の募集・採用・定着 関連解説
2.1
試用期間
労働法第 60 条
第 1 項 期間を限定しない労働契約は、最長 3 ヵ月の試用期間を条件付けること
ができる。
試用期間の条件は、労働契約に記載されなければならい。口頭の場合は、
労働者に通告されなければならない。
(出典)http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0209.html
2.2
募集
(1)募集方法
ローカル社員の採用について
広告 50%、口コミ 37%
(出典)アジア日系企業における現地スタッフの給与と待遇に関する調査 2004
日経シンガポール(2003.9-10 に調査実施 1266→68 社 回答率 5.4%)
2.3
雇用形態(有期労働契約社員)
(1)関係法令
労働法第 56 条
第 1 項 労働契約は、期間を定めて、又は期間を定めずに、締結できる。
労働法第 59 条
第 1 項 期間に定めのある労働契約は、特定の種類と性質の仕事又は活動内容が
一定期間中に終了するであろう特定の仕事についてのみ作成すること
ができる。
すなわち、
a. 1回限りで完了するか、又は臨時的な仕事
29
2 人の募集・採用・定着
b. 短期間に完了し、最長でも3年で完了するであろう仕事
c. 季節的な仕事
d. 新製品、新規活動、又は調査実験段階にある新規製品に関連する仕事
第 2 項 期間に定めのある労働契約は、永続的な性質の仕事について交わすこと
はできない。
(法解釈)永続的な性質の仕事とは、継続して行われ、途切れることなく、期間
を限定することなく、一つの会社における製造活動の部分となり、季節的な職
務でないものをいう。
第 3 項 期間に定めのある労働契約は、延長又は更新することができる。
第 4 項 期間に定めのある労働契約の契約期間は、最長で2年とし、その後 1 回
に限り延長することができる。延長の期間は最長 1 年とする。
第 5 項 期間に定めのある労働契約について、その契約期間を延長しようとする
雇用主は、労働者に対して、現契約の終了期限の少なくとも7日前まで
に、その意向を書面で示さなくてはならない。
第 6 項 期間に定めのある労働契約の更新については、旧契約の終了日から 30
日の猶予期間を過ぎた場合にのみ実施でき、
更新回数としては 1 回のみ、
最長 2 年間を限度とする。
第 7 項 第 1 項から第 6 項の各項に述べた規定を満たさない、期間に定めのある
労働契約については、期間の定めなき労働契約と見なす。
第 8 項 本条文に記載以外の詳細については、別途大臣決定でこれを定める。
(出典)http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0209.html
2.4
雇用形態(派遣社員)
(1)関係法令
労働法第 66 条
第 1 項 「人材派遣会社(Agent=Perusahaan Penyedia Jasa Pekerja)
」からの
労働者は、派遣先会社の主要業務や、生産工程に直結する業務に利用す
30
2 人の募集・採用・定着
ることはできない。ただし、補助業務や、生産工程に直結しない業務を
除く。
第 2 項 補助的な業務又は生産工程に直結接関係しない業務への人材派遣は、下
記基準に合致しなくてはならない。
a. 労働者と人材派遣会社との間に、雇用関係が存在すること。
b. 上記a号に述べる雇用関係に該当する労働契約とは、第 59 条に述べ
た条件を満たした期間に定めのある労働契約又は両者の署名を付した
書面で締結された期間に定めのない労働契約である。
c. 賃金・福祉・労働条件の保護や、労使紛争に関する責任は人材派遣会
社にある。
d. 人材の派遣先会社と派遣元会社との間の契約は、書面で締結され、こ
の法律の関係条文の内容を記載していなくてはならない。
第 3 項 人材派遣会社は法人格を有し、労働分野に責任を負う機関から免許を受
けていなければならない。
第 4 項 第 1 項、第 2 項の a・b・d の各号、第 3 項の各規定が満たされない場合に
は、人材派遣会社と労働者との間の雇用関係は、派遣先会社と労働者と
の間の雇用関係に切り替わることとなる。
(出典)http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0209.html
31
3.賃金・人事考課・福利厚生
3 賃金・人事考課・福利厚生
事例3-1 賃金問題と最低賃金との兼ね合いで生じた問題
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
通例 4 月に昇給が実施されるに当たり、従業員代表との交渉期間の段階で、従
業員側は日本から新規の取引希望会社がインドネシアに来ることを知った。その
朝、突然の違法ストライキが決行され、即座の結論を要求された。
ストを回避し、新規取引先とのビジネスを成功させるために取った手段は次の
とおり。
B.対処概要
1.従業員の要求は何の根拠もなく、
「現行の倍額に給与を増やせ。
」とのこと。
早朝よりの交渉だったが、従業員は日本よりの来客を見越して話し合いに応
じようとしないので、私も時間を稼ぐこととした。
そのうちにお客様が到着され、スト実行中の人垣を分けて社内に案内する。
ビックリしたのは来客であるが、インドネシアでは日常茶飯事だと説明し納
得いただく。
2.商談途中で数回の交渉を持ち、最終的に現行の 30%増額で話し合いが決着す
る。同時に従業員は即座に通常の作業に従事した。
3.スト決着と新規のビジネスも確定し、やっと落ち着いたのはそれからしばら
くした後だった。
4.それからは何回か従業員代表とコミュニケーションを持った中で、双方が納
35
3 賃金・人事考課・福利厚生
得できる今後の昇給基準ができたが、異例の内容となった。
5.その異例の内容とは、インドネシアは毎年の最低賃金が政府より発表される
が、その最低賃金が確定したときに、前年の最低賃金との差額分を社員すべて
に平等に加えることにより昇給するというもの。ちょうどこの時は 1998 年 5
月暴動が収束し、国内はガタガタして安定していない時だった。最低賃金も急
激に上昇した。しかし今になって考えれば、会社側はラッキー、社員側はアン
ラッキーな結果となった(注参照)
。
6.目先のことだけ考える人々を説得することの難しさと簡単さを知った。
7.現在まで、この方法で毎年 1 月(2002 年より改定時期が変更になった。
)の
昇給計算が簡単で本当に助かっている。
どこの会社も昇給前の交渉が長引き、頭の痛い時期だが、当社は全く簡単で
ある。
従業員より何の苦情も要求もなく、私自身が一番驚いている。
8.インドネシアは男女平等なので賃金も同一である。
1998 年スハルト政権が崩壊し、2001 年までは激変の期間だった。
(注参照)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.インドネシアの賃金体系
一般的な体系としては、基本給、能力給、職務手当、家族手当、交通費、皆勤
手当、医療補助、残業代などから作られている。
2.原則的には月給制が多い(週給制もあり)
。
3.ボーナスは必ずしも必要ではないが、インドネシア特有の THR(レバラン手
当)を最低1ヵ月分支給するよう政府の通達があり、義務付けられている。
4.日本と違ってインドネシアでの支給は額面であり、所得税などは会社負担が
通例となっているようだ。
色々な問題に直面したときは、自分だけで考えず、周囲の日系企業に相談して
36
3 賃金・人事考課・福利厚生
みるのが一番大切かと考える。
当社は日系企業が 100 社以上稼動している工業団地に入居しているので、常に
情報が入り、とても助かっている。
(注)1997 年のルピアの対ドル換算レート(年平均)は 2,347 ルピア/1 米ドルで
あったが、通貨危機により 1/4 にまで減価したため、最低賃金が大幅に引き上げ
られたものの、ドルベースではむしろ減少したため、賃金コストが減少した会社
もあった。
最低賃金の推移(ブカシ県)
年
最低賃金
引上率
Rp/US$
最低賃金(ドルベース)
1998 年
Rp.172,000.
9,875
17.4 US$
1999 年
Rp.230,000. 33.72%UP
7,853
29.3 US$
2000 年
Rp.344,000. 49.57%UP
8,514
40.4 US$
2001 年
Rp.417,000. 21.22%UP
10,211
40.8 US$
2002 年
Rp.575,000. 37.89%UP
9,700
59.3 US$
2003 年
Rp.631,000.
9.74%UP
9,200
68.6 US$
2004 年
Rp.670,000.
6.18%UP
9,290
2005 年
Rp.710,000.
5.97%UP
経済危機前の最低賃金(ジャカルタ)は次のとおりである。
年
最低賃金
1996 年
Rp. 156,000.
1997 年
Rp. 172,500.
引上率
10.6%UP
37
Rp/US$
最低賃金(ドルベース)
2,347
66.47 US$
2,952
58.43 US$
3 賃金・人事考課・福利厚生
事例3-2 インドネシアにおける人事制度改革
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年頃
3.体験の際の職種・職務
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
A.困難事例の概要
インドネシアに進出して数十年になる当社が、駐在員事務所から現地法人への
ステータス変更を機に、それまでの年功序列的な人事評価制度をやめて、ジョブ
サイズ及び成果主義を反映した報酬体系に変更しようとした際に困難が発生した。
新人事制度導入に際しては、日本からコンサルタントを起用し、検討メンバー
には日本人駐在員数名と労働組合幹部数名を選出し、事務局として人事部が取り
まとめるというフォーメーションで半年間をかけて執り行った。
もちろん、コンサルタントの新しい方式をそのまま適用するのではなく、その
時の現状をある程度ベースにして、
諸事情を加味しながら作成するやり方であり、
そのために結成されたのが前述の検討委員会である。
まず新制度のコンセプト概要を説明する。
1.職員は「秘書」
、
「総合職」
、
「課長代理」
、
「課長」
、
「部長」
、
「役員」などに分
類される。それぞれ個人の現在行っている仕事をジョブサイズという一定の基
準で測り、どの分類に属するかを決定する。
2.給与はジョブサイズごとにレンジが決められており、原則としてその範囲で
の処遇となる。フリンジベネフィット(付加的給付)に関しても同様である。
3.
昇給の交渉は世間相場をベースにした各職務レンジの中央値の交渉となるが、
それぞれのレンジ内での実際の当人給料の位置関係により、給与の昇給率が変
38
3 賃金・人事考課・福利厚生
わってくる。つまり、例えば秘書クラスでの給与レンジが毎月 100 万ルピアか
ら 150 万ルピア、中央値が 125 万ルピアとした場合、それぞれの実際の給与が
秘書 A=90 万ルピア、B=120 万ルピア、C=130 万ルピア、D=155 万ルピアである
とすると、給与が低いほど実額が上昇しやすく、高いほど上昇しにくくした制
度である。特に枠外の A は枠に入るような高い昇給、D は既に枠をオーバーし
ているので昇給なし。大雑把にいってこのような仕組みである。
4.では前述の D についてはどのように給与が上がるのかというと、基本的には
仕事の内容が変わり、ジョブサイズが高くなることによって設計上のより上の
給与クラスである「総合職」あるいは「課長代理」のレンジになった時に、処
遇が改善されることになる。
ここで長年の歴史がある会社ゆえの問題点がまず発生した。その問題点とは、
長年勤続している秘書に起因するものである。
1.20 年以上勤務している秘書が、歴代派遣員に重宝がられ、各上司から良い評
価を得て、毎年給与の上昇を続け、結果的に現在、一般的なジャカルタにおけ
る秘書給与相場の 3 倍もの高水準の給与になっていた。
2.その給与水準で、現行の課長クラスの給与レンジを超える秘書も存在した。
3.新制度では、仕事の内容が変化し、ジョブサイズが上がらない限り、基本的
に給与水準は今までのように上がらない仕組みである。
4.旧制度のままであれば、現行通り、引き続き昇給が見込めるだろうと判断さ
れた。
5.新制度では、現状の社員をすべてのジョブサイズの分類に焼き直し作業をし
なくてはならなかったが、勤続年数にかかわらず、仕事の内容で職種ごとに分
類されるため、特に新人秘書と同じ分類の「秘書」に組み込まれた長老の秘書
の理解を得られなかった。
6.前述のとおり、旧制度で長年ぬるま湯に浸かってきた秘書が多く、ほとんど
の秘書がレンジの上あるいはレンジ外に位置した。
39
3 賃金・人事考課・福利厚生
以上のように、居心地の良かったはずの会社に突然牙を向けられた形になり、
その処遇を巡って、秘書に理解が得られなかったことが問題点としてクローズア
ップされた。
更なる問題点の発生
結論としては、メンバーである組合幹部と策を練りつつ、会社側として譲歩で
きるところは譲歩して最終案を作成した。しかし、本件は当社の組合との労使協
定 ( CLA:Collective Labor Agreement [ 労 働 協 約 ]、 イ ン ド ネ シ ア 語 で は
KKB[Kesepakatan Kerja Bersama])改定に当たるため、組合員の最終投票を受け
なければならず、決戦となった。結果は CLA の改定有効得票に至らず、会社側の
惨敗であった。組合幹部を通じて、事前にかなりの根回しをしたつもりであった
が、やはり秘書の猛烈な抵抗勢力にしてやられた形となった。
B.対処概要
結論としては、コンサルタントを介してのこの制度は否決されて、白紙に戻っ
た。
このまま旧制度で行くにはあまりにも能がないので、この制度をベースにした独
自の制度を作成すべく、組合員の参加を募集してゼロからスタートし、半年以上
かかったが、それなりの成果報酬ベースの制度が完成した。
会社側もかなり譲歩したが、適用の過渡期の特別措置などを含む折衷案で折り
合った結果となった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.インドネシア人には理詰めの交渉は通用しない。
2.インドネシアの投資環境悪化の一つに人件費アップがあるが、安いと思って
毎年繰り返した賃金アップがこのような形で跳ね返ってきたのは、我々進出企
業の功罪。
40
3 賃金・人事考課・福利厚生
3.インドネシアの悪法の一つに、一旦与えた給与は下げられないという考えら
れない考え方がある。これも今後の投資の阻害要因の一つ。
4.既得権という考え方が根付いている。
5.労働組合、CLA を侮るべからず。
41
3 賃金・人事考課・福利厚生
事例3-3
従業員の賃金査定に際して
関連情報
1.企
業
の
業
種
運輸業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年 12 月~2004 年 1 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の管理職
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バリ島デンパサール
A.困難事例の概要
年度末に従業員の賃金の見直しを行い、改めて各従業員の賃金を査定した。そ
の後、新年度に支払われた賃金の内容についての反響が予想以上に大きかった。
従業員同士での比べ合いや、賃金の内容に納得のできない従業員に対しての個別
の対応などで、業務に支障を来しそうになるまでに発展してしまい、事態の収拾
に苦労した。
B.対処概要
「賃金査定の基準については勤続年数や年齢のみが考慮されるはずではない
か。
」と考えている従業員も多く、従業員の間でも賃金査定の基準に関しての理解
があいまいであると思われたので、各従業員に個別面談を行い、改めて査定基準
を説明した上で他の従業員との賃金の違いが生じる理由等も具体的に話して理解
を求めた。
その結果、従業員の理解もおおむね得ることができ、今後はさらに明確な形で
賃金査定の方法を会社規則(Peraturan Perusahaan)に明記して行うことなどを従
業員との話合いで決定して問題の拡大を回避した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.現地従業員同士では、賃金等の個人的な情報でも、かなりオープンに互い
42
3 賃金・人事考課・福利厚生
が教え合ったり、また時にはその情報が全く事実と異なったりするというこ
とを事前に知っておくこと。
2.問題が大きく発展しそうな雰囲気を感じたら、それを扇動するおそれのあ
るキーパーソンを早い段階で把握して、個別に十分なコミュニケーションを
図ること。
3.会社規則については、コンサルタント等の専門家からのアドバイスも参考
にして、問題が予想される個所については現地人マネージャーの意見も参考
にしながら細かく明記し、さらにそれが現行の法規に沿った内容であるか確
認する必要がある。
また、平時においても、普段からミーティング等でできる限りのコミュニケー
ションを積極的に図り、日頃から従業員とは良い雰囲気での関係を保つことも大
切である。そしてコミュニケーション不足により発生するトラブル、時としてお
互いの誤解から生じるトラブルを防止することが重要である。
43
3 賃金・人事考課・福利厚生
事例3-4
福利厚生面での要求の変化
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
創業してから 10 年を超えるが、
従業員の高齢化とともに福利厚生面での要求が
変化してきた。創業開始当時は従業員も若く、賃金も低かったので、残業を好ん
で実施したが、10 年も経つと、従業員にも家族を持つ者が多くなり、福利厚生面
での要求は、労働時間の短縮や、休暇の増加、家族も含めた医療面での援助等に
変わってきた。
B.対処概要
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
給与面だけではなく、福利厚生面でも将来、5 年後、10 年後を見据えた人事制
度の確立が望ましい。創業開始時はなかなか手が回らず、そういった将来の問題
を考慮した人事制度まではできないのが実態。時間がかかってもよいので、でき
るだけ早い段階で人事制度の確立を目指す必要がある。
44
3 賃金・人事考課・福利厚生
事例3-5
インドネシア人の遅刻削減
関連情報
1.企
業
の
業
種
卸売・小売業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 5 月~2003 年 6 月頃
3.体験の際の職種・職務
財務経理・人事総務担当取締役
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
ジャカルタ赴任直後から、インドネシア人は時間の感覚がなく、遅刻が当たり
前で遅刻削減は困難と聞いていた。
朝の出勤時の遅刻、
昼食後の遅刻共にである。
B.対処概要
最初からギブアップせずに、
「なぜ毎日のように、1 週間に 3 回も」などと遅刻
者を呼びつけて注意を繰り返した。また、インドネシア人を使うボス(日本人)
が手本を見せること(遅刻しない)も非常に重要である。
考課制度があったので、年間で遅刻常習者は、昇格拒否、考課点の減点等を行
い、考課者にも遅刻対策を浸透させた。
自分の直接の部下には、考課面談時にも遅刻の話をし、遅刻の多い部下につい
ては考課点に反映させた。
(日常注意はしているが、考課にも反映することを意識
させる目的。
)
ジャカルタの交通事情は良くないので、時々の遅刻はありえるが、それ以外は
本人の怠慢との認識をしっかりと持たせることが重要である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.まず日本人がしっかりと見本を見せること。
2.インドネシア人も、言えば(理解できれば)遅刻をしなくなる。
45
3 賃金・人事考課・福利厚生
(ジャカルタでの交通事故・渋滞等による特殊事情による若干の回数以外。
)
46
3 賃金・人事考課・福利厚生
3 賃金・人事考課・福利厚生 関連解説
法令で義務付けられている 2 つの手当(時間外手当、レバラン手当)と日系企
業でよく用いられているものを紹介する。特に先の 2 つは、注意が必要である。
3.1
時間外手当
(1)時間外労働賃金の計算の関係法令
労働移住大臣決定 No.KEP-102/MEN/VI/2004 6 月 25 日(7098I/7099-7100E)
内容:改正労働法(2003 年第 13 号法)第 78 条第 4 項の実施細則。
① 時間外労働とは、定められた就業時間(通常、週 6 日労働の場合は 1 日 7
時間、週 5 日労働の場合は 1 日 8 時間、週ではいずれも 40 時間)を超えた労
働、及び休日や政府が定めた祝祭日の労働を指す。
② 時間外労働は原則、1 日 3 時間、週 14 時間まで。
③ 労働者に時間外労働をさせるには、雇用主からの時間外労働命令とこれに対
する当該労働者の同意を書面で個別に得ることが必要。
④ 時間外労働の実施には、時間外労働賃金の支給、十分な休憩時間の設定、
1400kcal 以上の食・飲料の提供(時間外労働が 3 時間以上に及ぶ場合、換金
不可)が義務付けられる。
⑤ 時間外労働賃金の計算には、月の賃金の 173 分の 1 を 1 時間当たりの基礎賃
金として利用。平常の労働日に行われた時間外労働の場合は、時間外労働開
始から 1 時間は同基礎賃金の 1.5 倍、2 時間目以降は 1 時間当たり同 2 倍の
時間外労働賃金を支給する。休日や祝祭日の労働には、労働時間を 3 段階に
分け、それぞれ 1 時間当たり基礎賃金の 2~4 倍支給するよう定められた。
⑥ 時間外労働賃金の計算について意見の相違が生じた場合は、県/市、州、中
央の労働担当部署に決定を求める。
⑦ 本決定の発効により、関連する旧令、労働大臣決定 No.KEP-72/MEN/1984、
同 No.KEP-608/MEN/1989、労働大臣規定 No.PER-06/MEN/1993 は失効する。
47
3 賃金・人事考課・福利厚生
(出典) http://www.indonesialink.net/indomalco/keizai.php?logno=200412
「月刊インドネシア企業経営 別冊 インドネシアの労働関連法の解説」
発行 PT.Indomalco Info Center
3.2
レバラン手当(THR)
(1)関係法令
労働大臣通達 1994 年第 4 号 No.PER-04/MEM/1994(抄)
インドネシア共和国労働大臣は、
a. インドネシア国民は、各自が信仰する宗教に基づき祝日を毎年祝う、宗教を信
仰する国民であること。
b. 上記の祝日を祝う労働者に対して、必要経費の追加が必要であること。
c. 上記の祝日を祝うために、
経営者が宗教祝日手当を支給することが慣例となっ
ていること。
d. 平穏な事業活動を創造するために、労働者の福祉を向上させ、レバラン手当の
支給に関して大臣通達によって基準を定める必要があること。
を考慮し、会社所属の労働者に対するレバラン手当に関する労働大臣通達を制定
する。
第 1 条 d. レバラン手当(THR)とは、宗教的祝日を迎える労働者及びその家族
に対して、経営者が金銭又はその他の物品などにより支払い義務を負う
ところの労働者の所得を指す。
第2条
第 1 項 経営者は継続して 3 ヵ月間、あるいはそれ以上の勤続期間をもつ労働者
に対してレバラン手当(THR)を支給する義務を負う。
第 2 項 上記第 1 項に述べるレバラン手当(THR)とは、1 年に 1 回のみ支給され
るものである。
第3条
第 1 項 上記第 2 条第 1 項に記載されるレバラン手当(THR)の金額は下記のと
48
3 賃金・人事考課・福利厚生
おりに定めるものとする。
a. 継続して 12 ヵ月、あるいはそれ以上の勤続期間をもつ労働者に対し
ては、賃金の1ヵ月分の金額。
b. 継続して 3 ヵ月以上、12 ヵ月未満の勤続期間をもつ労働者に対して
は、下記の計算式を用いて勤続期間の割合に応じた金額を支給する。
継続期間
× 賃金 1 ヵ月分
12
第 2 項 上記第 1 項に記載する賃金 1 ヵ月分とは、基本給に固定手当を足したも
のとする。
(出典)「インドネシア共和国 労働関連法規集 2003 年度版」
PT.Fuji Staff Indonesia
(2)レバラン手当と賞与
レバラン手当(THR)は賃金 1 ヵ月分が最も多い回答だが(製造業 83.8% 非製
造業 75.4%)、1.1 ヵ月以上のところもある。
(製造業 16.2% 非製造業 24.5%)
定期賞与(THR は含まない)は 7 割から 8 割(75.4%、非製造業 80%)の企業が支
給すると回答し、支給時期はレバラン時期及びその前後となっている。
(出典)日系企業・インドネシア現地社員給与動向 2005 年度版 nna
3.3
賃金査定
日本の雇用体系に即したボーナス制度を導入 68%
能力給導入 46%
施策として「人事管理制度導入」と回答 28%
評価・査定について「公平で透明な評価・効果基準の作成・開示」と回答 45.6%
(出典)アジア日系企業における現地スタッフの給与と待遇に関する調査 2004
49
3 賃金・人事考課・福利厚生
日経シンガポール(2003.9-10 に調査実施 1266→68 社 回答率 5.4%)
3.4
日系企業でよく用いられている手当
出張手当(製造業 88% 非製造業 82%)
食費支給(全体 7 割 製造業 9 割 非製造業 6 割) 現物支給の可能性もあり
通勤手当(全体 8 割 製造業 9 割 非製造業 7 割) 送迎車の可能性もあり
住宅手当(製造業 35% 非製造業 20%) 地方は 50%程度となる
資格・技術手当(製造業 3 割 非製造業 1 割) 外国語、会計、パソコン
その他 皆勤手当、制服手当、慶弔手当、シフト手当、医療手当
(出典)日系企業インドネシア現地社員給与動向 2004 年度版 nna
扶養手当、役職手当、重作業手当、皆勤手当、精勤手当、通勤手当(現地企業調べ)
3.5
社会保障制度
(1)制度の現状
JAMSOSTEK(労働社会保障)の健康維持保障を使わずに、
独自に医療手当を支給し
ているところも多いようである。
実施している福利厚生においても、
地域・産業の別に限らず医療費負担をトップ
に挙げている。
法令により JAMSOSTEK の 4 つの保障のうち 3 つ(労災保障・死亡保障・老齢保障)
は、全企業に加入義務があるが、5%の企業が加入していない。(法令違反,同種の
民間保険加入では免除されない。)
(出典)日系企業インドネシア現地社員給与動向 2004 年度版 nna
3.6
最低賃金
2000 年 9 月の大統領令 226 号により、中央政府の専権的最低賃金の決定権限は
廃止され、2001 年施行の地方自治法に従って、月額最低賃金(UMP)は地方賃金
委員会との協議によって決定されることになった。UMP は 2002 年 1 月に引き上げ
50
3 賃金・人事考課・福利厚生
られたが、2002 年から 2004 年に至る間に大幅に上昇した。(いずれの地域でも 30
から 40%の賃金上昇が見られる。)
(出典)「ARC レポート 2005 インドネシア」 (財)世界経済情報サービス
51
4.能力開発
4 能力開発
事例4-1 保全要員の能力開発
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 4 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン県
A.困難事例の概要
機械工場では設備保全が大きな課題である。そして保全要員の能力開発は生産
要員よりもはるかに困難である。そのため、社内での訓練だけではなく、日本の
親会社へ出張させたり、設備メーカーでの研修に参加させたりするなど、時間と
お金をかけて育成している。
そのような状況の中、せっかく育てた保全員が突然転職してしまった。給料が
2 倍も高いからとのことであった。
B.対処概要
優秀な保全員は高い給料で転職しやすいということは聞いていたので、注意し
ていたが、研修などで他社の友人ができて情報が入ってきたようである。辞めた
彼は保全のリーダーであったので、その代わりとなる者を取引先の自動車会社に
頼んで来てもらうことにした。数人の候補者の中から一番優秀な人を推薦しても
らって採用した。結果的には「インドネシアには数十人に一人、ずば抜けて優秀
な人材がいる。
」と言われるとおりの人材であった。日本の親会社で研修させたと
ころ、親会社の保全員が驚くほど優秀であった。以後、彼をリーダーとして保全
員の教育を社内で行っている。
55
4 能力開発
C.教訓(知っておくべき情報・教訓など)
製造工場にとって設備保全の良否が大きなウエイトを占めている。優秀な人材
を採用できたため、短時間で育成でき、今まで設備の長時間停止はない。
1.
「インドネシアには数十人に一人の割合で非常に優秀な人材がいる。
」と言わ
れるが、取引先など多くのところに声をかけて、その人材を探し出すと良い。
2.せっかく育成した人が転職してしまうのは、ある程度は仕方がない。しかし
中核となるような人は、会社として工夫して離さないようにする。手段として
は給料、ボーナス、職位などのほかに、日本人駐在員が十分にコミュニケーシ
ョンを図ることが重要である。また「結婚して家を持つと落ち着く。
」と言われ
ているので、「ある職位以上の者には家の購入に際し、会社から頭金を貸し出
す。
」という制度を作って持ち家保有率を上げた。
3.保全員の能力開発は、インドネシア人のリーダーを中心に訓練計画を作り、
できるだけ社内で訓練できるようにした。社内だけでは無理な場合のみ、先生
に来てもらうようにした。
56
4 能力開発
事例4-2
役職者の責任追及と社員教育
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2005 年 1 月
3.体験の際の職種・職務
ディレクター
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
パスルアン
A.困難事例の概要
赴任した際、工場内の職位そのものは 8 種類、職位保有者は約 40 名であり、120
名足らずの全従業員数に対し、あまりにも多過ぎた。一応「年功序列的」職位授
与・昇進が行われてきたように思われるが、それまでの昇進制度・給与体系そし
て能力査定があまりにも不明確で、雰囲気に依存し過ぎていると考えられた。
また、赴任当初、在庫帳簿残高と棚卸残にあまりにも大きな差異があり、在庫
違算について、当時の役職者は誰一人として納得のいく説明ができる者はいなか
った。このことは「能力」の問題というより、不正行為が行われていることを物
語っており、当時のマネージャークラスを追及する原点となった。何事において
も、判断が「勘定」ではなく、
「感情」によって支配されていたのである。当然、
是正する必要があった。
しかし、あからさまな解雇・降格を希望するわけでも、また、できるわけでも
なかったため、時間を要することは必至と考えながら、当時の各職位保有者の「能
力開発」と「能力」に見合った昇格・配置転換などと合わせ、職位数・職位保有
者の削減をもくろむこととなった。
案の定、各職位保有者から様々な形で反発を得ることとなった。職位高位者の
中には曖昧な態度で沈黙を保つ者がおり、中級者には他の徒党と共に一種デモの
ような行為を試みようとするグループが発生した。下位職位者や一般ワーカーら
は、上位者の人気投票、下馬評に忙しいといった体たらくであった。長い間、非
57
4 能力開発
常に混乱した時期があり、中には感情的に P4D(地方労働紛争終了委員会)
、P4P
(中央労働紛争終了委員会)へ訴状を上げる者も現れたが、多くの職位保有者が
自己都合退職を表明し、それに伴って職位数そのものを減らすことができた。3
年後、全従業員数は当時と同様 120 名で、職位 4 種類、職位保有者約 20 名となっ
た。
単に役職者や職位数を減らせたということだけでなく、今では赴任した当時に
比べて、風通しが非常に良くなり、情報の流れなどは、少なくとも前よりは会社
らしくなったのではないかと考えている。
親会社にとっては初めての工場であり、
日本人管理者は一人だけ、かつ技術系出身でないということなどを考えると、他
の会社であれば、もっと早く、もっと確実に達成されることと思われる。
B.対処概要
第一 職位の意義、昇進・降格の時期など
1.不正が行われていることは確実であったが、問題は首謀者を知る証拠がない
ことであり、ほとんどの者が沈黙を維持しているため、究明は不可能であると
考えられた。そこで、会計諸表と現実との差異を質していくという正攻法を取
ることとし、上位者から在庫問題について質問攻めにした。シニアマネージャ
ーが損益計算書上に示される在庫金額の意味すら把握しておらず、プロダクシ
ョンマネージャーが材木のロス量の計算をしたことがないなど、上位者が職務
を果たせていないことを徹底追及した。結果、立て続けに基幹と思われていた
上位職位者が退職して行った。
2.「何も知らないのに、新任ディレクターは役職者、それも経験のある現地管
理者を立て続けに辞めさせている。狂人だ!」と、周辺の日系企業の人事担当
者、ローカル運転手なども言っていたことを後になって知ることになるが、そ
の情報を流布させたのは、辞めていった者、あるいは彼らに同調する内部の職
位保持者であった。そのことを知った後でも「狂人というのは多分本当であろ
うが、辞めさせているというのは事実ではない。彼らが自分で辞表を出してい
58
4 能力開発
るだけだ。
」と多方面で情報修整を行った。もちろん「辞表を出すのも無理はな
い、毎日ディレクターがおっかない顔で『違算の理由は?』
、
『役職者が知らな
いですむか!?』と追求し続けるのだから。
」ということには触れることはなか
った。
3.在庫違算問題から役職者の責任を追及することで、それまでに存在していた
問題点を明確にし、各役職者の義務を認識させようとした。役職者が退職する
ことは工場運営問題をはらんでいることを意識してはいたが、役職者辞任によ
る生産の問題は驚くほど少なく、役職者の存在とは別に、一般ワーカー・現場
リーダーらが予想以上に職務遂行力を持っていることに痛く感心することとな
った。このことから役職者を単に年功序列的に決定したり、語学力だけで判断
したりするのでなく、もっと広範囲に現場の人間を引き上げられるよう、現場
への滞留時間を長くするように意識した。原因も結果も現場にあり、関与する
者の態度・能力などは言葉をへずとも認知できる部分が多くあった。
4.昇進・降格の判断については、人事と何度も打合せを繰り返し、必要に応じ
て関係者あるいは当人のインタビューなども試みた。昇進させたい場合、
「単に
給料が上がるだけでなく、それに応じて義務・責任が増えること。役職者の意
味、何を期待されているのか?」など時間をかけて教示した。また降格の場合、
大きなミスといえども、数回のミスで降格するのでなく、回数を繰り返すごと
に、怒鳴り方のトーンを強くしながら、ミスから生じる想定損失金額を周囲に
公表し、やむを得ず降格することを周知させた。上げるにも下げるにも時間を
かけることに意義があると思っていた。
第二 社員教育、能力開発
1.ディレクターは日本人がこの会社に一人しかいないことから、日本語が話せ
る役職者らに対する評定は当初から甘かったといえる。しかし、日本語が話せ
るということと、日本語を理解するということには大きな差異があることを学
習し始めた後は、しいて日本語を社内で使わないように努めた。
59
4 能力開発
ディレクター(私)が特定のローカルスタッフと日本語で話すのを聞いてい
ると、日本語を話せない者たちがいたずらに劣等感を抱くようになると考えた
のである。
2.赴任して数年が経つと、当社では誰もお客様にあいさつをしないことが意識
されてきた。製品はすべて日本へ輸出していることからも、大半のお客様は日
本人であったため、日本での新人教育のように、お辞儀の仕方から教育し始め
た。会釈・あいさつ・最敬礼の意味を教え、
「第一印象だけでも良くしよう。
」
と励ました。また工場清掃・トイレの掃除などには全員が参加することとし、
例外は認めなかった。文句が挙がっても、ディレクター(私)が目の前で便器
の洗い方などを実演するため、皆も黙って従うほかなかった。
3.役職者には「社に必要なもの。Uang(お金), Barang(物、品), Orang(人)
の3ng である。
」から始まり、基礎的な財務諸表の見方を教えたり、マーチャ
ンダイザーとバイヤーの意義の違いを説いたりして、
「ディレクターは営業出身
の管理者であるが、少しは教示できる。
」ことを示し続けた。
専門知識に限らず、ものの考え方などについても言及していったが、人と機
械の違い、コンピュータは文房具の一種であること、自分と神様だけには嘘を
つけないことなどの話には特に大半の者が強く感心を抱いていたようである。
4.「ディレクターの妙な説法は終業後に行われるが、望まない者には教示しな
い。
」と明確に示すと、意外と「残業代を出してほしい。
」という者は発生しな
かった。ただ、教わったことを他の下級者に必ず伝達することを条件とした。
5.生産現場担当者の多くは文字でレポートを作成することができず、すべてを
口頭での報告に頼っていた。後になると、
「ディレクターはまだインドネシア語
(英語)を良く知らないから誤解があったのでしょう?」と主張されることが
多かった。
そのため、
「報告は文書とともに行うこと!」
を徹底しようと努めた。
ディレクター(私)のインドネシア語能力は、インドネシア語の報告書を読む
にはお粗末過ぎたが、文字にしなければならないことが義務付けられてからは
「そんなことは言っていません。
」という者はいなくなった。
60
4 能力開発
6.文書提出を習慣付けると、今後はワープロを使いたいと言う者が多くなった。
特に現場責任者らの多くは高卒でコンピュータのスイッチを入れたこともない
者が多くいたため、休日を使ったコンピュータ基本知識の習得、ワープロ作法
の基本学習などを認めた。もちろんそのための残業代も出さないし、昼食の配
給もないことを周知させた上でのことであった。先生役は人事と経理担当の女
性二人であり、彼らも同じ条件で教授役を務めてもらった。
この勉強会はその後、かなり不定期になりながらもエクセル・メーラー・フ
ォトショップなどを対象とし、現在も続けられている。まれにではあるがディ
レクター(私)が先生になることもある。
7.社員の方から「学びたい」といってきた場合は、できる限り実現してやって
きた。その前に目的・計画を文書で作らせ、事後、結果をやはり文書で提出さ
せた。結果報告書内で反省点を書くよう指示されているため、今後はどうすべ
きかについて書く必要がある。これらの記述は、彼らの考え方の訓練のために
用意されたものであった。特にスタッフ以上にはすべての報告様式をこの形式
に合わせるよう指示しており、
社内ドキュメント様式の統一、
報告形式の統一、
考え方の統一に役立っている。この様式以外の報告は、ディレクター(私)が
受け付けないからである。
8.会社は組織体の一つであり、報告・相談・確認のできないものは会社には
必要なく、阻害原因となること、我々はチームで活動していることを絶えず
教示し続けた。
そしてころ合いを見て、生産・人事・経理の三大筆頭者を明確にし、彼らに
は情報をすべてオープンにし、すべてにおいて彼らの意見を聞き、問題があれ
ば彼らに解決を求めた。彼らが当社の次席者であり、その他の社員の先生役で
ある。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.
「一度鯛を食い始めれば、メザシに戻ることはできない。
」のは日本だけでは
61
4 能力開発
なく、インドネシアも同じである。問題は、役職を与えれば頑張るだろう、役
職を与えれば能力が向上するだろうと考えたマネージメント側にあると思われ
る。それを新任ディレクターが来た途端に「役職者の責任とは?必要能力と
は?」
などと、
それまで聞いたこともないようなことをわめき始めたのである。
「狂人だ!」と言われるようなるのは必至であったが、鯛を食える責任とメザ
シを食う責任・職務の差を明確にしなければならない。
2.昇格の決定に時間をかけることは、その後の結果を見ても意義のあること
と思われたが、降格に時間をかけるのは、場合によっては当事者を増長させ、
反旗を翻す時間を与えることにもなった。そのことを理解した後、降格人事
はスピーディに行うべきであることを意識し、容赦しなくなった。
3.日本語を話せるという理由で雇われたローカルスタッフが必ずしも日本的業
務遂行方法を知っているわけではないということは明らかであった。ディレク
ターがホームシックにならないようにするお飾りにしかなっていないのであり、
やはり現地語あるいは英語を少しでも多く習得する必要があった。
4.相手がやる気のない者でない限り、時間と手間をかければそれなりの成果が
発生するものと考えられる。本当の誤解も実際にあり、明らかに言葉の違いか
ら発生している場合や、日本的業務プロセスを知る者と知らない者との間で発
生する場合など様々である。
「部下が上司に従うのは当たり前だ。
」というだけ
ではどうしようもない時があり、教育的指導、技と道の両方の教示が必要であ
る。
「甘い、甘い。
」と感じる時、部下の作ったコーヒーの砂糖のさじ加減を怒鳴
るより、自分の教え方が足りないというさじ加減の甘さを自戒すべき時が多く
あった。
5.当社のような小企業では、外部の専門講師を呼んで新人教育・スタッフ教育
をしてもらうほどの余裕はない。可能な限り、外部でのセミナーなどに参加さ
せてやろうと考えて半強制的に各種セミナーへの出席を何度か指示したが、そ
の時はレポートなどによる報告・説明はなされるが、半月も過ぎると忘れ去ら
62
4 能力開発
れるようであり、今のところ外部機関の講習は実を取れていない。
6.
