ギリシャ、イタリアの廃棄物処理状況 - 公益財団法人 日本産業廃棄物

海外事情・ギリシャ、イタリアの廃棄物処理状況
JW 2005・1
海
事
外 情
ギリシャ、イタリアの
廃棄物処理状況
(財)日本産業廃棄物処理振興センター
フィレンツェのサン・ジョバンニ洗礼堂
山岡
1.はじめに
亮一
設を視察した。この視察を通じ
今回、
(社)日本環境衛生施設
て把握した、ギリシャ、イタリ
工業会の主催する海外環境事情
アの廃棄物処理状況の概要につ
調査団に参加し、10月13日(水)
いて紹介する。
から10月22日(金)まで、計21
名の団体旅行でギリシャ、イタ
リア、フランスの3カ国を訪問し、
2.ギリシャ
最初の訪問国はギリシャで、
選別施設、コンポスト化施設、
国土面積は日本の約1/3、人口は
RDF施設、最終処分場等の各施
1,094万人である。地中海に面し
アッティカ県自治体連合処理施設の全景
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海外事情・ギリシャ、イタリアの廃棄物処理状況
アッティカ県自治体連合処理施設での概況説明
ていることもあって、10月でも
として回収され、残りはコンポ
日中は半そでシャツで過ごせる
スト化施設に運ばれ150t/日の
ほどの気候であった。
製品コンポストが作られている。
今回視察したのは、首都アテ
さらにRDF製造施設があって、
ネのあるアッティカ県自治体連
セメント工場への売却を計画し
合の廃棄物処理施設で、
400人の
ており、現在品質テストの段階
職員(内80人が技術者)が勤務
であった。
していた。アッティカ県の人口
県内にはこのような施設が1
は400万人(109町村)で、廃棄
カ所しかなく、担当者の話では
物発生量は4,000t/日である。こ
今後、同じような施設を2カ所計
の施設では4,000t/日の廃棄物
画しているが、そのうちの一つ
が持ち込まれているが、そのう
では反対運動が起きているとの
ち、1,650t/日を中間処理してお
ことである。ギリシャ全体とし
り、残りは未処理のまま最終処
ては、中間処理を経て最終処分
分場に直接埋立てされている。
されるものは55%であり、残り
その他、30t/日の処理能力を持
の45%は直接最終処分されてい
つ医療廃棄物の焼却施設もあっ
る。
た。ギリシャでは産廃、一廃の
区別はない。
廃棄物の収集は県が一括して
行っており、民間業者が行うケ
中間処理の対象となる廃棄物
ースはないとのことで、今後、
は、一般ゴミが1,200t/日、汚泥
民間業者の活用も考えていると
が300t/日、その他が150t/日で
のことだったが、具体的な方針
ある。選別施設で、全体の30%
は決まっていない。県の策定し
が鉄、アルミニウム等の原材料
た処理計画に沿って、分別回収
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海外事情・ギリシャ、イタリアの廃棄物処理状況
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アッティカ県自治体連合処理施設の選別機器
が2002年に開始され、排出事業
小型車が多く、日本車ではヴィ
者の参画を得て実施している。
ッツ、マーチなどが走っている
廃棄物処理についてはこれから
のをよく見かけた。
の国であるように感じられた。
イタリアでは、ローマ市内に
ある民間企業のエコイタリーマ
3.イタリア
ラグロッタ社処理施設を訪問し
次の訪問先のローマは、アテ
た。ローマの人口は280万人、廃
ネ同様の古代遺跡の多い都市と
棄物の発生量は4,000t/日であ
思っていたが、アテネと違って
る。この施設の処理能力は
町自体が遺跡であり、ローマ時
1,200t/日で、残りは直接最終処
代の城壁等の遺跡などがいたる
分されている。ローマ市より60
ところにあった。遺跡だけでな
ユーロ/t(約8,000円)の処理費
く、市内にはバチカンのサンピ
をもらって処理しているとのこ
エトロ寺院に代表されるように
とである。
数多くの寺院があり、宗教都市
市内より収集された廃棄物は、
であると感じた。ローマは地下
処理施設で選別され、有機物は
を掘れば遺跡が出ることが多く、
コンポスト化処理した上で売却
地下の建造物が作りにくいので、
されており、一部の製造された
地下鉄は2本しかなく、駐車場も
RDFもイタリアの国営電力会社
慢性的に不足していた。そのた
であるエネル社に30~40ユーロ
め、道の路肩には、縦列駐車の
/tで売却されている。この施設
車がどのように入れたのかと感
ではメタンガスの回収にも力を
心するくらい多く止められてい
入れており、回収したメタンガ
た。駐車場が少ないためか車は
スを利用して、ディーゼルとガ
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海外事情・ギリシャ、イタリアの廃棄物処理状況
スタービンにより9.5~10MW/
れている。紙(白)
、カン・ビン・
日の発電を行っている。また、
ペットボトル(青)、その他のも
回収メタンガスの一部を濃縮し
の(緑)の3種に分別されたもの
て、施設内の供給ステーション
を早朝収集していた。交通渋滞
で、廃棄物の収集運搬車や市営
を考慮した収集体制をとってい
バスに燃料として供給している。
るものと思われる。
ギリシャと同様にコンポスト化
やメタンガス回収発電等に積極
4.おわりに
的に取り組むなど、焼却主体の
今回のギリシャ、イタリアの
日本との処理の考え方の根本的
両国の処理施設を視察して、日
な違いを実感した。
本の処理方法との違いを見られ
ローマ市内で収集運搬作業の
たことは何よりも貴重な経験で
光景を見る機会があった。日本
あった。また、この視察を通じ
では車両1台について3名くらい
て痛感したのが言葉の問題であ
のチームで作業しているが、ロ
った。現地の日本人通訳の方が
ーマでは1人で作業していた。
各施設で担当者の説明を日本語
作業員は車内から車の横にある
に訳すが、専門用語による説明
アームを操作して、コンテナを
は日本語にうまく訳せず、結局
吊り上げて上から投入しており、
は団員の中で英語の話せる方が
一人で収集するシステム化に感
聞き出して、ようやく理解する
心した。またローマでは、廃棄
という場面があった。また街中
物の排出段階で分別されており、
のキオスクでちょっとしたもの
色分けされたコンテナが設置さ
を買う際に、英語で話しても十
マラグロッタ社処理施設を後にしての記念写真
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海外事情・ギリシャ、イタリアの廃棄物処理状況
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分に相手の言うことが理解でき
ることができたこと対してお礼
ずに苦労したことが多かった。
申し上げるとともに、
(社)日本
言葉の重要性を認識した視察で
環境衛生施設工業会ならびに旅
あった。
行中お世話になった調査団の皆
最後に、この調査団に参加す
る機会を与えられ、見聞を広め
様に深く感謝いたします。あり
がとうございました。
バチカンのサ
ンピエトロ寺
院(上)。アテネ
市内のキオス
ク(右)
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