「合すれど議せず、議すれど決せず、決すれど行わず、行えども徹せず。
」と
は、かつて大先輩が「この意味が解れば一人前だ!」と教えてくれた文句であ
るが、残念ながらいまだこの意味を解しかねている。が、今はむしろ「議せず
とも合さねばならぬ、
決せずとも議せねばならぬ、
行わずとも決せねばならぬ、
徹せずとも行わねばならぬ。
」とうそぶいている。いろいろ教えた後はやらせて
みて、問題があれば修正・変更などを行う。そして、またもう一度繰り返す。
芸がないが、この方法が実効力のある方法ではないかと思っている。
63
4 能力開発
事例4-3
セミナーの励行
関連情報
1.企
業
の
業
種
建設業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1984 年 2 月頃
3.体験の際の職種・職務
プロジェクトマネージャー
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
電気工事屋は免許がないと電気工事の仕事をしてはいけない。これは日本での
話である。当地インドネシア共和国においては、だれでも電気屋になることがで
きる。免許制度はない。非常に怖い話である。スタッフは知識が乏しく、作業員
には知恵がない。未だに火災の原因は八割方が漏電事故と聞く。多少の知識、そ
して器用さだけで作業をしているからだろう。
B.対処概要
1970 年ごろの日本の現場では、ツールボックスミーティングなるものがあり、
昼休みの終わり 15 分を利用し、コーラやジュースを用意して全員を集合させ、電
気の知識を指導していた時代があった。
これを当地の作業員に活用し(コーラは高いので、テーボトル[ビン入りのお
茶]にした。
)
、一週間に一回、勤務時間外に講師をそれぞれの各部署から出して
交代でセミナーを行った。また、図面、書類等をフォーマット化し、スタッフに
徹底活用させた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
「若いときの苦労は買ってでもしろ。
」
「苦労を重ねて経験したものを知恵とい
、
い、
売ることも買うこともできない無形の財産である苦労は忘れてはいけない。
」
、
64
4 能力開発
よく聞いた言葉だが、すべてではないが当地の人はどういう訳か忘れるのが好き
なようだ。人間はたくさんいるが、人材がいない。これを頭に置き地道に人材育
成を進める必要がある。
65
4 能力開発
事例4-4
能力開発
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2001 年 3 月~2005 年 9 月頃
3.体験の際の職種・職務
アドバイザー
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
日系進出企業、現地独立資本企業を問わず、従業員の構成は同じと考える。ど
の企業も同一地域出身者で構成されるというのはまれであり、ほとんどの企業は
インドネシア全域からの出身者で構成されている。したがって就業姿勢、労働観
は宗教、地域の習慣により様々であり、企業が能力開発をどの層に行うかを絞る
必要がある。
従業員を分類すると下表のようになる。以下の内容は、主として現地独立資本
企業(以下、
「現地企業」という。
)における現状について限定して述べる。
表
直接作業者
従業員の分類
間接作業者
管理職
h.アシスタント・
a.有期雇用契約工員
c.フォアマン(班長)
(3 ヵ月~6 ヵ月)
d.グループリーダー(組長)
マネージャー
b.無期雇用契約工員
e.スーパーバイザー(職長)
i.マネージャー
(満 55 歳定年まで勤務
f.スタッフ(営業、財務、購買、
j.ジェネラル・
可)
生産管理、品質管理、技術、倉庫、
生産技術、設備、総務)
g.契約スタッフ(職掌は同上)
66
マネージャー
4 能力開発
能力開発というのは、意欲のある人に対してその人の資質をさらに広げ、向上
させるために行われるべきであり、現状に甘んずる人々に対して行うのは双方に
とってロスである。この分類表からみると、契約工員は例外を除き、企業にいる
期間が長くても1年間程度であるので、
能力開発プログラム
(新規プロジェクト、
外部団体からの期間限定指導など)への参加を考慮されることは少ないのが現状
となっている。中には契約工員、契約スタッフであっても、企業が見込みありと
判断した場合は、こういったプログラムに加えられることもある。通常、企業が
能力開発の対象
(新プロジェクト、新製品生産準備への参加、
社外講習会への出席)
にしているのはフォアマン(班長)以上の人々となっている。
概して現地企業では、大小を問わず企業が率先して社内で能力開発を行うケー
スは少ない。
なぜならば経営者は即戦力を常に念頭に置いた経営指向であるため、
長期的視野に立ち、企業全体のレベルアップを図ることについては意欲が乏しい
のが現状であるからだ。新事業を立ち上げる際は、他企業からのトレードや、他
企業の定年退職前のエキスパートなどを雇用するのが常である。
上表と学歴は関係がなく、管理職以外で、学歴が高校卒業者で、かつ学習意欲
の旺盛な人は次のステップとして D1 から D3(diploma1,3(ディプロマ 1、3)
:短
大、専門学校卒)を目指し、さらに次の S1(Sarjana1(サルジャナ 1)
:大学卒
業者)へと移行していく。また S1 に満たない人でも学習意欲(高学歴志向)のあ
る人は、学資をためて夜学に通い、S1 を取得して他企業へ移るケースもよく見ら
れる。なぜならインドネシアは学歴社会、階層社会であり、学歴がないと高賃金
を得る機会に恵まれないのが実情であるからだ。しかし、同一企業内で同一層、
または層別間内での競走意識はなぜかほとんどみられない。
また、能力開発の一環として社外講習会への出席をした後に、習得した知識を
社内に持ち帰って水平展開をすることは少なく、ほとんどは個人の財産として保
有されるのが現状である。この傾向は近隣国でも同様であったと記憶している。
67
4 能力開発
B.対処概要
企業が能力開発を行う場合、永続して企業に貢献できる間接作業者、管理職の
中で意欲のある人を選んで実施されると思うが、前記した知識の水平展開が自然
に図られない環境下では、個人ベースで講習会に出席させるのではなく、社外か
らエキスパートを招聘し、関係者に一斉に学習と技能習得の機会を与え、社内、
現場での同一技術の標準化を図り、定期的にその知識・技能の定着を目的として
全対象者に対して展開していく必要があると考えている。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
社外講習や学習会に出席させる場合は、一定期間、その企業を離れないような
仕組み(刺激と優遇政策)を企業が制定し、知識・技能の定着を考える必要もあ
る。社内での学習、技能講習会に出席し、修了した人にも社内技能検定制度など
を取り入れ、知識・技能の標準化と向上を図る意味で、社外からの引き抜きに対
処することも求められる。
68
4 能力開発
事例4-5 ローカル社員の能力開発の計画的な実行
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2001 年 7 月頃
3.体験の際の職種・職務
全社社員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バンテン州
A.困難事例の概要
1.当時、当社は営業開始後約 4 年を経過していたが、社員の能力開発計画は試
行錯誤の段階であり、かつ中東地域へ毎年 15~20 人の社員が引き抜かれていた
こともあり、社内では社員の能力開発を行うことに否定的な意見もあった。
2.一方、各部単位では主として社員の希望に応じて外部セミナー出席等の機会
を与えていた。ただし、当該教育受講に関するリポート、評価はなされていな
かった。
3.
当時から社員各人の報酬・昇格の基礎となる業績評価制度を運用していたが、
そこで上司と合意した能力開発ニーズが、実際の実行にまでつながっていなか
った。
4.オペレーターの統一的な能力開発計画がなかった。
B.対処概要
1.ローカル社員を含む幹部社員間で徹底議論を行い、当社の競争戦略上の必要
性に照らし、社員の能力開発を計画的に強化すること、また、社員の引き抜き
は別の対応策で減少させる方針を決定した。
2.年間計画で全社重点能力開発方針(領域、達成目標、支出予算等)を策定し、
その全社方針に基づき各部が具体計画を策定し、実施する。
3.各部の計画は、業績評価制度の上司・部下間の話し合いを通じ合意されたも
69
4 能力開発
ののうち、全社の方針に沿うものを重点的に取り上げる。
4.TPM(Total Productive Maintenance:全員参加の生産保全)教育を実施する。
5.
能力開発の結果はリポートさせるとともに、
上司はその評価を必ず実施する。
6.職務ごとに業務必要能力表を作成し、それに照らした能力評価・開発の必要
性を定期的にレビューする。
7.実際の結果を見ると、計画は必ずしも当初の計画通りには進んでいない。社
員数減少に伴い時間的余裕がないこと、上司・部下間の話し合いが不十分なこ
と、評価者に十分な能力がないこと等が原因であろう。評価者の一層の能力開
発が緊急課題である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.社員一律ではなく、階層グループごとの能力開発目標設定が必要。
2.限られた人員・時間の中で完璧な制度運用は無理。重点化が必要。
3.能力開発の実施者・評価者の能力開発が肝要。
70
4 能力開発
事例4-6
日本に研修出張させたが
帰国日に姿を消してしまった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
98 年 10 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン県
A.困難事例の概要
ある日、日本の親会社から電話があり、
「研修で来ていた P 君が、朝早く寮を出
たまま帰ってこない。彼の部屋はきれいに片付けられていて何も残っていない。
」
ということであった。
「しまった!あれほどよく話をしていたのに!」
と思ったが後の祭りであった。
P 君は工場設立時に採用した人達の一人で、将来は製造課長にするつもりで育
成していた。その時、本人は既に現場のフォアマンの一人であった。彼とは日頃
からコミュニケーションを密にして、十分な信頼関係を築いていたつもりであっ
た。
日本へ出張させたインドネシアの人が、日本で「行方をくらます」という事例
は以前から聞いていたので、それなりに手を打ってきたつもりであったが、
「まさ
か自分のところで起きるとは!」という驚きであった。
B.対処概要
現地及び日本でそれぞれ関係機関への届出を行った。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.日本出張者に対しては親会社側に責任者を決めてもらい、マンツーマンでき
71
4 能力開発
め細かく面倒をみてもらうようにした。
2.寮の管理人に聞くと「2 度ほど友人だと名乗るインドネシア人が訪ねて来た。
」
とのこと。
日本での仕事探しを手伝うようなので注意が必要である。
彼は以前、
日本のある会社で 2 年間現場研修をした経験があるので、日本語はかなり上手
であった。
3.P 君は当然「不法滞在者」になってしまうので、関係部署・機関に多大な迷
惑をかけてしまうことをよく認識する必要がある。
72
4 能力開発
例4-7 新入社員教育をどのように実施すれば
効果が上がるのか分からない
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
新入社員教育をどのように実施すれば効果が上がるのか分からない。
B.対処概要
新入社員といっても、高卒と大卒では、別の教育を行うべきである。
1.高卒
高卒の場合、多くはオペレーターとして採用されているので、まずは社会人と
しての基本的な教育が必要である。
例えば、社会人としての基本姿勢・仕事に対するモチベーション・チームワー
クの重要性に加えて、会社規則・労働協約などの基本的なルールを教える必要が
ある。
2.大卒
大卒の場合、多くはリーダー、アシスタント・スーパーバイザー又はスーパー
バイザーとして採用されている。しかしながら、大卒とはいえ、社会経験という
点では、日本と比較にならないほどレベルが低いため、高卒と同様に社会人とし
ての基本的な教育(社会人としての基本姿勢・仕事に対するモチベーション・チ
ームワークの重要性)が必要である。また、会社規則・労働協約といったものも
教えるとともに、リーダーシップのトレーニングを行う。
73
4 能力開発
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
74
4 能力開発
4 能力開発(ローカルスタッフの研修) 関連解説
1990 年に従来の研修制度が改正されて、日本が技術移転により開発途上国にお
ける人材育成に貢献することを目指して、より幅広い分野における研修生受入れ
が可能となりました。
具体的には、従前の企業単独型の受入れに加えて、中小企業団体等を通じて中
小企業等が研修生を受け入れる団体監理型の受入れが認められました。これによ
り開発途上国にとっては、そのニーズにあった汎用性の高い技術・技能等が移転
されやすくなりました。同時に、日本の中小企業にとっても外国との接点が生ま
れ、事業の活性化等に役立つようになりました。
(出典) http://www.jitco.or.jp/contents/seido_enkakuhaikei.htm
4.1
外国人研修制度
外国人研修制度は、諸外国の青壮年労働者を日本に受け入れ、1年以内の期間
に、我が国の産業・職業上の技術・技能・知識の修得を支援することを内容とす
るものです。
入管法上の在留資格は「研修」です。
(1)研修生要件
研修生は、次の①及び②のいずれにも該当する者です。
①いずれの研修型態にも共通の研修生要件
・18 歳以上の外国人
・研修修了後母国へ帰り、日本で修得した技術・技能を活かせる業務に就く予定
がある者
・母国での修得が困難な技術・技能を修得するため、日本で研修を受ける必要が
ある者
②研修型態による個別の研修生要件
a.企業単独型研修の受入れの場合
75
4 能力開発
・送出し国の国又は地方公共団体、あるいは、これらに準ずる機関の常勤の職員
であり、かつ、その機関から派遣される者
・受入れ機関の合弁企業又は現地法人の常勤の職員であり、かつ、その合弁企業
又は現地法人から派遣される者
・受入れ機関と引き続き 1 年以上の取引実績、又は過去 1 年間に 10 億円以上の取
引の実績を有する機関の常勤の職員であり、かつ、これらの機関から派遣され
る者
b.団体監理型研修の受入れの場合
・現地国の国・地方公共団体からの推薦を受けた者
・日本で受ける研修と同種の業務に従事した経験がある者
(2)研修生を受け入れることのできる受入れ機関
次の①及び②のいずれかに該当する企業
①企業単独型研修の受入れの場合
海外の現地法人、合弁企業、又は外国の取引先企業の常勤職員を研修生とし
て受け入れる日本の企業
②団体監理型研修の受入れの場合
日本の公的な援助・指導を受けた商工会議所・商工会、事業協同組合等の中
小企業団体、公益法人などが受入れの責任を持ち、その指導・監督の下に研修
生を受け入れる会員・組合員企業
(3)受入れ可能な研修生の人数
原則として、受入れ企業の常勤職員 20 名に付き、研修生 1 名の受入れが可能で
す。ただし、商工会議所や協同組合等を通じて受け入れる団体監理型研修は、受
入れ可能な人員の枠が緩和されます。
(4)研修の対象となる業務
修得しようとする技術・技能等が、同一の作業の反復(単純作業)のみによっ
て修得できるものではない業務です。
76
4 能力開発
(5)滞在期間
原則として 1 年以内です。
(6)研修期間
研修は、実務研修を伴う場合は、原則研修期間を非実務研修(研修生を集めた
集合研修[1 ヵ月 160 時間]を含む)と実務研修を 1:2 の割合で行わなくてはな
りません。
(出典)http://www.jitco.or.jp/contents/seido_kenshu.htm
4.2
技能実習制度
技能実習制度は、研修期間と合わせて最長3年の期間において、研修生が研修
により修得した技術・技能・知識が、雇用関係の下、より実践的かつ実務的に習
熟することを内容とするものです。
入管法上の在留資格は「特定活動」です。
(1)技能実習生の要件
次の条件をすべて満たす者です。
・技能実習を実施できる職種・作業について研修を修了した者
・技能実習修了後母国に帰り、我が国で修得した技術・技能を活かせる業務につ
く予定がある者
・在留状況等からみて、技能実習制度の目的に沿った成果が期待できると認めら
れる者
・雇用契約に基づき技能実習を行い、さらに実践的な技術・技能を修得しようと
する者
(2)技能実習生を受け入れることのできる機関
技能実習を実施できる機関は、次のすべての要件を満たす企業等です。
・技能実習内容が、研修活動と同一の種類の技術・技能等であること。
・技能実習が、研修活動が行われている受入企業等と同一のものが行うこと。
・技能実習希望者と受入企業等との間に、日本人従業員と同等以上の報酬を受け
77
4 能力開発
ることを内容とする雇用契約が締結されること。
・受入れ企業等が技能実習生用の宿泊施設を確保し、技能実習生の帰国旅費の確
保等帰国担保措置を講ずること。
・技能実習実施機関又はその経営者もしくは管理者が過去 3 年間に外国人の研修・
技能実習その他就労に係る不正行為を行ったことがないこと。
(3)技能実習を実施できる職種・作業
職業能力開発促進法に基づく技能検定の対象職種、又は JITCO が認定した技能
評価システムによる職種で、農業、漁船漁業、建設業、製造業等の産業分野にお
ける 62 職種(114 作業)です。
(4)滞在期間
研修と技能実習の期間の合計は、最長 3 年となっています。技能実習期間は、
研修期間のおおむね 1.5 倍以内で認められます。ただし、研修期間が 9 ヵ月を超
える場合は、この限りではありません。研修期間が比較的短いもの(6 ヵ月未満)
は、技能実習は認められません。
(5)研修から技能実習への移行評価
技能実習への移行が認められるには、次の三つの評価をすべてクリアしなけれ
ばなりません。
①研修成果の評価
全研修期間の 6 分の 5 程度を経過した時点で、国の技能検定、又は JITCO が
認定した機関の試験を活用した評価システムにより、研修生が一定水準(国の
技能検定基礎 2 級相当)以上の技術・技能を修得していると認められること。
②在留状況の評価
研修状況・生活状況が良好であると認められること。
③技能実習計画の評価
研修生受入れ企業等から提出された技能実習計画が、研修成果を踏まえた適
正なものであると認められること。
78
4 能力開発
(6)技能実習実施機関の責務
技能実習生は、受入れ企業との雇用関係の下に報酬を受けるものであり、労働
基準法上の「労働者」に該当することから、通常の労働者と同様、労働関係法令、
労働・社会保険関係法令等が適用されます。受入れ企業はこれを遵守しなければ
なりません。
(出典) http://www.jitco.or.jp/contents/seido_jisshu.htm
4.3
援助機関
(1)財団法人 国際研修協力機構(JITCO)
1991 年に設立された公益法人で、外国人研修制度・技能実習制度の適正かつ円
滑な推進に寄与することを基本として、研修受入機関、研修生・技能実習生、送出
機関等を支援している。
外国人研修制度(1 年)
、技能実習制度(3 年[研修期間と合わせて])
(出典) http://www.jitco.or.jp/contents/seido_kenshu.htm
http://www.jitco.or.jp/contents/seido_jisshu.htm
(2)財団法人 中小企業国際人材育成事業団(IMM Japan)
日本の中小企業の発展と国際社会に貢献することを目的に、中小企業の国際化
への対応に向けた人材育成及び技術・技能者の交流に関する事業を行っている。
外国人研修・技能実習生受入れ事業(研修期間 1 年、技能実習期間 2 年
計 3 年)
(出典) http://www.imm.or.jp/
(3)財団法人 海外技術者研修協会(AOTS)
AOTS は、開発途上国の技術者・経営管理者を対象とする研修事業を行い、円滑
な技術移転による各国産業・経済の発展を支援している。
技術研修・管理研修(1 年[最長 2 年])
(出典) http://www.aots.or.jp/jp/ukeire/gaiyou/gaiyou.html
79
4 能力開発
(4)財団法人 日本 ILO 協会
ILO 精神の普及と健全な労使関係の発展等の各種事業に加え、技術協力(海外
からの技能研修生の受入れ)
、
発展途上国等の労働問題に対する協力等の国際協力
事業を実施している。
国際技能開発計画(6~12 ヵ月[日本語研修 3 ヵ月)
(出典) http://www.jilo.or.jp/nsub7.htm
(5)社団法人 日本・インドネシア経済協力事業協会(JIAEC)
日本とインドネシア共和国との政府間協定に基づいて、両国間の経済協力・技
術移転(企業研修生受入事業)を推進している。
研修生受入事業(研修期間 1 年・技能実習期間 2 年)
(出典)http://www.iris.dti.ne.jp/~jiaec/05.html
4.4
日本国査証(区分)と対応する在留資格
(1)研修査証(一般査証)1 年又は 6 月
技術、技能又は知識の習得をする活動(産業上の技術・技能の研修のみならず、
地方自治体等での行政研修や知識を習得するための事務研修も含まれる)を行お
うとする外国人で、研修実施体制等についての一定の要件を満たす研修受入先に
おいて、同一の作業の反復のみによって修得できるものではない技術等を修得し
ようとするものに発行される。
(2)特定活動査証(特定査証)3 年、1 年、6 月又は 1 年以内の指定された期間
外交官・領事官等に私的に雇用される家事使用人として入国しようとする外国
人、ワーキング・ホリデー制度により入国しようとする外国人、企業等に雇用さ
れてアマチュアスポーツの選手として活動しようとする外国人及びその扶養を受
ける配偶者又は子、国際仲裁代理を行う外国弁護士、インターンシップの活動を
行う大学生等に発行される。
(出典)http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/annai/visa_4.html#chu
80
5.従業員の動機付け
5 従業員の動機付け
事例5-1 工場の稼働率がなかなか改善できなかった
関連情報
1.企
業
の
業
種
鉱業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1997 年1月~1997 年 5 月頃
3.体験の際の職種・職務
工場全般の指導員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
日系企業ではなく現地企業での経験だが、日系企業にも通じることなので、あ
えて紹介する。
私がある電炉メーカーに、比較的強い権限を持った専門家として赴任したとき
は、その工場の稼働率は 50%を割っており、20 年前に操業を開始したときからこ
のような状況だったとの説明を受けた。
調査したところ、設備が非常に老朽化しており、さらに本来工場立ち上げ時に
解決すべき問題がそのまま放置され、今に持ち越されているような状況だった。
また従業員も古くからの者が多く、役職が固定化され、権限や技術が私有化され
ていた。
このため 1 ヵ月かけて全設備を分解整備し、改造を行い、更に 6 ヵ月後には、
15 万ドルをかけて、製品冷却設備の入替えを行ったが、依然稼働率は前とほとん
ど変わらず成果は上がらなかった。
感触では、問題は設備やシステムにあるのではなく、従業員の意識にあるので
はないかという印象を受けたが、これを改善するためにどこから入って行けば良
いのか見当がつかなかった。
B.対処概要
しかし、結果的に解決の糸口は意外なところから、それも偶然見つけることが
83
5 従業員の動機付け
できた。
ある日、工場責任者であるにもかかわらず、会社からも従業員からも大変嫌わ
れているが、それでも彼しか知らない重要な操業ノウハウがあるため、会社です
ら彼に従わざるを得ないという人物が私を訪ねてきた。
「自分にはずっと前から考えて温めてきた一つの改善提案があるのだが、誰も
真剣に取り合ってくれず残念に思っており、私にこの提案の内容を検討して、で
きれば実現させて欲しい。
」というものだった。
内容を聞いたところ、先に述べた 15 万ドルの製品冷却設備そのものだった。ち
ょうどもう 1 つある、更に古い設備も入替えを検討しているところだった。
提案の内容は、今までの方式とは全く発想の異なるもので、直感的におもしろ
い提案だと思い、実物大で設備の一部分を作り実証するように指示したところ、
私が駆動装置の容量計算を手伝ったくらいで、早速自力で試作・実験して不思議
なくらい良い結果を得た。
結局、私が会社の承認をもらい、この提案を採用し、設備入替えをこの方式で
行って、良い結果を得た。なお、費用は前回の 10 分の 1 の 1 万 5 千ドルで済ん
だ。また、会社は報奨金として、この工場責任者に約 5 千ドルを支払い、彼はこ
の報奨金を部下に均等に分けてやったようである。ちなみに、私には「よく従業
員を信じ、従業員が真価を発揮できるような機会を与えてくれたことを表彰す
る。」旨の薄っぺらで品質の悪いステンレススチール製の飾り皿の表彰状を贈呈
してくれただけだったが、今も大切にしまってある。
この後、この工場責任者は信じられないことに、工場内を良くまとめ、改善、
改造、技術移転などを強力に進め、一年後には本来の生産能力以上の操業成績を
収める実績を上げるに至った。改善提案が単にその効果だけではなく、相乗的な
効果も達成できたときには、大きな成果、ひいては大きな信頼関係が得られるも
のだと思った。
84
5 従業員の動機付け
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. インドネシアに限界を感じても絶望しない。失望しても明日を信じること。
従業員を信じて、効果の期待できる自発的自立的提案を見つけ出し、機会を与
えてやることである。ただし、一方で日本人経営側にはどのような提案が効果
的な提案かを見極める力も必要とされていることを忘れてはならない。
そうでなければインドネシア人に対する不満ばかりが募り、ついには絶望し
かねない。インドネシアに投資し、インドネシアで働く以上は、インドネシア
人に失望(絶望ではない)しようとも、私たちの力で彼らのために、私たちの
世界への入り口を見付けてやる手助けをすべきではないのか。
2. 蛇足ではあるが、私が去った後、この工場の改善に取り組んでいた主要メ
ンバーは、一人去りまた一人去りと次々に会社を去って行き、今では一人も残
っていない。
この会社の経営者は中国系の人で私と親しい人だが、またそれ故によく分か
るのだが、従業員があまり良いチームワーク関係を作るのを好まない。むしろ
派閥を作り、従業員内部で反目がある状況の方を好む。自然にこのような経営
者の考えが、チームの解体を促したのではないかと憶測する。とはいうものの、
一時ほどではないとしても、いくらかは改善の気運は残っており、すべてが無
駄だったとは思わない。日本企業がインドネシアに進出する場合は、100%日
本側出資企業であっても、周囲の現地企業経営者のほとんどは中国系インドネ
シア人であるので、日本と異なった文化での雇用内容である。当然日系企業で
働くインドネシア人も独自の文化を持っているし、現地企業の影響も受けてい
る。今日まで日系企業は日本的企業文化を啓発してきており、それなりの成果
を上げてインドネシア経済に貢献してきているが、今インドネシアと中国の結
び付きがますます拡大する方向にあり、中国文化が強まる中、インドネシアで
どこまで日系企業のアイデンティティーを主張できるかは、今後の課題である。
85
5 従業員の動機付け
事例5-2
優秀な若手職員が転職してしまった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
創業して 10 年になるが、人事組織の硬直化が進んでいる。従業員の離職率が低
く、古参のマネージャークラスの人間が退職しないことから、将来の自分のポス
トがないと感じ、将来を案じた優秀な若手社員が自ら退職し、転職してしまった。
B.対処概要
能力主義に応じた人事システムを構築中。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.会社設立当初より、将来、例えば 5 年後、10 年後の組織を見越した人事シ
ステムを構築すべきであった。
2.最近では、年功序列で昇進、昇給が決まるといったジャワ人の伝統的な考
えをする若手は少なくなってきている。このため、従業員の動機付けを意識
した人事システムの構築が重要になってきている。
86
5 従業員の動機付け
事例5-3 中東の工場へ従業員を継続して引き抜かれた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年初~2002 年末頃
3.体験の際の職種・職務
工場運転・修理要員/中堅管理者
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バンテン州
A.困難事例の概要
当時、会社の従業員は約 360 人であったが、毎年 15~20 名の工場技術者(運転
員、中堅管理者)を中東(サウジアラビア、カタール等)の化学工場へ引き抜か
れる事態が 3 年間ほど続いた。
報酬は 10 倍も高く、かつメッカ巡礼等の付帯好条件が付くものであり、金銭的
に対抗することは困難であった。当社の報酬は地域・産業間では競争できるレベ
ルにあったが、社内公用語は英語であり、また創立当初の従業員は中間採用であ
ったため、転職に対する抵抗感の少なかったことが、他社に比べ引き抜きが多か
った理由と推測される。
B.対処概要
従業員には報酬で対抗はしないことを周知させるとともに、金銭以外で働きが
いのある会社づくりを目指し、下記の対策を行った。現在、転職者は年間 2~3
名と大幅に減少するとともに、従業員数もその他の対策と相まって当時の 6 割に
減少させることに成功し、災いを福に転じることができた。
1.会社経営計画の明確化、月次フォロー、全従業員参加による経営方針公開説
明(2~3 回/年)
、中堅管理者・社員間コミュニケーション強化
2.絶対に確保すべき人材(約 10 名)の選出と特別ボーナス制度
3.欠員の原則非補充と内部社員の昇進
87
5 従業員の動機付け
4.社内教育の体系的強化
5.社員ローン制度の強化
6.家族参加の社内行事強化 等々
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.会社の方針を明確にし、従業員に周知徹底させる。
2.絶対欠かせない人材はさほど多くないので、多少の費用負担増はあるがその
確保を図る。選出された人材のモチベーションは高まる。
3.社内データ公開と透明性の向上。社外への情報遺漏を心配するよりも、社員
意識向上を優先する。
4.社員との意思疎通を図る。
88
6.昇進・キャリア形成
6 昇進・キャリア形成
事例6-1 キャリアアップは火中の栗か
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 7 月~2005 年 9 月頃
3.体験の際の職種・職務
取締役社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
このインドネシア現地法人(以下、
「会社」という。
)は、日本側がメーカーと
総合商社、インドネシア側は主にサプライヤー業を行っている人物、この 3 者の
合弁で 1989 年に設立され、1990 年に操業を開始した。従業員約 50 名規模の会社
である。
私は、設立当初からメーカー側の一員としてこの事業に参加した。5 年間、工
場の建設、立ち上げ、操業を行い、その後 5 年間は会社を離れていた。2000 年に
再度会社に戻り、5 年の任期で会社の経営を行うことになった。
この際、いくつかの目標を立てたが、その一つが「5 年後に社長を退任すると
きには、できたら社長を、少なくともゼネラルマネージャーは現地化する。
」とい
う目標だった。
なぜなら、私が離れていた 5 年間で社長が 3 人代わり、その都度方針や仕事の
仕方が変わって、従業員の戸惑いが大きかったからである。また、どうしても日
本人の特権意識が、インドネシアの常識からかけ離れた言動や、時には日本の常
識からもかけ離れた行動になって現れ、これでは正常な会社の運営はできないと
考えたことにもよる。
B.対処概要
従業員のキャリアアップ推進のためにとった具体的な方法は、以下のとおりで
91
6 昇進・キャリア形成
ある。
1.毎週行う部長会議で、会社運営の意思決定をし、実施計画を決め、それぞれ
の担当部長がそれを執行する。その結果も部長会議で報告される。
2.キャリアアップの対象者は、新規事業・財務兼任部長、営業・経理兼任部長、
生産・労総務兼任部長の 3 人とする。
3.部長会議の中での社長、つまり私の役割は、基本的には目標設定とアドバイ
スにとどめ、3 名で決定できないときのみ決裁をすることとする。
4.部長会議の中では、社長は雑談という形で、日本企業の考えや、日本、イン
ドネシア、他の国の文化慣習の違い、いろいろな情報、新しい技術、時事論評
等を話題にして、共通の価値観を築くことも重要な目標とする。
ということで、私の、大げさに言うと、後に火中の栗を拾った結果になる実験が
始まった。
3 人にはこのような説明はせずに実施したので、いろいろと私の意図を憶測し
ていたようだが、ある日、部長会議の中で、新規事業・財務兼任部長が「なぜ社
長は、社長が直接決めて部長に命令する方法をとらないのか。報告は個々にさせ
たら良いではないか。その方が効率的ではないか。
」と質問してきた。この部長は
30 代後半の女性で、私の最初の任期中に採用した人物だが、私の 5 年間の留守中
に、他の 2 人の部長より一歩抜きん出た位置を占めるようになっていた。私は「私
が他社で勤務していた 20 代の若い駆け出しの時に、
社長からその時は思いもよら
ないような定期会議のメンバーに加えてもらい、この中での経験が後々のための
大きな糧になったように思う。この社長はもう亡くなられたが、君たちに同じよ
うな機会を与えることが、私のこの社長への恩返しと思っている。
」と言って、昇
進やキャリアアップにも結び付けて考えていることをアピールしておいた。
また、セミナーや海外研修、社外での会議などを通して、社内外の問題に対す
る理解を得るような機会も意識的に与えるようにした。
このようにして、社長権限を徐々に部長に委譲していき、4 年が過ぎて 5 年目
からは最後の仕上げとして、さらに権限を委譲し、これを機会に社長を退任する
92
6 昇進・キャリア形成
つもりだった。そうすれば、あまり経験がない新社長が赴任してきたとしても、
今の部長の中の一人がゼネラルマネージャー、または全体をまとめる地位につい
て、新社長を補佐して十分やっていけると考えていた。そしてこの地位には、総
合的に見て、
先に質問をしてきた新規事業・財務兼任部長を抜擢する考えでいた。
しかし、私のこの企図は実現しなかった。この部長に問題があることが、直前
に分かったからである。当初この部長は、日本人社長、インドネシア側パートナ
ーに大変能力を買われており、良い収入を与えるために、インドネシア側パート
ナーのイニシアティブで、このパートナーが関係する会社の業務を兼任させてい
た。このために会社の求心力が弱体化していることが分かったので、私がこれら
の会社と折衝して、この部長への業務委託を辞退してもらった経緯があった。
ところが、この部長はそれ以外にも会社外の業務の委託を受け、自宅で従業員
数人を雇用し、経理業務のサイトビジネスをし、会社の給与約 20 万円より多い収
入を得ていたことが分かったのである。本人に事情を聞いたところ、理由は次の
ようなものだった。
1.定年後に備えて。
2. 日本人社長やインドネシア側パートナーの意向次第で、いつ退職に追い込ま
れるか分からない。その時に備えて。
3.パートナーの関連会社の業務と比較しても、勤務時間後の仕事なので問題な
いはず。
私には全く予想できないことで、これにはいろいろ考えさせられた。
C.教訓(知っておくべき情報・教訓など)
ここで得た私の教訓は、次のとおりである。
1.インドネシア側パートナーは、合弁企業は自分のグループ会社であるとの認
識や、グループ会社間の境界が曖昧であるなどの特徴があり、人事面でインド
ネシア側パートナーのペースに乗らないように注意を払うべきである。
2.キャリアが、個人的に社外で利用されないように、注意を払うべきである。
93
6 昇進・キャリア形成
3.定年後の生活を支えるプログラムを会社で提案し、定年後の不安を除いてや
るべきである。定年が通常は 55 歳なので、本人にとっては切実である。
4.キャリアアップさせる対象が女性である場合は、セクハラに十分注意し、無
用の不安、警戒心を生じせしめないようにすべきである。
このため、私の 5 年後退任の予定は狂ってしまい、今 6 年目を迎えている。登
用やキャリアアップの実現は、いろいろな問題を含んでおり、一筋縄ではいかな
いと感じた。私が拾った火中の栗ははじけてしまったが、はじけた栗をいかに料
理すべきか、現在その方法を模索中である。安易に現状の安住に頼むことなく、
リスク覚悟でインドネシア人のキャリア形成を図り、登用できるところは登用し
ていきたいと思っている。
94
6 昇進・キャリア形成
事例6-2
非常に有能な若手社員を
マネージャーに登用しようとしたところ、
自分が若輩であるとして受けてくれなかった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
非常に有能な若手社員をマネージャーに登用しようとしたところ、自分が若輩
であるとして受けてくれなかった。
B.対処概要
年功序列を重んじるインドネシア文化の問題も一部あるが、人事システムの問
題に起因するところが多い。対応策としては次のものが考えられる。
1.人事システム上、きちんとキャリアパスを作っておくべきである。ポジショ
ンが空いたからといって、いきなりスタッフレベルからマネージャーにするの
ではなく、例えば、役職・ポジションとは別に、資格による給与制度のような
ものがあれば、まず若くて優秀な人材を、資格によって優遇しておく。たとえ、
まだ役職に就かなくとも資格としては、マネージャーレベルであることを、本
人並びに周りのスタッフにも分かるようにしておくこと。
そうすることにより、
マネージャーに昇格した際も、周りの人間からも認知されやすく、本人もマネ
ージャーとしての能力を発揮しやすくなる。
2.マネージャーになる前に、管理者としての教育をしっかり行うことが大切で
ある。特に多く見受けられる点は、スタッフとしては優秀ではあるが、管理の
95
6 昇進・キャリア形成
方法やリーダーとしての役割を知らない場合が多いことである。そのため、実
際の現場で、On the Job Training などで実地研修を行い、十分に経験を積ん
だ上でマネージャーに昇格させ、また、マネージャーとしても 6 ヵ月から 12
ヵ月程度は、マネージャー見習いとして仕事をさせることが望ましい。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
96
6 昇進・キャリア形成
事例6-3 工場経営幹部を全員ローカル化させる
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2005 年 3 月目標
3.体験の際の職種・職務
工場運営
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バンテン州
A.困難事例の概要
会社操業開始後 6~7 年を経過する間、
会社運営を極力ローカル化する方針の下
に、当初 15 名いた日米親会社からの外国人出向社員を逐次削減してきたが、最終
的目標として出向者 2 名(ジャカルタにある本社の社長、副社長)体制とし、同
時に工場は全員ローカル社員で運営させる決定をした。このため最適なローカル
社員の人材登用・昇進を実行する必要があった。
当社の石油化学工場運営の基本要件は、高い技術水準の維持、安全安定運転の
継続、たゆまない生産性向上の努力が求められる組織であり、人材登用もその観
点から失敗が許されないものであった。
ローカル社員登用による交代の対象者は、
工場長を含む工場幹部トップ 3 名(うち 2 名は親会社からの出向外国人、他の 1
名は定年退職ローカル社員)であった。なお、工場の社員数は少数精鋭を基本とし
ていた。
(工場の社員数 300 名を半年前までに 190 名まで合理化していた。
)
B.対処概要
1.実施 1 年前から工場運営のローカル化を社員全員に公表し、年間計画に織り
込んだ。合わせて経営陣/全社員間の定例のタウンミーティングでも、計画の
趣旨の徹底とローカル社員昇進への期待と責任の大きさを理解させた。
2.実施 3 ヵ月前に、次のとおり昇進の基本方針を公表した。
①全員社内からの登用(外部からは採用しない)
97
6 昇進・キャリア形成
②対象職務の経営の期待(業務内容、責任と役割)の明示
③年齢・学歴・勤務年数を問わない最適社員の登用
④社員自らによる公募制とし、第三者(大学の専門機関)による面接評価も合わ
せて実施
⑤最終的な決定は経営専管事項
3.経営側が念頭に置いていた者を含め、上級社員 12 名が応募した。そのうち 3
名を対象職務に登用し、その補充要員 3 名と合わせ、6 名の幹部社員を昇進さ
せた。
4.結果的に、当初公募対象者 3 名の人選は当初経営側が念頭にあった者とおお
むね同じであったが、上級経営幹部間、社員間の納得性は極めて高くなった。
5.第三者の評価も経営側に新鮮な視点を提供し有益であった。また、応募者の
うち昇進しなかった社員とは面談の機会を持ち、経営側評価(第三者評価を含
む。
)の主要内容を通知し、今後の強化すべき項目を明確にさせた。
6.登用社員は予想以上に成長している。非昇進組の業務成績も応募実施前に比
べ高まっている。
7.今後の課題
① 新工場経営幹部の継続的な職務能力の向上とその仕組みづくり
② 非昇進組の強化項目のフォロー
③ 全社員のモチベーション維持・向上
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.人材登用は計画的に行う
2.透明性の確保
3.第三者の評価は経営側・社員双方にとって極めて有益(透明性、客観性、新し
い視点の提供)
4.人材のローカル化は多少のリスク覚悟で実行してみる
5.社員との継続的な本音での意思疎通
98
6 昇進・キャリア形成
事例6-4 人事考課(能力評価)での失敗
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 4 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン県
A.困難事例の概要
工場生産が始まってから 3 年が経ち、従業員の昇給・昇進について日本の親会
社と同じように人事考課をすることになった。会社の風土や地域差があるかもし
れないが、この会社では村意識が強く、フォアマン層のリーダーシップが弱いよ
うに感じられたため、フォアマンが自分の部下を考課することにより、強いリー
ダーシップが取れるようになるのではないかという期待もあった。
しかしフォアマンによる人事考課は、ほとんどすべてが平均値を付けるのみで
失敗に終わった。
B.対処概要
この会社ではリーダー層は部下からの突き上げを非常に怖がっていて、万一自
分が村八分にされたら会社に来られないと思っているようであった。そのためフ
ォアマンによる人事考課は一時中止して昇給は次のようにした。
すなわち、今年度の新入社員は基本給を「その地域で指定される最低賃金」と
同額として、その他の社員の給料は入社年次ごとに、数千ルピアずつを上記「最
低賃金」にプラスした。同じ年度に入社した人は同じ給料とした。また、THR(レ
バラン手当)は政府勧奨どおり 1 ヵ月分を支払った。日系企業では、この他にボ
ーナスを支給している会社が多いが、この会社でもレバラン休暇の 1 ヵ月前にボ
ーナスを支給していた。このボーナスに対し人事考課する旨、社員全員に説明を
99
6 昇進・キャリア形成
して「一生懸命働いて良い結果を出した人にはボーナスを少し増やす。
」ことを理
解させた。それでも最初の年は、どのフォアマンも同じ平均値の考課しか持って
こなかったが、フォアマン一人ひとりと個別面談して非常にわずかではあるが、
ボーナスに差を付けることができた。
C.教訓(知っておきべき情報・知識など)
工場では「スキル表」を作って、各人の取得すべき技能とその達成度合いを明
確にしている。また QCC 活動を残業扱いで行い、年に数回の発表会も実施してい
る。さらに日本語教室を開くなど、いろいろな能力開発に力を入れている。これ
らの日常活動の中から優秀な社員を見つけ出し、会社の中核となるように育成す
るのが良い。
ただし日本人駐在者のみで「彼は優秀だ!昇給させよう、昇進させよう!」な
どと決めつけるのは危険である。必ず現地のスタッフと意見を十分に交換して、
「彼」だけが周りの仲間から浮き上がらないように配慮することが重要である。
あらゆる場面で「根回し」が必要なことは日本と変わらない。
100
6 昇進・キャリア形成
6 昇進・キャリア形成 関連解説
6.1
ローカル化
(1)経営権限移譲の現状
施策として「現地社員の管理職登用・権限の移譲」を実施と回答 46%
(出典)アジア日系企業における現地スタッフの給与と待遇に関する調査 2004
日経シンガポール(2003.9-10 に調査実施 1266→68 社 回答率 5.4%)
101
7.労働時間・休暇
7 労働時間・休暇
事例7-1
時間外勤務手当の処理をどうするかで苦労した
関連情報
1.企
業
の
業
種
サービス業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年頃
3.体験の際の職種・職務
取締役
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
日本での親会社の要請もあって、インドネシアに現地法人を設立し、業務をス
タートさせた。メンテナンスは仕事の性質上、土曜、日曜あるいは休日の作業が
常態であり、これらの仕事にその都度、時間外勤務手当を支払っていたのでは採
算が悪化してしまうので、その対応をどのようにするか苦労した。
B.対処概要
1.インドネシアの労働法では、日中労働は週休 1 日の場合、1 日 7 時間、1 週
40 時間、週休 2 日の場合、1 日 8 時間、1 週 40 時間との規定(2003 年第 13
号労働法第 77 条第 2 項 a 号及び b 号)があるので、それを適用して休日振替
制度を取り入れて対処した。
2.雇用契約の際は、上記を納得して入社してもらった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.インドネシアの労働法を調べた上で、勤務、労働時間を取り決めること。
2.インドネシアの時間外勤務手当は、平日の場合は最初の 1 時間が時給の 1.5
倍、以降は 2 倍、休日の場合、最初の 7 時間が時給の 2 倍、8 時間目が時給
の 3 倍、以降は 4 倍となっている。
3.時給の計算方式は、月給の場合は基本賃金(現物支給も含めた総支給額の
105
7 労働時間・休暇
75%以上)の 1/173、日給の場合は日給の 3/20、日給出来高払いの場合は平
均基本給の 1/7 となっている。
4.労働時間、給与、手当などは、従業員にとって最も重要な事項なので、労
働法、関連情報に注意を払い、労働契約で明確にしておくこと。
(参考資料) 3 賃金・人事考課・福利厚生 3.1 時間外手当
106
7 労働時間・休暇
事例7-2
残業時間を含む労働時間確保のために、
就業規則を改定した
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1995 年 11 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の生産担当副社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州ボゴール県
A.困難事例の概要
1995 年に現地合弁企業に資本参加し、それまでの産業用配管部品主力の生産体
制の工場を自動車部品生産体制に特化すべく、生産設備の補充増強、生産体制の
構築、
受注製品の精選等を懸命に進めていたが、
生産計画は未達成が続いていた。
就業規則の始業、終業時間は午前 8 時~午後 5 時の拘束 9 時間、実働 8 時間で
あり、この様な状況下で一日 2 時間の残業を要請したが、午後 5 時から 7 時まで
の 2 時間残業は、午後 6 時の礼拝もあり、生産効率の悪い残業時間帯であった。
B.対処概要
インドネシアの労働法での残業割増率は、初めの 1 時間目は 150%、2 時間目以
降は 200%と定められている。したがって、午後 5 時からの 2 時間残業のうち、
午後 6 時からの 2 時間目の残業は極めて賃率の高い、製造コスト面からみても最
悪の時間帯であった。
対策案として(1)一日 2 時間の残業を、午前 7 時から 1 時間の早出残業と、午後
5 時から 1 時間の通常残業との分割残業体制を取り入れて試行した。しかしこの
方法は、同一人物の 2 時間残業の割増率 200%の取り扱い、始業時の全体ミーテ
ィング時の対応など、
新たな問題が発生して 1 ヵ月間の試行で取りやめとなった。
そこで、これらの問題解消と午後 6 時の拝礼問題も含めて(2)就業規則を改定し、
107
7 労働時間・休暇
会社全体の始業、終業時間を午前 7 時~午後 4 時の拘束 9 時間、実働 8 時間とし
た。その上で残業時間は午後 4 時から対応することにした。2 時間残業をする者
の拝礼は 6 時以降にしてもらうこととした。
始業時間を 7 時に変更することは、早朝に拝礼を済ませている現地従業員には
意外と好評で、以後、今日に至ってもこの就業時間は継続されている。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
インドネシアの労働法は、労働者擁護の感がかなり強い。例えば、残業割増率
を見ても、150%~400%が時間と日とで分けて定められている。宗教上の祝祭日
での割増率は 400%と定められているため、祝祭日の残業は徹底して避けるべき
である。仮に祝祭日に休日出勤を認めると、翌日と翌々日を平気で休む。それで
も収入は通常より多いことになる。日本的な会社に対する忠誠心や、仕事に対す
る責任感はないに等しい。
就業規則の変更ができたのは、インドネシア社会の彼らにとって、都合の良い
ことであったがためと考えられる。なぜなら、通常、朝の拝礼で早起きしており、
残業は 2 時間続けてできて、夕方の拝礼にも問題ない、というところが本音であ
ろう。
108
7 労働時間・休暇
事例7-3 残業が少なくなり不満が出た
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 5 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン県
A.困難事例の概要
工場を立ち上げ、生産が増えてきて昼夜 2 直では注文に応じきれなくなり、3
直にした。
従業員を増やし、8 時間×3 直で 24 時間の操業となった。ところが、それまで
の 2 直では不足分を残業でカバーしてきたが、
3 直になり残業がなくなったので、
従業員から不満の声が上がった。
B.対処概要
当時は、まだ労働組合がなかったので、リーダー的な従業員達と話合いを行っ
た。その結果、次のとおりの取扱いとすることで合意した。
1.30 分早く出勤して、ミーティングや前のフォアマンからの業務連絡などを残
業扱いでできるようにした。
2.QCC 活動を週 3 時間まで残業扱いで認めるようにした。
C.教訓(知っておくべき情報・教訓など)
1.当時は、残業して少しでもたくさんのお金を得ようとする人が多かった。し
たがってお金に関することには最も注意を払う必要があった。
2.生産増を図るため、生産目標数を決めて、その目標を達成した場合には、社
長のポケットマネーで報奨金を払うことにした。ポケットマネーの金額はわず
109
7 労働時間・休暇
かなものであったが、目標が明確で、かつ達成すると報奨金が得られるとなる
と、良い意味での競争が生じて予想以上の成果が得られた。
(社長のポケットマ
ネーとしたのは、後日 2 直生産に戻ったときに既得権とならないように考えた
ため。
)
110
7 労働時間・休暇
事例7-4
生産効率化の問題
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 2 月~2001 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
東部ジャワ州パスルアン
A.困難事例の概要
2000 年 2 月、創業 5 年が経過したにもかかわらず、生産効率が上がらずに苦慮
する。
もちろん外的要因として 1997 年のアジア経済危機の経験があるが、その後 3
年が経過しても、当社は他社と比較して回復の兆しが皆無であった。
焦りと試行錯誤と無駄な会議を繰り返す。
B.対処概要
創業(1995 年 1 月)以来、労働時間を月~金曜日は朝 8 時~夕方 4 時、土曜日
は朝 8 時~午後 2 時とし、気に留めることもなく過していた。
そこで「時間は金」という考えを導入することにした。既に日本ではごく一般
化している週休 2 日制を実施する。当初、組合からは「時間が短くなれば生産量
が落ちる。
」と思わぬ発言で反発されるが、強引に実施した。具体的には、以前の
週 46 時間労働から 6 時間カットすることにより「時間の無駄を省く。
」
、
「休日を
2 日取り、家庭サービス・心身の充実を図る。
」こととした。
また、労働時間と休憩時間の区別を付けるようにした。以前、当社は工場敷地
内に社宅を完備していたが、各自が休憩時間・昼食後に社宅に戻る習慣があり、
暗黙の了解があった。それを社内に所定の休憩所を設置して、労働時間が終了す
るまでは一切社宅への入室を禁止した。
111
7 労働時間・休暇
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
当地では、やはり「慌てず、焦らず、当てにせず、しかし飽きずに、諦めずに」
が重要である。そして「時間の大切さ」を認識させる。また、時間効率を考える
上で、1 つの作業で 2 倍の成果を挙げる工夫と、従業員(ローカルスタッフ)に
自ら考える機会を与えることが肝要である。物づくりは時間との戦いであり、従
業員のモチベーションを高め、理解して行動できるようになれば、おのずと動く
ようになり、
「時間は金」の価値観認識に到達する。なお、これは当地労働協約を
熟知し、遵守する上にのみ成り立つことである。
112
7 労働時間・休暇
事例7-5
労働組合からお祈りのための時間を
労働時間に算入するよう要求された
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
労働組合からお祈りのための時間を労働時間に算入するよう要求された。
B.対処概要
法令によって、お祈りの時間を労働時間に算入しなければならないということ
はない。したがって、この労働組合からの要求は受ける必要はない。
通常、お祈りはすべて、休息の時間に行うこととしている会社がほとんどで、
特に金曜日のお祈りは、休息の時間を 30 分延長しているところが多い。そういっ
た場合でも、その 30 分延長した休憩時間分は、その週末、もしくは、月末まで、
最長でも 1 年間かけて、労働時間の調整を行っているのが普通である。
全員が一度にお祈りに行けない場合は、それぞれの班長の裁量で、お祈りの時
間をずらしているところも多くある。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
113
7 労働時間・休暇
事例7-6
長期休暇
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
2003 年労働法第 13 号では、
「6 年間同一企業に勤続した労働者には少なくとも
2 ヵ月の長期休暇が与えられる(第 79 条)
」とされているが、その通りに休暇を
与えたら会社が立ち行かなくなる。
B.対処概要
2004 年労働・移住大臣決定第 51 号により、この長期休暇の規定は、今まで同
様の制度を設けていた会社のみに適用することとなった。したがって、現状では
会社規則や労働協約の中で決める必要はない。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
(参考資料)7 労働時間・休暇 7.2 休暇・休憩 (1)関係法令
114
7 労働時間・休暇
事例7-7
レバラン休暇で田舎に帰った労働者が
戻って来なかった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
レバラン休暇で田舎に帰った労働者が戻って来なかった。
B.対処概要
労働法上は、会社側の 2 度の呼出しにも応じずに無断欠勤した場合は、自己都
合退職扱いとなる。この場合、通常の退職金は支払われず、労働協約にて決める
ことのできる退職手当のみの支払いとなる。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
(参考資料) 9 退職・解雇 9.1 解雇(雇用関係の終了)
(1)無断欠勤による雇用関係の終了
115
7 労働時間・休暇
事例7-8 労働時間の変更について
関連情報
1.企
業
の
業
種
サービス業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2005 年 3 月~2005 年 7 月
3.体験の際の職種・職務
機械修理ディレクター
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
当社は機械修理を主にした業種であるが、ある時労働時間の問題が出た。通常
は朝 8 時より夕方 5 時までで、昼休みは一時間の規定にしていたが、どうしても
その日の工程を組むのに一時間ほどかかるため、始業を一時間早くして午前 10
時より 30 分と午後 3 時より 30 分の休憩を取るように社員へ通達したのだが、作
業能力の低い社員より反対が出た。どうしても午前 8 時から作業に取りかからな
いとユーザーに迷惑がかかるので、何とか受け入れるよう要望したのだが、反対
した者が他の社員を脅して仲間に入れようとしたようで、その輪が大きくなる前
に歯止めをかけなくてはと思った。
B.対処概要
インドネシアのコンサルタント会社に、朝の一時間のスケジュール調整に関し
て相談したところ、2 つの案が出た。
1.全員に一律一日 3,000 ルピアを支払う。
2.反対した社員に契約期間の残りの分の給料を支払い辞めてもらう。
そこで1の案を社員全員に提案したところ、すんなり全社員が受け入れてくれ
た。その 2 ヵ月後に反対していた社員が自主退社した。多分他の者より話があっ
て、
(何かにつけて反対ばかりしていたので)会社に居づらくなったのではないか
と思う。
116
7 労働時間・休暇
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
会社のルールを変更する場合には、初めから専門家に相談することが賢明だと
思う。その国その国の専門家がいるもので、急がば回れであることを実感した。
117
7 労働時間・休暇
7 労働時間・休暇 関連解説
7.1
労働時間
(1)関連法令
労働法第 77 条
第 1 項 雇用主は、労働時間を定める義務を負う。
第 2 項 規定する労働時間は、次の通りとする。
a. 1 日 7 時間、1 週間に 40 時間、1 週間に 6 日間
b. 1 日 8 時間、1 週間に 40 時間、1 週間に 5 日間
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0210.html
7.2
休暇・休憩
(1)関連法令
労働法第 79 条
第 1 項 雇用主は労働者に対して、休憩時間と休暇を与えなければならない。
第 2 項 第 1 項に述べる休憩時間・休暇は、次を含む。
a. 休憩時間は、継続して 4 時間労働した後に少なくとも 30 分間とし、
その休憩時間は労働時間に含まれない。
b. 週休日は、1 週間に 6 日労働する場合には最低 1 日、1 週間に 5 日労
働する場合には、最低 2 日とする。
c. 年次休暇は、労働者が継続して 12 ヵ月労働した後、最低 12 日間とす
る。
d. 6 年間連続して同一企業に勤続した労働者には、少なくとも 2 ヵ月の
長期休暇が与えられ、この取得に当たっては、7 年目と 8 年目にそれぞ
れ 1 ヵ月ずつ取得できる。ただし当該の各年には、これ以上の年次休暇
を取得する権利は労働者にはない。なおこの長期休暇は以後 6 年経過ご
とに付与される。
118
7 労働時間・休暇
労働・移住大臣決定第 51 号
第 2 条 長期休暇を行う義務を負う会社とは、本大臣決定が定められる前に長期
休暇を既に実施していた会社である。
(法解釈)この条文は、そもそも長期休暇の制度がない場合に長期休暇の制度を
つくることを義務付けるものではないことを示している。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0210.html
http://www.jjc.or.id/roudou/roudou03051.html
7.3
休日出勤
(1)関係法令
労働法第 85 条
第 1 項 労働者は、祝日に労働する義務を負わない。
第 2 項 経営者は、遂行しなければならない種類と性質の業務があり、継続的に
実施する業務である場合、又はその他の事態において、労働者と経営者
の合意に基づいて祝日に労働者を働かせることができる。
第 3 項 第 2 項に述べるような祝日に労働させる場合には、雇用主は労働者に時
間外手当を支払う義務を負う。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0210.html
119
8.職場・工場での問題
8 職場・工場での問題
事例8-1
昼の食事中に運転手にカバンを盗まれた
関連情報
1.企
業
の
業
種
建設業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 10 月頃
3.体験の際の職種・職務
チーフアドバイザー
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
チカラン県
A.困難事例の概要
昼食時、6 年間雇用していた運転手(当時 44 歳)にパスポート、KIMS(短期在
留許可証)、現金の入っていたカバンを奪われた。(車の扉のかぎをドライバーの
ようなものでこじ開け壊す。)
B.対処概要
警察及び軍隊の知り合いを通して調べたところ、間違いなく犯人は運転手だと
のことであった。結局カバンは戻らなかった。
運転手の処分を問われたが、
放免するように言った。
その後運転手は退職した。
そしてなぜかその運転手は、2 年後に心不全で亡くなったとのこと。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.車の扉に盗難防止用センサーを取り付ける。
2.車内にカバンを置いていかない。もしくはトランク内に入れる。
3.大事な書類はすべてコピーを取っておく。
4.現金は必要以上に持ち歩かない。できる範囲でクレジットカードにより買
物をする。
5.雇用期間が長くても、全面的な信頼は禁物である。
(参考資料) 11 日本人社員の問題
11.1 在留許可証 (1)滞在関連許可証と就労許可証
123
8 職場・工場での問題
事例8-2 従業員が会社のPCを使用して副業をしていた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2001 年 2 月頃
3.体験の際の職種・職務
生産管理
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バンテン州
A.困難事例の概要
会社が社員に提供しているコンピュータの不正使用を、定期的にチェックする
ことを決め、IT 担当者に実行させたところ、勤務中にコンピュータの私的な使用、
あるいはそれを使って副業(物品販売、中古車販売)を継続的に行っている事例
を発見した。
(新聞広告を出し、コンピュータで受注する、というもの。
)
B.対処概要
会社規則において、副業の禁止及び会社財産の私的使用の禁止を定めており、
軽度の違反者には警告書を発行し、長期にわたって繰り返し業務をおろそかにし
ていた従業員は解雇した。以降、コンピュータの不正使用事例は少なくなった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.火は小さいうちに発見し、早く消すこと。
2.会社規則に沿って理由が明確である場合は、一罰百戒の観点から早急に罰す
ること。
3.会社が適切に監視していることを知らしめること。
124
8 職場・工場での問題
事例8-3 突然のサボタージュ
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1996 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
会社設立後 1 年少々経過した頃、4 直 3 交代(4 つのグループが交替で 24 時間
連続操業する勤務体制)で操業していたが、夜勤の従業員が突然騒ぎ出し、工場
内の部品を壊し始めた。訳が分からずおっかなびっくりで駆けつけ、大声で従業
員に会議室に来るように指示したところ、ぞろぞろと集まって来た。その数百数
十名。
B.対処概要
インドネシア人は、アモック(amok:突然酔ったように騒ぎ狂い出す)の性格
を持った人が多く、静まるまで時間をおいた後に「機材を壊した者は警察を呼び
処分する。騒いだ原因は何か。
」と質問したが、当初は全く反応がなかった。従業
員各人にモニタリングを開始して小一時間後、その中の数名が「昨年の個人所得
税の年末調整による返金は多かったが今年のそれは少なく、逆に支払いが発生し
ているケースもある。会社はなぜ個人所得税を支払うのか。税金等支払う必要が
ない。
」という内容でたわいないことが判明した。
「会社設立時は、予納の金額が
不明で個人所得税を多めに支払ったため、年末調整が多く戻ってきたが、2 年目
以降はおおよその納税金額が確定したので、ほとんど差額が生じなくなり年末調
整が少なくなった。
」というのが原因だった。シフト毎に 4 回一昼夜かけて全員に
説明したところ、理解してもらえた。
「なあーんだ、そういうことだったのか。
」
125
8 職場・工場での問題
で事態は解消した。もちろん部品を破壊した者、扇動した者は後刻処分した。何
のために生産を中止し部品を壊したのか。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.新規採用者はすべての事項が目新しく、放っておけば何が起きるか分からな
い。
2.労使間のコミュニケーション、アナウンス不足もあるが、理解力にも問題あ
り。
3.個人所得税は少し過払いの上、調整金が戻ってくるよう心掛けること。
4.納税に関する知識が不足しており、雇用契約の際によく説明しておくこと。
5.インドネシアでの扇動者、アモックの実態を知ること。
(99%の忠実な従業員が、たった 1%に満たない扇動者に引っ張って行かれる。)
6.信賞必罰(功績があれば必ず賞を与え、罪があれば必ず罰すること。
)
126
8 職場・工場での問題
事例8-4
悪霊に取り付かれたワーカー
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 2 月、2002 年 10 月
3.体験の際の職種・職務
ディレクター
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
パスルアン
A.困難事例の概要
「悪霊がワーカーに取り付いた」2 例
1.2002 年 2 月、女子ワーカーに悪霊が取り付き、男子社員数人掛りで隔離し
た。数分後には正常に戻ったようであるが、3 時間後に再度悪霊に取り付か
れ、やむなく早退させた。
2.2002 年 10 月、前例とは異なる女子ワーカーに悪霊が取り付き、ディレク
ター(私)に意味不明の言語で何事かを訴え続けるという事例が発生した。
キアイ(Kiai:イスラム教の長老)に依頼し、説得してもらったが、数時間
にわたって正気に戻る気配は見られなかった。
前例同様、早退させて休養を取るよう促した。翌日 1 日だけ欠勤したが、
もう心配ないとのことで、2 日後からは出勤し、1 年後に自己退職するまで二
度と悪霊には取り付かれることはなかったようである。
B.対処概要
1.明らかに作業妨害になるため、現場から引き離して一時的に応接間に隔離
した。
2.第一例は恐らくはてんかんであり、当人を保護する際に口の中に指などを
入れないよう指示した。かみ切られるおそれがあった。
3.家族構成・家庭環境・友人関係・最近の様子など、当人の背景を確認させ
127
8 職場・工場での問題
た。特に特定の薬を常用するなどのことがなかったか調べさせた。
結果として、両例とも勤務態度・成績は優秀であり、両者とも皆勤賞受賞者
であった。共通するのは、
「父親が家出しており母親と兄弟だけで暮らしている
こと。
」
、
「兄弟はまだ学生であるか、失業中であり、当人に期待が寄せられてい
ること。
」
、
「家庭は極めて貧しいこと。
」であった。
4.労働事務所に精神障害に関する事例を確認させた。
まずは精神障害という認定を受けるために、数ヵ月以上にわたる専門家によ
る確認が必要であり、最終的に精神障害が認定された後も、1 年間の観察期間
が必要であり、それらすべてのプロセスでやむなしと判断された場合に、解雇
が可能となるようであった。また、悪霊に取り付かれるケースは周辺の企業で
も散見されており、これは精神障害ではないため、前出のプロセスには意味が
ないと考えられていることも確認された。
いずれにしても解雇へ結び付けるには相当の時間と労力を必要とするため、
回復が見込まれないようであれば、彼女らの母親と相談し、労働は無理であろ
うことなどを説得させるつもりであった。幸いにして数日後には、両者とも回
復したように判断されたため、予定行動は中止された。
5.第二例にあるように、キアイであれば、だれに依頼しても良いということ
ではなく、周辺で著名とされている人物に依頼するのが通例とされているら
しいことが分かった。今回お願いしたキアイは、決して報酬を要求しなかっ
たと報告されているが、約 4 時間にわたる精神的援助と、全社員がお祈りを
した時に振る舞われた食物の代金として、20 万ルピアを支払った。全現場作
業を一時中止し、約 1 時間を当て全員でお祈りをした。
6.悪霊の性質などについて様々な言い方がされたが、結局は本当に悪霊に取
り付かれたのかどうかについての確信は持てなかった。しかし、お願いした
キアイの勧めもあり、その後、約 3 週間にわたり、私は悪霊の「遊び場」と
いわれるボイラー前の広場で、帰宅前のお祈りを日課とすることとした。
無論、無断で社員の体に入らないようにお願いするためであるが、この行い
128
8 職場・工場での問題
は 24 時間を経ずして全社員の知るところとなり、時間の経過とともに、悪霊に
関するうわさ話は消滅したことを確認している。悪霊を否定するのでなく、悪
霊にまっすぐ対峙したことが結果として問題を早く解消することにつながった。
残念なのは実際の悪霊に会えなかったことである。
7.第二例に関し、30 万ルピアを至急払わないと大家に追い出されそうである
ことが確認された。迷った挙げ句、私の小遣いの一部を供出し、神様から頂
いたという理由で届けさせた。前例を作りたくなかったが、この金は至急大
家に回されたようであった。
8.確認の結果、サボタージュではないことが理解されたため、すべては病人
として扱われた。
9.対応策を検討している間、一部の社員が故意に知人などに連絡し、社内に
引き入れようとしたことが発覚した。報酬料金などを人事に提案し、長時間
にわたって持ち場を離れていたことなどに対し警告状を発行した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.悪霊によるか、病によるものかは別として、一時的精神障害を呈するおそ
れのある社員がいることを認識すべきである。
2.悪霊に対しても断固として対処できる人物が、指導者層に少なくとも一人
は必要であるようだ。
3.何かが発生すると、
「とんでもない理由で起きたに違いない。
」という先入観
を抱き、当事者を悪く考えてしまうことが多かったが、今回の件では個人とし
て極めて真面目に生きようとするワーカーの存在に認識を改めることとなっ
た。サボタージュであれば断固とした姿勢で臨むべきところであるが、この事
件は当人の勤務態度からしても何かを企んでの行動とは考えられなかった。本
当に「悪霊」に取り付かれたのか、あるいは「悪霊」に身を任せてしまうくら
い何かに悩んでいたために当件が発生したのだと受けとめている。
129
8 職場・工場での問題
事例8-5 商売の横流し
関連情報
1.企
業
の
業
種
建設業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 4 月~2004 年 11 月頃
3.体験の際の職種・職務
社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ市
A.困難事例の概要
2002 年より水処理設備販売の 50%:50%の合弁会社としてスタートしたが、事
前の市場調査のないままスタートしたため、結果として当初計画した設備を日本
から輸入販売したのでは価格競争力がない。そこで現地化を図るべく、日本側と
協議したが、日本側の内部事情から図面の提出を拒まれ、
やむなくローカルメーカ
ーを担いで、インドネシアの水処理業界へ参入した。したがって合弁会社であり
ながら、ローカル企業としての自立を求められた訳である。
設立と同時にインドネシア側パートナー企業より派遣されたスタッフ(A)へ、
一
から水処理ビジネスの基礎・技術・営業手法等を教育していった。A は、よくそ
れを理解して大型案件が受注できるようになった。
最初の 3 案件は、私がすべてを
カバーし、A をサブとして活動させた。次のステップとして、A を中心にローカル
企業を含めたマーケティングを推進させたが、一向に受注にこぎつくことができ
なかった。私は日系企業を中心に、また A の要請で、先方の上司へのあいさつ回
り等、忙しく対応していた。毎朝の朝礼時には、昨日・本日の行動とその結果を
中心に、報告・連絡・相談は欠かさなかった。
ところが、引き合いがあって見積書を当社から出しても、当社が使っているロ
ーカルの水処理メーカーと A と顧客とが結託して、実際のオーダー時には当社を
バイパスして、直接顧客からローカル水処理メーカーへ注文が流れ、A はコミッ
ションをもらうというスキームがあることが発覚した。
130
8 職場・工場での問題
B.対処概要
まずローカル水処理メーカーにて事実確認を行ったところ、
「A は既に当社を退
社して個人として行動していると聞いており、成功報酬としてコミッションを支
払う口約束がある。
」との回答を得た。今後の再発防止を書面により約束してもら
った。
顧客担当者とは元来成約時に袖の下を使う商習慣がある。より多くのキックバ
ックを得るために、直接メーカーから購入し、介在商社としての当社を外すこと
で、彼等の取り分が増えると解釈された。
以上のことから A の即刻解雇の手続きを取るべく総務部長へ指示したが、
「本人
も反省しており、スタッフとしてようやく一人前になったばかりで、多少頭でっ
かちになり、
全て自分でできるとの錯覚が今回の問題を起こした。
」
と擁護された。
「総務部が責任を持って監視するので、再度のチャンスを与えてほしい。
」と要
請され、ローカルパートナーとも相談し、私は納得できなかったが、警告書 3 通
分にて許容した。
嘘の報告では判断を誤ることになり、併せて週報を提出させ、有言実行の証拠
として責任を持たせ、
また約束実行達成率への評価とすることも併せて導入した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.インドネシアでは、信義や道義的責任などが理解されていない向きがあると
ともに、従業員の会社に対する忠誠心は見受けられない。
2.すべてが自己中心であり、少しでも条件の良い企業へ簡単な動機で移ってし
まう。
3.
一方管理する側も、従業員にとって夢があり魅力ある会社作りをするとともに、
常に現場へ出て、自分の目で確認をして、報告だけをうのみにしないことが肝
要である。
4.一方で信頼ができ、公平にものが判断できる右腕としてのローカルスタッフ
を、いかに早く見いだし、出会えるかが現地スタッフ・従業員を管理する上で近
131
8 職場・工場での問題
道となる。
5.実務にかかわる実践的能力開発ばかりに注力して、基本的な、物事に対する
考え方の教育がおろそかになると、私のような失敗を起こすことになる。
132
8 職場・工場での問題
事例8-6
給与を盗まれた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1996 年 7 月頃
3.体験の際の職種・職務
代表取締役社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ
A.困難事例の概要
創立以来、給与支払いを現金にしていた。給与日前日に現金を下ろし、当日支
払うようにしていたが、あるとき前日の夜にお金を盗まれてしまった。
B.対処概要
結局盗まれたお金は戻らなかった。スタッフの中に限りなく疑わしい人物がい
たが、どうしようもなく、結果としてそのスタッフには退職金を余分に支払い、
退職してもらった。
給料の支払いは銀行振込みに変更した。支払い方法を現金から振込みに変更す
るときには、社員より幾分かの抵抗があった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.現金を扱う社員の雇用には特に注意する必要がある。信用のできる人に紹
介してもらうなど、検討したほうがよい。
2.現金を会社に置かないようにすること。
3.大金を動かす場合、ローカルスタッフ一人では扱えないようにすることが必
要。日本人には少しのお金でも、ローカルスタッフにとっては大金なので、信
用することは大切だが、あまり信用しすぎることのないようにする。
133
8 職場・工場での問題
事例8-7 総務担当者が地位を利用して高利貸をしていた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 6 月頃
3.体験の際の職種・職務
財務担当部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ市
A.困難事例の概要
総務担当者が地位を利用して、従業員給与から不明確な天引きを行っていた。
個人的に高金利な貸付けを行い、月々の給与から返済分を天引きしていた。ロー
カル役員も同様なことを行っており、また生活協同組合(コペラシ)より依頼さ
れた天引きもあり、区別が付かず一度に禁止することができなかった。
B.対処概要
天引きをしていたローカル役員が亡くなったのを機に、複数あった個人的天引
きを少しずつなくしていった。まず労働協約で禁止されている社内での商活動を
行っていた数名に対して、警告書を与えた。しかし最後まで総務担当者が無視し
ていたため、証拠を集めてやめるよう要請した。その結果、天引きがなくなって、
給与支給作業時間の大幅な短縮につながった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
最近給与は銀行振り込みが一般的だと思われるので、直接現金により天引きす
ることはできない。しかし経営者は不正が行われないよう、常々報告のあった金
額と、実際に従業員に支払われた金額をチェックする必要がある。生活協同組合
(コペラシ)と称して、実際は複数の個人的天引きがまとめられている場合もあ
る。
134
8 職場・工場での問題
事例8-8
レンタカー代金をローカルスタッフに
使い込みされた
関連情報
1.企
業
の
業
種
卸売・小売業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 7 月頃
3.体験の際の職種・職務
管理部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
A.困難事例の概要
本社からの出張者は、出張期間が毎回数ヵ月になることから、レンタカー会社
より車を借り、帰国時に現地アシスタントに現金を渡し、レンタカー会社との精
算を行っていた。特に問題なく行われているように思っていたが、ある日突然レ
ンタカー会社から経理部に多額のレンタカー代が未清算になっているという連絡
が入り、調査の結果、使い込みが発覚した。
B.対処概要
アシスタント(女性)に事情聴取したところ、子供が重い心臓病で、豪州での手
術が必要となったが、親戚・知り合いの支援だけでは無理であったため、ついつい
目の前にある会社の金に手を出してしまったとのこと。魔が差したという事情は
分かるが、金銭問題ゆえ、即刻解雇を言い渡した。
解雇には本人より強い抵抗があったが、刑事(警察マター)事件となることを強
く主張し、解雇を受け入れさせた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
多額の現金を現地のスタッフに安易に預けないこと。長年働いているスタッフ
でも「魔が差す」ことがあることの認識が必要である。どうしても現地のスタッ
135
8 職場・工場での問題
フに現金支払をさせなければならない場合は、信頼のおける経理部のスタッフに
任せる。
(参考)
インドネシアでは、労働者を解雇する場合はあらかじめ労働事務所(地方労働
紛争終了機関)の許可を得ることが必要であるが、本件では労使ともそれを知ら
ず、労働協約に記載されている「刑事犯罪は解雇」という条文を根拠に解雇した
ものである。
なお、現在の労働法においては、犯罪行為を行った労働者の解雇が可能となっ
ている。
(参考資料) 9.1 解雇(雇用関係の終了)
(2)責任当局での拘留による雇用関係の終了
136
8 職場・工場での問題
事例8-9 従業員による製品屑の横領
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 10 月頃
3.体験の際の職種・職務
総務担当
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン市
A.困難事例の概要
製造過程で発生する製品屑を従来から業者に売却してきたが、本社による定期
業務監査の指摘に基づいて、
「製造での屑の発生量」と「実際の屑の売却量」を一
定期間について比較させたところ、
累計で大きな差が生じていることが分かった。
B.対処概要
関係する部署・従業員の徹底調査を人事部に実施させたところ、製品屑のある
取引について、基準に反する処理が偶然に発見できた。これを契機にその担当者
の自供が得られたため、更に内部調査を進めさせたところ、
「製造部の製品屑の処
理担当」
、
「購買部の製品屑の売却担当」
、
「ある屑業者」の 3 者が内通して書類上
の発生量/売却量のデータを偽造し、その差を横流ししていたことが発覚した。
関係した従業員は、労働協約に基づいて労働局に解雇を申請した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.今回の調査の過程で、毎月のレポートで「製造の屑発生量」と「購買の売却
量」に差異があることを知っていた管理職が複数いたことが分かったが、
「発生
と売却の時期のズレ」としか理解されていなかった。
2.ローカル管理職は部下の業務の実態を理解しておらずに、任せきりにしてい
ることが多く、また部署間の意思疎通も不十分であった。
137
8 職場・工場での問題
3.不正の防止については、以下の 3 つの面から総合的に対処していくことが必
要である。
・信頼できる社員の採用、教育の徹底、定期的なローテーションの実施などの
人の面
・不正が入りにくいオペレーション方法の導入(コンピュータ化、複数チェッ
ク)などの運用システムの面
・業務監査の定期的な実施や、不正に対する厳正な処分などのけん制機能の
面
138
8 職場・工場での問題
事例8-10
事務所内での盗難
関連情報
1.企
業
の
業
種
卸売・小売業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 5 月~2003 年 6 月頃
3.体験の際の職種・職務
財務経理・人事総務担当取締役
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
事務所内にてノートパソコンが 3 度も盗難にあった。夜間、土日に発生してい
たため、該当時に事務所にいた従業員をビルの管理責任者(警察 OB)が尋問した
結果、パソコンを盗んだ犯人ではなかったが、プリンタのトナーを盗んでいたこ
とが発覚した。
この従業員は、長年にわたり勤務していたオフィスボーイだった。このトナー
については、盗まれていたことが発覚していなかった。
(在庫の中身だけを替えて
いたため。
)
B.対処概要
最終的には、警備システムを導入して、常時カメラが作動していることを全従
業員に知らしめた。導入の最終判断に当たっては、事務所の裏側の鍵が壊された
経験も考慮した。
通常インドネシアでは、社内での盗難では警察を入れないが、犯人に会社の姿
勢を見せるため警察を入れた。しかし、結果的に犯人を特定できなかった。
また、インドネシア人の人事部長(インドネシア大卒)が、「賢人」(おそらく
祈祷師[ドゥクン])に犯人を聞きに行ったのにはがっかりした。
当社はインドネシア進出が早く、長年の経験から信頼できるインドネシア人に
139
8 職場・工場での問題
鍵を預けることが日常となっていた。
(日本人が先に帰社)
事件後は、一人きりではなく必ず複数で事務所をクローズさせるようにした。
また、財務経理部の部屋のキーは玄関キー保管者には預けない(警備も別システ
ム)ようにした。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
インドネシアでは完璧な盗難対策はないのではないかとも思われるので最初か
ら、盗まれる前提での対処も必要なのではないか。警備システムを導入してから
は盗難がなくなったが、犯人は捕まるのがわかっていても目の前の物を盗むこと
がある。
140
8 職場・工場での問題
事例8-11 5S活動の定着化
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 10 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の工場長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ボゴール県
A.困難事例の概要
製品の販売政策上から ISO-9000 を取得する必要性が高まり、5S(整理・整頓・
清掃・清潔・しつけ)活動を活性化することとなった。一般に当国は、走行中の
車の窓からゴミをポイ捨てする国民性でもあり、工場内では加工後の切粉除去や
職場の掃除等は自分の仕事ではないという意識が全社にまん延しているので、大
きな意識改革が必要と判断した。
ある日、私は工場巡回中に職場内にあったゴミ(スナック菓子袋)を見付けた
ので、近くにいた職場の班長にゴミを捨てるように指示した。その班長は、私が
いなくなるのを待っていたように、近くに積んであった板パレットの上段を持ち
上げ、その中に入れて板パレットを元に戻した。ゴミ箱は 5m 先に設置されていた
のだが。
その時点でここでの常識は「見えなくなれば良い、が片付けること。
」であると
知った。根底には「片付ける人」は自分でなく、掃除の担当がいるという意識が
ある。
B.対処概要
5S 以前の 2S(整理・整頓)をまず徹底する必要があるので、以下の手順で駐在日
本人を中心に活動を開始した。
1.まず、現地マネージャーに 5S 運動の教育ビデオや親会社の体験談等によりそ
141
8 職場・工場での問題
の必要性を教育した。次に、 5S の意図を作業者全員に対して周知徹底させる
ため、マネージャーを中心に職場内をグループで巡回し、1 年以上使っていな
い治工具や私物を徹底的に排除させた。必要な治工具類は棚を作る等して、目
に見える管理とした。
2.また、マネージャー自らが目に付いた職場内のゴミを拾ってゴミ箱に捨てる
ことを徹底させた。
3.同時に各マネージャーを講師として、部署ごとに 5S がなぜ必要なのかを全員
対象で 3 ヵ月ごとに 2 回教育した。マネージャーを講師とすることでマネージ
ャー自身が 5S の意図を深く知ることになったと思っている。
4.5S の責任範囲を明確にするため、職場を区分して職場名を表示し、責任者を
決めた。
5.共通する 5S 点検項目をマネージャー全員で拾い出し、共通チェックシートを
作成した。
6.上記チェックシートを使って、毎週 1 回ワーカーレベルで編成したグループ
のパトロール実施、及び毎月 1 回マネージャーグループでのパトロールを実施
した。これにより各職場の改善点を客観的に拾い出した。
7.パトロール時のマイナスカウントと改善状況をポイントとして、優秀職場を
数字で見えるように経過を示した。結果として職場ごとの競争心をあおること
となった。
8.6 ヵ月ごとにパトロール結果を集計し、優秀職場と最優秀職場の最終選考を
トップマネージメントが目で確認した。
9.全員集合の表彰式を開催し、審査結果の発表と講評・次回までの目標等を事
務局及びトップマネージメントが行い、優秀職場には多めの賞金を出した。
10.以上のことを約 2 年間実施して職場内の 2S が達成でき、工場内の散乱ゴミが
目に付かなくなった。更に、職場内の治工具類の整備が自発的に始まり、作業
能率も推定で 10%程度向上した。これは作業者自身が 5S の有効性に気が付い
てきた成果と考えている。
142
8 職場・工場での問題
11.なお、5S 活動実施1年目から ISO-9000 を取得準備し、6 ヵ月後に取得するこ
とができた。全員参加の意識が高まった成果だと考えている。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.一般にインドネシアでは定着が難しいといわれる 5S 活動も、各個人に目標が
見えるような仕組みを作り、定期的にチェックする仕組みを作ることで達成で
きると痛感した。この経験は、以後展開した工場改革に大いに役立った。
2.マネージャーの協力が不可欠であったと痛感した。目指す方向を理解し、協
力してくれるインドネシア人の「同志」を持つことが目標達成の早道と知った。
(参考)5Sの実施状況
写真 1 5R(インドネシア語で 5S)の
写真 2 測定機器類の保管管理
社内掲示
当社では 5S 改善案として写真 2 のケースを準備し、
共有測定器を持ち出す際に
自分の ID カード<社内専用>を測定器保管場所に置くこととし、
誰が使用中なの
かを目で見える仕組みとした。これにより、それまで時々無くなっていた測定機
器が、無くならなくなったことも成果であった。
143
8 職場・工場での問題
事例8-12
近隣の村から仕事をやらせてほしいという
要求があり、対応に困った
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
近隣の村から、労働者の採用だけではなく、工場内の植栽の手入れや従業員食
堂の食事の手配、従業員用のバスの手配など、さまざまな仕事を請け負わせて欲
しいとの要求があった。
(何度断っても「お願い」に来られて困った。
)よく調べ
てみると、その前に警備員が一応検討してみるというような発言をして、近隣住
民を帰らせた経緯があり、村との交渉において非常に苦労した。
B.対処概要
工業団地管理会社が仲裁に入り交渉したが、結果としては、一部の仕事を村の
人に発注することで、村の人が納得してくれて決着した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
村の人々との協調関係の確立のためには、やはり日ごろのコミュニケーション
が大切であり、普段からローカルマネージャーを通じて、十分なコミュニケーシ
ョンを取っておく必要がある。
一方社内においても、従業員教育を徹底し、このような場合に従業員の発言が
変な約束と取られることがないように、発言・行動には注意するよう指導すべき
である。特に警備員などへの日ごろのトレーニングが大切である。
144
8 職場・工場での問題
事例8-13 会社所有の従業員社宅に3名の強盗が入った
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 8 月頃
3.体験の際の職種・職務
事務管理
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バンテン州
A.困難事例の概要
50 戸強の会社が保有する社宅団地内のある従業員宅に、男性社員出社中の夜中、
3 名の強盗が入り、家族を縛った後で装飾品等を盗んで逃げた。警察は犯人を捕
縛し、盗難品は戻ったが、強盗は近隣の村の青年連中であったため、村長の仲介
もあり起訴されることなく、翌日保釈された。その後、強盗連中は社員の妻が警
察に顔を告げたとのことで、その社員を脅迫したため、社員は金品を強盗に支払
わざるを得なくなった。
当該従業員は、会社社宅の保安上の不備を理由に会社に弁償を要求した。
B.対処概要
会社は適切に盗難防止設備の設置と警備員の配置を行っているとの理由から、
当該従業員の要請は拒否した。
(会社は、ゼロ災害・ゼロ盗難・ゼロ環境違反を年
度の重要目標の一つに掲げて毎月フォローしていた。
)
ただし社宅居住の他の従業
員が募金活動を始めたので、会社側はポケットマネーで募金活動に協力した。
警察に救済を要請したが、警察は村の中の出来事であり、犯人の家族のことを
配慮すべきだとして、追加対応は取ってくれなかったが、パトロール強化の約束
は得た。
会社は村長及び村のリーダーと日ごろからコミュニケーションを図っていたの
で、そのルートからも再発防止を強く要請した。また社宅内防犯を強化した。
145
8 職場・工場での問題
以降、同種の事件は起こっていない。
C.教訓
1.警察は、事件が起こってからでは十分な対応は期待できない。事件が起こら
ぬよう、事前の対策を取るのが最も重要である。
2.会社はリーダーシップを発揮して安全保安に注力すること。また従業員もそ
れを理解し、共通の課題として実行する必要がある。
3.他の従業員が率先して募金をしてくれたことは心強かった。従業員との継続
的な対話の重要性を再認識させられた。
4.個別企業がこうしたソフト的基本インフラに対応せざるを得ないことは残念
だが、最善を尽くせば、再発防止は可能であるとの認識を得た。
146
8 職場・工場での問題
事例8-14
工場内が暑くて不満が出た
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年7月頃
3.体験の際の職種・職務
担当役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ市
A.困難事例の概要
工場は元倉庫だったものを借りて使用していた。換気が悪く、工場内の温度が
高くなり、作業員から不満が続出した。かつ労働環境、安全面からも問題があっ
た。
B.対処概要
建屋外壁の上部に、明かり取り用のガラスのはめ込み部分があった。そのガラ
スをはずし、金網に交換して熱気が抜けるようにした。また開口部が 2 箇所しか
なかったのを増やし、空気が流れるようにした。それでも十分でないので屋根に
サイクロン式のベンチレーターを付け排気力を高めた。これにより、大した費用
をかけずに問題が解決し、作業環境は大幅に改善した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
現地の気候を知り、現地に合った方法を考える。また、現地の他の企業、特に
現地企業がどうやっているかを見ると参考になる。
インドネシア、特にジャカルタ地区の場合、気候は意外に穏やかである。例を
挙げると、
1. 赤道直下のため台風はなく、強風は吹かない。(台風は赤道を外れたフィ
リピンあたりで発生する。
)スコールの前にさわやかな若干強い風が吹く程度。
147
8 職場・工場での問題
2.雨季には相当強い雨が降るが、ジャワ島では吹き込むことはほとんどない。
地面よりの跳ね返りはある。また短時間に多量の雨が降るので冠水に注意を
要する。排水が悪いところが多いのでチェックが必要である。
3. 地震もまずない。インドネシアは広いのでよく地震のニュースが出る。最
近ではアチェ沖の大地震があった。しかしジャカルタからは遠く離れており、
影響は皆無であった。プレート性の地震はジャワ島ではないと聞いている。
火山国であり、火山性の地震はジャワ島でもあるが局地的である。
4. 湿気も高くなく、日陰は結構涼しい。
5. 現地の人は日本人に比べ暑さには強いので、ある程度の暑さは平気である。
逆に冷房がきついのは苦手の人が多い。
以上のような点を頭に置いて工場、事務所、また住居を考えると良い。特に
工場建屋に関しては、私見であるが以下の点を考慮すると、経済的で快適なも
のになる。
1.地震はないものと考えて良く、強風も吹かないので建物強度は日本の基準
ではなく現地に即したものにすると良い。
2.風通しを良くする。腰の部分(地上 1m ぐらいから)と軒下に、風が抜けるよ
う開口部を全体的に付ける。
3.腰高の部分は保安上の意味からも金網を張る。腰の部分は雨水の跳ね返り
対策である。また屋根のひさしは長めに出しておいたほうが良い。これには、
雨の吹き込みや直射日光を避け暑さを和らげる効果もある。
4.排水上の問題がありそうなところは、床を上げておく。豪雨、冠水時に開
口部を水門式に閉じられるようにしておくとか、土のうを用意する等の浸水
防止の対策をしておくのが良い。
5.あまり明るくすると暑いと感じ、嫌うので頭に入れておくと良い。作業性、
安全性から必要な明るさをとるのは当然であるが、現地スタッフによく説明
して理解をさせておくほうが良い。
148
8 職場・工場での問題
事例8-15 ネットバンキングでの盗難事件
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2001 年 12 月頃
3.体験の際の職種・職務
財務担当取締役管理部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
プカシ県
A.困難事例の概要
イスラムのレバラン休暇明けに出社したところ、休暇中にネットバンキングを
利用して、約 4 万 5 千米ドル相当の金額が会社の口座から引き出されていた。
B.対処概要
1.
邦銀 2 行との取引があり、
両行ともネットバンキングで通常決済をしていた。
その際、手順としては財務担当者、財務責任者、財務担当取締役の暗証コード
を入力しないと決済ができないようになっていたが、そのコードがものの見事
に一回のミスもなくクリアされ、現金を引き出されていた。
2.すぐに銀行側と連絡を取り、システム上の問題がないか、また銀行側のシス
テム関係者にも調査をしてもらったが、特に問題となることは発見されなかっ
た。社内でも調査をしたが、結局何の情報もつかめずに警察へ届出をした。警
察も関係者の事情聴取及び引き出し銀行の口座名義、ATM 等調査はしたものの、
何の証拠も見つからずに迷宮入りとなった。
3.
すぐに 2 行ともにネットバンキングを中止し、
現時点でも利用はしておらず、
通常の手続き、決済をしている。
4.一つだけ犯行の可能性が考えられるとすれば、システム担当者が暗証コード
読取ソフトの存在を知っていて、これを利用し、上記 3 人の暗証コードを読み
取り、外部からのアクセスで犯行を行った、ということである。しかし、全く
149
8 職場・工場での問題
証拠が見つからなかった上、その担当者は事件発生半年後に退社しており、真
相は全く分からないままお蔵入りとなった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. ネットバンキングを行う場合、決済暗証コ一ドは個別に厳重管理が必要なこ
とと、2~3 ヵ月ごとにコードを変更することが必要である。
2.ネットバンキング用のパソコンは、同様に厳重管理をし、その都度金庫に保
管するぐらいのことは必要である。
3.システム管理者は、可能な限りネットバンキングに関与させない方が良い。
4.当地の警察の調査能力は限られている上に、このような電子犯罪に関しては
予備知識が乏しいため、各企業が個別にハード、ソフト両面からの防衛手段を
講じる必要がある。
150
8 職場・工場での問題
事例8-16 ドライバーの残業管理
関連情報
1.企
業
の
業
種
卸売・小売業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年 7 月頃
3.体験の際の職種・職務
総務部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ市
A. 困難事例の概要
派遣会社から派遣してもらっていたドライバーが、ある時月間 300 時間程の残
業表を提出してきた。これは土・日曜日に 12 時間働き、更に通常営業日1日当た
り残業時間約 10 時間という、
全く休みもなく常識的にはあり得ない残業時間であ
った。
残業表には、使用者である当社従業員のサインをしっかり取り付けており、形
式的な体裁は整っており問題はなかった。
B.対処概要
まずドライバー本人に「異常なる残業時間だが何か誤りがないか?」と尋ねた
が、
「残業表のとおりで一生懸命働いた。
」と主張する。
残業状況があまりにも異常であり、
使用者の方に実際の働きぶりを照会すると、
使用者は当該月に一週間ほど出張に出ていたことが判明した。ところがその出張
の間も例外なく、すさまじい残業となっていた。
そこで使用者に「きちんと残業表の始業時間と終業時間をチェックしている
か。
」と尋ねたところ、驚いたことに「自分は前任者から、このドライバーを引き
継いだ。前任者はこのドライバーは信頼ができるので、残業表は相手を信用して
書いてくるままに承認しても大丈夫だと前任者が太鼓判を押すほど信用できるド
ライバーだと言われた。自分自身も納得し、請求される残業表を今までチェック
151
8 職場・工場での問題
したことがなく、そのままの数字で月一回まとめてサインし承認していた。
」とい
う回答だった。
使用者に対して今回の残業表を示し、あまりの管理のずさんさを指摘して今後
はきっちりと残業時間を管理するように厳しく注意した。そして使用者として当
該月に実際働かせた時間に基づく残業表を作成させた。
後でドライバーを呼び、絶対的な残業時間の多さ、使用者出張期間中も同様の
ペースはおかしい点などを指摘し、実際の残業表は使用者作成の表が正しいとい
うことを承諾させた。
ドライバー派遣会社へは、今回の不正残業申告事件を説明し、他の同僚ドライ
バーへの教育的効果も考慮して、このドライバーに代えて別のドライバーを派遣
してもらった。
事件を起こしたドライバーは数ヵ所から借金をしており、相当生活が苦しかっ
た模様である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
初めて駐在する者(家族も同様)は、日本で専属ドライバーの使用経験がある
者はほとんどいないので、ドライバーの管理方法や付き合い方などを、派遣会社
の協力を得て、より具体的にレクチャーしてもらい、再発防止を図った。使用者
がきちんとした認識・自覚を持っていれば、こうした事例は防げると思慮する。
優良なドライバーの確保はジャカルタ駐在員にとっては、充実した駐在員生活
を送る上で必須条件である。できるだけ色んな方面にアンテナを張って、優良ド
ライバーの確保に尽力すべきである。
152
8 職場・工場での問題
事例8-17
現地マネージャーに現金を持ち逃げされた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 12 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン県
A.困難事例の概要
インドネシアでは付加価値税(VAT)という制度があり、売上げの 10%を決算
ごとに支払っていた。普段は経理の女子社員が小切手を作り、社長の私がサイン
して、その女子社員が近くの銀行へ支払いに行っていた。ある時、庶務課長が「代
わりに行く。
」と言って小切手を現金化してそのままドロンしてしまった。
B.対処概要
売上げの 10%というと彼にとっては大変な金額なので魔が差してしまったの
だと思う。
(円換算で 300 万円!)警察沙汰にするとかえって余計な費用がかかる
とのことで、結局インドネシア人の役員が、庶務課長の家族と粘り強く話し合っ
ていくらかを回収したが、あとは損金処理をした。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.大金の場合は、現金はもちろん小切手でも銀行へ行く人を決める。社長は
誰が行くか必ず確認する。
2.一人では行かせない。社長の運転手に運転させ、守衛を1名同行させる。
(現金を手にすると魔が差して結果的に罪人を作ってしまうことになる。
)
3.大金とはいくら以上か、あらかじめ決めておく。
(社長の頭の中で)
4.製造業の場合、日本人駐在員は製造畑出身者が多く、したがって経理は不
153
8 職場・工場での問題
得手ということで「お金」のことはインドネシアの人に任せがちである。し
かし、これは危険なので「お金」は駐在員がしっかり管理するのが無難であ
る。
154
9.退職・解雇
9 退職・解雇
事例9-1 労働事務所から P4D を経て P4P までの一例
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 7 月~2005 年 6 月
3.体験の際の職種・職務
ディレクター
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
パスルアン
A.困難事例の概要
2002 年 7 月、スーパーバイザーであったローカルスタッフの R は、出入りして
いたゴミ回収業者に、私用で使う目的で、製品を梱包するカートンを持ち出すよ
う指示した。
ゴミ以外の材料がトラックに載せられているのをとがめた警備員が、
そのゴミ回収業者の運転手と口論になった末、業者の一人が半月刀のようなナイ
フを手に「殺すぞ!」と脅し始めたことから大問題となった。このため R に警告
書 No.3(最も重大な違反行為を行った者に対して発行される警告書。
(注)を参
照のこと。
)が発行された。
2002 年 9 月、残業中に R の率いるチームの不注意でゴミ置場から出火した。警
備員の迅速な行動でその火は鎮火されたが、発見が遅れれば火勢を増し、家屋に
燃え移る危険があった。やはり警告書 No.3 が発行された。
2003 年 7 月、R の勝手な判断で作業の基準が変更され、それが元で出荷先から
重大なクレームが発生した。R が不良を知りながら、梱包作業が続行されたこと
が主原因であることが確認され、警告書 No.3 が発行された。
2003 年 7 月、先の不良混入について再々注意を受けたにもかかわらず、再度不
良品混入を発生させたため、スタッフに降格された。
2003 年 9 月、R は日本の最高責任者が来訪中、スタッフミーティングを無断欠
席した。ディレクター(私)は彼の無責任さに激怒し、全員朝礼直後に彼を呼び
出した。厳重に注意勧告、つまり、彼を徹底的に怒鳴りつけた。その日中に再度
157
9 退職・解雇
の降格を決定し、サブリーダー格まで落とすことになった。R は会社決定の降格
を、いわれのないことであるとして拒否し、人事部と口論になった。その後、R
は再度の無断欠勤という態度を示し、数日後に私は労働法 169 条に該当する行為
を行ったという意味で退職決定申請書を地方労働紛争終了委員会(P4D)に提出し
た。P4D より、R の申請書を受領した報告が当社にも到着し、その後、R の弁護士
と名乗る者から電話が入り「R は精神的に衰弱していること。
」
、
「会社は彼を解雇
するべきであること。
」
、
「この日より会社は彼と直接話をせず、すべて弁護士を通
して話をしなければならないこと。
」などを通知してきた。これに対し、当社は彼
を解雇するとは一切公言しておらず、
「すべては R の規則違反が原因であること。
」
、
「社としては彼が反省し、今後、精勤するのであれば見合う給料などは公平に支
給する考えであるが、辞職したいのであれば正式文書を提出すべきであり、彼ら
の訴えによりむしろ 169 条第 3 項が適用されるのは必至であること。
」
などを説明
した。しかし、R の弁護士はあくまでも当件は 169 条第 1 項に基づく会社側の責
任による解雇に相当することを主張し、このことから紛争は明らかになった。
2003 年 10 月、新聞記者を名乗る人物が来訪し、当社が従業員を不当解雇しよ
うとしているという情報に基づき、取材したいと申し入れてきた。警備員から、
約束のない者の立入りは許可できないことを説明させ、送り返すこととした。そ
の後は何ら連絡はなかった。
2003 年 10 月、担当管轄警察署より、ディレクターの調書を取りたいと正式要
請文書が発行された。私は指図に従って警察署へ出頭し、取調べを受けた。その
後、さらに上部機関に当たる警察署から再度取調べを行いたいと文書による通知
を受け、出頭し同様の手続を取ることとなった。前後して地域管轄警察署の刑事
が頻繁に当社を訪れるようになった。
2004 年 3 月、
管轄労働事務所の決定で
「本件は労働法 169 条 3 項の適用に従い、
会社は労働法 156 条第 2 項、第 3 項の退職手当・功労金の支払義務はない。
」とい
うことが文書により証明された。当社はこの結果を受け入れたが、R と R の弁護
士はこれを不服として、P4D(地方労働委員会)へ解決を求めることになった。
158
9 退職・解雇
2004 年 5 月、P4D の決定は「会社は、労働事務所の決定を前提として、2004 年
3 月までの給料、2003 年度の THR(レバラン手当)
、基本給 3 ヵ月の 15%、未消化
有給休暇手当を支払わなければならない。
」というものであった。当社はこの結果
を受け入れたが、R と R の弁護士はこれを不服として、P4P(中央労働委員会)へ
解決を求めることになった。
2005 年 5 月、P4P の決定は「P4D の決定を前提として、会社にも非があるので、
P4D の決定金額に、退職手当・功労金として 7 ヵ月分の給料を加えた金額を支払
うこと。
」というものになった。当社はこの決定を受け入れ、R と R の弁護士も承
諾した。
2005 年 6 月、残金の支払が行われ両者とも最終文書にサインし、当件は完了し
た。
B.対処概要
1.当社の一例に過ぎないかもしれないが、ゴミ回収業者は、ある特定の地域出
身者の集団であり、地元の人々は一般に「マフィア」と称している。ゴミ回収
業者に限らず、ある種の勢力を持つ集団であれば「マフィア」と呼びなわされ
ているようであり、当初イメージしていた日本の「ヤクザ」とはかなり意味合
いが異なるように思われる。
「本物」ももちろん存在するであろうが、当地での
「マフィア」と言うのは従業員用のバス運転手組合も含み、かなり広い意味で
使われているようである。いずれにしても、刃傷沙汰に至るかもしれなかった
事態は重大事と考え、業者の責任者=ボスを呼出し、事件経緯の申し開きをさ
せた。
この処置は当地に長く居住しておられ、現地の風習に精通したある日本人の
方のご助言に従ったものである。いわく「マフィアと称される人々に対しては
感情的になって交渉してはいけない。冷静に、好意的に、静かに話し合うべき
である。また、最初から警察に対応・処置を依頼しても無意味である。警察が
どちらの味方になるかは警察の利益次第であり、最初から警察に依頼などしな
159
9 退職・解雇
い方が良い場合が多い。
」
こうして、そのボスとは穏便に交渉させ、刃物を出したその人物は、業者を
首になり、当社周辺に近づかないことが約束された。
2.R が二度目の重大な問題を引き起こした時点で、具体的な解雇手続に入るべ
きであったが、私は解雇するのではなく、教化することが社に利益をもたらす
ものと判断し、結果として問題を先送りする形にしてしまった。日本人がディ
レクターだけであり、赴任後 2 年しか経過していなかったことから、早く有能
な現場責任者を作りたいと焦っていたとも言える。
3.R が弁護士を通じて会社側に労働法 169 条第 1 項に該当する解雇だと主張し
たことから、
「解雇しろ!」
、
「解雇するとは言っていない!」式の奇妙なやり取
りになったが、彼の主張のポイントは、彼の退職(解雇?)の原因は私の横暴
であり、相当の金を補償しなければならないという点にあった。そのため、当
初より会社に非は全くなく、一人の従業員が金目当てに騒動を起こしているこ
とを、社内に周知徹底させ、似て否なる第二・第三の例を発生させないように
腐心した。大きな問題は彼の考え方であり、会社としては同様の例に対しては
断固たる手段・方法を取ることを意識して表明し続けた。
4.インドネシア労使関係を問う時、必ず最初に言われるのは「人前で怒らぬこ
と」である。本件は私が R を人前で怒鳴り散らしたことが発端となったのは事
実であり、できれば人前で怒らぬようにした方が、問題の発展を防ぐことがで
きると考えられるが、経過からしてこの問題はいずれにせよ発生したと思われ
る。特に注意していたのは、絶対に怒っている時に相手の体に手を触れないこ
とと、手振りでも威嚇するようなまねはせず、下げたままにしておくことであ
った。
5.2 回に及ぶ警察の事情聴取の後、担当刑事が頻繁に当社を訪問するようにな
った。訪問時に拳銃に触らせようとしたり、警官のバッジを従業員の目の前で
あからさまに見せ付けたり、何か当社と交渉する材料がないかを探っているよ
うに感じられた。時には、刑事が帰ると、応接間の床に拳銃の弾丸が置かれて
160
9 退職・解雇
いたりしたが、根気良く対応した結果、その後は姿を一切見せなくなったよう
である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.日ごろから労働事務所と何らかの接点を持つことは、非常に有意義なことで
ある。
2.会社の規則・方針の前ではだれもが平等であることを徹底する必要がある。
また、会社の姿勢を一貫させることも重要である。
3.警察が介入した場合でもこちらに非がなければ、特に問題はないと思われ
る。
(注)当社では、担当労働事務所の認印を受けた会社規則を使用している。
同文書内で、警告書については「警告書 No.1」
、
「警告書 No.2」
、
「警告書 No.3」
の三種類を規定し、
「警告書 No.2 は警告書 No.1 の 2 回分に相当すること。
」及び
「警告書 No.3 は警告書 No.1 の 3 回分に相当すること。
」をうたっており、
「警告
書 No.3 が発行された後、6 ヵ月以内に再度警告書 No.1 が発行された場合、もし
くは期限なく 2 回目の警告書 No.3 が発行された場合は解雇の手続に進む。
」とい
うことになっている。もちろんこの内容については、労働事務所側からも認知さ
れている。また、実際にこのプロセスをたどる場合は、諸種の問責等が考えられ
るので、当社としても軽々しく同規則を当てはめる事例を作ることはない。
(参考資料)
9 退職・解雇 9.1 解雇(雇用関係の終了)
(3)労働者による雇用関係の終了の申請
9.3 退職金(退職手当等) (1)関係法令
161
9 退職・解雇
事例9-2
問題のある社員の解雇
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1996 年 6 月頃
3.体験の際の職種・職務
代表取締役社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ
A.困難事例の概要
問題のある社員をなかなか解雇できないことに苦労した。また、やっと解雇
できたが、法外な退職金などを支払わされた。
B.対処概要
インドネシアの法律に従い、問題のある社員に警告書などを発行して解雇し
ようとしたが、社員が地方の労働事務所に提訴し、半年くらいの時間をおいて、
最終的には当時の労働大臣の裁決で解雇できなかった。解雇できなかった社員
は現場に復帰したが、通常の作業をさせることができずに、ただ会社に出勤し
ているだけの状態が続いた。ところが労働事務所より指導が入り、現状のよう
なことはだめだと知らされ、仕方なく通常の退職金に法外な金額をプラスし退
職させた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
問題の社員を解雇しようとする場合、まずは労働事務所に相談することが大
事である。問題のある社員の事情を伝え、指導を受けて解雇する場合は問題な
く解雇できる。その場合、労働事務所の職員に対していくらかの指導料を支払
うほうが良い。
(指導料を支払わないと不利益を被るものでもないが。
)
162
9 退職・解雇
事例9-3
違法サボタージュの扇動者を含む
不良社員 5 人を解雇した
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州ボゴール県
A.困難事例の概要
2002 年の賃金改定交渉は、従来の年功序列型の賃金体系を成績重視の職務職
能型に移行したいという目的もあり、賃上げ総額の配分論議で交渉が長引いて
いた。賃金交渉が長引く中、組合幹部が上部団体組織への交渉説明で外出中の
2002 年 2 月、午前 9 時より午後 2 時までの間、約 70 名の従業員が職場を放棄
して組合事務所前に集合しサボタージュを行った。労働組合は関知していない
完全に違法な集団行為であった。組合執行部の組合員に対する賃金交渉の経緯
の説明方法に不備があったと考えられ、複数の扇動者が数日前よりサボタージ
ュ実施の扇動活動をしていたらしい。
事態の収拾直後からサボタージュの扇動者を探したが特定ができず、数名の
扇動者を含む 5 名の不良社員を長時間かけて解雇した。
B.対処概要
執行権のある組合役員は不在であり、その他の役員はサボタージュには参加
していなかったが、この事態にただ右往左往しているだけであった。外出中の
委員長達を呼び戻し、組合執行部と組合員との対話集会が開催され、午後 2 時
から全員が職場に復帰しサボタージュは収拾した。急ぎ、賃金交渉とは別に労
使会議を開催して、今回の騒動の原因と処罰対応の話合いをもった。
163
9 退職・解雇
1.今回のサボタージュの原因は、労働組合の説明方法に問題があったと考え
られる。従来の交渉経緯の説明は、執行部が職場委員会にて説明後、職場委
員が各職場単位で行っていたようだ。したがって職場間で差異が生じ、説明
がない職場もあったようだ。今後、組合は交渉経緯をタイムリーに、全員集
会をもって執行役員が組合員に説明するよう指導した。
2.会社側はサボタージュによる生産設備の未稼働損失金額を組合側に提示し、
サボタージュをした全員を対象に、4 時間分の賃金カットを申し入れた。事
前に労働省の管轄支局の担当官には賃金カットの正当性は理解されていたが、
サボタージュ参加者の全員確認はできず、確認できた者だけでは不公平であ
ることを理由に、賃金カットは実現しなかった。
3.労働組合をも無視した今回のサボタージュを計画した扇動者を捜し出すよ
う労働組合に申入れをした。しかし、解雇処分を警戒して 4 人という人数の
みで、名前は明かさなかった。
経営側は、扇動者を見逃すことはできず、サボタージュの参加を確認でき
た 58 名全員に警告書を発行した。その結果、5 名の者が累積 3 回目に達して
いた。サボタージュを扇動した 4 名の確定はできなかったが、労働組合にも
通知をして、所管の労働事務所に解雇の手続きをした。5 名中 3 名は 2 ヵ月
目で解雇に応じたが、2 名は不服を申し立て、6 ヵ月かかったが、最終的には
労働事務所の担当官からの指導もあり、退職金に 1 ヵ月分の賃金分を上積み
して決着した。
この 5 名の中にサボタージュの扇動者が含まれていたと確信している。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.組合活動の歴史が浅いためか、委員長をはじめ、組合幹部は労働組合の仕
事を理解しているとは思えない。単なるメッセンジャーボーイで良いと思っ
ているようだ。労使会議、懇談会、団体交渉等の会合で、常に組合幹部教育
を念頭に接すべきと感じた。
164
9 退職・解雇
2.労働事務所は、存在する地域での「駆け込み寺」のような役割もあるよう
だ。それだけ労働組合の存在感が薄いのであろう。したがって、日頃から労
働事務所とのパイプを作っておくことが大切である。そして懲罰を科する事
態が発生した場合は、状況を必ず写真、ビデオ等で記録しておくことが大切
である。後の事実確認の証拠となる。
3.労働法には、日本と同様の意味での「懲戒解雇」はない。
((注)を参照の
こと。
)会社側に多大な損害を与えての解雇であっても、刑事事件を起こして
の解雇であっても、労働法で定めた雇用関係終了に伴うお金を要求される。
4.従業員を解雇できる手段として、警告書の発行制度があるが、この制度も
極めて労働者側優位に定められている。
・警告書の発行は本人が認めたものが有効とされる。
・警告書の発行(1回の有効期間は 6 ヵ月以内)で累積 4 回に達すると労働事
務所に解雇の申立てができる。
・労働事務所による事実確認調査の後に、本人は不服の申立てができる。
・労働裁判にまで発展することもあるが、経営側は、必ず解雇するという徹底
した意思を持ち続けることが肝要。
・経営側の意思が固く変わらないと判断されると、退職勧告を受け入れやすく
する策として、当局側は退職金の上積みを提示してくる。
・最終的には何がしかの上積みで決着する。
(注)
広辞苑によると、懲戒解雇とは「企業の規律・秩序に違反したり利益を著しく
損なう行為をしたりした労働者に対し、使用者が制裁として行う解雇。通常、退
職金は支給しない。
」と説明されている。
(参考資料) 9 退職・解雇 9.2 警告書 (1)関連法令
165
9 退職・解雇
事例9-4 リストラによる早期退職
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年頃
3.体験の際の職種・職務
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
A. 困難事例の概要
リストラのため役職ポストを減少させることに伴い早期退職を実施したが、一
部の職員が警察に駆け込んだ。
B.対処概要
そもそも労働問題は労働・移住省の管轄であり、このケースでも P4D(地方労
働紛争終了委員会)において労働者側、雇用者側が出廷して争ったが、法律・規
則が明確でないこと、調停官のレベルの問題、あるいは背後に労働者側からの贈
賄行為があったのかもしれないが、
ともかく不透明な裁定しか出なかった。
一方、
地方警察は民事事件である本件に介入を続けた。労働者側が仕組んだものと思わ
れるが、
地方メディアが一方的に労働者側の言い分を書くなどの問題も起こった。
最終的に、警察上層部への働きかけで問題は一気に解決した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
労働問題に警察が介入した場合、違法行為がなくても投獄などのハラスメント
を行うことがある。また、警察としては訴えがあった場合に違法行為の有無を調
査する必要があるという理由で会社人事担当者を拘束することがある。
166
9 退職・解雇
事例9-5
会社閉鎖と従業員解雇
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年 1 月~2002 年 2 月頃
3.体験の際の職種・職務
ダイレクター(グループ現地法人人事関係統括)
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン市
A.困難事例の概要
1.タンゲラン地区の同一敷地内に、業務形態・労働条件の異なるグループ傘
下の現地法人が 6 社あり、それぞれ各社ごとに労組が存在していた。1999 年
以降各社で賃金・ボーナスなどをめぐり違法スト・示威行動が頻発、またグ
ループ内労組の連携も生まれていた。
2.このような中で、傘下の縫製会社(6 社のうちの 1 社)の業績不振が続き、
過去経験したことのない会社閉鎖・従業員解雇を行うことになった。
もちろんトラブルなく、かつ最小限の負担で短期間に完了させる必要があ
った。
3.インドネシアの会社閉鎖に関する法律を調べた結果、会社閉鎖に関する労
使間の合意を得て、その上で中央労働紛争終了委員会の解雇許可を得て従業
員解雇ができれば、あとは会社清算に伴う事務処理だけであることが判明し
た。
しかし、会社閉鎖の労使交渉時期がベア交渉時期と重なり、ベア交渉結果
が解雇による退職金水準に跳ね返るだけでなく、同一敷地内のグループ各社
のベア交渉や、将来仮に会社閉鎖や人員合理化となった時の解雇退職金水準
にも影響するという複雑な交渉となった。
167
9 退職・解雇
B.対処概要
会社のシナリオに沿って進んだ交渉前半部分と、労組執行部の実権を有力女
性執行委員に奪われてコントロールが効かなくなった交渉後半部分に分けて記
述する。
<交渉前半部分:2002 年 2 月上旬から中旬>
1.株主総会前にローカル事務部長をキーマンと定め、閉鎖の理由・経緯を説
明し、交渉責任者として協力を求めた。
2.株主総会で閉鎖を議決後、マネージャー層及び労組幹部に、会社閉鎖とな
らざるを得ない理由・経緯を説明。労使による自主交渉・自主解決について
協力を依頼した。
3.同一敷地内のグループ他社ローカル事務部長を集め、縫製会社の閉鎖の決
定と、閉鎖に至った理由・経緯を説明。閉鎖会社労使による自主交渉・解決
へ向け、協力を依頼した。
4.水面下で閉鎖会社のマネージャー・労組幹部・タンゲラン労働局に根回し
を行った後、全従業員に会社閉鎖と解雇を通告した。その直後に従業員を自
宅待機(有給)させ、従業員からのプレッシャーを受けない形で労組と閉鎖
に向けた解雇手当水準交渉及びベア交渉に入った。
(注)①会社としては、業績不振であっても閉鎖・倒産による法定解雇手当(退
職金)は支払わざるを得ないとの覚悟で交渉に臨んだ。
②タンゲラン労働局は、倒産による法定水準のみで決着をつけようとす
れば、外部から介入の口実を与えるので、プラスαをアドバイスしてい
た。
③この時点で労組委員長は、法定退職金ベースにプラスαで決着をつけ、
上手く収まれば、労組役員への協力加算金を得られるものと期待してい
た。
5.縫製会社の閉鎖交渉を進めながら、同一敷地内グループ各社では、ベア交
渉に着手。2002 年は前年に続き、1月に最低賃金が大幅アップ(38%強)し、
168
9 退職・解雇
また 1 月中旬に突然メガワティ大統領が、燃料価格を平均 22%引き上げたた
め、各地で違法ストが起きていた。このような状況下で、グループ他社は自
社のベア交渉に手一杯となり、縫製会社の閉鎖交渉に手を貸せない状況とな
っていた。
6.労組執行部への根回しを継続しながら、閉鎖による解雇手当につき法定退
職金水準プラス帰郷旅費を提示し、ベアも最高のアップ額を示し、一挙に労
使合意を図った。
<交渉後半部分:2002 年 2 月中旬から下旬>
1.会社が解雇手当の具体額を提示したところ、それまで目立った動きのなか
った女性執行委員が、日本の親会社の支払い能力を理由に、大幅な解雇手当
水準アップを主張。労組執行部の実権を握り、外部との接触を開始して要求
が通るまで争うと主張した。
2.労組はそれまでの労使協議の経緯をすべて破棄し、新たに閉鎖時の法定退
職金の 5 倍を書面で要求してきた。二者協議で決裂した場合は中央労働紛争
終了委員会に持ち込み、三者協議で自分達の主張が認められるまで交渉する
というスタンスを取った。
3.会社は粘り強く交渉し、まずベア交渉を終結させた。次にタンゲラン労働
局から閉鎖時の法定退職金水準を書面で取り付け、プラスαの金額を増額し
て労組との交渉を続けたが難航する。矢面に立ったローカル事務部長が、日
本人の手先として圧力を受け、一時は交渉の糸口も見出せない状況となった。
4.会社は、プラスαを増額する一方、マネージャー層に会社の考えを説明し、
労組執行部の説得にも当たった。その中で、会社説明に理解を示したマネー
ジャーが労組執行部を説得したところ急展開となり、二者協議を再開した。
閉鎖による解雇手当にプラスαを増額して、合理化時の解雇手当水準並みで
決着することができた。
結果として、従業員・労組による示威行動や、機械の破壊などの混乱は一
切なく、話し合いで解決できた。
169
9 退職・解雇
労使合意後、会社から日系の同業者に従業員を紹介し、15 名程度の再雇用
も実現できた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.非常事態の対応には、最悪のシナリオを準備しておくこと。
2.労働局や行政への根回し(ロビー活動)は不可欠。労働局や行政は、労働者
寄りの見解や判断を示すことが多いが、だからといって根回しをしないと会
社側が孤立してしまう。むしろ会社側の主張を理解させ、労働局や行政をで
きるだけ味方につけ、相手への抑止力に利用するロビー活動として割り切っ
て取り組むべきである。
3.信頼関係を作るまでコミュニケーションを徹底する。平時からのコミュニ
ケーションの重要性はいうまでもないことであるが、非常時にはキーマンと
とことん納得できるまでコミュニケーションを図る必要がある。最後はお互
いに信頼関係が築けているかどうかで結果が分かれることが多い。
4.インドネシア人による交渉・解決を行う。インドネシア人は日本人と比べ
はるかに交渉術にたけており、また緊迫した局面における交渉の条件や、金
銭感覚は日本人ではなかなかつかみきれないものがある。
交渉方針や妥結目標水準は、日本人が立案するにしても、実際の交渉や駆
け引きはインドネシア人のキーマンを信頼して任せたほうが良い。
5.情報の入手と分析が特に重要である。インドネシア人は政治好きであり、
交渉好き。一度事が起こると様々な情報が飛び交うことになる。これには携
帯電話も一役買っており、情報が伝わるのは驚くほど早い。これに対抗する
には、様々なルートの情報を入手・整理してよく分析することが大事であっ
た。さらに労働問題に詳しく実践の経験豊富な弁護士を確保し、インドネシ
ア労働法と解釈のアドバイスを得られたことも大いに役立った。
170
9 退職・解雇
(参考)関係労働法令
インドネシアにおいては、解雇(正確には「雇用関係の終了」)が発生した場
合には、経営者は退職手当(uang pesangon)、勤続功労金(uang pengharugaan
masakerja)又は帰郷旅費、年次休暇の買取り等受け取るべき権利の損失補償金
(uang penggantian hak yang seharusnya diterima)を労働者に支払わなけれ
ばならないと規定されている。
(2003 年法律第 13 号第 156 条)
退職手当や勤続功労金は、勤続年数の長さに応じ、月額賃金の何倍という形
で定められている。受け取るべき権利の損失補償金は、雇用関係を終了しなけ
れば当然受け取ることができた各種の権利的事項を金銭に換算したもの等とな
っている。
雇用関係の終了が発生するのには様々な場合があるが、それぞれ場合に応じ
て退職手当及び勤続功労金を規定の何倍支払うかが規定されている。
(参考資料)
9 退職・解雇
9.3 退職金(退職手当等) (1)関係法令
171
9 退職・解雇
9 退職・解雇 関連解説
9.1
解雇(雇用関係の終了)
(1)無断欠勤による雇用関係の終了
労働法第 168 条
第 1 項 労働者が正当な証明を添付して書面で説明することなく連続して就労
日 5 日間無断欠勤し、経営者が正しく書面で 2 回呼び出した場合には、
自己都合退職したとみなし、雇用関係を終了(PHK)することができる。
第 2 項 第 1 項に述べる正当な証明が添付された書面の説明は、遅くとも労働者
が欠勤後出勤する第 1 日目に提出されなければならない。
第 3 項 第 1 項に述べる雇用関係の終了の場合、該当する労働者は第 156 条第 4
項の規定に従って損失補償金を受ける権利を持ち、労働契約、就業規則
又は労働協約中に金額と実施について決められている離職手当が支給
される。
(法解釈)第 1 項における「正しく呼び出す」とは、労働者の報告に基づき会社
に記録されている労働者の住所あてに書面で呼出しを行うことである。最初と
第 2 回目の呼出しの間隔は最低 3 労働日以上が必要である。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0212.html
(2)責任当局での拘留による雇用関係の終了
労働法第 160 条
第 1 項 (抄)労働者が、経営者の訴えによらず罪を犯したと推定されたために
当局に拘留されている場合、経営者は賃金を支払う義務はないが、労働
者が引き受ける家族に対して次の規定(省略)のとおり支援を与えなけ
ればならない。
第 3 項 経営者は、しかるべき手続によって第 1 項に規定される刑事事件の過程
にあり労働ができない労働者について、6 ヵ月後に雇用関係を終了させ
ることができる。
172
9 退職・解雇
第 5 項 裁判所が 6 ヵ月の期間が終了する前に刑事事件の判決を下す場合、経営
者は該当する労働者の雇用関係を終了させることができる。
第 6 項 第 3 項及び第 5 項に規定される雇用関係の終了は、労使関係紛争終了機
関の決定なしに行われる。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0212.html
(3)労働者による雇用関係の終了の申請
労働法第 169 条
第 1 項 経営者が以下の行為を行った場合、労働者は労働紛争調停機関に、雇用
関係の終了を申請することができる。
a. 労働者を虐待したり、侮辱あるいは脅迫した。
b. 法律規則に違反する行為を行うよう労働者をそそのかし又はそのよ
うな行為をさせた。
c. 3 ヵ月又はそれ以上継続して所定の支払日に賃金を支払わなかった。
d. 労働者に約束している義務を果たさなかった。
e. 契約以外の仕事をするよう労働者に命令した。
f. 労働者の生命、安全、健康、道徳に危険を及ぼす仕事を与え、その仕
事は労働契約に記載されていなかった。
第 2 項 第 1 項に述べる理由により雇用関係を終了(解雇)される労働者は、第
156 条第 2 項の規定の 2 倍の退職手当、第 156 条第 3 項の規定の 1 倍の
勤続功労金と第 156 条第 4 項の規定に従って損失補償金の支払を受ける
権利を持つ。
第 3 項 経営者が第 1 項に述べる行為を行っていなかったことが、労働紛争調停
機関によって証明された場合には、労働紛争調停機関の決定なく雇用関
係の終了(解雇)を行うことができ、該当する労働者は第 156 条第 2 項
の規定の退職手当、第 156 条第 3 項の規定の勤続功労金を受理する権利
を持たない。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0212.html
173
9 退職・解雇
9.2
警告書
(1)関連法令
労働法第 161 条
第 1 項 労働者が労働契約、就業規則又は労働協約中に決められている規定に違
反した場合には、該当する労働者に第 1、第 2、第 3 警告書を続けて与えた
後に経営者は雇用関係を終了(解雇)することができる。
(法解釈)2003 年法律第 13 号労働法においては、労働者が労働契約、就業規則
又は労働協約中に決められている規定に違反した場合、経営者は該当する労働
者に第 1、第 2、第 3 の警告書をそれぞれの警告書の有効期間(第 161 条第 2
項では最長 6 ヵ月、労使の合意があればそれ以上の期間も可。
)内に与え、更に
労働者が有効期間内に違反した場合、労働事務所の許可を得て解雇できること
となっている。
(つまり 4 回の違反で解雇できる。
)
第 2 項 第 1 項に述べる警告書はそれぞれ最高 6 ヵ月間有効である。ただし、労働
契約、就業規則又は労働協約中に異なる規定がある場合は例外である。
(法解釈)それぞれの警告書は、労働契約、就業規則又は労働協約に定められる
規定に従って順番を追って又は順番を追わずに発行できる。警告書が順番通り
に発行される場合、
最初の警告書は 6 ヵ月間有効である。6 ヵ月の猶予期間中に、
労働者が労働契約、就業規則又は労働協約の規定に再度違反した場合には、経
営者は第 2 警告書を発行できる。その有効期間は同様に、第 2 警告書の発行か
ら 6 ヵ月間である。労働者が労働契約、就業規則又は労働協約の規定にまだ違
反する場合には、経営者は第 3(最終)警告書を発行できる。その有効期間は、
第 3 警告書の発行から 6 ヵ月間である。第 3 警告書の猶予期間内に、労働者が
再び労働契約、就業規則又は労働協約の規定に違反した場合には、経営者は解
雇を行うことができる。第 1 警告書が発行されてから 6 ヵ月の期間が経過した
後に、該当する労働者が労働契約、就業規則又は労働協約の規定に再度違反し
た場合には、経営者が発行する警告書は再び第 1 警告書であり、第 2 警告書、
第 3 警告書についても同様に適用される。
労働契約、
就業規則又は労働協約は、
174
9 退職・解雇
第 1 で最終の警告書を与えることができる特定の違反を記載することができる。
第 1 で最終の警告書の猶予期間内に、労働者が労働契約、就業規則又は労働協
約の規則に違反した場合には、経営者は雇用関係の終了(解雇)を行うことが
できる。6 ヵ月の猶予期間とは、その間違いを改めることができるように労働
者を教育する施策として意味を持ち、もう一方ではこの 6 ヵ月の期間は、経営
者が該当する労働者の業績を評価する十分な時間である。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0212.html
9.3
退職金(退職手当等)
(1)関係法令
労働法第 156 条
第 1 項 雇用関係の終了(解雇)にあたり、経営者は退職手当(uang pesangon)
及び/もしくは勤続功労金(uang penghargaan masa kerja)及び本来なら
ば受け取るべき権利の損失補償金(uang penggantian hak yang
seharusnya diterima)を支払う義務を負う。
第 2 項 第 1 項でいう退職手当の計算は、少なくとも以下のとおりとする。
a. 勤続年数 1 年未満
1 ヵ月分賃金
b. 勤続年数 1 年以上 2 年未満
2 ヵ月分賃金
c. 勤続年数 2 年以上 3 年未満
3 ヵ月分賃金
d. 勤続年数 3 年以上 4 年未満
4 ヵ月分賃金
e. 勤続年数 4 年以上 5 年未満
5 ヵ月分賃金
f. 勤続年数 5 年以上 6 年未満
6 ヵ月分賃金
g. 勤続年数 6 年以上 7 年未満
7 ヵ月分賃金
h. 勤続年数 7 年以上 8 年未満
8 ヵ月分賃金
i. 勤続年数 8 年以上
9 ヵ月分賃金
第 3 項 第 1 項でいう勤続功労金の計算は、以下のとおりとする。
a. 勤続年数 3 年以上 6 年未満
175
2 ヵ月分賃金
9 退職・解雇
b. 勤続年数 6 年以上 9 年未満
3 ヵ月分賃金
c. 勤続年数 9 年以上 12 年未満
4 ヵ月分賃金
d. 勤続年数 12 年以上 15 年未満
5 ヵ月分賃金
e. 勤続年数 15 年以上 18 年未満
6 ヵ月分賃金
f. 勤続年数 18 年以上 21 年未満
7 ヵ月分賃金
g. 勤続年数 21 年以上 24 年未満
8 ヵ月分賃金
h. 勤続年数 24 年以上
10 ヵ月分賃金
第 4 項 第 1 項でいう受け取るべき権利の損失補償金は以下を含む。
a. 未取得かつ有効な年次休暇
b. 労働者とその家族が、労働者の採用された場所へ戻るための費用
c. 住居、薬品及び医療費の補償は、退職手当並びに/又は条件を満たす
者については、勤続功労金の 15%とする。
d. 労働契約、就業規則もしくは労働協約に定められる他の事項
第 5 項 第 2 項、第 3 項、第 4 項でいう退職手当、勤続功労金、損失補償金の計
算の変更は、政令で定める。
労働法第 157 条
第 1 項 退職手当、勤続功労金及び延期している本来ならば受領する権利の損失
補償の計算基本として用いられる賃金構成は以下からなる。
a. 基本給
b. 労働者とその家族に支給されるあらゆる種類の手当、無料で労働者に
支給される現物の購入価格、また、労働者が補助を受け購入しなければ
ならない場合には、購入価格と労働者が支払うべき価格の差額を賃金と
みなす。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0212.html
176
9 退職・解雇
(法解釈)退職手当や勤続功労金は、勤続年数の長さに応じ、月額賃金の何倍と
いう形で定められている(図参照)
。受け取るべき権利の損失補償金は、雇用関
係を終了しなければ当然受け取ることができた各種の権利的事項を金銭に換算
したもの等となっている。
(構成要素は表 1 参照)
雇用関係の終了が発生するのには様々な場合があるが、それぞれ場合に応じ
て退職手当及び勤続功労金を規定の何倍支払うかが規定されている。
(表2参
照)
図 インドネシアにおける雇用関係終了時の退職金等について
10
9
8
退
職
手
当
月
額
7
6
5
4
3
2
1
0
3
6
9
1 2
1 5
1 8
2 1
2 4
勤続年数
勤続年数
11
10
9
8
勤
続
功
労
金
7
6
5
4
3
2
1
0
3
6
9
1 2
1 5
1 8
2 1
2 4
勤続年数
177
9 退職・解雇
表1 受け取るべき権利の損失補償金(労働法第 156 条第 4 項)
号
事項
解説
a
年次休暇
まだ労働者が取っておらず、まだ無効になっていない年次休
暇を賃金に換算して損失補償金に算入するもので、有給休暇
を会社が買い取る形となる。
b
帰郷旅費
労働者とその家族が、労働者が採用された場所に帰る費用。
c
住宅手当
住宅手当、医療治療費の補償として、退職手当又は勤続功労
及び
金を受け取る条件を満たす労働者は、退職手当又は勤続功労
医療治療費
d
その他
金の 15%の額を受け取ることができる。
労働契約、就業規則又は労働協約に定められるその他の事項。
178
9 退職・解雇
表2 インドネシアにおける雇用関係終了時の場合に応じた退職金等について
場合
該当条文
第 156 条
第 156 条
第 156 条
第 2 項の
第 3 項の
第 4 項の
退職手当
勤続功労金
損失補償金
1倍
1倍
規定通り
2倍
1倍
規定通り
1倍
1倍
規定通り
2倍
1倍
規定通り
1倍
1倍
規定通り
会社のステータスの変更、
合併融合又は会社の所有権
163 条
変更時、労働者が雇用関係を
第1項
継続する意志がない場合
上記の場合であって経営者
が会社で労働者を受け入れ
る意志がない場合
会社が継続して 2 年間赤字
で、又は不可抗力により会社
を閉鎖する場合
上記の場合でなくとも効率
を高めるという理由で雇用
関係を終了する場合
会社が破産したことを理由
に雇用関係を終了する場合
163 条
第2項
164 条
第1項
164 条
第3項
165 条
179
10.労使関係・労使コミュニケーション
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-1 どうしたらストライキを防止できるのか
分からず困った
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
製造業
2000 年頃
3.体験の際の職種・職務
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
A.困難事例の概要
日本の親会社から着任したばかりで右も左もよく分からないような状況だった
が、周りの日系企業でストライキが起こっているのを見ると、自分の会社でも起
こるのではないかと不安になったが、どうしたらストライキを防止できるのか分
からず困った。
B.対処概要
日系企業の人事労務担当者による情報交換会に出席して聞いたところ、次のよ
うな事項が重要、という指摘があった。
1.平素の対応
(1)労働組合との平素からの良好なコミュニケーション
どのような労働組合か知る。協調的な労働組合をつくる。
(2)労働者教育の推進
インドネシア人に日本人を分かってもらう。日本人もインドネシア人を分か
ろうとする努力をする。権利には義務が伴うことの理解。会社がなくなれば賃
金もない。会社が良くなれば自分たち労働者の生活も向上する等々である。
(3)労務管理をインドネシア人に任せ切りにしない
183
10 労使関係・労使コミュニケーション
日本で労務管理を経験した日本人社員が必要。担当インドネシア人を一人に
して頼り切らないこと。複数配置する。
(4)労働事務所とのパイプをつくっておく
労使で折り合わない場合はすぐに調停官に入ってもらう。
(5)警察とのコミュニケーションを持つ
違法行為があった場合にはすぐに介入してもらえるようにする。
(6)コンサルタント会社、弁護士の活用
労働問題に詳しい弁護士を探しておく。
(詳しくない弁護士も多い。
)
(7)日系企業間の情報交換
労働組合は非常に緊密に情報交換をしている。経営者側も情報交換をする必
要がある。
2.賃上げ交渉等の時
(1)交渉のルールを労使間であらかじめ取り決めておくこと。
(2)具体的な金額折衝に入る前に会社の状況等をよく説明し、理解を得ること。
3.争議になったら
(1)きちんとした手続きを経ていない場合、文書での警告をきちんと出す。
(2)会社側はあくまでもインドネシアの法律に従った手続きを取ること。
労働事務所の調停官へ相談すること。
(3)コンサルタント会社、弁護士の活用。
(4)警察との連絡-邦人安全の確保。
(5)邦人に危害が及ぶ恐れが出た場合は、領事館へ相談をすること。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. ストライキは労使のコミュニケーション不足から発生する。単に賃金が低
くて不満といった原因から発生するものではない。このため、普段から労使で
184
10 労使関係・労使コミュニケーション
十分なコミュニケーションを取っておく必要がある。労使協議会のような場を
設置して定期的に意見交換を行うことが重要である。
2. 労働組合が会社にある場合、その労働組合が真に労働者を代表しているか、
組合員の不満・要望をくみ上げているか、組合員に対してきちんと指導力を発
揮しているか、を確認する必要がある。場合によっては、労働組合のあるべき
姿について意見交換を行い、望ましい方向に導いていくことも必要になる。
3. 日系企業の間の情報交換会に出席して情報を収集したり、大使館の労働担
当書記官に聞くと参考になる。
185
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-2 インドネシアの労働組合活動
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
インドネシアの労働組合活動が全般的にどのようになっているのか良く分から
ない。
B.対処概要
インドネシアの労働組合活動は、スハルト政権下では制限され実質的には1つ
の労働組合しか許されていなかったが、同政権の崩壊後、後を継いだハビビ政権
は改革政策の一環として ILO の基本的な条約を短期間にすべて批准した。その中
の第 87 号条約(結社の自由)批准後、労働組合の設立、分裂が急速に進み、2005
年 10 月現在、全国規模の総連合体が 3 つ、連合体が約 87 存在している。企業に
おける労働組合は、基本的に日本と同様の企業内労働組合となっており、職種別
の企業横断型労働組合ではない。企業内労働組合は上部組織に属していない単独
型もあるが、上部組織に属しているものも多い。企業内労働組合は上部組織に上
納金を納め、上部組織から組合活動について指導・援助を受ける。上部組織であ
る連合体や総連合体によってそれぞれ活動カラーがあるので、企業内労働組合が
どの上部組織に属しているか知ることが重要である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
186
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-3 労使交渉に関して日本人社員が監禁される
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 11 月頃
3.体験の際の職種・職務
取締役
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ首都特別州西ジャカルタ市
A.困難事例の概要
西ジャカルタで機械製造工場を操業していたが、
賃貸でコストが高かったため、
西ジャワ州の工業団地に移転することを検討していたところ、労働者が移転の条
件として、給料の大幅引上げ、支度金、社宅の提供等を要求し、ストライキを実
施した。ストライキ参加労働者は、不参加労働者の入場を拒否、日本人 2 人は中
に入れたが、夕方になって 2 人が帰ろうとしたところ、会社が回答をしない限り
帰さない、として監禁下に置いた。
B.対処概要
1.警察に救出を依頼して会社には来てもらったが、警察は監禁されているとい
うだけではだめで、何か不法行為がないと動けない、ということで動かなかっ
た。
2.入国管理事務所に相談、依頼したところ、職員が被監禁者のうち日本からの
短期出張者を査証不備ということで連れ出してくれた。
3.ストライキが法令に定める手続を踏んだものでない、いわゆる「違法ストラ
イキ」であったことから、会社は(イ)今回のストライキは違法であること、
(ロ)違法な手段による結果は受け入れないこと、
(ハ)職場に復帰すること、
(ニ)労使交渉は実施する、という内容の警告書を労働者側に手渡した。
4. 労働者側は警告書を受けて日本人を解放したため、その後改めて労使交渉を
187
10 労使関係・労使コミュニケーション
実施した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. このような事態が発生するとうろたえてしまうことが多いが、うろたえて相
手方の要求をすぐのむことのないようにすることが必要である。日本人職員の
解放を呼び掛けつつ、すぐにはそれに応じないことを前提に、日本人職員の身
体の安全の確保、飲食、トイレ、睡眠の保障を要求し、必要に応じてベッド、
飲食料の差し入れを行う。
2. 警察、労働事務所、総領事館にも連絡をする。ただし、警察は労使問題不介
入ということで介入を要望しても拒否してくる可能性はある。そのような場合
は総領事館から必要な働き掛けを行うこともある。
3. ストライキが正当な手続を経ていない場合は、労働者側に警告書を文書で手
渡すことが必要である。
188
10 労使関係・労使コミュニケーション
例10-4 サボタージュ
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県 チカラン
A.困難事例の概要
1999 年末に労働組合が結成され、
2000 年 2 月 24 日から賃上げ交渉を開始した。
その後、数回労使交渉を繰り返したが決着がつかず、3 月 13 日組合よりストライ
キの通告があった。更に話し合いを繰り返したが合意に至らず、3 月 15 日より労
働争議に突入した。Aksi Mogok Kerja Damai(サボタージュ〔英語では Slow Down
と訳す〕
)と称し、出勤するが仕事はしない、破壊活動はないが構外で座り込み、
垂れ幕、プラカード、太鼓、日本人駐在員が出社する際に奇声を上げるなどの嫌
がらせを行い、
アシスタントマネージャー以上の従業員も全体の流れに逆らえず、
全員が退出した。そこにはイスラムを通じた強力な結集力があった。総務、動力
保安要員は説得の結果、自主的に職場に就いたが、他は全員が争議に参加した。
スーパーバイザー、キーパー、オペレーター等のクラスは早く職場に戻りたいと
言う者が多かったが、D3(高専、短大卒)
、テクニシャン(大卒)
、フォアマン(高
専、短大卒)クラスの反対が強かったようだった。3 月 15~20 日の間は日に 2~3
回交渉したがまとまらず、日本人取締役の指名解雇を要求するなどあらぬ方向へ
向かった。
(1997 年通貨危機、1998 年暴動、スハルト政権崩壊、IMF 条件を取入
れ、民主化、革新[労働者は不理解]の声が高まり、組合運動、更に労組の上部団
体がはびこり、ストライキを打つことにより名声を博すといった風潮になり、い
つどこでストライキが起きても不思議ではない状況にあった。労働省等、行政は
数の多い労組に恐怖を抱き、労組側に付くようになっていた。
)
189
10 労使関係・労使コミュニケーション
B.対処概要
1. 3 月 16~19 日は祝日、土、日でクールダウンも兼ねて特別休暇としたが、
この間に日本人と外注社員の手で出荷を実施した。
2. 3 月 21 日ブカシ労働事務所を入れて、政労使の三者会議(トリパルテイ)
を実施した。事務所は会社側に譲歩を要請した。会社が拒否すると、時間経過
に焦り始めた労組が譲歩案を提出した。しかし会社案より相当高かったため、
会社側はロックアウトをちらつかせた。
3. 結局、争議の法定期限切れに焦った労組側が、会社案に全面合意し、反日
本人も取下げた。
4. 争議行為の処分につきノーワークノーペイを認めさせた。
(当時は難しかっ
た。
)
5. 首謀者の処分について労働事務所は、
「今回の争議は違法だが、争議行為は
労働者の権利である」との観点から認めなかった。
(争議での処分は労働者が怖
くて事務所は合意しない。
)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. 正当なるストライキとは何か、ロックアウトの条件は何かを正確に認識し
ておくこと。
2. 労働省、宗教省、警察、軍、の各々の責任範囲、役割を正確に認識してお
くこと。
3. 期限を切って交渉するのは良くない、妥結後さかのぼって精算すべきとの
労働事務所の助言があった。
4. これで終わり、ファイナルといった表現は絶対に避けること。しかしずる
ずると譲歩すると、まだいけると思い強気になってくる。交渉中に相手の話を
途切らないこと。
5. 労使交渉において要求のない所に積み増ししても効果はほとんどない。
6. 宗教問題は要注意。宗教省の問題だが、労働省まで敵に回す可能性が大き
190
10 労使関係・労使コミュニケーション
い。
7. 日本人が一枚岩であることが重要。インドネシア人の前では同僚の悪口を
絶対に言わないこと。
8. 交渉前に「Tata Tertib」
(交渉のルール)を労使間で締結し、労働事務所
に写しを提出しておくこと。
9. 労働問題は日頃の労使の付き合い、コミュニケーションを通じて相互の理
解を深めることが大切。(大変難しいが)急にやっても駄目。
10.問題が発生したら、当事者として解決に当たる気概を持つこと。(助言は
あくまでも助言にとどまる。決めるのは当事者自身。)
11.日常の管理を通じ、内外に協力者を作っておくこと。
12.扇動者等、不法ストライキを指導した従業員は、労働争議で解雇できなく
とも時間をかけて必ず解雇すること。
(直らないし、放置すれば次の扇動者が生
まれる。労働事務所も別件での解雇[正当な理由であることは必要]は認めてく
れる。
)
13.常に工場を巡回し、従業員の顔付き、態度、対応で何かを感知すること。
14.世間相場等、近隣の情報を把握しておくこと。
15.日本の親会社にインドネシアの労働争議の実態を理解してもらい、ストラ
イキを打たれたら恥ずかしい、もう駄目だといった意識を変え、積極的に支援
してもらうこと。
16.労働事務所に仲裁を求め、事務所が Kesepakatan Kerja Bersama(共同合
議書)(案)を作成し、これを拒否した場合、事務所の顔を潰し、敵に回す可能
性があるので、事前によく根回しすること。インドネシア語で書かれているの
でごまかされないようによく注意すること。事務所が常に中立とは限らない。
17.労働事務所は仲裁裁定を行う義務があるものの中々腰を上げない。日頃の
付き合いもさることながら、中央のトップからプッシュしてもらうなど中央と
のつながりも重要。
191
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-5
労働協約の改定時に
協定内容の見直し、変更を申し出たが拒否された
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 11 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州ボゴール県
A.困難事例の概要
インドネシアの労働法では、労働協約は 2 年ごとに改定するよう義務付けられ
ている。2000 年の改定時、2 年前に新規に協定された条項の見直しを行い、かね
てから労働協約の協定に不合理であると考えられる次の 3 項目、①労働法で定め
る条項の数値と重複して協定されている数値の削除、
②賃金構成の一部である
「諸
手当」の金額表示の削除、③労働法で定める条文の解釈の明確化を労働組合に申
し入れを行った。しかし労働組合からは、既得権を盾に応じようとしない。管轄
する労働・移住省支局の担当官は、2 年ごとの改定は、少しでも条件の引上げを
図ることだとして、協定内容の見直し、変更をすることができなかった。
B.対処概要
2 年ごとの協約改定で労使の合意が得られない場合は、前回の協定内容が継続
適用されると、労働・移住省より指導された。以後、毎年交渉してきたが応じら
れず、内容の見直し変更がされないまま、2003 年時点まで 98 年協定内容が適用
されてきた。
労働協約を新規に締結する場合、あるいは改定する場合、現労働法に抵触しな
いことはいうまでもないが、協約条項は労働法と重複した内容、数値での協定を
避けることが賢明である。
192
10 労使関係・労使コミュニケーション
1. 労働法で定める条項を尊守する姿勢を明確に条文に表現し、数値は労働法
に従うとした方が賢明である。例えば、労働法では残業の割増し率の数値が明
記されているが、労働協約に同様に数値を明記した場合、毎年の賃上げに伴い
自動的に残業計算の基礎給の賃率は上昇するにもかかわらず、2 年毎の協約改
定時に割増率の引上げが要求でき得る協約となる。
2. 労働法では、賃金の定義に「基本給」と「各種の手当」がうたわれている。
労働協約で賃金を定義付けする場合は、
「手当」の項目に金額表示を避けるこ
とが肝要である。協約での表示金額は 2 年ごとの改定の対象となり、毎年の賃
金改定とは別口に改定要求をされる。
「手当」の改定は賃上げ総額の配分論議
とすべきである。また、毎月固定的に支払われる「手当」は残業、退職金等の
基礎給とみなされるため、手当の項目自体を少なくすることが肝要である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. スハルト体制崩壊後の民主化促進時に、既存の労働組合と正式に労働協約
が締結された。当時の労働環境から労働法令の運用が目まぐるしく変わったの
だろう。
(
(注)参照のこと。
)新規に労働協約を作成し、締結する際、経営側
だけにより協定書の草案を作成するのではなく、労働法の解釈論議等について、
組合幹部を巻き込む形で行った上で草案を作るのが理想的であったと思われ
る。
2. 労働法で定める 2 年ごとの労働協約の改定は、労働法が改定された場合、
それに抵触する労働協約の改定を促す目的もあるのだろう。したって、日頃か
ら労使双方で労働法令の改定には傾注し、月次の労使懇談会(協議会)等で逐
次、協定条項の変更が可能な労使関係を築くべきであろう。
3. 労働法では労働者保護のために、
「労働条件は、労働法と労働協約でうたわ
れているどちらかの有利な方を適用する。
」とされている。したがって、労働
協約は労働法に抵触しない内容で、労働法の条文の明確化、解釈の統一を図る
ことが賢明である。その上で、労働法でうたわれていない条件項目を明確に表
193
10 労使関係・労使コミュニケーション
現することが肝要である。
4. 労働協約の締結は、日本では会社と組合の労使協定であるが、インドネシ
アでは、管轄する労働・移住省の地方事務所も関与する。つまり、政労使によ
る三者協定となる。協定書には三者の確認サインが必要とされる。
(注)1997 年に改正労働法が成立し、その翌年より施行される予定であったが労
使等の反対により施行されず、改めて制定作業が行われた。その結果、2000
年に労働組合法が成立し、施行され、また 2003 年に労働法が成立し、施
行された。
194
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-6 人事係員のルール違反の対処
関連情報
1.企
業
の
業
種
サービス業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2005 年 3 月~2005 年 7 月
3.体験の際の職種・職務
機械修理ディレクター
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
当社も社員数が多くなり、知り合いからの紹介で人事係員を採用したが、この
人事係員がくせ者であった。この人事係員は紹介者の手前もあり、初めのころは
会社の規則をよく守り、システムどおりに動いていた。3 ヵ月の研修期間を過ぎ、
1 年契約に切り替えて 2 ヵ月くらいから平日に休みが多くなり、勝手に会社の人
事のルールを変えたり、会社の許可無しに新しい規則を作ったりした。4 ヵ月を
過ぎた頃には 1 ヵ月の半分以上を休むようになり、本人に注意すると、
「サキット
(sakit:病気)
だ。
」
という返事が返ってきた。
医者の診断書は出したかと聞くと、
「後で出す。
」との返事で出てこない。病気でない休みを振り替えで出勤するよう
に告げると、いやだと言う返事だった。
(もちろん有給はしっかり取っている。他
の社員は会社の規則だから素直に聞いてくれる。
)
また自分に都合の良い会社の規
則のみ従い、自分に都合の悪い規則は会社の規則が間違いだから従えない、と言
い出す始末であった。それどころか他の社員に、この会社は社員に対して悪いこ
とばかりだと触れ回るようになった。
B.対処概要
この件をインドネシアのマネージメントコンサルタント会社に相談した。そし
て本人に直接面談し、内容を聞き出してもらった。結果として、契約期間が残っ
ているなら、その分の給料を支払ってでも早く辞めさせることとの話だった。本
195
10 労使関係・労使コミュニケーション
人が過失(会社の規則に従わないなどの過失数件)を認めたために警告書を出し
た。
それからパソコンを調べてみると、
会社の機密をフロッピーに取り込んでいて、
持ち出す寸前だった。それ以来経理部を部屋にし、関係者のみに合鍵を渡すこと
にして、鍵をかけるようにした。その後、2 ヵ月分の基本給のみ渡して解雇した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
どんな親しい人の紹介でも、採用する本人の前歴を調べて採用することが大切
だと思う。
(良い勉強になった。
)当社は機械のプラント及び機械のメンテナンス
を主にした事業を行っているので、社外に機密が漏れることは大きなマイナスで
ある。人を雇うということは大変なことであり、国が異なると意味の取り違えな
ど言葉の弊害や文化の違いもあるのでよほど気を付けなくてはいけないと思う。
196
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-7 従業員から株主への突然のコンプレインレター
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 11 月~2001 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
取締役社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
社長交代着任後三ヵ月経った頃、突然日本の親会社及び一部ローカル株主あて
に、従業員大多数の署名を集めたリストを添付して、コンプレインレターが送り
付けられた。その要求内容は、
「人事担当サブマネージャーを辞職させること、さ
もなくばストライキを打つ。
」というもの。当時当社は組合未結成だった。
B.対処概要
レターの内容が日本の常識から見ると非常に幼稚な問題を直訴していて、社会
人としての体を成していないと感じた。また、この時期当国で労働問題が起こる
とすぐにストライキを打つという一種のムードがあり、それに乗った形の要求だ
ったことから、以下の段取りで対処した。
1.手紙を受け取った株主には対処のしようがないこと、また、責任者である社
長には送付されていなかったことを理由に、まずは社内で話し合いを持つよう
提案し、グループ・リーダー以上の者全員に集まってもらい、従業員対マネー
ジメントの話合いを開始した。
2.この会議では余り意見が出ず、順番に発言を求めても同様だった。若干一方
的ではあったが、マネージメント側も反省すべきは反省し、今後コミュニケー
ションの場を定期的に持つことや、意見箱の設置などを提案した。当該人事担
当辞職問題には時間をくれるよう申入れして、次の会議日程も提案し、一旦会
197
10 労使関係・労使コミュニケーション
議は終了した。
3.その当日午後に従業員の主だったメンバーが社長に話ありとして、
「今夜もう
一度ローカルのマネージャーを外して直接話合いを持ちたい。
」との申入れがあ
った。それに応えて会議を持った結果、
「人事担当のみではなく、今のローカル
マネージメント(二名)も同様に辞めてもらいたいが、会社の状況からすれば
それは難しいだろうとの判断で人事担当の辞職を求めている。これは絶対に譲
れない。時間も長くは待てない。
」と再度の念押しとなった。
4.当方からは、①株主と相談し、人事担当の問題対処を一ヵ月以内に報告する、
②原因はコミュニケーション不足であるので、今後定期的な会合の場を持つ、
③そのための従業員側の委員会を作ってメンバーを決める、④昇給・昇格等で
の不満についてはルールをもう一度よく双方で確認し合う、といった約束をし
た。
5.結果としてストライキは回避でき、お互いのコミュニケーションが大事との
共通認識ができた。この委員会がその二年後に発展的に組合結成となって今日
に至っている。
(その後現在まで大きな紛争案件はない。
)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.会社設立当初から採用していた従業員に、当時の経営者が甘い約束をした気
配があり。
(主だった者達に 3~4 年後にはマネージャー格にする等。
)
2.さらに当初の人事担当が女性で、相談事(借金申し入れ等)に強腰にルール
で説明できておらず、それが急に厳しくなったと錯覚させていた。
3.なんといっても本当の意味でのコミュニケーションを怠っていたことは、マ
ネージメントの反省が必要。
(突き上げられてやるのは逆効果。
)
4.昇給・昇格のガイドラインがあるにもかかわらず、周知徹底不足では個々人
が勝手な解釈をしてしまう。
198
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-8
名誉棄損訴訟で裁判直前までいった
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2001 年 10 月~2002 年 9 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州
A.困難事例の概要
購買担当者が安い消耗品を高く見積もって、差額を着服していたことが発覚し
た。
1.別の者が急ぎで偶然同じ店で物を購入した時と、価格が大きく異なっていた。
2.ドイツ製と記入され、高級品だから高いと説明していたが、現物は廉価なイ
ンドネシア製のものだった。
3.店ごとの領収書が異なるのに、サインが同じ。
以上の証拠を突き付けたが、店員とグルになっており、本人を連れてきて確認
したものの、すべてが店側の間違いと説明されて不正が暴けなかった。一旦不正
はなかったということにして騒ぎを終了させた。その後、本人は購買担当者とし
て安いものを購入する能力が乏しい、として配転を命じたところ、名誉棄損で不
当な扱いを受けたとして訴訟すると言われた。
自称弁護士という者も、マフィアまがいの脅しで「警察・裁判所にツテがあり、
裁判になっても会社は絶対に勝てないから、素直に金を出せ。
」と言う。
B.対処概要
対処のため雇ったローカル弁護士からも、重大な問題に発展すると言われ(警
察や裁判所を味方に付けるには、相手以上の金額が必要との由。
)交渉を依頼した
が、全く話を進めず、費用のみを要求された。そこで工業団地事務所に相談し、
199
10 労使関係・労使コミュニケーション
日本人弁護士事務所を紹介してもらい事情を説明したところ、
1.解決を焦って弱気な交渉しない。
2.金はかかっても徹底抗戦の構えを見せる。
3.警察・政府高官とコネクションがあるように見せる。
というアドバイスを受け実行した。
結局、元従業員は毎月の生活費が底をつき、支援者も離れていき、裁判でも自
分たちのコネ以上の強力なコネが会社側にあることから勝てないと思ったのか、
通常の解雇手続きで納得して本件は終了した。この間約 11 ヵ月を要した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.ローカルの弁護士は相手の弁護士とグルになっている場合が多く、100%は
信用しない。
2.工業団地事務所や他社の日本人など、相談できる人脈を作っておく。
3.日ごろから標準的な価格を覚えておき、受入れ時に品物と伝票が一致して
いるかを別の人間に確認させる。
4. 購買は信頼のおける者にさせ、定期的に交代させる。
5. 安易に早期解決を考えず、粘り強く交渉する。
200
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-9
突然のストライキ通告
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
ある日、
不当解雇を理由に、
組合からストライキを実施する旨の通知を受けた。
組合側から指摘を受けた不当解雇とは、数ヵ月前に倉庫から補修部品が盗まれた
時に、警備員が寝ていたことが判明し、その警備員はそれ以前にも数回夜間に寝
ていて盗難に遭っていたため、解雇を申し渡したもの。実際には、警告書はまだ
2 回しか出していなかったが、日頃の勤務態度が良くないとして解雇通知した。
組合側としては、
この決定を不服としてストライキの実施を通知してきたもので、
その対応に苦慮した。
B.対処概要
労働組合とは日頃からコミュニケーションを取っていたため、事前の話合いも
なく、いきなりストライキの実施通知が出たことに、非常に落胆した。
組合としては、本人が盗みを犯して認めているのであれば、解雇もやむを得な
いが、本人が盗みを犯したのではなく、勤務時間中に盗難に遭ったという理由の
みで 3 回目の警告書を待たずに即刻解雇することはおかしいとの主張であった。
その後、警備員全員と話し合いを行い、当該警備員には解雇ではなく、3 回目の
警告書を出すこと、警備のシステムの改善を警備員も参加して行っていくことを
組合側と約束し、結果としてストライキは実施されなかった。
201
10 労使関係・労使コミュニケーション
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.解雇に際しては、法律により定められている条件があるので、まずは法律
と照らし合わせて判断すべきである。また法律的に解釈して、会社側が正し
くとも解雇に当たっては、本人及び組合に対する十分な説明と話し合いが必
要である。
2.普段のコミュニケーションがもっとも大切であるとの認識の上に立ち、日
頃、組合との話し合いの場を作ってきたと自負していたところが過信であっ
た。やはり経営者として十分と思っていても、その思いが 100%相手に伝わ
らないことも多いので、常に謙虚に物事に対処していかなければならない。
202
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-10 ストライキの発生理由
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
ストライキがなぜ起こるのかよく分からない。
B.対処概要
1.ストライキの原因
ストライキは労使のコミュニケーション不足から発生する。しかし、ストライ
キの原因となる使用者と労働者との間の意見の相違について、労働者側の不満を
分析していくと以下の表のようになっている。
表1 2002~2004 年のストライキの発生状況(労働者の要求別)
2004 年 12 月 31 日現在
原 因
2002 年
2003 年
2004 年
最低基準に係るもの
レバラン手当の権利
1
11
10
4
残業の権利
7
7
6
休暇の権利
13
9
3
労働社会保険
最低賃金
P4P/P4D の決定
1
2
2
8
6
12
36
32
14
4
4
2
レバラン手当:略称は THR
P4P :中央労働紛争終了委員会 P4D :地方労働紛争終了委員会
203
10 労使関係・労使コミュニケーション
原 因
2002 年
2003 年
労働協約
1
0
1
労働組合
8
0
0
解雇
16
21
20
退職金支払い
11
14
5
サービス金
1
2
1
賃金不払い
4
7
12
120
112
80
21
12
8
12
7
12
合 計
2004 年
最低基準以外のもの
ボーナス
スンバコ
3
復職
4
4
7
41
28
24
給与リスト
3
10
11
皆勤手当
5
0
3
10
1
4
食事メニュー/食事手当
ケータリング
2
0
1
団結
病気通知
29
36
23
賃金/レバラン手当引上げ
33
41
35
交通
30
25
25
昇進
0
2
1
脅迫/恨み
9
6
5
インセンティブ/福祉
42
48
34
法令より多額の退職金
14
8
13
宗教施設
5
0
1
シフト手当
3
1
2
制服
6
2
5
労働契約
28
10
14
人事担当課長
13
9
2
企業閉鎖
2
1
0
-
40
25
312
291
255
雇用関係上の身分
合 計
(注)ストライキは複数の要求事項を掲げて実施されることが多い。
3
主要生活必需品 9 品目
204
10 労使関係・労使コミュニケーション
このように、賃金に関する不満が一番多いが、福利厚生も大きな原因となる。
労働者の不満を汲み上げるためには労働組合から意見を聞くこと、また、目安箱
のようなものにより労働者の声を直接汲み上げる仕組みも検討すべきである。
人事担当課長が厳しすぎるということでその解雇を要求してのストライキもあ
る。これは、人事は経営側の専管事項ということが理解されていないためである
が、そのようなことは常日頃のコミュニケーションにより労働者側に理解させて
おく必要がある。
2.ストライキのきっかけ
ストライキが起こるきっかけは、労働組合が組合員の意思を統一してスト権を
確立してストライキを実施する、というものはほとんどなく、扇動者が声をかけ
て労働者が集まり、突然に発生する、というものが多い。この扇動者は労働組合
の指導者である場合もあるが、外部から入ってきた専門的な扇動者である場合も
多い。いわゆる山猫ストライキというものがしばしば発生する。
3.ストライキの行方
労働法においては、ストライキの実施手続きが定められているが、その手続き
を無視したストライキも多く、このため使用者から無断欠勤とされて解雇の手続
きに進んでいくケースもある。そのような場合は、法定の退職金にある程度積み
足して退職ということで決着することが多い。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
205
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-11 会社外部からの扇動
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
どうやったら扇動者が会社に入り込むのを防ぐことができるか分からない。
B.対処概要
外部からの扇動者は、労使コミュニケーションがうまくいっていないところに
入り込んでくる。扇動者が入り込むことができないように労使コミュニケーショ
ンを良くしておくことが必要である。労働・移住省の高官は、扇動者が入り込め
ないよう人の城、石垣を造り上げることが必要と指摘していた。
小グループによる改善提案活動や品質向上活動を実施し、グループ同士で互い
に競わせ合うと労働者の意識が高まり、外部からの扇動にも動ずることがなくな
って良い、との指摘もあった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
206
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-12 突然のストライキ
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 4 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
ある日、始業時間になっても工場の生産ラインに従業員が出てこないというこ
とがあった。食堂に集まって、それぞれが勝手にしゃべっていた。
B.対処概要
原因を知るために労働組合の委員長等に尋ねると、
「食堂へ集まれ。
」
、
「労働組
合をせっかく作ったのだから何かしよう。
」
「組合費を払っているのだからストラ
、
イキを一度やってみよう!」との声があったとのこと。
その後食堂で話し合いを行ったが、特別な要求もなかったので、午後から職場
に復帰することを約束し、騒動は終了した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. 98 年以降、労働組合の上部団体がたくさんできたため、オルグが工場へ頻
繁に来るようになった。そんな状況の中で、当社の労働組合も作られたので形
はできたが、組合幹部も何をしてよいか分からない状態であった。組合を作る
前に十分に話し合いをするべきであった。
2. 労働組合を作りたいという要求がある前に情報はキャッチできるので、現
地マネージャー任せにせず、日本人駐在員が慎重に対応する必要がある。
3. 組合との対話が大切なので、毎月1回の労使懇談会はできるだけ駐在員も
207
10 労使関係・労使コミュニケーション
参加する。言葉の問題で参加しない場合でも、マネージャーから十分に情報を
得て組合との折り合いを良好にしておく。
4. だめだと分かるような要求でも、
「一応要求してみよう。
」ということで言
ってくるケースがよくある。それらを含めて、例えば「10 の要求に対してい
くつ OK するか?」を組合の反応を見ながら決めていく。
5. 労使懇談会だけでなく、普段のコミュニケーションがもっとも大切である。
208
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-13 会社内での労働組合結成への対応
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
労働者が労働組合をつくろうとしているが、どう対応したらいいのか分からな
い。
B.対処概要
労働者が企業内で労働組合をつくろうとしているときにそれを妨害することは
不当労働行為になるので妨害はしてはならない。労働組合ができることになった
背景を知った上で、労働組合と意思疎通を円滑にする仕組みをつくることが重要
である。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
209
10 労使関係・労使コミュニケーション
事例10-14 ストライキ実施者による工場占拠と破壊活動
関連情報
1.企
業
の
業
種
2.問 題 の あ っ た 時 期
3.体験の際の職種・職務
4.場所(州または都市)
A.困難事例の概要
ストライキ実施者が工場を占拠し、さらに破壊活動を行った。
B.対処概要
ストライキは、インドネシアの法令にのっとり平和的に実施されなければなら
ないが、工場の不法な占拠、破壊活動は労働運動の範囲を超えており、警察の介
入を依頼することが必要になる。労働事務所、総領事館にも連絡を取る必要があ
る。日本人職員の安全を最大限重視しつつ、ストライキ実施者と交渉を行う。ス
トライキ実施者の破壊行為等については、
「誰がいつ何をした」といったことにつ
いてきちんと証拠を押さえた上で警察に処理を依頼する必要がある。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
210
10 労使関係・労使コミュニケーション
10 労使関係・労使コミュニケーション 関連解説
10.1
労働協約
(1)労働協約とは
労働法第 1 条
第 21 項 労働協約(Joint Working Agreement=Perjanjian Kerja Bersama)と
は、既に労働分野に責任を負う政府機関に登録されている(単一)労働
組合又は複数労働組合と、雇用主、経営者又は雇用主団体との間の交渉
の結果としての合意事項であり、
就労条件と労使双方の権利と義務を記
載したものである。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0201.html
(2)記載の必要な項目
労働法第 124 条
第1項
労働協約は少なくとも以下を記載する。
a. 経営者の権利と義務
b. 労働組合及び労働者の権利と義務
c. 労働協約有効期間及び発効日
d. 労働協約作成者の署名
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
(3)労働協約と労働法
労働法第 124 条
第2項
労働協約内の規定は、現行法規に反してはいけない。
第3項
第 2 項でいう労働協約内容が現行法規に反している場合、
その反する規
定は法の下で無効となり、法規の規定が有効となる。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
211
10 労使関係・労使コミュニケーション
10.2
就業規則
(1)就業規則とは
労働法第 1 条
第 20 項 「就業規則」とは、労働条件及び会社規律を記載した、経営者によって
書面にて作成された規定をいう。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
労働法 108 条
第1項 10 人以上の労働者を就業させる経営者は、大臣もしくは指定官吏による
承認後有効となる就業規則を作成する義務を負う。
第 2 項 第 1 項でいう就業規則作成義務は、労働協約を有する会社には無効とな
る。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
(2)労働協約と就業規則
労働法第 129 条
第 1 項 経営者は、その会社に労働組合がまだある間は、労働協約を就業規則に
変えることは禁じられる。
第 2 項 会社に労働組合がなくなり、労働協約が就業規則に変えられる場合、就
業規則にある規定は、労働協約にある規定を下回ってはならない。
(出典) 労働関連法規 Peraturan Perundang-Undangan Ketenagakerjaan
新労働法 UU-13/2003 ForumAMYN 2003.5.20
10.3
労働組合
(1)関連法令
労働組合に関連する法律として、
2000年第21号労働組合法と2004年1月14日付け
法律第2号産業紛争解決法が挙げられる。
212
10 労使関係・労使コミュニケーション
産業紛争解決法による紛争解決のメカニズムは次の通りである。
1)紛争当事者間の二者協議
協議開始から 30 就業日以内に合意に達した場合は、合意書に署名し、現
地の産業紛争関係裁判所に登録する。
協議開始から 30 就業日以内に合意に達しなかった、あるいは協議が決裂
した場合は、紛争を現地の労働担当機関に登録する。
2)調停・仲裁・仲介
紛争登録後 7 就業日以内に、調停官による調停、あるいは仲裁人資格を有
する仲裁人による仲裁を選択する。期限内に調停か仲裁を選択できなかった
場合は、仲介官による仲介に任される。
調停・仲裁・仲介いずれも期間は申請受理より 30 就業日。調停及び仲介
は、調停官あるいは仲介官の提案に紛争当事者が回答する形で合意を模索す
る。調停・仲介で合意に至ったケースは、合意書に署名して現地の産業紛争
関係裁判所に登録する。合意に至らなかった場合は、産業紛争関係裁判所に
紛争解決を申請できる。
仲裁では、まず和解を模索し、和解に至ったら和解証書に署名して現地の
産業紛争関係裁判所に登録する。和解が得られない場合に仲裁人の裁定を受
ける。仲裁人の裁定は拘束力があり、最終的なものである。
3)産業紛争関係裁判所での解決
調停あるいは仲介で合意に至らなかった場合に解決を申請する。仲裁の場
合は、和解に至らなければ仲裁人の裁定を受けることになるので、産業紛争
関係裁判所へ訴え出ることはできない。公判期間は初公判から 50 就業日。原
則、産業紛争関係裁判所の判決は最終的・恒久的なものである。
産業紛争関係裁判所は、各州都にある県/市の地方裁判所と最高裁判所に
設けられるもので、現行の中央/地方労働紛争解決委員会(P4P/P4D)に代
わる機関となる。二者協議や調停・仲裁・仲介における合意の登録先でもあ
り、労使紛争等の管理がまとめられた。それぞれの段階での紛争処理期間も
213
10 労使関係・労使コミュニケーション
明確に定められ、スピーディーで公正な紛争処理の実現に期待がかかる。
4)産業紛争解決法の施行延期
政府は、2005 年 1 月 13 日付け 2005 年第 1 号政令にて、2004 年第 2 号産
業紛争解決法の施行の 1 年延期を決めた。当初は 2005 年 1 月 14 日に施行予
定であったが、2006 年 1 月 14 日に延期された。
産業紛争裁判所及びその特別判事等がそろわないことが理由。延期期間中
は引き続き旧令に当たる、中央/地方労使紛争調停委員会(P4P/P4D)を通
じた解決を定めた 1957 年第 22 号法、及び 1964 年第 12 号解雇法に従う。
(出典) http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/idn/invest_11?print=1
(2)労働組合の現状
現在、労働組合法に基づき、正式に設立された全国規模の総連合体としての組
織は 3 つある。そのほかに連合体としては政府の認定している 87 団体がある。
○全インドネシア労働組合総連合(KSPSI)
昔からあった全インドネシア労働組合連合(SPSI)という連合体が、2001 年 8
月に再登録した。傘下には 18 の産業別の組合がある。
○インドネシア労働組合総連合(KSPI)
2002 年 2 月に新規登録した。傘下の連合体は 10。労働組合の大半が、海外の労
働組合や労働関係機関と連携をとっている。
○インドネシア福祉労働者組合(SBSI)
傘下には 11 の産業別の組合がある。
現在、多くの連合体が、このいずれかの総連合に加入している。
日系企業に関しては、KSPSI 傘下の労働組合を有しているところが多い。これ
らの労働組合は、お互いに競い合いながら、傘下の労働組合の拡大に躍起になっ
ている。また、会社によっては、労働組合のあるところに、2 つ目の組合を作ろ
うとする動きが出て、問題が起こることがある。
(出典) http://www.ovta.or.jp/info/asia/indonesia/06labor.html
214
11.日本人社員の問題
11 日本人社員の問題
事例11-1
ローカルスタッフと日本人駐在員の待遇の問題
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 4 月~2005 年 9 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
東ジャワ州パスルアン県
A.困難事例の概要
2003 年 1 月、日本人駐在員が交代するのに伴い社長として出向した。駐在員は
交代後 1 年経過したが、仕事に不慣れな点もあり、ローカルスタッフとのコミュ
ニケーションを十分に取ることができなかった。苦渋の選択としてもう一人の駐
在員を増員することに決定し、
2004 年 1 月より出向してもらった。
しかしながら、
また 1 年を経過したころ、ローカルスタッフからこれら二人の日本人駐在員に対
する待遇の問題が表面化した。例えば、
「命令指示系統が全く機能せず、給与の高
い割には(日本人駐在員の給与は経理担当二名と私のみが知りえる機密のはずだ
が)二人とも仕事振りがローカルスタッフ以下。
」であった。社長が日本人である
ために「ローカルスタッフには厳しいが駐在員には優しい。
」との誤解が生じた。
不協和音が流れ、あわやストライキに発展しかねない状態に陥った。
B.対処概要
二人の日本人駐在員は当初、日本より課長待遇で招へいしたものであったが、
2004 年 9 月に取締役会において課長から係長に降格する人事を決定し、その後の
奮起に期待した。しかし、ローカルスタッフの観察は厳しく、
「何故に本社は能力
の低い人材を送り出すのか?」との声が上がった。ついに不協和音打開のため本
社へ相談後、その駐在員を 2005 年 9 月に帰国させることとした。その代わりに
2003 年 1 月に帰国した前任の駐在員を再度招聘することに決定した。なおかつ固
217
11 日本人社員の問題
定費削減に寄与した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
インドネシアでは、2001 年頃長期滞在する外国人に対してインドネシア語能力
検定の義務化の話が持ち上がり、断ち消えとなったことがある。
(現在も義務化は
なされていない。
)やはり日本サイドも適材適所と相手国の土地・風土・習慣・文
化を熟慮し、真摯に事前準備することが肝要である。また出向社員に対し、有形・
無形の技術移転を行い、国対国の移動・協力を自覚すべきである。相手国のロー
カルスタッフはたった一人の日本人駐在員だけを見て、日本国民全体がそうだと
とらえる事実を認識すること。またことわざでいえば「郷に入っては、郷に従え。
」
のごとく、その国を尊重し、謙虚で、
「情熱・愛情」を兼ね備えたバランスある一
挙手一投足が必要であると再認識した次第である。
218
11 日本人社員の問題
事例11-2 日本人指導員を 1 年で帰国させた
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業(自動車業界)
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年頃
3.体験の際の職種・職務
技術指導員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バタム島
A.困難事例の概要
問題は会社設立後一年目の時であった。操業を開始して以来、どんどん注文が
増えてきた。当時現場には、日本から派遣された優秀なベテラン指導員がいた。
しかし注文の増加と共に、一人の指導員では手が回らなくなり、やむなくもう一
人の指導員を日本から追加で派遣してもらうことに決定した。そして見るからに
力強く、健康そのものの指導員が派遣されてきた。しかし、その指導員は、ほん
のささいなことに対してまで、現地従業員を人一倍大きな声でしかりとばした。
現地マネージャーからの報告では、どうも適切な作業指導はなされていない様子
だった。また現地インドネシア人から、現場で発生する諸問題に対しアドバイス
を求められると、いつも日本へ長距離電話をかけて解決策を求めていた。上司か
ら注意されると、その時だけは「はい、分かりました。以後、気を付けます。
」と
言う。しかし現場に戻ると、再び同じことが繰り返された。ついに現地パートナ
ーから、指導員の即日交代要請を受けることとなった。
これはジョイントベンチャー企業としては重大問題である。派遣された指導員
の適性等について日本に再確認すると、派遣前に説明された内容と食い違ってい
た。日本側の本音は、本人の教育訓練を兼ねて、指導員として派遣したとのこと
であった。
冗談ではない。現地企業は日本人指導員に対し、相当の指導料を払っているの
だから。
219
11 日本人社員の問題
B.対処概要
日本側の事情にも配慮し、本人も傷つけないよう、そして現地パートナーの顔
も立てるよう、指導員の一年目の「労働許可書」改定時、
「政府からの許可書が出
ない。
」ということで、当該指導員の指導期間を一年で打ち切ることとした。
もちろん現地パートナーから政府に対し、当該指導員の「労働許可延長申請書」
を許可しないよう、強く要請したことは言うまでもない。なお、この要請は日本
側へは知られていない。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
日本側での指導員選定に当たっては次のことに留意する必要がある。
1.指導員の適性
指導員としての十分な適性を備えていること。
2.指導員教育
指導員として当該製品の製造技術、品質管理技術等必要な技術、技能を十分
習得していること。不足する部分があれば、派遣前に日本側で指導員に対する
適切な教育をして派遣すべきである。製造経験者だからといって、安易に現地
へ指導員として派遣してはならない。
3.派遣区分の明確化
指導員の研修も兼ねて派遣する場合、それは指導員とははっきり区別し、
「研
修生」として派遣すべきである。
220
11 日本人社員の問題
事例11-3 イミグレーション職員からの裏金の要求
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年 10 月~2004 年 1 月頃
3.体験の際の職種・職務
本社社長、現地法人の社長、日本人社員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
スマラン市
A.困難事例の概要
1.2003 年 10 月に新しく日本人1人が工場で働き始めたが、観光ビザで入国し
ていた。
2.2003 年 12 月に日本の本社より社長がインドネシアに来たが、やはり観光ビ
ザで入国していた。
3.現地法人の組織替えがあり、経理部長が社長になった。その組織変更及び届出
を業者に頼んで申請してもらい、許可書を得て決裁等のサインをしていた。し
かし実際は、届出を頼んでいた業者が正規に申請すると時間がかかるため、違
法に書類を作り、許可書も偽物だったため、書類等にサインをすることは違法
行為に当たった。
以上 3 点をまとめて、イミグレーション職員への裏金で解決させられた。
B.対処概要
1、2 は基本的に会社側のミスであり仕方がない。しかし、3 の場合は会社側の
ミスもあるが、ある意味では会社も被害者になると考えられるので、申請を頼ん
だ業者に何とかさせようとしたが、個人営業のブローカー的な業者だったので責
任能力がなかった。
最初からイミグレーション職員は、裏金をせびろうという姿勢がみえみえだっ
たため、脅しには乗らずに正当に解決したいと思っていたが、問題が起きた時点
221
11 日本人社員の問題
でパスポートを取り上げられ、問題が解決するまではパスポートを返却しないと
言われた。しかもすぐ後に海外出張があったため時間的余裕がなく、何度か交渉
したが全く納得のいく交渉ができずに、ほとんど言いなりの額を払うこととなっ
た。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.これらのイミグレーション問題は、恐らく会社内部の密告によるものと思わ
れる。難しいと思われるが、密告するような社員を雇わないようにする。
2.交渉の際に、半日別室に収監された。こういった不当な扱いを受けたのは、
私に全く知識がなかったためで、わからない時は日本国大使館、総領事館に相
談するのが良い。
3.ある程度はイミグレーションと良好な関係を持ったほうが良いと思う。
なお、問題発生後に申請等の手続きを別の業者に変えた。
222
11 日本人社員の問題
事例11-4 イミグレーションからのクレーム
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 2 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長、副社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
スマラン市
A.困難事例の概要
2004 年 2 月に現地法人の組織替えがあり、旧副社長が社長に、旧工場長が(兼
任)副社長になった。その組織変更及び届出を、関連機関を通じてすぐに申請し
た。
会社にとって決裁などの書類は止めておけないので、申請をすると同時に新任
社長と、新副社長が決裁等の業務を遂行していたところ、どういうルートで連絡さ
れたかは不明だが、スマラン支局イミグレーションからクレームが付いた。
その内
容は「いまだ申請が正式に受理されてないのにもかかわらず、会社で決定した権
限外の業務を行った。
」ということであった。その結果として「罰金を支払え。
」
という決定が下された。
このようなケース(既に申請してある日本人の職務と実際に行っている業務の
乖離に眼を付け、結局「お金」を要求する。
)は数多くあり、いわゆる「脅し」
、
「ゆすり」で決着する。つまり目的は金を持っている日系企業から「闇金」をせ
びることである。
B.対処概要
申請期間の問題であり、恣意ではなかったこと、会社の運営上決裁を止められ
ないこと、またこういう場合にはどう申請したらよいかなどを、4 回に渡り交渉し
た結果、決定金額は最初に要求された 10 分の 1 で済んだ。しかしながら別の日系
企業で、相手の言い分に乗ってしまい、法外な金額を支払ったケースもある。
223
11 日本人社員の問題
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.今回の場合は、イミグレーションが「なぜこのことを知りえたか。
」というこ
とから疑う必要がある。会社内部告発である可能性が一番高いと推定する。し
たがって普段から内部告発者を出さない努力が必要である。当国では当局とつ
るんで、謝礼目的で告発するケースが多いと聞く。この対策は普段から、社内で
「教育」と円滑な「コミュニケーション」を徹底する以外にはない。
2.当局の脅しには乗らず、今後の再発を食い止めるためにも粘り強く、正論で
交渉に当たる。正論であれば、場合によって日本国大使館や総領事館に相談す
る可能性もあると言い切ってもよい。
このようなトラブルは、当地日系企業の中でも常に情報を共有しておき、相
手をけん制しておくことも大切である。
224
11 日本人社員の問題
事例11-5 日本からの出張者が急病になった
関連情報
1.企
業
の
業
種
卸売・小売業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
総務部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ市
A.困難事例の概要
東京からジャカルタへの出張者が、金曜日正午ごろに急に腹痛を訴え、現地日
系医師に診察してもらった。
「急性盲腸炎の可能性が高く、手術が必要とされる。
」
との診断であったと、同行していた現地駐在員が連絡してきた。
翌日から週末にかかるが、選択肢として、①東京へ移送し、東京の病院で手術
を受けるか、②近場のシンガポールの病院へ移送して手術を受けるか、③もはや
移送の余裕もなく、緊急を要するので、現地ジャカルタにて手術を受けるか、の
岐路に立たされた。
B.対処概要
まず同行の駐在員に、すぐさま本人の状況を詳しく知らせるように指示した上
で、国際電話でシンガポール支店の業務部長と、東京本店の人事部室長のおのお
のに連絡を取った。本人の状況を説明し、もしシンガポール移送、あるいは東京
移送になった場合、空港近くの病院に到着次第入院、場合によっては緊急手術も
可能かと、問い合わせた。ありがたいことに、どちらも到着次第、土曜日であっ
ても受け入れる病院を手配したとの確認をもらった。
本人と携帯電話で連絡を取り、痛みの症状がやや小康状態になっていることが
分かった。どの選択肢がベストか本人の希望を聞いたところ、
「まだ大丈夫なので
東京に戻りたい。
」という希望だった。医師はできるだけ早い手術を勧めたが、本
225
11 日本人社員の問題
人希望に対してはあまり強い反対はなかった。
実は飛行機の機内は、気圧が 0.9 気圧に減圧されており、その気圧差で臓器へ
の悪影響があるかもしれないと指摘されていたので、医師の意見も踏まえ、痛み
の状況を勘案し、慎重に担当ゼネラル・マネージャー、本店人事部とも相談、協
議の上、帰国させることにした。
本人は帰国すると成田空港からそのまま人事部手配の近隣の病院に向かったが、
診察時になんと痛みがやわらぎ、
結果的に手術することもなく病院から帰宅した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
急病、事故による突発的なケガがおこる可能性は常にあることから、ジャカル
タでも緊急の場合、
頼りになる医師とは常日ごろから連絡をよく取っておくこと。
医師及び医療のレベルから、やはりジャカルタでの手術は避けた方が無難であ
る。緊急の手術の必要がある場合は、本店・支店の協力を得て、速やかにシンガ
ポールや日本へ移送すべきである。
226
11 日本人社員の問題
事例11-6
突然の国外退去命令
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
インドネシア人以外は法律により、
人事担当の役職者にはなることができない。
財務担当の役員である日本人が、
人事関連の書類にサインをしてしまったところ、
警察の査察が入り、法律違反を指摘されて国外退去を命じられた。
B.対処概要
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.社長であればインドネシア人でなくとも、人事問題に関する書類にサイン
することは問題ないが、社長以外の役員、役職者については注意が必要であ
る。
2.通常こういった問題で警察が査察を行うことはないが、社内に不満分子が
いた場合、警察に密告する人間もいるので、社内でのコミュニケーションは、
日ごろから大切にしておく必要がある。
(参考資料) 11 日本人社員の問題
11.2 外国人の人事関連役職の禁止
227
11 日本人社員の問題
11 日本人社員の問題 関連資料
11.1
在留許可証
(1)滞在関連許可証と就労許可証
○居住許可証・KITAS (Kartu Izin Tinggal Sementara 通称:イエローブック)
インドネシアに 90 日以上滞在予定がある場合、入国後、7 日(土日祝日を含む)
以内にその居住する地域を管轄する入国管理事務所に赴き暫定居住許可証
(KITAS、
1 年有効、更新が必要、最長 3 年、期間満了後はいったん出国して再取得が必要、
発給まで所要 4 日)を取得し、外国人登録(POA)を行うことが義務付けられてい
る。
暫定居住許可証(KITAS)取得者は、KITAS 発行から 30 日以内に地域の本部警
察署に届出を行い、警察登録証明書(SKLD)の発給を受けることが必要。SKLD 発
給後、居住区管轄の警察へ STM(警察報告)の届出を行う。
以前 KIMS(Kartu Izin Masuk Sementara)と呼ばれていたものが、KITAS に変
更となった。
○外国人登録証明・RITAS (通称:ブルーブック)
90 日以上滞在する場合に、居住地域の地方移民局にて登録。
○住民登録・SKTT
地域政府役所への住民登録。
○警察登録証明・SKLD
KITAS 取得後、30 日以内に居住地の警察本部にて申請取得。
SKLD 発給後に、居住地を管轄する警察にて警察報告(STM)の届け出が必要。
○数次出入国許可・MERP
一時滞在用の査証を取得した場合は、
移民局にて数次出入国許可の取得が必要。
これを受けずに出国した場合は、再入国時に入国できない。
○労働許可証・IKTA
投資調整庁、又は州投資調整局が発給。所要 10 日。技術能力開発基金(DPKK)
228
11 日本人社員の問題
として、1,200 ドルの労働省指定銀行納付が必要。IKTA 取得後 3 日以内に、労働
省への雇用報告(UU-7)の手続きも必要となる。
○フィジカル(出国税)
滞在許可を所持する外国人が出国する際は、毎回 100 万ルピアの出国税がかか
り、併せて 10 万ルピアの空港税の支払いも必要。
(出典)http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=010012700305
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/indonesia.html
11.2
外国人の人事関連役職の禁止
(1)関係法令
労働法第 46 条
第 1 項 外国人労働者は人事又は特定の役職を扱う役職又は特定の役職に就く
ことを禁じられる。
第 2 項 第 1 項に述べる特定の役職は大臣決定で定める。
(出典) http://www.jjc.or.id/roudou/roudou0208.html
11.3
医療事情
(1)医療レベル
金銭の心配のいらない我々邦人や外国人が利用している私立病院は近代的な設
備も整っており、また我々は信頼できる専門医を受診していますので、日本の中
級レベルの医療が受けられると考えてよろしいと思います。
通常、ジャカルタで日本人の使用に耐える私立病院の個室に入院した場合、1
日 50-100 万ルピア(邦貨約 7,000 円から約 14,000 円)かかります。入院時には
この 10 倍をデポジットとして請求されると思って下さい。
手術料なども意外に高
額であり、骨折で手術し入院した症例で約 1,000 万ルピア(邦貨約 13 万円)かか
りました。
(出典) http://www.id.emb-japan.go.jp/imu_1.html
229
11 日本人社員の問題
(2)医療保険・海外旅行保険
緊急移送を含む海外旅行傷害保険に必ず加入しておいてください。
病気や事故に罹った時の治療費・移送費の補償が受けられます。また、当地で
の治療が困難で、シンガポールや日本への緊急移送が必要になった場合、医療器
材を搭載した専用機をチャーターし、医師が同乗するケースでは、日本までの移
送費(本国帰還)は 1,000 万から 2,000 万円になります。
(平成 13 年 4 月に発生
したケース:脳出血で機械呼吸器を装着したままの日本への専用機による移送:
15 万米ドルの見積もり。
)
緊急移送を含む保険に加入していて限度額以内であれば無料ですが、そうでな
ければ自費負担、ないし移送をあきらめざるを得ません。既に加入されている方
も、緊急移送について今一度そのシステム、提携先を確認しておいてください。
(出典) http://www.id.emb-japan.go.jp/imu_1.html
一般の海外旅行保険に長期滞在の駐在員の方に必要な補償を加えたサービスで、
本人だけでなく家族用や 5 年までの期間など様々なプランが用意されています。
11.4
事件・事故
(1)駐在員に対する傷害保険
国営社会保険会社、PT.JAMSOSTEK 保険制度への強制加入を義務付け(労働・移住
相決定 4 月 26 日付、No.KEP.67/MEN/IV/2004)
外国人労働者を雇用する雇用主は、当該の外国人労働者をインドネシアの国営
社会保険会社、JAMSOSTEK の制度に強制加入することが義務付けられた。これに
は①養老年金保険(JHT)
、②死亡保険(JKM)
、③労災保障(JKK)
、④医療・健康
保険(JPK)が含まれる。ただし、保険料算出基準など詳細は明らかになっていな
い。
労働・移住省は、2004 年 12 月 31 日付け労働・移住大臣規定 第 2 号(PER.02/
MEN/XII/2004)にて、外国人の JAMSOSTEK 加入義務を緩和した。
外国人の JAMSOSTEK 加入は 2004 年 4 月 26 日付け労働・移住大臣決定第 67 号
230
11 日本人社員の問題
(No.KEP.67/MEN/IV/2004)で義務付けられたが、これを撤廃。派遣国で JAMSOSTEK
に関する 1992 年第 3 号法律と同様の社会保障に加入している外国人には
JAMSOSTEK 加入を免除するとした。ただし、派遣国での社会保障加入の証拠を原
本で示すことが求められている。
(出典)http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=010012700305
231
12.宗教・慣習
12 宗教・慣習
事例12-1
突然の停電
関連情報
1.企
業
の
業
種
建設業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1990 年 10 月頃
3.体験の際の職種・職務
チーフアドバイザー
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
ある日夕方から 3 日間停電した(PLN[国営電力公社]の配電網故障)
。水が出な
くてシャワーが使えない。トイレも大便のかたまりで悪臭を放った。そしてクー
ラーも止まって暑くて眠れない。窓扉を開けると蚊が入ってきて眠れない。とて
も住み続けられる状況ではなくなってしまった。
B.対処概要
日本人はすべてホテル等に避難した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
特に一軒家に居住する時は、次の事項に留意する。
1.貯蔵タンクの設置。
2.浄化装置をつける。
3.自家発電機を設置する。
4.バスタブの水は捨てない。(消火用等に用いる。)
アパートの場合は上記1、2、3を管理人に確認する。
235
12 宗教・慣習
事例12-2
女性社員のジルバブ着用
関連情報
1.企
業
の
業
種
卸売・小売業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 3 月頃
3.体験の際の職種・職務
管理部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
A.困難事例の概要
新たに採用した女性社員が、採用半年後に事務所内でジルバブ(イスラム教徒
の女性が頭に巻くスカーフ)を着用し始めた。
数日して同調する女性社員も出てきた。今までジルバブを着用する社員はおら
ず、また、国際企業として違和感があったため、着用し始めた社員(2 名)を呼
び出し、着用を控えるよう説得を試みた。
宗教関連の話ゆえ、数時間かけ慎重に説得したが、民主化(宗教の自由)の流
れをバックに一歩もひかず、結局物別れとなった。
B.対処概要
宗教問題に発展しないような説得理由が見つからず、
自然の成り行きに任せた。
結果として、着用者は数名にとどまった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
宗教色の強い事柄には、細心の注意・敬意を払うことが必要である。無理強い
や、深追いをすると宗教省マターとなる危険性が高い。即、国外退去となる可能
性があるということの認識が必要である。
236
12 宗教・慣習
事例12-3
労働時間中にお祈りに抜ける人が多く
支障が出た
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2005 年 1 月頃
3.体験の際の職種・職務
担当役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ市
A.困難事例の概要
当初、労働時間を 8:00~12:00、13:00~17:00 に設定していた。ところが、昼
食時にお祈りに行って戻らない者、あるいは夕方労働時間内にお祈りに行ってし
まう者がいて、現場のラインが混乱した。
B.対処概要
総務部長(キリスト教徒)を窓口として社員と話し合わせ、結果として労働時
間を次のように変更した。
月~木 7:30~11:30、12:30~16:30
金
7:30~11:30、13:00~17:00
(金曜日は昼のお祈りを長めにする人が多いため昼休みを長くした。
)
この変更により、お祈りは休み時間にすることを社員も納得し、以降守られて
いる。また、開始時間が早まったため、通勤時間がラッシュアワーからずれて時
差出勤になり、通勤時間の短縮となった。帰宅時間も早まり、自宅(近くのモス
ク)でのお祈りの可能性も高まって、社員の満足度も高まった。
なお、その後社員の希望で午前、午後各 10 分間の休憩を設け、昼休みの時間を
短縮したが、特に問題は発生していない。
237
12 宗教・慣習
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
宗教上の慣習等は、知って尊重する必要がある。特にインドネシアは 90%がイ
スラム教徒といわれており、日本人にとっては未知の部分も多く、注意する必要
がある。
一方、会社運営上の問題もある。不都合がある場合は、臆病にならずに話し合
って、折合いをつけるとよい。話合いは現地スタッフを窓口にして行うほうがよ
い。
当社の場合、総務部長がフローレス島出身のカトリック教徒で、大丈夫かと心
配していたが、かえって会社側の意向を理解し、イスラム教徒の社員と客観的に
話すことができるためか上手くいっている。
会社側としても会社側に負担にならない限り社員の希望を取り入れるよう努力
をして信頼関係の醸成に努めている。
238
12 宗教・慣習
事例12-4
お金の貸し借り
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 5 月~2004 年 12 月頃
3.体験の際の職種・職務
取締役副社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
スマラン
A.困難事例の概要
従業員や知人からお金を貸して欲しいと頼まれた。
B.対処概要
1.着任してから1年程経って従業員達とも親しくなった頃、運転手から「父
親が病気なので、病院へ行くために 30 万ルピア貸して欲しい。毎月の給与か
ら 5 万ルピアずつ返します。
」という申し出があり、快く貸すことにした。最
初の1ヵ月目は約束通り返済されたが、2 ヵ月目以降は「今はお金がないの
でちょっと待って下さい。
」という返事ばかりで、結局当の父親が亡くなって
しまい、催促するのもはばかられて、香典代わりとあきらめた。
2.自宅の門番兼庭師が「新しい芝刈り機を買うので 300 万ルピア貸して欲し
い。」と言ってきたので、200 万ルピアに値切って貸した。借用書を作成し、
毎月の支払いから天引きしたので、無事全額回収できた。
3.従業員が人目をはばかりながらやって来た。
「家の権利金を来週までに払わ
ないといけないので 700 万ルピア貸して欲しい。
」と言って、手書きの借用書
を差し出した。即答は避け、現地役員に相談したところ、
「会社には従業員へ
の貸付制度はないので、個人的な貸借になる。給与からの天引きにすると、
他の従業員にも知られてしまい、会社が金銭貸借を認めたことになって、他
の従業員が申し出てきた場合に断れなくなるのでできない。」ということで、
239
12 宗教・慣習
結局「そんな大金はありません。
」と言って断ることにした。その後もその従
業員は、特にその件にこだわることもなく、現在も勤めている。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.個人的な給与対象者(運転手やメイドなど自分のお金で雇っていて貸与金
を回収する見込みのある人間)以外には金を貸さない。
2.貸す場合は借用書を作成する。
3.同情する場合は適当な金額を「あげる」
。
4.迷った時は、はっきりと断る。
240
12 宗教・慣習
事例12-5
2名同時にハジ休暇を要求されて
業務のやりくりに苦労した
関連情報
1.企
業
の
業
種
サービス業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1993 年頃
3.体験の際の職種・職務
人事・総務課長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
受付業務は、男性、女性社員各 2 名で構成し、勤務時間を調整しながら対応し
ていた。男性社員の 1 名は、就業規則に従い数ヵ月前からハジ(メッカへの巡礼
のこと。以下同じ。
)休暇を申請していたが、もう一方の男性社員も直前になって
同じくハジ休暇を申請するという事態が発生した。彼の休暇申請は長期休暇の取
得手続きに合致せず、急な申請であったので、交代要員の目途も立たず、彼の翻
意を促したが、どうしても納得を得られず、結局彼は会社を退職してハジに出か
ける選択をした。
B.対処概要
1.イスラム教徒にとって、重要な義務の一つは、一生に一度のハジであり、
労働法でもその権利は保証されている。したがって会社としては、それを拒
否できないが、時間的な制約で交代要員の手当ができず、業務に支障が生ず
る事情を説明して、翻意してほしいという依頼をした。
2.男性社員がどうしても納得せず、会社を退職してでもハジに行くと言うの
で、自己都合退職とし、納得できる退職金、慰労金、補償金の支払いを行っ
た。
241
12 宗教・慣習
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.イスラムの六信五行:
「六信」とは、アッラー・天使・コーラン・預言者達・
審判の日・天命に対する信仰をいい、
「五行」とは、信仰の告白・礼拝・断食・
喜捨・巡礼をいう。いずれもイスラム教徒の重要な儀式、義務である。
2.インドネシアの文化(宗教を含む。
)には、最大の敬意を払い、文化面での
トラブルは起こさないように細心の注意をする。文化はその国に暮らす多数
の人々の価値観に根ざすものであり、そのトラブルとなれば解決は容易では
なく、むしろ拡大の火種となる恐れがあることを肝に銘ずる必要がある。
3.金額面で、弾力ある対応を考え、書面にして後日のトラブルが起こらない
ように対処する。
242
12 宗教・慣習
事例12-6 ある朝、突然ストライキを決行された
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 9 月 14 日~15 日
3.体験の際の職種・職務
財務担当取締役管理部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
14 日の朝に出勤したところ、工場の出入口前に大勢の従業員が座り込みのスト
ライキをしていた。すぐに労働組合の幹部を呼び、状況を確認したところ、女性
オペレーターの採用面接時、面接官のマネージャーによる宗教上の冒涜があった
とのことだった。このため、その生産課長と労務係長を退職させない限り、職場
復帰はしないという説明であった。
労働組合側の説明では、面接時に被面接者の女性がジルバブ(イスラム教信者
の女性が頭に巻くスカ一フ状の物)を着用していたことを暗に指摘され、不採用
となったとのことだった。
B.対処概要
従業員の解雇は経営権の問題であり、重大な事項であることと、一方からの聴
取だけでは意思決定はできないということを説明し、事実関係を明確にするため
に、午前中調査の時間を要求して一旦解散させた。その後、すぐに 2 人を呼び、
事情聴取をしたところ、面接時にジルバブの話題は出たが、それを否定するよう
な発言はしていないし、
それを理由に不採用としたことはないとの説明であった。
解決には時間がかかると判断し、工業団地事務所に状況説明に行くとともに、日
本の本社、近隣の会社、労働事務所への連絡を取った。
特に労働事務所には、アドバイスと労働組合との調整を期待し、会社に出向い
243
12 宗教・慣習
てもらい状況説明をしたが、そのマネージャー2 人を通常の 2 倍の退職金を支払
って解雇すべきとの説明で、全くの期待はずれであった。また係長以上のマネー
ジャークラスにも、このような事態になる兆候がなかったのかを確認したが、全
く分からなかったとの説明で、日頃の管理不足とコミュニケーション不足を痛感
させられた。
午後には従業員食堂に場所を変え、
労働組合幹部と組長クラスの約 40 名に対し
て状況を説明し、事実関係が不確実な状態では 2 人の解雇はできない旨を伝えた
が、これは宗教上の問題で、このようなマネージャーとは一緒に仕事はできない
と強固な姿勢であった。この状況では解決の糸口がつかめないと判断し、翌日そ
の女性とマネージャー2 人をこの場に招聘し、事実関係を明確にすることを提言
して、初日は定時の 5 時に全従業員を帰宅させた。マネージャー2 人は安全確保
上、全従業員の帰宅確認後に帰宅させた。
翌日、2 人を近くのホテルに待機させ、まずはその女性の発言を確認したが、
「ジ
ルバブは着用しない方が良いと言われた。
」との証言であった。これを受け、2 人
を呼ぶつもりでいたが、交渉中にも従業員以外の野次馬が急に増えたのに加え、
新聞社、警察等も来る始末で、次第にエスカレートしていく状況であったため、2
人の安全確保が困難と判断し、休憩時間を取って 2 人の意向を再確認するために
ホテルに出向いた。
私からは、
「これだけ従業員に敬遠されてしまったのでは、この会社で仕事を継
続するのは困難ではないか。
」と状況を説明し、暗に依願退職を促したところ、会
社の意向に従うとことであったため、2 人を依願退職とすることとした。
これを受け、午後に労働組合及び組長クラスに状況を説明し、2 人が退職する
ことになったと伝え、ストライキは終了した。
(この 2 人は、クリスチャンであっ
た。
)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.従業員の採用方針、及び宗教などに関するマネージメントの意向を明確に伝
244
12 宗教・慣習
えておく。
2.マネージャーの役割、特に組織運営、人事管理のあり方を継続的に指導する。
3.労働組合との定期会合開催により、意思疎通を図り、信頼性の向上を図る。
(特に、今回はストライキまでやらなくとも労使交渉に応じることはできた。
)
4.海外でのトラブル時の労使交渉は、日本の本社側からの一任を取りつけ、命
がけで臨まないと従業員に足元を見透かされる。
5.経営者として赴任する以上、労務管理の基本習得は当然のことであり、状況
判断能力及び解決のための折衝力が必要となるため、普段からの心掛けが不可
欠となる。
245
12 宗教・慣習
12 宗教・慣習 関連資料
12.1
ラマダン(断食月)とレバラン
断食(プアサ)中の配慮事項等について(抄) 2002.10
Ⅰ.断食(プアサ)期間等について
○2002 年 10 月 29 日現在で宗教省に確認したところ、今回のイスラム教の断食
(プアサ)期間は、2002 年 11 月 6 日(水)頃から 12 月 5 日(木)頃となり、
断食期間明けの大祭(レバラン)は 2002 年 12 月 6 日(金)及び 7 日(土)
頃になる、とのこと。正確には、直前に月の動きを観測し、宗教省が日取り
を決定し通知する。
○レバラン前には犯罪も多くなる傾向にあるといわれ、色々なかたちでの問題
等も起こりうる可能性があるので、十分な注意が必要。特に、この時期にお
いては、公の制服を着用して家庭等を訪問し、必要な手続きや書類等の不備
を指摘して相応の金額を要請する、といった事例もあるようである。このよ
うな場合、身体への危害が加えられるような恐れがなければ、翌日以降に所
属の企業等で対応する旨相手に回答し、その場での金品の授受は避け、当日
はお帰りいただくような対応も一つの方策である。
Ⅱ.断食(プアサ)について
1)断食の目的
イスラム教信者の宗教上の義務として行う。自己修練、精神修行、空腹な人
(貧しい人)の気持ちを知る等の意義をいうこともある。全世界のイスラム教
徒が同じことを行っているという一体感を感得するという一面もある。
2)断食の期間
イスラム暦(陰暦)第 9 月「ラマダン月(聖なる月)
」の 1 ヵ月間(29 日な
いし 30 日間)に行う。正確な日取りは、宗教省がラマダン月直前に月の動きを
観測し、日取りを決定する。太陽暦と比較してズレがあり、毎年約 11 日早まっ
ていく。
246
12 宗教・慣習
3)断食の方法等
午前 4 時 30 分頃から午後 6 時頃(日の出の約 1 時間前から日の入りまで)
の時間帯。創造主・アッラーが指定した欲求から身を遠ざけるもので、例え
ば、飲食、喫煙、性交は不可。コーランを読むように務め、人の悪口を口に
したり、淫らなことを空想することを含め、一般的に悪いといわれることに
ついて行わないよう努力する。
午前 3 時頃:早朝の食事(サフール)をとり、その後お祈り。
-断食-
午後 6 時頃:ブカ・プアサ(一般的には水、湯、牛乳などの流動食等と菓
子等を少量摂取後)、夕方のお祈り(マグリブ)をしてから
食事。
午後 8 時頃:断食期間中のお祈り(タラウェ)
。
とりわけ、断食に入って 1 週間から 10 日間くらいが一番苦しい時期とい
われている。ただし、仕事については平常通り行うことが信者の務めである。
また、この期間中、特に風邪、胃腸病等がはやるといわれている。
なお、病人、生理中の女性、妊婦、自分の意志で断食を行うに至らない年
齢の子供、及び旅行中の人は断食が免除されるが、病人、生理中の女性、旅
行中の人については、後日、できなかった日数分の断食を行うこととされて
いる。
4)配慮すべき点
断食は、イスラム教徒にとり自分の意志で行う義務であることから、本来
であれば断食を行っている者に対して特段神経を使うことは不要。しかし、
この時期にはイスラム教徒は心身ともに感受性が高まり、無用な摩擦を避け
る観点から、普段にも増して種々の配慮が望まれる。具体的な事例は次のと
おり。
a.宗教や信者に敬意を払う気持ちが必要であり、お祈りで席を離れる時間が
247
12 宗教・慣習
長い、仕事の能率が低下した等、断食を理由にした注意や苦情を口にしな
い。
b.特に断食を行っているイスラム教徒に対しては、早くしなければならない
仕事を押しつけたり、食事を伴う接待の仕事を割り当てたりしない。
c.ブカ・プアサの時刻には、使用人や運転手等が一口でも水が飲めるよう配
慮する。
d.女子職員・使用人が断食を中止することがあるが、いい加減な人であると
決め付けたり、理由を尋ねたりしない。
e.イスラム教徒を招くパーティー・会食等は避ける。ただし、夕食等の場合、
開始時間を午後 7 時半以降等に遅らせる等の配慮をし、行うことは可能で
ある。
f.ゴルフ場では断食を行っているキャディーに対し、例えば、「済みません
が水を飲ませてもらいます。
」と断ったうえで水を取る。
-など。
Ⅲ.断食期間明けの大祭(レバラン)について
断食期間明けの大祭(レバラン)は、イスラム教徒にとっては多くの人が実
家に戻り、レバランを祝う。日本の盆と正月が一緒になったような感覚で、色々
と物入りにもなる。このため、企業等では、
「レバラン手当」
(労働大臣通達に
より、1 年以上雇用した従業員には 1 ヵ月分の手当を支給するよう規定されて
いる。
)を、レバランの約 2 週間前に支給するのが慣例。企業等によっては 1
週間程度休暇期間を設けるところもある。一般家庭の使用人に対しても、これ
に準じるかたちで手当を支給し、休暇を与えるのが一般的。使用人に対する手
当の額については、使用期間にもよるが、1 年間以上継続して働いた場合、基
本給 1 ヵ月分というのが平均的な額といわれている。
レバランが近づくにつれ、
日用品等の物価が上昇する傾向にあるので、
手当は早めに渡すのが親切である。
また、使用人の帰省に際し、土産として菓子、衣類等を持たせる家庭もある。
(出典) ジャカルタ ジャパン クラブ 邦人安全対策連絡協議会情報
248
12 宗教・慣習
例年通り、ラマダン(断食月)の神聖な断食期間中は、周りの人の感情を害さな
いよう自らの行動には十分注意して下さい。また、犯罪が多発する傾向にもあり
ますので身の安全にはくれぐれもご注意下さい。
レバラン(断食明け大祭)は、インドネシアの祝祭日として断食明けに伴う一
斉休日(4 日間)になりますが、前後 1 週間程度休暇をとる人も多く大型連休とな
ります。断食期間中及びレバラン前後の計画を早めに立てておくことをお勧めし
ますが、他の大勢の人達も移動することが予想されます。特に、レバラン前後の
航空便は、ダブルブッキングやチェックイン・カウンターの大混雑などのトラブ
ルが頻繁に起こります。飛行機等のチケットの予約等はもちろん、当日の空港で
のチェックイン等もすべて早め早めに行動されることをお勧め致します。
また、レバラン前にボーナスが支払われる習慣がありますが、レバランに向け
て物価が高騰していく傾向があり、レバラン前に故郷に帰る人も多いので、運転
手や使用人へのボーナスも早めに払ってあげた方が良いでしょう。
(出典)http://www.id.emb-japan.go.jp/cons/srby/tayori17.html
249
13.危機管理・リスクマネージメント
13 危機管理・リスクマネージメント
事例13-1
98 年の暴動
関連情報
1.企
業
の
業
種
建設業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1998 年 5 月頃
3.体験の際の職種・職務
チーフアドバイザー
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ市
A.困難事例の概要
当時、当社はジャカルタから東へ高速道路を使って 30 分位の所で、料金所の近
くにある店舗を使い、業務を営んでいた。
当日はデモに対する問題意識向上の一環から、
従業員にラジオを聞かせていた。
昼の 12 時過ぎ、
突然男のアナウンサーが泣き叫んでいた。
「祖国が燃えている。
」
と…。それも暴徒は、あちらこちらから雲霞のごとく発生。どっちへ向かってい
るのか分わからない。
そこでジャカルタの地図を取り出し、地図上に虫ピンを使って暴動が発生した
場所に印を付けた。そして行き先を感じとったら血の気が引く思いをした。なぜ
なら特にコタ地区を始め、ジャカルタの主だったところがすべて暴徒に覆われて
いたから。
そうこうしている時に暴徒が当社まで 2km の地点に来ているとのこと。
普通に歩くと 30 分。走ってきた場合…!
急遽、店じまいをして逃げる段取りをした。
B.対処概要
従業員の機転により、
会社の入り口に横幅 30cm のイスラム教の看板のようなも
のを貼り、車には各車イスラム教のステッカーを貼って各自避難した。
私を始め、日本人も近くのホテルに避難したが、そこも危険だという情報が入
り、さらに東へ車で 30 分のホテルに避難するが、夜になってから従業員にここも
253
13 危機管理・リスクマネージメント
危ないと言われた。近くに軍隊が警備しているエリアがあり、そこにホテルがあ
ると言われ、そちらのホテルに移動した。
その後、スハルト大統領の退任放送を聴いた。
1 週間ぐらい、仲間と一緒にほとぼりがさめるまで近くのゴルフ場にいた。そ
の後会社に戻ったが、驚いたことに当社は無傷で、他社はガラスを始めシャッタ
ー等がメチャメチャに破壊されていた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.多分「知識」は私たちが上、ここインドネシアで生きる「知恵」は現地イ
ンドネシア人の方が上、運命共同体だと感じた。
2.問題または危険かな、と思ったらその場所に近寄らない。
3.逃げるが勝ち。だがどこに逃げるかが問題。
254
13 危機管理・リスクマネージメント
事例13-2 98 年 5 月の暴動
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1998 年 5 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン県
A.困難事例の概要
私の会社は、ジャカルタから高速道路で約 1 時間西へ走ったところの工業団地
の中にある。その工業団地には日系企業が 7 社あった。ジャカルタでは 5 月に入
ってから、学生のデモが頻発し、交通麻痺が時々起きているというニュースが報
じられていた。そして 13 日にジャカルタで大規模なデモが起き、警備隊の発砲に
より学生側に死者が出て、市内のあちこちで火の手が上がっているという話が守
衛から知らされた。
B.対処概要
情報を得るために、現地マネージャーにラジオでニュースを聞かせ、同時に団
地内の日系企業とも連絡を取り合った。工場の従業員にも何となく情報が伝わっ
て、皆そわそわしだし、団地事務所からは「暴徒化した市民がトラックに乗って
この工業団地に向かっている。
」との情報も流されてきたので、午前中で作業を止
めることにした。
昼食後、一般従業員は帰宅させた。暴徒に侵入されないように工場の門をしっ
かりと閉じ、工場内の鍵のかかるところはすべて施錠した。幸い暴徒が来るとい
うのは噂だけで、何事もなかったが、夕方になって我々が車で帰宅しようとして
幹線道路へ出たら、高速道路は閉鎖されていて通れないとのこと。仕方なくまた
工場へ戻った。
255
13 危機管理・リスクマネージメント
団地内の駐在員に連絡を取ってみると、今夜は工場で泊まるより仕方がないと
いうことになり、事務所の中にダンボールを敷いてその上で寝た。明け方、現地
従業員が携帯電話で「高速道路は誰もいなくなり、今ならフリーで通れます。
」と
知らせてきたので、すぐに出発した。こうして自分のアパートへ無事戻った。
アパートのすぐ近くに大型ショッピングセンターがあったが、それが火を付け
られて燃えており、群衆がそこに集まっていた。彼らがアパートへ押し入ってき
たら防ぎようもないので、我々は心配になりジャカルタの大使館へ電話した。
「そ
こは危険だから大使館の近くのホテルへ来るように。
」とアドバイスされ、また車
で移動した。その時は幸い何事もなくホテルへ入ることができた。
しかしホテルは満室で、ロビーにも人が溢れていた。日本の親会社とは何回も
電話連絡を取り合ってはいたが、日本では事態をつかめないので、すべてこちら
に任せてもらった。大使館員からは、とにかくジャカルタを脱出したほうがよい
という説明を受け、翌日大使館が用意してくれたバスで空港へ行き、一時帰国し
た。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1. テレビやラジオの報道だけでは欲しい情報は得られないので、駐在員同士
の電話連絡と現地の人(従業員)との電話連絡が欠かせない。常日頃から情報
交換できる人を持つことがたいへん役に立つ。
2. 特に自分の車の運転手とは、日ごろから良い関係を作っておくことが肝要。
航空券はオープンで持っておいたほうが良い。混乱の中で航空券を買いに行っ
た人は半日以上行列した。特に家族も一緒の場合は絶対に必要。
256
13 危機管理・リスクマネージメント
事例13-3
98 年 5 月の政変から
臨時便で帰国までの経験より
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1998 年 5 月頃
3.体験の際の職種・職務
アドバイザー
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
東ジャカルタ
A.困難事例の概要
98 年 1 月よりインドネシアでアドバイザーとしての活動を開始した。着任後、
関連企業の駐在員より教わったことは、
まず在ジャカルタ日本国総領事館に行き、
在留届を出すこと、ジャカルタ・ジャパン・クラブ個人部に登録すること、日頃
の情報収集に努めることであった。
それから 5 月 14 日に政変が起きた。私が属する関連企業の日本人は、家族で駐
在していた。彼らはこのような異常事態が起きた場合の対応を準備していたが、
私は何も備えていなかった。結局 14、15 の両日は、会社が借りてくれた家に帰る
ことができず、工場の応接室の床で新聞紙を敷いて寝た。
16 日の朝、会社のオーナーより様子が落ち着くまでジャカルタのホテルへ移る
ように指示があった。ホテルから現在の居場所を総領事館へファックスしておい
た。
18 日に総領事館から臨時便で帰国するようにとのファックスが入り、会社に戻
って航空券の手配を現地スタッフに協力してもらい、18 日の午後、ジャカルタ日
航オフィスへ行って航空券を入手した。18 日の夕刻 7 時までにインドネシア人の
友人、運転手と空港へ向かい、搭乗券を入手した。出国審査では再入国ビザが期
限切れのため、出国を拒否されたが、空港ではそのような事態を予測していて、
総領事館の方々の支援により空港内事務所で同ビザを臨時発行してもらい、19 日
257
13 危機管理・リスクマネージメント
未明の臨時便で無事帰国した。
後日分かったのだが、同グループ内の駐在員の人々はそれぞれ決まった国へ避
難していた。ある人はシンガポール、別の人は日本へ帰国していた。
B.対処概要
現地企業の責任者(オーナー、社長)
、スタッフの指示により行動したので、別
に不安なく対応できた。臨時便の航空券の入手に当たっては、電話回線が混雑し
ている中数名の現地スタッフの協力で電話を掛け続けてもらったため予約ができ、
運転手の好意でジャカルタ日航オフィスまで取りに行くことができた。
再入国ビザの期限切れについては、出国審査場で判明後、領事館の方々の支援
で臨時に発行してもらい難を逃れることができた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.インドネシアに 3 ヵ月以上滞在する場合は、リターンチケットを必ず用意
する。
2.再入国ビザは期限切れのないように常に更新しておく。
3.携帯電話は持っていると便利。
4.航空券、パスポート(6 ヵ月以上の有効期間があること。
)
、現金(300US ド
ルか 300 万ルピアくらい。)
、国際クレジットカードは常時携帯が望ましい。
5.運転手以外に頼れる友人(現地インドネシア人)がいると安心。
6.居住地が変わった場合、常に在留届を更新しておく。
7.異変の場合、企業の最高責任者の指示に従うのが安全。
8.海外からの情報収集ができる短波ラジオ、パソコンを持っておく。
9.少しでも現地語が話せると心強い。(異変の際は周囲に英語の分かる人がい
なくなる。
)
10.インターネットで内外のニュースを常時得られるようにプロバイダーに加
入しておく。
258
13 危機管理・リスクマネージメント
事例13-4 1998 年 5 月暴動時の教訓
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1998 年 5 月頃
3.体験の際の職種・職務
財務担当取締役管理部長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
暴動発生時、会社はジャカルタより 45km 東に位置した工業団地にあったため、
その状況はよく分からず、テレビと電話での情報収集に限られていた。このよう
な状況下で、日本人学校のスクールバスが学校からの帰路に暴徒に阻まれ、子供
達が家に帰れなくなり、連絡が取れなくなった。私自身も、夕方頃から高速道路
が閉鎖されたため、帰宅できなくなってしまった。
結果として、家族は 3 ヵ所(会社、自宅、学校)に離れ離れとなり、とても不
安な時間を過ごすこととなった。
B.対処概要
1.暴動発生の情報が入った際に、ちょうど出張者が 2 人いたこともあり、すぐ
に近くのホテルの予約をしたため、通常価格で 2 部屋を確保できた。この 2 部
屋が、結果としては日本人駐在員のその日の宿泊地となった。午後には宿泊料
金が 3 倍に高騰した。
2.会社がジャカルタから離れた日系の工業団地内にあったため、危険は全く感
じなかったが、至る所で交通の往来に支障が出ているとの情報があった。まず
は従業員の安全確保のために 3 時間ほど早く帰宅をさせ、トラブルに巻き込ま
れることはなかった。
3.当時の総務課長に、情報の収集を依頼し、駐在員にかかわる情報は HP(携帯
259
13 危機管理・リスクマネージメント
電話)で連絡をさせた。
結果としてこれが夜中の 2 時に高速道路を通行できるという情報入手につな
がり、駐在員を帰宅させることができた。ただし、出張者は道路状況が分から
ないため、ホテルにとどまらせ、安全確認をした後にジャカルタのホテルに移
動させた。
4.子供達と直接の連絡は依然として取れなかったが、全員が学校におり、教室
に新聞紙を敷いて寝ているとの情報が入り、無事に早く帰れることを祈った。
帰宅が 3 時前であり学校に子供を迎えに行くために、一度は家を出たものの、
守衛から「4 時頃学校から一斉にバスが出るとの情報があるため、一人で迎え
にいくのは危険だ。
」と制止され、帰りを待つこととした。
(早朝 5 時頃子供が
バスで帰宅した。
)
5.翌日は食料、飲料水等を確保するために、開いている店を探したがすべて閉
店しており、知人のつてで、ようやく日本食スーパーを一時的に開けてもらい、
食料等の確保をした。銀行も取り付け騒ぎと暴徒を避けるため、閉店となって
いて、現金が不足してしまい、知人に借りることで一時しのぎをする始末であ
った。
6.出国のための情報収集をしたが、空港へのアクセスが危険でできないため、2
~3 日は空港にすらたどり着けない状況が続いた。発生から 4 日目にようやく
軍が出動し、アクセスができるようになった。
7.取引先の大手商社が臨時便の席を確保してくれたため、家族の帰国が可能と
なった。一方、私を含め駐在員 3 名は本社側からの一時帰国指示がなかったた
め、やむを得ずジャカルタに踏みとどまることとなった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.海外駐在の場合は、家族全員が HP(携帯電話)を所有することが望ましい。
また、電話会社は全員同一会社とせずに、2 社以上とすること。所有の1社の
回線がつながらなかった場合、致命傷となる。暴動時にはありがちなことであ
260
13 危機管理・リスクマネージメント
り、HP は最重要な連絡手段であるため、発展途上国においては安全確保のため
の必需品である。
2.オ一プンチケットを持っていれば、予約さえできれば緊急時の出国が円滑に
できるため、不安な場合は 1 年のオ一プンチケットを持っていたほうがよい。
3.この時もそうであったが、暴動発生時は 3~4 日程度、家から出ずに嵐が去る
のを待つのが望ましい。すぐに出国行動を起こすとトラブルに巻き込まれる可
能性が格段に高くなる。これは当地駐在者への格言といっても過言ではないか
と思う。
261
13 危機管理・リスクマネージメント
事例13-5
工場隣接地に発生する自然発火火災
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 9 月
3.体験の際の職種・職務
ディレクター
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
パスルアン
A.困難事例の概要
2004 年 9 月 8 日正午前に発見された「野火」
(工場裏側にある空地で発生した
火災)を工場団地管理会社へ通報し、消防隊の出動を要請したが、処置が遅れ、
火災はその時の強風によって大きく成長した。工場建物がその火に覆われるほど
になったため、全従業員に退去を指示した。20 名で消火隊を編成し、緊急に対処
しようとした。一部の火が天井の隙間から工場家屋内に侵入したため、機械防塵
用のプラスチックシートが被害を受けた。天井の断熱シートの隙間にたまってい
る埃等に延焼し、火の玉のようになって落下することが分かったため、外部から
天井を一部はがし、中の確認などを行わざるを得なくなった。その後、裏の空地
の火災は鎮火され、保険会社担当者の到着と共に被害状況について立会い確認を
行った。その後二次災害などの要素はなくなったと判断し、ディレクター(私)
も帰宅した。
B.対処概要
第一 火災経緯
1.12:00 空地の火災そのものについて、当社警備員から工場団地管理会社に
対して通報し、消防隊の出動を要請した。その時には火災はだいぶ大きく成長
していたが、当社工場までにはまだ距離があった。
2.12:30 警備員・人事担当者らにより、工場家屋周辺の状況を確認した。管
262
13 危機管理・リスクマネージメント
理会社に二度目の消防隊要請を行った。
3.12:35 スタッフの独自の判断で、工場の主電源を切断した。特に集塵機の
停止確認が行われた。この時には裏側空地の火災が、強風にあおられて工場建
物を覆いつつあった。
4.12:40 人事部から三度目の消防隊出動要請を行った。しかし時の人事部責
任者は、昼食を取ってから出動することを一方的に通告された。
5.12:40 から 14:00 約 20 名の消火隊を編成し、建物の外部で火勢を監視
した。当初は、他の従業員を全員退避させたが、その後退避を解除して建物
内部の確認をさせた。
6.13:40 工場団地管理会社の消防隊到着。彼らの消火活動は 14:20 まで行
われた。
7.14:00 保険会社に連絡し、現場確認を依頼した。
8.16:00 保険会社担当者が到着し、17:25 まで現場で立会い確認を行った。
9.20:00
警備員、人事と今夜のお互いの連絡先を確認し合い、警戒項目を
夜勤警備員に申し聞かせて、全員帰宅した。
第二 後始末とその後
1.この工業団地では、毎月日系企業代表者の情報交換会が開催されているた
め、9 月の情報交換会でこの火災の経緯を説明し、まずは工業団地管理会社
に対し、併せて管理会社と提携関係にあった日本の大手商社担当部門に対し
て、管理強化要望書を提出することで意見が一致した。そのため、実際の被
害があった当社が代表として要望書を作成した。10 月 21 日付けの要望書を
完成し、12 名の日系企業代表者のサインをもらい受けて、各社に郵送した。
2.工業団地管理会社からの回答があったものの、当日の野火は裏側空地だけ
でなく、他にも発生しており、各所の対応にほんろうされていたために措置
が遅れたこと、消防車を改装することなどを教示するものであって、野火発
生予防・対応の本質を示しているものではなく、その後も一切何ら対応策に
263
13 危機管理・リスクマネージメント
ついては通知されてこなかった。
3.工業団地内での空地には、雑草・雑木が点在しており、周辺住民が家畜を
引き入れ放牧している様子が度々観察されている。今回の原因が「自然発火」
、
「タバコの不始末」、「周辺住民による野焼き」のいずれであるのかは、結局
は解明できなかった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.日本商社が関与する工業団地管理会社であることから、各日系企業代表が
サインをした要望書は、それなりに扱われるのは当然と考えたのは誤解であ
った。日本大手商社が関与しているというだけで安心感があったが、工業団
地管理会社は周辺住民の立入りを規制できておらず、隣接地の空地に発生し
た野火や、恐らくはその他の危険などに対しても、各社が独自に自己防衛す
る必要があることが再確認された。一部の工場は既に野火の危険性を認識し
ており、防護塀をより高く作り直すなどして対応していたが、当社の場合野
火に対する認識が甘かった。諸般の状況を想定する必要があった。
2.工業団地管理会社との協約書を再確認したが、表現のあいまいさが目立つ
だけで、締結された文章の効果的利用は難しいと考えられた。より具体的ケ
ースで協約締結文章を作成するべきであった。
3.結局、管理会社の効果的対応は望めないものと分かったが、要望は要望と
して提示するというプロセスは、決して無駄ではなかったと考えている。
264
13 危機管理・リスクマネージメント
事例13-6
工場への一部住民乱入事件
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000 年 6 月頃
3.体験の際の職種・職務
Development Manager
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
バンテン州
A.困難事例の概要
地元住民の一部に工場に乱入され、事務所のガラスや備品、自動車の窓ガラス
等を破壊されて従業員が1名負傷した。
工業用樹脂フィルムを製造しているが、
その製品のほとんどが日本向けであり、
顧客からの製品規格が非常に厳しい中で、でき上がった製品にオフスペック品が
発生した。廃品とはいえ、用途を限定しなければ、例えば「ぬいぐるみの中綿」
等に再利用価値の大きな製品であった。会社としては、用途開発を含めてコスト
的に見合わないため、従来からいわゆる廃品業者からの要請に対して廉価で引き
渡してきた。廃品業者(軍関係者のサイドビジネスであったり、地元業者であっ
たり。
)間での商機を狙うつばぜり合いはそれまでもあったが、会社しては競争入
札方式を採ると同時に、地元地域への還元の一環として、周期的に一定ポーショ
ンは地元業者への割当てを優先するなどして、配慮してきた。
(地域との共生につ
いては、従業員や臨時要員での雇用はもちろんのこと、モスク建設寄付や病院建
設寄付、イスラム犠牲祭や地元少年達の割礼時への寄付活動等々、積極的に行っ
てきていた。
)
ところが、それまでの割当てを全部地元へ回すよう、ある地元業者が要請して
きた。会社としてはもとより、廃品販売で利益を得る意図はなく、地元の各業者
や各関係者に配慮しつつ割り当ててきていたが、この業者は商機を独占しようと
の動きであった。
265
13 危機管理・リスクマネージメント
この業者が動員した一部地元住民約 70 名が、朝から会社正門前に集まり、会社
に交渉を要求してきた。アポイントメントがないため、当然門守衛に止められ、
「担当者が不在だ。
」
、
「誰か出せ。
」等の押し問答をするうち、次第に興奮した住
民が、正門の鉄門扉を押し倒し、工場内に乱入してきた。角材や刀(三日月刀の
ような刀)を振りかざし、事務所周辺で暴れた。自動車数台の窓ガラス、事務所
の窓ガラス、器具等が破壊された。会社としては、従業員に抵抗しないよう指示
したが、事務所 1 階にいて器具を守ろうとしたインドネシア人男性従業員 1 名が
頭を角材で殴られ、頭蓋骨陥没の重傷を負った。押し問答中に不穏な雰囲気を察
しての通報により現場に駆け付けていた警察官数名(武装)も、暴挙の間中、傍
観するのみで、威嚇発砲等の制止行動は起こさなかった。
(後日、
「群集からの帰
り討ちを恐れた。興奮した群集が警察署を焼き討ちしたケースも他所で発生して
いたこともあり…。
」との警察コメント。
)
興奮した住民の中には、2 階の工場長(日本人)室目前まで刀を持って迫る者
もあった。
一通り破壊した後、やや落ち着きを取り戻した暴徒に、駆け付けた総務担当役
員(インドネシア人)が代表者との話合いを持つということで、暴徒を場外へ出
した。
その後、夕刻までの話合いと、数回の話合いで判明したのは、地元業者間での
つばぜり合いだった。従来の地元業者ではなく、首都ジャカルタから職無く戻っ
てきた若者達を中心に、新グループが発生し、従来の村長ら旧来のグループと袂
を分かち、新たな商機(彼らからは利権)を拡大させるべく、扇動したことが原
因であった。
B.対処概要
種々のやり取りがあったが、競争入札方式は維持した。次のルール等を関係者
合意の下、実施した。
1.入札だけでなく、各々の価格を関係者立会いの下でオープンし、決定する。
266
13 危機管理・リスクマネージメント
2.どの関係者に決まっても、一定額あるいは購入額の 3%のいずれかを、地元
自治体に寄付する。
「工場を、従業員を守る」ことに関しては、次の事項等を実施した。
1.ハード面
工場の 2 重門化。工場門扉の重量&電動化。管理事務所の製造敷地からの分
離(内門と外門との間に移転。)検討。守衛要員の増強。近傍の陸軍共済会と
の連携により、守衛員への派遣と、緊急時ホットラインによる警備増強依頼。
2.ソフト面
地元(自治体幹部、警察、軍、宗教集団、マスコミ等)との日常のコミュニ
ケーションラインの強化。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.興奮、激情すると、見境ない行動に出る「群集心理」や「amok(元々インド
ネシア人に見られた精神的錯乱状態。
)
」に、十分に注意する。
2.イスラム教義のザカート(喜捨)
、激しい貧富差等を背景に、
「持てる者は持
たざる者に与えるのは当然。
」、「与えざる者は批判非難、ときに攻撃の対象と
なることもある。
」
、
「ときに驚くほどストレートな利権追いの primitive な行
動にでる。」
、「冷めやすくも熱しやすい情緒、扇動に乗りやすい感情。」等々、
特有の価値観、気質も、想定しておく。
3.地方分権の進展、浸透により、
・州、県、村、組、等の自治体首長や議会
・軍、警察、宗教集団
等の勢力地図が塗り変わる時期があり、各勢力との適切な距離感を保ちなが
らのコミュニケーションのパイプ維持は大切。またこうした各種勢力は、許認
可・監督等行政面だけでなく、種々のサイドビジネスを持っており、日系企業
の日常の事業活動に種々な影響を持ってくることを認識しておく。
法体系の未整備、法と運用実態との乖離、行政官個々で大きく異なる裁量権
267
13 危機管理・リスクマネージメント
等を背景とし、地方政府と中央政府との間で行政判断上の食い違い、判断の論
理矛盾がある実態を把握しておく。
(スハルト体制崩壊後、民主化の落し子)
局面によっては、少なからず、法治国家ではなく人治国家の横顔を見せるこ
とを認識しておく。
4.事態発生の経緯、適法性の有無によらず、
「ムシャワラ」と呼ばれる当事者間
の話し合いが、時にこの国の常識のベースとなり、解決手段となり、場合によ
っては法を軽々と超える価値観として存在する。このことをインドネシア人幹
部からの背景説明・解決案として提示された場合に、判断者として認識してお
く。
総じて日本とは異なる価値体系を認知し、自衛し、共生することを肝に銘じ
る。
268
13 危機管理・リスクマネージメント
事例13-7 地域住民のデモ
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2003 年 5 月頃
3.体験の際の職種・職務
総務担当
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン市
A.困難事例の概要
地域住民(約 300 人)が工場正門に集まり、工場からの排煙に関する抗議行動
(デモ)を行った。
B.対処概要
1.デモの時間と規模について前日までに情報が入ったため、正門に警官隊を配
備し、行動がエスカレートすることを防いだ。
2.住民代表だけを工場内に入れて会社代表が会った。
(工場内で住民代表と話し
合っている間にデモ隊は自然解散していった。
)
3.よくよく彼らの話を聞いてみると、環境(排煙)問題はきっかけに過ぎず、
彼らの要求の中心は「製品屑の取扱いに対して地元業者へ優先権を付与するこ
と。
」
、
「雇用について地元の住民を優先すること。
」であることが分かった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.工場排煙・排水などの環境対策については万全を期すこと。
(特に外部の目に
触れる部分)法定の基準値を上回らないことは当然であるが、基準値以下でも
外部の目に触れると、抗議活動のきっかけ(口実)となり得る。
2.地域住民との的確なコミュニケーション、動向の把握。工業団地内の立地で
あれば工場団地管理会社が代表して地域住民との折衝に当たることができるが、
269
13 危機管理・リスクマネージメント
当社のような単独立地の場合は自社での対応が必要になる。当社の場合、長年
の事業活動の中で地域住民並びに地方行政と良好な関係を維持してきたと(少
なくとも日本人は)考えていたが、地域住民代表の中で権力闘争があり、当社
が代表と認識して関係を維持してきた人物がいつの間にか排斥されていたこと
を十分把握できていなかった。
※ 具体的には、新しい設備のスタートアップの際に(2003 年 1 月)
、外部の
目に見える形でかなりの排煙が一時的に出てしまったが、その経過説明をこの
従来の代表を窓口として実施することだけで済ませていた。(「地域住民は理
解・納得済み。
」と報告を受けていた。
)その後、住民自治会の執行部が総入れ
替えになり、1 月の排煙を理由に地元住民が集められ、新執行部主導による 5
月のデモにつながった。
3.優秀なインドネシア人スタッフの確保。地元住民との話合いはインドネシア
人に任せる部分が多い。経営の立場に立って毅然とした態度で交渉できる人物
を社内に確保することが必要である。
4.なお、こうした場合、警察・行政に対しては、
「暴力行為の抑止」以上の調整
機能を期待することは一般には難しい。
270
14.税金・役所との関係
14 税金・役所との関係
事例14-1 追加納税額の削減交渉
関連情報
1.企
業
の
業
種
金融業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000~2003 年頃
3.体験の際の職種・職務
支店長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
毎年税査察があり、これは数年度前の納税分を対象として行われる。査察が終
了すると税額が最終確定するはずだが、一旦査察が終了したものも再査察が行わ
れたこともあった。査察では相当のふっかけ追加納税を要求され、これに反論す
るために会計事務所に委託して反論を準備して、
追加納税額の削減交渉を行った。
B.対処概要
追加納税額の削減交渉を行ったが、税務署の追加納税理由が明確でなく、交渉
には時間がかかった。交渉が長引くと会計事務所への手数料もかさむので、適当
なところで妥協して、追加納税を行った。通常、税務署が最初要求した追加納税
額の 10 分の1程度が最終追加納税額であった。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
以前に徹底して税務署と議論(約1年)した結果、会計事務所へ支払う手数料
の方が高かったという笑い話があったので、適当なところで妥協することにして
いる。ただし、年々このようなハラスメントは改善されており、特に 2002 年に導
入された大口納税者への専用窓口ができて担当者が任命されてからはかなり良く
なってきている。
273
14 税金・役所との関係
事例14-2 所得税納税に関する問題
関連情報
1.企
業
の
業
種
金融業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2000~2003 年
3.体験の際の職種・職務
支店長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ
A.困難事例の概要
所得税の納税は、前年所得をベースに毎月行うルールになっている。当期所得
が前年より低いと、
当然税金の過払いが生じてリファンドを要求することになる。
税務署はリファンド(返金)についてはともかく渋く、理由説明やリファンドの
実行が遅れるなど、問題が多い。だいたい毎月納税事務を行うことも効率性から
問題がある。
B.対処概要
できるだけリファンド要求を少なくするために、納税額確定、納税事務につい
てかなりの注意を払って行っている。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
この制度は、事務負担が多い。せいぜい半年に一度とすべきであろう。できる
だけ早く税金を払わせたいという環境は分からないでもないが、現状は他国と比
較して大幅な改善が必要だと考えられる。
274
14 税金・役所との関係
事例14-3 Import VAT に関する大損害
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1995~2000 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県 チカラン
A.困難事例の概要
会社は 1995 年に設立。工場の設備(約数千万米ドル)を海外から 1996~1997
年の間に輸入し、Import VAT(付加価値税 Value Add Tax) 10%(約数百万米ドル)
を支払った。
その後 1997~1998 年クリスモン(通貨危機 Krismon:krisis moneter)
が発生した。
B.対処概要
クリスモン以前の対米ドルのルピア交換レートは 1,900 前後であったが、1998
年のクリスモン後は 7,000~17,000、すなわち平均値で約 4 分の1に暴落した。
通常 Import VAT は償還されるものの、特に金額が大きな場合は、1年以上経過し
てからでないと償還されないので、本件に関してはまともにクリスモンの影響を
受け、大損害を被る結果となった。すなわち、(米ドルに換算して)当然償還され
るべき金額の 4 分の1しか償還されず、Import VAT 支払いから償還されるまでの
金利も大きく、新規企業の立上げに大変な痛手となり、その後の財務内容に大き
な影響を与えた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.VAT 償還は事業計画に大きく影響する。当初から予算に組み入れておくべき。
(クリスモンがない場合でも金利負担、キャッシュフローへの影響が大きい。
)
275
14 税金・役所との関係
2.これは政府間交渉になるが、インドネシア政府に対し Import VAT の撤廃、も
しくは早期償還を要請したい。
(更に透明なる償還手続きを要請したい。
)
VAT 償還について
輸入資機材には Import VAT(10%)が課税され、償還請求により後で戻ってくる
が、この際(特に新会社の場合)以下の負担がかかる。
1.キャッシュフロー:設備投資(輸入資機材)の大きな企業では 10%の VAT は
高額となり償還時期が半年、1 年先となるとこの間のキャッシュフローに直接
影響する。
2.額が変動:ルピアと米ドルの交換レートは常に変動しており、VAT を支払い
償還されるまでの半年~1 年の間に為替ロスが生じる。
(通貨危機の場合は 4 分
の1、5 分の 1 に下がったためにダメージは大きかった)
。
3.赤字企業、償還請求をする企業(特に償還額が納税額よりも多い企業)は必
ずといってよいほど税務調査があり、税の不透明性の名の下に余分な費用がか
かる。VAT 10%が全額そのまま返還されることはない。
276
14 税金・役所との関係
事例14-4 突然の個人所得税の請求
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1999 年 11 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
セラン県
A.困難事例の概要
インドネシア人役員より「日本人駐在員の個人所得税の請求が来ましたが、多
大な金額です。
」という報告があった。確かに驚くほどの金額であった。請求され
た駐在員は創業時から製造部長として駐在していた。税務署からの請求は「イン
ドネシアでの所得だけではなく、日本での所得も含めて課税するので過去にさか
のぼって、今回納税せよ。
」というものであった。インドネシアの税制は累進課税
で、日本人の所得レベルだとほとんどが最高の税率(35%)を適用され、過去に
さかのぼるため大きな金額になっていた。
B.対処概要
工業団地内の日系企業各社に問い合わせてみると、やはりそのような請求が来
ていることが分かった。ただし納税者番号を登録した人が対象になっていること
も分かった。
それまでの所得税は役職による「みなし所得」に対して課税されていた。すな
わち会社役員なら年間所得いくら、部長ならいくら、というようなガイドライン
があって、その線に従って納税していた。
工業団地内の日系企業の1社が「自分のところは創業時から、全世界所得に対
して納税している。
」
という話が出てきた。
この会社は世界各地に進出していて
「所
得税は本来すべての所得に対して課税されるのが国際ルールである。
」
とのことで
277
14 税金・役所との関係
あった。日本の親会社に相談してみると、やはり所得税は日本での所得も含めて
支払うのが国際ルールであることが分かった。したがって、結果的には税務署の
請求どおり納税した。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.工業団地内の日系企業とは、常に相談ができるように日ごろから付き合いを
密にしておくほうが良い。
できれば毎月1回程度の情報連絡会を持つのが良い。
2.インドネシア人は役員でも官庁に弱い。何か言われるとすぐに従う傾向が強
い。駐在員の日本での所得が、どうして税務署で調べられたか不思議であった
が、その役員に聞いたところ「税務署から要求があったので、日本の親会社の
経理に依頼して取り寄せて提出した。
」とのこと。その役員には、会社外に提出
する資料はすべて社長の許可を取るよう言い聞かせた。
3.今回のように国のルールがどうなっているのか、分かりにくいケースがよく
ある。自分の会社だけでは判断できないので、誰に相談したらよいか、相談先
をできるだけたくさん作っておいたほうがよい。
(参考資料)
14 税金・役所との関係
14.2 税金 (2) 納税者登録番号
(NPWP:Nomor Pokok Wajib Pajak)
278
14 税金・役所との関係
事例14-5
税金還付時に例年より多額の手数料を
要求された
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2002 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州
A.困難事例の概要
業績が悪く前年度を下回る売上げ・利益であったため、予納していた税金の還
付を依頼したら、手数料として還付額の 13%程を要求された。通常 1~3%程度と
聞いていたので驚いて理由を尋ねたところ、
「通常は還付まで 3 年以上かかるが、
早く還付することで還付金を預金することが可能になり、利子が入るから損はし
ないだろう。
」ということであった。
B.対処概要
本社に相談したところ、3 年も放置しておくとキャッシュフローが悪化するの
で、手数料が高くても早く還付させるように、との指示があり 10%まで手数料の
引下げ交渉をした上で還付処理した。しかし支払いは米ドルだったにもかかわら
ず、還付はルピアであった。
(当時、米ドル-ルピアの為替レートが大きく変動し
ていたので、有利なドルの支払いを渋られた。
)
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
前年よりも売上げ・利益が減少しそうな状況の場合は、来年度の予納額通達前
に税務署役人と交渉し、減額してもらう。
「コストダウンが厳しく、思った以上に
売上・利益が伸びそうにない。
」という理由で交渉すると小額に変更してくれるの
279
14 税金・役所との関係
で、税金支払い後の還付請求時に交渉するより、はるかに少ない金額で済み、被
害が少なくなる。前年比増の売上げ・利益が予想される場合は全く必要なし。
280
14 税金・役所との関係
事例14-6 EPTE(保税加工区)権利抹消処理
関連情報
1.企
業
の
職
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 3 月~2005 年 9 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州
A.困難事例の概要
会社の大きな方針転換を受けて、従来持っていた輸出企業に対する税法上の特
権、EPTE(保税加工区)の権利を抹消すべく、その手続きを行った。しかし関税
当局(税務署)よりなんの音沙汰もないまま、長期間が過ぎ去った。ある日突然、
申請手続き後六ヵ月以上経過してから、
「売上の約二ヵ月分に相当する金額をペナ
ルティーとして払え。
」という書類が税務コンサルタント経由で送られてきた。し
かもその書類には「不服があれば三日以内に資料をそろえて税務署あてに連絡せ
よ。
」とあった。これには過去三年間のデータを調べる必要があり、三日以内で調
査し資料をそろえることは、事実上不可能である。
B.対処概要
従来税務署との折衝は、すべて税務コンサルタントに一任していたが、今回は
社長自らが税務コンサルタント及び自社のスタッフを引き連れ、税務署に乗り込
んで、次の通り強力に折衝した。
1.税務署の数字は全く理解ができない。計算の根拠を示してもらいたい。そう
でなければ議論さえできない。
(税務署は渋々計算の根拠を説明してくれた。
)
2.計算の根拠は常識では考えられない論法で、我々としては全く受け入れられ
ないと反論した。資料は提出するが、三日以内では提出できないので、最低で
も二十日は欲しいと強く要請した。しかし担当官は頑として我々の要求を受け
281
14 税金・役所との関係
付けず、
「三日以内に出せ。
」と言う。
(我々が抹消手続をしてから半年以上も何
の音沙汰もなく、突然資料がきてから三日以内に返事せよとは理不尽だと言っ
て詰め寄るが、
「ぬかに釘」であった。
)
3.最後の手段として、税務署長に直談判し了解を得た。その後の折衝でも担当
官との間で話が暗礁に乗り上げると、所長に直談判し、それなりに満足いく結
論を得た。当然ながら、こちらも十分な理論武装と資料をそろえて折衝に臨ん
だことは言うまでもない。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.EPTE に関する法律、政令等、規則を熟知しておく必要がある。
2.税務署との折衝はコンサルタント任せにせず、会社最高責任者(社長を推奨
する)自らが折衝することが望ましい。
3.担当官との折衝がうまくいかない場合は、気後れすることなく上層部へ話を
持ち上げ、別の次元から折衝することも必要である。
4.一番大切なことは、会社は常日頃から法律に従い、規則に従って正確な帳簿
を作っておくようにすることである。
(参考資料)
14 税金・役所との関係 14.1 関税 (2)EPTE
282
14 税金・役所との関係
事例14-7
労働事務所との関係作り
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人の社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ県
A.困難事例の概要
工場の立地する地域を管轄する労働事務所の担当官にいろいろ相談したいのだ
が、わいろを要求されることが危ぐされる。
B.対処概要
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.労働組合との労働協約は、労働事務所に登録しておく必要があるが、こう
いった機会をとらえて、事前に労働事務所と相談を行うことによって、担当
官ともコミュニケーションを図ることができる。
2.最近ではわいろを要求されるケースはなく、従業員や労働組合との労働問
題に対処するためにも、日頃から労働事務所と連絡を密にしておくほうが良
い。
3.特に突発的なストライキが起こった場合、まず問題となることだが、その
ストライキが合法的なものか、そうでないものかを確認することが大切であ
り、非合法なストライキの場合、労働事務所が法律に基づき対処してくれる
ようになっている。
283
14 税金・役所との関係
事例14-8 建築許可をめぐる行政の許認可
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 11 月~2005 年 1 月頃
3.体験の際の職種・職務
総務担当
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
タンゲラン市
A.困難事例の概要
工場敷地内に新たに建設する自家発電設備の認可をめぐり、行政の各階層から
様々な要求を受けた。
B.対処概要
発電設備に関しては、環境基準への適合性の審査は州(Propinsi)が、設備そ
のものの建築基準(建屋の強度など)への適合性の審査は市(Kota)が実施し、
州→市の順に認可を受けて工事を始めることになっている。
州の審査の過程で、環境面について地元の行政・住民代表へのヒアリングも実
施された上で認可が得られているにもかかわらず、市への申請の段階で「環境問
題に対する一部住民の懸念」を理由になかなか許可が下りなかった。
地方の行政組織は、市長-郡長(Kecamatan の長[Camat])-村長(Kelurahan
の長[Lura])となっているが、建築の許認可権を持つ市長(実際は許可局長)か
らは、
「地元住民の合意」の証として、郡長/村長が署名した住民代表の合意書を
取るように求められた。
郡長/村長との協議を踏まえ、当社自らが地域住民と交渉して代表者の合意を
得た上で、行政の指導に従った手続きを進めようとしたが、村長/郡長/許可局
長のそれぞれの段階で署名の前に様々な要求を受けた。
284
14 税金・役所との関係
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
1.主要な行政窓口とは、日頃からコミュニケーションを密にしておくべきであ
る。また事業活動がもたらしているインドネシア並びに地元経済への貢献(雇
用、納税などを含む)等について、地元行政との勉強会を企画するなど、日ご
ろから相互理解(地方の役人に対する啓発活動)を進める努力も重要である。
2.プロジェクトの実施に際しては、行政の関係各位に対し十分な配慮をしてい
くべきである。
(当社のつまずきの一因は、州の審査を州任せにし過ぎ、郡長・
村長に対して、州からの情報提供が不足していたことを把握できていなかった
ことにもあった。
)
3.経営と企業の社会貢献双方についてバランスの良い判断が可能で、会社の顔
として行政、地元と渡り合える優秀なインドネシア人スタッフが必要である。
285
14 税金・役所との関係
事例14-9
廃棄物処理の承認印をもらうのに
特別費を請求された
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2001 年 7 月頃
3.体験の際の職種・職務
現地法人社長
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
西ジャワ州
A.困難事例の概要
エプテ(EPTE:輸出加工認定工場)のため、日本から輸入した金属材料の端材
やスクラップを処理する際には、
関税局から承認の印を得ることが必要であるが、
ある時手数料として突然高額な金額を要求された。あまりにも高かったためこれ
を拒否し、交渉していたが結局支払いに応じた。
B.対処概要
約 3 ヵ月ごとに担当官が異動するのを知っていたため、その役人が異動する月
までスクラップを処分せず我慢し、
「次の役人と交渉する。
」と言って、その役人
には「一切支払わない。
」と告げたら手数料を下げてきた。スクラップ置場も一杯
になって保管しきれなくなったため支払に応じた。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
要求に対し弱腰の対応をしたり、すぐに要求をのむ会社と思われたりすると、
要求される金額がどんどん大きくなるので焦った交渉は禁物である。
できれば押しが強く、交渉が上手いマネージャーを雇っておくと非常に良い。
ほかの交渉事についても何にでも使える。
286
14 税金・役所との関係
(参考)
後から他社の状況を確認したら、大体同じような金額だったが、ある会社だけ
は 3 倍以上の金額を要求されていた。要求に対し、全く交渉せずそのまま支払い
をしていたので、役人交代時に「この会社はいくらでも出す。
」との「引継ぎ(?)」
がなされていると聞いた。
(参考資料) (1)14 税金・役所との関係 14.1 関税 (2)EPTE
287
14 税金・役所との関係
14 税金・役所との関係 関連資料
14.1
関税(Bea Masuk)
(1)保税関係(PKB、PDKB)
保税地区とは、主として輸出目的で物品や材料の加工、組立て、設計管理、イ
ンドネシア関税領域(Daerah Pabean Indonesia Lainnya:DPIL)内の他地域から搬
入された物品や材料の選別、予備検査、最終検査、梱包などが行われる特定の地
域のことです。
保税地区での製造工程に必要な物品や原材料の輸入には、輸入税納入猶予など
の一定の優遇措置が採られ、
物品税や付加価値税(Pajak Pertambahan Nilai:PPN,
Value Added Tax:V.A.T)、奢侈品販売税、所得税(第 22 条)が免除されます。
国内投資(PMDN)企業や PMA/PMDN 以外の有限会社、
法的地位を有する協同組合な
どと同じく、
外国投資(PMA)も保税地区管理者及び税地区内操業者として認可を得
ることができます。
保税地区管理者(Penyelenggara Kawasan Berikat:PKB)とは、他者のために保
税地区内に施設やインフラを所有、管理、運営、提供し、契約に基づいて操業す
る有限会社、法的地位を有する協同組合、財団法人を指します。
一方、保税地区内操業者(Pengusaha Didalam Kawasn Berikat:PDKB)とは、保
税地区内で物品や原材料の加工を行う有限会社や協同組合を指します。
ジャカルタ(政府直轄のチャクン、マルンダ、タンジュンプリオク)、ビンタン
島、バタン島に保税地区管理者(PKB)が存在します。
インドネシア全体に多くの PKB が PDKB として、すなわち「ハブ」としても操業
しています。PKB 及び PDKB の認可は、税関総局が発行します。
(出典)http://www.asean.or.jp/invest/guide/indonesia/1-04.html
(アセアンセンター)
288
14 税金・役所との関係
保税地区内の製造企業は、以下のような奨励措置が受けられます。
a.生産工程で使用される原材料を含めた資本財や設備の輸入に対する輸入税、物
品税、所得税(第 22 条)
、奢侈品付加価値税の免除
b.最終輸出製品の 5%まで(価格で)
、又は最終製品以外の輸出品の 100%までの
国内市場への(通常の輸入手続による)転用許可
c.生産工程での使用が可能な原材料を 5%までしか含まないスクラップ又は廃棄
物のインドネシア国内での販売許可
d.自社製品をさらに加工するため、会社所有の機械及び設備を保税地区外の下請
会社に 2 年以内に限り貸与することに対する許可
e.さらに加工するために保税地区の企業と地区外の下請会社の間で引き渡された
製品、または地区内の企業間ならびに他のルートで引き渡された製品について
の奢侈品付加価値税と販売税の免除
(出典) http://www.asean.or.jp/invest/guide/indonesia/1-03.html
保税区内の優遇措置
保税区域内に立地した企業は、特定製品の輸出実績、又は他の保税地区の工場
向け供給実績の 25%を限度として、
あるいは特定下請企業製品は 50%を限度とし
て、正規の輸入手続を踏んだうえで国内向けに販売可能。さらに製品を国内の保
税区域内の他企業に全量供給可能。この際輸入手続は不要で、付加価値税などが
免除。また、保税区域内の企業から区域外の下請工場に加工に出す場合、加工後
製品を引き取る場合ともに、付加価値税などが免除。
(出典) 国際機関アセアンセンター「インドネシア投資ガイド」
(2)EPTE(エプテ)
EPTE:Entrepot Produksi untuk Tujuan Ekspor の略 輸出加工認定工場
認定されると、輸出品に必要な部品及び原材料を輸入する場合、輸入の際に賦
課されるすべての税が免税となる。現在はPKB(保税地区管理企業)/PDKB(保税
地区内企業)に変更された。
289
14 税金・役所との関係
14.2
税金(Pajak)
(1)所得税(Pajak Penghasilan:PPh)
○ 最低賃金と所得税
最低賃金にかかる所得税の政府負担
2003 年 7 月から、政府が負担する所得税は、最低賃金を基に算出するのではな
く、一律で 100 万ルピア(月額)まで支払われる正規従業員あるいは臨時従業員
(いずれも国内就労者)が対象。なお、政府負担分を超える所得については、引
き続き雇用主が源泉徴収する。
正規従業員が(給与-職業経費+年金掛け金+非課税所得)×税率。臨時従業
員の場合は、財務大臣が別に定めた非課税所得を控除して計算する。
(出典)http://www3.jetro.go.jp/jetro-file/search-text.do?url=010012700304
(2)納税者登録番号(NPWP:Nomor Pokok Wajib Pajak)
インドネシアに 1 年間に 183 日以上、滞在している外国人に対して取得が義務
づけられている番号で、税務当局はこの番号に基づき租税を行う。故意に NPWP
登録を怠ると、禁固 6 年未満の刑罰と本来の税金の 4 倍に上る追徴金が課せられ
る。
(出典) http://www.jakartashimbun.com/pages/20010412top.html
290
15.その他
15 その他
事例15-1
転職する際のコツ
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
1997 年 8 月~2005 年 7 月頃
3.体験の際の職種・職務
アドバイザー
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ジャカルタ、ボゴール、ブカシ県
A.困難事例の概要
私は 97 年 10 月に某音響映像機器メーカーを定年退職した。定年退職の 2 ヵ月
前からシンガポールの現地法人の友人、インドネシアの日系商社の知人を通じ、
東ジャカルタにある現地企業へアドバイザーとして入ることを決め、98 年 1 月か
ら現地企業での活動を始めた。現在、転職 4 社目に在職しているが、2005 年 9 月
末で契約が終了するに当たり、下記の方法により、転職 5 度目の現地企業におい
ての仕事を既に得るに至った。
1 社目(98 年 1 月から 2000 年 3 月)から 5 社目(今年 10 月から)までの仕事
を見つける際の共通点は、その会社の経営者と直接面会し、自分が今までやって
きた事柄とその会社で何をやりたいかを面談で話していることである。
1 番初めの会社の場合、その現地企業で生産指導に当たった工場関係者の評価
のみで、自分で確認した情報を持っていなかったが、できればその会社で活動し
たいという希望があった。日本からの間接的アプローチになったが、退職までの
業務歴と現地企業での希望業務を英文と和文で作成し、ワープロ通信(今のイン
ターネットと同類)にて送り、1 ヵ月後現地企業の社長とジャカルタのあるホテ
ルで 2 時間ほど日本語で面談し、できるだけ早く現地に来て欲しいという回答を
得た。活動開始は 98 年 1 月。その後、5 月に政変があり、また 1 年半ほど JODC
(
(財)海外貿易開発協会)専門家の仕事を経て、2000 年 3 月まで同企業で勤め
てから帰国した。
293
15 その他
2 番目の会社は、1社目の会社での仕事を通じて知りえた会社の経営者に、
「今
仕事を探しに日本から来た。
」
(2000 年 11 月)と直接ホテルから連絡して面会の
予約を取った。友人(インドネシア人で現地日系企業の社長)から車と運転手を
提供してもらい、社長に面談するためボゴール県まで行き、やはり 2 時間くらい
覚えたてのインドネシア語で、1 社目の企業で何を、この会社で何を希望するか
を説明した。そして赴任するまで 2 度、インドネシアを訪れてアドバイザーの仕
事に就いた。その 1 年後、JODC の専門家の 6 ヵ月プログラムを経て 2002 年 7 月
に帰国した。
3 番目の会社へは、2 番目の会社にいる際に顧客の応接ロビー、協力会社会議な
どで行った名刺交換、情報交換を通じて知った 3 社目の社長から、2 番目の会社
との契約終了後は自分の会社でアドバイザーをしないかとの誘いがあったので、
4
ヵ月後にインドネシアを訪れてチカラン地域(ブカシ県)でアドバイザーの仕事
をした。
4 番目の会社へは、3 番目の会社の顧客応接ロビーで営業活動中、現企業の社長
の息子(現企業と同グループの取締役)と面会した際に、現企業の社長への直接
面会を申し入れた。1 週間後、再度共同経営者に面談し、アドバイザーの仕事を
2003 年 10 月から始めるに至った。
この会社との契約終了が今年 9 月末であった。
5 番目の会社は 4 番目の会社とほぼ同じ業種であるため、共通の顧客のサプラ
イヤーとなっており、たまたまある顧客(現地日系自動車製造会社)の母体から
の監査があり、その関連情報から 5 番目の会社の存在を知った。その企業に関す
る私個人の情報は皆無に近かったが、顧客の評価が大変良いので、5 社目は自分
より顧客の評価で、ここでのアドバイザーの仕事を得たいと思い、私個人のネッ
トワークから社長の名前と電話番号を入手して直接面談の予約をもらい、経営者
陣と面談し、今年 10 月から活動できる場を提供してもらうこととなった。
B.対処概要
1 番初めの会社へは、定年退職前であり、日本からのアプローチで同じ会社の
294
15 その他
現地法人、及びインドネシア国内の日系総合商社の知人を通じての好意にすがっ
たが、2 社目から 5 社目に至る転職(仕事を見つけるための作業)はすべて自分
で動き、情報を集め、他人を介すことなく、経営権を持つその会社の代表者と直
接面談することで、短期間で仕事を得ることができた。それは他人任せでは、自
分のやりたい仕事を見つけるのは難儀であるからだ。
日常の心がけ:
公私を問わずに日常から離れた場所(ゴルフ場、サプライヤー会議、顧客主催
の会議)では多くの方々と名刺交換と面談を試み、インターネットでその日の感
想を送っておき、できれば1ヵ月以内にその人を訪問しておく。
偶然の出会いや発見を大切にして、何かを依頼できる人々のつながりを作って
おく。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
その会社の経営者との面談は、場合によって少しずつ違いがあるが、下記の文
書類もそろえておくことが必要だと思う。まず文書を読んでもらい、自分につい
て知ってもらう期間を相手に提供した。文書はすべて英文で記述し、すべて A4
一枚にまとめてあると良いと思う。
1.自己紹介と相手先企業内での希望活動範囲
2.大学卒業証明書(卒業した大学が発行したもの)
3.履歴書(Curriculum Vitae:時系列で誕生から定年退職までの学歴、職歴を記
載したもの)
4.職務経歴書(定年退職まで、退職後、現在までの指導内容、達成事項を記載
したもの)この書類は常に最新版に書き換えておく。
5.定年退職証明書(退職時に勤務していた企業の人事部が発行したもの)
6.雇用契約書の案(Desirable Working Agreement)
295
15 その他
事例15-2
現地法人に資金管理を任せきれない
関連情報
1.企
業
の
業
種
製造業
2.問 題 の あ っ た 時 期
2004 年 3 月
3.体験の際の職種・職務
担当役員
4.場 所 ( 州 又 は 都 市 )
ブカシ市
A.困難事例の概要
当社はオーナー会社で、かつ初めての海外進出であった。現地法人の社長も日
本本社の社長が兼務している。
現地法人には技術系社員 2 名を日本から派遣しているが、経理部門は現地スタ
ッフしかいない。予算管理、基本的な資金管理を本社で直接やりたかった。
B.対処概要
現地法人の管理する経費支払口座と、本社が管理する資金管理口座を完全に分
けた。
1.現地法人管理口座
現地大手銀行の会社のすぐ近くの支店に口座を設けた。(ルピア、米ドル、
円)会社の経費、社員の給与、購入品等通常の支払い、現地の会社からの入金
はこの口座で行うこととした。口座のサイン権は日本からの派遣社員(2 名両
方)に与えた。
実務的には経理担当者に社内支払伝票、銀行振込伝票等の必要書類を用意さ
せ、GM(現地総支配人)がサインをする。GM が不在で緊急な場合は、FM(工場長、
日本からの派遣社員の NO.2)が代行する。その書類を銀行に登録してある経理
担当者が銀行に持っていき処理する。
従業員にも給与受取口座を同じ支店に開設させ、給与はすべてその口座に振
296
15 その他
込みで支払う。毎月の収支は本社に報告する。
2.本社管理口座
邦銀のジャカルタ支店に現地法人の口座を持った。(ルピア、米ドル、円)
サイン権は現地法人の社長でもある日本本社社長と関係役員が持った。
資本金、貸付金等の大口資金はこの口座で管理する。主要顧客(日系)の入
金、日本との輸出入を含む決済はこの口座を使う。
毎月、現地法人より本社あて翌月の収支予算と、現地銀行への振込必要金額
を出させる。それに基づき必要額を現地銀行の現地法人管理口座に送金する。
当初は銀行引き出し伝票を本社に送り、サインしたものを送り戻し、それをジ
ャカルタ中心部の邦銀支店にて金を引き出し持ち帰っていた。
銀行がインターネットを使って本社側で送金手続きができるシステムを持
っていたので、この契約をして本社側で出金管理を行っている。これにより現
地側と本社側の責任権限の分担並びに管理がはっきりし、スムーズにいってい
る。
C.教訓(知っておくべき情報・知識など)
海外子会社の資金管理をどのようにやるか、やりたいかをはっきりしておくと
よい。日系の銀行のサービスは相当進んでおり、利用する価値がある。またイン
ドネシアは外貨管理が自由で制約が少ない。一方管理が自由だけに、自分で管理
をしておかないと危ない。
297
参
考
資 料
参考資料
1.インドネシアの労働関連ウェブサイト
(50 音順)
インドマルコ社
http://www.indonesialink.net/indomalco/
海外移住情報
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/
株式会社エヌ・エヌ・エー
http://nna.asia.ne.jp/
外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/
国際機関日本アセアンセンター
http://www.asean.or.jp/
在インドネシア 日本国大使館
http://www.id.emb-japan.go.jp/
在日 インドネシア大使館
http://www.indonesian-embassy.or.jp/
財団法人 海外技術者研修協会
http://www.aots.or.jp/
301
参考資料
財団法人 海外職業訓練協会(OVTA)
http://www.ovta.or.jp/info/
財団法人 国際研修協力機構(JITCO)
http://www.jitco.or.jp/
財団法人 国際労働財団(JILAF)
http://www.jilaf.or.jp/index.html
財団法人 中小企業国際人材育成事業団(IMM Japan)
http://www.imm.or.jp/
財団法人 日本 ILO 協会
http://www.jilo.or.jp/
じゃかるた新聞
http://www.jakartashimbun.com/
ジャカルタ ジャパン クラブ(JJC)
http://www.jjc.or.id/
社団法人 日本・インドネシア経済協力事業協会(JIAEC)
http://www.iris.dti.ne.jp/~jiaec
独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)
http://www.jetro.go.jp/indexj.html
302
参考資料
独立行政法人 日本貿易振興機構 ジェトロ・ビジネスライブラリー
http://www.jetro.go.jp/library/
独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO) アジア経済研究所
http://www.ide.go.jp/Japanese/index4.html
独立行政法人 中小企業基盤整備機構
http://www.smrj.go.jp/
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
http://www.jil.go.jp/
入国管理局
http://www.immi-moj.go.jp/index.html
労働・移住省
http://www.nakertrans.go.id/ENGLISHVERSION/organization.php
303
2.インドネシア語/日本語 労働用語
インドネシア語
1 absen
2 absen tanpa izin
3 adil
4 agama
5 agama Islam
6 agen
7 akuntan
8 akuntan pubulik
9 alasan mendadak
10 amuk, amok
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
通りの読み方がある)
アブセン
アブセン・タンパ・イジン
アディール
アガマ
アガマ・イスラム
アゲン
アクンタン
アクンタン・プブリク
アラサン・ムンダダック
アモック
11 anggaran
12 anggota
アンガラン
アンゴタ
アンゴタ・スリカット・プクル
13 anggota serikat pekerja
ジャ
14 APINDO
アピンド
15 asing
Asosiasi Pengusaha
16
Indonesia
17 ASPRI
18 asuransi
19 ayat
20 azan
21 babu
22 badan
23 badan hukum
Badan Usaha Milik
24
Daerah
Badan Usaha Milik
25
Negara
26 bahaya
27 bantu
28 bantuan
29 barang
30 bea/bia
31 bebas
32 berhak
33 beringin
34 borongan
35 buatan
36 buatan Indonesia
37 buatan Jepang
38 buruh
39 cabang
40 catu
41 coba
42 contoh
43 cukai
44 cuti
45 cuti haid
46 daerah
47 dagang
48 dapat
49 datang terlambat
50 denda
Departmen Tenaga
51
Kerja dan Transmigrasi
52 Depnakertrans
Dewan Perwakilan
53
Rakyat
54 D.J.
アシン
アソシアシ・プングサハ・イ
ンドネシア
アスプリ
アスランシ
アヤッ(ト)
アザーン
バブ
バダン
バダン・フクム
バダン・ウサハ・ミリック・ダ
エラ
バダン・ウサハ・ミリック・ヌ
ガラ
バハヤ
バントゥ
バントゥアン
バラン
ベア/ビア
ベバス
ブルハ(ク)
ブリンギン
ボロンガン
ブアタン
ブアタン・インドネシア
ブアタン・ジュパン
ブル(ッ)
チャバン
チャトゥ
チョバ
チョントー
チュカイ
チュティ
チュティ・ハイド
ダエラ
ダガング
ダパット
ダタン・トゥルランバット
ドゥンダ
デパルトメン・トゥナガクル
ジャ・ダン・トランスミグラシ
デプナカルトゥランス
デワン・プルワキラン・ラク
ヤ(ト)
デー・ジェー
意
味
欠席、欠勤(←absent(英))
無断欠勤(izin:許可、tanpa:なしの)
公正な
宗教
イスラム教
代理店(←agent(英))
会計(←account(英))
公認会計士
緊急の事由(alasan:理由、mendadak:切迫した)
凶暴な(普段おとなしい人たちが何かのきっかけで突
然見境のない凶暴な行動を取ること。マレー系民族
の一つの特徴とされる)
予算
会員、メンバー
参 照
→keadilan
→keuangan
(英)run amok 暴れる
怒り狂う
労働組合員(anggota:メンバー)
インドネシア経営者協会(Asosiasi Pengusaha
Indonesia)
外国の
→tenaga kerja
インドネシア経営者協会
→APINDO
補佐官(Asisten:アシスタント、 Pribadi:個人の)
保険
(法律条文の)項
一緒にお祈りをしようとの呼びかけ
メイド、女中(卑語)
機関、組織、からだ
法人
地方政府企業(badan:機関、usaha:事業、milik:所
有)
→pembantu
国営企業(badan:機関、usaha:事業、milik:所有)
危険
助ける
援助、支援(←bantu:助ける)
物、品
税、税金
自由
権利のある(hak:権利)
がじゅまる(インドネシアの統一の象徴)
請負
~製
インドネシア製
日本製
労働者、労働(古い言い方)
支店
現物支給
試す
見本、例
関税
休暇、休み
生理休暇
地方
商い
得る、できる
遅刻(datang:来る、lambat:遅い)
罰金
労働・移住省
→pembantu
→pabean, pajak
→kebebasan pridadi
→upah borongan
→perdagangan
→pendapatan
→Depnakertrans
労働・移住省(略称)
国会(dewan:会議、perwakilan:代表、rakyat:国民)
総局(←direktoraat jenderal)
304
→DPR
インドネシア語
D.J. Pembinaan
Hubungan Industrial
55
dan Jaminan Sosial
Ketenagakerjaan
D.J. Pembinaan
56 Pengawasan
Ketenagakerjaan
D.J. Pembinaan
57 Pelatihan dan
Produktivitas
D.J. Pembinaan
58 Penempatan Tenaga
Kerja Dalam Negeri
D.J. Pembinaan dan
Penempatan Tenaga
59
Kerja Luar Negeri
(PPTKLN)
60 didik
61 direktur
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
意 味
通りの読み方がある)
デー・ジェー・プンビナアン・
フブンガン・インドゥストリア
労使関係・労働社会保障総局
ル・ダン・ジャミナン・ソシア
ル・クトゥナガクルジャアアン
デー・ジェー・プンビナアア
ン・プンガワサン・クトゥナガ 労働基準総局
クルジャアアン
デー・ジェー・プンビナアン・
プラティハン・ダン・プロドゥ 職業訓練・生産性総局
クティフィタス
デー・ジェー・プンビナアン・
プヌムパタン・トゥナガ・クル 国内雇用総局
ジャ・ダラム・ヌグリ
65 Dirjen
66 disiplin
67 diskriminasi
68 DPR
69 dukun
70 Duta Besar
71 efisiensi
72 ekspor
デー・ジェー・プンビナアン・
ダン・プヌムパタン・トゥナ
ガ・クルジャ・ルアール・ヌグ
リ
ディディック
ディレクトゥール
ディレクトゥール・ジュンデラ
ル
ディレクトラ-ト
ディレクトラ-ト・
ジュンデラル
ディルジェン
ディシプリン
ディスクリミナシ
デー・ペー・エル
ドゥクン
ドゥータ・ブサール
エフィシエンシ
エクスポール
76 fungsi
77 gaji
78 gaji pokok
79 ganti kerugian
80 gotong royong
81 hak
フン(ク)シ
ガジ
ガジ・ポコ
ガンティ・クルギアン
ゴトン・ロヨン
ハク
82 hak asasi manusia
ハク・アサシ・マヌシア
62 direktur jenderal
63 direktoraat
64 direktoraat jenderal
参 照
海外雇用総局
教える
官庁では局長、企業では取締役
→pendidikan
総局長
→Dirjen
官庁では局
総局
Direktor Jenderal(総局長←Director General)
規律(←disipline(英))
差別(←discrimination(英))
国会(dewan:会議、perwakilan:代表、rakyat:国民)
祈祷師
大使
効率(←efficiency(英))
輸出(←export(英))
→impor
輸出加工認定工場(Entrepot:保税倉庫、Produksi:
エントレポート・プロドゥクシ・
Entrepot Produksi
生産、 untuk Tujuan:目的、Ekspor:輸出)認定される
73
ウントゥーク・トゥンジュアン・
→EPTE
と、輸出品に必要な部品及び原材料を輸入する場
untuk Tunjuan Ekspor エクスポール
合、輸入の際に賦課されるすべての税が免税となる
74 EPTE
エプテ
Entrepot Produksi untuk Tujuan Ekspor
フェデラシ・スリカット・プクル
労働組合連合(5つ以上の労働組合の連合体)
75 federasi serikat pekerja
ジャ
83 hak dan kewajiban
84 hamilan
85 Hari Libur Resmi
86 helm
87 hitung
88 hubungan
ハク・ダン・クワジバン
ハミラン
ハリ・リブル・レスミ
ヘルム
ヒトゥング
フブンガン
フブンガン・インドゥストリア
89 hubungan industrial
ル
Hubungan Industrial
フブンガン・インドゥストリア
90
ル・パンチャシラ
Panca-sila
91 hukuman
フクマン
フクマン・クルンガン
92 hukuman kurungan
93 Idul Fitri
イドゥル・フィトゥリ
イジャザ
94 ijazah
95 ijazah tamatan sekolah イジャザ・タマタン・スコラ
96 impor
インポル
97 industri
インドゥストリ
98 ingat
インガット
インスタンシ
99 instansi
100 istilahat
イスティラハット
機能(←function(英))
給与
基本給
損失補償(ganti:代替、rugi:損害)
ゴトン・ロヨン(相互扶助)
権利
基本的人人権(hak:権利、asasi:基本、
manusia:人間)
権利と義務(hak:権利、kewajiban:義務)
妊娠(←hamil:妊娠する)
祭日
ヘルメット
借金、数える、計算する
関係
→upah
→berhak
労使関係(hubungan:関係)
パンチャシラ労使関係(インドネシアで理想とされる
モデル(建前)的労使関係)
罰則
禁固(hukuman:罰則、kurungan:檻)
断食明け祝祭日(アラビア語)
証明書
卒業証明書(tamat:終える、sekolah:学校)
輸入
工業、産業
注意(する)、記憶(する)
機関、政府機関
休憩、休暇
305
→denda
→Lebaran
→expor
→perindustrian
→surat peringatan
101 istilahat mingguan
102 istilahat panjang
103 istilahat tahunan
104 izin
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
通りの読み方がある)
イスティラハット・ミングアン
イスティラハット・パンジャン
イスティラハット・タフナン
イジン
105 JABOTABEK
ジャボタベック
106 jaksa
107 jaminan
Jaminan Sosial Tenaga
108
Kerja
109 JAMSOSTEK
110 janji
ジャクサ
ジャミナン
ジャミナン・ソシアル・トゥナ
労働社会保険
ガ・クルジャ
ジャムソステック
Jaminan Sosial Tenaga Kerja
ジャンジ
約束(する)
111 K3
カーティガ
労働安全衛生(keselamatan dan kesehatan kerja)
112 kabupaten
カブパテン
113 KADIN
カディン
県(市(kota)と同等)
インドネシア商工会議所(Kamar Dagang dan Industri
Indonesia)
部屋
インドネシア語
114 Kamar
Kamar Dagang dan
Industri Indonesia
116 kantor
117 kantor polisi
Kantor Wilayah
118
Depnakertrans
カマール
カマール・ダガン・ダン・イン
ドゥストリ・インドネシア
カントール
カントール・ポリシ
カントール・ウィラヤ・デプナ
カルトランス
カンウィル・デプナカルトラン
119 Kanwil Depnakertrans
ス
カルヤワン
120 karyawan
カワサン・インドゥストリ
121 kawasan industri
122 keadialan
クアディラン
123 kebebasan pribadi
クベバサン・プリバディ
124 kebijaksanaan
クビジャクサナアン
125 kecamatan
クチャマタン
クチュラカアン
126 kecelakaan
127 kecelakaan kerja
クチュラカアン・クルジャ
128 Kedutaan Besar
クドゥターン・ブサール
クドゥターン・ブサール・ジュ
129 Kedutaan Besar Jepang
パン
130 keguguran kandungan クググラン・カンドゥンガン
クジャハタン
131 kejahatan
クジャクサアン
132 kejaksaan
133 kejaksaan agung
クジャクサアン・アグン
134 kekuasaan
ククアサアン
クラライアン
135 kelalaian
136 kelurahan
クルラハン
137 keluhan
クルーハン
138 kemampuan
クマンプアン
クマンプアン・クルジャ
139 kemanpuan kerja
140 kemauntauan
クマンタウアン
141 kemerdekaan
クムルデカアン
クナイカン・ガジ
142 kenaikan gaji
143 kenaikan pangkat
クナイカン・パンカット
クプトゥサン
144 keputusan
145 Keputusan Menteri
クプトゥサン・ムントゥリ
146 Keputusan Pemerintah クプトゥサン・プムリンタ
クプトゥサン・プレシデン
147 Keputusan Presiden
148 kerja
クルジャ
クルジャサマ
149 kerjasama
150 kerugian
クルギアン
クセハタン
151 kesehatan
152 kesehatan kerja
クセハタン・クルジャ
kesejahteraan tenaga
クスジャトゥラアン・トゥナガ
153
クルジャ
kerja
クスラマタン
154 keselamatan
keselamatan dan
クスラマタン・ダン・クセハタ
155
ン・クルジャ
kesehatan kerja
115
意
味
参 照
休日
長期休暇(panjang:長い)
年次休暇
許可
→absen tanpa izin
ジャカルタとその周辺の近郊都市(Bogor、
Tanggeran、Bekasi)の名前をつなげて省略形としたも
の。首都圏の意味。
検事
保証
インドネシア商工会議所(KADIN)
→JAMSOSTEK
→perjanjian
→keselamatan
dan kesehatan
kerja
→KADIN
事務所、会社(counterと対応)
警察署
労働・移住省地方事務所(wilayah:地方、地域)
労働・移住省地方事務所(略称)
従業員
工業団地(←kawasan:地方、地域、industri:工業)
公正さ
個人の自由(bebas:自由、pribadi:個人)
政策
郡(長は郡長(Camat))
事故
労働災害
大使館(duta:公使)
→pekerja、buruh
→adil
→bebas
日本大使館
流産(keguguran:落ちること、kandungan:子宮)
悪い行為
検察庁(←jaksa:検事)
最高検察庁
権力(←kuasa:権力)
怠慢、無視
村(長は、lurah:村長)
苦情
能力(←manpu:できる)
職業能力
モニタリング
独立、自由(←merdeka:独立、自由)
昇給
昇格(kenaikan:上ること←naik:上がる)
決定(putus:決める)
大臣決定
政府決定
大統領決定(keputusan:決定)
仕事
協力(kerja:仕事、sama:一緒)
損害(←rugi:損)
衛生(sehat:衛生的な、健康な)
労働衛生
労働者福祉(kesejahteraan:福祉、繁栄)
安全(selamat:安全な)
労働安全衛生
306
→jaksa
→kuasa
→mampu
→naik
→naik
→putus
→pekerja、pekerjaan
→rugi
→sehat
→K3
→sejahtera、tenaga
kerja
→selamat
インドネシア語
156 keselamatan kerja
157 kesempatan
158 kesempatan kerja.
kesepakatan kerja
159
bersama
160 ketaatan
161 ketentuan
162 keuangan
163 kewajiban
164 kewarganegaraan
165 kewenangan
166 KHL
167 KHM
168 kiai
169 KIMS
170 KITAS
171 KKB
172 komite
konfederasi serikat
173
pekerja
174 kontrak
175 kontrak kerja
176 koperasi
177 koran
178 Koran
179 kota/kotamadya
180 Krismon
181 KSBSI
182 KSPI
183 KSPSI
184 kuasa
185 lalu lintas
186 lapor
187 laporan
188 larangan
189 latihan
190 Lebaran
191 lembaga
Lembaran Negara
192
Republik Indonesia
193 libur
194 lingkungan
195 lingkungan hidup
196 magrib
197 mahkamah agung
Majelis
Permusyawaratan
199 majikan
200 mampu
201 masa
202 masa percobaan
203 masjid、mesjid
204 masyarakat
205 Menteri
198
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
通りの読み方がある)
クスラマタン・クルジャ
クスンパタン
クスンパタン・クルジャ
クスパカタン・クルジャ・ブル
サマ
クタアタン
クトゥントゥアン
クウアンガン
クワジバン
クワルガヌガラアン
クウェナンガン
意
味
参 照
労働安全
→K3
機会、チャンス
雇用機会(kesempatan:機会、チャンス)
労働協約(kesepkatan:合意、kerja:仕事、bersama:
→KKB
共同)
遵守(←taat:従順な)
決定(tentu:決める)
→tentu
財務(uang:お金)
→uang
義務(wajib:義務)
→wajib
国籍(←warganegara:国民)
→warganegara
権限(←wenang:権限)
適切生存経費(Kebutuhan Hidup Layak) 2003年労
カー・ハー・エル
働法第89条第2項に規定されている最低賃金の算定
根拠の一つ
カー・ハー・エム
最低生存経費(Kebutuhan Hidup Minumum)
キアイ
イスラム教の長老の称号
短期在留許可証(Kartu:カード、Izin:許可、Menetap:
キムエス
定住する、Sementara:しばらく、暫定的)現在はKITA →KITAS
Sとなっている
短期在留許可証(Kartu:カード、Izin:許可、Tinggal:
キタス
住む、Sementara:しばらく、暫定的)1年間有効、更新 →KIMS
必要
労働協約(kesepakatan:合意、kerja:仕事、bersama:
カー・カー・ベー
共同)
コミテ
委員会(←committee(英))
→panitia
コンフェデラシ・スリカット・プ 労働組合総連合(3つ以上の労働組合連合が集まっ
クルジャ
たもの:インドネシアには3つ存在する)
コントラク
契約(←contract(英))
コントラク・クルジャ
雇用契約
コペラシ
協同組合
コーラン
新聞
コーラン
コーラン
コタ/コタマディア
市(県(kabupaten)と同格
クリスモン
金融危機(krisis moneter←monetary crisis)
インドネシア福祉労働組合総連合(Konfederasi
カー・エス・ベー・エス・イー
Serikat Buruh Sejahtera Indonesia
インドネシア労働組合総連合(Konfederasi Serikat
カー・エス・ペー・イー
Pekerja Indonesia、英語ではITUC:Indonesian Trade
Union Confederation)
全インドネシア労働組合総連合(konfederasi Serikat
カー・エス・ペー・エス・イー
Pekerja Seluruh Indonesia)
クアサ
権力、力
→kekuasaan
ラルー・リンタス
交通
ラポール
報告
ラポーラン
報告、報告書
ラランガン
禁止(larang:禁止する)
ラティハン
訓練
→pelatihan
レバラン
断食明け祝祭日(インドネシア語)
→Idul Fitri
ルンバガ
機関、政府の機関
ルンバラン・ヌガラ・リプブリ
官報(lembaran:紙)
ク・インドネシア
リブール
休み
→cuti
リンクンガン
環境
リンクンガン・ヒドゥップ
生活環境(lingkungan:環境、hidup:生きること)
日没、日没時に行われる1日5回のお祈りのうちの第
→sembahyang
マグリブ
4回目のお祈り(もっとも重要とされる)
マハカマ・アグン
最高裁判所
マジュリス・プルムシャワタ 国民協議会(Majelis:会議、Permushawaratan:協議、
ン・ラクヤット
Rakyat:国民
マジカン
使用者(古い言い方)
→pengusaha
マンプー
~できる
→kemumpuan
マサ
期間、時
マサ・プルチョバアン
試用期間(←coba:試す)
マスジッド、ムスジッド
イスラム寺院
マシャラカート
社会
ムントゥリ
大臣
307
Menteri Tenaga Kerja
dan Transmigrasi
207 merdeka
208 minta
209 mogok
210 mogok kerja
211 mohon
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
通りの読み方がある)
ムントゥリ・トゥナガクルジャ・
ダン・トゥランスミグラシ
ムルデカ
ミンタ
モゴック
モゴック クルジャ
モホン
212 mufakat
ムファカット
213 mushollah
musyawarah、
214
mushawarat
215 mutu
216 naik
217 orang
218 organisasi
219 organisasi buruh
220 organisasi pengusaha
Organisasi Perburuhan
221
Internasional
ムショラ(ッ)
ムトゥ
ナイク
オラン
オルガニサシ
オルガニサシ・ブルー
オルガニサシ・プングサハ
オルガニサシ・プルブルハ
ン・インテルナシオナル
222 P4D
ペー・ウンパット・デー
223 P4P
ペー・ウンパット・ペー
224 pabean
225 pabrik(←fabrica(西))
226 pajak
227 paksa
228 palsu
パベアン
パブリク
パジャック
パクサ
パルスー
229 Pancasila
パンチャシラ
230 pangkat
231 pangkat kerja
232 panitia
Panitia Penyelesaian
233 Perselisihan
Perburuhan
Panitia Penyelesaian
234 Perselisihan
Perburuhan
235 pasal
236 pecat
237 pegawai
238 pegawai negeri
239 pegawai perantara
240 pejabat
241 pekerja
242 pekerjaan
243 pelanggaran
244 pelatihan
245 pelayanan
246 pembantu
247 pemecatan
248 pemeriksaan
249 Pemerintah
250 pemogokan
パンカット
パンカット・クルジャ
パニティア
パニティア・プニュルサイア
ン・プルスリシハン・プルブ
ルハン・ダエラ
パニティア・プニュルサイア
ン・プルスリシハン・プルブ
ルハン・プサット
パサール
プチャット
プガウェイ
プガウェイ・ヌグリ
プガウェイ・プランタラ
プジャバット
プクルジャ
プクルジャアン
プランガラン
プラティハン
プラヤナン
プンバントゥ
プムチャタン
プムリクサアン
プムリンタ
プモゴカン
インドネシア語
206
Pemutusan Hubungan
251
Kerja
252 pendapatan
253 pendidikan
254 penerjemahan
ムシャワラ
意
味
参 照
労働移住大臣(tenaga kerja:労働、労働者、
transmigrasi:移住)
独立
→kemerdekaan
頼む、お願いする
→permintaan
ストライキ
→pemogokan
ストライキ(2003年労働法第1条第23号)
頼む、お願いする(丁寧)
→permohonan
全会一致(ムシャワラの結果、全会一致で合意すると
→mushawarah
いうインドネシアの古くからの習慣)
工場の敷地内の礼拝場
→sembahyang
協議、話合い(納得の行くまで全員で徹底的に話し
→mufakat
合うというインドネシアの古くからの習慣)
品質
上がる
→kenaikan gaji
人
組織、団体(←organization(英))
労働者組織
使用者組織
国際労働機関(ILO)
地方労働委員会(panitia:委員会、penyelesaian:終
了、perselisihan:紛争、perburuhan:労働、daerah:地
方
中央労働委員会(panitia:委員会、penyelesaian:終
了、perselisihan:紛争、perburuhan:労働、pusat:中
央
税関(←bea:税)
→bea
工場
税金
→bea
強制
偽
パンチャシラ(panca:五、sila:道義、サンスクリット語
で5原則(1.神への信仰 2.人道主義 3.インドネ
シアの統一 4.民主主義 5.社会正義)の意;イン
ドネシア建国のイデオロギー)
職位、階位
職位
委員会
→komite、rapat
地方労働紛争終了委員会(panitia:委員会、
→P4D
penyelesaian:終了、perselisihan:紛争、daerah:地方)
中央労働紛争終了委員会(panitia:委員会、
→P4P
penyelesaian:終了、perselisihan:紛争、pusat:中央)
(法律の)条
解雇する
公務員、担当官、職員
公務員
調停官(pegawai:公務員、peranatara:間、調停)
政府機関の担当官
労働者
仕事(kerja:仕事)
違反(langgar:違反する)
訓練、職業訓練
サービス、奉仕
メイド(←bantu:助ける)
解雇(←pecat;通常はPHKを用いる)
検査、調査(←periksa:調査する)
政府(←perintah:命令する)
ストライキ(mogok:ストをする)
雇用関係の終了(pemutusan:切ること、hubungan:関
プムトゥサン・フブンガン・ク 係、kerja:仕事 解雇、退職を意味する言葉 解雇
ルジャ
(pemecatan)という言葉はあるがインドネシアではこちら
が使用されることが多い )
プンダパット
所得(←dapat:得る)
プンディディカン
教育(←didik:教える)
プヌルジュマハン
翻訳(←terjumah:通訳する)
308
→ayat
→karyawan、buruh
→latihan
→bantu、babu
→pecat
→mogok
→PHK
→dapat
→didik
→terjumah
インドネシア語
255 pengadilan tinggi
256 pengangkutan
257 pengawasan
pengawasan
258
ketenagalerjaan
pengawasan
259
perburuhan
260 pengemudi
261 pengurus
262 pengusaha
263 penilainan
264 penjuaran
265 pensiun
266 penterjemah
267 penutupan
268 penyakit
269 penyelsaian
penyelsaian
270
perselisihan
271 peraturan
272 Peraturan Daerah
Peraturan Menteri
273
Perburuhan
274 Peraturan Pemerintah
275 peraturan perusahaan
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
通りの読み方がある)
プンガディラン・ティンギ
プンガンクータン
プンガワサン
プンガワサン・クトゥナガク
ルジャアン
意
味
高等裁判所(←adil:公正な、tinggi:高い)
輸送(←angkut:運ぶ)
監督、監視(←awas:気を付ける)
参 照
→angkutan
→awas
労働監督
プンガワサン・プルブルハン 労働監督
プングムディ
運転手(kemudi:梶)(supirより丁寧)
プングルス
管理者(←urus:管理する)
プングサハ
事業主(←usaha:事業、努力)
プニライアン
評価、評定(nilai:評価)
プンジュアラン
販売(←jual:売る)
ペンシウン
年金(←pension(英))
プントゥルジュマ(ッ)
通訳(者)(←terjemah:通訳する)
プヌトゥパン
閉鎖(tutup:閉める)
プニャキット
病気(←sakit)
プニュルセイアン
終了、妥結(←selesai:終わる)
プニュルサイアン・プルスリ
紛争の終了
シハン
プルアトゥラン
規則(atur:秩序の取れた)
プルアトゥラン・ダエラ
地方条例
プルアトゥラン・ムントゥリ・プ
労働大臣規則
ルブルハン
プルアトゥラン・プムリンタ 政令(政府規則)
プルアトゥラン・プルウサハ
就業規則
アン
プルブアタン
行為(buat:行いをする)
プルブアタン・ブルサラー
過失行為(sarah:誤った)
プルブアタン・ティダッ・クス
不道徳の行為(susilah:道徳の)
シラハン
→supir
→usaha
→nilai
→terjemah
→tutup
→sakit
→selesai
276 perbuatan
277 perbuatan bersarah
perbuatan tidak
278
kesusilahan
279 percaya
280 percobaan
281 perdagangan
282 perindustrian
283 peringatan
284 perjanjian
285 perjanjian kerja
perjanjian kerja
286
bersama
287 perjudian
288 perlindungan
perlindungan tenaga
289
kerja
290 permintaan
291 permintaan izin
292 permohonan
293 perselisihan
294 perseroan
295 perseroan terbatas
296 persetujuan
297 pertanggungjawaban
298 pertanian
299 perundang-undangan
プルチャヤ
プルチョバアン
プルダガンガン
プルインドゥストリアン
プリンガタン
プルジャンジアン
プルジャンジアン・クルジャ
プルジャンジアン・クルジャ・
ブルサマ
プルジュディアン
プルリンドゥンガン
プルリンドゥンガン・トゥナガ
クルジャ
プルミンタアン
プルミンタアン・イジン
プルモホナン
プルスリシハン
プルセロアン
プルセロアン・トゥルバタス
プルストゥジュアン
プルタングンジャワバン
プルタニアン
プルウンダン・ウンダンガン
信用(できること)
試用(←coba:試す)
商業(←dagang:商い)
工業、産業
警告(←ingat:注意)
約束
労働契約
300 perusahaan
プルウサハアン
企業(usaha:事業、努力)
→usaha、pengusaha
国営電力公社(perusahaan:企業、listrik:電気、
negara:国)
→PLN
Perusahaan Listrik
Negara
プルウサハアン・リストゥリッ
ク・ヌガラ
プルウサハアン・パトゥンガ
302 perusahaan patungan
ン
Perusahaan Pengolahan プルウサハアン・プンゴラハ
303
ン・ディ・カワサン・ブルイ
di Kawasan Berikat
カット
プサナン
304 pesanan
301
→buatan
→coba
→industri
労働協約(2003年労働法第1条第21号の定義)
賭博
保護
労働者保護
申請、要請
許可申請(permintaan:申請、izin:許可)
申請
争議、紛争
株
株式会社(perseroan:株式、terbatas:限定された)
賛成(setujuh:賛成する)
責任(←tanggungjawab:責任)
農業(←tani:農業)
法令(法令一般)(undang-undang:法律)
→minta
→izin
→mohon
→PT
合弁会社
保税地区内加工企業(Perusahaan:企業、
Pengolahan:加工、di:~で、Kawasan:地域、Berikat: →PPKB
縛られた)
注文
解雇(pemutusan:切ること、hubungan:関係、kerja: → Pemutusan
Hubungan Kerja
仕事)
305 PHK
ペー・ハー・カー
306 PHK besar-besaran
ペー・ハー・カー・ブサール・
大量解雇(←besar:大きい)
ブサラン
309
インドネシア語
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
通りの読み方がある)
意
味
307 PHK massal
ペー・ハー・カー・マッサール 大量解雇(←massal:大量)
308 PLN
ペー・エル・エヌ
309 PPKB
ペー・ペー・カー・ベー
310 pribadi
311 pribumi
312 propinsi
プリバディ
プリブミ
プロピンシ
313 PT
ペー・テー
株式会社(perseroan:株式、terbatas:限定された)
314 puasa
315 pusat
316 putus
317 rakyat
318 Ramadan
319 rapat
320 rekomendasi
321 rencana
322 retribusi
323 risiko
324 riwayat hidup
325 rugi
326 sakit
327 sanksi
328 sejahtera
329 Sekjen
330 selamat
331 selesai
プアサ
プサット
プトゥス
ラクヤット
ラマダン
ラパット
レコメンダシ
ルンチャナ
レトゥリブシ
リシコ
リワヤット・ヒドゥップ
ルギ
サキット
サンクシ
スジャトラ
セクジェン
スラマット
スルセイ
332 sembahyang
スンバヤン(グ)
333 sepakat
スパカット
334 serikat buruh
スリカット・ブル(ッ)
断食(イスラム暦9月の断食)
中央、中心、センター(建物)
切る
国民、人民
イスラム暦9月(断食をする)
会議
推薦(←recommendation(英))
計画
課徴金
リスク(←risk)
履歴(書)(riwayat:経歴、hidup:生きること)
損害
病気、痛い、体の調子が悪い
制裁(←sanction(英))
繁栄した
Sekretaris Jenderal(官房長←Secretary General)
安全な
終わる
イスラム教のお祈り(subuh:朝、zohal:昼、asar:午
後、magrib:日没、isya:夜の5回行う。
合意、賛成
労働組合(serikat:組合、buruh:労働者;古い言い
方)
労働組合(serikat:組合、pekerja:労働者)
株
賛成(する)
停職処分
礼儀正しい(ジャワで重要とされる品性)
人的資源、人材(sembur:資源、manusia:人間)
資源、自然資源(alam:自然)
運転手(仏語:chauffeur)
レター、書類
免許証
335 serikat pekerja
336 sero
337 setujuh
338 skorsing
339 sopan
340 sumbur daya manusia
341 sumbur daya alam
342 supir
343 surat
344 surat izin
スリカット・プクルジャ
セロ
ストゥジュ
スコルシング
ソパン
スンブル・ダヤ・マヌシア
スンブル・ダヤ・アラム
スピール
スラット
スラット・イジン
スラット・クトゥランガン・ドク
345 surat ketrangan dokter
トル
スラット・クアサ
346 surat kuasa
347 surat peringatan
スラット・プリンガタン
348 surau
スラウ
349 syarat
シャラット
シャラット・プヌリマアン
350 syarat penerimaan
351 tanggungjawab
タングンジャワブ
352 tani
タニ
タタ・トゥルティブ
353 Tata Tertib
354 tenaga kerja
トゥナガクルジャ
355 tenaga kerja asing
356 terjemah
トゥナガクルジャ・アシン
トゥルジュマー
参 照
Perusahaan Listrik Negara 国営電力会社
Perusahaan Pengolahan di Kawasan Berikat 保税地
区内加工企業
個人
純インドネシア人(bumi:土)
州
→perseroan terbatas
→Ramadan
→PHK
→puasa
→kerugian
→PHK
→magrib
→KKB
→perseroan、PT
→pengemudi
医師の証明書(surat:レター、ketrangan:説明)
委任状(kuasa:権限)
警告書
礼拝所(会社、工場内などに設ける)
条件
受入(採用)条件(←terima:受け取る)
責任
農業
交渉のルール tata=規則 tertib=秩序
労働力、マンパワー(tenaga:力、パワー、kerja:仕
事)
外国人労働者(asing:外部の、外の)
通訳する
357 THR
テー・ハー・エル
ハリラヤ手当、レバラン手当
358 tingkat
ティンカット
段階、階(ビルの)
359 tingkat pendidikan
ティンカット・プンディディカン 学歴(tingkat:段階、pendidikan:教育)
360 tinjauan
361 tokong
362 transportasi
363 tugas
364 tunjangan
ティンジャウアン
トコング
トランスポルタシ
トゥガス
トゥンジャンガン
視察
中国風の寺(←道教の道観)
輸送(←transpotation(英))
職務、職責
手当(←tunjang:支え)
310
→Tunjangan Hari
Raya
読み方(eは、「ウ」と「エ」の2
意 味
通りの読み方がある)
365 tunjangan hari raya
トゥンジャンガン・ハリラヤ ハリラヤ手当(hari raya:祭日)
tunjangan kecelakaan トゥンジャンガン・クチュラカ
労災手当
366
アン・クルジャ
kerja
トゥンジャンガン・トゥタップ 固定手当て
367 tunjangan tetap
368 tutup
トゥトゥップ
閉める、閉じる
ウアン(グ)・プサンゴン
お金
369 uang
370 uang pesangon
ウアン(グ)・プサンゴン
退職手当、解雇手当
371 ujian
ウジアン
学力試験
Ujian Kemahiran
ウジアン・クマヒラン・ブルバ
インドネシア語能力検定試験(←mahir:熟練した)
372
ハサ・インドネシア
Berbahasa Indonesia
373 UKBI
ウー・カー・ベー・イー
Ujian Kemahiran Berbahasa Indonesia
ウンダン(グ)
招待(する)
374 undang
375 undangan
ウンダンガン
招待
ウンダン・ウンダン
法律
376 Undang-undang
Undang-undang Dasar ウンダン・ウンダン・ダサー
1945年憲法
377
ル・ウンパットプルー・リマ
1945
ウンダン・ウンダン・ダサー
憲法(dasar:基礎、基本)
378 Undang-undang Dasar.
ル
379 upah
ウパ(ッ)
賃金
ウパ(ッ)・ボロンガン
出来高給
380 upah borongan
381 upah harian
ウパ(ッ)・ハリアン
日給
382 upah lembur
ウパ(ッ)・ルンブール
残業手当
383 upah minimum
ウパ(ッ)・ミニムム
最低賃金
Upah Minimum
ウパ(ッ)・ミニムム・プロピン
州別最低賃金
384
シ
Propinsi
Upah Minimum
ウパ(ッ)・ミニムム・カブパテ
385
県/市別最低賃金
ン/コタ
Kabupaten/Kota
Upah Minimum
ウパ(ッ)・ミニムム・セクトラ
386
州別産業別最低賃金
ル・プロピンシ
Sektoral Propinsi
Upah Minimum
ウパ(ッ)・ミニムム・セクトラ
387
県/市別産業別最低賃金
ル・カブパテン/コタ
Sektoral
ウパ(ッ)・プル・ジャム
時間給
388 upah per jam
389 usaha
ウサハ
事業、努力
ウシア・ペンシウン
定年(usia:年齢、pensiun←pension(英))
390 usia pensiun
391 Utamakan Keselamatan ウタマカン・クスラマタン
安全第一(安全標語)(utama:頭、第一)
392 wajib
ワジブ
義務(のある)
ワルガヌガラ
国民
393 warganegara
ウェナング
権限
394 wenang
ヤヤサン
協会(非営利)
395 yayasan
ザカート
イスラム教の五行の1つ「喜捨」あるいは「救貧税」。
396 zakat
参 照
インドネシア語
311
→THR
→keuangan
→UKBI
→gaji
→borongan
→perusahaan
→kewajiban
→kewarganegaraan
→kewenangan
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